説明

位置検出方法、及び位置検出装置

【課題】雰囲気温湿度が変化するような場合でも、高精度の位置測定を行うことができる位置測定装置を提供する。
【解決手段】コリメートレンズ2を透過した光のうち、ビームスプリッタ3で反射された光は、集光レンズ8により、CCD9の受光面に集光される。光源1が振動して光ビームの位置が変われば、CCD9に入射する光ビームの位置が変化するので、CCD9の出力変動から、光ビームの振動中心を知ることができる。制御装置10は、この振動中心を検出し、振動中心が予め定められた位置となるように、光源1を加振しているピエゾ素子11に印加する電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的スケールを使用して光学的に位置を検出する位置検出方法及び位置検
出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
位相回折格子のような周期的な構造を有する光学的スケールに光ビームを照射し、その
反射光を処理することにより、光ビームを放出する検出ヘッドと光学的スケールとの相対
位置関係及び両者の相対的な運動方向を測定する方法は周知技術であり、一般的に使用さ
れている。最も一般的に用いられている方法は、互いに90°位相が異なる周期的反射信
号が得られるような2つの光ビームを光学的スケールに照射し、2つの反射信号の振幅と
位相の関係とから、検出ヘッドと光学的スケールとの相対位置関係及び両者の相対的な運
動方向を測定するものである。検出される信号は周期的に変化するものであり、検出ヘッ
ドと光学的スケールとの相対位置関係そのものを示すものではないので、カウンタを用い
ることにより、検出ヘッドと光学的スケールとの相対位置関係を求めるようにしている。
【0003】
しかしながら、この方法は、ノイズの影響を受けやすく、反射信号のS/N比が低いこ
とに起因して、検出分解能(精度)が低くなると言う問題点がある。この問題を克服し、
検出分解能(精度)を上げる方法として、米国特許6,639,686号(特許文献1)
に示されるような方法が公知となっている。これは、光源からの光ビームを高速で振動さ
せて光学的スケールに照射し、光ビームの振動の中心及び位相と、反射信号の振幅及び位
相の4者を演算することにより、検出ヘッドと光学的スケールとの相対位置関係及び両者
の相対的な運動方向を測定するものである。一般に、検出素子で検出されるノイズは、周
波数と逆比例する関係にあるので、光ビームを高速で振動させ、高周波の反射光信号を受
信して処理することにより、S/N比を向上させることができ、その結果検出分解能(精
度)を上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許6,639,686号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法には、以下のような問題点がある。すなわ
ち、光ビームを振動させる方法としては、光源を振動させる方法や、光路に振動する光学
素子を置き、この光学系を振動させる方法が考えられるが、いずれも測定の基準となる検
出ヘッドに、振動素子を介して光源や光学素子を支持する必要がある。支持方法としては
、メカ的な取付け、例えばねじ締結や、接着などの支持方法を取らざるを得ないが、これ
らの支持方法を用いた場合、温湿度等の環境変化に起因して位置変動が発生し、振動中点
をドリフトさせる原因となる。このようなドリフトが発生すると、測定原理上、検出位置
がドリフトすることとなり、高分解能センサとしては非常に大きな誤差となってしまうと
いう問題点がある。
【0006】
このような問題点に対する対策として、環境変化等の外乱に対する不安定要素を物理的
に制御しようとするための機構、例えば支持機構にスーパーインバなどの超低膨張材料を
使用したり、外乱環境を安定に保つ機構、例えば雰囲気温湿度をコントロールする機構を
付加したりする方法、さらには、振動素子を振動させるために外部から入力される信号を
常時モニタし信号中点の補正を行う機構を付加したりする方法が用いられていたが、いず
れも十分なものではなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、高精度の位置測定を行うことができ
る位置測定方法、及び位置測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための第1の手段は、光を射出する光源と、前記光を所定の移動方
