説明

位相差フィルム

【課題】逆波長分散特性が優れ、フィルム厚みの薄い位相差フィルムを提供する。
【解決手段】特定のエチルセルロース成分を4重量%以上10重量%以下、特定のセルロースアセテートプロピオネート成分を90重量%以上96重量%以下を含有し、Re(550)が130nm以上160nm以下、逆波長分散特性Re(450)/Re(550)が0.80以上0.92以下であり、フィルム厚みが40μm以上80μm未満であることを特徴とする位相差フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置・有機ELなどの画像表示装置に用いることの出来る位相差フィルムに関するものである。より詳細には長波長側ほどレターデーションの大きい位相差フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置・有機ELなどの画像表示装置の表示性能を向上させるために、種々の位相差フィルムが使用されている。中でも、長波長ほどレターデーションが大きい位相差フィルム(以下「逆波長分散フィルム」と記す。)に関しては、反射型液晶表示装置、タッチパネルや有機ELの反射防止層としての利用が可能である。反射防止層として逆波長分散フィルムを用いる場合、位相差は測定波長λの1/4程度、450nmにおけるレターデーションと550nmにおけるレターデーションの比Re(450)/Re(550)は0.81に近いことが好ましい。また表示装置の薄型化を鑑みた場合、使用される逆波長分散フィルムも薄いことが求められる。上記のような要求特性に対し、種々の位相差フィルムが開発されている。
【0003】
特許文献1においては、セルロースアシレートとエチルセルロースからなる逆波長分散フィルムが開示されている。ここに開示された位相差フィルムはいずれもλ/4程度のレターデーションを有しており反射防止層としての使用目的に合致したものである。しかしながら、当該文献における逆波長分散フィルムは、逆波長分散特性が優れている場合にはフィルム厚みが厚く、逆にフィルム厚みが薄い場合には逆波長分散特性Re(450)/Re(550)が1に近づくというトレードオフの関係を有する。従って、フィルム厚み・逆波長分散特性をともに満足するためには、さらなる改善を要する。
【0004】
特許文献2においては、セルロースアシレートとエチルセルロースからなる逆波長分散フィルムが開示されている。ここに開示された位相差フィルムは反射防止層としての使用目的にはレターデーションの調整が必要であった。レターデーションはフィルム厚みに比例するため厚みを厚くすることによりλ/4程度のレターデーションをとることは可能である。しかし、厚みを上げることによりレターデーションを上昇させた場合、フィルムが厚くなってしまうためさらなる改善を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−121351号公報
【特許文献2】特開2006−282885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願は前記課題を解決するために見出されたものであり波長分散特性が優れ、λ/4程度のレターデーションを有し、なおかつフィルム厚みの薄い逆波長分散フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、下記(A)成分を4重量%以上10重量%以下、下記(B)成分を90重量%以上96重量%以下含有し、Re(550)が130nm以上160nm以下、逆波長分散特性Re(450)/Re(550)が0.80以上0.92以下であり、フィルム厚みが40μm以上80μm未満であることを特徴とする位相差フィルムに関する。
(A)エトキシル置換度(DSet)が次の(1)式を満足するエチルセルロース。
【0008】
2.0≦DSet≦2.8 (1)
(B)アセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が次の(2)式および(3)式を満足するセルロースアセテートプロピオネート。
【0009】
2.5≦DSac+DSpr≦3.0 (2)
2.5≦DSpr≦3.0 (3)
(ただし、Re(λ)はλnmにおけるレターデーションを表す)。
【0010】
好ましい実施態様としては、延伸倍率70%以上150%以下で延伸して得られることを特徴とする位相差フィルムに関する。
【0011】
好ましい実施態様としては、延伸倍率80%以上120%以下で延伸して得られることを特徴とする位相差フィルムに関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、延伸時の温度が、該フィルムのガラス転移温度Tgに対して、(Tg−30)から(Tg+30)℃の範囲であることを特徴とする位相差フィルムに関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、延伸時の温度が、該フィルムのガラス転移温度Tgに対して、(Tg−10)から(Tg+30)℃の範囲であることを特徴とする位相差フィルムに関する。
【0014】
さらに本発明は、上記に記載の位相差フィルムを少なくとも一枚含むことを特徴とする円偏光板に関する。
【0015】
