位置探索装置および位置探索方法
【課題】電波特性取得装置の数を増やすことなく、電波発信装置の測位の精度を向上させる位置検索装置および位置探索方法を提供する。
【解決手段】位置探索装置が移動体に搭載されて移動されることにより、当該移動体の移動経路において前記電波特性取得装置により検出される前記電波特性情報と、当該電波特性情報を検出した際に前記位置取得装置によって検出される前記位置情報とに基づき、前記推定位置情報を算出する。
【解決手段】位置探索装置が移動体に搭載されて移動されることにより、当該移動体の移動経路において前記電波特性取得装置により検出される前記電波特性情報と、当該電波特性情報を検出した際に前記位置取得装置によって検出される前記位置情報とに基づき、前記推定位置情報を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を発信する電波発信装置の位置を検索する位置探索装置および位置探索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユビキタス社会への要求の高まりから、センサネットワーク関連技術が注目されている。このセンサネットワーク関連技術では、環境情報を収集するセンサ端末や機器を制御するためのアクチュエータ端末をフィールドに多数分散配置し、互いにネットワークで結んで情報を加工処理制御することによって、防災、物流、医療、福祉、交通など様々な場面への応用が可能になると期待されている。
ユビキタス社会へ向けたアプリケーションを実現する機能として、ヒトやモノの位置を検索する測位(端末の位置の推定あるいは検出)機能は最も有用なものであるといえる。GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を用いたナビゲーションシステムや、無線タグを用いた物品管理システムなどはその一例である。
このGPSは、地球上のあらゆる場所で高精度に自身の測位を実現できるシステムである。ただし、衛星からの電波を受信できない屋内では利用できない、モジュールが高価である、測位したいヒトやモノの近傍以外で位置情報を利用したい場合には一旦ネットワークを経由して測位結果を取り出す手間がかかるなどの難点がある。
【0003】
一方、センサネットワークや無線タグシステムにおいて利用したい位置情報は、特にモノの位置情報であることが多いと考えられる。例えば、携帯電話など移動体通信端末の位置検出(例えば、特許文献1参照)や、物品管理のために取り付けられた無線タグの位置検出(例えば、特許文献2参照)等がある。
【0004】
ここで、従来の位置探索システムについて、図12を参照して説明する。図12は、従来の位置探索システムの一例を示す概略図である。
図12に示す通り、従来の位置探索システムは、電波を発信する電波発信装置910と、この電波発信装置910から発信された電波の電波特性を取得する複数の電波特性取得装置930(930−1〜930−12)と、予め測定されている電波特性取得装置930の位置を示す位置情報を記録している位置データベース970と、電波特性および位置情報に基づき電波発信装置910の推定位置を計算する推定位置計算装置950とから構成されている。
この位置探索システムでは、電波発信装置910から発信される無線信号を電波特性取得装置930で受信して、その際に得られる電界強度や電波到来角、電波伝搬時間等の電波特性情報と、予め計測されている複数の電波特性取得装置930の位置情報とに基づき、推定位置計算装置950が電波発信装置910の位置を推定する。
この推定位置計算装置950は、例えば、電波発信装置910と複数の電波特性取得装置930のそれぞれとの相対的な距離に応じて電波特性が変化する特性を利用し、電波発信装置910の位置を推定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−231473号公報
【特許文献2】特開2004−53510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図12を用いて説明したような複数の電波特性取得装置930で取得した各種無線電波特性を利用して測位を行う各種従来手法では、一般に電波特性取得装置930の位置と数が予め決められている。よって、位置探索システムにおいて得られる電波発信装置910の測位精度は一意に決まるが、複数の電波特性取得装置930と電波発信装置910との距離が遠いと測位精度は劣化し、電波特性取得装置930による電波特性の取得可能な範囲の外に電波発信装置910がある場合、電波発信装置910の位置が測定できない。
【0007】
また、上述の測位情報の劣化等を解決するためには、電波特性取得装置930の数を増やすことによって解決できるが、測位対象である電波発信装置910の位置が事前には分からないため、測位精度を向上させるためには、膨大な数の電波特性取得装置930の設置が必要となり、手間やコストがかかる問題がある。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、電波特性取得装置の数を増やすことなく、電波発信装置の測位の精度を向上させる位置検索装置および位置探索方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、電波発信装置が発信する電波を受信して前記電波発信装置の位置を検索する位置探索装置であって、前記電波発信装置が発信する電波の電波特性を表わす電波特性情報を検出する電波特性取得装置と、前記位置探索装置の位置を表わす位置情報を検出する位置取得装置と、前記電波特性情報および前記位置情報に基づき、検索対象である前記電波発信装置の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出する推定位置計算装置と、を備え、前記位置探索装置が移動体に搭載されて移動されることにより、当該移動体の移動経路において前記電波特性取得装置により検出される前記電波特性情報と、当該電波特性情報を検出した際に前記位置取得装置によって検出される前記位置情報とに基づき、前記推定位置情報を算出することを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記の発明において、前記推定位置情報に基づいて前記位置探索装置の移動方向を決定するとともに、この移動方向を表わす通知情報を生成し、前記移動体に備えられている通知部に前記通知情報を出力する移動経路決定装置をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記の発明において、前記推定位置計算装置が、前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散を用いて、前記電波発信装置が存在する確率を表わす存在確率分布を、前記推定位置情報として算出することを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記の発明において、前記移動経路決定装置が、前記存在確率分布に基づき、前記電波発信装置の存在確率を評価する評価関数が第1の閾値よりも小さくなる領域の面積を算出し、この算出された面積が第2の閾値以上であるか否かを判断し、前記算出された面積が前記第2の閾値以上である場合、前記評価関数が小さい領域に移動する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力することを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記の発明において、前記推定位置計算装置が、前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散が最小となる推定位置を、前記推定位置情報として算出することを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記の発明において、前記電波特性取得装置によって前記電波特性情報が検出された時間を表わす時間情報を検出する時間取得装置と、前記電波特性情報に対して、当該電波特性情報が検出された時に前記位置探索装置によって検出された前記位置情報、当該電波特性情報が検出された時間を表わす前記時間情報、および当該電波特性情報と当該位置情報に基づき算出された前記推定位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、前記移動経路決定装置が、前記位置探索装置によって検出される前記位置情報のそれぞれと、前記推定情報のうち最も新しい時間情報に対応付けられる推定位置情報との差分のうち、最小となる差分が、電波発信装置の検索結果として許容される値として予め決められている目標測位精度以下であるか否かを判断するとともに、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と、2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の移動量が予め決められている第3の閾値以下であるか否かを判断し、前記最小となる差分が前記目標測位精度より大きい場合、あるいは、前記推移位置の移動量が前記第3の閾値より大きい場合、もしくはその両方の場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置に対して接近する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力することを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記の発明において、前記推定位置計算装置が、前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報を用いて、前記位置取得装置によって検出される前記位置情報に重み付した重心位置を前記推定位置情報として算出することを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記の発明において、前記電波特性取得装置によって前記電波特性情報が検出された時間を表わす時間情報を検出する時間取得装置と、前記電波特性情報に対して、当該電波特性情報が検出された時に前記位置探索装置によって検出された前記位置情報、当該電波特性情報が検出された時間を表わす前記時間情報、および当該電波特性情報と当該位置情報に基づき算出される前記推定位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、前記移動経路決定装置が、最も新しい時間情報と対応付けられる位置情報と2番目に新しい時間情報と対応付けられる位置情報との差分で表わされる測定位置の変化量と、最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の変化量とを比較して、前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上であるか否かを判断し、前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上でない場合、現在の進行方向を維持して移動することを表す通知情報を前記通知部に出力し、前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上である場合、前記位置探索装置によって検出される前記位置情報のそれぞれと、前記推定情報のうち最も新しい時間情報に対応付けられる推定位置情報との差分のうち、最小となる差分が、電波発信装置の検索結果として許容される値として予め決められている目標測位精度以下であるか否かを判断するとともに、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と、2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の移動量が予め決められている第4の閾値以下であるか否かを判断し、前記最小となる差分が前記目標測位精度より大きい場合、あるいは、前記推移位置の移動量が前記第4の閾値より大きい場合、もしくはその両方の場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置に対して接近する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力し、前記最小となる差分が前記目標測位精度以下であり、かつ、前記推移位置の移動量が前記第4の閾値以下である場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置の周囲領域を、予め決められた数で等分割し、この等分割された分割周囲領域のそれぞれにおいて、前記位置情報が検出されているか否かを判断し、前記分割周囲領域の全てにおいて、少なくとも1つの前記位置情報が検出されていない場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置から、前記位置情報が検出されていない前記分割周囲領域に向かう方向に移動することを表わす通知情報を出力することを特徴とする。
【0017】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、電波発信装置が発信する電波を受信して前記電波発信装置の位置を検索する位置探索装置による位置探索方法であって、前記位置探索装置の電波特性取得装置が、前記電波発信装置が発信する電波の電波特性を表わす電波特性情報を検出し、前記位置探索装置の位置探索装置が、前記電波特性情報を検出した時に前記位置探索装置が存在する位置を表わす位置情報を検出し、前記推定位置計算装置が、前記電波特性情報および前記位置情報に基づき、検索対象である前記電波発信装置の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出し、前記位置探索装置が、移動体に搭載されて移動されることにより、当該移動体の移動経路において前記電波特性取得装置により検出される前記電波特性情報と、当該電波特性情報を検出した際に前記位置取得装置によって検出される前記位置情報とに基づき、前記推定位置情報を算出することを特徴とする位置探索方法。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、電波特性取得装置の数を増やすことなく、電波発信装置の測位の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る位置検索システムの一例について示す概略図である。
【図2】本発明に係る位置探索装置の移動の概念を説明するための参考図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る位置検索システムの一例について示す概略図である。
【図4】本発明の第1、2実施形態に係る位置検索システムで利用される第1の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示す第1の実施方法を利用して位置検索を行う実施場所の一例を示す参考図である。
【図6】図4に示す第1の実施方法を利用した位置検索の結果の一例を示す参考図である。
【図7】図4に示す第1の実施方法に含まれる一部の処理について説明するための参考図である。
【図8】本発明の第1、2実施形態に係る位置検索システムで利用される第2の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第1、2実施形態に係る位置検索システムで利用される第3の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【図10】図9に示す第3の実施方法を利用して位置検索を行う実施場所の一例を示す参考図である。
【図11】図9に示す第3の実施方法を利用した位置検索の結果の一例を示す参考図である。
【図12】従来例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る位置探索システムの一例について示す概略図である。
図1に示す通り、位置探索システムは、位置検索対象である電波発信装置10と、移動体20に搭載されることで移動体20とともに移動可能な可搬型の位置探索装置30と、を備える。なお、この位置探索装置30は、以下に説明する第1〜3の実施方法のうちいずれか1つを用いて、電波発信装置10の位置を予測して、検索対象である電波発信装置10の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出する。
【0021】
電波発信装置10は、測位を実施するために必要な電波であって、位置探索装置30によって受信できる波長の電波を発信する。
【0022】
移動体20は、例えば観測者が搭乗し、観測者が移動方向を操縦できる自動車等の移動体である。ここで、移動体20には、位置探索装置30が固定設置されており、位置探索装置30の位置と移動体20の位置は同一視できるものである。
また、移動体20は、位置探索装置30によって位置検索結果が得られた場合、移動体20を操縦する観測者に対してこの位置検索結果を通知する通知部21を備える。この通知部21は、位置検索結果に応じた画像を表示する表示装置(例えば、液晶表示装置等)や、位置検索結果に応じた音声を再生する音声再生装置(例えば、スピーカー装置等)等である。
なお、この移動体20を操縦する観測者は、位置探索装置30によって得られた推定位置情報(推定位置あるいは存在確率分布等)を用いて、自身の経験則等に則って位置探索装置30の移動経路を決定することができる。
【0023】
位置探索装置30は、電波特性取得装置31と、位置取得装置32と、時間取得装置33と、推定位置計算装置34と、記憶部35と、操作部36とを備える。
電波特性取得装置31は、電波発信装置10から発信される電波を受信するアンテナ31Aを備え、アンテナ31Aによって受信した電波に基づき、この電波の電界強度や電波到来角、電波到来時間、電波到来時間差等の電波特性を表す電波特性情報を検出し、推定位置計算装置34に出力する。ここでは、電波特性取得装置31は、電波特性情報のうち電界強度r1〜riを予め決められたタイミング毎に連続的に検出する場合について説明する。
【0024】
位置取得装置32は、例えば、GPS( Global Positioning System )等の技術を利用して、位置探索装置30の位置を検出し、推定位置計算装置34に出力する。この位置取得装置32は、電波特性取得装置31によって電波特性情報が検出された時における位置探索装置30の位置を表す位置情報を検出することができる。
例えば、この位置取得装置32は、電波特性取得装置31が電波特性情報を検出するタイミングが予め決められており、このタイミングで位置情報を検出し、推定位置計算装置34に出力する。あるいは、位置取得装置32は、電波特性情報が推定位置計算装置34に入力されたことが推定位置計算装置34によって通知されることで、電波特性情報が検出されたタイミングを検出し、位置情報を検出する構成であってもよい。
ここで、位置取得装置32は、位置情報として、予め決められたタイミングで複数の測定座標P1〜Piを連続的に検出する。
【0025】
時間取得装置33は、電波特性取得装置31によって電波特性情報が検出された時間を表す時間情報を検出し、推定位置計算装置34に出力する。この時間取得装置33は、常に時間を表す時間情報を計時しており、推定位置計算装置34に出力することができる。あるいは、時間取得装置33は、位置取得装置32が電波特性取得装置31によって電波特性情報が検出されたタイミングと同じタイミングで位置情報を検出する場合、位置取得装置32によって位置情報が検出された時間を表す時間情報を検出するものであってもよい。
ここで、時間取得装置33は、電界強度r1〜riが検出された時間を表す時間情報T1〜Tiを連続的に検出する。
【0026】
