位相導出式レンジ測定のための改善されたプロセス
レーダ目標物のレンジを決定する方法及び装置が提供される。トラッキング中の目標物のリターンに基づく信号サンプルは、目標物運動成分について広帯域包絡線レンジ推定量を生成するために処理される。目標物運動成分は歳差及びスピン運動を含む。曖昧な位相値が測定される。レンジを示す曖昧でない位相値は、広帯域包絡線レンジ推定量及び測定された曖昧な位相値から生成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的にはレーダシステムに関し、より詳細には、レーダレンジ測定に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、レーダシステム(又は、より単純にはレーダ)は、レンジ(距離)決定のための、弾道飛行特性の推定量を得るために、ターゲット(目標物)の重心位置をトラッキングする。弾道飛行の推定量を得るために、レーダシステムは、通常、比較的高次のカルマンフィルタなどのフィルタを使用してレンジ測定データを生成する。こうしたフィルタリングは、目標物弾道軌跡のみをモデル化するように設計される。したがって、目標物軌跡から非常に正確にレンジをトラッキングし、且つ測定することが可能である。
【0003】
弾道運動以外の運動によるレンジの小さな変動を観測するために、1つのレーダパルスから次のレーダパルスへの、測定される位相変化が曖昧でないことを確実にするように、目標物リターン(反射)をサンプリングすることが必要である。こうした曖昧でない位相測定は、かなりの量のレーダシステムリソース(資源)、より具体的には、より高い信号対雑音比(SNR)及びデータレートを必要とし、そのため、主ビームジャミングなどの干渉又は目標物の数の増加に対処するためにレーダに組み込まれる安全裕度(マージン)が減少する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の特徴は、主ビームジャミング及び/又は複数目標物環境におけるレーダシステムの目的を達成することができるように、低い信号対雑音比(SNR)及びデータレートで高精度レンジ測定を提供する技法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、一態様において、レーダ目標物のレンジの決定は、トラッキング中に目標物のリターン(反射)に基づく信号サンプルを受信し、信号サンプルを処理して、歳差及びスピン運動成分を含む目標物運動成分について広帯域包絡線レンジ推定量を生成し、信号サンプルを測定して、曖昧な位相値を生成し、及び、各広帯域包絡線レンジ推定量と曖昧な位相値を使用して、レンジを示す曖昧でない位相値を生成する、ことを含む。
【0006】
本発明の実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる。
レンジの決定は、信号サンプルについて目標物の弾道軌跡の推定量を決定すること、及び、処理中に、推定された弾道軌跡を除去することをさらに含むことができる。
【0007】
信号サンプルの処理は、目標物のスピン運動成分の少なくとも2倍の周波数であるサンプリングレートで動作することができる。
広帯域包絡線レンジ推定量と曖昧な位相値とをそれぞれ使用して曖昧でない位相値を生成することは、測定された曖昧な位相値を広帯域包絡線レンジ推定量から減算して、広帯域包絡線レンジ推定量に関連する誤差値を生成し、及び、誤差値を広帯域包絡線レンジ推定量から減算して、曖昧でない位相値を与える、ことを含むことができる。
【0008】
誤差値のマグニチュード(大きさ)を決定することができ、誤差のマグニチュードが十分に小さくなることを確実にするために、トラッキングを実施するレーダシステムのリソースを調整することができる。
【0009】
信号サンプルの処理は、I)信号サンプルから広帯域包絡線レンジ推定量のスペクトルを生成すること、II)広帯域包絡線レンジ推定量を変換して、歳差、スピン、スピンに歳差を加えたもの、及びスピンから歳差を引いたものの各運動成分のスペクトル推定量を得ること、III)各運動成分を検出すること、Iv)各運動成分スペクトル推定量について振幅、周波数、及び位相を推定すること、及び、v)各運動成分スペクトル推定量について振幅、周波数、及び位相の推定量からレンジ運動の正弦曲線を形成することを含むことができる。
【0010】
処理は、数サイクルの歳差運動中に得られる信号サンプルについてバッチモードで行うことができる。
レンジ運動における正弦曲線は、信号サンプルのパルス間の位相変化における整数のサイクル数kを決定するのに使用することができる。測定された曖昧な位相値を広帯域包絡線レンジ推定量から減算する前に、測定された曖昧な位相値に2πkの値を加算することができる。
【0011】
別の態様において、システムは、信号を目標物に直接送信し、リターン信号を目標物から直接受信する送信機/受信機と、リターン信号を、同相及び直交サンプルとして処理して、角度情報及びレンジ信号を生成するプロセッサと、第1プロセッサによる処理の結果に従って、被検出目標物をトラッキングするトラッカであって、トラッキング中にレンジデータを測定し、レンジデータから弾道軌跡を推定する、トラッカと、同相及び直交サンプルの広帯域包絡線レンジ推定量、弾道軌跡推定量、及び同相及び直交サンプルの曖昧位相測定を使用して、位相が曖昧でないレンジ測定値を生成するように動作するユニットとを備える。
【0012】
本発明の特定の実施態様は、以下の利点の1つ又は複数を提供することができる。本発明のレンジ位相決定方法の使用によって、目標物、たとえば、再突入ビークル及びデコイの本体動特性の小さな運動を観測すること、及び、こうした目標物のレンジを精密な位相によって測定することが可能である。さらに、広帯域包絡線レンジ(WBER)を使用することによって、位相導出式レンジ測定のデータレート及び信号対雑音比の要件を軽減することが可能である。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
同じ参照符号は、同じ要素を表すのに使用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照すると、トラッキングレーダシステム10が示される。トラッキングレーダシステム10は、地上配備型レーダシステムであるが、船上か、航空機内か、あるいは、他の空中又は非空中輸送手段(乗物)にも使用され得る。一実施形態では、トラッキングレーダシステム10は、パルスドップラートラッキングレーダシステムとして実施される。トラッキングレーダシステム10は、送信機12を含み、送信機12の出力は、送信ビームの形態で放射するために、アンテナシステム14に送出される。アンテナシステム14は、ターゲット(目標物)から受信したエコー(リターン:反射)信号を収集する。リターン信号は、受信機16によって処理されて、目標物の存在が検出され、レンジ(距離)と角度でそのロケーション(位置)が決定される。アンテナシステム14は、機械的又は電子的に回転するアンテナを含むことができる。送信機12、受信機16、及びアンテナシステム14に結合したデュプレクサ18は、アンテナシステム14が、送信と受信の両方のために、時分割によって使用することを可能にする。
【0015】
さらに図1を参照すると、受信機16は、ダウンコンバータ22に結合した低雑音増幅器(「LNA」)20を含み、ダウンコンバータ22は、無線周波数(RF)−中間周波数(IF)変換を実施する。受信機の励振器すなわち局部発振器(「LO」)24は、ダウンコンバータ22に発振信号を提供する。ダウンコンバータ22は、A/Dユニット28を介して信号プロセッサ26に接続される。信号プロセッサ26によって受け取られるエコー信号は、同相(「I」)信号及び直交(「Q」)信号に対応する。信号プロセッサ26は、I信号及びQ信号(A/D変換器28によってサンプリングされる)に対して動作して、処理されたI、Qサンプル30及び角度情報32、たとえば、仰角及び/又は方位角情報を生成する。信号プロセッサ26は、おそらく、パルス圧縮フィルタリング、エンベロープ(包絡線)検出、及び検出後積分(ビデオ積分)を含むフィルタリング、ならびに他機能の中でもとりわけ角度決定を実施する。
【0016】
