説明

伸線用のダイス洗浄装置

【課題】複数個の伸線用のダイスをダイス保持部の回転部材の外周部分の複数個の保持部に環状に配列保持し、回転部材の傾斜回転及び割出回転により複数個のダイスを順次、超音波ホーンに対向して超音波洗浄することができ、超音波ホーンによりダイスの表面や極細孔径のダイス孔の内面に付着している伸線加工により生じた粉状屑等の汚染物質を良好に洗浄することができる。
【解決手段】ダイス保持部1は外周部分に複数個のダイスDを環状に配列可能な複数個の保持部4aをもつ回転部材4、回転部材の外周部分に配列された複数個のダイスが洗浄液M中に没入又は洗浄液中から露出するように回転部材を傾斜位置で傾斜回転自在に支持する支持機構5及び回転部材を割出回転可能な割出回転機構6からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸線用のダイスを洗浄液中において超音波洗浄する伸線用のダイス洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の伸線用のダイス洗浄装置として、伸線用のダイスを洗浄液中に沈下浸漬し、ダイスに洗浄液を介して所定の周波数及び出力の超音波振動を加えてダイス孔やダイスの表面に付着している伸線加工により生じた粉状屑等の汚染物質を超音波洗浄する構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−81982号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこれら従来構造の場合、単に、ダイスを洗浄液中に沈下浸漬し、洗浄液を介して超音波振動をダイスに加えて一個ずつ超音波洗浄することから、洗浄のための時間と人手を必要として、洗浄作業性に劣ることがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうち、請求項1記載の発明は、伸線用のダイスを洗浄液中において超音波洗浄する装置であって、上記複数個の伸線用のダイスを保持するダイス保持部と、上記洗浄液を収容する洗浄液槽と、該洗浄液中に没入して該ダイスに対向する超音波ホーンをもつ超音波振動部とを備えてなり、上記ダイス保持部は外周部分に上記複数個のダイスを環状に配列可能な複数個の保持部をもつ回転部材、該回転部材の外周部分に配列された複数個のダイスが洗浄液中に没入又は洗浄液中から露出するように該回転部材を傾斜位置で傾斜回転自在に支持する支持機構及び該回転部材を割出回転可能な割出回転機構からなることを特徴とする伸線用のダイス洗浄装置にある。
【0006】
又、請求項2記載の発明は、上記支持機構に上記回転部材を上記傾斜位置と水平位置との間で起倒回動させる起倒機構を設けてなることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記超音波振動部の超音波ホーンを退避揺動して上記回転部材の起倒回動を許容する退避機構を設けてなることを特徴とするものであり、又、請求項4記載の発明は、上記割出回転機構の割出回転を制御する制御部を備えてなることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の発明は、上記保持部は上記ダイスを保持載置可能な有底嵌合孔状に形成されていることを特徴とするものであり、又、請求項6記載の発明は、上記割出回転機構は割出回転可能な割出回転用モータを含んでなるから、割出回転機構の構造を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、複数個の伸線用のダイスをダイス保持部の回転部材の外周部分の複数個の保持部に環状に配列保持し、回転部材の傾斜回転及び割出回転により複数個のダイスを順次、超音波ホーンに対向して超音波洗浄することができ、超音波ホーンによりダイスの表面や極細孔径のダイス孔の内面に付着している伸線加工により生じた粉状屑等の汚染物質を良好に洗浄することができると共に複数個のダイスを能率的に洗浄することができ、かつ、複数個のダイスを連続して洗浄することができ、洗浄作業性を向上することができる。
【0008】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記支持機構に上記回転部材を上記傾斜位置と水平位置との間で起倒回動させる起倒機構を設けてなるから、回転部材の保持部に対する未洗浄のダイスの嵌合又は保持部からの洗浄済みのダイスの取出しを容易に行うことができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記超音波振動部の超音波ホーンを退避揺動して上記回転部材の起倒回動を許容する退避機構を設けてなるから、ダイスと超音波ホーンとを可及的に近接配置することができ、極細孔径のダイス孔の内面に付着している汚染物質を良好に洗浄することができ、又、請求項4記載の発明にあっては、上記割出回転機構の割出回転を制御する制御部を備えてなるから、回転部材の割出数、洗浄すべきダイスの数に伴う回転部材の回転角、回転部材の割出間欠回転における停止時間、超音波振動部の振動時間の設定等を行うことができ、洗浄すべきダイスの数に対する作業の融通性を高めることができ、又、請求項5記載の発明にあっては、上記保持部は上記ダイスを保持載置可能な有底嵌合孔状に形成されているから、回転部材に対するダイスの嵌脱作業を容易に行うことができ、又、請求項6記載の発明は、上記割出回転機構は割出回転可能な割出回転用モータを含んでなるから、割出回転機構の構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態例の全体側面図である。
