説明

伸縮シート

【課題】良好な伸縮性を有しつつ、各種の機能性材料が有する機能が十分に発現し得る伸縮シート10を提供すること。
【解決手段】伸縮シート10においては、互いに交差せずに一方向に延びるように配列した多数の弾性フィラメント13又は弾性帯状体が、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、第1の伸長可能な非伸縮性シート11と、第2の伸長可能な非伸縮性シート12との間に接合されている伸縮シート10である。両シート11,12の間に伸縮シート10に所定の機能を付与する機能性材料30が挟持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の機能性材料を含む伸縮シートに関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー材料を含むシートを、吸収性物品の構成材料として使用することが種々提案されている。例えば本出願人は先に、エラストマー成分を含む繊維集合体からなる圧縮回復性シートを、吸収性ポリマーが含まれている吸収体内に配置することを提案した(特許文献1参照)。この技術によれば、吸収性物品を包装体内に収納した状態ではその厚みを薄くすることができ、かつ包装体から取り出すと厚みが回復するという利点がある。しかし、この圧縮回復性シートは、その厚み方向に弾性(伸縮性)を有するものではあるが、平面方向には伸縮性を有していないので、平面方向に伸縮性が必要とされる用途に適しているとは言えない。
【0003】
エラストマー材料を含むシートの他の技術として、エラストメトリック物質からなるミクロファイバを含むメルトブローン不織布に、固体物質の離散粒子を含有させたシートが知られている(特許文献2参照)。このシートは、平面方向に伸縮性を有しているものの、エラストメトリック物質がシートの表面に露出しているので、エラストメトリック物質に特有のべたつき感やそれに起因するブロッキングが生じてしまう。
【0004】
【特許文献1】特開2001−20167号公報
【特許文献2】特開昭62−84143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る伸縮シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに交差せずに一方向に延びるように配列した多数の弾性フィラメント又は弾性帯状体が、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、第1の伸長可能な非伸縮性シートと、第2の伸長可能な非伸縮性シートとの間に接合されている伸縮シートであって、第1の伸長可能な非伸縮性シートと第2の伸長可能な非伸縮性シートとの間に、該伸縮シートに所定の機能を付与する機能性材料が挟持されている伸縮シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の伸縮シートは、良好な伸縮性を有しつつ、各種の機能性材料が有する機能が十分に発現する。また本発明の伸縮シートは、ブロッキング等の不具合が生じないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の伸縮シートの第1の実施形態の一部破断斜視図が示されている。本実施形態の伸縮シート10は、第1の伸長可能な非伸縮性シート(以下、「第1の伸長性シート」とも言う。)11及び第2の伸長可能な非伸縮性シート(以下、「第2の伸長性シート」とも言う。)12の計2枚のシートと、両シート間に挟持された多数の弾性フィラメント13とから構成されている。各弾性フィラメント13は、第1及び第2の伸長性シート11,12と接合している。本発明において弾性とは、伸ばすことができ、かつ元の長さに対して50%伸ばした状態(元の長さの150%の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの113%以下の長さまで戻る性質を言う。
【0009】
シート11とシート12との間には、機能性材料30が挟持されている。機能性材料30は、伸縮シート10の平面方向にわたってほぼ均一に分散配置されているか、又はパターン的(間欠、帯状)に配置されている。機能性材料30は、シート11及び/若しくはシート12と接合状態になっているか、又はこれらのシート11及びシート12と非接合状態になっている。機能性材料30が挟持されているとは少なくとも機能性材料30がシート11とシート12の間に位置するか、シート11とシート12のいずれか中に担持された状態を言う。
【0010】
シート11及びシート12はいずれも伸長可能なものである。しかし、シート11及びシート12はいずれも非伸縮性のものである。シート11及びシート12は、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に伸長可能になっている。本願において、伸長可能とは、目的とする必要な外力(延伸加工上の外力や使用面での人の力による外力など)によって伸ばすことができるものを意味する。伸長可能とは、例えば不織布を例にとると、(イ)不織布の構成繊維自体が伸長する場合と、(ロ)構成繊維自体は伸長しなくても、交点において結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたり、繊維のたるみが引き伸ばされたりして、不織布全体として伸長する場合とを包含する。フィルムを例にとると、伸長可能とは、(イ)フィルムの構成樹脂自体の分子鎖が伸びたり、ズレたりして伸長する場合と、(ロ)構成樹脂自体は伸長しなくても、フィルムが部分的にちぎれたり(スリット開孔、部分開孔、粒子と樹脂の界面剥離などを含む)、フィルムのたるみが引き伸ばされたり、開孔フィルムのように孔の変形によりフィルム全体が伸長する場合とを包含する。薄葉紙を例にとると(イ)薄葉紙の構成繊維自体が伸長する場合と、(ロ)構成繊維自体は伸長しなくても、結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたり、繊維のたるみが引き伸ばされたりして、薄葉紙全体として伸長する場合とを包含する。
【0011】
伸長可能な非伸縮シートは、高伸長性のものが好ましい。高伸長性のものとしては、伸長可能な非伸縮性シートにおいて、伸長する状態になったシート(後加工により伸長する状態になったものを含む)の伸度が、100cN/50mm強度時に30%以上を示すものであることが好ましい。さらには70%以上を示すことが好ましい。なお、最大強度が100cN/50mm以下の場合、最大強度を示すときの最大伸度は30%以上であることが好ましい。伸度は伸長前の長さを基準とする。また、同様に高伸長なシートを用いた伸縮性シート10において、伸長する状態になったシート(後加工により伸長する状態になったものを含む)の伸度が、200cN/50mm強度時における伸度が30%以上を示すものであることが好ましい。なお、最大強度が200cN/50mm以下の場合、最大強度を示すときの最大伸度が30%以上であることが好ましい。伸度はテンションを与えないフリーテンション時を基準とする。伸縮性のシートにおいて前記の特性を示すものは、高伸長な非伸縮性シートであると見なすことができる。これらは、後述する最大強度の測定と同様にして求められる。
【0012】
高伸長な伸長性シートにおいて伸長する状態になった該伸長性シートの最大強度は、好ましくは5cN/50mm以上、更に好ましくは100cN/50mm以上、一層好ましくは500cN/50mm以上である。高伸長な伸長性シートを用いて伸長する状態になった伸縮シート10の最大強度は、好ましくは7cN/50mm以上、更に好ましくは150cN/50mm以上、一層好ましくは1000cN/50mm以上である。
【0013】
また、本発明において非伸縮性とは、「伸ばすことができ、かつ元の長さに対して50%伸ばした状態(元の長さの150%の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの113%以下の長さまで戻る性質」を有さないことを言う。
【0014】
本発明の更に好ましい実施形態は、伸長性シートシート11,12の少なくとも一方が高伸長性の非弾性シートであることである。この理由は、目的とする伸度まで伸ばしたときに、過度な破壊が生じ、強度の低下が大きく、単体では使用に耐えないシートを一方に用いた場合でも、他方に高伸長性のシートを用いることで、伸縮シート10の加工中の搬送性や製品上の耐久性が優れたものとなるからである。本発明の一層好ましい形態は、高伸長性のシートとして不織布を用いたものである。
【0015】
伸長性シート11,12は、弾性フィラメント13と接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていてもよい。あるいは、弾性フィラメント13と接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性フィラメント13と接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものであってもよい。伸長性シート11,12を伸長可能にするための具体的な方法(本明細書においては「弾性発現処理」とも言う。)としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによる噛み込み延伸、テンターによる引張延伸などが挙げられる。後述する伸縮シート10の好適な製造方法に鑑みると、弾性フィラメント13を伸長性シート11,12に融着させるときのシート11,12の搬送性が良好になる点から、シート11,12はその原反の状態では伸長可能でないことが好ましい。また、伸長性シート11,12は、一般的に言って、その原反の状態及び弾性フィラメント13と接合された後の状態のいずれにおいても、伸縮性を有していない。
【0016】
各弾性フィラメント13は、伸縮シート10の全長にわたって実質的に連続している。弾性フィラメント13は弾性樹脂を含んでいる。各弾性フィラメント13は、互いに交差せずに一方向に延びるように配列している。ただし、伸縮シート10の製造条件の不可避的な変動に起因して、意図せず弾性フィラメント13が交差することは許容される。各弾性フィラメント13は、互いに交差しない限り、直線状に延びていてもよく、あるいは蛇行しながら延びていてもよい。
【0017】
フィラメントが互いに交差しないということは、交点がほとんど無いということになる。交点があると、交点と交点の間に複数の繊維があるということになるが、通常、工業的には、交点間に存在する繊維の長さが一致するということは稀である。交点間に存在する繊維の長さが異なる状態のままで、伸長を行うと、交点間に含まれる長さの短い方の繊維だけに、応力が加わることになり、多数の繊維を配置しても、伸長に関与しない繊維が多く生じることになる。同じ重量の繊維で比較した場合、繊維の交点の多いほうが収縮力は小さくなる。よって、コストの無駄となる。縦方向だけの伸縮を考えた場合、ネットのように横方向に繊維がある場合は、横方向の繊維が、無駄なだけでなく、前記の交点が生じ、同様に縦方向の繊維にも無駄な部分が生じてしまう。