システム10はさらに、閾値(スレッショルド)検出器34及びデータプロセッサ36を含む。閾値検出器34は、信号プロセッサ26からI、Qサンプルを受け取り、これらの信号からレンジ(ゲート)信号38を生成する。閾値検出及び信号処理は、単一プロセッサ又はコンピュータで実施してもよいことは理解されるであろう。信号プロセッサ26及び閾値検出器34は、他の従来のレーダシステム要素、たとえば、データプロセッサ36、ならびに、表示及び制御センタ、たとえば、弾道管理制御センタ(図示せず)に結合され、そこへ検出情報を提供することができる。信号プロセッサ26によって生成されるI、Qサンプル及び(閾値検出器34からの)レンジ信号は、後述するように、さらなる処理で使用するために、データプロセッサ36に提供される。データプロセッサによって出力される結果(出力40)は、制御センサに提供される。本明細書では述べないシステム10及びその部品のこれらの態様は、既知の技法に従って実施することができる。
【0017】
図2を参照すると、データプロセッサ36は、トラッカ(追跡装置)50、位相導出式レンジ(PDR)ブロック又はユニット52、及び分類ユニット54を含む。トラッカ50は、信号プロセッサ26からゲート制御式I/Qサンプル30及び角度情報32を受け取り、閾値検出器34からレンジゲート信号38を受け取る。トラッカ50は、被検出目標物について追随(トラッキング)を始動し、レンジデータを測定するためにトラッキングを行い、レンジデータから(目標物軌跡推定器56を使用して)目標物軌跡55を推定する。トラッカ50は、被トラッキング目標物についてのレンジゲートI/Qサンプル58をPDRブロック52に提供する。PDRブロック52は、これらのサンプルに対して動作して、図4を参照して後述するように、歳差及びスピンスペクトル解析を行う。このスペクトル解析の結果(本体動特性60)は、分類ユニット54に提供され、分類ユニット54は、この情報及び他の情報(たとえば、トラッカ50からの出力62及び信号プロセッサ26からの角度情報32)を使用して、制御センタ(図示せず)に目標物特性64の包括的なセットを提供する。特性は、たとえば、目標物がどのように分類されるか、たとえば、脅威があるとする分類、又は、脅威が無いとする分類を示す情報を含むことができる。制御センタは、この情報(及び、おそらく、衛星などの他の信号源からの情報)を使用して、目標物分類が十分であるかどうか、又は、トラッキングを続行すべきかどうかが判定される。制御センタは、コマンドをレーダ送信機/受信機へ送出して、目標物のうちのどれが最優先であるかを、したがって、使用すべき波形のタイプ、データレート、及びSNRを示す。
【0018】
トラッカ50は、目標物トラッキング(追随)を始動し、所定期間にわたって、たとえば、25〜100秒間、トラッキングを行い、各パルスに関して測定されたレンジデータを記憶する。弾道軌跡(軌道)を正確に予測するトラッカ50は、比較的高次のフィルタでレンジデータの全バッチをバッチ処理する。より具体的には、トラッカ50は、バッチモードでレンジデータに高次フィルタを適用して、目標物の弾道軌跡を推定する。目標物弾道軌跡推定量は、目標物の歳差及びスピン運動成分のみを残すために、(後続のPDRブロック処理中に)除去され、図4を参照して以下に述べるように、その成分の位相は、十分な精度で推定されることができる。
【0019】
図3は、レンジ対時間のプロット(グラフ)70において、目標物の種々の成分を示す。これらの運動成分は、目標物弾道経路又は軌跡72、スピン74、及び歳差76を含む。スピン及び歳差運動は、図に示すように正弦波タイプのパターンに従う。歳差は、飛行中にスピンする目標物に与えられるウォブリング(wobbling)運動のことを言う。図示する例の場合、目標物の運動は、1/8Hzの周波数と0.1mのピーク振幅を有する歳差運動を有する。図示する例についてのスピン運動は、1Hzのスピン運動周波数と0.01mのピーク振幅を有する。歳差運動をサンプリングすることができる最小ナイキストサンプリングは、(弾道軌跡成分が除去されたと仮定すると)歳差周波数の2倍である。しかしながら、歳差運動がサンプリングされなければならない頻度を決定するのはスピン周波数である。そのため、最小サンプリング周波数は、スピン運動周波数の2倍、すなわち、図示する例の場合2Hzである。
【0020】
図4を参照すると、PDRブロック52は、トラッカ50から、ゲート制御式I、Qサンプル58及び弾道軌跡推定量55を受け取る。PDRブロックは、広帯域包絡線レンジ(WBER)推定器80及びI、Qサンプルの位相「デルタΔ」84を測定するか、又は、その測定値を得るユニット82を含む。これらのユニットは共に、I、Qサンプル58を受け取り、I、Qサンプル58に対して動作する。測定された位相84は、正確であるが、サイクル数が知られていない点で曖昧(アンビギティ)である。WBER推定器80は、サンプルから、「2πk+Δ+ε」の形態のWBER位相推定量86を生成する。ここで、「k」は、1つのパルスから次のパルスへの位相変化における整数のサイクル数であり、「ε」は、WBER推定誤差値である。誤差は、整数であるkについて、±πラジアン未満である必要がある。ユニット52はさらに、「k」推定器88、及び、kサイクルをラジアンに変換し、「2πk」ラジアンを曖昧位相Δに加算して、「2πk+Δ」の位相値92を形成する「2πk」加算器90を含む。PDRユニット52は、2つの減算器、第1減算器94と第2減算器96を含む。第1減算器94は、位相値92をWBER位相推定量86から減算して、誤差εを示す誤差値98を生成する。第2減算器96は、誤差値98(すなわち、「ε」)をWBER位相推定量86から減算して、レンジを示す曖昧でない位相値100を生成する。精密な位相を有するレンジを生成する、結果として得られる出力2πk+Δは、WBER誤差値εが1ラジアン二乗平均平方根(RMS)未満である限りにおいて、曖昧でない。ブロック図に示す要素の1つ又は複数は、ソフトウェアで実施してもよいことは理解されるであろう。
【0021】
SNR及びドウェル(休止)時間の長さは、パルスごとの(残留)誤差が、±πラジアン(すなわち、1σ、およそ1ラジアン)と比較して小さくなるように調整される。±3σ=±3ラジアン(〜πラジアン)によって、精密な位相を持って、確実に、レンジが曖昧でなく測定できるように、1ラジアンという1σ誤差の目標が選択される。
【0022】
PDRユニット52のスペクトル解析についての手法及び仮定は、以下の通りである。使用されるパルス反復周波数(PRF)は、ナイキストサンプリングレートを超える、すなわち、たとえば、スピン周波数の2倍以上である。PDRユニット52の処理は、リアルタイム位相ロックループによるのではなく、バッチ処理によって達成することができるため、必要とされるデータレートは、位相ロックループ要件と対照的に、ナイキストサンプリングによって決定される。
【0023】
WBER推定器80内の高次フィルタは、歳差運動の数サイクルをバッチ処理する。フィルタの出力は平滑なレンジの推定量を含む。広帯域パルスは、包絡線レンジを推定するのに使用される。広帯域包絡線レンジ推定量のスペクトルは、長い休止と高いSNRについて、歳差、スピン、及びスピン±歳差運動の推定量を生成する。分析において、WBER推定量は、目標物の重心に対してレンジを与えることが仮定される。すなわち、フィルタの平滑化されたレンジは、ゆっくり変わるため、測定されたレンジとフィルタによって推定されたレンジの間のパルスごとの差は小さい。
【0024】
図5を参照すると、WBER推定器80は以下のように動作する。WBER推定器80は、入力として、I、Qサンプルを受け取る(ステップ90)。WBER推定器80は、入力サンプルからWBER推定量のスペクトルを生成する(ステップ92)。WBER推定器80は、トラッカによって推定された弾道軌跡を除去する(ステップ94)。WBER推定器80は、WBER推定量をフーリエ変換して、歳差、スピン、及びスピン±歳差の各運動成分のスペクトル推定量を得る(ステップ96)。分解された歳差及びスピン成分は、(そのピーク変位(excursion)がλ/4より大きい場合)検出され(ステップ98)、その振幅ap、周波数f、及び位相θが測定される(ステップ100)。WBER推定器80は、各運動成分について、振幅ap、周波数f、及び位相θのスペクトル推定量からレンジr=apsin(2πft+θ)における正弦曲線を構築する(ステップ102)。WBER推定器80は、差drを計算して、レンジの振幅、周波数、及び位相誤差を求める(ステップ104)。もう一度図4を参照すると、周波数推定量が知られると、「k」の整数値が決定される。
【0025】
図6〜15は、以下の数値に関する例の場合のWBER推定器の処理の結果を示す。
fs=1Hzスピン周波数
fp=1/8Hz歳差周波数
Np=3歳差サイクル
PRF=3Hz
S/N=15dB、1パルス当たりSNR
