説明

位置依存性干渉の相殺

【課題】位置追跡方法を提供する。
【解決手段】位置追跡方法であって、医療用プローブの遠位端にある主位置変換器からの信号を、この信号を処理して遠位端の第1の位置を見出すプロセッサに接続するための、プローブの近位端にあるコネクタにプローブを通して達する配線を介して、受信することを含む。コネクタにおいて信号に生じる干渉に関する較正データを、近位端の位置の関数として収集する。プローブの近位端にある補助位置変換器の第2の位置を測定する。測定した第2の位置及び較正データに応じて信号内の干渉を相殺する。干渉を相殺した後に、信号に基づいて第1の位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広くは侵襲性プローブ、具体的には体腔内の医療用プローブの位置決定に関する。
【背景技術】
【0002】
広範な医療手技には、センサ、管、カテーテル、分注器具、及びインプラント等の物体を、体内に配置することが含まれる。位置検知システムは、このような物体を追跡するために開発されている。磁気的位置検知は、当該技術分野において既知の方法の1つである。磁気的位置検知においては、典型的に、磁界発生器が患者の外部の既知の位置に配置される。プローブの遠位端内にある1つ又は2つ以上の磁界センサがこれらの磁界に応じて電気信号を生成し、この信号の処理によりプローブの遠位端の位置座標が決定される。これらの方法及びシステムは、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、PCT国際特許公開第1996/005768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455 A1号、同第2003/0120150 A1号及び同第2004/0068178 A1号に記述されており、これらは参考として全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
参照によりその開示が本明細書に組み込まれる米国特許第6,370,411号は、2つの部分、すなわち、患者の体内に挿入される最大限に単純化したカテーテル、及びカテーテルの近位端とコンソールとの間を接続する接続ケーブル、を有するプローブについて記述する。カテーテルは、同様のモデルの他のカテーテルとは共有しない、実質的にそのカテーテルに特化した情報のみを持つマイクロ回路を含む。ケーブルは、カテーテルからの情報を受信して、それを好適な形態でコンソールに伝達するアクセス回路を含む。いくつかの実施形態では、ケーブルは特定のモデル又はタイプの全カテーテルとともに作動し、したがってカテーテルが交換されてもケーブルを交換する必要はない。カテーテルが1回限りの使用を予定する場合でも、患者と接触することのないケーブルについては交換不要である。
【0004】
参照によりその開示が本明細書に組み込まれる米国特許出願第2006/0074289 A1号では、ハンドルに、外部基準系内でこのハンドルの配向を示す信号を生成する配向センサを備える、内視鏡プローブについて述べている。この配向センサの出力を用いて、内視鏡処置開始時におけるハンドルの初期位置及び配向に対するハンドルの動きを、検知することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で述べる本発明の一実施形態は、次のことを含む位置追跡方法を提供する:
すなわち、医療用プローブの遠位端にある主位置変換器からの信号を、この信号を処理して遠位端の第1の位置を見出すプロセッサに接続するための、プローブの近位端にあるコネクタにプローブを通して達する配線を介して、受信することと、
コネクタにおいて信号に生じる干渉に関する較正データを、近位端の位置の関数として収集することと、
プローブの近位端にある補助位置変換器の第2の位置を測定することと、
測定した第2の位置及び較正データに応じて信号内の干渉を相殺することと、
干渉を相殺した後に、信号に基づいて第1の位置を算出することと、である。
【0006】
いくつかの実施形態では、医療用プローブはカテーテルを含む。一実施形態では、信号は、プローブの近傍に印加され、主位置変換器によって検知される1つ又は2つ以上の磁界に応じて、主位置変換器により生成される。別の実施形態では、補助位置変換器がコネクタに隣接して取り付けられる。補助位置変換器とコネクタは、プローブのハンドルに結合されてもよい。別の実施形態では、較正データを収集することは、近位端を干渉源との関連で複数の位置に配置することと、補助位置変換器から近位端の各位置を示す補助位置信号を収集することと、補助位置信号の関数として干渉を測定することと、を含む。
【0007】
更に別の実施形態では、第2の位置を測定することは、近位端の近傍に1つ又は2つ以上の磁界を印加することと、この磁界に応じて補助変換器によって生成される信号を補助変換器から受信することと、受信信号に基づいて第2の位置を算出することと、を含む。更に別の実施形態では、本方法は、算出された第1の位置を操作者に提示することを含む。