【0018】
弾性フィラメント13の延びる方向は、伸長性シート11,12の製造時の流れ方向と一致していてもよく、あるいはシート11,12の製造時の流れ方向と直交していてもよい。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性フィラメント13の延びる方向は、伸長性シート11,12の製造時の流れ方向と一致する。
【0019】
弾性フィラメント13は、実質的に非伸長状態で伸長性シート11,12に接合されている。伸長性シート11,12は、非伸縮性で、かつ伸長可能なものである。弾性フィラメント13が伸長していない状態で伸長性シート11,12に接合されるため、本実施形態の伸縮シート10は、伸長による緩和(クリープ)が起こらず、伸縮性が低下しにくいという利点がある。更に、例えば弾性フィラメント13を2倍に伸長させて伸長性シート11,12と貼り合わせた場合に、初期の1.3倍まで仮に戻ったとすると、この状態からは1.54倍までしか伸ばすことができない。しかし、非伸長状態で貼り合わせを行った場合には、伸縮シートを伸長させたときの初期原点が異なるため、伸長性シート11,12の伸長可能な長さまで又は弾性フィラメント13の最大伸度まで伸ばすことが可能となるという利点がある。
【0020】
弾性フィラメント13が伸長していない状態で、これを伸長性シート11,12に接合させることには次の利点もある。本実施形態の伸縮シート10は、例えば、実質的に非伸長状態の弾性フィラメント13を、非伸長状態のシート11,12に接合して一旦巻き取り原反とし(このとき、弾性フィラメント13と接合したシート11,12は非伸縮性である)、この原反を繰り出して別工程において延伸加工(例えば歯溝延伸)して、非伸長状態のシート11,12を伸長可能なシートとなすことで製造される。前記の原反の状態では、該原反は非伸長でかつ非伸縮性なので、弾性フィラメント13に外力が作用しない。その結果、前記の原反を長期間保存しても、伸長に起因する緩和が起こらないという利点がある。
【0021】
弾性フィラメント13は、糸状の合成ゴム糸や天然ゴムであり得る。あるいは乾式紡糸(溶融紡糸)や、湿式紡糸によって得られたものであり得る。このうち、後述する好適な製造方法に鑑みると、弾性フィラメント13は、これを一旦巻き取ったり、蓄えたりすることなしに直接溶融紡糸によって得られたものであることが好ましい。
【0022】
弾性フィラメント13は、ノズルから吐出された溶融樹脂を紡糸線上で延伸して得られたものであることが好ましい。延伸することで、弾性フィラメント13を構成する高分子が、該弾性フィラメント13の長さ方向に分子配向するので、後述する50%伸長時の行き/戻り比が高まり、ヒステリシスロスが小さくなる。また、延伸によって細い弾性フィラメントが得られる。この観点から、弾性フィラメント13は、1.1〜400倍、特に4〜100倍に延伸されたものであることが好ましい。
【0023】
特に、弾性フィラメント13は、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたものであることが好ましい。これにより、十分細化したフィラメントを得ることが可能になり、後述する理由で、風合いが良くなる。また、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されることで、伸長性シート11,12と貼り合わせた後、常温になった弾性フィラメント13は縮もうとする力は示さず、弾性フィラメント13は非伸長状態で伸長性シート11,12に接合させたことと同じ状態になる。本実施形態における延伸の具体的な操作としては、(イ)弾性フィラメント13の原料となる樹脂を溶融紡糸して一旦未延伸糸を得、その未延伸糸の弾性フィラメントを再度加熱して軟化温度(ハードセグメントのガラス転移点温度Tg)以上の状態で延伸する操作や、(ロ)弾性フィラメント13の原料となる樹脂を溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸する操作が挙げられる。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性フィラメント13は、溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸することで得られる。
【0024】
紡糸後の延伸により得られた弾性フィラメント13は、その直径が10〜400μm、特に100〜200μmであることが好ましい。この範囲は、伸縮シート10の風合いや、弾性フィラメント13の生産性を考慮して決定されたものである。詳細には、弾性フィラメント13の直径が大きすぎると、伸縮シート10に触れたときに、弾性フィラメント13に起因する段差が知覚されやすくなってしまう。この段差は、伸縮シート10の風合いにマイナスに作用するものである。この観点からは、弾性フィラメント13の直径は小さいほど、伸長性シート11,12の風合いのみが知覚されやすくなるので好ましい。また、伸長性シート11,12の光透過性を低減させることにより、いわゆる体液の色の隠蔽性能を持たせる意味でも弾性フィラメント13は細い方が好ましい。更に、後述する歯溝ロールによる弾性発現処理において、弾性フィラメント13の直径を歯溝ロール間の歯と歯のクリアランス以下(好ましいクリアランスとしては歯の耐久性を高める点と噛み込み量による延伸倍率を高くする点でクリアランスが小さくなり、500μm以下、より好ましくは400μm以下である)にすることで、延伸時に弾性フィラメントがダメージ(亀裂や切断)を受けにくくなるので、細い方が好ましい。弾性フィラメントの直径と前記クリアランスとの比は0.2〜1、特に0.2〜0.5が好ましい。尤も、弾性フィラメント13が細径になる程その製造が容易でなくなる。これらを考慮すると、弾性フィラメント13の直径は前記の範囲内であることが好ましい。
【0025】
上述の段差を発生させないようにする観点から、伸縮シート10の厚みに対する弾性フィラメント13の該伸縮シート10の厚み方向の直径の割合は、1〜30%、特に5〜12%であることが好ましい。
【0026】
弾性フィラメント13は、その断面が円形であり得るが、場合によっては楕円形や扁平形状のこともある。例えば後述する製造方法に従い伸縮シート10を製造する場合には、弾性フィラメント13の断面は扁平形状になりやすい傾向にある。この場合、伸縮シート10中において、弾性フィラメント13は、扁平形状の長軸が伸縮シート10の平面方向と略同方向になり、且つ短軸が伸縮シート10の厚さ方向と略同方向になるように配置されることが好ましい。
【0027】
弾性フィラメント13の断面が扁平形状である場合、長軸/短軸の比率(平均偏平率)は1.0〜7.0、特に1.1〜3.0であることが、伸縮特性及び弾性フィラメント13と各シート11,12の構成材料との接合強度、並びに伸縮シート10の隠蔽性能が増す点から好ましい。断面が扁平形状である弾性フィラメント13は、その長軸方向が、伸縮シート10の平面方向とほぼ一致するように配されている。なお、弾性フィラメント13の断面が扁平形状である場合、弾性フィラメント13の直径とは、長軸径と短軸径を平均したものを意味する。扁平形状を有する弾性フィラメント13における長軸とは、顕微鏡観察によって抽出された弾性フィラメント13の外周における最も長い横断線の長さを言う。弾性フィラメント13における短軸とは、前記のようにして決定した長軸に平行な二辺を有し、かつ前記の外周に外接する長方形を描いたときの短辺の長さを言う。これらを任意の弾性フィラメント5点について測定し、扁平率の平均を平均扁平率とし、直径の値の平均を弾性フィラメントの直径の値とする。
【0028】
弾性フィラメント13は、伸長性シート11,12の色と異なる色に着色されていることも好ましい。これによって、弾性フィラメント13がシート11及び/又はシート12越しに透けて見えて、伸縮シート10が縞模様を呈するようになるという意匠的な効果が奏される。このような効果は、特に伸長性シート11,12の厚み及び坪量が後述する範囲内であると一層顕著なものとなる。
【0029】
伸縮シート10が十分な伸縮性を発現する観点、布様の良好な風合いを発現させる観点、及び必要に応じ上述の意匠的な効果を発現させる観点から、隣り合う弾性フィラメント13のピッチ(隣り合う弾性フィラメント13間の距離)は、該弾性フィラメント13の直径が上述した範囲であることを条件として、0.1〜40mm、特に1〜20mmであることが好ましい。
【0030】
弾性フィラメント13は、その全長にわたって伸長性シート11,12に接合している。ここで、「その全長にわたって接合している」とは、伸長性シート11,12のうち、弾性フィラメント13と接触しているすべての部位(不織布の場合はその構成繊維)が、該弾性フィラメント13と接合していることを要せず、弾性フィラメント13に、意図的に形成された非接合部が存在しないような態様で、弾性フィラメント13と伸長性シート11,12とが接合されていることを言う。弾性フィラメント13がその全長にわたって伸長性シート11,12と接合していることで、弾性ストランド13と伸長性シート11,12との接合力を十分に高めることができる。その結果、伸縮シート10を引き伸ばしても、弾性フィラメント13が伸長性シート11,12から剥離しづらくなる。弾性フィラメント13が伸長性シート11,12から剥離してしまうと、自然状態(弛緩状態)において、弾性フィラメント13と伸長性シート11,12との間に浮きが生じて、伸縮シート10に皺が発生しやすくなり、伸縮シート10全体としての一体感に欠けるものとなる。
【0031】
弾性フィラメント13と、伸長性シート11,12との接合の様式としては、例えば融着が挙げられる。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性フィラメント13は、伸長性シート11,12に融着により接合される。融着とは、弾性フィラメント13と伸長性シート11,12が互いに溶融して接着している状態、又はどちらか一方が溶融し、他方がそれに食い込んで接着している状態の双方を含む。この方法によれば、伸長性シート11,12に過度な熱は加えられず、溶融紡糸により得られた弾性フィラメント13の固化前に、該弾性フィラメント13を伸長性シート11,12に融着させるので、伸長性シート11,12のうち、弾性フィラメント13の周囲に存在する部位のみが該弾性フィラメント13と接合し、それよりも離れた位置にある部位は、伸長性シート11,12の風合いを維持したままになっているので、伸縮シート10の風合いが良好に保たれるという利点がある。この場合、伸長性シート11,12と弾性フィラメント13とを接合させる前に、補助的な接合手段として接着剤を塗布することもできる。あるいは、伸長性シート11,12と弾性フィラメント13とを接合させた後に、補助的な接合手段として、熱処理(スチームジェット、ヒートエンボス)などを行うこともできる。尤も、これらの補助的な接合手段は、得られる伸縮シート10の風合いを損なったり、弾性フィラメント13にダメージを与えたりする場合がある。したがって、弾性フィラメント13をその溶融熱で伸長性シート11,12と融着することが好ましい。