λ=0.03m、波長
信号帯域=2B
Rp=0.1m、ピーク歳差レンジ
Rs=0.01m、ピークスピンレンジ
Rs−p=0.0025m、ピークスピンから歳差レンジをマイナスしたもの
Rs+p=0.007m、ピークスピンに歳差レンジをプラスしたもの
歳差成分及びスピン成分は、実際の目標物を表すピーク歳差値及びピークスピン値を有する。スピン成分から歳差成分を引いたものは期待値より大きな値でプロットされ、スペクトルプロットにおけるその位置を示す。スピン成分に歳差成分を足したものは、軌跡及び目標物の運動シナリオに応じて、スピン成分より大きい可能性がある。
【0026】
図6を参照すると、3つの歳差サイクル(24秒)の間の時間領域におけるレンジのプロットは、歳差が支配し、スピン及び他の成分は、1−0.125=0.875Hz、1Hz、1+0.125=1.25Hzで変調されることを示す。データは、3Hzでサンプリングされ、フーリエ変換され、ゼロが埋められ、その後、逆フーリエ変換されて、ほぼ連続したプロットが得られる。
【0027】
図7を参照すると、位相対レンジのプロットが示される。このプロットは、所与のピークレンジ(メートル単位)についてピーク位相変位(サイクル単位)を与える。たとえば、0.1メートルピークについて、サイクル数は、
0.1m×(4πラジアン/λm)=41.9ラジアン=6.67サイクル
である。スピン成分は、0.01mピーク又は4.19ラジアン=0.67サイクル、あるいは、±0.5サイクルよりほんのわずか大きい。そのため、例におけるスピン成分は、振幅、位相、及び周波数を正確にモデル化するために、十分なスペクトルSNRを有する検出を必要とする。先に説明したように、0.0075m未満のピーク変位を有する成分は、検出され、モデル化する必要はない。
【0028】
図8を参照すると、WBERサンプルの(目標物の重心位置に対する)スペクトルのプロットが示される。プロットは、3サイクルの歳差(8秒歳差期間)及び1Hzスピン周波数についての、WBER測定の離散フーリエ変換(DFT)である。
【0029】
スピンのみが存在する場合、2Hz(スピン周波数の2倍)がナイキストサンプリングを構成することが理解されるであろう。こうしたサンプリング周波数は、通常のレーダ周波数の2倍であり、データが純粋に実数であることの結果である。
【0030】
図示例では、3Hzサンプリングレートが選択して、スピンを歳差成分に加えたものを反映し、サンプリングマージンを設けた。サンプリング周波数を選択するのにいくつかの異なる技法が使用されてもよい。1つのオプションは優先順位付きデータを使用することである。別のオプションは、ブートストラップ技法を適用することであろう。
【0031】
最小データ休止は、スペクトル線間の空間によって決定される。スピンラインに隣接する歳差ラインは、1/Tp=0.125Hz、歳差周波数だけスピンラインから離れている。特に重み付けが適用される時に、良好な分解能を提供するために、休止は、2又は3期間を有するべきである。プロットは、スピンラインの近くのサイドローブの検出を回避するために、軽い重み付けが付加されるべきであることを示す。RMS雑音ラインは、歳差に対して約−36dBで、かつ、スピンラインの下、約13dBの雑音を示す。そのため、スピンラインもまた検出することができる。したがって、3Hzデータレートは、使用可能なデータラインが全て0〜1.5Hzの間にあるスペクトルを提供する。
【0032】
図示する例についての歳差ラインは、容易に検出できるほど十分に大きい。スピン成分の場合、SNR、データレート、及び休止時間の臨界要件は、スピンを検出できるほどに十分に大きいスペクトル線を提供し、かつ、データの位相が実際に重なり合わない(unwrapped)ように十分に低い誤差をスペクトル線に提供することである。小さい成分についてスペクトル線の検出を達成することは必要ではない。位相変位apが十分に小さいため、4πap/λ≦πか、ap≦λ/4=0.0075メートルか、又は、±1/2サイクル未満である限りにおいて、出力は、位相が曖昧でないままである。ピーク変位apはメートル単位であり、ピーク変位の4π/λ倍は、ラジアン単位でのレンジ位相をもたらす。
【0033】
振幅は、ラインのマグニチュードから推定される。各ラインについて、周波数は、時間データの線形奇数重み付け(linear odd weghting)から推定され、周波数領域の「モノパルス」推定量を得る。位相は、直交成分と実数成分の比から推定される。振幅、周波数、及び位相の各推定量についての雑音誤差は、互いに相関を持たないが、独立ではない。差drは、先に述べたように、それぞれ、3つの成分、振幅、周波数、及び位相のそれぞれにおける誤差ε、すなわち、εa、εf、及びεθを生成する。
【0034】
レンジにおける振幅、周波数、及び位相誤差は、ガウス的であり、ゼロ平均であり、無相関であり、標準偏差、すなわち、
σap=sin(2πft+θ)*ap/√(2Sf) 式1
σf=2πtapcos(2πft+θ)*Δf/(Km√(2Sf)) 式2
σθ=apcos(2πft+θ)*1/√(2Sf) 式3
を有する。ここで、
ΔR=1.33サイクル/2B
Δf=1/(Ns−1)τ
Ns=サンプル数
Sf=Ns〔ap/2〕2、スペクトル信号対雑音比 式4
B=広帯域チャープ帯域幅
τ=サンプル間の時間
である。
【0035】
式1〜式3を使用した結果は、Steven M. Kayによる「Fundamental of Statistical Signal Processing: Estimation Theory」(University of Rhode Island, Prentice Hall, 1993)に記載される正弦曲線信号技法の推定と一致する。
【0036】
スペクトルの信号対雑音比Sf(式4)についての表現から、Sfは、正弦曲線運動のピーク振幅及び帯域幅に依存することがわかる。
スペクトルSNR(Sf)要件を示すプロットを示す図9を参照すると、Log(ap)=−2よりわずかに小さい信号の場合、この値又はより小さい値についてスペクトル検出は必要とされないことが観察される。そのため、SNR及び信号帯域幅についての要件は、所望のPdに適したSfのスペクトル値(サンプル数及び許容可能な偽りの警告レートに応じて、10dBよりわずかに大きい)を生成することである。
【0037】
図10を参照すると、時間の関数としての歳差WBER推定誤差のプロットが示される。プロットは、個別に、振幅、周波数、及び位相誤差のそれぞれの1σ変動を生成する。ウィンドウの縁部における周波数誤差を除いて、誤差は±0.5ラジアン未満であることを留意すべきである。WBERレンジ誤差が±0.5ラジアン未満である場合、曖昧さを回避するのに±0.5ラジアンの誤差で十分であるようにサイクル数kを推定することができる。そのため、任意の特定の時間における推定値の合計のRMS値は、1ラジアンの目標未満である。サイドローブを減らすためのデータの重み付けはさらに、縁部の値をあまり強調しなくすることができる。ウィンドウの中心の近くでは、周波数誤差は、振幅及び位相成分より小さい。
【0038】
図11を参照すると、時間の関数としてのスピンレンジ推定誤差のプロットが示される。グラフ中の時間基準は任意である。プロットは、スピンラインの再構築に関する振幅、周波数、及び位相誤差の影響を別々に示す。振幅及び位相誤差は同じマグニチュードであるが、90°ずれていることに留意することができる。当然の結果として、
σap/sin(2πft+θ)
=ap/√(2)Sf)
=σθ/cos(2πft+θ) 式5
となる。
【0039】
図12は、時間の関数としての歳差位相誤差の差のプロットを示す。歳差運動の低周波数は、±1ラジアンと比較して、無視できる振幅の位相差を生じる。
図13は、時間の関数としてのスピン位相誤差の差のプロットを示す。3Hzと15dBのS/Nにおいて、スピン位相差は、図11に示す結果の約1.7倍になるであろう。このため、図14のプロットは、10dBのSNRを持って10Hzで動作した結果を示す。
【0040】
図14を参照して、(図示される)振幅1ラジアンの誤差正弦波を考える。この正弦波がナイキストレート(2Hz)でサンプリングされる場合、位相差は±2ラジアンでピークに達する。より高いサンプリングレートの場合、図に示すように、位相差は減少する。たとえば、3Hzにおいて、4Hzより1.7×の増加が観察される。6Hzにおいて、位相差は±1ラジアンであることに留意されたい。これらの結果が示唆することは、SNRとデータレートの間のトレードオフは、異なる均衡をもたらすことになり、ナイキストより著しく高いデータレートが必要とされないバッチプロセスと比較して、低いSNRを持ったより高いデータレートが位相差ループ又は位相差ドップラーによって好まれることである。