【図2】本発明の実施の形態例の全体側面図である。
【図3】本発明の実施の形態例の部分平面図である。
【図4】本発明の実施の形態例の部分側断面図である。
【図5】本発明の実施の形態例の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図5は本発明の実施の形態例を示し、Dは伸線加工用のダイスであって、図1の如く、大別して、複数個の伸線用のダイスDを保持するダイス保持部1と、洗浄液Mを収容する洗浄液槽2と、洗浄液M中に没入してダイスDに対向する超音波ホーン3aをもつ超音波振動部3とからなり、上記ダイス保持部1は外周部分の表面側に上記複数個のダイスDを環状に配列可能な複数個の保持部4aをもつ回転部材4、回転部材4の外周部分に配列された複数個のダイスD・・が洗浄液M中に没入又は洗浄液中から露出するように回転部材4を傾斜位置Kで傾斜回転自在に支持する支持機構5及び回転部材4を割出回転可能な割出回転機構6からなる。
【0011】
又、この場合、上記支持機構5に上記回転部材4を図1に示す上記傾斜位置Kと図2に示す水平位置Lとの間で起倒回動させる起倒機構7が設けられ、かつ、この場合、図1から図2の如く、上記超音波振動部3の超音波ホーン3aを退避揺動して上記回転部材4の起倒回動を許容する退避機構8が設けられ、更に、上記割出回転機構6の割出回転を制御する制御部9が設けられている。
【0012】
この場合、機台10の中央部に上記洗浄液槽2を配置し、洗浄液槽2の一方側部に上記洗浄液M中に没入してダイスDに対向する超音波ホーン3aをもつ超音波振動部3を配置し、他方側部に上記支持機構5及び起倒機構7によりダイス保持部1を配置している。
【0013】
又、この場合、超音波振動部3は、超音波ホーン3a、超音波発振部3b、保護ケース3c及び図示省略の電源回路等からなり、上記退避機構8として、上記機台10に立設した支柱体11に上記超音波振動部3の保護ケース3cを支点軸3dにより上下退避揺動自在に設け、図示省略の係止機構により保護ケース3cを作業位置Q及び退避位置Tに位置決め可能に設け、上記振動超音波ホーン3aを退避揺動して上記回転部材4の起倒回動を許容するように構成している。
【0014】
又、この場合、上記割出回転機構6は割出回転可能な割出回転用モータEを含んで構成され、かつ、図1、図2の如く、上記支持機構5及び起倒機構7にあっては、上記機台10に蝶番部材12の一方板材12aを取付けると共に他方部材12bに支持部材5aを取り付け、支持部材5aを蝶番部材12の枢軸12cにより起倒自在に設け、支持部材5aに割出回転機構6としての割出回転可能な割出回転用モータEを設け、この割出回転用モータEの主軸6aにダイス保持部1の円盤状の回転部材4を取付け、支持部材5aに機台10に当接可能な調節ボルト5bを設け、調節ボルト5bにより支持部材5aを上記傾斜位置Kに位置決め可能に設けると共に図示省略の保持体により回転部材4を水平位置Lに保持可能に構成している。
【0015】
又、この場合、複数個の伸線用のダイスDを保持するダイス保持部1にあっては、図3及び図4の如く、上記回転部材4を円形板材4b及びリング板状部材4cにより形成し、リング板状部材4cにダイスDの外径に嵌合する内径の嵌合孔4dを複数個に環状に配列形成すると共に円形板材4bに嵌合孔4dより径小の取出用の小孔4eを形成し、この円形板材4b及びリング板状部材4cを積層状に固着して保持部4aを上記ダイスを保持載置可能な有底嵌合孔状に形成し、この回転部材4をボルト4fにより割出回転用モータEの主軸6aに固定して構成している。
【0016】
又、この場合、上記制御部9は、図示省略のCPU及び表示用ディスプレイを備えてなり、回転部材4の割出数、洗浄すべきダイスDの数に伴う回転部材4の回転角、回転部材の割出間欠回転における停止時間、超音波振動部3の振動時間の設定等を行うように構成され、例えば、図3の如く、回転部材4に25個の保持部4aが形成され、洗浄すべきダイスDの数が11個のような場合、11個のダイスDの洗浄が完了したとき、回転部材4の回転が停止して作業を完了させることができる。
【0017】
この実施の形態例は上記構成であるから、複数個の伸線用のダイスD・・をダイス保持部1の回転部材4の外周部分の複数個の保持部4a・・に環状に配列保持し、割出回転機構6としての割出回転用モータEにより回転部材4を割出回転し、回転部材4は支持機構5により複数個のダイスが洗浄液中に没入又は洗浄液中から露出するように傾斜位置Kで傾斜回転自在に支持され、洗浄液中に没入したときダイスDに超音波振動部3の超音波ホーン3aが対向し、図5の如く、ダイスDは洗浄液M中において超音波洗浄されることになり、この回転部材4の傾斜回転及び割出回転により複数個のダイスDは順次超音波ホーン3aに対向して超音波洗浄されることになる。