【0032】
伸縮シート10は、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に伸縮可能になっている。伸縮シート10の伸縮性は、弾性フィラメント13の弾性に起因して発現する。伸縮シート10を、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に引き伸ばすと、弾性フィラメント13並びに伸長性シート11,12が伸長する。そして伸縮シート10の引き伸ばしを解除すると、弾性フィラメント13が収縮し、その収縮に連れて伸長性シート11,12が引き伸ばし前の状態に復帰する。
【0033】
本実施形態の伸縮シート10においては、弾性フィラメント13と直交した状態で結合している他の弾性フィラメントは存在していない。したがって伸縮シート10を、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に引き伸ばしても、該伸縮シート10が幅縮みをほとんど起こさずに伸長する。つまり、伸縮シート10はその引き伸ばし状態において、その長手方向にわたり幅がほぼ一様になっている。その結果、伸縮シート10を、その伸長状態で搬送させてこれを加工するときのハンドリング性が良好になる。また、伸縮シート10を例えば使い捨ておむつの裏面シートとして用いた場合、おむつの着用中にずれ落ちが起こったり、皺が寄ったりすることが効果的に防止される。また、おむつの構成と使用者の動きを考えると、幅方向に不均一な伸長が起こるが、その際にも幅縮みはほとんど起きず、おむつがずれたり、シワが寄ったりすることが効果的に防止される。この観点から、伸縮シート10は、これを1.5倍に伸長したときの幅縮みの割合が、伸長前の幅の1%〜10%、特に1%〜5%であることが好ましい。幅縮みは(1−伸長後の幅÷伸長前の幅)×100として求めることができる。伸長後の幅は次のように測定する。サンプルを、その長さ方向が概ね流れ方向に沿うように(角度差15度以内)幅50mmにて切り出す。長さは150mm超とする。サンプルの幅を50mmに保った状態で、サンプルの長手方向両端部を、把持間隔150mmで把持する。このとき、サンプルがその長手方向にたるまず、かつ伸長しないように注意する。この状態から、把持間隔を1.5倍まで伸長させたときの、サンプルの長さ方向の中央部の幅を測定し、その値を伸長後の幅とする。
【0034】
伸長性シート11,12との間に挟持されている機能性材料30は、伸縮シート10に各種の機能を付与するために用いられるものである。機能性材料30の種類は、伸縮シート10の具体的な用途に応じて適切に選択できる。伸縮シート10に例えば吸水性を付与したい場合には、機能性材料30として高吸収性ポリマー等の吸水性材料を用いることができる。消臭性を付与したい場合には、消臭剤を用いることができる。伸縮シート10を賦香したい場合には、機能性材料30として香料を用いることができる。伸縮シート10を伸縮性発熱体として用いたい場合には、機能性材料30として被酸化性金属を用いることができる。
【0035】
機能性材料30は、2枚のシート11,12間に存在している。伸縮シート10の製造条件によっては、一部の機能性材料30が弾性フィラメント13に付着していることもある。伸縮シート10に含まれる機能性材料30の量は、伸縮シート10の具体的な用途や機能性材料30の種類に応じ適宜調整できる。伸縮シート10に含まれる機能性材料30の量が比較的多い場合には、図1に示すように、伸長性シート11,12が、隣り合う2本の弾性フィラメント13の間で隆起して、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に延びる多数の畝部10aを形成することがある。
【0036】
先に述べたとおり、機能性材料30は、シート11及び/又はシート12と接合状態になっていてもよく、あるいはシート11及びシート12と非接合状態になっていてもよい。接合状態になっていることで、伸縮シート10の使用時に機能性材料30の移動に起因する偏りが起こりにくくなる。尤も、機能性材料30の使用量が多くない場合には、機能性材料30が伸長性シート11,12の構成繊維間に入り込んで担持されやすいので(シート11,12が繊維シートである場合)、シート11,12と非接合状態になっていても、その偏り等は起こりづらい。また、吸収性ポリマーを用いた場合は帯状に分布しているため、吸水時に膨潤阻害を起こしにくく、液が接した場合の表面積が大きいため吸収速度も速いものとなる。さらに、加圧下においても吸収性ポリマーが横方向に膨張できるため、薄くても吸収性能の高いものとなる。
【0037】
機能性材料30としては様々な形態のものを用いることができる。例えば粒子、塗布物、繊維、又はこれらの組み合わせ等の形態とすることができる。機能性材料30をどのような形態で用いるかは、伸縮シート10の具体的な用途に応じて適宜選択すればよい。
【0038】
伸長性シート11,12が繊維シートである場合、シート11,12を構成する繊維の平均繊維間距離は、機能性材料が粒子の場合、好ましくは(平均粒直径−σ)以下、更に好ましくは0.5×(平均粒子直径−σ)以下である。σは粒子の標準偏差値である。平均粒子径は針状の場合、短軸と長軸の平均として求められる。平均繊維間距離は次式によって計算される。
【0039】
【数1】

【0040】
前記の平均繊維間距離の計算においては、ウエブの構成繊維はその断面形状によらず円形であるものとみなす。異形断面形状の場合は、長軸と短軸の平均値を繊維の直径とする。Y字やC字形状の場合はその外接円を繊維の直径とする。平均繊維間距離を、好ましくは10〜400μm、更に好ましくは30〜100μmとすることで機能性材料の脱落を効果的に防止することができる。また、機能性材料の平均坪量が好ましくは1〜500g/m2、更に好ましくは4〜200g/m2であると、伸長性シート11,12が薄くても、十分な保持機能を発揮することが出来る。
【0041】
図2(a)及び(b)には、本発明の一実施形態の伸縮シート10における弾性フィラメント13の延びる方向に沿う縦断面図が示されている。図2(a)及び(b)に示した実施形態は、伸縮シート10の製造工程のうちの弾性発現処理工程において、歯溝延伸を用いた場合に顕著に発現する形態である。図2(a)は、自然状態(弛緩状態)における伸縮シート10の縦断面図であり、図2(b)は、伸長状態における伸縮シート10の縦断面図である。これらの図は、シート11として不織布を用いた場合の伸縮シート10の状態を示している。自然状態においては、伸縮シート10には、一方の面及び他方の面のそれぞれに、同一方向(弾性フィラメント13の延びる方向と直交する方向)に延びる微小な凸部及び凹部が交互に形成されている。一方の面における凸部及び凹部の位置には、他方の面における凹部及び凸部が位置している。詳細には、凸部に対応する頂部14'及び凹部に対応する谷部14"が交互に配列した波形形状になっている。頂部14'と谷部14"とは稜線部15'を介して連なっている。稜線部15'の厚みに対して、頂部14'及び谷部14"の厚みは若干小さくなっており、稜線部15'よりも光を透過させやすくなっている。伸縮シート10を平面視したとき、頂部14'、稜線部15'及び谷部14"は、該伸縮シート10の伸長方向と直交する方向へ延びている。したがって伸縮シート10には、その自然状態において、光を透過させやすい稜線部15'と、それよりも光を透過させにくい頂部14'及び谷部14"に起因する横縞模様がうっすらと現れる。この横縞模様は、後述する弾性発現処理等の条件によって一層顕著になる場合がある。
【0042】
すなわち、図2(b)に示すように、伸長状態の伸縮シート10においては、弾性フィラメント13の延びる方向に沿って、高坪量部分14と低坪量部分15とが交互に配列している。各部分14,15は、弾性フィラメント13の延びる方向と直交する方向にそれぞれ帯状に延びている。高坪量部分14と低坪量部分15とは、一定の周期で交互に配列している。高坪量部分14については、伸縮シート10の上側に突出しているものと、伸縮シート10の下側に突出しているものとが交互に配置されている。伸縮シート10の上側に突出している高坪量部分14は、図2(a)に示す自然状態の伸縮シート10における頂部14'に由来している。一方、伸縮シート10の下側に突出している高坪量部分14は、図2(a)に示す自然状態の伸縮シート10における谷部14"に由来している。また、低坪量部分15は図2(a)に示す自然状態の伸縮シート10における稜線部15'に由来している。高坪量部分14と低坪量部分15とでは、それらの坪量差に起因して光の透過の程度に差がある。その結果、伸縮シート10は、弾性フィラメント13の延びる方向と直交する方向に延びる横縞模様を呈するようになり、意匠性が高くなる。特に、先に述べたとおり、伸縮シート10は弾性フィラメント13に起因する縞模様も呈するので、伸縮シート10は、この縞模様と、高坪量部分14及び低坪量部分15に起因する縞模様が組み合わされた格子状の模様も呈することになり、意匠性が一層高くなる。
【0043】
高坪量部分14は、低坪量部分15に比較して坪量が大きくかつ厚みも大きくなっている。それに起因して、高坪量部分14と低坪量部分15とでは光の透過の程度が相違し、その相違に起因して縞模様が呈される。各高坪量部分14は互いに実質的に等幅であり、同様に各低坪量部分15も互いに実質的に等幅である。
【0044】
高坪量部分14の厚みは、0.3〜10mm、特に0.5〜1mmであることが好ましい。低坪量部分15の厚みは、伸縮特性及び通気性の観点から0.1〜3mm、特に0.2〜0.6mmであることが好ましい。厚みの測定は、伸縮シート10を20±2℃、65±5%RHの環境下に無荷重にて、2日以上放置した後、次の方法にて求める。先ず伸縮シート10を1.5倍に伸長方向へ伸ばした状態にて、0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟む。断面をマイクロスコープにより50〜200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求め、三視野の厚みの平均値として求める。高坪量部分14及び低坪量部分15は、後述する製造方法に従い伸縮シート10を製造することで容易に形成される。
【0045】