推定位置計算装置34は、電波特性取得装置31から入力された電波特性情報に基づき、電波特性情報が検出された位置において、検索対象である電波発信装置10の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出する。具体的に説明すると、この推定位置情報は、位置探索装置30が電波発信装置10に近づくために、位置探索装置30が現在ある位置から電波発信装置10に向かう移動方向を表す情報である。本実施形態において、この推定位置情報は、位置探索装置30が移動するため観測者によって参照される。
【0027】
なお、この推定位置情報は、以下に説明する第1の実施方法を利用する場合、電波特性取得装置31によって検出される電波特性情報を用いて、位置取得装置32によって検出される位置情報に重み付した重心位置である。
また、以下に説明する第2の実施方法を利用する場合、推定位置情報は、電波特性取得装置31によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散が最小となる推定位置である。
さらに、以下に説明する第3の実施方法を利用する場合、推定位置情報は、電波特性取得装置31によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散を用いて算出される、電波発信装置10が存在する確率を表わす存在確率分布である。
【0028】
記憶部35には、例えば、電波特性情報である電界強度r1〜riと、位置情報である測定座標P1〜Piと、推定位置情報である推定座標Q1〜Qiが、推定位置計算装置34によって記憶される。
また、記憶部35には、電波発信装置10の検索結果(最終推定位置)として許容される範囲として予め決められている目標測位精度Cが、操作部36を介して入力され、記憶される。この目標測位精度Cは、観測可能な地理的環境条件(例えば、道路沿いに電波発信装置10を探索するのであれば移動可能な路地の間隔等)に基づいて、観測者によって操作部36を介して決定される。ここでは、例えば、目標測位精度C=100mとする。
さらに、記憶部35には、複数の閾値等が記憶されている。例えば、閾値γは、推定点の移動距離|Qi−Qi−1|と比較される際に、推定位置計算装置34によって参照される閾値であって、目標測位精度Cよりも十分小さい値(概ね1/10〜1/100程度)が予め決められている。
【0029】
操作部36は、観測者からの操作入力を受け付け、この操作入力に応じた操作情報を推定位置計算装置34に出力する。
【0030】
ここで、電波特性取得装置31、位置取得装置32および時間取得装置33によって検出される電波特性情報、位置情報および時間情報と、移動体20の移動経路との関係について、図2を参照して具体的に説明する。図2は、本実施形態における位置探索装置30の移動の概念を説明するための図である。
図2に示すように移動体20が移動すると、電波特性取得装置31によって電波特性情報を検出した時を表す時間情報T=T1、T2、・・・、Tnが時間取得装置33によって検出され、この時間情報T=T1、T2、・・・、Tnにおいて位置取得装置32によって検出される位置情報(測定座標)P=P1、P2、・・・、Pnが得られる。
【0031】
このように、本実施形態に係る位置探索システムでは、位置探索装置30が移動体20の移動に伴い移動するため、移動体20が移動可能な任意の場所における電波特性情報を検出することができる。
例えば、電波特性取得装置31が電界強度を表す電波特性情報を検出し、位置探索装置30がこの電波特性情報を用いた測位を行う場合、電界強度が小さい観測開始直後では電界強度が大きくなる方向に大まかに移動し(例えば、時間情報T1〜T5に相当する移動)、電界強度が大きい領域では電界強度観測箇所を密に取り、ゆっくり移動する(例えば、時間情報T6〜T14に相当する移動)。
これにより、図12に示すような位置探索システムにおいて、平面的に均一な電波特性情報を検出する場合に比べて、より少ない観測回数あるいはより少ない観測時間で、高精度な測位を実現することができる。
【0032】
よって、電波特性の観測点を更新する毎に推定位置情報を計算し、この推定位置情報に基づき観測者が移動経路を最適化しつつ移動体20を移動させて電波発信装置10を探索することによって、電波発信装置10の位置を探索するのに必要な時間を短縮することが可能となる。
なお、電波特性として、電界強度ではなく電波到来角や電波到来時間、電波到来時間差といった情報を利用する場合であっても、同じく電波特性を取得するのに適した電波特性観測箇所を適応的に選択しながら移動することによって、より少ない観測回数あるいはより少ない観測時間で、高精度な測位を実現することができる。
【0033】
一方、図12に示すような従来の実施形態においては、電波特性取得装置930の場所が固定されている。よって、電波発信装置10が任意の場所に設置され得ることを考慮すると、万遍なく測位精度を得るためには、予め万遍なく電波特性取得装置930を設置する必要がある。
しかし、本実施形態は、位置探索装置30を移動させ、この移動に伴い連続的に検出される電波特性情報および位置情報に基づき、推定位置計算装置34が電波発信装置10の位置を推定する。これにより、電波特性取得装置930の数を増やすことなく、測位精度を向上させ、膨大な数の電波特性取得装置の設置に必要な手間やコストを削減することができる。
【0034】
なお、この位置探索装置30では、電波特性取得装置31によって電波を受信するタイミングと、位置取得装置32によって位置情報を検出するタイミングと、時間取得装置33によって時間情報を検出するタイミングとが、同一となることが好ましく、例えば、以下のような手法を用いることで、上述の3つのタイミングを同一とするものが利用可能である。
例えば、推定位置計算装置34は、電波特性取得装置31によって検出される電波特性情報に、当該電波特性情報が検出された時に位置取得装置32によって検出される位置情報、この電波特性取得装置31によって電波特性情報が検出された時間を表わす時間情報、および、当該電波特性情報と当該位置情報に基づき算出される推定位置情報を、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶する。
【0035】
これにより、単一の電波特性取得装置31を移動させた場合であっても、異なる場所で繰り返し電波特性情報を検出することができ、電波特性取得装置を増やした場合と同等の測位精度を得ることができる。
【0036】
なお、位置探索装置30は、推定位置計算装置34によって算出された推定位置情報に基づき、位置探索装置30の移動経路と推定位置情報の遷移を表わす画像データを生成し、通知部21に出力することができる。
この推定位置計算装置34によって生成される画像データとは、後述する図6、11に示すような画像である。観測者は、この画像に基づき電波発信装置10の位置を推測するための知識を有する者であることが好ましく、電波発信装置10があると推測される方向に移動体20を移動させることができる。
これにより、観測者は、この通知部21に表示された画像を参考にして、移動体20の移動経路として、位置探索に適した移動経路を適応的に選択しながら電波特性の観測を行うことができ、より少ない観測回数あるいはより少ない観測時間で、高精度な測位を実現することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態について、図3を参照して説明する。図3は、第2実施形態に係る位置探索システムの一例について示す概略図である。
図3に示す通り、本実施形態に係る位置検索システムは、位置探索装置130が移動経路決定装置37を備える点において第1実施形態と異なる。なお、他の構成については、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付すことにより詳細な説明は省略する。
【0038】
移動経路決定装置37は、推定位置計算装置34によって算出される推定位置情報に基づき、移動体20の移動方向を決定して、この移動方向を表す通知情報を生成し、移動体20の通知部21に出力する。この移動経路決定装置37は、詳細については後述する第1〜3の実施方法に応じて、推定位置情報等に基づき移動体20の移動方向を決定することができる。
この構成により、第1実施形態で説明したとおり、推定位置計算装置34によって推定位置情報に基づき生成される画像を参照して、位置探索装置30の移動方向を判断できない観測者であっても、推定位置情報に基づき得られる移動方向に従って移動体20を移動させることにより、より少ない観測回数あるいはより少ない観測時間で、高精度な測位を実現することができる。
【0039】
以下、第1、2実施形態に係る位置検索システムが利用可能な実施方法の一例について説明する。なお、説明便宜のため、第2実施形態に係る位置検索システムにおける実施方法について説明する。
【0040】
[第1の実施方法]
はじめに、第1の実施方法について詳細に説明する。
推定位置計算装置34は、例えば、電波特性取得装置31によって電波特性情報として電界強度が検出された場合、この電界強度を用いて観測点座標に重み付けされた2次元座標平面上での重心座標を用いる。
つまり、推定位置計算装置34は、位置取得装置32によって位置情報として検出されるi回目の測定座標をPi、電波特性取得装置31によって電波特性情報として検出されるi回目の電界強度をriとすると、電界強度r1〜riおよび測定座標P1〜Piを用いて、i回目の検出により得られる推定位置座標Qiを、次式(式(1))を用いて算出する。
ここで、電界強度r1〜riは電波特性情報であり、測定座標P1〜Piは位置情報であり、推定座標Qiは推定位置情報である。
【0041】
【数1】
【0042】
このようにして、推定位置計算装置34は、電波特性情報を検出するたびに、電波発信装置10の推定座標Qiを算出して、更新する。また、時間取得装置33は、時間情報T1〜Tiを検出し、推定位置計算装置34に出力している。
【0043】
なお、観測点(測定座標Pi)及び推定点(推定座標Qi)の更新間隔を厳密に定める必要は無い。例えば、任意の移動距離に基づいて更新しても良いし、移動体20のようにある速度で移動し続ける乗り物に位置探索装置130を乗せて移動する場合には、任意の時間間隔に基づいて更新するものであってもよい。あるいは、道路交差点等の周囲の地理的環境条件に応じて更新間隔を決めるものであってもよい。
【0044】
次に、図4を参照して、第1の実施方法に利用して位置探索装置130が電波発信装置10の位置を検索するとともに、移動経路決定装置37が移動方向を決定する方法の一例について説明する。図4は、第1の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【0045】
図4に示す通り、目標測位精度Cが観測者によって操作部36を介して選択されると、この目標測位制度Cの値が記憶部35に記憶される(ステップST100)。そして、電波特性取得装置31によって電界強度r1が検出されるとともに、このときの測定座標P1が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T1が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r1、測定座標P1および時間情報T1が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1および測定座標P1に基づき推定座標Q1を算出するとともに、入力された電界強度r1、測定座標P1および時間情報T1と、算出した推定座標Q1とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる。
【0046】
次いで、移動体20が任意の方向に移動すると(ステップST110)、この移動に伴い位置探索装置130も移動し、電波特性取得装置31によって電界強度r2が検出されるとともに、このときの測定座標P2が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T2が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2が推定位置計算装置34に入力されると、推定位置計算装置34は、この電界強度r2および測定座標P2と、記憶部36に記憶されている電界強度r1および測定座標P1とに基づき、式(1)に従って、推定位置情報である推定座標Q2を算出する。そして、推定位置計算装置34は、入力された電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2と、算出した推定座標Q2とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST120)。
【0047】
そして、移動経路決定装置37は、測定座標Piの変化量|Pi−Pi−1|と推定座標Qiの変化量|Qi−Qi−1|とを比較する(ステップST130)。推定座標Qiの変化量|Q2−Q1|が大きい場合(ステップST130−NO)、移動経路決定装置37は、現在の進行方向を維持してさらに移動することを表す通知情報を、位置検索結果として通知部21に出力する(ステップST140)。これにより、通知部21は、現在の進行方向を維持してさらに移動することを通知する。
【0048】
次いで、ステップST120に戻り、電波特性取得装置31によって電界強度r3が検出されるとともに、このときの測定座標P3が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T3が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1〜r33および測定座標P1〜P3に基づき、推定座標Q3を算出するとともに、入力された電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3と、推定座標Q3とをそれぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST120)。
【0049】
一方、ステップST130において、推定座標Qiの変化量|Q2−Q1|が、測定座標Piの変化量|Pi−Pi−1|以下である場合(ステップST130−YES)、移動経路決定装置37は、記憶部35に記憶されている全ての観測点P1〜Piと最新の推定座標Qiとの距離のうち、最小となる距離が目標測位精度C以下であるか否かを判断するとともに、最新の推定点の移動距離|Qi−Qi−1|が閾値γ以下であるか否かを判断する(ステップST150)。
例えば、測定座標P1〜P3が記憶部35に記憶されている場合、移動経路決定装置37は、この測定座標P1と推定座標Q3との差分、測定座標P2と推定座標Q3との差分、および、測定座標P3と推定座標Q3との差分のうち、最小となる差分(以下、最小差分という)が目標測位精度C以下であるか否かを判断するとともに、最新の推定点の移動距離|Q3−Q2|が閾値γ以下であるか否かを判断する。
【0050】
ここで、測定座標P1〜P3と推定座標Q3との差分のうち、最小差分が目標測位精度Cより大きい場合、あるいは、最新の推定点の移動距離|Q3−Q2|が閾値γより大きい場合、または、その両方である場合(ステップST150−NO)、移動経路決定装置37は、推定座標Qiに接近する方向あるいはランダムな方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知情報を、位置検索結果として通知部21に出力する(ステップST160)。これにより、通知部21は、推定座標Qiに接近する方向あるいはランダムな方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知を観測者に伝える。
【0051】
そして、ステップST120に戻り、電波特性取得装置31によって電界強度r4が検出されるとともに、このときの測定座標P4が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T4が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r4、測定座標P4および時間情報T4が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1〜r4および測定座標P1〜P4に基づき、推定座標Q4を算出するとともに、入力された電界強度r4、測定座標P4および時間情報T4と、推定座標Q4とをそれぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST120)。
【0052】
一方、ステップST150において、測定座標P1〜P3と推定座標Q3との差分のうち、最小差分が目標測位精度C以下であり、かつ、最新の推定点の移動距離|Q3−Q2|が閾値γ以下である場合(ステップST150−YES)、移動経路決定装置37は、推定座標Q3の周囲領域をN個に等分割し、この等分割された360/N度の分割周囲領域のそれぞれにおいて、少なくとも1つは観測点履歴(測定座標Pi)が存在するか否かを判断する(ステップST170)。
【0053】
ここで、等分割された360/N度の分割周囲領域のうち、少なくとも1つの観測点履歴が存在しない分割周囲領域が検出された場合(ステップST170−NO)、推定座標Qiから見て観測点履歴が存在しない分割周辺領域に方向転換して移動することを表わす通知情報を、位置検索結果として通知部21に出力する(ステップST180)。これにより、通知部21は、推定座標Qiから見て観測点履歴が存在しない分割周辺領域に方向転換して移動することを表わす通知を観測者に伝える。
【0054】
そして、ステップST120に戻り、電波特性取得装置31によって電界強度r5が検出されるとともに、このときの測定座標P5が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T5が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r5、測定座標P5および時間情報T5が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1〜r5および測定座標P1〜P5に基づき、推定座標Q5を算出するとともに、入力された電界強度r5、測定座標P5および時間情報T5と、推定座標Q5とをそれぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST120)。
なお、Nは予め決められたパラメータであるが、移動体20の移動経路として道路などを仮定した場合は4方向に分岐することが多いため、N=4とすることが好ましい。
【0055】
一方、ステップST170において、等分割された360/N度の分割周囲領域のうち、いずれの分割周波数領域においても、少なくとも1つの観測点履歴が存在する場合(ステップST170−YES)、移動経路決定装置37は、記憶部35に記憶されている推定位置情報のうち最新の推定座標Qiを最終推定位置として、位置探索を終了させる(ステップST190)。このとき、移動経路決定装置37は、移動を終了することを表わす通知情報を通知部21に出力する。
【0056】
なお、電波発信装置10から発信される電波の無線伝搬路における電力伝搬減衰は、電波発信装置10と位置探索装置130との距離のβ乗(このβは、伝搬減衰定数である)に反比例するという関係が一般的に知られている。ここで、伝搬減衰定数βは、伝搬路環境によって決まる定数であって、一般的な屋内外の無線伝搬環境における伝搬減衰定数βは、3〜4(自由空間においては2)とされている。
したがって、式(1)に基づくと、位置探索装置130を搭載した移動体20が電波発信装置10の近傍を移動することで、電波発信装置10から発信される電波の電界強度を位置探索装置130が取得した場合、推定位置計算装置34は、推定座標Qiにかなり急峻に重みをつけることができる。