【0018】
従って、複数個の伸線用のダイスD・・をダイス保持部1の回転部材4の外周部分の複数個の保持部4a・・に環状に配列保持し、回転部材4の傾斜回転及び割出回転により複数個のダイスDを順次、超音波ホーン3aに対向して超音波洗浄することができ、超音波ホーン3aによりダイスDの表面や極細孔径のダイス孔Dの内面に付着している伸線加工により生じた粉状屑等の汚染物質を良好に洗浄することができると共に複数個のダイスD・・を能率的洗浄することができ、かつ、複数個のダイスD・・を連続して洗浄することができ、洗浄作業性を向上することができる。
【0019】
この場合、上記支持機構5に上記回転部材4を上記傾斜位置Kと水平位置Lとの間で起倒回動させる起倒機構7を設けてなるから、回転部材4の保持部4a・・に対する未洗浄のダイスDの嵌合又は保持部4aからの洗浄済みのダイスD・・の取出しを容易に行うことができ、又、この場合、上記超音波振動部3の超音波ホーン3aを退避揺動して上記回転部材4の起倒回動を許容する退避機構8を設けてなるから、ダイスDと超音波ホーン3aとを可及的に近接配置することができ、極細孔径のダイス孔Dの内面に付着している汚染物質を良好に洗浄することができ、又、この場合、上記割出回転用モータの割出回転を制御する制御部9を備えてなるから、回転部材4の割出数、洗浄すべきダイスDの数に伴う回転部材4の回転角、回転部材の割出間欠回転における停止時間、超音波振動部3の振動時間の設定等を行うことができ、洗浄すべきダイスDの数に対する作業の融通性を高めることができ、又、この場合、上記保持部4a・・はダイスDの外径に嵌合する内径の嵌合孔4d及び径小の小孔4eからなり、上記ダイスDを保持載置可能な有底嵌合孔状に形成されているから、回転部材4に対するダイスDの位置決めを容易に行うことができると共に径小の小孔4eに指をいれて押すことによりダイスDを容易に取出すことができ、回転部材4に対するダイスDの嵌脱作業を容易に行うことができ、又、この場合、上記割出回転機構6は割出回転可能な割出回転用モータEを含んでなるから、割出回転機構6の構造を簡素化することができる。
【0020】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、ダイス保持部1、洗浄液槽2、超音波振動部3,超音波ホーン3a、回転部材4、支持機構5、割出回転機構6、起倒機構7及び退避機構8等の構造等は適宜変更して設計されるものである。
【0021】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0022】
D ダイス
M 洗浄液
K 傾斜位置
L 水平位置
E 割出回転用モータ
1 ダイス保持部
2 洗浄液槽
3 超音波振動部
3a 超音波ホーン
4 回転部材
4a 保持部
5 支持機構
6 割出回転機構
7 起倒機構
8 退避機構
9 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸線用のダイスを洗浄液中において超音波洗浄する装置であって、上記複数個の伸線用のダイスを保持するダイス保持部と、上記洗浄液を収容する洗浄液槽と、該洗浄液中に没入して該ダイスに対向する超音波ホーンをもつ超音波振動部とを備えてなり、上記ダイス保持部は外周部分に上記複数個のダイスを環状に配列可能な複数個の保持部をもつ回転部材、該回転部材の外周部分に配列された複数個のダイスが洗浄液中に没入又は洗浄液中から露出するように該回転部材を傾斜位置で傾斜回転自在に支持する支持機構及び該回転部材を割出回転可能な割出回転機構からなることを特徴とする伸線用のダイス洗浄装置。
【請求項2】
上記支持機構に上記回転部材を上記傾斜位置と水平位置との間で起倒回動させる起倒機構を設けてなることを特徴とする請求項1記載の伸線用のダイス洗浄装置。
【請求項3】
上記超音波振動部の超音波ホーンを退避揺動して上記回転部材の起倒回動を許容する退避機構を設けてなることを特徴とする請求項2記載の伸線用のダイス洗浄装置。
【請求項4】
上記割出回転機構の割出回転を制御する制御部を備えてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸線用のダイス洗浄装置。
【請求項5】
上記保持部は上記ダイスを保持載置可能な有底嵌合孔状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の伸線用のダイス洗浄装置。
【請求項6】
上記割出回転機構は割出回転可能な割出回転用モータを含んでなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の伸線用のダイス洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−45517(P2012−45517A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192167(P2010−192167)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000147464)株式会社サイカワ (7)
【Fターム(参考)】