次に、伸縮シート10を構成する伸長性シート11,12、弾性フィラメント13及び機能性材料30の構成材料について説明する。伸長性シート11,12は、非伸縮性のフィルム材料や繊維材料からなる。なお本実施形態においては、伸長性シート12として、以下に詳述する伸長性シート11と同様のものを用いることができる。この場合、伸長性シート12は、伸長性シート11と同種又は異種のものとすることができる。したがって、伸長性シート12に関しては、以下に述べる伸長性シート11に関する説明をもって、伸長性シート12の説明に代えることとする。なお、ここで言う同種とは、製造プロセス、構成樹脂の種類、厚みや坪量等がすべて同じであるシートどうしを意味する。これらのうちの少なくとも一つが異なる場合には異種のシートであるという。
【0046】
伸長性シート11としては、上述のとおりフィルム材料や繊維材料(不織布や紙)を用いることができる。伸長性シート11には、実質的に規則的な破れや破壊を生じさせてもよい。このようにすることで、伸縮シート10を例えば吸収性物品の表面シートとして用いた場合に、この破れによる穴から吸水することが可能となる。実質的に規則的な破れや破壊は、例えば噛み込み延伸による貼り合わせ後の後加工によって形成することができる。また、伸長性シート11として薄葉紙を用いた伸縮シート10を吸収性物品の吸収体に適用した場合には、この破れや破壊が導水口となり吸収速度の高い吸収性物品が得られる。これらの場合、機能性材料30は接着剤等により担持させることが好ましい。
【0047】
伸長性シート11がフィルム材料からなる場合、該フィルム材料は非透水性又は透水性のものであることが好ましい。また、該フィルム材料は透湿性又は非透湿性のものであることも好ましい。特に好ましいフィルム材料は、非透水性でかつ透湿性を有するフィルム(以下、非伸縮性透湿フィルムとも言う。)である。この非伸縮性透湿フィルムは、例えば熱可塑性樹脂に、該樹脂と相溶性のない物質を練り込んで得られた樹脂組成物を、フィルム状に溶融成形し、得られたフィルムを一軸又は二軸延伸して多孔質となしたものである。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン及びオレフィン系コポリマー等のポリオレフィン類を用いることができる。熱可塑性樹脂と相溶性のない物質としては、例えば炭酸カルシウム、石膏、硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、水和けい酸、無水ケイ酸、ソーダ灰、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、各種セメント、火山灰、シラス、酸化チタン、酸化鉄及びカーボンブラックのような無機充填剤、種々の金属粉、その他の無機物及び無機物を主体とする有機金属塩等が挙げられる。また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びポリアクリル酸ソーダ等の熱硬化性樹脂、あるいは融解温度が前記の熱可塑性樹脂の成形温度よりも高い樹脂のようなポリマーが挙げられる。これらの物質は50μm以下、好ましくは0.05〜30μmの範囲、特に0.1〜5μm程度の平均粒径を有する粉粒体として用いることが望ましい。前記熱可塑性樹脂と前記の物質との配合割合は、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して前記の物質が好ましくは50〜400重量部、更に好ましくは60〜300重量部である。
【0048】
伸長性シート11が、透湿性を有するフィルム材料である場合、その透湿度(JIS Z0208に準じ、30℃90%RHにて測定)は、0.4〜6g/(100cm2・hr)、特に0.8〜4g/(100cm2・hr)であることが好ましい。また、その耐水圧(JIS L1092)は、0.5m以上、特に2m以上であることが好ましい。更に、透湿性を有するフィルム材料からなるシート11は、その透湿度及び耐水圧が上述の範囲内にあることを条件として、坪量が5〜100g/m、特に10〜30g/mであることが好ましい。
【0049】
伸長性シート11が高伸長性のフィルムである場合、このフィルムに用いるための元のフィルムは、未延伸のもの又は低延伸のものが好ましい。そのような未延伸又は低延伸のフィルムを、好ましくは1.0〜3倍、更に好ましくは1.0〜1.5倍の倍率で延伸することが好ましい。これにより、高強度でありながら高伸度の伸長性シート11が得られる。また、後加工による延伸時に破れなどが発生しにくくなる。透湿性フィルムの場合には、ピンホールの発生が少なく、かつ高透湿なものが得られる。
【0050】
伸長性シート11は薄葉紙でもあり得る。薄葉紙は天然紙、合成紙、吸収性物品の吸収体等に用いられる台紙などを用いることができる。伸長性シート11として薄葉紙を用いた場合の伸縮シート10は、吸水時の瞬間吸収の補助剤として、また拡散紙として有用である。薄葉紙として、消臭や抗菌などの効果を有する機能紙を用いることもできる。伸長性シート11が高伸長性の薄葉紙である場合、そのような薄葉紙はクレープ加工したものであることが好ましい。その場合のクレープ率は好ましくは10%以上、更に好ましくは30%以上である。
【0051】
伸長シート11は不織布でもあり得る。不織布を構成する繊維としては、実質的に非弾性の繊維が用いられる。その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。不織布を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。不織布は、連続フィラメント又は短繊維の不織布であり得る。特に、伸縮シート10を厚みのある嵩高なものとする観点からは、不織布は、短繊維の不織布であることが好ましい。伸縮シート10を、肌に接触する部材として用いる場合には、肌の接触する側に風合いの良い短繊維不織布を用い、その反対面に強度の高い連続フィラメントの不織布を用いてもよい。
【0052】
不織布は、その構成繊維が低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなることが好ましい。その場合には、少なくとも低融点成分の熱融着により、その構成繊維どうしが繊維交点で接合される。低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる芯鞘型の複合繊維としては、芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが好ましい。
【0053】
不織布の厚みは、好ましくは0.05〜5mm、更に好ましくは0.1〜1.0mm、一層好ましくは0.15〜0.5mmである。厚みの測定は、0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟み伸縮シート10の断面をマイクロスコープにより50〜200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求め、3視野の厚みの平均値として求めることができる。伸縮シート10全体の厚みは平板間の距離を測ることで求められる。不織布の坪量は、風合い、厚み及び意匠性等の観点から、それぞれ3〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。
【0054】
不織布からなる伸長性シート11は、風合い、べたつき等の観点から、実質的に非弾性の繊維からなることが好ましい。不織布中の非弾性繊維の割合は、70重量%以上、特に90重量%以上、とりわけ100重量%が好ましい。また、実質的に非弾性の繊維は、非弾性樹脂中に少量の弾性樹脂を含んでいてもよい。この場合の非弾性樹脂の割合は、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%、一層好ましくは100重量%である。
【0055】
不織布からなる伸長性シート11が高伸長性の不織布である場合、特に非弾性の繊維として、その長さ方向において繊維の太さが一様になっていないものを用いることが好ましい(以下、この繊維を不定径繊維という)。つまり不定径繊維は、その長さ方向に沿ってみたときに、繊維断面積(直径)が大きい部分もあれば、小さい部分もある。不定径繊維においては、その直径(断面積)が、最も小さい部分から最も大きい部分まで連続的に変化していてもよい。或いは、未延伸糸の延伸工程で観察されるネッキング現象のように、繊維の直径(断面積)が略ステップ状に変化していてもよい。繊維の直径(断面積)が略ステップ状に変化した状態になっている非弾性繊維の一例を図3に示す。
【0056】
該非弾性繊維は、一定の繊維径を有する高伸度(例えば繊維の最大伸度が80〜800%、特に120〜650%)の繊維を原料とすることが、最大強度の高い伸縮シート10が得られる点で好ましい。繊維の伸度は、JIS L−1015に準拠し、測定環境温湿度20±2℃、65±5%RH、引張試験機のつかみ間隔20mm、引張速度20mm/minの条件での測定を基準とする。なお、既に製造された不織布から繊維を採取して伸度を測定するときを始めとして、つかみ間隔を20mmにできない場合、つまり測定する繊維の長さが20mmに満たない場合には、つかみ間隔を10mm又は5mmに設定して測定する。
【0057】
前記の高伸度の繊維は、低延伸の非弾性繊維であることが好ましい。低延伸の非弾性繊維を原料として、後述する製造方法に従い本実施形態の伸縮シート10を製造すると、その弾性発現処理において低延伸の繊維が引き伸ばされることで、繊維に細い部分が生じて後述の不定径繊維が形成される。その結果、本実施形態の伸縮シート10の弾性発現処理において、不織布が構造的に伸ばされ易い形に変更させることになるが、繊維が伸ばされることで、不織布構造全体でも、伸ばされ易くなり、不定形繊維間の接合点や、伸長性シート11と弾性フィラメント13との接合点が破壊されることを最小限にすることが可能になり、伸縮性能を維持しつつ伸縮シート10の強度を高くすることができる。つまり、高伸度と高強度とが両立した伸縮シート10が得られる。また、弾性発現処理において、前記不定径繊維間の接合も破壊されにくくなることは、不織布が毛羽立ち様になりにくくなる効果もある。このことは、本実施形態の伸縮シート10の外観を向上させる点から有利である。
【0058】
更に、前記の低延伸の繊維を原料とすることで、繊維の引き伸ばしの前に比較して、細い繊維の本数(長さ)が実質的に増加する。それによって本実施形態の伸縮シート10の光不透過性が向上する。
【0059】
その上、不定径繊維が密に存在している領域が、不織布上で周期的に変化していると、該不織布の表面が細かに波打った状態になり、その肌触りが良好になるという付加的な効果もある。この場合、変化の周期、つまり不織布中の太い部分とそれと隣り合う太い部分との距離は、0.5mm〜10mm、特に2〜5mmであることが好ましい。この周期は、不織布の顕微鏡観察から測定できる。不定形繊維の径の測定は、以下の(1)〜(5)の手順で測定される。
【0060】