【0041】
図15は、データレート(PRF)対SNRのプロットを示し、一定電力についての、これら2つのリソース間のトレードオフを示す。曲線は、SNR×データレート=一定のプロットである。たとえば、3HzのPRFにおける15dBのSNRは、6HzのPRFにおける12dBのSNRと同じエネルギーを必要とするであろう。3HzのPRFを有するバッチプロセスの場合、スペクトル検出プロセスにおけるより高いPdについて、15dBのSNRが好ましい。
【0042】
3Hzと15dBのSNR以上では、バッチプロセスは、運動成分のレンジ推定量を生成し、RMS誤差が1ラジアン未満であるため、位相トラッキングループに対する必要性を回避する。0.0075m以下の、スピン又は歳差成分振幅の場合、WBERスペクトル検出は必要とされない。組み合わせ式のPDRと追随フィルタリングが、位相トラッキングループを必要とする場合、オプションは、データ休止が増加するか、チャープ帯域幅が増加するか、又は、その両方の状態での3HzのPRFと15dBのSNRにおける処理、あるいは、パルスごとに位相差を推定する時の誤差を減少するための6HzのPRFと12dBのSNRの処理を含む。
【0043】
トラッキングレーダシステムに関連して説明したが、本発明の技法は、高精度ドップラー測定を必要とする他のアプリケーション(たとえば、天気レーダ)で使用される可能性があることは理解されるであろう。
【0044】
他の実施形態は、特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】位相導出式レンジ測定を実施するデータプロセッサを含むトラッキングレーダシステムのブロック図である。
【図2】位相導出式レンジ測定について、位相導出式レンジ(PDR)ユニットを使用して、曖昧でない位相値を生成する例示的なデータプロセッサのブロック図である。
【図3】目標物の例示的な弾道軌跡ならびに関連する歳差及びスピンの目標物運動成分についての、レンジ対時間のプロットである。
【図4】PDRユニットのブロック図である。
【図5】PDRユニットの広帯域包絡線レンジ(WBER)推定器の動作を示すフロー図である。
【図6】レンジ対時間のプロットである。
【図7】位相対レンジのプロットである。
【図8】重心に対するレンジのスペクトルのプロットである。
【図9】スペクトルの信号対雑音要件のプロットである。
【図10】歳差レンジ推定誤差のプロットである。
【図11】スピンレンジ推定誤差のプロットである。
【図12】歳差位相誤差の差のプロットである。
【図13】スピン位相誤差の差のプロットである。
【図14】いくつかのデータレートについての1Hz正弦波の位相差のプロットである。
【図15】一定電力についての、SNRとデータレートの間のトレードオフを示すプロットである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的にはレーダシステムに関し、より詳細には、レーダレンジ測定に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、レーダシステム(又は、より単純にはレーダ)は、レンジ(距離)決定のための、弾道飛行特性の推定量を得るために、ターゲット(目標物)の重心位置をトラッキングする。弾道飛行の推定量を得るために、レーダシステムは、通常、比較的高次のカルマンフィルタなどのフィルタを使用してレンジ測定データを生成する。こうしたフィルタリングは、目標物弾道軌跡のみをモデル化するように設計される。したがって、目標物軌跡から非常に正確にレンジをトラッキングし、且つ測定することが可能である。
【0003】
弾道運動以外の運動によるレンジの小さな変動を観測するために、1つのレーダパルスから次のレーダパルスへの、測定される位相変化が曖昧でないことを確実にするように、目標物リターン(反射)をサンプリングすることが必要である。こうした曖昧でない位相測定は、かなりの量のレーダシステムリソース(資源)、より具体的には、より高い信号対雑音比(SNR)及びデータレートを必要とし、そのため、主ビームジャミングなどの干渉又は目標物の数の増加に対処するためにレーダに組み込まれる安全裕度(マージン)が減少する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の特徴は、主ビームジャミング及び/又は複数目標物環境におけるレーダシステムの目的を達成することができるように、低い信号対雑音比(SNR)及びデータレートで高精度レンジ測定を提供する技法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、一態様において、レーダ目標物のレンジの決定は、トラッキング中に目標物のリターン(反射)に基づく信号サンプルを受信し、信号サンプルを処理して、歳差及びスピン運動成分を含む目標物運動成分について広帯域包絡線レンジ推定量を生成し、信号サンプルを測定して、曖昧な位相値を生成し、及び、各広帯域包絡線レンジ推定量と曖昧な位相値を使用して、レンジを示す曖昧でない位相値を生成する、ことを含む。
【0006】
本発明の実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる。
レンジの決定は、信号サンプルについて目標物の弾道軌跡の推定量を決定すること、及び、処理中に、推定された弾道軌跡を除去することをさらに含むことができる。
【0007】
信号サンプルの処理は、目標物のスピン運動成分の少なくとも2倍の周波数であるサンプリングレートで動作することができる。
広帯域包絡線レンジ推定量と曖昧な位相値とをそれぞれ使用して曖昧でない位相値を生成することは、測定された曖昧な位相値を広帯域包絡線レンジ推定量から減算して、広帯域包絡線レンジ推定量に関連する誤差値を生成し、及び、誤差値を広帯域包絡線レンジ推定量から減算して、曖昧でない位相値を与える、ことを含むことができる。
【0008】
誤差値のマグニチュード(大きさ)を決定することができ、誤差のマグニチュードが十分に小さくなることを確実にするために、トラッキングを実施するレーダシステムのリソースを調整することができる。
【0009】
信号サンプルの処理は、I)信号サンプルから広帯域包絡線レンジ推定量のスペクトルを生成すること、II)広帯域包絡線レンジ推定量を変換して、歳差、スピン、スピンに歳差を加えたもの、及びスピンから歳差を引いたものの各運動成分のスペクトル推定量を得ること、III)各運動成分を検出すること、Iv)各運動成分スペクトル推定量について振幅、周波数、及び位相を推定すること、及び、v)各運動成分スペクトル推定量について振幅、周波数、及び位相の推定量からレンジ運動の正弦曲線を形成することを含むことができる。
【0010】
処理は、数サイクルの歳差運動中に得られる信号サンプルについてバッチモードで行うことができる。
レンジ運動における正弦曲線は、信号サンプルのパルス間の位相変化における整数のサイクル数kを決定するのに使用することができる。測定された曖昧な位相値を広帯域包絡線レンジ推定量から減算する前に、測定された曖昧な位相値に2πkの値を加算することができる。
【0011】
別の態様において、システムは、信号を目標物に直接送信し、リターン信号を目標物から直接受信する送信機/受信機と、リターン信号を、同相及び直交サンプルとして処理して、角度情報及びレンジ信号を生成するプロセッサと、第1プロセッサによる処理の結果に従って、被検出目標物をトラッキングするトラッカであって、トラッキング中にレンジデータを測定し、レンジデータから弾道軌跡を推定する、トラッカと、同相及び直交サンプルの広帯域包絡線レンジ推定量、弾道軌跡推定量、及び同相及び直交サンプルの曖昧位相測定を使用して、位相が曖昧でないレンジ測定値を生成するように動作するユニットとを備える。
【0012】
本発明の特定の実施態様は、以下の利点の1つ又は複数を提供することができる。本発明のレンジ位相決定方法の使用によって、目標物、たとえば、再突入ビークル及びデコイの本体動特性の小さな運動を観測すること、及び、こうした目標物のレンジを精密な位相によって測定することが可能である。さらに、広帯域包絡線レンジ(WBER)を使用することによって、位相導出式レンジ測定のデータレート及び信号対雑音比の要件を軽減することが可能である。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