よって、位置探索装置130は、電波発信装置10の近傍を通りつつ、推定座標Qiの周囲を取り囲むように最終推定位置を検出することができる。このため、この最終推定位置が電界強度の鞍点になることが観測者によって確認できたところで位置探索終了とすれば、推定点近傍の観測点が増えることによって測位精度を向上させることができる。
【0057】
また、上述の通り、通知部21を介して、適切な移動経路を観測者に通知することによって、観測者が最適な移動経路を選択することができる。これにより、観測者の勘に従ってランダムに移動する場合に比べて、電界強度の観測回数ならびに観測時間を短縮することができる。
なお、上述の通り、電界強度で重み付けされた重心座標を用いる第1の実施方法では、後述する第2の実施方法とは異なり、位置探索を行う場所によって決まる伝搬減衰定数等を予め知る必要がなく、簡易に位置探索を実現できる。
【0058】
次に、図5〜7を参照して、この第1の実施方法を実際に適用した場合における、移動体20の移動経路と位置探索装置130によって得られる推定座標Qiの推移経路との関係の一例について説明する。
図5は、本実施形態に係る位置検索システムが実施される実施場所を説明する概略図である。
図5に示す通り、この実施場所は、例えば、戸建住宅、中小の公共施設、あるいは商業施設等が密集する市街地であって、移動体20は、この実施場所を走っている道路を移動する。
電波発信装置10は、例えば図5に示す星印の位置に駐車された自動車に搭載され、この自動車の屋上には送信アンテナ(図示せず)が取り付けられている。この送信アンテナを介して、電波発信装置10は、測位を実施するために必要な電波として280MHz帯の電波を連続的に発信している。
【0059】
位置探索装置130は、図5に示す通り、測定開始時点から電波発信装置10に向かって観測者が交通ルールに従って移動体20を運転した場合、移動体20とともに移動する。
この位置探索装置130を搭載した移動体20は、電波発信装置10から北北西に約600m離れた地点の観測開始点から移動を開始し、観測者の操縦により移動する。この移動体20に搭載された位置探索装置130は、観測点を変えながら電界強度の取得を行う。
この位置探索装置130の位置を表わす測定座標Piは四角形のポインタで、推定位置計算装置34によって得られる推定座標Qiは丸印のポインタで、位置探索装置130の移動経路は点線で、推定座標Qiの推移経路は実線で、それぞれ示す。
【0060】
この位置探索装置130は、停車中を除いて約30秒間隔で、観測点の更新(電波特性情報、位置情報の検出)を実施する。これは、時速15km程度で車が移動するとして、約120m間隔で電波特性取得を行うことに相当する。
【0061】
次に、図6、7を用いて、第1の実施方法を利用した場合の実施結果について説明する。
図6は、測定開始位置における測定座標P1から推定終了位置における位置座標P22までの位置探索装置130の移動経路における測定座標P1〜P22と、測定開始位置における推定座標Q1から推定終了位置における推定座標Q22までの推移経路における推定座標Q1−Q22とを示す。
図6に示す通り、推定座標Qiの推移経路は、測定座標P1の移動経路の内側を通っている。なお、第1実施形態に係る推定位置計算装置34は、この図6に示すような画像を通知部21に表示させる画像データとして生成する。
【0062】
また、図7は、図4に示すステップST170の処理について説明するための参考図である。図7は、目標測位精度と最終推定点Qiの周囲領域の分割状況(N=4とした場合)について示す。
このように、移動経路決定装置37は、推定座標Qiを中心として半径が目標推定精度C(例えば、100m)となる周辺領域をN=4に分割した分割周辺領域において、少なくとも1つの観測点履歴(測定座標Pi)が存在するか否かを検出し、全ての分割周辺領域のうち少なくとも1つの観測点履歴が存在しない分割周囲領域があるか否かを判断する。
このように、第1の実施方法を利用する位置探索装置130によって決定された移動方向に沿って移動体20が移動されることにより、目標推定精度100mに対し、測位推定誤差50m程度の測位精度を実現することができた。
【0063】
[第2の実施方法]
次に、上述の第1の実施方法と異なる第2の実施方法について説明する。
この第2の実施方法は、第1の実施方法に比べて、より高精度かつ短時間に測位を実施するために、探索したい範囲を2次元的なメッシュで区切り、各推定候補点に対して伝搬減衰則に則った伝搬減衰を計算し、最も確からしい推定点候補を推定点とするような最尤推定方法に基づいて、観測点Pi及び推定点Qiを更新していく方法である。
【0064】
位置探索装置130において観測される電界強度ri[dBm]は、電波発信装置10の送信電力Ts[dBm]およびi番目の観測点までの伝搬路の減衰Li[dB]を用いて、
【数2】
と表すことができる。
【0065】
ここで、無線信号の距離減衰特性を利用し、1〜i番目までの観測結果を利用して、最尤判定により、電波発信装置10の座標Qi=(x,y)を推定することを考える。
【0066】
この推定座標(x,y)は、
【数3】
である。
【0067】
ただし、p(x,y|r1,r2,・・・,ri)は、i回目の電界強度観測後に、電波発信装置10の座標が(x,y)となる結合確率密度関数である。
【0068】
しかし、一般に条件付確率p(x,y|r1,r2,・・・,ri)を計算するのは困難であるため、電波発信機の座標(x,y)の確率分布が一様であると仮定すると、ベイズ則を用いて、
【数4】
と変形できる。
【0069】
すなわち、容易に計算可能な条件付確率p(r1,r2,・・・,ri|x,y)を最大にする位置(x,y)を推定する問題に置き換えることができる。
【0070】
ここで、観測された電界強度rk (k=1,2,...,i)が互いに無相関であるとすると、条件付確率p(r1,r2,・・・,ri|x,y)は、
【数5】
と展開することができる。
【0071】
さらに、奥村−秦式に代表されるように、電波伝搬における電力損失Liは、距離のβ乗に反比例する距離減衰と対数正規分布するばらつきによって決定されるとみなすことができる。
【0072】
よって、
【数6】
が成り立つ。
【0073】
ただし、α、βは位置探索を行う場所によって決まる定数、dは送信装置(ここでは電波発信装置10)と受信装置(ここでは位置探索装置130)の距離、N(0,σ2)は平均0、分散σ2(標準偏差σ)の対数正規分布するばらつきである。
【0074】
なお、α、βは、伝搬減衰の距離特性を測定して予め定める、もしくは位置推定のために取得した電界強度の受信レベルrkを用いて推定するなどして定めることができる。
【0075】
このとき、条件付確率p(ri|x,y)は正規分布の性質より
【数7】
と表せる。
【0076】
ここで、(Xi,Yi)は、位置取得装置32によって検出されるi番目の測定座標P1である。
【0077】
また、式(5)、式(7)より、条件付確率p(r1,r2,・・・,ri|x,y)は、
【数8】
を用いて表現できる。
【0078】
さらに、exp(・)が単調増加の関数であることを利用すると、電波発信装置10の推定位置を表わす推定座標(xest,yest)を、
【数9】
のように推定できる。
【0079】
これは、観測した電界強度から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散が最小となる位置を、電波発信装置10の位置として最尤推定することに相当する。
【0080】
よって、第1の実施方法と同様に、位置探索装置130は、新たに観測を行うたびに、推定位置計算装置34を用いて、電波発信装置10の推定座標Qiを更新(算出して記憶部35に記憶)できる。
【0081】
次に、図8を参照して、第2の実施方法に利用して位置探索装置130が電波発信装置10の位置を検索するとともに、移動経路決定装置37が移動方向を決定する方法の一例について説明する。図8は、第2の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【0082】
図8に示す通り、目標測位精度Cが観測者によって操作部36を介して選択されると、この目標測位制度Cの値が記憶部35に記憶される(ステップST300)。そして、電波特性取得装置31によって電界強度r1が検出されるとともに、このときの測定座標P1が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T1が時間取得装置33によって検出される。そして、推定位置計算装置34は、電界強度r1および測定座標P1に基づき式(9)に従って推定座標Q1(xest,yest)を算出し、入力された電界強度r1、測定座標P1および時間情報T1と、算出した推定座標Q1(xest,yest)とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる。
【0083】
次いで、移動体20が任意の方向に移動すると(ステップST310)、この移動に伴い位置探索装置130も移動し、電波特性取得装置31によって電界強度r2が検出されるとともに、このときの測定座標P2が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T2が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2が推定位置計算装置34に入力されると、この電界強度r2および測定座標P2と、記憶部36に記憶されている電界強度r1および測定座標P1とに基づき、式(9)に従って、推定位置計算装置34が、推定位置情報である推定座標Q2(xest,yest)を算出する。そして、推定位置計算装置34は、入力された電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2と、算出した推定座標Q2(xest,yest)とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST320)。
【0084】
そして、移動経路決定装置37は、記憶部35に記憶されている全ての観測点P1〜Piと最新の推定座標Qiとの距離のうち、全てが目標測位精度C以下であるか否かを判断するとともに、最新の推定点の移動距離|Qi−Qi−1|が閾値γ以下であるか否かを判断する(ステップST330)。
例えば、測定座標P1〜P2が記憶部35に記憶されている場合、移動経路決定装置37は、この測定座標P1と推定座標Q2(xest,yest)との差分、および、測定座標P2と推定座標Q2(xest,yest)との差分のうち、最小差分が目標測位精度C以下であるか否かを判断するとともに、最新の推定点の移動距離|Q2−Q1|が閾値γ以下であるか否かを判断する。
【0085】
ここで、測定座標P1〜P2と推定座標Q2(xest,yest)との差分のうち、最小差分が目標測位精度Cより大きい場合、あるいは、最新の推定点の移動距離|Q2−Q1|が閾値γより大きい場合、または、その両方である場合(ステップST330−NO)、移動経路決定装置37は、推定座標Qi(xest,yest)に接近する方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知情報を、位置検索結果として通知部21に出力する(ステップST340)。これにより、通知部21は、推定座標Qi(xest,yest)に接近する方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知を観測者に伝える。
【0086】
次いで、ステップST320に戻り、電波特性取得装置31によって電界強度r3が検出されるとともに、このときの測定座標P3が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T3が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1〜r3および測定座標P1〜P3に基づき、推定座標Q3(xest,yest)を算出し、入力された電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3と、推定座標Q3(xest,yest)とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST320)。
【0087】
一方、ステップST330において、測定座標P1〜Piと推定座標Qi(xest,yest)との差分のうち、最小差分が目標測位精度C以下であり、かつ、最新の推定点の移動距離|Qi−Qi−1|が閾値γ以下である場合(ステップST330−YES)、移動経路決定装置37は、記憶部35に記憶されている推定位置情報のうち最新の推定座標Qi(xest,yest)を最終推定位置として、位置探索を終了させる(ステップST350)。このとき、移動経路決定装置37は、移動を終了することを表わす通知情報を通知部21に出力する。
【0088】
このように、第2の実施方法は、第1の実施方法に比べて、図4に示したステップST130、140、170、180に相当する手順を含まない。この理由について以下簡単に説明する。
上述の第1の実施方法では、推定座標Qiを観測点座標の重心として提示するため、観測点群(移動経路)の内側としてのみ推定位置が提示される。
一方、第2の実施方法では、観測された電界強度情報を伝搬距離減衰相当量に変換して2次元平面上に幾何学的に反映して位置推定を行う。そのため、位置探索装置130が電波発信装置10の近傍に接近する以前の状態、すなわち観測点群(位置探索装置130の移動経路)の外側に電波発信装置10が存在するような場合であっても、観測点群からの距離や位置関係を推定位置に反映できる。したがって、移動経路決定装置37は、推定位置計算装置34のよって逐次更新される推定座標Qi(xest,yest)の方向に接近していく経路を選択すればよく、ステップST130および140に相当する前半の経路選択の手順を簡略化することができる。
【0089】
また、第1の実施方法では、推定座標Qiの四方を取り囲むように観測を行って最終的な推定座標Qiが電界強度の鞍点になることが観測者によって確認されることで、最終的な推定座標Qiが最終推定位置と確定される。
これに対して、第2の実施方法では、推定座標Qi(xest,yest)の周辺における一定範囲のエリア内における推定候補点間の尤度比較の結果を推定位置計算装置34が逐次更新し、移動経路決定装置37が移動方向を通知している。つまり、測定座標Piが推定座標Qiに接近すればするほど、周囲の候補点の尤度は急峻に縮減する。したがって、測定座標Piと推定座標Qiが近接し、さらに推定座標Qiの移動量が小さくなった時点での推定座標を最終推定位置とすることができる。よって、ステップST170および180に相当する後半の経路選択の手順を簡略化することができる。
【0090】
なお、第1の実施方法および第2の実施方法では、いずれも、1つの測定座標Piに対して、1つの推定座標Qiを算出し、この推定座標Qiに基づいて移動経路決定装置37が移動経路を決定するものである。
一方、式(9)に示した電界強度から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散は、1つの測定座標Piに対して、複数の推定点候補を算出することができる。このため、推定位置計算装置34は、最尤推定結果として複数の推定点候補を算出することにより、存在確率分布を生成することができる。また、移動経路決定装置37は、この存在確率分布に基づいて位置探索装置130の移動経路を決定することができる。このように電波発信装置10の存在確率分布を用いて電波発信装置10の位置を検索する第3の実施方法について、以下説明する。
【0091】
[第3の実施方法]
次に、上述の第1〜2の実施方法と異なる第3の実施方法について説明する。
この第3の実施方法は、第2の実施方法と同様に、探索したい範囲を2次元的なメッシュで区切り、電界強度riや測定座標Piに基づき算出される複数の推定候補点のそれぞれに対して、伝搬減衰則に則った伝搬減衰を計算し、最も確からしい推定点候補を推定点とするような最尤推定方法に基づいて、観測点Pi及び存在確率分布を更新していく方法である。
上述の第2の実施方法は、最尤結果のみに基づくアルゴリズムであるため、尤もらしい位置が複数ある場合は、推定結果がなかなか絞り込まれない。
これに対して、第3の実施方法は、電波発信装置10の推定位置の確からしさを表わす存在確率の分布を生成し、経路選択に反映できるため、より効率的な経路選択が可能になる。
【0092】
式(9)より、各測定座標Piで表わされる観測点で観測した電界強度riに伝搬距離減衰相当量を補償した値を
【数10】
とすると、推定座標Qi(x,y)に対して計算される分散は
【数11】
となる。
【0093】
推定位置計算装置34は、式(11)そのものあるいは式(11)を用いて、例えば式(12)に示す評価関数に従って、2次元平面上でマッピングした結果を存在確率分布として生成する。つまり、推定位置計算装置34は、電波特性取得装置31によって検出された電波特性情報(例えば、電界強度r1〜ri)から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散(式(11)参照)を用いて、電波発信装置10が存在する確率を表わす存在確率分布を、推定位置情報として生成する。
移動経路決定装置37は、この存在確率分布に基づいて位置探索装置130の移動経路を決定できる。
【0094】
なお、式(11)の分散は、推定位置が正しい場合、つまり、存在確率分布において存在確率が高い領域で表わされる推定位置が適当である場合に、式(6)に示した伝搬減衰の分散σ2そのものとなる。
また、伝搬減衰の標準偏差σ(電波伝搬的には短区間変動と呼ばれるもの)は、一般的に3〜7[dB]程度の値をとる。このことから、推定位置計算装置34は、これらの値に基づいて図9で後述する閾値δを決定してもよい。この閾値δは、評価関数と比較される閾値であって、推定位置計算装置34によって、評価関数が閾値δよりも小さい領域を検出されることで、電波発信装置10が存在する可能性が高い領域を検出するために予め決められている値である。
また、同じく図9で後述する閾値εは、評価関数が閾値δよりも小さい領域と比較される閾値であって、最終的に得たい測位精度等に基づいて、予め決定することができる。
【0095】
なお、第3の実施方法では、伝搬減衰定数βを3.5と仮定し、推定エリア内の最尤推定地点(xest,yest)に対する標準偏差の差、すなわち
【数12】
を、電波発信装置10の存在確率を評価する評価関数として定義した。
ただし、最尤推定地点(xest,yest)は、
【数13】
で与えられる。
【0096】
なお、閾値δは評価関数のばらつきを考慮して2[dB]程度とし、閾値εは100m四方程度とした。
【0097】
ここで、式(11)に示すμすなわち電界強度の分散そのものを評価関数とすることは、伝搬環境に依存する電界強度の真の分散を予め知る必要があるため一般には困難である。
一方、最尤推定地点とその他の地点との差である式(12)に示すηを以って評価関数を定義することによって、伝搬環境に依存する伝搬減衰の標準偏差σ相当分を相殺することができ、推定地点誤差に起因する部分のみを直接評価関数に反映することが可能になる。これにより、位置推定精度を向上させることができる。
【0098】
次に、図9を参照して、第3の実施方法に利用して位置探索装置130が電波発信装置10の位置を検索するとともに、移動経路決定装置37が移動方向を決定する方法の一例について説明する。図9は、第3の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【0099】
図9に示す通り、目標測位精度Cが観測者によって操作部36を介して選択されると、この目標測位制度Cの値が記憶部35に記憶される(ステップST500)。そして、電波特性取得装置31によって電界強度r1が検出されるとともに、このときの測定座標P1が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T1が時間取得装置33によって検出される。そして、推定位置計算装置34は、この電界強度r1、測定座標P1、および時間情報T1を、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる。
