説明

位置検出装置及びその位置検出装置を用いた電子機器

【課題】構成部品を汎用品や入手が容易な部品等により構成した場合においても、簡易な構成で小型化を実現することができると共に広範囲な距離を高精度に検出することが可能な位置検出装置を提供すること。
【解決手段】感磁方向が、配置された基板に対して垂直な磁気センサ2個を1組とした磁気検出手段を備え、この磁気センサ2個の中心を結ぶ直線および基板に平行に移動可能に支持し、この基板に対して垂直にN極とS極が着磁された磁石を配置した位置検出機構において、2個の磁気センサの出力をVaおよびVbとした場合に、磁石と2個の磁気センサの位置関係により、(Va−Vb)、(Va+Vb)、(Va−Vb)/(Va+Vb)を用いて位置検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置及びその位置検出装置を用いた電子機器に関し、より詳細には、磁石とホールセンサを用いた位置検出装置及びその位置検出装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なセンサがあらゆるところで用いられるようになっている。例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等に用いられる手ブレ補正装置やズームやオートフォーカスのためのレンズ位置検出装置では、瞬時に高精度な位置検出を行う機能を有するセンサが必要となると同時に、近年機器全体の小型化の要求が強いことから、センサ自体の小型化が要求されている。さらには、長寿命化、埃や油(グリース)などの影響を受けにくい特性をもつセンサなど様々な要求がある。
【0003】
このような要求をみたすために、センサとして磁気センサを用いた位置検出方法などが知られている。磁気センサとして、例えば、特許文献1などに記載されている方法を変更・修正して行うことができる。すなわち、特許文献1の図3で示されるように、可動部に磁石を内包させ、その移動を複数個の磁気センサを用いて検出する方法である。
【0004】
本願発明者等は、従来から特許文献2などに記載されている位置検出装置を提案してきており、現在、本位置検出機構はデジタルスチルカメラの手ぶれ補正装置のキーパーツとして広く用いられている。
【0005】
ここで、複数個の磁気センサを用いて、位置検出を行う原理およびその構成について説明する。
【0006】
図12は、磁気センサとして複数のホールセンサを用いた位置検出方法を説明するための図である。規定の間隔を隔てて配置された2個のホールセンサ11,12に対向して配置された永久磁石23の側面方向(矢印方向)への移動による磁束密度の変化に応じて、2個のホールセンサ11,12のホール出力電圧がそれぞれ変化する。それらホール出力電圧の差分値を、差動信号処理回路により処理することにより、永久磁石23の位置検出を行うことができる。この位置検出の際、永久磁石23の移動方向は、2個のホールセンサ11,12を結ぶ直線に平行な状態となっている。
【0007】
また、キャリブレーションの手間を省くため、上記のホール出力電圧の差分値が永久磁石23の側面方向への移動距離に対して線形に変化するように、その永久磁石23のサイズや、ホールセンサ11,12の間隔や、ホールセンサ11,12と永久磁石23との間隔を設計するのが一般的である。
【0008】
この構成は、磁石とホールセンサの相対的移動範囲が数mm以内であれば、良好な特性を有しており、一眼レフデジタルカメラの手ブレ補正装置などでキーパーツとして使用されている。しかし、移動範囲が数mmをこえる領域では、機構全体が大きくなるという問題があり、実用化されていない。
【0009】
また、狭い範囲での位置検出においては、部品点数を削減するために、特許文献4の図6で示されるような配置で、磁石と1個のホールセンサとを用いて1軸方向の位置検出を行うことも可能である。また、狭い範囲で高い精度が求められる位置検出では、特許文献3のように磁石を2個使って特殊な配置で位置検出を行う場合もある。
【0010】
一方、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラのズームやオートフォーカスのためのレンズ位置検出装置で要求されるような5mmを越える広範囲な位置検出を行う際、エンコーダを用いる手法が一般的である。ただし、エンコーダを用いる場合は、センサからの信号を処理するカウンタなどを含む複雑な処理回路が必要になるという問題がある。
【0011】
また、移動装置とエンコーダとが脱調すると、所望の特性が得られないため、あまり高速な移動対象には不向きである。また、広範囲で高精度を要求される位置検出では、特許文献5の図2で示されるような配置で、磁気センサからの出力に応じて、演算方法を切り替えることで、位置検出を行う場合もある。
【0012】
【特許文献1】特開2002−287891号公報