さらに本発明は、上記に記載の円偏光板を含むことを特徴とする画像表示装置に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、逆波長分散特性が優れ、λ/4程度のレターデーションを有し、なおかつフィルム厚みの薄い逆波長分散フィルムを製造することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、下記(A)成分を4重量%以上10重量%以下、下記(B)成分を90重量%以上96重量%以下含有し、Re(550)が130nm以上160nm未満、逆波長分散特性Re(450)/Re(550)が0.80以上0.92未満であり、フィルム厚みが40um以上80um未満であることを特徴とする位相差フィルムであることを特徴とする。
【0018】
(A)エトキシル置換度(DSet)が次の(1)式を満足するエチルセルロース。
2.0≦DSet≦2.8 (1)
【0019】
(B)アセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が次の(2)式および(3)式を満足するセルロースアセテートプロピオネート。
2.5≦DSac+DSpr≦3.0 (2)
2.5≦Dpr≦3.0 (3)
(ただし、Re(λ)はλnmにおけるレターデーションを表す。)。
【0020】
(光学特性の説明)
Re(λ)とはλnmにおけるレターデーションを表し、下式(4)にて定義される。
【0021】
Re(λ)=△Nxy(λ)×d (4)
ここで、△Nxy(λ)はλnmにおける複屈折、dはフィルム厚みを表す。ここでいう複屈折とはフィルム面内の屈折率のうち最大の屈折率と最小の屈折率の差である。
【0022】
本発明の位相差をフィルム反射防止層に使用する場合、レターデーションは測定波長のおよそ1/4程度であることが好ましい。特に550nmでのレターデーションは130nm以上160nm以下である。好ましくは130nm以上150nm以下である。
【0023】
本発明の位相差フィルムを反射防止層に使用する場合、逆波長分散特性Re(450)/Re(550)は0.80以上0.92未満である。レターデーションおよび波長分散特性がこの範囲を外れると、ある特定の波長領域での反射防止が不十分となるため好ましくない。
【0024】
(フィルム厚み)
本発明の位相差フィルムを反射防止層として使用した場合の層全体の厚みを考慮すると、位相差フィルムは40μm以上80μm以下である。
位相差フィルムの厚みは所望のレターデーション・逆波長分散特性を満足する限りさらに薄くても構わない。しかしながら、フィルムが薄くなるとフィルムの強度・ハンドリング性に課題を生じる点を考慮しなければならない。逆にソルベントキャスト法によりフィルム厚みが厚いフィルムを製造する場合、溶剤の乾燥時間が長くなるため生産性が悪くなる。
【0025】
(セルロース置換度)
DSac+DSprはセルロース分子中の2、3、6位に存在する3個の水酸基が平均してどれだけアシル化されているかを表す最大3の正数である。それぞれの位置の置換度は均等でも良いし、いずれかに偏っていてもよい。またアシル基の置換度はASTM−D817−96に記載の方法にて定量することができる。
【0026】
DSetはセルロース分子中の2、3、6位に存在する3個の水酸基が平均してどれだけエトキシル化されているかを表す最大3の正数である。それぞれの位置の置換度は均等でもよいし、いずれかの位置に偏っていてもよい。また、エーテル置換度はASTM−D4794−94に記載の方法にて定量することができる。
【0027】
エチルセルロースはその置換度により溶剤に対する溶解性が大きく変化することが知られているが、ソルベントキャスト法によって本発明に位相差フィルムを作成する場合、エチルセルロースと前述したセルロースアセテートプロピオネートとの両方を溶解する溶剤を選択する必要がある。置換度が2.0を下回ると単独で溶解する溶剤の種類が限定される上に、フィルムの吸湿性が大きくなり寸法安定性に欠ける傾向にある。また置換度が2.9を超えると位相差発現性が悪くなるため好ましくない。そのためDSetの範囲は2.0以上2.8以下であり、好ましくは2.2以上2.6以下である。
【0028】
セルロースアセテートプロピオネートの置換度DSac+DSprは2.5よりも小さいと逆波長分散性の程度が弱く、好ましくない場合がある。従って、DSac+DSprは2.5以上3.0以下である。DSprは波長分散がさらに優れるために2.5以上3.0以下である。
【0029】
(配合比)
本発明の位相差フィルムは上記(A)成分を4重量部以上10重量部以下、上記(B)成分96重量部以上90重量部以下含有することを特徴とする。(A)成分がこの範囲よりも少ないと、狙いのレターデーションを発現するためのフィルム厚みが大きくなる傾向があり、好ましくない。また(B)成分がこの範囲よりも少ないと十分な逆波長分散特性を有することができないため好ましくない。十分なレターデーションと逆波長分散特性を有し、なおかつフィルム厚みを薄くするためには(A)成分を5重量部以上9重量部以下、(B)成分を91重量部以上95重量部以下であることがなお好ましい。
【0030】
また、(A)成分、(B)成分の配合割合は使用する樹脂のDSac、DSprおよびDSetによっても適宜調整するべきである。これらの値はセルロースの水酸基の置換度を表すことは前述した通りである。これら置換基の量はレターデーションおよび逆波長分散特性に若干ながら影響を与える。したがって狙いのレターデーションおよび逆波長分散特性に応じて、適宜配合割合を微調整することが好ましい。
【0031】
(第三成分)