【0100】
次いで、移動体20が任意の方向に移動すると(ステップST510)、この移動に伴い位置探索装置130も移動し、電波特性取得装置31によって電界強度r2が検出されるとともに、このときの測定座標P2が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T2が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2が推定位置計算装置34に入力されると、この電界強度r2および測定座標P2と、記憶部36に記憶されている電界強度r1および測定座標P1とに基づき、推定位置計算装置34が、式(10)に示すような電界強度r1〜r2に伝搬距離減衰相当量を補償した値を算出し、これを用いて、式(11)に示すような分散を計算する。そして、推定位置計算装置34は、この式(11)に示す分散を用いて、式(12)に示す評価関数に従い、存在確率分布を生成して、この存在確率分布を推定位置情報として移動経路決定装置37に出力する。
【0101】
このようにして、推定位置計算装置34は、電界強度riおよび測定座標Piに基づき、電波発信装置10の存在確率の程度を段階的に示す存在確率分布を生成する。また、移動経路決定装置37が、位置探索装置130の移動経路を示す地図に対して、推定位置計算装置34によって生成された存在確率分布を重ねて、地図上における存在確率分布を示す画像データを生成し、通知部21に出力する。
そして、推定位置計算装置34は、入力された電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2と、算出した存在確率分布とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST520)。
【0102】
次いで、移動経路決定装置37は、推定位置計算装置34によって算出された存在確率分布から、式(12)に示す評価関数がある閾値δよりも小さくなる領域の面積を検出し、この検出された面積がある閾値εよりも小さいか否か、あるいは、この検出された面積が現時点以上に小さくならない最小値であるか否かを判断する(ステップST530)。なお、評価関数がある閾値δよりも小さくなる領域とは、電波発信装置10がある位置として尤もらしい位置を含む領域であって、存在確率が尤も高いレベルの範囲をいう。よって、移動経路決定装置37は、この評価関数がある閾値δよりも小さくなる領域の面積が、閾値ε(測定精度)よりも小さいか否かを判断することにより、電波発信装置10の存在確率の高い領域を絞りこみ、測定精度の範囲内で電波発信装置10を検索することができる。
【0103】
ここで、評価関数がある閾値δよりも小さくなる領域の面積が、閾値ε以上である場合(ステップST530−NO)、移動経路決定装置37は、評価関数が小さい方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知情報を、位置検索結果として通知部21に出力する(ステップST540)。これにより、通知部21は、評価関数が小さい方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知を観測者に伝える。
【0104】
次いで、ステップST520に戻り、電波特性取得装置31によって電界強度r3が検出されるとともに、このときの測定座標P3が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T3が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1〜r3および測定座標P1〜P3に基づき、存在確率分布を算出し、入力された電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3と、存在確率分布とをそれぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST520)。
【0105】
一方、ステップST530において、評価関数が閾値δよりも小さくなる領域の面積が閾値εよりも小さくなる場合、あるいは、現時点以上に小さくならない場合、もしくはその両方の場合(ステップST530−YES)、移動経路決定装置37は、記憶部35に記憶されている存在確率分布のうち、評価関数が最小となる存在確率分布における評価関数が閾値δよりも小さくなる領域のうち式(12)に示す評価関数を最小にする一点を最終推定位置と決定し、位置探索を終了させる(ステップST550)。このとき、移動経路決定装置37は、移動を終了することを表わす通知情報を通知部21に出力する。
【0106】
そして、位置探索装置130は、観測点を移動し、式(10)〜(13)に従って、観測点Piおよび電界強度riの分散から計算される電波発信装置10の存在確率分布を逐次更新(生成して記憶部35に記憶)する。
【0107】
次に、図10、11を参照して、第3の実施方法を利用する位置検索システムの実施場所と検索結果について、より詳細に説明する。
図10は、第3の実施方法が実施される実施場所を説明する概略図である。
図10に示す通り、この実施場所は、例えば、戸建住宅、中小の公共施設、あるいは商業施設等が密集する市街地であって、移動体20は、この実施場所を走っている道路を移動する。
電波発信装置10は、例えば図10に示す星印の位置に駐車された自動車に搭載され、この自動車の屋上には送信アンテナ(図示せず)が取り付けられている。この送信アンテナを介して、電波発信装置10は、測位を実施するために必要な電波として280MHz帯の電波を連続的に発信している。
【0108】
一方、位置探索装置130を搭載した移動体20は、電波発信装置10から東北東に約700m離れた地点の観測開始点から移動を開始し、観測者の操縦により移動する。この移動体20に搭載された位置探索装置130は、観測点を変えながら電界強度を検出し、この観測点の更新は、移動距離20m間隔で行う。また、位置探索装置130の移動経路を点線で、測定開始点および終了点を丸印のポインタで、電波発信装置10を星印のポインタで示す。
【0109】
図11は、第3の実施方法を利用する位置検索システムの検索結果の一例を示す参考図である。
図11には、位置探索装置130の移動経路を点線および丸印で、電波発信装置10を星印で、最尤推定地点を×印で示す。なお、図11(a)〜(f)は時系列に並んでおり、図11(a)が最も過去に算出された存在確率分布であって、図11(f)が最新の存在確率分布である。なお、図11(f)の最尤推定地点(×で示す)が、最終推定位置を表わしている。
【0110】
図11(b)に示す通り、位置探索装置130は、移動途上において評価関数の分散が小さくなる領域が、例えば、a地点周辺、b地点周辺、およびc地点周辺に分離することがある。つまり、a〜c地点周辺は、それぞれ存在確率が同じレベルの分布領域に位置されているため、移動経路決定装置37は、位置探索装置130の進行方向のうち、同じレベルの存在確率の推定位置に対して複数の移動方向が検出される。
このような場合に、分散が小さくなるどちらの方向(a〜c地点周辺に向かう方向)に移動経路を選択しても、最終的には目標とする電波発信源にたどり着くことができる。
【0111】
ここで、図11(c)に示す検索結果においては、実際に電波発信装置10が存在する星印に近いa地点周辺の方向に向かう移動経路(点線で示す)を選択した結果を示している。その後、a地点周辺で評価関数が小さくなる領域を狭めていくように移動経路を選択していく過程において、b地点周辺とc地点周辺の分散の値が最終的には大きくなってしまう(図11(f)参照)。このため、b地点周辺とc地点周辺に電波発信装置10が存在する可能性が最終的には消滅していることが示されている。
【0112】
なお、図11(b)に示す時点において、a地点周辺に向かう方向ではなく、b地点周辺あるいはc地点周辺の方向に移動経路を選択して、b地点周辺やc地点周辺の観測点を増やした場合には、実際にはb地点c地点周辺には電波発信装置10がないため、やはり式(11)に示した分散の値は大きくなる。
したがって、b地点周辺あるいはc地点周辺に電波発信装置10が存在する可能性は早々に消滅してしまう。よって、b地点周辺およびc地点周辺の可能性が消滅した後、改めてa地点方向に移動経路を選択すれば、電波発信装置10の位置を探索することができる。
【0113】
なお、第3の実施方法に基づいて位置探索装置130の移動経路を適応的に選択しながら測位を実施した結果、測位推定誤差20m程度にまで測位精度を向上できた。
【0114】
ここで、第1〜3の実施方法の得失について説明する。
第1の実施方法は、伝搬環境に依存する伝搬減衰定数等を予め知る必要がなく、簡易に位置探索を実現できる方法である。
また、探索エリアを予め厳密に定める必要もないため、電波発信装置10の大まかな位置が予め分からない場合でも、大まかに場所を把握しながら経路選択するのに向いている。
一方で、最終的に推定位置の四方で観測を行わないと鞍点判定ができない。
【0115】
第2の実施方法および第3の実施方法は、メッシュ状の候補点に対して最尤推定演算(評価関数の評価)を実施する必要がある。このため、電波発信装置10の大まかな位置が予め分からない場合には、探索範囲を広げざるを得なくなり、所要演算量が増加する。
一方で、位置探索装置130の移動経路としては、四方を取り囲むように観測を行う必要はなく、一方向から近づいていきさえすれば最終的に測位対象を特定できるため、経路選択手順が簡易である。
【0116】
また、第2の実施方法は、最尤結果のみに基づくアルゴリズムであるため、尤もらしい位置が複数ある場合などに推定結果がなかなか絞り込まれない。これに対して、第3の実施方法は電波発信装置10の位置を確からしさの分布として探知し、経路選択に反映できるため、より効率的な経路選択が可能になる。
【0117】
なお、本実施形態において電波特性取得装置31は、1つである例について説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、複数の移動体20に対してそれぞれ搭載される複数の位置探索装置30を利用するものであってもよい。
【0118】
上述の通り、本実施形態に係る位置検索システムによれば、電波特性取得装置31の数や場所を増やすことなく、単一あるいは少数の電波特性取得装置31を用いて、電波特性取得装置の数や場所を増やした場合と同様の測位精度向上効果が得られ、システムの低コスト化を実現することができる。
また、本実施形態に係る位置検索システムによれば、推定位置計算装置34によって算出される推定位置情報に基づき、移動体20を操縦して移動させることにより、電波特性を取得するのに適した電波特性観測箇所を適応的に選択しながら移動することが可能となる。これにより、より少ない観測回数あるいはより少ない観測時間で、より高精度な測位を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0119】
10 電波発信装置
20 移動体
30 位置探索装置
31 電波特性取得装置
32 位置取得装置
33 時間取得装置
34 推定位置計算装置
35 記憶部
36 操作部
37 移動経路決定装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を発信する電波発信装置の位置を検索する位置探索装置および位置探索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユビキタス社会への要求の高まりから、センサネットワーク関連技術が注目されている。このセンサネットワーク関連技術では、環境情報を収集するセンサ端末や機器を制御するためのアクチュエータ端末をフィールドに多数分散配置し、互いにネットワークで結んで情報を加工処理制御することによって、防災、物流、医療、福祉、交通など様々な場面への応用が可能になると期待されている。
ユビキタス社会へ向けたアプリケーションを実現する機能として、ヒトやモノの位置を検索する測位(端末の位置の推定あるいは検出)機能は最も有用なものであるといえる。GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を用いたナビゲーションシステムや、無線タグを用いた物品管理システムなどはその一例である。
このGPSは、地球上のあらゆる場所で高精度に自身の測位を実現できるシステムである。ただし、衛星からの電波を受信できない屋内では利用できない、モジュールが高価である、測位したいヒトやモノの近傍以外で位置情報を利用したい場合には一旦ネットワークを経由して測位結果を取り出す手間がかかるなどの難点がある。
【0003】
一方、センサネットワークや無線タグシステムにおいて利用したい位置情報は、特にモノの位置情報であることが多いと考えられる。例えば、携帯電話など移動体通信端末の位置検出(例えば、特許文献1参照)や、物品管理のために取り付けられた無線タグの位置検出(例えば、特許文献2参照)等がある。
【0004】
ここで、従来の位置探索システムについて、図12を参照して説明する。図12は、従来の位置探索システムの一例を示す概略図である。
図12に示す通り、従来の位置探索システムは、電波を発信する電波発信装置910と、この電波発信装置910から発信された電波の電波特性を取得する複数の電波特性取得装置930(930−1〜930−12)と、予め測定されている電波特性取得装置930の位置を示す位置情報を記録している位置データベース970と、電波特性および位置情報に基づき電波発信装置910の推定位置を計算する推定位置計算装置950とから構成されている。
この位置探索システムでは、電波発信装置910から発信される無線信号を電波特性取得装置930で受信して、その際に得られる電界強度や電波到来角、電波伝搬時間等の電波特性情報と、予め計測されている複数の電波特性取得装置930の位置情報とに基づき、推定位置計算装置950が電波発信装置910の位置を推定する。
この推定位置計算装置950は、例えば、電波発信装置910と複数の電波特性取得装置930のそれぞれとの相対的な距離に応じて電波特性が変化する特性を利用し、電波発信装置910の位置を推定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−231473号公報
【特許文献2】特開2004−53510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図12を用いて説明したような複数の電波特性取得装置930で取得した各種無線電波特性を利用して測位を行う各種従来手法では、一般に電波特性取得装置930の位置と数が予め決められている。よって、位置探索システムにおいて得られる電波発信装置910の測位精度は一意に決まるが、複数の電波特性取得装置930と電波発信装置910との距離が遠いと測位精度は劣化し、電波特性取得装置930による電波特性の取得可能な範囲の外に電波発信装置910がある場合、電波発信装置910の位置が測定できない。
【0007】
また、上述の測位情報の劣化等を解決するためには、電波特性取得装置930の数を増やすことによって解決できるが、測位対象である電波発信装置910の位置が事前には分からないため、測位精度を向上させるためには、膨大な数の電波特性取得装置930の設置が必要となり、手間やコストがかかる問題がある。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、電波特性取得装置の数を増やすことなく、電波発信装置の測位の精度を向上させる位置検索装置および位置探索方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、電波発信装置が発信する電波を受信して前記電波発信装置の位置を検索する位置探索装置であって、前記電波発信装置が発信する電波の電波特性を表わす電波特性情報を検出する電波特性取得装置と、前記位置探索装置の位置を表わす位置情報を検出する位置取得装置と、前記電波特性情報および前記位置情報に基づき、検索対象である前記電波発信装置の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出する推定位置計算装置と、を備え、前記位置探索装置が移動体に搭載されて移動されることにより、当該移動体の移動経路において前記電波特性取得装置により検出される前記電波特性情報と、当該電波特性情報を検出した際に前記位置取得装置によって検出される前記位置情報とに基づき、前記推定位置情報を算出することを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記の発明において、前記推定位置情報に基づいて前記位置探索装置の移動方向を決定するとともに、この移動方向を表わす通知情報を生成し、前記移動体に備えられている通知部に前記通知情報を出力する移動経路決定装置をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記の発明において、前記推定位置計算装置が、前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散を用いて、前記電波発信装置が存在する確率を表わす存在確率分布を、前記推定位置情報として算出することを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記の発明において、前記移動経路決定装置が、前記存在確率分布に基づき、前記電波発信装置の存在確率を評価する評価関数が第1の閾値よりも小さくなる領域の面積を算出し、この算出された面積が第2の閾値以上であるか否かを判断し、前記算出された面積が前記第2の閾値以上である場合、前記評価関数が小さい領域に移動する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力することを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記の発明において、前記推定位置計算装置が、前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散が最小となる推定位置を、前記推定位置情報として算出することを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記の発明において、前記電波特性取得装置によって前記電波特性情報が検出された時間を表わす時間情報を検出する時間取得装置と、前記電波特性情報に対して、当該電波特性情報が検出された時に前記位置探索装置によって検出された前記位置情報、当該電波特性情報が検出された時間を表わす前記時間情報、および当該電波特性情報と当該位置情報に基づき算出された前記推定位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、前記移動経路決定装置が、前記位置探索装置によって検出される前記位置情報のそれぞれと、前記推定情報のうち最も新しい時間情報に対応付けられる推定位置情報との差分のうち、最小となる差分が、電波発信装置の検索結果として許容される値として予め決められている目標測位精度以下であるか否かを判断するとともに、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と、2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の移動量が予め決められている第3の閾値以下であるか否かを判断し、前記最小となる差分が前記目標測位精度より大きい場合、あるいは、前記推移位置の移動量が前記第3の閾値より大きい場合、もしくはその両方の場