説明

伸縮管継手

【課題】 伸縮管継手の入口径及び出口径より大きな直径の抜止めを、伸縮管継手の内部に組立てる機構を発明すること。
【解決手段】 伸縮管継手の外側に来る第1管部材の内周にスライド用空間部を設け、内側に来る第2管部材の端部近くの外周に溝を設ける。次ぎに、この溝かスライド用空間部に挿入孔を設けて、この挿入孔から鋼球、自在に曲げられる密着コイルばねなどの抜止め部材を溝に装着する。最後に、必要あれば挿入口に栓をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管用の伸縮管継手に属する。
【背景技術】
【0002】
従来のフランジ型伸縮管継手は、管に接続するフランジの内径が入口と出口のフランジで異なり、内径の大きな方は使用するガスケットの内径より大きく、ガスケットが必要とする内径になっていないという問題があった。
【0003】
また、従来のねじ込み型伸縮管継手は、管に接続する管用ねじの呼び径が入口と出口で異なり、呼び径の大きな管用ねじの方から見れば、伸縮管継手の内径ともう一方の管用ねじが小さ過ぎるという問題があった。
【0004】
この問題の原因は、伸縮管継手の抜止め部材の組立にある。以下、特開平9−112772の伸縮管継手を例に、原因と問題点を説明する。構造を図1に示す。第1管部材35に溶接接続された接続フランジ38の内径は、第2管部材36に溶接接続されたフランジ44のガスケット座(平面の部分)の内径より大きくなっている。その原因は抜止め部材46の組立にある。抜止め部材46は、伸縮管継手が分離しないために必要であるが、組立時に第2管部材の溝45を接続フランジ38より突出した状態にして、抜止め部材46を溝45に嵌める。そのために、フランジ38の内径は抜止め部材46の外径より大きくなければならない。抜止め部材46の外径は第2管部材36の外径より大きくなるので、接続フランジ38の内径は、第2管部材36の外径より大きくなってしまうのである。
【0005】
これに対しガスケットの内径は、第2管部材36の外径とほぼ同じであるから、接続フランジ38の内径はガスケットの内径より大きくなる。その結果、ガスケットの内径近くはフランジと接触せず、漏れ止めの接触幅が減ってしまうという問題があった。
【0006】
また、図2は図1の伸縮管継手のフランジを溝型にした場合(中央部分は省略)を示すが、接続フランジの溝G1と溝G2を比べると、溝G1はフランジ38の内径が大きいために溝G2のような完全な溝にならない。その結果、溝型としては使えないという問題があった。
【0007】
ねじ込み型伸縮管継手の場合、上記のフランジ内径を基準に管用ねじの呼び径を決めるので、入口と出口の呼び径が異なってしまい[0003]に述べた問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
伸縮管継手の入口径及び出口径より大きな直径の抜止めを、伸縮管継手の内部に組立てる機構を発明すること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
伸縮管継手の外側に来る第1管部材の内周にスライド用空間部を設け、内側に来る第2管部材の端部近くの外周に溝を設ける。次ぎに、この溝かスライド用空間部に挿入孔を設けて、この挿入孔から鋼球、自在に曲げられる密着コイルばねなどの抜止め部材を溝に装着する。最後に、必要あれば挿入口に栓をする。
【発明の効果】
【0010】
伸縮管継手の管との接続部と抜止め部が独立しているので、両者を自由に決めることができる。その結果、在来品の問題点を解決できるばかりでなく、管との接続には、フランジ、ねじ、ハウジング継手、溶接などが使えるようになる。また、抜止め部の直径が大きくできるので、内径が大きくなり、流れの抵抗を小さくでき性能が向上する。更に、鋼球や密着コイルばねのような標準的な部品を使うのと組立が容易なことからコストダウンになる。これらの総合効果として、用途に適した伸縮管継手を安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0011】
図3に本発明の基本構造を、図3のA部の拡大図を図4に示す。図3は、図1の第1管部材35と接続フランジ38及び第2管部材36と接続フランジ44の溶接構造を示さずに輪郭線で示してある。この輪郭線は、図1のような溶接構造でも、鋳物による一体構造でも良いことを意味している。Oリング収用溝39にはOリング47が、ダストシール収用溝40にはダストシール48が嵌められ、この部分は図1と同じ構造と機能である。
【0012】