向に周期的に振動させる振動素子と、前記光を分離する分離部材と、前記分離部材によっ
て分離された前記光のうちの一方の光が入射する光学的スケールと、前記分離部材によっ
て分離された前記光のうちの他方の光を受光して前記他方の光の位置を測定するビーム位
置測定センサと、前記ビーム位置測定センサによって測定された前記他方の光の位置から
前記他方の光の振動中心を算出して、前記他方の光の振動中心に基づいて前記光の振動中
心を一定に制御する制御装置と、前記制御装置によって前記振動中心を一定とされた前記
光のうち前記光学的スケールを介した前記一方の光を受光する計測用受光素子と、前記光
源、前記分離部材、前記振動素子、前記ビーム位置測定センサ、及び前記計測用受光素子
を支持する検出ヘッドと、前記計測用受光素子の受光結果を用いて、前記検出ヘッドと相
対的に移動する前記光学スケールの位置を演算する位置演算装置と、を備えることを特徴
とする位置検出装置である。
【0009】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記制御装置は、
前記振動中心が一定位置となるように前記振動素子に印加する電圧を制御することを特徴
とするものである。
【0010】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1または第2の手段であって、前記ビ
ーム位置測定センサは、前記他方の光の位置を測定する位置測定手段を有することを特徴
とするものである。
【0011】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1乃至第3の手段のいずれかであって
、前記ビーム位置測定センサは、前記光の振動中心に変動があった場合に前記ビーム位置
検出センサの受光面に形成される前記他方の光のスポットを変化させる手段を有すること
を特徴とするものである。
【0012】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第1乃至第4の手段のいずれかであって
、前記計測用受光素子は、前記光学的スケールで反射された前記一方の光を受光すること
を特徴とするものである。
【0013】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第1乃至第5の手段のいずれかであって
、前記制御装置は、前記光の振動中心を前記検出ヘッドに対して一定になるようにするこ
とを特徴とするものである。
【0014】
前記課題を解決するための第7の手段は、前記第1乃至第6の手段のいずれかであって
、前記振動素子は、前記光源を振動させることを特徴とするものである。
【0015】
前記課題を解決するための第8の手段は、前記第1乃至第6の手段のいずれかであって
、前記振動素子は、前記光源と前記分離部材との間に配置された音響光学素子、電気光学
素子、または振動ミラーであることを特徴とするものである。
【0016】
前記課題を解決するための第9の手段は、前記第1乃至第8の手段のいずれかであって
、前記位置演算装置は、前記計測用受光素子で受光した前記光の強度の位相及び振幅の少
なくとも一方と、前記光の振幅及び位相の少なくとも一方とから前記光学スケールの位置
を演算することを特徴とするものである。
【0017】
前記課題を解決するための第10の手段は、検出ヘッドと相対的に移動する光学的スケ
ールに、光源からの光を照射し、前記光学的スケールを介した前記光を受光して信号処理
することにより、前記光学的スケールの位置を測定する位置測定方法であって、振動素子
を用いて前記光を所定の移動方向に周期的に振動させる工程と、分離部材によって前記光
を分離して、分離された前記光のうちの一方の光を前記光学的スケールに入射させる工程
と、前記分離部材によって分離された前記光のうちの他方の光の位置をビーム位置測定セ
ンサで測定する工程と、測定された前記他方の光の位置から前記他方の光の振動中心を算
出して、算出された前記他方の光の振動中心に基づいて前記光の振動中心を一定に制御す
る工程と、前記振動中心を一定とされた前記光のうち前記光学的スケールを介した前記一
方の光を計測用受光素子で受光して信号処理することによって、前記光学的スケールの位
置を演算する工程と、を有し、前記光源、前記分離部材、前記振動素子、前記ビーム位置
測定センサ、及び前記計測用受光素子は、前記検出ヘッドに支持されている、ことを特徴