【0008】
本発明の一実施形態により、更に次のものを含む装置が提供される。
【0009】
すなわち、主位置変換器を備える遠位端、補助位置変換器を備える近位端、遠位端を近位端に接続するコネクタ、及び医療用プローブを通して主位置変換器をコネクタに結合する配線を含む、医療用プローブと、
主位置変換器から配線を介して遠位端の第1の位置を示す信号を受信し、コネクタにおいて信号に生じる干渉に関する較正データを近位端の位置の関数として収集し、補助位置変換器の第2の位置を測定し、測定された第2の位置及び較正データに応じて信号内の干渉を相殺し、かつ干渉を相殺した後に、信号に基づいて第1の位置を算出するように構成される、プロセッサと、である。
【0010】
更に本発明の一実施形態により、主位置変換器を備える遠位端と、補助位置変換器を備える近位端と、遠位端を近位端に接続するコネクタと、医療用プローブを通して主位置変換器をコネクタに結合する配線とを含む医療用プローブとともに作動する、コンピュータソフトウェア製品であって、この製品が、プログラム命令が内部に格納された非一過性のコンピュータ可読媒体を含み、この命令が、コンピュータによって読み出されたときに、コンピュータが、主位置変換器から配線を介して遠位端の第1の位置を示す信号を受信し、コネクタにおいて信号に生じる干渉に関する較正データを近位端の位置の関数として収集し、補助位置変換器の第2の位置を測定し、測定された第2の位置及び較正データに応じて信号内の干渉を相殺し、かつ干渉を相殺した後に、信号に基づいて第1の位置を算出するようにさせる、製品が提供される。
【0011】
本発明は、以下のより詳細な実施形態と、その図面の記述により、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による、干渉相殺を利用する医療用位置追跡システムの概略絵画図。
【図2】本発明の一実施形態による、干渉相殺を利用する医療用位置追跡システムの概略絵画図。
【図3】本発明の一実施形態による、干渉相殺を利用してカテーテルの位置を測定する方法を概略的に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概観
心臓内電気的マッピング及び心臓アブレーションのような様々な診断及び治療処置において、患者の体内に挿入される侵襲性のプローブが用いられる。これらの処置においては、体腔内におけるプローブの場所を確認することが重要となることがある。この場所は、遠位先端に取り付けた位置変換器からの信号を処理するコンソールによって決定することができる。
【0014】
プローブの組み立ては、使い切りの遠位部品(例えば、体腔内に挿入されるカテーテルの部品)と、再利用可能な近位部品(例えば、遠位部品から処理コンソールに信号を搬送するケーブル)とを用いて行われることがある。これらプローブの遠位及び近位部品は、典型的にはコネクタを用いて相互に接続される。コネクタは、例えばプローブのハンドル内に取り付けることができる。この「分割ハンドル」構成において、遠位先端内の位置変換器からコンソールに信号を伝達する配線は、干渉の取り込みを、例えば遮蔽及び/又は撚り対線を用いることによって遮蔽することができる。しかしながら、コネクタの近傍においては、コネクタピンに接続するために電線の撚りをほぐす必要が生じ得るために、連続的遮蔽を実現することが困難な場合がある。
【0015】
位置追跡システムの中には、外部磁界発生器によって生成された磁界に応じて、遠位先端内の位置変換器が信号を生成するものがある。多くの実用的な実施態様においては、プローブ内の配線を介して送られる信号は、外部磁界と比較して微弱である。その結果として、配線は外部磁界からの干渉を受けることがあり、この干渉によってシステムの位置測定結果が歪められる恐れがある。上述したように、コネクタの近傍においては遮蔽が劣化する恐れがあることから、この領域における干渉の取り込みは特に深刻となり得る。
【0016】
本発明の実施形態は、コネクタの近傍で取り込まれる干渉を相殺する方法及びシステムを提供する。いくつかの実施形態では、付加的な補助位置変換器がハンドル内に、コネクタにごく近接して取り付けられる。補助位置変換器により生成される信号が、ハンドル(及び、したがってコネクタ)の場所及び配向を示す。予備的較正処理において、補助位置変換器により生成された信号に応じて、干渉がハンドル位置の関数として測定される。
【0017】
実際の医療処置中において、コンソールが、遠位先端内の位置変換器(これを主位置変換器と呼ぶ)及びハンドル内の補助位置変換器からの位置測定結果を受信する。コンソールは、ハンドル内の補助位置変換器から受信した信号に基づき、較正データを用いて、主位置変換器から受信した信号内の干渉を相殺することにより、遠位先端の位置を決定する。これにより、遠位先端の位置を、強い干渉の存在下においても高精度で測定することができる。