(1)伸縮シート10の表面における5mm×5mm以上の領域から伸長性シート11をサンプリングする。このときサンプルは、伸長性シート11を、弾性フィラメント13から切り離して採取してもよく、あるいは伸縮シート10全体を採取してもよい。(2)採取されたサンプルを、SEMの観察用試料台に固定する。このとき、サンプルを観察しやすいように、サンプルの構造を破壊しない程度にサンプルを引き伸ばした状態で(不織布の弛みが取れる程度まで)、サンプルを両面テープで試料台に固定してもよい。このときの引き伸ばし量は、例えば伸縮シート10を製造する工程において(弾性発現処理)工程を用いる場合は、延伸工程で伸縮シート10の前駆体を延伸した延伸倍率以下程度とする。
(3)SEM観察は倍率200で行う。1箇所の視野面積は0.4mm×0.4mm程度以上とし、5箇所を観察する。
(4)無作為に繊維を抽出し、径を0.1μm単位で繊維軸方向に10μmおきに20箇所以上測定する(繊維同士の融着点や破壊している部分は、測定に含めない。)。繊維は各視野4本以上測定し、5視野について、計20本について測定を行う。
(5)これらの値から10本のそれぞれの繊維の最大径と最小径を抽出する。1本の繊維の最大径と最小径の差が1μmあり、繊維軸方向の位置と径の変化の関係をグラフ化した場合、極大位置又は極小位置が2以上あるものを不定形繊維と呼ぶ。
【0061】
以上の各効果を一層顕著なものとする観点から、不定径繊維はその太さが、最も細い部分において好ましくは2〜15μm、更に好ましくは5〜12μmであり、最も太い部分において好ましくは10〜40μm、更に好ましくは12〜30μmである。不定径繊維の最大径と最小径の差は3μm以上、特に5μm以上、とりわけ10μm以上が好ましい。また、「最大繊維径/最小繊維径」で定義される繊維径比の値は、1〜15であることが好ましく、1.2〜10であることが更に好ましく、2〜5であることが一層好ましい。
【0062】
不定径繊維はその繊維間融着点強度が、該不定径繊維の100%伸長時強度よりも高いものであることが好ましい。これによって、伸縮シート10を製造するときの弾性発現処理工程において、弾性発現処理前の伸縮シート10を引き伸ばし弾性発現処理加工する際に、弾性発現処理前の伸長性シート11の繊維どうしの融着点の破壊が起こりにくくなり、弾性発現処理前の伸縮シート10の強度に比べて、前記弾性発現処理工程を経て得られた伸縮シート10の強度が低下しづらくなる点から好ましい。融着点強度は、本出願人の先の出願に係る特開2004−218183号公報の段落〔0040〕の記載に従い測定される。100%伸長時強度は、引張試験機を用い、チャック間距離20mm、引張速度20mm/minの条件で測定される。
【0063】
上述した低延伸の非弾性繊維とは、紡糸後に低延伸倍率で延伸された繊維及び延伸されていない繊維、即ち未延伸繊維の両方を包含する。低延伸の繊維としてはその伸度が上述のとおり80〜800%、特に120〜650%の高いものを用いることが好ましい。この範囲の伸度を有する低延伸の繊維を用いることで、該繊維が後述する図4に示す延伸装置22で首尾良く引き伸ばされて、不定径繊維が容易に形成される。低延伸の繊維の繊維径は10〜35μm、特に12〜30μmであることが好ましい。
【0064】
先に述べたとおり、不定径繊維は、一定の繊維径を有する低延伸の繊維を原料とすることが好ましい。この場合、低延伸の繊維は、単一の原料からなる繊維でもよく、あるいは2種以上の原料を用いた複合繊維、例えば芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維であってもよい。不定径繊維どうしの接合のさせやすさや、伸長性シート11と弾性フィラメント13との接合のさせやすさを考慮すると、複合繊維を用いることが好ましい。芯鞘型の複合繊維の場合、芯がポリエステル(PETやPBT)、ポリプロピレン(PP)、鞘が低融点ポリエステル(PETやPBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、弾性フィラメント13がポリオレフィン系エラストマーを含む場合、弾性フィラメント13と伸長性シート11の構成繊維との熱融着が強くなり、層剥離が起こりにくい点で好ましい。
【0065】
不定径繊維は、ステープルファイバのような短繊維でもよく、あるいは連続フィラメントのような長繊維でもよい。後述する伸縮シート10の好適な製造方法に鑑みると、短繊維を用いることが好ましい。また、不定径繊維は親水性でも撥水性でも良い。
【0066】
不織布からなる伸長性シート11は、不定径繊維のみから構成されていてもよく、あるいは不定径繊維に加えて、他の一定径の非弾性繊維が含まれていてもよい。他の非弾性繊維としては、先に述べたものが挙げられる。不織布に、不定径繊維に加えて他の一定径の非弾性繊維が含まれている場合、他の非弾性繊維の配合量は1〜30重量%、特に5〜20重量%であることが好ましい。
【0067】
弾性フィラメント13は、前述のとおり、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどの弾性樹脂を原料とするものである。特に弾性樹脂に熱可塑性エラストマーを原料として用いると、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られたフィラメントは熱融着させやすいので、本実施形態の伸縮シートに好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(エチレン系のα-オレフィンエラストマー、エチレン・ブテン・オクテン等を共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの樹脂からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることもできる。特にスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はそれらを組み合わせて用いることが、弾性フィラメント13の成形性、伸縮特性、コストの面で好ましい。
【0068】
機能性材料30としては、該材料30が例えば粒子である場合には、高吸収性ポリマー等のヒドロゲルの粒子、消臭剤や抗菌剤の粒子(活性炭やゼオライト等)、香料を含む粒子(マイクロカプセル等)、被酸化性金属(鉄粉等)の粒子等を用いることができる。これらの粒子の粒径は、機能性材料30の種類や、伸縮シート10の具体的な用途に応じて適宜選択できる。機能性材料30が繊維である場合には、例えばパルプ繊維、セルロース繊維、繊維状活性炭、繊維状金属、コイル状のクッション性繊維等を用いることができる。機能性材料が塗布物である場合には、例えばグラビアインキやフレキソインキ等の機能性インキ、エマルジョン液、または、機能性材料をバインダーにより分散させた液を塗布することが出来る。バインダーにはポリビニルアセテート樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ニトロセルロース、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル酸ポリマー、塩化ビニル共重合体、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。バインダーに用いられる水性樹脂として合成樹脂(ポリアクリル酸系、ポリアクリルアマイド系、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、尿素系、メラミン系、アルキッド系、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルオキサリドン、ポリビニルスルホン酸)、半合成樹脂(アルギン酸プロピレングリコール塩、低メトキシペクチン、デキストラン、ザンサンガム、α化でん粉、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース(Na塩)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)、天然樹脂(寒天、アルギン酸塩、カラギナン、ファーセルラン、アラビアガム、グアーガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、ラーチガム、ローカストビーンガム、グアシードガム、サイリュームシードガム、キンスシードガム、タマリンドシードガム、小麦、米、コーン、ワキシー・メイズ、ソーガム、ワキシー・ソーガム、馬鈴薯、クズ、タピオカ、こんにゃく、ゼラチン、にかわ、カゼイン、アルプミン、グルテン、大豆たん白)などを用いることができる。この中でポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸ソーダを用いることが好ましい。
【0069】
次に、本実施形態の伸縮シート10の好ましい製造方法を、図4を参照しながら説明する。本製造方法においては、紡糸ノズル16から紡出された溶融状態の多数の弾性フィラメント13を所定速度で引き取って延伸しつつ、該弾性フィラメント13の固化前に、該弾性フィラメント13が互いに交差せず一方向に配列するように該弾性フィラメント13を伸長性シート11,12に融着させるとともに、伸長性シート11,12との間に機能性材料30を供給し、該弾性フィラメント13が融着し、かつ機能性材料30が伸長性シート11,12との間に挟持されてなる複合体19を得、該複合体19を該弾性フィラメント13の延びる方向に沿って弾性発現処理して該複合体19に伸縮性を付与する。
【0070】
紡糸ノズル16は、紡糸ヘッド17に設けられている。紡糸ヘッド17は、押出機に接続されている。ギアポンプを介して紡糸ヘッド17へ樹脂を供給することもできる。該押出機によって溶融混練された弾性樹脂は、紡糸ヘッド17に供給される。紡糸ヘッド17には、多数の紡糸ノズル16が直線状に一列に配置されている。紡糸ノズル16は、伸長性シート11,12の幅方向に沿って配置されている。隣り合う紡糸ノズル16の間隔は、目的とする伸縮シート10における弾性フィラメント13の間隔に相当する。紡糸ノズル16は通常円形であり、その直径は弾性フィラメント13の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。この観点から、紡糸ノズル16の直径は0.1〜2mm、特に0.2〜0.6mmであることが好ましい。伸長性シート11,12との接合強度を高める目的、弾性フィラメント13の紡糸性を上げる目的、及び伸縮シート10の伸縮特性を向上させる目的で、弾性フィラメント13を複合の形態(サイドバイサイド、芯鞘、海島構造)とすることもできる。具体的にはPP系のエラストマー樹脂とスチレン系のエラストマー樹脂とを組み合わせることが好ましい。
【0071】