とする位置測定方法である。
【0018】
前記課題を解決するための第11の手段は、前記第10の手段であって、前記振動素子
に印加する電圧を制御することによって、前記光の振動中心が一定位置となるように制御
することを含むものである。
【0019】
前記課題を解決するための第12の手段は、前記第10または第11の手段であって、
前記光の振動中心に変動があった場合に、前記ビーム位置検出センサの受光面に形成され
る前記他方の光のスポットを変化させることによって、前記他方の光の振動中心を測定す
ることを含むものである。
【0020】
前記課題を解決するための第13の手段は、前記第10乃至第12の手段のいずれかで
あって、受光した前記光の強度の位相及び振幅の少なくとも一方と、前記光の振幅及び位
相の少なくとも一方とから、前記光学スケールの位置を測定することを含むものである。
【0021】
本発明の第1の参考形態は、光学的スケールに、光源からの光を照射し、前記光学的ス
ケールを介した前記光を受光して信号処理することにより、前記光学的スケールの移動位
置を測定する位置測定方法であって、前記光を前記光学的スケールの移動方向に振動させ
、前記光の振動中心位置を一定位置に制御することを特徴とする位置測定方法である。
【0022】
本参考形態においては、光の振動中心位置を一定位置に制御するようにしている。よっ
て、この制御が無い場合に、雰囲気温湿度が変化したりすることによって検出ヘッドに対
する光の振動中心位置が変化し、それが測定誤差に結びつくような場合でも、本参考形態
においては、この制御により光の振動中心位置が一定位置に保たれるので、高精度の位置
測定が可能になる。
【0023】
本発明の第2の参考形態は、前記第1の参考形態であって、受光した前記反射光の強度
の位相及び振幅の少なくとも一方と、前記光の振動の振幅及び位相の少なくとも一方とか
ら、前記光学的スケールの移動位置を測定することを特徴とするものである。
【0024】
前述の特許文献1に記載されるような位置測定方法においては、特に光の振動中心位置
の変化が直ちに測定誤差に結びつくので、前記第1の参考形態をこのような測定方法に応
用すると、特に効果が大きい。
【0025】
本発明の第3の参考形態は、前記第1の参考形態又は第2の参考形態であって、前記光
の振動中心位置を一定に制御する方法が、前記光学的スケールに照射される前記光の一部
を分離部材により分割して取り出し、取り出された前記光の位置を測定して、その振動中
心位置が一定になるように、前記光を振動させている振動発生装置を操作する方法である
ことを特徴とするものである。
【0026】
本参考形態においては、光学的スケールに照射される光の一部を分離部材により分割し
て取り出し、取り出された光の位置を測定して、その振動中心位置が一定になるように制
御しているので、それを実現する装置の構成が簡単になる。なお、分離部材としては、ビ
ームスプリッタ、ハーフミラー、偏光ビームスプリッタ等が使用できる。
【0027】
本発明の第4の参考形態は、光源と、前記光源からの光をビーム状にするレンズと、前
記ビーム状にされた光を分割する分離部材と、前記分離部材で分割された第1のビームを
被検物体とともに移動する光学的スケールに照射する投射レンズと、前記光学的スケール
を介した光を受光する計測用受光素子と、前記分離部材で分割された第2のビームの位置
を測定するビーム位置測定センサと、前記光源からの光を前記光学的スケールの移動方向
に周期的に振動させる振動素子と、前記ビーム位置測定センサの信号から前記光源から射
出する光の振動中心を求め、前記振動中心を一定位置にするビーム位置制御装置と、前記
計測用受光素子で受光した前記光から前記光学スケールの移動位置を演算する位置演算装
置とを有することを特徴とする位置検出装置である。
【0028】
本参考形態においては、光源から放出される光を、レンズ、分離部材、投射レンズを介
して光学的スケールに照射し、光学的スケールを介した光を計測用受光素子で受光する。
そして、振動素子により光源からの光を光学的スケールの移動方向に周期的に振動させる
。位置演算装置は、計測用受光素子で受光した反射光から光学的スケールの移動位置を演
算する。
【0029】
本参考形態においては、分離部材で分割された第2の光ビームの位置を光ビーム位置測
定センサで測定し、ビーム位置制御装置が、ビーム位置測定センサの出力から光ビームの
振動中心を求め、この振動中心一定位置となるように制御する。よって、振動中心が一定