フィルム化の際に、必要に応じて少量の可塑剤や熱安定剤、紫外線安定剤等の添加剤を第3成分として加えても良い。特に得られたフィルムが脆い場合、延伸などの加工特性を改善する目的で可塑剤を加えることは有効である。これら第三成分の配合量は、狙いの光学特性を損なわない範囲で任意である。
【0032】
(分子量)
本発明で使用される樹脂の分子量に関しては、フィルム成型が可能な限り特に限定されるものではない。例えば、上記(A)成分と(B)成分の場合、靱性に優れたフィルムを得るためには、セルロース系樹脂の数平均分子量が、10,000から300,000であることが好ましい。天然樹脂を原料としたセルロース系樹脂を用いる場合、入手容易性の観点から、20,000から100,000であることがさらに好ましい。分子量が小さすぎると、フィルムが脆くなり、また、分子量が高すぎると、溶媒への溶解性が悪く、樹脂溶液の固形分濃度が低くなり、溶剤使用量が多くなるため、製造上好ましくない。
【0033】
(製膜方法)
本発明の位相差フィルムは、延伸することにより製造することができる。したがって未延伸フィルムの製造方法についてはいかなる手段を用いてもよい。
【0034】
未延伸フィルムの代表的な成型方法として樹脂を溶融してTダイなどから押出してフィルム化する溶融押出法と、有機溶剤に樹脂を溶解して支持体上にキャストし過熱により溶剤を乾燥しフィルム化するソルベントキャスト法が挙げられる。厚み精度の良い光学フィルムが比較的容易に得られるという理由からソルベントキャスト法を用いることが好ましい。
【0035】
ソルベントキャスト法を採用する場合の溶剤は特に制限はない。乾燥効率の観点からは沸点が低い溶剤ほど好ましく具体的には100℃以下の低沸点溶剤が好ましい。具体的にはケトン系溶剤、エステル系溶剤が使用可能である。また塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素溶剤は樹脂材料を溶解しやすく沸点も低いため、好適である。とくに塩化メチレンは沸点が40℃と低く、なおかつ、乾燥中の火災等に対する安全性も高いので、本発明の光学フィルムを製造する際に用いる溶剤として特に好ましい。
【0036】
本発明において用いる溶剤は塩化メチレンを単独で使用することが、回収・再利用の観点から好ましいが、塩化メチレン70〜99重量%と、炭素数3以下のアルコールを1〜30重量%を含む混合溶剤を用いることも可能である。混合溶剤を使用するに当たっては、前記炭素数3以下のアルコールとしてはエチルアルコールが安全で、沸点も低く好ましい。さらに、コストを抑制するため、炭素数3以下のアルコール100重量部のうち、エチルアルコール以外の炭素数3以下のアルコールを1〜10重量部含むことが好ましい。前記エチルアルコール以外の炭素数3以下のアルコールとしては、安全性や沸点の観点から、イソプロピルアルコールを用いることが特に好ましい。また、ここで言う溶剤とは乾燥工程や延伸工程においてフィルムにかかる最大温度よりも沸点が低い溶剤の事を指す。
【0037】
(延伸倍率)
本発明の位相差フィルムを得るためには、上記で得られた未延伸フィルムを公知の延伸方法に少なくとも1軸に延伸して配向処理を行う。延伸方法としては1軸や2軸の熱延伸法を採用することができる。本発明の位相差フィルムを得るためには縦1軸延伸を採用することが好ましい。また、反射防止層として本発明の位相差フィルムを使用する場合には1軸性が重要となるため自由端1軸延伸が好ましい。
【0038】
延伸倍率Xは下式(5)で表される。ここでL0は未延伸フィルムの長さ、Lは延伸フィルムの長さである。
X=(L−L0)/L0×100 (5)
【0039】
本発明の位相差フィルムを製造する際の延伸倍率は70%以上150%以下であることが好ましい。延伸倍率が150%よりも大きいとフィルムが破断する可能性がある。また延伸倍率が高くなるに伴いフィルムの厚みが減少する。(4)式に示したようにレターデーションは厚みdに比例するため極端な高延伸倍率では狙いのレターデーションを発現しない可能性がある。また延伸倍率が70%よりも低いと複屈折が小さくなり、狙いのレターデーションを実現するためのフィルム厚みが大きくなってしまう。十分な複屈折を得ると同時に破断を防止し製造上の安定性を確保するために延伸倍率は80%以上120%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
(延伸温度)
延伸温度はフィルムのガラス転移温度Tgに対して(Tg−30)℃から(Tg+30)℃までの範囲で選択されることが好ましい。特に好ましい延伸温度は(Tg−10)℃から(Tg+30)℃までの範囲である。この温度範囲とすることにより、延伸時のフィルム白化を防止でき、また、得られた位相差フィルムの位相差ばらつきを小さくすることができる。
【0041】
(ソルベントキャスト法の基材)
ソルベントキャスト法によりフィルム化する際、樹脂を前記溶剤に溶解したのち、支持体にキャストし、乾燥してフィルムとする。溶液の好ましい粘度は10ポイズ以上50ポイズ以下、さらに好ましくは15ポイズ以上50ポイズ以下である。好ましい支持体としてはステンレス鋼のエンドレスベルトやポリイミドフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のようなフィルムを用いることができる。
【0042】