同じ参照符号は、同じ要素を表すのに使用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照すると、トラッキングレーダシステム10が示される。トラッキングレーダシステム10は、地上配備型レーダシステムであるが、船上か、航空機内か、あるいは、他の空中又は非空中輸送手段(乗物)にも使用され得る。一実施形態では、トラッキングレーダシステム10は、パルスドップラートラッキングレーダシステムとして実施される。トラッキングレーダシステム10は、送信機12を含み、送信機12の出力は、送信ビームの形態で放射するために、アンテナシステム14に送出される。アンテナシステム14は、ターゲット(目標物)から受信したエコー(リターン:反射)信号を収集する。リターン信号は、受信機16によって処理されて、目標物の存在が検出され、レンジ(距離)と角度でそのロケーション(位置)が決定される。アンテナシステム14は、機械的又は電子的に回転するアンテナを含むことができる。送信機12、受信機16、及びアンテナシステム14に結合したデュプレクサ18は、アンテナシステム14が、送信と受信の両方のために、時分割によって使用することを可能にする。
【0015】
さらに図1を参照すると、受信機16は、ダウンコンバータ22に結合した低雑音増幅器(「LNA」)20を含み、ダウンコンバータ22は、無線周波数(RF)−中間周波数(IF)変換を実施する。受信機の励振器すなわち局部発振器(「LO」)24は、ダウンコンバータ22に発振信号を提供する。ダウンコンバータ22は、A/Dユニット28を介して信号プロセッサ26に接続される。信号プロセッサ26によって受け取られるエコー信号は、同相(「I」)信号及び直交(「Q」)信号に対応する。信号プロセッサ26は、I信号及びQ信号(A/D変換器28によってサンプリングされる)に対して動作して、処理されたI、Qサンプル30及び角度情報32、たとえば、仰角及び/又は方位角情報を生成する。信号プロセッサ26は、おそらく、パルス圧縮フィルタリング、エンベロープ(包絡線)検出、及び検出後積分(ビデオ積分)を含むフィルタリング、ならびに他機能の中でもとりわけ角度決定を実施する。
【0016】
システム10はさらに、閾値(スレッショルド)検出器34及びデータプロセッサ36を含む。閾値検出器34は、信号プロセッサ26からI、Qサンプルを受け取り、これらの信号からレンジ(ゲート)信号38を生成する。閾値検出及び信号処理は、単一プロセッサ又はコンピュータで実施してもよいことは理解されるであろう。信号プロセッサ26及び閾値検出器34は、他の従来のレーダシステム要素、たとえば、データプロセッサ36、ならびに、表示及び制御センタ、たとえば、弾道管理制御センタ(図示せず)に結合され、そこへ検出情報を提供することができる。信号プロセッサ26によって生成されるI、Qサンプル及び(閾値検出器34からの)レンジ信号は、後述するように、さらなる処理で使用するために、データプロセッサ36に提供される。データプロセッサによって出力される結果(出力40)は、制御センサに提供される。本明細書では述べないシステム10及びその部品のこれらの態様は、既知の技法に従って実施することができる。
【0017】
図2を参照すると、データプロセッサ36は、トラッカ(追跡装置)50、位相導出式レンジ(PDR)ブロック又はユニット52、及び分類ユニット54を含む。トラッカ50は、信号プロセッサ26からゲート制御式I/Qサンプル30及び角度情報32を受け取り、閾値検出器34からレンジゲート信号38を受け取る。トラッカ50は、被検出目標物について追随(トラッキング)を始動し、レンジデータを測定するためにトラッキングを行い、レンジデータから(目標物軌跡推定器56を使用して)目標物軌跡55を推定する。トラッカ50は、被トラッキング目標物についてのレンジゲートI/Qサンプル58をPDRブロック52に提供する。PDRブロック52は、これらのサンプルに対して動作して、図4を参照して後述するように、歳差及びスピンスペクトル解析を行う。このスペクトル解析の結果(本体動特性60)は、分類ユニット54に提供され、分類ユニット54は、この情報及び他の情報(たとえば、トラッカ50からの出力62及び信号プロセッサ26からの角度情報32)を使用して、制御センタ(図示せず)に目標物特性64の包括的なセットを提供する。特性は、たとえば、目標物がどのように分類されるか、たとえば、脅威があるとする分類、又は、脅威が無いとする分類を示す情報を含むことができる。制御センタは、この情報(及び、おそらく、衛星などの他の信号源からの情報)を使用して、目標物分類が十分であるかどうか、又は、トラッキングを続行すべきかどうかが判定される。制御センタは、コマンドをレーダ送信機/受信機へ送出して、目標物のうちのどれが最優先であるかを、したがって、使用すべき波形のタイプ、データレート、及びSNRを示す。
【0018】
トラッカ50は、目標物トラッキング(追随)を始動し、所定期間にわたって、たとえば、25〜100秒間、トラッキングを行い、各パルスに関して測定されたレンジデータを記憶する。弾道軌跡(軌道)を正確に予測するトラッカ50は、比較的高次のフィルタでレンジデータの全バッチをバッチ処理する。より具体的には、トラッカ50は、バッチモードでレンジデータに高次フィルタを適用して、目標物の弾道軌跡を推定する。目標物弾道軌跡推定量は、目標物の歳差及びスピン運動成分のみを残すために、(後続のPDRブロック処理中に)除去され、図4を参照して以下に述べるように、その成分の位相は、十分な精度で推定されることができる。
【0019】
図3は、レンジ対時間のプロット(グラフ)70において、目標物の種々の成分を示す。これらの運動成分は、目標物弾道経路又は軌跡72、スピン74、及び歳差76を含む。スピン及び歳差運動は、図に示すように正弦波タイプのパターンに従う。歳差は、飛行中にスピンする目標物に与えられるウォブリング(wobbling)運動のことを言う。図示する例の場合、目標物の運動は、1/8Hzの周波数と0.1mのピーク振幅を有する歳差運動を有する。図示する例についてのスピン運動は、1Hzのスピン運動周波数と0.01mのピーク振幅を有する。歳差運動をサンプリングすることができる最小ナイキストサンプリングは、(弾道軌跡成分が除去されたと仮定すると)歳差周波数の2倍である。しかしながら、歳差運動がサンプリングされなければならない頻度を決定するのはスピン周波数である。そのため、最小サンプリング周波数は、スピン運動周波数の2倍、すなわち、図示する例の場合2Hzである。
【0020】
図4を参照すると、PDRブロック52は、トラッカ50から、ゲート制御式I、Qサンプル58及び弾道軌跡推定量55を受け取る。PDRブロックは、広帯域包絡線レンジ(WBER)推定器80及びI、Qサンプルの位相「デルタΔ」84を測定するか、又は、その測定値を得るユニット82を含む。これらのユニットは共に、I、Qサンプル58を受け取り、I、Qサンプル58に対して動作する。測定された位相84は、正確であるが、サイクル数が知られていない点で曖昧(アンビギティ)である。WBER推定器80は、サンプルから、「2πk+Δ+ε」の形態のWBER位相推定量86を生成する。ここで、「k」は、1つのパルスから次のパルスへの位相変化における整数のサイクル数であり、「ε」は、WBER推定誤差値である。誤差は、整数であるkについて、±πラジアン未満である必要がある。ユニット52はさらに、「k」推定器88、及び、kサイクルをラジアンに変換し、「2πk」ラジアンを曖昧位相Δに加算して、「2πk+Δ」の位相値92を形成する「2πk」加算器90を含む。PDRユニット52は、2つの減算器、第1減算器94と第2減算器96を含む。第1減算器94は、位相値92をWBER位相推定量86から減算して、誤差εを示す誤差値98を生成する。第2減算器96は、誤差値98(すなわち、「ε」)をWBER位相推定量86から減算して、レンジを示す曖昧でない位相値100を生成する。精密な位相を有するレンジを生成する、結果として得られる出力2πk+Δは、WBER誤差値εが1ラジアン二乗平均平方根(RMS)未満である限りにおいて、曖昧でない。ブロック図に示す要素の1つ又は複数は、ソフトウェアで実施してもよいことは理解されるであろう。
【0021】
SNR及びドウェル(休止)時間の長さは、パルスごとの(残留)誤差が、±πラジアン(すなわち、1σ、およそ1ラジアン)と比較して小さくなるように調整される。±3σ=±3ラジアン(〜πラジアン)によって、精密な位相を持って、確実に、レンジが曖昧でなく測定できるように、1ラジアンという1σ誤差の目標が選択される。