【0018】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、干渉相殺を利用する医療用位置追跡システム20の図である。システム20は例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,California)が製造するCARTO(商標)システムを基にしてよい。システム20は、カテーテルなどの医療用プローブ22、及び制御コンソール24を含む。以下に述べる実施形態では、プローブ22は、例えば心臓26内の電位マッピング又は心臓組織のアブレーションの実施のような診断又は治療処置に使用することを想定している。あるいは、プローブ22は、心臓又はその他の体器官におけるその他の治療及び/又は診断目的のために準用することもできる。
【0019】
心臓専門医などの操作者28は、患者30の血管系を通してプローブ22を挿入し、プローブ22の遠位端32が患者の心臓26の心腔内に入るようにする。操作者28は、プローブ22をハンドル34において保持した状態でプローブを進め、遠位先端36を所望の場所に位置付ける。ハンドル34はプローブ22をケーブル38に結合し、ケーブルは好適なコネクタを介してコンソール24に接続される。プローブ22、特にハンドル34の構成を、次の図2により詳細に示す。
【0020】
コンソール24は、磁気的位置検知を用いて心臓26内の遠位先端36の位置座標を決定する。この位置座標を決定するために、コンソール24内の駆動回路40が磁界発生器42を駆動し、患者30の身体内で磁界を生成する。典型的には、磁界発生器42はコイルを備え、このコイルは患者胴体の下方、患者30の外部の既知の位置に設置されるこれらのコイルは、心臓26を包含する既定の作業体積内に磁界を生成する。遠位先端36及びハンドル34に結合された磁界変換器が、これらの磁界に応じて電気信号を生成する。遠位先端36及びハンドル34の位置座標(典型的には、場所及び配向座標の両方を含む)を決定するために、コンソール24内の信号プロセッサ44がこの電気信号を処理する。先に述べたように、プロセッサ44は、ハンドル34内の補助位置変換器から受信した信号に基づいて、遠位先端36内の主位置変換器から受信した信号内の干渉を相殺することができる。両位置変換器を、次の図2に示す。
【0021】
プロセッサ44は、典型的には、プローブ22からの信号を受信しコンソール24のその他の構成要素を制御するのに適したフロントエンド回路及びインターフェース回路を備える、汎用コンピュータを構成する。プロセッサ44は、本明細書に記述される機能を実行するよう、ソフトウェアでプログラムし得る。このソフトウエアは、例えばネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードするか、又は光学的、磁気的、又は電子的記録媒体などの、非一過性の実体のある媒体上に提供することができる。あるいは、プロセッサ44の機能の一部又は全部を、専用の、若しくはプログラム可能なデジタルハードウェアコンポーネントによって、又は、ハードウェア及びソフトウェア要素の組み合わせを用いることによって実行してもよい。
【0022】
入出力(I/O)インターフェース46により、コンソール24はプローブ22と相互作用することが可能になる。プローブ22から(インターフェース46及びシステム20のその他の構成要素を介して)受信した信号に基づき、プロセッサ44が表示部48を駆動し、操作者28に、患者の体内における遠位先端36の位置を示す画像50、並びに進行中の処置に関するステータス情報及びガイダンスを提示する。
【0023】
これに代え又は加えて、システム20は、プローブ22を患者30の体内で操作し作動させるための自動機構(図示せず)を備えてもよい。このような機構は、典型的には、プローブ22の長手方向の動き(前進/進退)及び遠位端32の横方向の動き(偏位/操舵)の両方を制御する能力を備える。このような実施形態では、以下に更に説明するように、プロセッサ44が、プローブ及びハンドル内の磁界変換器により提供される信号に基づいてプローブ22の動きを制御するための制御入力を生成する。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態による、システム20の別の概略絵画図である。図2はプローブ22、特にハンドル34の構成を、より詳細に示す。同図に示すようにハンドル34は、プローブ22をケーブル38に接続し、好適なコネクタ56を介して結合する遠位部52と近位部54とを備える。ハンドルの近位部54及びケーブル38を、プローブの近位部と呼ぶこともある。ハンドルの遠位部56及びカテーテル22を、プローブの遠位部と呼ぶこともある。
【0025】