位置に保たれるので、高精度の位置測定を行うことができる。
【0030】
本発明の第5の参考形態は、前記第4の参考形態であって、前記計測用受光索子が、前
記光学的スケールで反射され前記分離部材に入射し、光源とは別な方向に導かれた光を受
光することを特徴とするものである。
【0031】
本発明の第6の参考形態は、前記第4の参考形態又は第5の参考形態であって、前記位
置制御装置が、前記振動中心が一定位置になるように前記振動素子を制御することを特徴
とするものである。
【0032】
本発明の第7の参考形態は、前記第4の参考形態から第6の参考形態のいずれかであっ
て、前記振動素子は、前記光源または前記レンズを振動させることを特徴とするものであ
る。
【0033】
本発明の第8の参考形態は、前記第4の参考形態から第6の参考形態のいずれかであっ
て、前記振動素子は、前記光源から前記分離部材の間に配置された音響光学素子または電
気光学素子であることを特徴とするものである。
【0034】
本参考形態によって示されるように、前記第4の参考形態の「振動素子」は、機械的に
振動を与えるようなものに限られず、光路を振動させる機能を有するもの全体を含む概念
である。
【0035】
本発明の第9の参考形態段は、前記第4の参考形態から第8の参考形態のいずれかであ
って、前記位置演算装置が、前記計測用受光素子で受光した前記反射光の強度の位相及び
振幅の少なくとも一方と、前記光源からの光の振幅及び位相の少なくとも一方とから前記
光学スケールの移動位置を演算することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、高精度の位置測定を行うことができる位置測定方法、及び位置測定装
置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例である位置測定装置の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の第2の例である位置測定装置の概要を示す図である。
【図3】図2に示す実施の形態における受光素子の出力を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態の第3の例である位置測定装置の概要を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態の第4の例である位置測定装置の概要を示す図である。
【図6】図5に示す実施の形態における受光素子の出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。既に述べたように、本発明の
前提となる位置測定方法及び位置測定装置については、特許文献1に記載されて公知とな
っているので、以下の図と説明においては、位置測定方法の原理、及び位置測定のための
演算回路等については図示と説明を省略し、本発明の特徴部について説明を行う。
【0039】
図1は、本発明の実施の形態の第1の例である位置測定装置の概要を示す図である。光
源1から放出された光は、コリメートレンズ2により平行光束に変えられ、ビームスプリ
ッタ3に入射する。光源1にはピエゾ素子11が固定されており、光源1はピエゾ素子1
1によって、被検物体と共に移動する光学的スケール5の移動方向に周期的に振動される
。ビームスプリッタ3を透過した光は、投射レンズ4により、光学的スケール5の表面に
集光される。被検物体と共に移動する光学的スケール5の表面には反射型の位相回折格子
が形成され、光学的スケール5の位置に応じて周期的(サインカーブ)な振幅を有する反
射光を放出するようになっている。この反射光は、投射レンズ4により平行光束に変えられ、ビームスプリッタ3で反射して、集光レンズ6により位置測定用光学素子7の光電検出面に集光して、電気信号に変えられて処理される。光学的スケール5の移動距離及び移動方向は、位置測定用光学素子で検出した光学的スケール5で反射された光の振幅及び位相と、ピエゾ素子11で振動される光源から射出される光の振動(ピエゾ素子11の振動)の振幅及び位相に基づいて、不図示の位置演算装置により算出される。
【0040】
コリメートレンズ2を透過した光のうち、ビームスプリッタ3で反射された光は、集光
レンズ8により、CCD9の受光面に集光される。図から明らかなように、光源1が振動
して光ビームの位置が変われば、CCD9に入射する光ビームの位置が変化するので、C