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置に対して接近する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力することを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記の発明において、前記推定位置計算装置が、前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報を用いて、前記位置取得装置によって検出される前記位置情報に重み付した重心位置を前記推定位置情報として算出することを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記の発明において、前記電波特性取得装置によって前記電波特性情報が検出された時間を表わす時間情報を検出する時間取得装置と、前記電波特性情報に対して、当該電波特性情報が検出された時に前記位置探索装置によって検出された前記位置情報、当該電波特性情報が検出された時間を表わす前記時間情報、および当該電波特性情報と当該位置情報に基づき算出される前記推定位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、前記移動経路決定装置が、最も新しい時間情報と対応付けられる位置情報と2番目に新しい時間情報と対応付けられる位置情報との差分で表わされる測定位置の変化量と、最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の変化量とを比較して、前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上であるか否かを判断し、前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上でない場合、現在の進行方向を維持して移動することを表す通知情報を前記通知部に出力し、前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上である場合、前記位置探索装置によって検出される前記位置情報のそれぞれと、前記推定情報のうち最も新しい時間情報に対応付けられる推定位置情報との差分のうち、最小となる差分が、電波発信装置の検索結果として許容される値として予め決められている目標測位精度以下であるか否かを判断するとともに、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と、2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の移動量が予め決められている第4の閾値以下であるか否かを判断し、前記最小となる差分が前記目標測位精度より大きい場合、あるいは、前記推移位置の移動量が前記第4の閾値より大きい場合、もしくはその両方の場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置に対して接近する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力し、前記最小となる差分が前記目標測位精度以下であり、かつ、前記推移位置の移動量が前記第4の閾値以下である場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置の周囲領域を、予め決められた数で等分割し、この等分割された分割周囲領域のそれぞれにおいて、前記位置情報が検出されているか否かを判断し、前記分割周囲領域の全てにおいて、少なくとも1つの前記位置情報が検出されていない場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置から、前記位置情報が検出されていない前記分割周囲領域に向かう方向に移動することを表わす通知情報を出力することを特徴とする。
【0017】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、電波発信装置が発信する電波を受信して前記電波発信装置の位置を検索する位置探索装置による位置探索方法であって、前記位置探索装置の電波特性取得装置が、前記電波発信装置が発信する電波の電波特性を表わす電波特性情報を検出し、前記位置探索装置の位置探索装置が、前記電波特性情報を検出した時に前記位置探索装置が存在する位置を表わす位置情報を検出し、前記推定位置計算装置が、前記電波特性情報および前記位置情報に基づき、検索対象である前記電波発信装置の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出し、前記位置探索装置が、移動体に搭載されて移動されることにより、当該移動体の移動経路において前記電波特性取得装置により検出される前記電波特性情報と、当該電波特性情報を検出した際に前記位置取得装置によって検出される前記位置情報とに基づき、前記推定位置情報を算出することを特徴とする位置探索方法。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、電波特性取得装置の数を増やすことなく、電波発信装置の測位の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る位置検索システムの一例について示す概略図である。
【図2】本発明に係る位置探索装置の移動の概念を説明するための参考図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る位置検索システムの一例について示す概略図である。
【図4】本発明の第1、2実施形態に係る位置検索システムで利用される第1の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示す第1の実施方法を利用して位置検索を行う実施場所の一例を示す参考図である。
【図6】図4に示す第1の実施方法を利用した位置検索の結果の一例を示す参考図である。
【図7】図4に示す第1の実施方法に含まれる一部の処理について説明するための参考図である。
【図8】本発明の第1、2実施形態に係る位置検索システムで利用される第2の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第1、2実施形態に係る位置検索システムで利用される第3の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【図10】図9に示す第3の実施方法を利用して位置検索を行う実施場所の一例を示す参考図である。
【図11】図9に示す第3の実施方法を利用した位置検索の結果の一例を示す参考図である。
【図12】従来例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る位置探索システムの一例について示す概略図である。
図1に示す通り、位置探索システムは、位置検索対象である電波発信装置10と、移動体20に搭載されることで移動体20とともに移動可能な可搬型の位置探索装置30と、を備える。なお、この位置探索装置30は、以下に説明する第1〜3の実施方法のうちいずれか1つを用いて、電波発信装置10の位置を予測して、検索対象である電波発信装置10の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出する。
【0021】
電波発信装置10は、測位を実施するために必要な電波であって、位置探索装置30によって受信できる波長の電波を発信する。
【0022】
移動体20は、例えば観測者が搭乗し、観測者が移動方向を操縦できる自動車等の移動体である。ここで、移動体20には、位置探索装置30が固定設置されており、位置探索装置30の位置と移動体20の位置は同一視できるものである。
また、移動体20は、位置探索装置30によって位置検索結果が得られた場合、移動体20を操縦する観測者に対してこの位置検索結果を通知する通知部21を備える。この通知部21は、位置検索結果に応じた画像を表示する表示装置(例えば、液晶表示装置等)や、位置検索結果に応じた音声を再生する音声再生装置(例えば、スピーカー装置等)等である。
なお、この移動体20を操縦する観測者は、位置探索装置30によって得られた推定位置情報(推定位置あるいは存在確率分布等)を用いて、自身の経験則等に則って位置探索装置30の移動経路を決定することができる。
【0023】
位置探索装置30は、電波特性取得装置31と、位置取得装置32と、時間取得装置33と、推定位置計算装置34と、記憶部35と、操作部36とを備える。
電波特性取得装置31は、電波発信装置10から発信される電波を受信するアンテナ31Aを備え、アンテナ31Aによって受信した電波に基づき、この電波の電界強度や電波到来角、電波到来時間、電波到来時間差等の電波特性を表す電波特性情報を検出し、推定位置計算装置34に出力する。ここでは、電波特性取得装置31は、電波特性情報のうち電界強度r1〜riを予め決められたタイミング毎に連続的に検出する場合について説明する。
【0024】
位置取得装置32は、例えば、GPS( Global Positioning System )等の技術を利用して、位置探索装置30の位置を検出し、推定位置計算装置34に出力する。この位置取得装置32は、電波特性取得装置31によって電波特性情報が検出された時における位置探索装置30の位置を表す位置情報を検出することができる。
例えば、この位置取得装置32は、電波特性取得装置31が電波特性情報を検出するタイミングが予め決められており、このタイミングで位置情報を検出し、推定位置計算装置34に出力する。あるいは、位置取得装置32は、電波特性情報が推定位置計算装置34に入力されたことが推定位置計算装置34によって通知されることで、電波特性情報が検出されたタイミングを検出し、位置情報を検出する構成であってもよい。
ここで、位置取得装置32は、位置情報として、予め決められたタイミングで複数の測定座標P1〜Piを連続的に検出する。
【0025】
時間取得装置33は、電波特性取得装置31によって電波特性情報が検出された時間を表す時間情報を検出し、推定位置計算装置34に出力する。この時間取得装置33は、常に時間を表す時間情報を計時しており、推定位置計算装置34に出力することができる。あるいは、時間取得装置33は、位置取得装置32が電波特性取得装置31によって電波特性情報が検出されたタイミングと同じタイミングで位置情報を検出する場合、位置取得装置32によって位置情報が検出された時間を表す時間情報を検出するものであってもよい。
ここで、時間取得装置33は、電界強度r1〜riが検出された時間を表す時間情報T1〜Tiを連続的に検出する。
【0026】
推定位置計算装置34は、電波特性取得装置31から入力された電波特性情報に基づき、電波特性情報が検出された位置において、検索対象である電波発信装置10の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出する。具体的に説明すると、この推定位置情報は、位置探索装置30が電波発信装置10に近づくために、位置探索装置30が現在ある位置から電波発信装置10に向かう移動方向を表す情報である。本実施形態において、この推定位置情報は、位置探索装置30が移動するため観測者によって参照される。
【0027】
なお、この推定位置情報は、以下に説明する第1の実施方法を利用する場合、電波特性取得装置31によって検出される電波特性情報を用いて、位置取得装置32によって検出される位置情報に重み付した重心位置である。
また、以下に説明する第2の実施方法を利用する場合、推定位置情報は、電波特性取得装置31によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散が最小となる推定位置である。
さらに、以下に説明する第3の実施方法を利用する場合、推定位置情報は、電波特性取得装置31によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散を用いて算出される、電波発信装置10が存在する確率を表わす存在確率分布である。
【0028】
記憶部35には、例えば、電波特性情報である電界強度r1〜riと、位置情報である測定座標P1〜Piと、推定位置情報である推定座標Q1〜Qiが、推定位置計算装置34によって記憶される。
また、記憶部35には、電波発信装置10の検索結果(最終推定位置)として許容される範囲として予め決められている目標測位精度Cが、操作部36を介して入力され、記憶される。この目標測位精度Cは、観測可能な地理的環境条件(例えば、道路沿いに電波発信装置10を探索するのであれば移動可能な路地の間隔等)に基づいて、観測者によって操作部36を介して決定される。ここでは、例えば、目標測位精度C=100mとする。
さらに、記憶部35には、複数の閾値等が記憶されている。例えば、閾値γは、推定点の移動距離|Qi−Qi−1|と比較される際に、推定位置計算装置34によって参照される閾値であって、目標測位精度Cよりも十分小さい値(概ね1/10〜1/100程度)が予め決められている。
【0029】
操作部36は、観測者からの操作入力を受け付け、この操作入力に応じた操作情報を推定位置計算装置34に出力する。
【0030】
ここで、電波特性取得装置31、位置取得装置32および時間取得装置33によって検出される電波特性情報、位置情報および時間情報と、移動体20の移動経路との関係について、図2を参照して具体的に説明する。図2は、本実施形態における位置探索装置30の移動の概念を説明するための図である。
図2に示すように移動体20が移動すると、電波特性取得装置31によって電波特性情報を検出した時を表す時間情報T=T1、T2、・・・、Tnが時間取得装置33によって検出され、この時間情報T=T1、T2、・・・、Tnにおいて位置取得装置32によって検出される位置情報(測定座標)P=P1、P2、・・・、Pnが得られる。
【0031】
このように、本実施形態に係る位置探索システムでは、位置探索装置30が移動体20の移動に伴い移動するため、移動体20が移動可能な任意の場所における電波特性情報を検出することができる。
例えば、電波特性取得装置31が電界強度を表す電波特性情報を検出し、位置探索装置30がこの電波特性情報を用いた測位を行う場合、電界強度が小さい観測開始直後では電界強度が大きくなる方向に大まかに移動し(例えば、時間情報T1〜T5に相当する移動)、電界強度が大きい領域では電界強度観測箇所を密に取り、ゆっくり移動する(例えば、時間情報T6〜T14に相当する移動)。
これにより、図12に示すような位置探索システムにおいて、平面的に均一な電波特性情報を検出する場合に比べて、より少ない観測回数あるいはより少ない観測時間で、高精度な測位を実現することができる。
【0032】
よって、電波特性の観測点を更新する毎に推定位置情報を計算し、この推定位置情報に基づき観測者が移動経路を最適化しつつ移動体20を移動させて電波発信装置10を探索することによって、電波発信装置10の位置を探索するのに必要な時間を短縮することが可能となる。
なお、電波特性として、電界強度ではなく電波到来角や電波到来時間、電波到来時間差といった情報を利用する場合であっても、同じく電波特性を取得するのに適した電波特性観測箇所を適応的に選択しながら移動することによって、より少ない観測回数あるいはより少ない観測時間で、高精度な測位を実現することができる。
【0033】
一方、図12に示すような従来の実施形態においては、電波特性取得装置930の場所が固定されている。よって、電波発信装置10が任意の場所に設置され得ることを考慮すると、万遍なく測位精度を得るためには、予め万遍なく電波特性取得装置930を設置する必要がある。
しかし、本実施形態は、位置探索装置30を移動させ、この移動に伴い連続的に検出される電波特性情報および位置情報に基づき、推定位置計算装置34が電波発信装置10の位置を推定する。これにより、電波特性取得装置930の数を増やすことなく、測位精度を向上させ、膨大な数の電波特性取得装置の設置に必要な手間やコストを削減することができる。
【0034】
なお、この位置探索装置30では、電波特性取得装置31によって電波を受信するタイミングと、位置取得装置32によって位置情報を検出するタイミングと、時間取得装置33によって時間情報を検出するタイミングとが、同一となることが好ましく、例えば、以下のような手法を用いることで、上述の3つのタイミングを同一とするものが利用可能である。
例えば、推定位置計算装置34は、電波特性取得装置31によって検出される電波特性情報に、当該電波特性情報が検出された時に位置取得装置32によって検出される位置情報、この電波特性取得装置31によって電波特性情報が検出された時間を表わす時間情報、および、当該電波特性情報と当該位置情報に基づき算出される推定位置情報を、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶する。
【0035】
これにより、単一の電波特性取得装置31を移動させた場合であっても、異なる場所で繰り返し電波特性情報を検出することができ、電波特性取得装置を増やした場合と同等の測位精度を得ることができる。
【0036】
なお、位置探索装置30は、推定位置計算装置34によって算出された推定位置情報に基づき、位置探索装置30の移動経路と推定位置情報の遷移を表わす画像データを生成し、通知部21に出力することができる。
この推定位置計算装置34によって生成される画像データとは、後述する図6、11に示すような画像である。観測者は、この画像に基づき電波発信装置10の位置を推測するための知識を有する者であることが好ましく、電波発信装置10があると推測される方向に移動体20を移動させることができる。
これにより、観測者は、この通知部21に表示された画像を参考にして、移動体20の移動経路として、位置探索に適した移動経路を適応的に選択しながら電波特性の観測を行うことができ、より少ない観測回数あるいはより少ない観測時間で、高精度な測位を実現することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態について、図3を参照して説明する。図3は、第2実施形態に係る位置探索システムの一例について示す概略図である。
図3に示す通り、本実施形態に係る位置検索システムは、位置探索装置130が移動経路決定装置37を備える点において第1実施形態と異なる。なお、他の構成については、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付すことにより詳細な説明は省略する。
【0038】
移動経路決定装置37は、推定位置計算装置34によって算出される推定位置情報に基づき、移動体20の移動方向を決定して、この移動方向を表す通知情報を生成し、移動体20の通知部21に出力する。この移動経路決定装置37は、詳細については後述する第1〜3の実施方法に応じて、推定位置情報等に基づき移動体20の移動方向を決定することができる。
この構成により、第1実施形態で説明したとおり、推定位置計算装置34によって推定位置情報に基づき生成される画像を参照して、位置探索装置30の移動方向を判断できない観測者であっても、推定位置情報に基づき得られる移動方向に従って移動体20を移動させることにより、より少ない観測回数あるいはより少ない観測時間で、高精度な測位を実現することができる。
【0039】
以下、第1、2実施形態に係る位置検索システムが利用可能な実施方法の一例について説明する。なお、説明便宜のため、第2実施形態に係る位置検索システムにおける実施方法について説明する。
【0040】
[第1の実施方法]
はじめに、第1の実施方法について詳細に説明する。
推定位置計算装置34は、例えば、電波特性取得装置31によって電波特性情報として電界強度が検出された場合、この電界強度を用いて観測点座標に重み付けされた2次元座標平面上での重心座標を用いる。