【0022】
PDRユニット52のスペクトル解析についての手法及び仮定は、以下の通りである。使用されるパルス反復周波数(PRF)は、ナイキストサンプリングレートを超える、すなわち、たとえば、スピン周波数の2倍以上である。PDRユニット52の処理は、リアルタイム位相ロックループによるのではなく、バッチ処理によって達成することができるため、必要とされるデータレートは、位相ロックループ要件と対照的に、ナイキストサンプリングによって決定される。
【0023】
WBER推定器80内の高次フィルタは、歳差運動の数サイクルをバッチ処理する。フィルタの出力は平滑なレンジの推定量を含む。広帯域パルスは、包絡線レンジを推定するのに使用される。広帯域包絡線レンジ推定量のスペクトルは、長い休止と高いSNRについて、歳差、スピン、及びスピン±歳差運動の推定量を生成する。分析において、WBER推定量は、目標物の重心に対してレンジを与えることが仮定される。すなわち、フィルタの平滑化されたレンジは、ゆっくり変わるため、測定されたレンジとフィルタによって推定されたレンジの間のパルスごとの差は小さい。
【0024】
図5を参照すると、WBER推定器80は以下のように動作する。WBER推定器80は、入力として、I、Qサンプルを受け取る(ステップ90)。WBER推定器80は、入力サンプルからWBER推定量のスペクトルを生成する(ステップ92)。WBER推定器80は、トラッカによって推定された弾道軌跡を除去する(ステップ94)。WBER推定器80は、WBER推定量をフーリエ変換して、歳差、スピン、及びスピン±歳差の各運動成分のスペクトル推定量を得る(ステップ96)。分解された歳差及びスピン成分は、(そのピーク変位(excursion)がλ/4より大きい場合)検出され(ステップ98)、その振幅ap、周波数f、及び位相θが測定される(ステップ100)。WBER推定器80は、各運動成分について、振幅ap、周波数f、及び位相θのスペクトル推定量からレンジr=apsin(2πft+θ)における正弦曲線を構築する(ステップ102)。WBER推定器80は、差drを計算して、レンジの振幅、周波数、及び位相誤差を求める(ステップ104)。もう一度図4を参照すると、周波数推定量が知られると、「k」の整数値が決定される。
【0025】
図6〜15は、以下の数値に関する例の場合のWBER推定器の処理の結果を示す。
fs=1Hzスピン周波数
fp=1/8Hz歳差周波数
Np=3歳差サイクル
PRF=3Hz
S/N=15dB、1パルス当たりSNR
λ=0.03m、波長
信号帯域=2B
Rp=0.1m、ピーク歳差レンジ
Rs=0.01m、ピークスピンレンジ
Rs−p=0.0025m、ピークスピンから歳差レンジをマイナスしたもの
Rs+p=0.007m、ピークスピンに歳差レンジをプラスしたもの
歳差成分及びスピン成分は、実際の目標物を表すピーク歳差値及びピークスピン値を有する。スピン成分から歳差成分を引いたものは期待値より大きな値でプロットされ、スペクトルプロットにおけるその位置を示す。スピン成分に歳差成分を足したものは、軌跡及び目標物の運動シナリオに応じて、スピン成分より大きい可能性がある。
【0026】
図6を参照すると、3つの歳差サイクル(24秒)の間の時間領域におけるレンジのプロットは、歳差が支配し、スピン及び他の成分は、1−0.125=0.875Hz、1Hz、1+0.125=1.25Hzで変調されることを示す。データは、3Hzでサンプリングされ、フーリエ変換され、ゼロが埋められ、その後、逆フーリエ変換されて、ほぼ連続したプロットが得られる。
【0027】
図7を参照すると、位相対レンジのプロットが示される。このプロットは、所与のピークレンジ(メートル単位)についてピーク位相変位(サイクル単位)を与える。たとえば、0.1メートルピークについて、サイクル数は、
0.1m×(4πラジアン/λm)=41.9ラジアン=6.67サイクル
である。スピン成分は、0.01mピーク又は4.19ラジアン=0.67サイクル、あるいは、±0.5サイクルよりほんのわずか大きい。そのため、例におけるスピン成分は、振幅、位相、及び周波数を正確にモデル化するために、十分なスペクトルSNRを有する検出を必要とする。先に説明したように、0.0075m未満のピーク変位を有する成分は、検出され、モデル化する必要はない。
【0028】
図8を参照すると、WBERサンプルの(目標物の重心位置に対する)スペクトルのプロットが示される。プロットは、3サイクルの歳差(8秒歳差期間)及び1Hzスピン周波数についての、WBER測定の離散フーリエ変換(DFT)である。
【0029】
スピンのみが存在する場合、2Hz(スピン周波数の2倍)がナイキストサンプリングを構成することが理解されるであろう。こうしたサンプリング周波数は、通常のレーダ周波数の2倍であり、データが純粋に実数であることの結果である。
【0030】
図示例では、3Hzサンプリングレートが選択して、スピンを歳差成分に加えたものを反映し、サンプリングマージンを設けた。サンプリング周波数を選択するのにいくつかの異なる技法が使用されてもよい。1つのオプションは優先順位付きデータを使用することである。別のオプションは、ブートストラップ技法を適用することであろう。
【0031】
最小データ休止は、スペクトル線間の空間によって決定される。スピンラインに隣接する歳差ラインは、1/Tp=0.125Hz、歳差周波数だけスピンラインから離れている。特に重み付けが適用される時に、良好な分解能を提供するために、休止は、2又は3期間を有するべきである。プロットは、スピンラインの近くのサイドローブの検出を回避するために、軽い重み付けが付加されるべきであることを示す。RMS雑音ラインは、歳差に対して約−36dBで、かつ、スピンラインの下、約13dBの雑音を示す。そのため、スピンラインもまた検出することができる。したがって、3Hzデータレートは、使用可能なデータラインが全て0〜1.5Hzの間にあるスペクトルを提供する。
【0032】
図示する例についての歳差ラインは、容易に検出できるほど十分に大きい。スピン成分の場合、SNR、データレート、及び休止時間の臨界要件は、スピンを検出できるほどに十分に大きいスペクトル線を提供し、かつ、データの位相が実際に重なり合わない(unwrapped)ように十分に低い誤差をスペクトル線に提供することである。小さい成分についてスペクトル線の検出を達成することは必要ではない。位相変位apが十分に小さいため、4πap/λ≦πか、ap≦λ/4=0.0075メートルか、又は、±1/2サイクル未満である限りにおいて、出力は、位相が曖昧でないままである。ピーク変位apはメートル単位であり、ピーク変位の4π/λ倍は、ラジアン単位でのレンジ位相をもたらす。
【0033】
振幅は、ラインのマグニチュードから推定される。各ラインについて、周波数は、時間データの線形奇数重み付け(linear odd weghting)から推定され、周波数領域の「モノパルス」推定量を得る。位相は、直交成分と実数成分の比から推定される。振幅、周波数、及び位相の各推定量についての雑音誤差は、互いに相関を持たないが、独立ではない。差drは、先に述べたように、それぞれ、3つの成分、振幅、周波数、及び位相のそれぞれにおける誤差ε、すなわち、εa、εf、及びεθを生成する。
【0034】
レンジにおける振幅、周波数、及び位相誤差は、ガウス的であり、ゼロ平均であり、無相関であり、標準偏差、すなわち、
σap=sin(2πft+θ)*ap/√(2Sf) 式1
σf=2πtapcos(2πft+θ)*Δf/(Km√(2Sf)) 式2
σθ=apcos(2πft+θ)*1/√(2Sf) 式3
を有する。ここで、
ΔR=1.33サイクル/2B
Δf=1/(Ns−1)τ
Ns=サンプル数
Sf=Ns〔ap/2〕2、スペクトル信号対雑音比 式4
B=広帯域チャープ帯域幅
τ=サンプル間の時間
である。
【0035】
式1〜式3を使用した結果は、Steven M. Kayによる「Fundamental of Statistical Signal Processing: Estimation Theory」(University of Rhode Island, Prentice Hall, 1993)に記載される正弦曲線信号技法の推定と一致する。
【0036】
スペクトルの信号対雑音比Sf(式4)についての表現から、Sfは、正弦曲線運動のピーク振幅及び帯域幅に依存することがわかる。