【特許文献2】国際公開第WO2002/086694号パンフレット
【特許文献3】特開2004−245765号公報
【特許文献4】特開2002−229090号公報
【特許文献5】特開2006−292396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、非接触式で長寿命であり、埃やチリなどの影響を受けない磁気センサを用いて、広範囲で位置検出を実現したいという要求が増えている。
【0014】
本願発明者らが提案した特許文献2の位置検出装置を用いれば、手ぶれ補正の位置検出で要求される2〜3mmストロークを0.1%程度という高い精度が実現されており、広く利用されているが、カメラのズームやオートフォーカスのためのレンズ位置検出装置で要求されるような、5mm以上の広範囲な位置検出を同様の高い精度で実現できていなかった。
【0015】
また、後述する比較例(特許文献1に記載の方法)に記載の方法を用いて広範囲で位置検出を行う場合、上記ホール出力電圧の差分値が永久磁石の側面方向への移動距離に対して線形に変化するように設計すると、磁石のサイズや、2個のホールセンサの間隔、およびホールセンサと磁石との間隔が大きくなり、位置検出装置の小型化が困難であるという問題があった。デジタルスチルカメラなどの携帯機器では小型化要求が強いため、この構成は実用的ではない。
【0016】
また、特許文献3や特許文献4に記載されているような方法は、原理的に広い範囲においてホールセンサの出力が線形になるように磁石を配置するのが難しく、カメラのズームやオートフォーカスのためのレンズ位置検出装置で要求されるような、5mm以上の広範囲な位置検出は不可能であるという問題があった。
【0017】
また、特許文献5に記載されている方法は、磁石の移動距離方向のサイズが、位置検出範囲よりも長くなり、小型化には不向きであるという問題があった。さらには、磁石はN極とS極が2極ずつ具備され、磁気センサの感磁面に対して垂直に着磁されたものを使用するが、不着磁部のサイズによって、線形性が変化するため、不着磁部のサイズを規定した特殊な磁石を用意する必要があるという問題もあった。
【0018】
このような理由により、現在までのところ、位置検出範囲の0.1%程度という高精度の、磁石を用いた位置検出装置は、磁石の移動距離が数mm以内のものしか実用化されていなかった。
【0019】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ホールセンサを磁気センサとして用い構成部品を汎用品や入手が容易な部品などにより構成した場合においても、簡易な構成で小型化を実現することができると共に広範囲な距離を高精度に検出することが可能な位置検出装置及びその位置検出装置を用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、基板上に配置され、感磁方向が前記基板に対して垂直である2個の磁気センサを1組としてなる磁束検出手段と、前記磁気センサの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向に、かつ前記基板に平行な平面内を移動可能に支持され、前記基板に対して垂直方向にN極とS極が着磁された磁石からなる磁束発生手段と、前記磁気センサからの出力に基づいて位置検出を行う信号処理手段とを備え、該信号処理手段が、前記磁石の移動範囲を3分割し、該3分割した移動範囲のうち中央部分については、前記磁気センサの出力をそれぞれVa及びVbとした場合に、(Va−Vb)の関係式を用いて位置検出を行い、前記3分割した移動範囲のうち両端部分については、(Va+Vb)の関係式を用いて位置検出を行うことを特徴とする位置検出装置である。
【0021】
また、請求項2に記載の発明は、基板上に配置され、感磁方向が前記基板に対して垂直である2個の磁気センサを1組としてなる磁束検出手段と、前記磁気センサの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向に、かつ前記基板に平行な平面内を移動可能に支持され、前記基板に対して垂直方向にN極とS極が着磁された磁石からなる磁束発生手段と、前記磁気センサからの出力に基づいて位置検出を行う信号処理手段とを備え、該信号処理手段が、前記磁石の移動範囲を3分割し、該3分割した移動範囲のうち中央部分については、前記磁気センサの出力をそれぞれVa及びVbとした場合に、(Va−Vb)/(Va+Vb)の関係式を用いて位置検出を行い、前記3分割した移動範囲のうち両端部分については、(Va+Vb)の関係式を用いて位置検出を行うことを特徴とする位置検出装置である。
【0022】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明のおいて、前記3分割は、前記磁石の移動範囲を約4等分したうちの中央2ヶ所と、一端の1ヶ所と、他の一端の1ヶ所となるように3分割することを特徴とする。