遠位先端36は、磁界発生器42に対する遠位先端の位置座標を示すコンソール24への信号を生成する主位置変換器58を備える。補助位置変換器60がハンドル34の近位部54に取り付けられ、磁界発生器42に対するハンドルの位置座標を示すコンソール24への信号を生成する。各位置変換器58及び60は、1つ又は2つ以上の小型コイルを含んでよく、典型的には、異なる軸の周りに配向された複数のコイルを含む。あるいは、位置変換器58及び60は別のタイプの磁気変換器、位置変換器として作用する電極、又は他のタイプの位置変換器、例えばインピーダンス系若しくは超音波位置変換器を含み得る。図2には遠位先端36に単一の位置変換器を備えるプローブを示すが、本発明の実施形態は、遠位先端及び/又は遠位端32に複数の位置変換器を備えるプローブを利用することもできる。医療処置中において、遠位先端36が心臓26内に位置するときに、プロセッサ44は位置変換器58及び60から受信した信号を用いて遠位先端の位置を算出する。
【0026】
先に述べたように、位置変換器58及び60はその構成によって微弱な信号を生成することがあり得る。近位部54に結合される増幅器62が、位置変換器58及び60から受信した信号を増幅する。図2に示す「分割ハンドル」構成により、プローブ22が使用後に廃棄されるのに対して、再使用可能な近位部54内に増幅器62及び補助位置変換器60のような構成要素を収容することが可能となる。分割ハンドル構成の更なる態様は、先に引用した米国特許第6,370,411号に記述されている。
【0027】
代替的な実施形態では、位置変換器58、60及び磁界発生器42の役割が逆であってもよい。つまり、駆動回路40が位置変換器58及び60内の磁界発生器を駆動することによって、磁界を生成してもよい。コイル42は、この磁界を検知し、この磁界の成分の振幅を示す信号を生成するように構成されていてもよい。この実施形態では、プロセッサ44が、心臓26内の遠位先端36の位置座標を決定するために、コイル42からの信号を受信し処理する。
【0028】
図1及び2は特定のシステム構成を示すが、本発明の実施形態の実施にはその他のシステム構成を使用することもでき、したがって、それらは本発明の趣旨及び範囲内であると考えられる。例えば、以下に述べる方法は、インピーダンス系又は超音波位置変換器など、他のタイプの位置変換器を用いて適用してもよい。本明細書で用いる場合の「位置変換器」という用語は、プローブ22又はハンドル34上に取り付けられる素子であって、各素子の座標を示す信号をコンソール24に受信させるものを指す。したがって位置変換器は、プローブ若しくはハンドル上にこの変換器により受信されたエネルギーに基づいて制御ユニットへの位置信号を生成する受信器を備えることができ、又は、プローブ若しくはハンドル外部の受信器で検出されるエネルギーを発する送信器を備えることができる。更に、以下に記載する方法は同様に、心臓内、並びにその他の身体器官及び身体領域内の両方において、カテーテルだけではなく、他のタイプのプローブを使用するマッピング及び測定用途に適用できる。
【0029】
干渉相殺を利用した位置測定
ケーブル38は、主位置変換器58からコンソール24にハンドル34を介して信号を伝達する。上述したように、ケーブル38は、主位置変換器の信号を歪める恐れのある干渉を受けることがある。結果として、コンソール24は、遠位先端36の位置の算出においてエラーを生じる恐れがある。ケーブル38が受ける干渉は、磁界発生器42により、プローブの近傍の様々な電気信号により、又は他のいずれかのソースにより生成される、相対的に強力な磁界によって生じ得る。
【0030】
ケーブル38は、典型的には、このような望ましくない干渉の取り込みを避けるために、遮蔽撚り対線を備える。しかしながら、コネクタ56の近傍では、コネクタピンへの相互接続のために遮蔽性能が劣化し得る。したがって、コネクタの近傍においてある程度の残留干渉が取り込まれることがある。
【0031】
システム20は、補助位置変換器60を用いてこの干渉を予め較正し相殺することにより、コネクタ56における干渉の取り込みの影響を低減する。いくつかの実施形態では、プロセッサ44は、最初に干渉の取り込みを干渉源に対するハンドル34の位置(場所及び配向)の関数として測定する。プロセッサ44は次に、この較正データを、実際の医療処置中に主位置変換器58から受信した信号内の干渉を相殺するために用いる。これにより遠位先端36の位置を、強い干渉の存在下においても高精度で算出することができる。更に、開示した技術によれば、ケーブル38の遮蔽要件を緩和できる場合もあり得る。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態による、干渉相殺を利用してプローブ22の遠位先端36の位置を測定する方法を概略的に示すフローチャートである。予備的較正工程70において、操作者28は、ハンドル34を磁界発生器42(又はその他の干渉源)との関連で複数の位置(場所及び配向)に配置する。各ハンドル位置において、プロセッサ44がコネクタ56における干渉の取り込みを、(補助位置変換器60によって測定される)ハンドル34の位置の関数として測定する。これによりプロセッサ44は、ハンドル内の補助位置変換器の出力の関数としての干渉振幅を較正する。このハンドル位置の関数として測定された干渉を、較正データと称する。主位置変換器58は、典型的には、較正処理中においてはその機能が停止されている。
【0033】