つまり、推定位置計算装置34は、位置取得装置32によって位置情報として検出されるi回目の測定座標をPi、電波特性取得装置31によって電波特性情報として検出されるi回目の電界強度をriとすると、電界強度r1〜riおよび測定座標P1〜Piを用いて、i回目の検出により得られる推定位置座標Qiを、次式(式(1))を用いて算出する。
ここで、電界強度r1〜riは電波特性情報であり、測定座標P1〜Piは位置情報であり、推定座標Qiは推定位置情報である。
【0041】
【数1】
【0042】
このようにして、推定位置計算装置34は、電波特性情報を検出するたびに、電波発信装置10の推定座標Qiを算出して、更新する。また、時間取得装置33は、時間情報T1〜Tiを検出し、推定位置計算装置34に出力している。
【0043】
なお、観測点(測定座標Pi)及び推定点(推定座標Qi)の更新間隔を厳密に定める必要は無い。例えば、任意の移動距離に基づいて更新しても良いし、移動体20のようにある速度で移動し続ける乗り物に位置探索装置130を乗せて移動する場合には、任意の時間間隔に基づいて更新するものであってもよい。あるいは、道路交差点等の周囲の地理的環境条件に応じて更新間隔を決めるものであってもよい。
【0044】
次に、図4を参照して、第1の実施方法に利用して位置探索装置130が電波発信装置10の位置を検索するとともに、移動経路決定装置37が移動方向を決定する方法の一例について説明する。図4は、第1の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【0045】
図4に示す通り、目標測位精度Cが観測者によって操作部36を介して選択されると、この目標測位制度Cの値が記憶部35に記憶される(ステップST100)。そして、電波特性取得装置31によって電界強度r1が検出されるとともに、このときの測定座標P1が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T1が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r1、測定座標P1および時間情報T1が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1および測定座標P1に基づき推定座標Q1を算出するとともに、入力された電界強度r1、測定座標P1および時間情報T1と、算出した推定座標Q1とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる。
【0046】
次いで、移動体20が任意の方向に移動すると(ステップST110)、この移動に伴い位置探索装置130も移動し、電波特性取得装置31によって電界強度r2が検出されるとともに、このときの測定座標P2が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T2が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2が推定位置計算装置34に入力されると、推定位置計算装置34は、この電界強度r2および測定座標P2と、記憶部36に記憶されている電界強度r1および測定座標P1とに基づき、式(1)に従って、推定位置情報である推定座標Q2を算出する。そして、推定位置計算装置34は、入力された電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2と、算出した推定座標Q2とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST120)。
【0047】
そして、移動経路決定装置37は、測定座標Piの変化量|Pi−Pi−1|と推定座標Qiの変化量|Qi−Qi−1|とを比較する(ステップST130)。推定座標Qiの変化量|Q2−Q1|が大きい場合(ステップST130−NO)、移動経路決定装置37は、現在の進行方向を維持してさらに移動することを表す通知情報を、位置検索結果として通知部21に出力する(ステップST140)。これにより、通知部21は、現在の進行方向を維持してさらに移動することを通知する。
【0048】
次いで、ステップST120に戻り、電波特性取得装置31によって電界強度r3が検出されるとともに、このときの測定座標P3が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T3が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1〜r33および測定座標P1〜P3に基づき、推定座標Q3を算出するとともに、入力された電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3と、推定座標Q3とをそれぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST120)。
【0049】
一方、ステップST130において、推定座標Qiの変化量|Q2−Q1|が、測定座標Piの変化量|Pi−Pi−1|以下である場合(ステップST130−YES)、移動経路決定装置37は、記憶部35に記憶されている全ての観測点P1〜Piと最新の推定座標Qiとの距離のうち、最小となる距離が目標測位精度C以下であるか否かを判断するとともに、最新の推定点の移動距離|Qi−Qi−1|が閾値γ以下であるか否かを判断する(ステップST150)。
例えば、測定座標P1〜P3が記憶部35に記憶されている場合、移動経路決定装置37は、この測定座標P1と推定座標Q3との差分、測定座標P2と推定座標Q3との差分、および、測定座標P3と推定座標Q3との差分のうち、最小となる差分(以下、最小差分という)が目標測位精度C以下であるか否かを判断するとともに、最新の推定点の移動距離|Q3−Q2|が閾値γ以下であるか否かを判断する。
【0050】
ここで、測定座標P1〜P3と推定座標Q3との差分のうち、最小差分が目標測位精度Cより大きい場合、あるいは、最新の推定点の移動距離|Q3−Q2|が閾値γより大きい場合、または、その両方である場合(ステップST150−NO)、移動経路決定装置37は、推定座標Qiに接近する方向あるいはランダムな方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知情報を、位置検索結果として通知部21に出力する(ステップST160)。これにより、通知部21は、推定座標Qiに接近する方向あるいはランダムな方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知を観測者に伝える。
【0051】
そして、ステップST120に戻り、電波特性取得装置31によって電界強度r4が検出されるとともに、このときの測定座標P4が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T4が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r4、測定座標P4および時間情報T4が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1〜r4および測定座標P1〜P4に基づき、推定座標Q4を算出するとともに、入力された電界強度r4、測定座標P4および時間情報T4と、推定座標Q4とをそれぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST120)。
【0052】
一方、ステップST150において、測定座標P1〜P3と推定座標Q3との差分のうち、最小差分が目標測位精度C以下であり、かつ、最新の推定点の移動距離|Q3−Q2|が閾値γ以下である場合(ステップST150−YES)、移動経路決定装置37は、推定座標Q3の周囲領域をN個に等分割し、この等分割された360/N度の分割周囲領域のそれぞれにおいて、少なくとも1つは観測点履歴(測定座標Pi)が存在するか否かを判断する(ステップST170)。
【0053】
ここで、等分割された360/N度の分割周囲領域のうち、少なくとも1つの観測点履歴が存在しない分割周囲領域が検出された場合(ステップST170−NO)、推定座標Qiから見て観測点履歴が存在しない分割周辺領域に方向転換して移動することを表わす通知情報を、位置検索結果として通知部21に出力する(ステップST180)。これにより、通知部21は、推定座標Qiから見て観測点履歴が存在しない分割周辺領域に方向転換して移動することを表わす通知を観測者に伝える。
【0054】
そして、ステップST120に戻り、電波特性取得装置31によって電界強度r5が検出されるとともに、このときの測定座標P5が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T5が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r5、測定座標P5および時間情報T5が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1〜r5および測定座標P1〜P5に基づき、推定座標Q5を算出するとともに、入力された電界強度r5、測定座標P5および時間情報T5と、推定座標Q5とをそれぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST120)。
なお、Nは予め決められたパラメータであるが、移動体20の移動経路として道路などを仮定した場合は4方向に分岐することが多いため、N=4とすることが好ましい。
【0055】
一方、ステップST170において、等分割された360/N度の分割周囲領域のうち、いずれの分割周波数領域においても、少なくとも1つの観測点履歴が存在する場合(ステップST170−YES)、移動経路決定装置37は、記憶部35に記憶されている推定位置情報のうち最新の推定座標Qiを最終推定位置として、位置探索を終了させる(ステップST190)。このとき、移動経路決定装置37は、移動を終了することを表わす通知情報を通知部21に出力する。
【0056】
なお、電波発信装置10から発信される電波の無線伝搬路における電力伝搬減衰は、電波発信装置10と位置探索装置130との距離のβ乗(このβは、伝搬減衰定数である)に反比例するという関係が一般的に知られている。ここで、伝搬減衰定数βは、伝搬路環境によって決まる定数であって、一般的な屋内外の無線伝搬環境における伝搬減衰定数βは、3〜4(自由空間においては2)とされている。
したがって、式(1)に基づくと、位置探索装置130を搭載した移動体20が電波発信装置10の近傍を移動することで、電波発信装置10から発信される電波の電界強度を位置探索装置130が取得した場合、推定位置計算装置34は、推定座標Qiにかなり急峻に重みをつけることができる。
よって、位置探索装置130は、電波発信装置10の近傍を通りつつ、推定座標Qiの周囲を取り囲むように最終推定位置を検出することができる。このため、この最終推定位置が電界強度の鞍点になることが観測者によって確認できたところで位置探索終了とすれば、推定点近傍の観測点が増えることによって測位精度を向上させることができる。
【0057】
また、上述の通り、通知部21を介して、適切な移動経路を観測者に通知することによって、観測者が最適な移動経路を選択することができる。これにより、観測者の勘に従ってランダムに移動する場合に比べて、電界強度の観測回数ならびに観測時間を短縮することができる。
なお、上述の通り、電界強度で重み付けされた重心座標を用いる第1の実施方法では、後述する第2の実施方法とは異なり、位置探索を行う場所によって決まる伝搬減衰定数等を予め知る必要がなく、簡易に位置探索を実現できる。
【0058】
次に、図5〜7を参照して、この第1の実施方法を実際に適用した場合における、移動体20の移動経路と位置探索装置130によって得られる推定座標Qiの推移経路との関係の一例について説明する。
図5は、本実施形態に係る位置検索システムが実施される実施場所を説明する概略図である。
図5に示す通り、この実施場所は、例えば、戸建住宅、中小の公共施設、あるいは商業施設等が密集する市街地であって、移動体20は、この実施場所を走っている道路を移動する。
電波発信装置10は、例えば図5に示す星印の位置に駐車された自動車に搭載され、この自動車の屋上には送信アンテナ(図示せず)が取り付けられている。この送信アンテナを介して、電波発信装置10は、測位を実施するために必要な電波として280MHz帯の電波を連続的に発信している。
【0059】
位置探索装置130は、図5に示す通り、測定開始時点から電波発信装置10に向かって観測者が交通ルールに従って移動体20を運転した場合、移動体20とともに移動する。
この位置探索装置130を搭載した移動体20は、電波発信装置10から北北西に約600m離れた地点の観測開始点から移動を開始し、観測者の操縦により移動する。この移動体20に搭載された位置探索装置130は、観測点を変えながら電界強度の取得を行う。
この位置探索装置130の位置を表わす測定座標Piは四角形のポインタで、推定位置計算装置34によって得られる推定座標Qiは丸印のポインタで、位置探索装置130の移動経路は点線で、推定座標Qiの推移経路は実線で、それぞれ示す。
【0060】
この位置探索装置130は、停車中を除いて約30秒間隔で、観測点の更新(電波特性情報、位置情報の検出)を実施する。これは、時速15km程度で車が移動するとして、約120m間隔で電波特性取得を行うことに相当する。
【0061】
次に、図6、7を用いて、第1の実施方法を利用した場合の実施結果について説明する。
図6は、測定開始位置における測定座標P1から推定終了位置における位置座標P22までの位置探索装置130の移動経路における測定座標P1〜P22と、測定開始位置における推定座標Q1から推定終了位置における推定座標Q22までの推移経路における推定座標Q1−Q22とを示す。
図6に示す通り、推定座標Qiの推移経路は、測定座標P1の移動経路の内側を通っている。なお、第1実施形態に係る推定位置計算装置34は、この図6に示すような画像を通知部21に表示させる画像データとして生成する。
【0062】
また、図7は、図4に示すステップST170の処理について説明するための参考図である。図7は、目標測位精度と最終推定点Qiの周囲領域の分割状況(N=4とした場合)について示す。
このように、移動経路決定装置37は、推定座標Qiを中心として半径が目標推定精度C(例えば、100m)となる周辺領域をN=4に分割した分割周辺領域において、少なくとも1つの観測点履歴(測定座標Pi)が存在するか否かを検出し、全ての分割周辺領域のうち少なくとも1つの観測点履歴が存在しない分割周囲領域があるか否かを判断する。
このように、第1の実施方法を利用する位置探索装置130によって決定された移動方向に沿って移動体20が移動されることにより、目標推定精度100mに対し、測位推定誤差50m程度の測位精度を実現することができた。
【0063】
[第2の実施方法]
次に、上述の第1の実施方法と異なる第2の実施方法について説明する。
この第2の実施方法は、第1の実施方法に比べて、より高精度かつ短時間に測位を実施するために、探索したい範囲を2次元的なメッシュで区切り、各推定候補点に対して伝搬減衰則に則った伝搬減衰を計算し、最も確からしい推定点候補を推定点とするような最尤推定方法に基づいて、観測点Pi及び推定点Qiを更新していく方法である。
【0064】
位置探索装置130において観測される電界強度ri[dBm]は、電波発信装置10の送信電力Ts[dBm]およびi番目の観測点までの伝搬路の減衰Li[dB]を用いて、
【数2】
と表すことができる。
【0065】
ここで、無線信号の距離減衰特性を利用し、1〜i番目までの観測結果を利用して、最尤判定により、電波発信装置10の座標Qi=(x,y)を推定することを考える。
【0066】
この推定座標(x,y)は、
【数3】
である。
【0067】
ただし、p(x,y|r1,r2,・・・,ri)は、i回目の電界強度観測後に、電波発信装置10の座標が(x,y)となる結合確率密度関数である。
【0068】
しかし、一般に条件付確率p(x,y|r1,r2,・・・,ri)を計算するのは困難であるため、電波発信機の座標(x,y)の確率分布が一様であると仮定すると、ベイズ則を用いて、
【数4】
と変形できる。
【0069】
すなわち、容易に計算可能な条件付確率p(r1,r2,・・・,ri|x,y)を最大にする位置(x,y)を推定する問題に置き換えることができる。
【0070】
ここで、観測された電界強度rk (k=1,2,...,i)が互いに無相関であるとすると、条件付確率p(r1,r2,・・・,ri|x,y)は、
【数5】
と展開することができる。
【0071】
さらに、奥村−秦式に代表されるように、電波伝搬における電力損失Liは、距離のβ乗に反比例する距離減衰と対数正規分布するばらつきによって決定されるとみなすことができる。
【0072】
よって、
【数6】
が成り立つ。
【0073】
ただし、α、βは位置探索を行う場所によって決まる定数、dは送信装置(ここでは電波発信装置10)と受信装置(ここでは位置探索装置130)の距離、N(0,σ2)は平均0、分散σ2(標準偏差σ)の対数正規分布するばらつきである。
【0074】
なお、α、βは、伝搬減衰の距離特性を測定して予め定める、もしくは位置推定のために取得した電界強度の受信レベルrkを用いて推定するなどして定めることができる。
【0075】
このとき、条件付確率p(ri|x,y)は正規分布の性質より
【数7】
と表せる。
【0076】
ここで、(Xi,Yi)は、位置取得装置32によって検出されるi番目の測定座標P1である。
【0077】
また、式(5)、式(7)より、条件付確率p(r1,r2,・・・,ri|x,y)は、
【数8】
を用いて表現できる。
【0078】
さらに、exp(・)が単調増加の関数であることを利用すると、電波発信装置10の推定位置を表わす推定座標(xest,yest)を、
【数9】
のように推定できる。
【0079】
これは、観測した電界強度から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散が最小となる位置を、電波発信装置10の位置として最尤推定することに相当する。
【0080】
よって、第1の実施方法と同様に、位置探索装置130は、新たに観測を行うたびに、推定位置計算装置34を用いて、電波発信装置10の推定座標Qiを更新(算出して記憶部35に記憶)できる。
【0081】
次に、図8を参照して、第2の実施方法に利用して位置探索装置130が電波発信装置10の位置を検索するとともに、移動経路決定装置37が移動方向を決定する方法の一例について説明する。図8は、第2の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【0082】
図8に示す通り、目標測位精度Cが観測者によって操作部36を介して選択されると、この目標測位制度Cの値が記憶部35に記憶される(ステップST300)。そして、電波特性取得装置31によって電界強度r1が検出されるとともに、このときの測定座標P1が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T1が時間取得装置33によって検出される。そして、推定位置計算装置34は、電界強度r1および測定座標P1に基づき式(9)に従って推定座標Q1(xest,yest)を算出し、入力された電界強度r1、測定座標P1および時間情報T1と、算出した推定座標Q1(xest,yest)とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる。
【0083】