スペクトルSNR(Sf)要件を示すプロットを示す図9を参照すると、Log(ap)=−2よりわずかに小さい信号の場合、この値又はより小さい値についてスペクトル検出は必要とされないことが観察される。そのため、SNR及び信号帯域幅についての要件は、所望のPdに適したSfのスペクトル値(サンプル数及び許容可能な偽りの警告レートに応じて、10dBよりわずかに大きい)を生成することである。
【0037】
図10を参照すると、時間の関数としての歳差WBER推定誤差のプロットが示される。プロットは、個別に、振幅、周波数、及び位相誤差のそれぞれの1σ変動を生成する。ウィンドウの縁部における周波数誤差を除いて、誤差は±0.5ラジアン未満であることを留意すべきである。WBERレンジ誤差が±0.5ラジアン未満である場合、曖昧さを回避するのに±0.5ラジアンの誤差で十分であるようにサイクル数kを推定することができる。そのため、任意の特定の時間における推定値の合計のRMS値は、1ラジアンの目標未満である。サイドローブを減らすためのデータの重み付けはさらに、縁部の値をあまり強調しなくすることができる。ウィンドウの中心の近くでは、周波数誤差は、振幅及び位相成分より小さい。
【0038】
図11を参照すると、時間の関数としてのスピンレンジ推定誤差のプロットが示される。グラフ中の時間基準は任意である。プロットは、スピンラインの再構築に関する振幅、周波数、及び位相誤差の影響を別々に示す。振幅及び位相誤差は同じマグニチュードであるが、90°ずれていることに留意することができる。当然の結果として、
σap/sin(2πft+θ)
=ap/√(2)Sf)
=σθ/cos(2πft+θ) 式5
となる。
【0039】
図12は、時間の関数としての歳差位相誤差の差のプロットを示す。歳差運動の低周波数は、±1ラジアンと比較して、無視できる振幅の位相差を生じる。
図13は、時間の関数としてのスピン位相誤差の差のプロットを示す。3Hzと15dBのS/Nにおいて、スピン位相差は、図11に示す結果の約1.7倍になるであろう。このため、図14のプロットは、10dBのSNRを持って10Hzで動作した結果を示す。
【0040】
図14を参照して、(図示される)振幅1ラジアンの誤差正弦波を考える。この正弦波がナイキストレート(2Hz)でサンプリングされる場合、位相差は±2ラジアンでピークに達する。より高いサンプリングレートの場合、図に示すように、位相差は減少する。たとえば、3Hzにおいて、4Hzより1.7×の増加が観察される。6Hzにおいて、位相差は±1ラジアンであることに留意されたい。これらの結果が示唆することは、SNRとデータレートの間のトレードオフは、異なる均衡をもたらすことになり、ナイキストより著しく高いデータレートが必要とされないバッチプロセスと比較して、低いSNRを持ったより高いデータレートが位相差ループ又は位相差ドップラーによって好まれることである。
【0041】
図15は、データレート(PRF)対SNRのプロットを示し、一定電力についての、これら2つのリソース間のトレードオフを示す。曲線は、SNR×データレート=一定のプロットである。たとえば、3HzのPRFにおける15dBのSNRは、6HzのPRFにおける12dBのSNRと同じエネルギーを必要とするであろう。3HzのPRFを有するバッチプロセスの場合、スペクトル検出プロセスにおけるより高いPdについて、15dBのSNRが好ましい。
【0042】
3Hzと15dBのSNR以上では、バッチプロセスは、運動成分のレンジ推定量を生成し、RMS誤差が1ラジアン未満であるため、位相トラッキングループに対する必要性を回避する。0.0075m以下の、スピン又は歳差成分振幅の場合、WBERスペクトル検出は必要とされない。組み合わせ式のPDRと追随フィルタリングが、位相トラッキングループを必要とする場合、オプションは、データ休止が増加するか、チャープ帯域幅が増加するか、又は、その両方の状態での3HzのPRFと15dBのSNRにおける処理、あるいは、パルスごとに位相差を推定する時の誤差を減少するための6HzのPRFと12dBのSNRの処理を含む。
【0043】
トラッキングレーダシステムに関連して説明したが、本発明の技法は、高精度ドップラー測定を必要とする他のアプリケーション(たとえば、天気レーダ)で使用される可能性があることは理解されるであろう。
【0044】
他の実施形態は、特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】位相導出式レンジ測定を実施するデータプロセッサを含むトラッキングレーダシステムのブロック図である。
【図2】位相導出式レンジ測定について、位相導出式レンジ(PDR)ユニットを使用して、曖昧でない位相値を生成する例示的なデータプロセッサのブロック図である。
【図3】目標物の例示的な弾道軌跡ならびに関連する歳差及びスピンの目標物運動成分についての、レンジ対時間のプロットである。
【図4】PDRユニットのブロック図である。
【図5】PDRユニットの広帯域包絡線レンジ(WBER)推定器の動作を示すフロー図である。
【図6】レンジ対時間のプロットである。
【図7】位相対レンジのプロットである。
【図8】重心に対するレンジのスペクトルのプロットである。
【図9】スペクトルの信号対雑音要件のプロットである。
【図10】歳差レンジ推定誤差のプロットである。
【図11】スピンレンジ推定誤差のプロットである。
【図12】歳差位相誤差の差のプロットである。
【図13】スピン位相誤差の差のプロットである。
【図14】いくつかのデータレートについての1Hz正弦波の位相差のプロットである。
【図15】一定電力についての、SNRとデータレートの間のトレードオフを示すプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ目標物のレンジを決定する方法であって、
トラッキング中に目標物の反射に基づく信号サンプルを受信し、
該信号サンプルを処理して、歳差及びスピン運動成分を含む目標物運動成分について広帯域包絡線レンジ推定量を生成し、
前記信号サンプルを測定して、曖昧な位相値を生成し、
各広帯域包絡線レンジ推定量と曖昧な位相値を使用して、レンジを示す曖昧でない位相値を生成する、
ことを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記信号サンプルについて弾道軌跡の推定量を決定し、
処理中に、前記推定された弾道軌跡を除去する、
ことをさらに含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記処理は、前記スピン運動成分の少なくとも2倍の周波数であるサンプリングレートで動作する方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法において、
前記使用は、
前記測定された曖昧な位相値を前記広帯域包絡線レンジ推定量から減算して、前記広帯域包絡線レンジ推定量に関連する誤差値を生成し、
前記誤差値を前記広帯域包絡線レンジ推定量から減算して、曖昧でない位相値を与える、
ことを含む方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、
前記誤差値のマグニチュードを決定し、
前記トラッキングを実行するレーダシステムのリソースを調整して、前記誤差の前記マグニチュードが1シグマ誤差より小さくなることを確実にする、
ことをさらに含む方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記レーダシステムリソースは信号対雑音比を含む方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記レーダシステムリソースはデータレートをさらに含む方法。
【請求項8】
請求項4記載の方法において、
前記処理は、
前記信号サンプルから広帯域包絡線レンジ推定量のスペクトルを生成し、
前記広帯域包絡線レンジ推定量を変換して、歳差、スピン、スピンに歳差を加えたもの、及びスピンから歳差を引いたものの各運動成分のスペクトル推定量を取得し、
各運動成分を検出し、
各運動成分スペクトル推定量について振幅、周波数、及び位相を推定し、
各運動成分スペクトル推定量について振幅、周波数、及び位相の前記推定量からレンジ運動の正弦曲線を形成する、
ことを含む方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、前記処理は、数サイクルの歳差運動中に得られる信号サンプルについてバッチモードで行われる方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法において、前記信号サンプルはパルスを含み、前記使用は、