医療処置中に操作者28は、プローブ配置工程72においてハンドル34を操り、プローブ22を心臓26内に配置する。プロセッサ44は、主測定工程74において、主位置変換器58から遠位先端36の位置を示す位置信号を受信する。加えてプロセッサ44は、補助測定工程76において、補助位置変換器60からハンドル34の位置を示す位置信号を受信する。
【0034】
プロセッサ44は、干渉相殺工程78において、主位置変換器58から受信した信号内の干渉を、測定されたハンドル34の位置に基づいて相殺する。典型的には、プロセッサ44は、工程76において測定されるハンドルの現在位置に伴う較正データを問い合わせることで、このハンドル位置において予測される干渉レベルを決定できるようにする。プロセッサ44は次いで、上述した工程74において測定された、主位置変換器58の信号から予測される干渉レベルを減ずる。
【0035】
干渉を相殺した後に、プロセッサ44は、先端位置決め工程80において遠位先端36の位置を計算する。この算出は主位置変換器から受信された位置信号を用いて、この信号から干渉が相殺された後に実行される。最後に、出力工程82において、プロセッサ44は画像50を表示部48上に提示することにより、遠位先端36の場所を操作者28に表示する。方法は上述した工程72に戻る。
【0036】
これに代え又は加えて、位置測定結果及び干渉相殺スキームを、上述したようにプローブ22を操作し作動させるための自動機構の閉ループ制御中において用い、この自動機構が遠位先端36を確実に適切な場所に配置できるようにすることができる。
【0037】
本明細書に記載した実施形態は主として医療用位置追跡システムにおける干渉相殺に関するが、開示した技術は、他の様々な用途においても位置依存性干渉の相殺に用いることが可能である。
【0038】
以下の請求項における全ての手段又は工程、更には機能要素に対応する構造、材料、行為、及び等価物は、特に請求されるように、任意の構造、材料、又はその他請求された要素と組み合わせて機能を行うための行為を含むことを目的とする。本開示の説明は、実例及び説明の目的で提示しているが、包括的であること、又は本開示で開示される形状に限定されることを意図しない。本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの改変及び変更が当業者にとって明らかであろう。これらの実施形態は、本開示の原理及び実際的な用途を最も良く説明し、様々な変更形態を伴う様々な実施形態について、他の当業者が本開示を理解することを可能にするために選択され、説明されたものであり、企図される特定の使用に適したものである。
【0039】
添付した「特許請求の範囲」では、本開示の趣旨及び範囲内に該当する全てのかかる特徴及び利点を含むものとする。当業者であれば多くの改変及び変更を容易に思いつくため、本開示は、本明細書に記載される、限定された数の実施形態に限定することを意図しない。したがって、当然のことながら、本開示の趣旨及び範囲内に該当する、好適な全ての変化、改変、及び等価物が使用可能である。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 位置追跡方法であって、
医療用プローブの遠位端にある主位置変換器からの信号を、該信号を処理して前記遠位端の第1の位置を見出すプロセッサに接続するための、前記プローブの近位端にあるコネクタに前記プローブを通して達する配線を介して、受信することと、
前記コネクタにおいて前記信号に生じる干渉に関する較正データを前記近位端の位置の関数として収集することと、
前記プローブの前記近位端にある補助位置変換器の第2の位置を測定することと、
前記測定した第2の位置及び前記較正データに応じて前記信号内の前記干渉を相殺することと、
前記干渉を相殺した後に、前記信号に基づいて前記第1の位置を算出することと、を含む、方法。
(2) 前記医療用プローブがカテーテルを備える、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記信号が、前記プローブの近傍に印加され、前記主位置変換器によって検知される1つ又は2つ以上の磁界に応じて、前記主位置変換器により生成される、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記補助位置変換器が、前記コネクタに隣接して取り付けられる、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記補助位置変換器及び前記コネクタが、前記プローブのハンドルに結合される、実施態様4に記載の方法。
(6) 前記較正データを収集することが、前記近位端を干渉源との関連で複数の位置に配置することと、前記補助位置変換器から前記近位端の各位置を示す補助位置信号を収集することと、該補助位置信号の関数として前記干渉を測定することと、を含む、実施態様4に記載の方法。