キャスト後の乾燥は、支持体に担持されたまま行うことも可能であるが、必要に応じて、自己支持性を有するまで予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥は一般にはフロート法や、テンターあるいはロール搬送法が利用できる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学特性の不均一が生じやすい。またテンター法の場合、フィルム両端を支えているピンあるいはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴う幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡縮制御を行う必要がある。一方、ロール搬送の場合、安定なフィルム搬送のためのテンションは原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい特徴を有する。従って、フィルムの乾燥は、ロール搬送法によることが最も好ましい。また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないよう、湿度を低く保った雰囲気で乾燥することは、機械的強度と透明度の高い本発明フィルムを得るには有効な方法である。
【0043】
(円偏光板)
本発明の位相差フィルムは反射防止層として用いることができる。反射防止層の一形態として、本発明の位相差フィルムを含む円偏光板が挙げられる。円偏光板とは無偏光の光を円偏光に変換する光学素子である。円偏光板の構成として、偏光子の吸収軸と本発明の位相差フィルムの遅相軸とが45°をなすように貼合した積層体が挙げられる。この際用いられる粘着層・偏光子保護フィルムは任意である。これら反射防止層は、液晶表示装置・有機ELなどの画像表示装置に有用に使用される。また、本発明の位相差フィルムを偏光子保護フィルムとして兼用することもできる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
(測定方法)
本明細書に記載の特性値等は、以下の評価法によって得られたものである。
(1)リターデーション・逆波長分散特性
シンテック社製OPTIPROにより、レターデーション・波長分散特性を測定した。
(2)厚み
アンリツ製電子マイクロメーターにより測定した。
(3)ガラス転移温度(Tg)の測定
セイコー電子工業製示差走査熱量計DSC220Cにより、JIS K−7121に記載の方法にて測定した。
【0046】
(参考例1)(フィルム1の作製:A成分:B成分=5:95)
(A)成分として10gのダウケミカル社製エトセルMED−70(DSet=2.3)、(B)成分として190gのイーストマンケミカル社製CAP482−20(DSac=0.1、DSpr=2.7)、を1200gの塩化メチレン中に溶解させた。得られた樹脂溶液を2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと書く)上に流延後、乾燥後厚みがおよそ90μmとなるようにただちにバーコーターで均一な膜状に塗布した。40℃の乾燥雰囲気下で5分、80℃の乾燥雰囲気下で5分、105℃の乾燥雰囲気下で3分乾燥させ、塩化メチレンを除いた。乾燥後、得られたフィルムをPETフィルムより剥離した。得られたフィルムを500mm×300mmアルミ製の枠に固定し110℃の乾燥雰囲気にて15分乾燥させ、残存塩化メチレンを除き、フィルム1とした。フィルム1のガラス転移温度を測定したところ、140℃であった。
【0047】
(参考例2)(フィルム2の作製:A成分:B成分=7:93)
(A)成分として14gのダウケミカル社製エトセルMED−70(ESet=2.3)、(B)成分として186gのイーストマンケミカル社製CAP482−20(DSac=0.1、DSpr=2.7)、を1200gの塩化メチレン中に溶解させた。得られた樹脂溶液を2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと書く)上に流延後、乾燥後厚みがおよそ75μmとなるようにただちにバーコーターで均一な膜状に塗布した。以下、参考例1と同様に乾燥を行いフィルム2を得た。フィルム2のガラス転移温度を測定したところ、140℃であった。
【0048】
(参考例3)(フィルム3の作製:A成分:B成分=8:92)
(A)成分として16gのダウケミカル社製エトセルMED−70(ESet=2.3)、(B)成分として184gのイーストマンケミカル社製CAP482−20(DSac=0.1、DSpr=2.7)、を1200gの塩化メチレン中に溶解させた。得られた樹脂溶液を2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと書く)上に流延後、乾燥後厚みがおよそ72μmとなるようにただちにバーコーターで均一な膜状に塗布した。以下、参考例1と同様に乾燥を行いフィルム3を得た。フィルム3のガラス転移温度を測定したところ139℃であった。
【0049】
(参考例4)(フィルム4の作製:A成分:B成分=11:89)
(A)成分として22gのダウケミカル社製エトセルMED−70(ESet=2.3)、(B)成分として178gのイーストマンケミカル社製CAP482−20(DSac=0.1、DSpr=2.7)、を1200gの塩化メチレン中に溶解させた。得られた樹脂溶液を2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと書く)上に流延後、乾燥後厚みがおよそ55μmとなるようにただちにバーコーターで均一な膜状に塗布した。以下、参考例1と同様に乾燥を行いフィルム4を得た。フィルム4のガラス転移温度を測定したところ、139℃であった。