レンジ運動の前記正弦曲線を使用して、前記パルス間の位相変化における整数のサイクル数kを決定する、
ことをさらに含む方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記使用は、前記測定された曖昧な位相値を前記広帯域包絡線レンジ推定量から減算する前に、前記測定された曖昧な位相値に2πkを加算することをさらに含む方法。
【請求項12】
レーダ目標物のレンジを決定する装置であって、
トラッキング中に目標物の反射に基づいて前記信号サンプルを処理して、歳差及びスピン運動成分を含む目標物運動成分について広帯域包絡線レンジ推定量を生成するステップと、
前記信号サンプルを測定して、曖昧な位相値を生成するステップと、
各広帯域包絡線レンジ推定量と曖昧な位相値を使用して、レンジを示す曖昧でない位相値を生成するステップと、
を行うメモリ内の記憶式コンピュータプログラムを備えた装置。
【請求項13】
レーダ目標物のレンジを決定する装置であって、
トラッキング中に目標物の反射に基づいて前記信号サンプルを処理して、歳差及びスピン運動成分を含む目標物運動成分について広帯域包絡線レンジ推定量を生成する手段と、
前記信号サンプルを測定して、曖昧な位相値を生成する手段と、
各広帯域包絡線レンジ推定量と曖昧な位相値を使用して、レンジを示す曖昧でない位相値を生成する手段と、
を備えた装置。
【請求項14】
信号を目標物に直接送信し、反射信号を前記目標物から直接受信する送信機/受信機と、
前記反射信号を、同相サンプル及び直交サンプルとして処理して、角度情報及びレンジ信号を生成するプロセッサと、
前記第1プロセッサによる前記処理の結果に従って、被検出目標物をトラッキングするトラッカであって、トラッキング中にレンジデータを測定し、該レンジデータから弾道軌跡を推定する、トラッカと、
前記同相サンプル及び前記直交サンプルの広帯域包絡線レンジ推定量、前記弾道軌跡推定量、及び前記同相サンプル及び前記直交サンプルの曖昧位相測定を使用して、位相が曖昧でないレンジ測定値を生成するように動作するユニットと、
を備えたシステム。
【請求項1】
レーダ目標物のレンジを決定する方法であって、
トラッキング中に目標物の反射に基づく信号サンプルを受信し、
該信号サンプルを処理して、歳差及びスピン運動成分を含む目標物運動成分について広帯域包絡線レンジ推定量を生成し、
前記信号サンプルを測定して、曖昧な位相値を生成し、
各広帯域包絡線レンジ推定量と曖昧な位相値を使用して、レンジを示す曖昧でない位相値を生成する、
ことを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記信号サンプルについて弾道軌跡の推定量を決定し、
処理中に、前記推定された弾道軌跡を除去する、
ことをさらに含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記処理は、前記スピン運動成分の少なくとも2倍の周波数であるサンプリングレートで動作する方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法において、
前記使用は、
前記測定された曖昧な位相値を前記広帯域包絡線レンジ推定量から減算して、前記広帯域包絡線レンジ推定量に関連する誤差値を生成し、
前記誤差値を前記広帯域包絡線レンジ推定量から減算して、曖昧でない位相値を与える、
ことを含む方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、
前記誤差値のマグニチュードを決定し、
前記トラッキングを実行するレーダシステムのリソースを調整して、前記誤差の前記マグニチュードが1シグマ誤差より小さくなることを確実にする、
ことをさらに含む方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記レーダシステムリソースは信号対雑音比を含む方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記レーダシステムリソースはデータレートをさらに含む方法。
【請求項8】
請求項4記載の方法において、
前記処理は、
前記信号サンプルから広帯域包絡線レンジ推定量のスペクトルを生成し、
前記広帯域包絡線レンジ推定量を変換して、歳差、スピン、スピンに歳差を加えたもの、及びスピンから歳差を引いたものの各運動成分のスペクトル推定量を取得し、
各運動成分を検出し、
各運動成分スペクトル推定量について振幅、周波数、及び位相を推定し、
各運動成分スペクトル推定量について振幅、周波数、及び位相の前記推定量からレンジ運動の正弦曲線を形成する、
ことを含む方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、前記処理は、数サイクルの歳差運動中に得られる信号サンプルについてバッチモードで行われる方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法において、前記信号サンプルはパルスを含み、前記使用は、
レンジ運動の前記正弦曲線を使用して、前記パルス間の位相変化における整数のサイクル数kを決定する、
ことをさらに含む方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記使用は、前記測定された曖昧な位相値を前記広帯域包絡線レンジ推定量から減算する前に、前記測定された曖昧な位相値に2πkを加算することをさらに含む方法。
【請求項12】
レーダ目標物のレンジを決定する装置であって、
トラッキング中に目標物の反射に基づいて前記信号サンプルを処理して、歳差及びスピン運動成分を含む目標物運動成分について広帯域包絡線レンジ推定量を生成するステップと、
前記信号サンプルを測定して、曖昧な位相値を生成するステップと、
各広帯域包絡線レンジ推定量と曖昧な位相値を使用して、レンジを示す曖昧でない位相値を生成するステップと、
を行うメモリ内の記憶式コンピュータプログラムを備えた装置。
【請求項13】
レーダ目標物のレンジを決定する装置であって、
トラッキング中に目標物の反射に基づいて前記信号サンプルを処理して、歳差及びスピン運動成分を含む目標物運動成分について広帯域包絡線レンジ推定量を生成する手段と、
前記信号サンプルを測定して、曖昧な位相値を生成する手段と、
各広帯域包絡線レンジ推定量と曖昧な位相値を使用して、レンジを示す曖昧でない位相値を生成する手段と、
を備えた装置。
【請求項14】
信号を目標物に直接送信し、反射信号を前記目標物から直接受信する送信機/受信機と、
前記反射信号を、同相サンプル及び直交サンプルとして処理して、角度情報及びレンジ信号を生成するプロセッサと、
前記第1プロセッサによる前記処理の結果に従って、被検出目標物をトラッキングするトラッカであって、トラッキング中にレンジデータを測定し、該レンジデータから弾道軌跡を推定する、トラッカと、
前記同相サンプル及び前記直交サンプルの広帯域包絡線レンジ推定量、前記弾道軌跡推定量、及び前記同相サンプル及び前記直交サンプルの曖昧位相測定を使用して、位相が曖昧でないレンジ測定値を生成するように動作するユニットと、
を備えたシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2006−528779(P2006−528779A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521829(P2006−521829)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/019056
【国際公開番号】WO2005/017553
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390039147)レイセオン・カンパニー (149)
【氏名又は名称原語表記】Raytheon Company
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/019056
【国際公開番号】WO2005/017553
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390039147)レイセオン・カンパニー (149)
【氏名又は名称原語表記】Raytheon Company
【Fターム(参考)】
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