紡出された溶融状態の弾性フィラメント13は、それぞれ原反から互いに同速度で繰り出された伸長性シート11,12と合流し、シート11,12との間に挟持されて所定速度で引き取られる。合流時に、機能性材料の供給装置23から機能性材料30が合流部に供給される。供給装置23としては、機能性材料30の種類に応じて適切な装置が用いられる。機能性材料30が例えば粒子である場合には、供給装置23として、種々の散布装置を用いることができ、スクリューなどの切り出し装置より供給された機能性材料30を気流によって搬送し、チャンバーなどより散布する方法、振盪ふるいやコンベアより機能性材料30を散布する方法などが挙げられる。補助的な手段として、機能性材料30を帯電させながら散布する方法、超音波により振動を加えながら散布する方法、気流混合により吹き付ける方法が用いられる。機能性材料30の搬送には空気、水蒸気、圧縮空気、熱風などを用いることができる。
【0072】
機能性材料30が例えば繊維である場合には、供給装置23として、パルプシートの解繊に用いられる解繊機や短繊維不織布用に用いられる解繊機やカード機が用いられる。繊維は気流やコンベアなどにより搬送される。機能性材料30が例えば塗布物である場合には、供給装置23として、グラビア印刷、フレキソ印刷、アンカーコート装置、スプレー装置、ダイコート、(2本、3本、リバース)ロールコーター、コンマコーター、ディッピング、ホットメルト塗布装置(コーティング、スパイラル、ビード、カーテン、スプレー、オメガ、サミット、デュラウイーブ)が用いられる。乾燥が必要な場合には熱風、冷風、赤外線、UV線、マイクロ波、直接的な熱伝導(ヤンキードライヤーなど)が用いられる。粒子、繊維、塗布それぞれに用いられる供給装置は組み合わせて使用することもできる。粒子と繊維を混合して使用することもできる。
【0073】
機能性材料30はシート11及び/又はシート12へ合流する方法として、機能性材料30をシート11及び/又はシート12状に散布、積層又は塗布した後、ラミネートする方法、ラミネートの接合部に直接供給する方法、ラミネート後に供給する方法がある。好ましくはシート11及び/又はシート12上に散布、積層又は塗布した後、ラミネートすることが加工中での機能性材料30のこぼれが少ない点で好ましい。散布、積層又は塗布する面は限定されないが、機能性材料30のこぼれ防止の点で、シート11及び/又はシート12の内面(弾性フィラメント側)とすることが好ましい。
【0074】
機能性材料30を供給するときには、該材料30をシート11及び/又はシート12と接合するための接着剤等を該材料30とともに供給装置23から供給してもよい。あるいは、供給装置23とは別の装置を用い、その別の装置から供給してもよい。
【0075】
機能性材料30を伸長性シート11,12に担持させるため、補助的な手段として水流交絡、ニードルパンチなどの機械的交絡や、熱風や蒸気、熱エンボスを用いることができる。機能性材料30が漏れ落ちることを防止する観点から、機能性材料30に接着剤を塗布することも好ましい。機能性材料30が吸水性を示す場合は霧状の水により吸着させることが好ましい。これらは機能性材料30と、伸長性シート11,12や弾性フィラメント13との絡まりや付着、融着を促すものである。
【0076】
弾性フィラメント13が伸長性シート11,12と合流することで引き取られるときの引き取り速度は、伸長性シート11,12の繰り出し速度と一致している。弾性フィラメント13の引き取り速度は、該弾性フィラメント13の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。延伸によって弾性フィラメント13に生じる張力は、該弾性フィラメント13を伸長性シート11,12と貼り合わせるときの風や静電気に起因する該弾性フィラメント13の乱れを防止する。それによって弾性フィラメントどうしを交差させずに一方向へ配列させることができる。これらの観点から、弾性フィラメント13の引き取り速度は、紡糸ノズル孔内の樹脂吐出速度に対し、その延伸倍率が1.1〜400倍、特に4〜100倍、更に10〜80倍となるように調整されることが好ましい。
【0077】
弾性フィラメント13は、その固化前に、即ち融着可能な状態で伸長性シート11,12と合流する。その結果、弾性フィラメント13は、伸長性シート11,12に挟持された状態で、シート11,12に融着する。つまり、固化前の弾性フィラメントを、搬送される伸長性シート11,12に融着させながら弾性フィラメント13は引き取られて延伸される。このとき、機能性材料30の一部が弾性フィラメント13に融着することもある。弾性フィラメント13の融着に際しては伸長性シート11,12には、外部から熱は付与されていない。つまり、融着可能になっている弾性フィラメント13に起因する溶融熱によってのみ、該弾性フィラメント13と伸長性シート11,12とが融着する。その結果、伸長性シート11,12のうち、弾性フィラメント13の周囲に存在する部位のみが該弾性フィラメントと融着し、それよりも離れた位置に存在する部位は融着しない。その結果、伸長性シート11,12に加わる熱は最小限にとどまるので、シート11,12自身が本来的に有する良好な風合いが維持される。それによって、得られる伸縮シート10の風合いが良好になる。
【0078】
紡出された弾性フィラメント13が、伸長性シート11,12と合流するまでの間、該弾性フィラメント13は延伸されて延伸方向に分子が配向する。また直径が小さくなる。分子配向によって、50%伸長時強度の行き/戻り比(ヒステリシス)の小さな弾性フィラメント13が得られる。弾性フィラメント13を十分に延伸させる観点及び弾性フィラメント13の糸切れを防止する観点から、紡出された弾性フィラメント13に所定温度の風(熱風、冷風)を吹き付けて、該弾性フィラメント13の温度を調整してもよい。
【0079】
弾性フィラメント13の延伸は、原料樹脂の溶融状態での延伸(溶融延伸)だけでなく、その冷却過程における軟化状態の延伸(軟化延伸)であってもよい。溶融状態とは、外力を加えたとき樹脂が流動する状態である。樹脂の溶融温度は粘弾性測定による(例えば円形並行平板間に挟んだ樹脂に回転方向の振動歪を加えて測定される)Tanδのピーク温度として測定される。弾性樹脂の時に糸切れが起こらないようにするために、延伸区間を長く確保することがよい。また、同様に糸切れが起こらないようにするために弾性樹脂の溶融温度は130〜300℃が好ましい。更に、弾性樹脂の耐熱性の観点から、溶融温度は220℃以下が好ましい。弾性フィラメント13の成形温度(ダイスの温度)は樹脂の流動性を上げて成形性を良好にするために原料樹脂の溶融温度の+50℃以上が好ましく、耐熱性のため+110℃以下が好ましい。軟化温度は、シート状にした弾性樹脂の測定試料の粘弾性特性におけるTg温度として測定される。軟化温度から溶融温度までの範囲を軟化状態という。また、軟化温度より低い温度の状態を固化状態という。軟化温度は、伸縮シート10の保存時における弾性樹脂の結晶の成長や、体温による伸縮シート10の伸縮特性の低下の観点から、60℃以上が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。
【0080】
弾性フィラメント13と伸長性シート11,12とを接合させるときの弾性フィラメント13の温度は、繊維融着を確実にするために100℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上である。また弾性フィラメント13の形状を保持して伸縮特性の良好な伸縮シート10を得る観点から、弾性フィラメントの温度は180℃以下であることが好ましい。より好ましくは160℃以下である。これらの結果、最適なフィラメント温度は120〜160℃、更に好ましくは140〜160℃の範囲である。接合時の温度は、弾性フィラメント13と接合させるラミネート基材として、弾性フィラメントを構成する弾性樹脂の融点と異なる融点を有する変性ポリエチレンや変性ポリプロピレンなどからなるフィルムを用いて、その接合状態を観察することで測定できる。このとき、弾性フィラメントとラミネート基材が融着していれば、接合温度はラミネート基材の融点以上である。
【0081】
弾性フィラメント13と伸長性シート11,12との接合時には、弾性フィラメント13は実質的に非伸長状態(外力を取り除いたときに縮まない状態)である。また、弾性フィラメント13を伸長性シート11,12と合流させるときには、各弾性フィラメント13が互いに交差せず一方向に配列するようにする。そして、弾性フィラメント13を伸長性シート11,12と合流させてシート11,12との間に弾性フィラメント13を挟持させた状態で、これら三者を一対のニップロール18,18によって挟圧する。挟圧の条件は、得られる伸縮シート10の風合いに影響を及ぼす。挟圧力が大きすぎると弾性フィラメント13が伸長性シート11,12内に食い込みやすくなり、それに起因して得られる伸縮シート10の風合いが低下しやすい。この観点から、ニップロール18,18による挟圧力は、弾性フィラメント13が伸長性シート11,12に接触する程度で足り、過度に高い挟圧力は必要とされない。
【0082】
ニップロール18による挟圧の別の条件として、ニップロール18の温度が挙げられる。本発明者らの検討の結果、ニップロール18を加熱した状態で挟圧を行うよりもむしろ、加熱しないか(つまり成り行きにまかせるか)、又は冷却しながら挟圧を行う方が、風合いの良好な伸縮シート10が得られることが判明した。ニップロール18を冷却する場合には、冷却水等の冷媒を用い、ニップロール18の表面設定温度が10〜50℃になるように温度調節することが好ましい。
【0083】
このようにして伸長性シート11,12との間に弾性フィラメント13及び機能性材料30が挟持された複合体19が得られる。伸長性シート11,12として本来的に伸長性を有するものを用いた場合には、この複合体19が伸縮シート10そのものとなる。一方、伸長性シート11,12として本来的に伸長性を有しないものを用いた場合には、伸長性シート11,12を含む複合体19を、弾性フィラメント13の延びる方向に沿って弾性発現処理して、該複合体19に伸縮性を付与する操作を行う。弾性発現処理の具体的な手段としては、先に述べたとおり、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによる噛み込み延伸、テンターによる引張延伸などが挙げられる。以下の説明においては、これらの手段のうち特に好ましい手段である噛み込み延伸について説明する。噛み込み延伸においては、それぞれ歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール20,21を備えた弾性発現処理装置22を用い、複合体19をその搬送方向、即ち弾性フィラメント13の延びる方向に沿って弾性発現処理させる。
【0084】
弾性発現処理装置22は、一方又は双方の歯溝ロール20,21の枢支部を上下に変位させる公知の昇降機構(図示せず)を有し、歯溝ロール20,21間の間隔が調節可能になっている。本製造方法においては、各歯溝ロール20,21を、一方の歯溝ロール20の歯が他方の歯溝ロール21の歯間に遊挿され、他方の歯溝ロール21の歯が一方の歯溝ロール20の歯間に遊挿されるように組み合わせ、その状態の両歯溝ロール20,21間に、複合体19を挿入してこれを弾性発現処理させる。