CD9の出力変動から、光ビームの振動中心を知ることができる。制御装置10は、この
振動中心を検出し、振動中心が予め定められた位置となるように、光源1を加振している
ピエゾ素子11に印加する電圧を制御する。このようにして、位置計測の基準となる光ビ
ームの振動中心位置が、検出ヘッドに対して常に一定に保たれるので、雰囲気温湿度が変
化したような場合でも、光ビームの振動中心位置変動に伴う測定誤差が発生することが無
くなり、精度が悪化することがない。なお本実施の形態では、ピエゾ素子11を制御して
光ビームの振動中心位置を一定にしたが、光路中に平行平板などを挿入して、その角度を
調節することによって光ビームの振動中心位置を一定にしても構わない。
【0041】
図2は、本発明の実施の形態の第2の例である位置測定装置の概要を示す図である。以
下の図においては、前出の図に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付して
その説明を省略する。図2に示される位置測定装置は、ビームスプリッタ3で反射された
光ビームの位置測定手段が異なっているだけで、その他の構成は図1に示された位置測定
装置と同じである。
【0042】
すなわち、ビームスプリッタ3で反射された光ビームは、集光レンズ8により絞り12
上にスポットとして集光される。絞り12を通過した光は、受光素子13によって受光さ
れ電気信号に変換される。光のスポットの振動中心が12の中心と一致している場合には
、図3(a)に示すように、受光素子13の出力が小さくなる部分(受光素子13に光が
当たっていない部分)の時間は等しくなるが、光のスポットの振動中心が絞り12の中心
と一致していない場合には、図3(b)、(c)に示すように、これらの時間は一つおき
に異なったものとなる。但し、図3は、受光素子13の出力信号を2値化して示したもの
で、例えば(b)がビームの振動中心がが図2の上方にずれていたときの出力であるとす
ると、(c)は、ビームの振動中心が図2の下方にずれていたときの出力である。
【0043】
制御装置10は、受光素子13の信号が(b)、(c)のようになっていた場合、ピエ
ゾ素子11に加える電圧を調整することにより、受光素子13の信号が図3(a)のよう
になるようにする。これにより、位置計測の基準となる光ビームの振動中心位置が、検出
ヘッドに対して常に一定に保たれる。
【0044】
図4は、本発明の実施の形態の第3の例である位置測定装置の概要を示す図である。図
4に示される位置測定装置も、ビームスプリッタ3で反射された光ビームの位置測定手段
が異なっているだけで、その他の構成は図1に示された位置測定装置と同じである。すな
わち、ビームスプリッタ3で反射された光ビームは、受光素子14の受光面上にスポット
として集光される。受光素子14は、その受光面が小さく、通常の受光素子の前に絞りを
置いたのと同じ効果を奏するものである。よって、図4に示される位置測定装置の制御装
置10に、図2に示される位置測定装置の制御装置10と同じ作用を持たせることにより
、位置計測の基準となる光ビームの振動中心位置が、検出ヘッドに対して常に一定に保た
れる。
【0045】
図5は、本発明の実施の形態の第4の例である位置測定装置の概要を示す図である。図
5に示される位置測定装置も、ビームスプリッタ3で反射された光ビームの位置測定手段
が異なっているだけで、その他の構成は図1に示された位置測定装置と同じである。すな
わち、ビームスプリッタ3で反射された光ビームは、集光レンズ8によりナイフエッジ1
5上にスポットとして集光される。ナイフエッジ15に遮られずに通過した光は、受光素
子13によって受光され電気信号に変換される。
【0046】
光のスポットの振動中心がナイフエッジ15の端部と一致している場合には、図6(a
)に示すように、受光素子13の出力信号のディユーティ比は50%となるが、光のスポ
ットの振動中心がナイフエッジ15の端部と一致していない場合には、図6(b)、(c
)に示すように、受光素子13の出力信号のディユーティ比が50%からずれてくる。但
し、図6は、受光素子13の信号を、ビームの中心がナイフエッジ15の端部にあるとき
の値を閾値として2値化したもので、(b)はビームの振動中心が図5の下側にずれてい
るとき、(c)はビームの振動中心が図5の上側にずれているときの状態を示す。
【0047】
制御装置10は、受光素子13の信号のディユーティ比を50に保つようにピエゾ素子
11に加える電圧を調整する。これにより、位置計測の基準となる光ビームの振動中心位