【0023】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記磁気センサの感磁部の中心間を結ぶ直線の中点と、前記磁石の移動範囲の中点とが同じであることを特徴とする。
【0024】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記磁気センサを1つのパッケージに一体に封入していることを特徴とする。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記磁気センサは、磁気増幅を行うための磁性体チップを有していないことを特徴とする。
【0026】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記磁気センサは、GaAs、InAs、InSbなどのIII−V族化合物半導体を含むホールセンサであることを特徴とする。
【0027】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記磁気センサは、Si、GeなどのIV族半導体を含むホールセンサであることを特徴とする。
【0028】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の位置検出装置を用いたことを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ホールセンサを磁気センサとして用い構成部品を汎用品や入手が容易な部品等により構成した場合においても、簡易な構成で小型化を実現することができると共に広範囲な距離を高精度に検出することが可能な位置検出装置と、その位置検出装置を用いた電子機器を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<本発明の位置検出装置の構成>
図1(a),(b)は、本発明に係る位置検出装置の概略構成図で、図1(a)は断面図、図1(b)は上面図である。図中符号30は位置検出装置、31はN極S極をそれぞれ1極ずつ着磁した直方体磁石(磁束発生手段)、32a,32bは2個を1組としたホールセンサ(磁気センサ/磁束検出手段)、33はホールセンサ32a(第1のホールセンサ)とホールセンサ32b(第2のホールセンサ)を実装した基板を示している。本発明に係る位置検出装置は、様々な形状の磁石と、種々なホールセンサとを用いて構成できる。
【0031】
ホールセンサ32a,32bは、基板33上に配置され、感磁方向が基板33に対して垂直である2個を1組としたものである。直方体磁石31は、ホールセンサ32a,32bを実装した基板33に対して垂直に着磁された構成となっており、基板33と対向する1平面100内で、x方向に沿って移動可能に配置されている。
【0032】
いいかえると、直方体磁石31は、ホールセンサ32a,32bの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向に、かつ基板33に平行な平面内を移動可能に支持され、基板33に対して垂直方向にN極とS極が着磁されている。
【0033】
ここで、2個のホールセンサ32a,32bの感磁部中心間を結ぶ直線に対して平行方向に、かつ基板33に平行な平面内を移動可能という意味は、ホールセンサ32a,32bの感磁部の中心間を結ぶ直線と直方体磁石31の移動方向を示す直線を、基板33に平行な任意の同一平面上に投影した場合にそれぞれの延長線が平行であることを意味するものである。また、2個のホールセンサ32a,32bの感磁部の中心間を結ぶ直線の中点と、直方体磁石31の移動範囲の中点とが同じである。
【0034】
直方体磁石31は、フェライトやネオジ鉄ボロン、サマリウムコバルト磁石などが適用可能であり、薄型の磁石の場合は、プラスチック磁石やゴム磁石を用いることも可能である。磁石の着磁方向は、基板33に対して垂直方向にN極とS極が着磁された方向にするとよい。
【0035】
1組のホールセンサとして構成された、第1のホールセンサ32aの感磁部中心と、第2のホールセンサ32bの感磁部中心を結ぶ直線もx方向である。また、ホールセンサ32a,32bは、直方体磁石31の面と対向した位置に配置されている。
【0036】
図中符号A1は、直方体磁石31の長辺方向Xの長さ、A2は直方体磁石31の短辺方向Yの長さ、A3は直方体磁石31の厚み(着磁)方向Zの長さを示している。また、B1は、直方体磁石31におけるホールセンサ32a,32bの基板33に対向する平面100から、ホールセンサ32a,32bの感磁部の中心までの距離を示している。B2は、第1のホールセンサ32aの感磁部の中心と、第2のホールセンサ32bの感磁部の中心とを結ぶ距離を示している。
【0037】