【0085】
弾性発現処理装置22においては、一対の歯溝ロール20,21の両方が駆動源によって駆動するようになっていてもよく(共回りロール)、一方の歯溝ロール20又は21のみが駆動源によって駆動するようになっていてもよい(連れ回りロール)が、本製造方法においては、下側の歯溝ロール21のみが駆動源によって駆動し、上側の歯溝ロール20は駆動源に接続されておらず、歯溝ロール21の回転に伴って従動する(連れ回る)ようになっている。連れ回りロールを用いることは、弾性発現処理加工後において伸縮シート10に高坪量部分14及び低坪量部分15がくっきりと縞模様に現れやすく、伸縮シート10の意匠性が向上する点で好ましい。歯溝ロール20,21の歯形としては、一般的なインボリュート歯形、サイクロイド歯形が用いられるが、これらの歯幅を細くし、バックラッシ(噛み合った1対のロールの、お互いの歯と歯の隙間)を大きくしたものが好ましい。バックラッシの値としては好ましくは0.3mm〜3mm、このましくは0.5mm〜1.5mmである。
【0086】
図5には、複合体19が弾性発現処理される状態が模式的に示されている。複合体19が歯溝ロール20,21間を通過する際には、複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、ほとんど延伸されない。これに対し、駆動ロールである歯溝ロール21の歯24の歯面によって、従動ロールである歯溝ロール20の歯23の歯面に向けて押圧される領域(P2−P1間)においては、両歯20,21によって大きく延伸される。また、歯溝ロール21の歯24の先端部によって、歯溝ロール20の歯23から引き離される領域(P4−P3間)においては、前記領域(P2−P1間)程ではないが、大きく延伸される。
【0087】
また複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24の先端部に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、前述のとおりほとんど延伸されないが、歯23,24の先端部によって、その径方向に、つまり複合体19の厚み方向に片押しされるので、厚み方向に薄くなる。ただし領域(P3−P2間)と領域(P1−P4間)とは片押しされる方向が反対向きであるため、薄くなる方向が反対向きとなる。
【0088】
前記の延伸プロセスによって、弾性フィラメント13と伸長性シート11,12との剥離を防止しつつ、複合体19におけるシート11,12を効率的に延伸させ、複合体19に伸縮性を付与することができる。そして、大きく延伸される領域(P2−P1間及びP4−P3間)が低坪量部分15となり、ほとんど延伸されない領域(P3−P2間、P1−P4間)が高坪量部分14となる。
【0089】
特に、シート12に低延伸の繊維が含まれる場合には、上述した(P2−P1)間及び(P4−P3)間において、該繊維が引き伸ばされて細くなりその太さが周期的に変化した不定径繊維が形成される。低延伸の繊維の引き伸ばしは、(P2−P1)間及び(P4−P3)間の距離に応じて変化する。
【0090】
シート11及び/又はシート12が、低延伸の繊維を含む場合、歯溝ロール20,21による引き伸ばし力は、低延伸の繊維の引き伸ばしに主として作用し、伸長性シート11,12と弾性フィラメント13との接合部位には過度の力が加わらない。その結果、該接合部位の破壊や、伸長性シート11,12と弾性フィラメント13との剥離が生じるのを防止しつつ、複合体19を効率的に延伸させることができる。また、この延伸により、図6に示すように、繊維間の接合が破壊されずに伸長性シート11,12が十分に伸長され、それによって伸長性シート11,12が、弾性フィラメント13の自由な伸縮を阻害する程度が大きく低下する。その結果、本製造方法によれば、高強度・高伸縮性であり、また、破れや毛羽立ちの少ない外観の良好な伸縮シート10を効率的に製造することができる。なお図6においては、延伸によって生じた非弾性繊維の太さは便宜的に一様に表されている。
【0091】
上述のとおり、シート11及び/又はシート12に低延伸の繊維が含まれる場合には、該繊維が首尾良く延伸されて、それらの繊維間の接合が延伸によって破壊されないので、弾性発現処理による伸長性シート11,12の強度の低下が極力抑えられる。具体的には、弾性発現処理前の複合体19の引張強度に対する、弾性発現処理後に得られた伸縮シート10の引張強度の比は0.3〜0.99、特に0.5〜0.99、更には0.7〜0.99という1に近い値となる。ここで言う引張強度は、以下に述べる最大強度の測定法に従い測定される。
【0092】
<最大強度の測定>
伸縮シート10の伸縮方向へ200mm、それと直交する方向へ50mmの大きさで矩形の試験片を切り出した。チャック間距離は150mmとした。試験片を伸縮シート10の伸縮方向へ300mm/分の速度で伸長させ、そのときの荷重を測定した。そのときの最大点の荷重を最大強度とした。同様の方法によって、弾性発現処理前の複合体19についても最大強度を測定した。最大強度は、測定環境を20±2℃、湿度65±5%RHの条件で、好ましくは島津製作所製の引張試験機AG−1kNISを用いて測定される。
【0093】
複合体19が一対の歯溝ロール20,21によって弾性発現処理されることで、目的とする伸縮シート10が得られる。得られた伸縮シート10は、歯溝ロール20,21を通過した後、自身の収縮復元力により速やかにMD方向への延伸状態が解放される。その結果、伸縮シート10は、搬送方向へ長さが概ね復元する。それによって、伸長した状態では高坪量部分14及び低坪量部分15が、弾性フィラメント13の延びる方向に交互に配列するようになる。なお、延伸状態を解放する場合、延伸状態が完全に解放されるようにしてもよく、伸縮性が発現する限度において、ある程度の延伸状態が維持された状態で延伸状態を解放してもよい。
【0094】
前記の弾性発現処理加工によって、伸縮シート10の厚みは、弾性発現処理加工前の複合体19の厚みに対して1.1倍〜4倍、特に1.3倍〜3倍に増すことが好ましい。これによって、シート12の構成繊維が塑性変形して伸びることで繊維が細くなる。これと同時に、シート12が一層嵩高となり、肌触りが良く、クッション性が良好になる。
【0095】
このようにして得られた伸縮シート10は、弾性フィラメント13の延びる方向に沿って50%伸長させ、その状態から25%戻したときの荷重A(以下、25%戻り強度ともいう)と、弾性フィラメント13の延びる方向に沿って25%伸長させたときの荷重B(以下、50%行き強度ともいう)との比(A/B)が50%以上、特に65%以上となることが、十分な伸縮特性の発現の点から好ましい。
【0096】
更に、具体的な用途にもよるが、伸縮シート10は、その全体の坪量が10〜150g/m2、特に25〜60g/m2であることが好ましい。伸縮シート10の厚みに関しては、0.05〜5mm、特に0.5〜2mmであることが好ましい。坪量及び厚みがこの範囲であることによって、伸縮シート10を例えば吸収性物品の構成材料として用いた場合に、該吸収性物品が薄くて軽いものになるので好ましい。伸縮シート10の厚みは、先に述べた伸長性シート11,12の厚みの測定と同様の方法で測定される。
【0097】
本実施形態の伸縮シート10は、機能性材料30の種類や伸長性シート11,12の種類に応じて様々な用途に用いられる。例えば、機能性材料30が高吸収性ポリマーからなり、シート11が高透湿性シート、シート12が高伸長親水性不織布からなる場合には、伸縮シート10を伸縮吸収体として用いることができる。機能性材料30が消臭剤、芳香剤、除菌又は抗菌剤、清掃剤、湿布薬からなり、シート11,12が高伸長撥水性不織布からなる場合には、伸縮シート10を消臭シート、芳香シート、除菌又は抗菌シート、清掃シート、湿布シートとして用いることができる。機能性材料30が発熱体からなり、シート11が透湿性フィルム、シート12が高伸長撥水性不織布からなる場合には、伸縮シート10を伸縮温熱シートとして用いることができる。
【0098】
次に、本発明の第2の実施形態を、図7を参照しながら説明する。これらの実施形態に関し特に説明しない点については、上述した第1の実施形態に関する説明が適宜適用される。また図7において、図1と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0099】
図7に示す伸縮シート10は、第1の実施形態の伸縮シートにおける弾性フィラメント13に代えて、偏平形状をしたフィルムからなる弾性帯状体13Aを用いたものである。なお、同図においては、簡便のため機能性材料は示されていない。本実施形態において機能性材料は、シート11とシート12とが直接対向する部位に挟持されている。
【0100】
弾性帯状体13Aは弾性を有し、かつ透湿性を有しているか又は有していないものである。弾性帯状体13Aが透湿性を有している場合には、伸長性シート11,12の少なくとも一方も透湿性を有していることが好ましい。透湿性を有する弾性帯状体13Aとしては、例えばハード成分とソフト成分からなるブロック共重合ポリエステル樹脂からなる無孔の透湿性弾性フィルム(特開2004−305771号公報参照)が挙げられる。また、例えば、特開平7−70936号公報、特開平6−134000号公報、特公平6−67604号公報、特開平1−141669号公報、特公昭52−21042号公報等に記載の無孔の透湿性ウレタン系エラストマーや、東洋ゴム工業製のソフランパーム(商品名)を用いることができる。更に、例えば特開昭51−111290号公報等に記載の無孔の透湿性エステル系エラストマーや、日本合成化学製のフレクマ(商品名)を用いることもできる。
【0101】
弾性帯状体13Aが透湿性を有する場合、その透湿度(JIS Z0208に準じ、30℃90%RHにて測定)は、0.1〜6g/(100cm2・hr)、特に0.2〜4g/(100cm2・hr)であることが好ましい。また、弾性帯状体13Aは、その接合前の伸度が50〜800%、特に100〜800%であることが、十分な伸縮性を有する伸縮シート10を得る観点から好ましい。弾性帯状体13Aの伸度は、測定環境温湿度20±2℃、65±5%RH、試験片幅10mm、引張試験機のつかみ間隔25mm、試験片を弾性帯状体13Aの伸縮方向へ引張速度20mm/minの条件での測定を基準とする。そのときの最大点の荷重を最大強度とし、最大点となる伸度を求めた。好ましくは島津製作所製の引張試験機AG−1kNISを用いて測定される。弾性帯状体13Aのそのものの坪量は3〜100g/m2、特に5〜20g/m2であることが好ましい。
【0102】
各弾性帯状体13Aは、その延びる方向においてほぼ一定の幅を有している。この幅は、伸縮シート10の具体的な用途に応じ適宜決定することができる。伸縮シート10を、この幅を2〜40mm、特に3〜10mmとすることが好ましい。各弾性帯状体13Aの幅は、伸縮シート10の具体的な用途に応じ、同一としてもよく、あるいは異ならせてもよい。