置が、検出ヘッドに対して常に一定に保たれる。
【0048】
以上の例においては、ビームスプリッタを使用しているが、これを偏光ビームスプリッ
タとしてもよい。その場合には、ビームスプリッタ3と投射レンズ4との間にλ/4板を
設けることは言うまでもない。
【0049】
なお上記の実施の形態では、光源1をピエゾ素子llで振動させたが、光源1ではなく
コリメートレンズ2にピエゾ素子を配置し、コリメートレンズ2を振動させても構わない
。またピエゾ素子11を使用する代わりに、光源1とビームスプリッタ3の問に音響光学
素子(AOM)や電気光学素子(EOM)を配置することによって、光学的スケール5に
照射する光を振動させても構わない。
【0050】
さらに、光源1とビームスプリッタ3の間に、振動ミラーを配置し、この振動ミラーを
周期的に振動させてもよい。この場合、振動ミラーとしては、水晶振動子の表面に反射膜
をコーティングしたものを用いてもよい。
【0051】
光を振動(ピエゾ素子11を振動)させる際の周期が三角波である場合には、その三角
波をフーリエ級数展開することにより得られる周波数成分の位相に基づく同期検波を行っ
て、その周波数成分の振幅を検出し、その振幅の大きさに基づいて、光学的スケール5の
移動距離及び移動方向を算出することができる。
【0052】
また、光を振動させる際の周期がのこぎり波である場合には、測定用光学素子7によっ
て検出される電気信号は正弦波となり、その位相には光学的スケール5の移動距離及び移
動方向を含むことになる。従って、測定用光学素子7によって検出された電気信号の位相
のみによって、光学的スケール5の移動距離及び移動方向を算出することができる。
【0053】
さらに本実施形態の位置検出装置及び位置検出方法では、光学的スケール5の表面に光
を集光する構成であったが、本発明が適用できる位置検出装置及び位置検出方法は、この
構成に限定されない。
【0054】
例えば、ビームスプリッタ3と光学的スケール5との間に、インデックス格子を配置す
ると共に、インデックス格子で発生した±1次回折格子のそれぞれを光学的スケール1上
の同じ領域に偏向する偏光部材を配置する構成であってもよい。この偏光部材として、一
対の反射ミラー、あるいは回折光学素子を用いることができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、光学スケールの表面に反射型の位相回折格子を形成したが、
透過型の位相回折格子を形成してもよい。この場合には、測定用光学素子を光学的スケー
ルに関して、光源側と反対側に配置すればよい。また、透過型の位相回折格子を形成した
場合には、ビームスプリッタ3の代わりにハーフミラーを用いることもできる。
【0056】
また、光学スケールとして、透明なスケール基板上に、透光部と遮光部(例えば、クロ
ムで形成された領域)とを交互に配列したものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…光源、2…コリメートレンズ、3…ビームスプリッタ、4…投射レンズ、5…光学的
スケール、6…集光レンズ、7…位置測定用光学素子、8…集光レンズ、9…CCD、1
0…制御装置、11…ピエゾ素子、12…絞り、13…受光素子、14…受光素子、15
…ナイフエッジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を射出する光源と、
前記光を所定の移動方向に周期的に振動させる振動素子と、
前記光を分離する分離部材と、
前記分離部材によって分離された前記光のうちの一方の光が入射する光学的スケールと

前記分離部材によって分離された前記光のうちの他方の光を受光して前記他方の光の位
置を測定するビーム位置測定センサと、
前記ビーム位置測定センサによって測定された前記他方の光の位置から前記他方の光の
振動中心を算出して、前記他方の光の振動中心に基づいて前記光の振動中心を一定に制御
する制御装置と、
前記制御装置によって前記振動中心を一定とされた前記光のうち前記光学的スケールを
介した前記一方の光を受光する計測用受光素子と、
前記光源、前記分離部材、前記振動素子、前記ビーム位置測定センサ、及び前記計測用
受光素子を支持する検出ヘッドと、
前記計測用受光素子の受光結果を用いて、前記検出ヘッドと相対的に移動する前記光学
スケールの位置を演算する位置演算装置と、を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記振動中心が一定位置となるように前記振動素子に印加する電圧を