【0050】
(参考例5)(フィルム5の作製:A成分:B成分=3:97)
(A)成分として6gのダウケミカル社製エトセルMED−70(ESet=2.3)、(B)成分として194gのイーストマンケミカル社製CAP482−20(DSac=0.1、DSpr=2.7)、を1200gの塩化メチレン中に溶解させた。得られた樹脂溶液を2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと書く)上に流延後、乾燥後厚みがおよそ88μmとなるようにただちにバーコーターで均一な膜状に塗布した。以下、参考例1と同様に乾燥を行いフィルム5を得た。フィルム5のガラス転移温度を測定したところ、141℃であった。
【0051】
(実施例1)
フィルム1を160℃にて120%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0052】
(実施例2)
フィルム2を160℃にて70%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0053】
(実施例3)
フィルム2を160℃にて100%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0054】
(実施例4)
フィルム2を160℃にて120%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0055】
(実施例5)
フィルム3を160℃にて100%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0056】
(実施例6)
フィルム3を160℃にて120%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0057】
(比較例1)
フィルム4を160℃にて70%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0058】
(比較例2)
フィルム4を160℃にて100%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0059】
(比較例3)
フィルム4を160℃にて120%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0060】
(比較例4)
フィルム5を160℃にて70%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0061】
(比較例5)
フィルム5を160℃にて100%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0062】
(比較例6)
フィルム2を160℃にて50%自由端1軸延伸を行った。延伸フィルムの中央部より50mm×40mmのフィルムを切り出し測定に用いた。結果を表1に示した。
【0063】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分を4重量%以上10重量%以下、下記(B)成分を90重量%以上96重量%以下含有し、Re(550)が130nm以上160nm以下、逆波長分散特性Re(450)/Re(550)が0.80以上0.92以下であり、フィルム厚みが40μm以上80μm未満であることを特徴とする位相差フィルム。
(A)エトキシル置換度(DSet)が次の(1)式を満足するエチルセルロース。
2.0≦DSet≦2.8 (1)
(B)アセチル置換度(DSac)およびプロピオニル置換度(DSpr)が次の(2)式および(3)式を満足するセルロースアセテートプロピオネート。
2.5≦DSac+DSpr≦3.0 (2)
2.5≦DSpr≦3.0 (3)
(ただし、Re(λ)はλnmにおけるレターデーションを表す)。
【請求項2】
延伸倍率70%以上150%以下で延伸して得られることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
延伸倍率80%以上120%以下で延伸して得られることを特徴とする請求項2または3に記載の位相差フィルム。
【請求項4】
延伸時の温度が、該フィルムのガラス転移温度Tgに対して、(Tg−30)から(Tg+30)℃の範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項5】
延伸時の温度が、該フィルムのガラス転移温度Tgに対して、(Tg−10)から(Tg+30)℃の範囲であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の位相差フィルムを少なくとも一枚含むことを特徴とする円偏光板。
【請求項7】
請求項6に記載の円偏光板を含むことを特徴とする画像表示装置。


【公開番号】特開2011−112842(P2011−112842A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268754(P2009−268754)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】