【0103】
各弾性帯状体13Aは、その延びる方向と直交する方向において離間しており、隣り合う弾性帯状体13Aの間において伸長性シート11,12とが直接当接している。あるいは、弾性帯状体13Aとして、一又は二以上の貫通孔が形成されたものを用い、該貫通孔の位置においてシート11とシート12とを直接させてもよい。いずれの場合においても、隣り合う弾性帯状体13AのピッチPは、伸縮シート10の具体的な用途に応じ適宜決定することができる。伸縮シート10を、例えば吸収性物品の吸収体として用いる場合には、ピッチPを1.5〜100mm、特に2〜20mmとすることが好ましい。ピッチPは、伸縮シート10の具体的な用途に応じ、同一としてもよく、あるいは異ならせてもよい。
【0104】
本実施形態の伸縮シート10は、第1の実施形態において用いた図4に示す装置において、弾性樹脂を紡糸ヘッド17から帯状に押し出すことで製造することができる。
【0105】
本実施形態によれば、通気性などの点で劣るが弾性帯状体がストライプ模様を呈するためデザイン性に優れるという利点がある。
【0106】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば図1に示す実施形態においては、弾性フィラメント13はすべて同径で、等ピッチで配置されていたので、伸縮シート10のどの部分をとっても伸長応力は同じになっていた。しかし、これに代えて、弾性フィラメントの伸長方向における伸長応力が異なる2以上の領域からなるように伸縮シートを構成してもよい。2つ以上の該領域は、該伸長方向に対してほぼ並列配置されている。この場合、伸長応力が異なる各領域間では、隣り合う弾性フィラメントのピッチが異なっているか、及び/又は、弾性フィラメントの直径が異なっている。それによって各領域間での伸長応力を異ならせることができる。伸縮シートの製造時に、2種以上の異なる樹脂を、任意の紡糸ノズルに導入して紡糸を行うことでも、各領域間での伸長応力を異ならせることができる。
【0107】
また、前記の各実施形態において、伸縮シート10に部分的にエンボス加工を行ったり、弾性フィラメント13を部分的にカットしたり部分的に熱シールしたりすることもできる。これらの操作は、伸縮シート10に伸縮しない部分を形成したり、強度を部分的に上げたりする目的で行われる。あるいは、他の部材と貼り合わせたり、デザイン性を持たせたりする目的で行う。
【0108】
また、弾性発現処理装置22を用いた弾性発現処理に関し、弾性発現処理方向は伸長性シート11,12の流れ方向のみでなく、例えば斜めであっても良い。更に、2種以上の弾性発現処理方法を組み合わせたり、段階的に延伸倍率を上げたり、部分的に弾性発現処理を行ったりすることもできる。弾性発現処理方向は一方向のみでなく、直交する二方向であってもよい。
【0109】
また前記実施形態の製造方法においては、弾性発現処理加工に一対の歯溝ロール20,21を備えた弾性発現処理装置を用いたが、これに代えてテンターを備えた弾性発現処理装置を用いて弾性発現処理加工を行ってもよい。
【0110】
本実施形態の伸縮シート10は、使い捨ておむつや生理用ナプキンを始めとする各種吸収性物品の吸収体として好適に用いられる。透湿バックシートなどの防漏機能を兼ね備えた一体型吸収体(パットなどを含む)にも好適である。またこれらの用途以外に、その良好な風合いや、毛羽立ち防止性、伸縮性、通気性等の利点を生かし、医療用使い捨て吸収体、清掃シート、温熱シート、眼帯、マスク、包帯等の各種の用途に用いることもできる。生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の構成材料として用いる場合には、吸収体以外に、例えば、吸収体よりも肌側に位置する液透過性のシート(表面シート、サブレイヤー等を含む)や、使い捨ておむつの外面を構成するシート、胴回り部やウエスト部、脚周り部等に弾性伸縮性を付与するためのシート等が挙げられる。また、ナプキンのウイングを形成するシート等として用いることができる。また、それ以外の部位であっても、伸縮性を付与したい部位等に用いることができる。伸縮シート10の坪量や厚みは、その具体的な用途に応じて適切に調整できる。例えば吸収性物品の構成材料として用いる場合には、坪量20〜200g/m2程度、厚み0.5〜2.5mm程度とすることが望ましい。
【実施例】
【0111】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0112】
〔実施例1〕
図4に示す装置を用いて図1及び図2に示す構造の伸縮シート10を製造した。伸長性シート11,12として坪量20g/m2で、繊維径19μm、繊維長44mmの芯鞘型複合繊維(芯:PET、鞘:PE)からなり、最大伸度170%の親水性エアスルー不織布を用いた。弾性フィラメント13の原料樹脂としては、SEPS樹脂(重量平均分子量5万、MFR60g/10min(230℃、2.16kg)(JIS K7210:1999)からなるエラストマーを用いた。弾性フィラメント13の紡糸条件は、紡糸ヘッド17の温度310℃、紡糸ノズル16の径400μm、紡糸ノズル16のピッチ1.5mmとした。弾性フィラメント13の直径は145μmであった。フィラメントの見掛け坪量(伸縮シート10中のフィラメント重量/伸縮シート10の面積)は10g/m2、延伸倍率9.6倍であった。延伸倍率は、(ノズル孔径/伸縮発現処理前繊維径)2で定義される。溶融状態の弾性フィラメントを、伸長性シート11,12に融着させる前に、シート12の上面に接着剤をスプレーコーティング塗工した。塗工量は約4g/m2とした。更に、振盪ふるいを用いて高吸収性ポリマー(サンダイヤ社製、IM−930)を平均坪量が約30g/m2になるように散布した。ニップロール18,18としては、金属ロールとゴムロールを用いた。ゴムロールはシート11に当接するように配置し、金属ロールはシート12に当接するように配置した。そして、これらのロールによって弾性フィラメント13を伸長性シート11,12の間に融着させるとともに、伸長性シート11,12の間に高吸収性ポリマーを挟持させた。これによって複合体19を得た。
【0113】
複合体19の弾性発現処理加工は、歯と歯底が軸長方向に交互に形成された一対の歯溝ロール20,21を備えた弾性発現処理装置22を用いて行った。歯間及び歯底間のピッチはそれぞれ2.0mmであった(噛み合った状態での歯間のピッチPは1.0mmとなる)。上下の歯溝ロールの押し込み量を調整し、延伸倍率2.0倍にて上記原反ロールを用いて複合体19を、弾性フィラメント13の延びる方向に弾性発現処理させた。これにより弾性フィラメント13の延びる方向に伸縮する坪量76g/m2の伸縮シート10が得られた。得られた伸縮シートは、良好な伸縮性を示すとともに吸収性能も良好であった。
【0114】
〔実施例2〕
実施例1において、伸長性シート11として、坪量40g/m2で、炭酸カルシウム及びポリエチレンを含有する未延伸の透湿用フィルムを用いた。これ以外は、実施例1と同様にして伸縮シート10を得た。得られた伸縮シートは、良好な伸縮性を示すとともに吸収性能も良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、本発明の伸縮シートの第1の実施形態を示す一部破断斜視図である。
【図2】図2(a)及び(b)はそれぞれ、図1に示す伸縮シートにおける弾性フィラメントの延びる方向に沿う自然状態及び伸長状態での縦断面図である。
【図3】図3は、繊維の直径(断面積)が略ステップ状に変化した状態になっている非弾性繊維の一例を示すSEM像である。
【図4】図4は、図1に示す伸縮シートの製造に好適に用いられる装置を示す模式図である。
【図5】図5は、図4に示す装置によって複合体が弾性発現処理される状態を示す模式図である。
【図6】図6は、非弾性繊維が弾性発現処理される状態を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の伸縮シートの第2の実施形態を示す一部破断斜視図(図1相当図)である。
【符号の説明】
【0116】
10 伸縮シート
11 第1の伸長可能な非伸縮性シート
12 第2の伸長可能な非伸縮性シート
13 弾性フィラメント
13A 弾性帯状体
14 高坪量領域
14' 頂部
14" 谷部
15 低坪量領域
15' 稜線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差せずに一方向に延びるように配列した多数の弾性フィラメント又は弾性帯状体が、実質的に非伸長状態で、それらの全長にわたり、第1の伸長可能な非伸縮性シートと、第2の伸長可能な非伸縮性シートとの間に接合されている伸縮シートであって、第1の伸長可能な非伸縮性シートと第2の伸長可能な非伸縮性シートとの間に、該伸縮シートに所定の機能を付与する機能性材料が挟持されている伸縮シート。
【請求項2】
第1及び第2の伸長可能な非伸縮性シートのうちの少なくとも一方が、不織布である請求項1記載の伸縮シート。
【請求項3】
第1及び第2の伸長可能な非伸縮性シートのうちの少なくとも一方が、透湿性シートである請求項1又は2記載の伸縮シート。
【請求項4】
第1及び第2の伸長可能な非伸縮性シートのうちの少なくとも一方が、高伸長性のシートである請求項1ないし3のいずれかに記載の伸縮シート。
【請求項5】
前記機能性材料が粒子からなり、該粒子が、高吸収性ポリマー、消臭剤、香料又は被酸化性金属からなる請求項1ないし4のいずれかに記載の伸縮シート。
【請求項6】
前記機能性材料が塗布物からなり、該塗布物が水性樹脂からなる請求項1ないし4のいずれかに記載の伸縮シート。
【請求項7】
前記機能性材料が繊維からなり、該繊維が液吸収性繊維からなる請求項1ないし4のいずれかに記載の伸縮シート。
【請求項8】
前記伸長可能な非伸縮性シート間に、多数の前記弾性フィラメント又は前記弾性帯状体が実質的に非伸長状態で挟持されてなる複合体に、該弾性フィラメント又は該弾性帯状体の延びる方向に沿って弾性を発現させることで製造されたものであり、
弾性を発現させる処理が、それぞれ歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロールを備えた弾性発現処理装置における該歯溝ロール間に前記複合体を噛み込ませる噛み込み延伸である請求項1ないし7のいずれかに記載の伸縮シート。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の伸縮シートを備えた吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−5926(P2010−5926A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167951(P2008−167951)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】