次いで、移動体20が任意の方向に移動すると(ステップST310)、この移動に伴い位置探索装置130も移動し、電波特性取得装置31によって電界強度r2が検出されるとともに、このときの測定座標P2が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T2が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2が推定位置計算装置34に入力されると、この電界強度r2および測定座標P2と、記憶部36に記憶されている電界強度r1および測定座標P1とに基づき、式(9)に従って、推定位置計算装置34が、推定位置情報である推定座標Q2(xest,yest)を算出する。そして、推定位置計算装置34は、入力された電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2と、算出した推定座標Q2(xest,yest)とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST320)。
【0084】
そして、移動経路決定装置37は、記憶部35に記憶されている全ての観測点P1〜Piと最新の推定座標Qiとの距離のうち、全てが目標測位精度C以下であるか否かを判断するとともに、最新の推定点の移動距離|Qi−Qi−1|が閾値γ以下であるか否かを判断する(ステップST330)。
例えば、測定座標P1〜P2が記憶部35に記憶されている場合、移動経路決定装置37は、この測定座標P1と推定座標Q2(xest,yest)との差分、および、測定座標P2と推定座標Q2(xest,yest)との差分のうち、最小差分が目標測位精度C以下であるか否かを判断するとともに、最新の推定点の移動距離|Q2−Q1|が閾値γ以下であるか否かを判断する。
【0085】
ここで、測定座標P1〜P2と推定座標Q2(xest,yest)との差分のうち、最小差分が目標測位精度Cより大きい場合、あるいは、最新の推定点の移動距離|Q2−Q1|が閾値γより大きい場合、または、その両方である場合(ステップST330−NO)、移動経路決定装置37は、推定座標Qi(xest,yest)に接近する方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知情報を、位置検索結果として通知部21に出力する(ステップST340)。これにより、通知部21は、推定座標Qi(xest,yest)に接近する方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知を観測者に伝える。
【0086】
次いで、ステップST320に戻り、電波特性取得装置31によって電界強度r3が検出されるとともに、このときの測定座標P3が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T3が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1〜r3および測定座標P1〜P3に基づき、推定座標Q3(xest,yest)を算出し、入力された電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3と、推定座標Q3(xest,yest)とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST320)。
【0087】
一方、ステップST330において、測定座標P1〜Piと推定座標Qi(xest,yest)との差分のうち、最小差分が目標測位精度C以下であり、かつ、最新の推定点の移動距離|Qi−Qi−1|が閾値γ以下である場合(ステップST330−YES)、移動経路決定装置37は、記憶部35に記憶されている推定位置情報のうち最新の推定座標Qi(xest,yest)を最終推定位置として、位置探索を終了させる(ステップST350)。このとき、移動経路決定装置37は、移動を終了することを表わす通知情報を通知部21に出力する。
【0088】
このように、第2の実施方法は、第1の実施方法に比べて、図4に示したステップST130、140、170、180に相当する手順を含まない。この理由について以下簡単に説明する。
上述の第1の実施方法では、推定座標Qiを観測点座標の重心として提示するため、観測点群(移動経路)の内側としてのみ推定位置が提示される。
一方、第2の実施方法では、観測された電界強度情報を伝搬距離減衰相当量に変換して2次元平面上に幾何学的に反映して位置推定を行う。そのため、位置探索装置130が電波発信装置10の近傍に接近する以前の状態、すなわち観測点群(位置探索装置130の移動経路)の外側に電波発信装置10が存在するような場合であっても、観測点群からの距離や位置関係を推定位置に反映できる。したがって、移動経路決定装置37は、推定位置計算装置34のよって逐次更新される推定座標Qi(xest,yest)の方向に接近していく経路を選択すればよく、ステップST130および140に相当する前半の経路選択の手順を簡略化することができる。
【0089】
また、第1の実施方法では、推定座標Qiの四方を取り囲むように観測を行って最終的な推定座標Qiが電界強度の鞍点になることが観測者によって確認されることで、最終的な推定座標Qiが最終推定位置と確定される。
これに対して、第2の実施方法では、推定座標Qi(xest,yest)の周辺における一定範囲のエリア内における推定候補点間の尤度比較の結果を推定位置計算装置34が逐次更新し、移動経路決定装置37が移動方向を通知している。つまり、測定座標Piが推定座標Qiに接近すればするほど、周囲の候補点の尤度は急峻に縮減する。したがって、測定座標Piと推定座標Qiが近接し、さらに推定座標Qiの移動量が小さくなった時点での推定座標を最終推定位置とすることができる。よって、ステップST170および180に相当する後半の経路選択の手順を簡略化することができる。
【0090】
なお、第1の実施方法および第2の実施方法では、いずれも、1つの測定座標Piに対して、1つの推定座標Qiを算出し、この推定座標Qiに基づいて移動経路決定装置37が移動経路を決定するものである。
一方、式(9)に示した電界強度から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散は、1つの測定座標Piに対して、複数の推定点候補を算出することができる。このため、推定位置計算装置34は、最尤推定結果として複数の推定点候補を算出することにより、存在確率分布を生成することができる。また、移動経路決定装置37は、この存在確率分布に基づいて位置探索装置130の移動経路を決定することができる。このように電波発信装置10の存在確率分布を用いて電波発信装置10の位置を検索する第3の実施方法について、以下説明する。
【0091】
[第3の実施方法]
次に、上述の第1〜2の実施方法と異なる第3の実施方法について説明する。
この第3の実施方法は、第2の実施方法と同様に、探索したい範囲を2次元的なメッシュで区切り、電界強度riや測定座標Piに基づき算出される複数の推定候補点のそれぞれに対して、伝搬減衰則に則った伝搬減衰を計算し、最も確からしい推定点候補を推定点とするような最尤推定方法に基づいて、観測点Pi及び存在確率分布を更新していく方法である。
上述の第2の実施方法は、最尤結果のみに基づくアルゴリズムであるため、尤もらしい位置が複数ある場合は、推定結果がなかなか絞り込まれない。
これに対して、第3の実施方法は、電波発信装置10の推定位置の確からしさを表わす存在確率の分布を生成し、経路選択に反映できるため、より効率的な経路選択が可能になる。
【0092】
式(9)より、各測定座標Piで表わされる観測点で観測した電界強度riに伝搬距離減衰相当量を補償した値を
【数10】
とすると、推定座標Qi(x,y)に対して計算される分散は
【数11】
となる。
【0093】
推定位置計算装置34は、式(11)そのものあるいは式(11)を用いて、例えば式(12)に示す評価関数に従って、2次元平面上でマッピングした結果を存在確率分布として生成する。つまり、推定位置計算装置34は、電波特性取得装置31によって検出された電波特性情報(例えば、電界強度r1〜ri)から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散(式(11)参照)を用いて、電波発信装置10が存在する確率を表わす存在確率分布を、推定位置情報として生成する。
移動経路決定装置37は、この存在確率分布に基づいて位置探索装置130の移動経路を決定できる。
【0094】
なお、式(11)の分散は、推定位置が正しい場合、つまり、存在確率分布において存在確率が高い領域で表わされる推定位置が適当である場合に、式(6)に示した伝搬減衰の分散σ2そのものとなる。
また、伝搬減衰の標準偏差σ(電波伝搬的には短区間変動と呼ばれるもの)は、一般的に3〜7[dB]程度の値をとる。このことから、推定位置計算装置34は、これらの値に基づいて図9で後述する閾値δを決定してもよい。この閾値δは、評価関数と比較される閾値であって、推定位置計算装置34によって、評価関数が閾値δよりも小さい領域を検出されることで、電波発信装置10が存在する可能性が高い領域を検出するために予め決められている値である。
また、同じく図9で後述する閾値εは、評価関数が閾値δよりも小さい領域と比較される閾値であって、最終的に得たい測位精度等に基づいて、予め決定することができる。
【0095】
なお、第3の実施方法では、伝搬減衰定数βを3.5と仮定し、推定エリア内の最尤推定地点(xest,yest)に対する標準偏差の差、すなわち
【数12】
を、電波発信装置10の存在確率を評価する評価関数として定義した。
ただし、最尤推定地点(xest,yest)は、
【数13】
で与えられる。
【0096】
なお、閾値δは評価関数のばらつきを考慮して2[dB]程度とし、閾値εは100m四方程度とした。
【0097】
ここで、式(11)に示すμすなわち電界強度の分散そのものを評価関数とすることは、伝搬環境に依存する電界強度の真の分散を予め知る必要があるため一般には困難である。
一方、最尤推定地点とその他の地点との差である式(12)に示すηを以って評価関数を定義することによって、伝搬環境に依存する伝搬減衰の標準偏差σ相当分を相殺することができ、推定地点誤差に起因する部分のみを直接評価関数に反映することが可能になる。これにより、位置推定精度を向上させることができる。
【0098】
次に、図9を参照して、第3の実施方法に利用して位置探索装置130が電波発信装置10の位置を検索するとともに、移動経路決定装置37が移動方向を決定する方法の一例について説明する。図9は、第3の実施方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【0099】
図9に示す通り、目標測位精度Cが観測者によって操作部36を介して選択されると、この目標測位制度Cの値が記憶部35に記憶される(ステップST500)。そして、電波特性取得装置31によって電界強度r1が検出されるとともに、このときの測定座標P1が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T1が時間取得装置33によって検出される。そして、推定位置計算装置34は、この電界強度r1、測定座標P1、および時間情報T1を、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる。
【0100】
次いで、移動体20が任意の方向に移動すると(ステップST510)、この移動に伴い位置探索装置130も移動し、電波特性取得装置31によって電界強度r2が検出されるとともに、このときの測定座標P2が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T2が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2が推定位置計算装置34に入力されると、この電界強度r2および測定座標P2と、記憶部36に記憶されている電界強度r1および測定座標P1とに基づき、推定位置計算装置34が、式(10)に示すような電界強度r1〜r2に伝搬距離減衰相当量を補償した値を算出し、これを用いて、式(11)に示すような分散を計算する。そして、推定位置計算装置34は、この式(11)に示す分散を用いて、式(12)に示す評価関数に従い、存在確率分布を生成して、この存在確率分布を推定位置情報として移動経路決定装置37に出力する。
【0101】
このようにして、推定位置計算装置34は、電界強度riおよび測定座標Piに基づき、電波発信装置10の存在確率の程度を段階的に示す存在確率分布を生成する。また、移動経路決定装置37が、位置探索装置130の移動経路を示す地図に対して、推定位置計算装置34によって生成された存在確率分布を重ねて、地図上における存在確率分布を示す画像データを生成し、通知部21に出力する。
そして、推定位置計算装置34は、入力された電界強度r2、測定座標P2および時間情報T2と、算出した存在確率分布とを、それぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST520)。
【0102】
次いで、移動経路決定装置37は、推定位置計算装置34によって算出された存在確率分布から、式(12)に示す評価関数がある閾値δよりも小さくなる領域の面積を検出し、この検出された面積がある閾値εよりも小さいか否か、あるいは、この検出された面積が現時点以上に小さくならない最小値であるか否かを判断する(ステップST530)。なお、評価関数がある閾値δよりも小さくなる領域とは、電波発信装置10がある位置として尤もらしい位置を含む領域であって、存在確率が尤も高いレベルの範囲をいう。よって、移動経路決定装置37は、この評価関数がある閾値δよりも小さくなる領域の面積が、閾値ε(測定精度)よりも小さいか否かを判断することにより、電波発信装置10の存在確率の高い領域を絞りこみ、測定精度の範囲内で電波発信装置10を検索することができる。
【0103】
ここで、評価関数がある閾値δよりも小さくなる領域の面積が、閾値ε以上である場合(ステップST530−NO)、移動経路決定装置37は、評価関数が小さい方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知情報を、位置検索結果として通知部21に出力する(ステップST540)。これにより、通知部21は、評価関数が小さい方向に方向転換してさらに移動することを表わす通知を観測者に伝える。
【0104】
次いで、ステップST520に戻り、電波特性取得装置31によって電界強度r3が検出されるとともに、このときの測定座標P3が位置取得装置32によって検出される。また、この時の時間情報T3が時間取得装置33によって検出される。この電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3が入力されると、推定位置計算装置34は、電界強度r1〜r3および測定座標P1〜P3に基づき、存在確率分布を算出し、入力された電界強度r3、測定座標P3および時間情報T3と、存在確率分布とをそれぞれ対応付けて記憶部35に記憶させる(ステップST520)。
【0105】
一方、ステップST530において、評価関数が閾値δよりも小さくなる領域の面積が閾値εよりも小さくなる場合、あるいは、現時点以上に小さくならない場合、もしくはその両方の場合(ステップST530−YES)、移動経路決定装置37は、記憶部35に記憶されている存在確率分布のうち、評価関数が最小となる存在確率分布における評価関数が閾値δよりも小さくなる領域のうち式(12)に示す評価関数を最小にする一点を最終推定位置と決定し、位置探索を終了させる(ステップST550)。このとき、移動経路決定装置37は、移動を終了することを表わす通知情報を通知部21に出力する。
【0106】
そして、位置探索装置130は、観測点を移動し、式(10)〜(13)に従って、観測点Piおよび電界強度riの分散から計算される電波発信装置10の存在確率分布を逐次更新(生成して記憶部35に記憶)する。
【0107】
次に、図10、11を参照して、第3の実施方法を利用する位置検索システムの実施場所と検索結果について、より詳細に説明する。
図10は、第3の実施方法が実施される実施場所を説明する概略図である。
図10に示す通り、この実施場所は、例えば、戸建住宅、中小の公共施設、あるいは商業施設等が密集する市街地であって、移動体20は、この実施場所を走っている道路を移動する。
電波発信装置10は、例えば図10に示す星印の位置に駐車された自動車に搭載され、この自動車の屋上には送信アンテナ(図示せず)が取り付けられている。この送信アンテナを介して、電波発信装置10は、測位を実施するために必要な電波として280MHz帯の電波を連続的に発信している。
【0108】
一方、位置探索装置130を搭載した移動体20は、電波発信装置10から東北東に約700m離れた地点の観測開始点から移動を開始し、観測者の操縦により移動する。この移動体20に搭載された位置探索装置130は、観測点を変えながら電界強度を検出し、この観測点の更新は、移動距離20m間隔で行う。また、位置探索装置130の移動経路を点線で、測定開始点および終了点を丸印のポインタで、電波発信装置10を星印のポインタで示す。
【0109】
図11は、第3の実施方法を利用する位置検索システムの検索結果の一例を示す参考図である。
図11には、位置探索装置130の移動経路を点線および丸印で、電波発信装置10を星印で、最尤推定地点を×印で示す。なお、図11(a)〜(f)は時系列に並んでおり、図11(a)が最も過去に算出された存在確率分布であって、図11(f)が最新の存在確率分布である。なお、図11(f)の最尤推定地点(×で示す)が、最終推定位置を表わしている。
【0110】
図11(b)に示す通り、位置探索装置130は、移動途上において評価関数の分散が小さくなる領域が、例えば、a地点周辺、b地点周辺、およびc地点周辺に分離することがある。つまり、a〜c地点周辺は、それぞれ存在確率が同じレベルの分布領域に位置されているため、移動経路決定装置37は、位置探索装置130の進行方向のうち、同じレベルの存在確率の推定位置に対して複数の移動方向が検出される。
このような場合に、分散が小さくなるどちらの方向(a〜c地点周辺に向かう方向)に移動経路を選択しても、最終的には目標とする電波発信源にたどり着くことができる。
【0111】
ここで、図11(c)に示す検索結果においては、実際に電波発信装置10が存在する星印に近いa地点周辺の方向に向かう移動経路(点線で示す)を選択した結果を示している。その後、a地点周辺で評価関数が小さくなる領域を狭めていくように移動経路を選択していく過程において、b地点周辺とc地点周辺の分散の値が最終的には大きくなってしまう(図11(f)参照)。このため、b地点周辺とc地点周辺に電波発信装置10が存在する可能性が最終的には消滅していることが示されている。
【0112】
なお、図11(b)に示す時点において、a地点周辺に向かう方向ではなく、b地点周辺あるいはc地点周辺の方向に移動経路を選択して、b地点周辺やc地点周辺の観測点を増やした場合には、実際にはb地点c地点周辺には電波発信装置10がないため、やはり式(11)に示した分散の値は大きくなる。
したがって、b地点周辺あるいはc地点周辺に電波発信装置10が存在する可能性は早々に消滅してしまう。よって、b地点周辺およびc地点周辺の可能性が消滅した後、改めてa地点方向に移動経路を選択すれば、電波発信装置10の位置を探索することができる。
【0113】
なお、第3の実施方法に基づいて位置探索装置130の移動経路を適応的に選択しながら測位を実施した結果、測位推定誤差20m程度にまで測位精度を向上できた。
【0114】
ここで、第1〜3の実施方法の得失について説明する。
第1の実施方法は、伝搬環境に依存する伝搬減衰定数等を予め知る必要がなく、簡易に位置探索を実現できる方法である。
また、探索エリアを予め厳密に定める必要もないため、電波発信装置10の大まかな位置が予め分からない場合でも、大まかに場所を把握しながら経路選択するのに向いている。
一方で、最終的に推定位置の四方で観測を行わないと鞍点判定ができない。
【0115】
第2の実施方法および第3の実施方法は、メッシュ状の候補点に対して最尤推定演算(評価関数の評価)を実施する必要がある。このため、電波発信装置10の大まかな位置が予め分からない場合には、探索範囲を広げざるを得なくなり、所要演算量が増加する。