(7) 前記第2の位置を測定することが、前記近位端の近傍に1つ又は2つ以上の磁界を印加することと、該磁界に応じて前記補助位置変換器によって生成される信号を前記補助位置変換器から受信することと、該受信信号に基づいて前記第2の位置を算出することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記算出した第1の位置を操作者に提示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 装置であって、
主位置変換器を備える遠位端、補助位置変換器を備える近位端、前記遠位端を前記近位端に接続するコネクタ、及び医療用プローブを通して前記主位置変換器を前記コネクタに結合する配線、を含む、前記医療用プローブと、
前記主位置変換器から前記配線を介して前記遠位端の第1の位置を示す信号を受信し、前記コネクタにおいて前記信号に生じる干渉に関する較正データを前記近位端の位置の関数として収集し、前記補助位置変換器の第2の位置を測定し、該測定された第2の位置及び前記較正データに応じて前記信号内の前記干渉を相殺し、かつ前記干渉を相殺した後に、前記信号に基づいて前記第1の位置を算出するように構成される、プロセッサと、を含む、装置。
(10) 前記医療用プローブがカテーテルを備える、実施態様9に記載の装置。
【0041】
(11) 前記信号が、前記プローブの近傍に印加され、前記主位置変換器によって検知される1つ又は2つ以上の磁界に応じて、前記主位置変換器により生成される、実施態様9に記載の装置。
(12) 前記補助位置変換器が、前記コネクタに隣接して取り付けられる、実施態様9に記載の装置。
(13) 前記プローブがハンドルを備え、前記補助位置変換器及び前記コネクタが前記ハンドルに結合される、実施態様12に記載の装置。
(14) 前記プロセッサが、前記近位端が干渉源との関連で各位置に配置された状態で前記補助位置変換器から複数の補助位置信号を収集し、かつ前記補助位置信号の関数として前記干渉を測定することによって、前記較正データを収集するように構成される、実施態様12に記載の装置。
(15) 前記プロセッサが、前記近位端の近傍に印加された1つ又は2つ以上の磁界に応じて前記補助位置変換器によって生成される信号を前記補助位置変換器から受信し、該受信信号に基づいて前記第2の位置を算出するように構成される、実施態様9に記載の装置。
(16) 前記プロセッサが、前記算出された第1の位置を操作者に提示するように構成される、実施態様9に記載の装置。
(17) 主位置変換器を備える遠位端と、補助位置変換器を備える近位端と、前記遠位端を前記近位端に接続するコネクタと、医療用プローブを通して前記主位置変換器を前記コネクタに結合する配線と、を含む前記医療用プローブとともに作動する、コンピュータソフトウェア製品であって、該製品が、プログラム命令が内部に格納された非一過性のコンピュータ可読媒体を含み、前記命令が、コンピュータによって読み出されたときに、該コンピュータが、前記主位置変換器から前記配線を介して前記遠位端の第1の位置を示す信号を受信し、前記コネクタにおいて前記信号に生じる干渉に関する較正データを前記近位端の位置の関数として収集し、前記補助位置変換器の第2の位置を測定し、該測定された第2の位置及び前記較正データに応じて前記信号内の前記干渉を相殺し、かつ前記干渉を相殺した後に、前記信号に基づいて前記第1の位置を算出するようにさせる、製品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置追跡方法であって、
医療用プローブの遠位端にある主位置変換器からの信号を、該信号を処理して前記遠位端の第1の位置を見出すプロセッサに接続するための、前記プローブの近位端にあるコネクタに前記プローブを通して達する配線を介して、受信することと、
前記コネクタにおいて前記信号に生じる干渉に関する較正データを前記近位端の位置の関数として収集することと、
前記プローブの前記近位端にある補助位置変換器の第2の位置を測定することと、
前記測定した第2の位置及び前記較正データに応じて前記信号内の前記干渉を相殺することと、
前記干渉を相殺した後に、前記信号に基づいて前記第1の位置を算出することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記医療用プローブがカテーテルを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信号が、前記プローブの近傍に印加され、前記主位置変換器によって検知される1つ又は2つ以上の磁界に応じて、前記主位置変換器により生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記補助位置変換器が、前記コネクタに隣接して取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記補助位置変換器及び前記コネクタが、前記プローブのハンドルに結合される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記較正データを収集することが、前記近位端を干渉源との関連で複数の位置に配置することと、前記補助位置変換器