G1及びG2は接続フランジ38及び44に設けた溝で、溝G1が完全な溝になるように接続フランジ38の内径は小さくしてある。スライド用空間部43は第1管部材35の内周に設けた幅広の溝である。第2管部材36の先端の外周には溝45があり、鋼球B46が多数嵌められている。この鋼球B46は、溝45に開けられた挿入孔H49から挿入され、溝45がほぼいっぱいになったところで栓50(図4参照)をして、鋼球B46が抜けてしまわないようにする。栓50は接着、ねじ、圧入など適当な方法で固定する。
【0013】
このような構造であるために、第2管部材は、溝45に鋼球B46が嵌った状態でスライド用空間部43内を左右に移動できる。図3は第2管部材が左方に動き鋼球B46がスライド用空間部43の左方の壁に当って止った状態であり、右方に動くと、右方の凸部42に当り止る。鋼球B46が第1管部材35から第2管部材が抜けるのを防ぐと共に、伸縮管継手の伸縮量を決めている。
【0014】
上述の鋼球B46は、強度の高い樹脂の球に変えても良く、球は短い円筒やワインの樽のような形にしても良い。要は、鋼球その他抜止めは強度が有り、挿入孔H49から挿入でき、溝49の中で方向が安定する形状であれば良い。
【0015】
また、上述の例は、鋼球その他が1個ずつ分離しているが、鋼球その他に穴をあけ、自在に曲る線材を通し、首飾りのようにしたものを用いても良い。
【0016】
更に別の実用的な例として、密着コイルばねを用いる方法がある。鋼球B46と同じ外径の密着コイルばねS46を、挿入孔H49から密着コイルばねS46が曲ることを利用して挿入する。密着コイルばねS46は、挿入前は真直ぐだが、挿入後はスライド用空間部43に沿って曲っているので、挿入孔H49から自然に抜けることはない。そのため栓50は不要である。そして栓50が不要であるために、挿入孔49を長孔にすることが可能で、図3の紙面直角方向に長い小判形にすると、密着コイルばねS46が挿入しやすくなる。
【0017】
図5にねじ込み型伸縮管継手を示す。第1管部材35、第2管部材36の端部には同じ呼び径の管用ねじT1及びT2が切ってある。内部の構造と機能は図3及び図4と同じである。
【0018】
ねじ込み型伸縮管継手は、呼び径の小さい場合、第2管部材36の内径が小さくなり、栓50がし難くなる。この対策には二つの方法がある。図6と図7にその方法を示す。図6は、挿入孔H49の内側にコイルばねC50が嵌めてある。このコイルばねC50が鋼球B46の抜けを防ぐ。コイルばねC50は、直径を少し縮めて嵌めるか、図6のように溝を設けて嵌めるかして、挿入孔H49の位置から動かないようにする。また、コイルばね50の代りにC字形のばね、穴用同心止め輪などでも差支えない。
【0019】
図7にもう一つの方法を示す。先ず、第2管部材に溝45を設け、第1管部材35のスライド用空間部45に挿入孔H52を設ける。次ぎに、この挿入孔H52と第2管部材36の溝45を同じ位置に合わせて、鋼球B46、密着コイルばねS46などの抜止めを挿入する。最後に挿入孔H52をプラグP53その他で気密に栓をする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の伸縮管継手
【図2】従来の伸縮管継手を溝型フランジにした場合の説明図
【図3】本発明のフランジ型伸縮管継手
【図4】図3及び図5のA部拡大図
【図5】本発明のねじ込み型伸縮管継手
【図6】A部の別の実施例
【図7】スライド用空間部に挿入孔を設けた部分拡大図
【符号の説明】
【0021】
35:第1管部材 36:第2管部材 38、44:接続フランジ
G1、G2:溝型フランジの溝 42:凸部 43:スライド用空間部
45:溝 B46:鋼球 S46:密着コイルばね H49:挿入孔
C50:コイルばね H52:挿入孔 P53:プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮管継手の外側に来る第1管部材の内周にスライド用空間部を設け、内側に来る第2管部材の端部近くの外周に溝を設け、この溝かスライド用空間部に挿入孔を設けて、この挿入孔から鋼球、自在に曲げられる密着コイルばねなどの抜止め部材を溝に装着し、必要あれば挿入口に栓をすることを特長とする伸縮管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−2498(P2009−2498A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190180(P2007−190180)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(591006520)株式会社興和工業所 (34)
【Fターム(参考)】