一方で、位置探索装置130の移動経路としては、四方を取り囲むように観測を行う必要はなく、一方向から近づいていきさえすれば最終的に測位対象を特定できるため、経路選択手順が簡易である。
【0116】
また、第2の実施方法は、最尤結果のみに基づくアルゴリズムであるため、尤もらしい位置が複数ある場合などに推定結果がなかなか絞り込まれない。これに対して、第3の実施方法は電波発信装置10の位置を確からしさの分布として探知し、経路選択に反映できるため、より効率的な経路選択が可能になる。
【0117】
なお、本実施形態において電波特性取得装置31は、1つである例について説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、複数の移動体20に対してそれぞれ搭載される複数の位置探索装置30を利用するものであってもよい。
【0118】
上述の通り、本実施形態に係る位置検索システムによれば、電波特性取得装置31の数や場所を増やすことなく、単一あるいは少数の電波特性取得装置31を用いて、電波特性取得装置の数や場所を増やした場合と同様の測位精度向上効果が得られ、システムの低コスト化を実現することができる。
また、本実施形態に係る位置検索システムによれば、推定位置計算装置34によって算出される推定位置情報に基づき、移動体20を操縦して移動させることにより、電波特性を取得するのに適した電波特性観測箇所を適応的に選択しながら移動することが可能となる。これにより、より少ない観測回数あるいはより少ない観測時間で、より高精度な測位を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0119】
10 電波発信装置
20 移動体
30 位置探索装置
31 電波特性取得装置
32 位置取得装置
33 時間取得装置
34 推定位置計算装置
35 記憶部
36 操作部
37 移動経路決定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波発信装置が発信する電波を受信して前記電波発信装置の位置を検索する位置探索装置であって、
前記電波発信装置が発信する電波の電波特性を表わす電波特性情報を検出する電波特性取得装置と、
前記位置探索装置の位置を表わす位置情報を検出する位置取得装置と、
前記電波特性情報および前記位置情報に基づき、検索対象である前記電波発信装置の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出する推定位置計算装置と、を備え、
前記位置探索装置が移動体に搭載されて移動されることにより、当該移動体の移動経路において前記電波特性取得装置により検出される前記電波特性情報と、当該電波特性情報を検出した際に前記位置取得装置によって検出される前記位置情報とに基づき、前記推定位置情報を算出することを特徴とする位置探索装置。
【請求項2】
前記推定位置情報に基づいて前記位置探索装置の移動方向を決定するとともに、この移動方向を表わす通知情報を生成し、前記移動体に備えられている通知部に前記通知情報を出力する移動経路決定装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の位置探索装置。
【請求項3】
前記推定位置計算装置は、
前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散を用いて、前記電波発信装置が存在する確率を表わす存在確率分布を、前記推定位置情報として算出することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の位置探索装置。
【請求項4】
前記移動経路決定装置は、
前記存在確率分布に基づき、前記電波発信装置の存在確率を評価する評価関数が第1の閾値よりも小さくなる領域の面積を算出し、この算出された面積が第2の閾値以上であるか否かを判断し、前記算出された面積が前記第2の閾値以上である場合、前記評価関数が小さい領域に移動する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力することを特徴とする請求項2あるいは3に記載の位置探索装置。
【請求項5】
前記推定位置計算装置は、
前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散が最小となる推定位置を、前記推定位置情報として算出することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の位置探索装置。
【請求項6】
前記電波特性取得装置によって前記電波特性情報が検出された時間を表わす時間情報を検出する時間取得装置と
前記電波特性情報に対して、当該電波特性情報が検出された時に前記位置探索装置によって検出された前記位置情報、当該電波特性情報が検出された時間を表わす前記時間情報、および当該電波特性情報と当該位置情報に基づき算出された前記推定位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記移動経路決定装置は、
前記位置探索装置によって検出される前記位置情報のそれぞれと、前記推定情報のうち最も新しい時間情報に対応付けられる推定位置情報との差分のうち、最小となる差分が、電波発信装置の検索結果として許容される値として予め決められている目標測位精度以下であるか否かを判断するとともに、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と、2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の移動量が予め決められている第3の閾値以下であるか否かを判断し、前記最小となる差分が前記目標測位精度より大きい場合、あるいは、前記推移位置の移動量が前記第3の閾値より大きい場合、もしくはその両方の場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置に対して接近する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力することを特徴とする請求項2あるいは5に記載の位置探索装置。
【請求項7】
前記推定位置計算装置は、
前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報を用いて、前記位置取得装置によって検出される前記位置情報に重み付した重心位置を前記推定位置情報として算出することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の位置探索装置。
【請求項8】
前記電波特性取得装置によって前記電波特性情報が検出された時間を表わす時間情報を検出する時間取得装置と、
前記電波特性情報に対して、当該電波特性情報が検出された時に前記位置探索装置によって検出された前記位置情報、当該電波特性情報が検出された時間を表わす前記時間情報、および当該電波特性情報と当該位置情報に基づき算出される前記推定位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記移動経路決定装置は、
最も新しい時間情報と対応付けられる位置情報と2番目に新しい時間情報と対応付けられる位置情報との差分で表わされる測定位置の変化量と、最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の変化量とを比較して、前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上であるか否かを判断し、前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上でない場合、現在の進行方向を維持して移動することを表す通知情報を前記通知部に出力し、
前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上である場合、
前記位置探索装置によって検出される前記位置情報のそれぞれと、前記推定情報のうち最も新しい時間情報に対応付けられる推定位置情報との差分のうち、最小となる差分が、電波発信装置の検索結果として許容される値として予め決められている目標測位精度以下であるか否かを判断するとともに、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と、2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の移動量が予め決められている第4の閾値以下であるか否かを判断し、前記最小となる差分が前記目標測位精度より大きい場合、あるいは、前記推移位置の移動量が前記第4の閾値より大きい場合、もしくはその両方の場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置に対して接近する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力し、
前記最小となる差分が前記目標測位精度以下であり、かつ、前記推移位置の移動量が前記第4の閾値以下である場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置の周囲領域を、予め決められた数で等分割し、この等分割された分割周囲領域のそれぞれにおいて、前記位置情報が検出されているか否かを判断し、前記分割周囲領域の全てにおいて、少なくとも1つの前記位置情報が検出されていない場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置から、前記位置情報が検出されていない前記分割周囲領域に向かう方向に移動することを表わす通知情報を出力することを特徴とする請求項2あるいは7に記載の位置探索装置。
【請求項9】
電波発信装置が発信する電波を受信して前記電波発信装置の位置を検索する位置探索装置による位置探索方法であって、
前記位置探索装置の電波特性取得装置が、
前記電波発信装置が発信する電波の電波特性を表わす電波特性情報を検出し、
前記位置探索装置の位置探索装置が
前記電波特性情報を検出した時に前記位置探索装置が存在する位置を表わす位置情報を検出し、
前記推定位置計算装置が、
前記電波特性情報および前記位置情報に基づき、検索対象である前記電波発信装置の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出し、
前記位置探索装置が、
移動体に搭載されて移動されることにより、当該移動体の移動経路において前記電波特性取得装置により検出される前記電波特性情報と、当該電波特性情報を検出した際に前記位置取得装置によって検出される前記位置情報とに基づき、前記推定位置情報を算出することを特徴とする位置探索方法。
【請求項1】
電波発信装置が発信する電波を受信して前記電波発信装置の位置を検索する位置探索装置であって、
前記電波発信装置が発信する電波の電波特性を表わす電波特性情報を検出する電波特性取得装置と、
前記位置探索装置の位置を表わす位置情報を検出する位置取得装置と、
前記電波特性情報および前記位置情報に基づき、検索対象である前記電波発信装置の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出する推定位置計算装置と、を備え、
前記位置探索装置が移動体に搭載されて移動されることにより、当該移動体の移動経路において前記電波特性取得装置により検出される前記電波特性情報と、当該電波特性情報を検出した際に前記位置取得装置によって検出される前記位置情報とに基づき、前記推定位置情報を算出することを特徴とする位置探索装置。
【請求項2】
前記推定位置情報に基づいて前記位置探索装置の移動方向を決定するとともに、この移動方向を表わす通知情報を生成し、前記移動体に備えられている通知部に前記通知情報を出力する移動経路決定装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の位置探索装置。
【請求項3】
前記推定位置計算装置は、
前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散を用いて、前記電波発信装置が存在する確率を表わす存在確率分布を、前記推定位置情報として算出することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の位置探索装置。
【請求項4】
前記移動経路決定装置は、
前記存在確率分布に基づき、前記電波発信装置の存在確率を評価する評価関数が第1の閾値よりも小さくなる領域の面積を算出し、この算出された面積が第2の閾値以上であるか否かを判断し、前記算出された面積が前記第2の閾値以上である場合、前記評価関数が小さい領域に移動する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力することを特徴とする請求項2あるいは3に記載の位置探索装置。
【請求項5】
前記推定位置計算装置は、
前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報から伝搬距離減衰相当量を減算した値の分散が最小となる推定位置を、前記推定位置情報として算出することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の位置探索装置。
【請求項6】
前記電波特性取得装置によって前記電波特性情報が検出された時間を表わす時間情報を検出する時間取得装置と
前記電波特性情報に対して、当該電波特性情報が検出された時に前記位置探索装置によって検出された前記位置情報、当該電波特性情報が検出された時間を表わす前記時間情報、および当該電波特性情報と当該位置情報に基づき算出された前記推定位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記移動経路決定装置は、
前記位置探索装置によって検出される前記位置情報のそれぞれと、前記推定情報のうち最も新しい時間情報に対応付けられる推定位置情報との差分のうち、最小となる差分が、電波発信装置の検索結果として許容される値として予め決められている目標測位精度以下であるか否かを判断するとともに、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と、2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の移動量が予め決められている第3の閾値以下であるか否かを判断し、前記最小となる差分が前記目標測位精度より大きい場合、あるいは、前記推移位置の移動量が前記第3の閾値より大きい場合、もしくはその両方の場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置に対して接近する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力することを特徴とする請求項2あるいは5に記載の位置探索装置。
【請求項7】
前記推定位置計算装置は、
前記電波特性取得装置によって検出される電波特性情報を用いて、前記位置取得装置によって検出される前記位置情報に重み付した重心位置を前記推定位置情報として算出することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の位置探索装置。
【請求項8】
前記電波特性取得装置によって前記電波特性情報が検出された時間を表わす時間情報を検出する時間取得装置と、
前記電波特性情報に対して、当該電波特性情報が検出された時に前記位置探索装置によって検出された前記位置情報、当該電波特性情報が検出された時間を表わす前記時間情報、および当該電波特性情報と当該位置情報に基づき算出される前記推定位置情報を対応付けて記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記移動経路決定装置は、
最も新しい時間情報と対応付けられる位置情報と2番目に新しい時間情報と対応付けられる位置情報との差分で表わされる測定位置の変化量と、最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の変化量とを比較して、前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上であるか否かを判断し、前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上でない場合、現在の進行方向を維持して移動することを表す通知情報を前記通知部に出力し、
前記測定位置の変化量が前記推定位置の変化量以上である場合、
前記位置探索装置によって検出される前記位置情報のそれぞれと、前記推定情報のうち最も新しい時間情報に対応付けられる推定位置情報との差分のうち、最小となる差分が、電波発信装置の検索結果として許容される値として予め決められている目標測位精度以下であるか否かを判断するとともに、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報と、2番目に新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報との差分で表わされる推定位置の移動量が予め決められている第4の閾値以下であるか否かを判断し、前記最小となる差分が前記目標測位精度より大きい場合、あるいは、前記推移位置の移動量が前記第4の閾値より大きい場合、もしくはその両方の場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置に対して接近する方向に移動することを表わす通知情報を前記通知部に出力し、
前記最小となる差分が前記目標測位精度以下であり、かつ、前記推移位置の移動量が前記第4の閾値以下である場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置の周囲領域を、予め決められた数で等分割し、この等分割された分割周囲領域のそれぞれにおいて、前記位置情報が検出されているか否かを判断し、前記分割周囲領域の全てにおいて、少なくとも1つの前記位置情報が検出されていない場合、前記最も新しい時間情報と対応付けられる推定位置情報が表わす推定位置から、前記位置情報が検出されていない前記分割周囲領域に向かう方向に移動することを表わす通知情報を出力することを特徴とする請求項2あるいは7に記載の位置探索装置。
【請求項9】
電波発信装置が発信する電波を受信して前記電波発信装置の位置を検索する位置探索装置による位置探索方法であって、
前記位置探索装置の電波特性取得装置が、
前記電波発信装置が発信する電波の電波特性を表わす電波特性情報を検出し、
前記位置探索装置の位置探索装置が
前記電波特性情報を検出した時に前記位置探索装置が存在する位置を表わす位置情報を検出し、
前記推定位置計算装置が、
前記電波特性情報および前記位置情報に基づき、検索対象である前記電波発信装置の位置として予測される位置を表わす推定位置情報を算出し、
前記位置探索装置が、
移動体に搭載されて移動されることにより、当該移動体の移動経路において前記電波特性取得装置により検出される前記電波特性情報と、当該電波特性情報を検出した際に前記位置取得装置によって検出される前記位置情報とに基づき、前記推定位置情報を算出することを特徴とする位置探索方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−80897(P2011−80897A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234262(P2009−234262)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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