から前記近位端の各位置を示す補助位置信号を収集することと、該補助位置信号の関数として前記干渉を測定することと、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の位置を測定することが、前記近位端の近傍に1つ又は2つ以上の磁界を印加することと、該磁界に応じて前記補助位置変換器によって生成される信号を前記補助位置変換器から受信することと、該受信信号に基づいて前記第2の位置を算出することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記算出した第1の位置を操作者に提示することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
装置であって、
主位置変換器を備える遠位端、補助位置変換器を備える近位端、前記遠位端を前記近位端に接続するコネクタ、及び医療用プローブを通して前記主位置変換器を前記コネクタに結合する配線、を含む、前記医療用プローブと、
前記主位置変換器から前記配線を介して前記遠位端の第1の位置を示す信号を受信し、前記コネクタにおいて前記信号に生じる干渉に関する較正データを前記近位端の位置の関数として収集し、前記補助位置変換器の第2の位置を測定し、該測定された第2の位置及び前記較正データに応じて前記信号内の前記干渉を相殺し、かつ前記干渉を相殺した後に、前記信号に基づいて前記第1の位置を算出するように構成される、プロセッサと、を含む、装置。
【請求項10】
前記医療用プローブがカテーテルを備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記信号が、前記プローブの近傍に印加され、前記主位置変換器によって検知される1つ又は2つ以上の磁界に応じて、前記主位置変換器により生成される、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記補助位置変換器が、前記コネクタに隣接して取り付けられる、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記プローブがハンドルを備え、前記補助位置変換器及び前記コネクタが前記ハンドルに結合される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記プロセッサが、前記近位端が干渉源との関連で各位置に配置された状態で前記補助位置変換器から複数の補助位置信号を収集し、かつ前記補助位置信号の関数として前記干渉を測定することによって、前記較正データを収集するように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記プロセッサが、前記近位端の近傍に印加された1つ又は2つ以上の磁界に応じて前記補助位置変換器によって生成される信号を前記補助位置変換器から受信し、該受信信号に基づいて前記第2の位置を算出するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記プロセッサが、前記算出された第1の位置を操作者に提示するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項17】
主位置変換器を備える遠位端と、補助位置変換器を備える近位端と、前記遠位端を前記近位端に接続するコネクタと、医療用プローブを通して前記主位置変換器を前記コネクタに結合する配線と、を含む前記医療用プローブとともに作動する、コンピュータソフトウェア製品であって、該製品が、プログラム命令が内部に格納された非一過性のコンピュータ可読媒体を含み、前記命令が、コンピュータによって読み出されたときに、該コンピュータが、前記主位置変換器から前記配線を介して前記遠位端の第1の位置を示す信号を受信し、前記コネクタにおいて前記信号に生じる干渉に関する較正データを前記近位端の位置の関数として収集し、前記補助位置変換器の第2の位置を測定し、該測定された第2の位置及び前記較正データに応じて前記信号内の前記干渉を相殺し、かつ前記干渉を相殺した後に、前記信号に基づいて前記第1の位置を算出するようにさせる、製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−462(P2012−462A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−133020(P2011−133020)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(510322649)バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド (18)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
【住所又は居所原語表記】4 Hatnufah Street, P.O. Box 275, Yokneam 20692 Israel
【Fターム(参考)】