制御することを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記ビーム位置測定センサは、前記他方の光の位置を測定する位置測定手段を有するこ
とを特徴とする請求項1または請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記ビーム位置測定センサは、前記光の振動中心に変動があった場合に前記ビーム位置
検出センサの受光面に形成される前記他方の光のスポットを変化させる手段を有すること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記計測用受光素子は、前記光学的スケールで反射された前記一方の光を受光すること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記光の振動中心を前記検出ヘッドに対して一定になるようにするこ
とを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記振動素子は、前記光源を振動させることを特徴とする請求項1から請求項6のいず
れかに記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記振動素子は、前記光源と前記分離部材との間に配置された音響光学素子、電気光学
素子、または振動ミラーであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載
の位置検出装置。
【請求項9】
前記位置演算装置は、前記計測用受光素子で受光した前記光の強度の位相及び振幅の少
なくとも一方と、前記光の振幅及び位相の少なくとも一方とから前記光学スケールの位置
を演算することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項10】
検出ヘッドと相対的に移動する光学的スケールに、光源からの光を照射し、前記光学的
スケールを介した前記光を受光して信号処理することにより、前記光学的スケールの位置
を測定する位置測定方法であって、
振動素子を用いて前記光を所定の移動方向に周期的に振動させる工程と、
分離部材によって前記光を分離して、分離された前記光のうちの一方の光を前記光学的
スケールに入射させる工程と、
前記分離部材によって分離された前記光のうちの他方の光の位置をビーム位置測定セン
サで測定する工程と、
測定された前記他方の光の位置から前記他方の光の振動中心を算出して、算出された前
記他方の光の振動中心に基づいて前記光の振動中心を一定に制御する工程と、
前記振動中心を一定とされた前記光のうち前記光学的スケールを介した前記一方の光を
計測用受光素子で受光して信号処理することによって、前記光学的スケールの位置を演算
する工程と、を有し、
前記光源、前記分離部材、前記振動素子、前記ビーム位置測定センサ、及び前記計測用
受光素子は、前記検出ヘッドに支持されている、ことを特徴とする位置測定方法。
【請求項11】
前記振動素子に印加する電圧を制御することによって、前記光の振動中心が一定位置と
なるように制御することを含む、請求項10に記載の位置測定方法。
【請求項12】
前記光の振動中心に変動があった場合に、前記ビーム位置検出センサの受光面に形成さ
れる前記他方の光のスポットを変化させることによって、前記他方の光の振動中心を測定
することを含む、請求項10または請求項11に記載の位置測定方法。
【請求項13】
受光した前記光の強度の位相及び振幅の少なくとも一方と、前記光の振幅及び位相の少
なくとも一方とから、前記光学スケールの位置を測定することを含む、請求項10から請
求項12のいずれかに記載の位置測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−57670(P2013−57670A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−224445(P2012−224445)
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【分割の表示】特願2006−85397(P2006−85397)の分割
【原出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】