ホールセンサ32a,32bは、GaAs、InAs、InSbなどのIII−V族化合物半導体を含むものである。また、Si、GeなどのIV族半導体を含むものでもよい。
【0038】
また、2個のホールセンサの特性(感度やオフセット)が、あまりにかけはなれていると位置検出精度が悪化する。2個のホールセンサの特性を揃えるために、例えば、製造段階でウェハのとなりあった場所にある2個のホールセンサを1つのパッケージに納めることで、上述した問題が解決でき、高精度な位置検出装置を構成することができる。
【0039】
図2は、図1に示した位置検出装置の位置検出回路例の構成図で、図中符号19は駆動回路、20は信号処理部、21a,21bは差動増幅器、22は計算処理部を示している。
【0040】
駆動回路19は、1組のホールセンサ32a,32bと、これらのホールセンサ32a,32bに電圧を供給する電源部Vcとから構成されている。第1のホールセンサ32aは、正極入力端子32a(A)と正極出力端子32a(B)と負極入力端子32a(C)と負極出力端子32a(D)とから構成され、また、第2のホールセンサ32bは、正極入力端子32b(E)と正極出力端子32b(F)と負極入力端子32b(G)と負極出力端子32b(H)とから構成されており、正極出力端子32a(B)と負極出力端子32a(D)とから第1のホールセンサ32aの出力電圧Vaが出力され、また、正極出力端子32b(F)と負極出力端子32b(H)とから第2のホールセンサ32bの出力電圧Vbが出力される。
【0041】
信号処理部20は、ホールセンサ32a,32bからの出力に基づいて位置検出を行うものである。一般に直方体磁石31とホールセンサ32a,32bの位置関係など、位置検出装置30の構成を最適化しても、直方体磁石31の移動に伴い直線的に磁束密度が変化する範囲というのは、概ね移動する直方体磁石31の長辺の長さの7〜8割程度である。
【0042】
本発明は、移動磁石と2個のホールセンサの位置関係により、2個のホールセンサの出力電圧の差を用いて位置検出を行う場合と、2個のホールセンサの出力電圧の和を用いて位置検出を行う場合とを、使い分けることが特徴である。
【0043】
本発明においては、直方体磁石31の移動範囲を3分割する。この磁石31の移動範囲の3分割は、直方体磁石31の移動範囲を約4等分したうちの中央2ヶ所と、一端の1ヶ所と、別一端の1ヶ所となるように3分割するものである。
【0044】
直方体磁石31の移動範囲の中心において、対象に分割することで、移動範囲の端点付近での精度が両端点で同じとなる。言い換えれば、直方体磁石31の移動範囲の中心で対象でないと、両端点付近での精度が変わる。すなわち、どちらかの端点付近の精度が悪化することになる。さらに、直方体磁石31の移動範囲を約4等分して、その中央2ヶ所部分と、その他端点という風に分割することで、両端点付近の精度と、中央部分の精度が、近付くことが多い。
【0045】
本発明における信号処理部20は、この3分割した移動範囲のうち中央部分については、ホールセンサ32a,32bの出力をそれぞれVa及びVbとした場合に、(Va−Vb)の関係式を用いて位置検出を行い、3分割した移動範囲のうち両端部分については、(Va+Vb)の関係式を用いて位置検出を行うものである。
【0046】
また、3分割した移動範囲のうち中央部分については、ホールセンサ32a,32bの出力をそれぞれVa及びVbとした場合に、(Va−Vb)/(Va+Vb)の関係式を用いて位置検出を行い、3分割した移動範囲のうち両端部分については、(Va+Vb)の関係式を用いて位置検出を行うものである。
【0047】
また、ホールセンサ32a,32bは、2個を1つのパッケージに一体に封入している。2個のホールセンサの特性(感度やオフセット)が、あまりにかけはなれていると位置検出精度が悪化する。2個のホールセンサの特性を揃えるために、例えば、製造段階でウェハのとなりあった場所にある2個のホールセンサを1つのパッケージに納めることで、上述した問題が解決でき、高精度な位置検出装置を構成することができる。
【0048】
また、ホールセンサ32a,32bは、磁気増幅を行うための磁性体チップを有していない。ホールセンサ32a,32bが内部に磁性体チップを有しており、センサ部分の検出磁場を増幅する構成が知られているが、本発明の構成では磁性体チップの磁気飽和が問題になり、広い範囲で正確に位置検出を行うのが困難である。磁気増幅していないホールセンサを用いることで、広い範囲を正確に位置検出できる。
【0049】
このような構成を採ることにより、磁石の移動に伴い直線的に磁束密度が変化する範囲が、移動磁石の長辺の長さを100としたとき、120程度まで広がる。つまり、磁石のサイズを小さくしても、5mmをこえる範囲で高精度に位置検出を行うことができる。
【0050】
ホールセンサが、増幅器を有したホールICの場合、出力信号線の数をホールセンサに比べて低減できるので、実装基板の省スペース化と、外部ノイズの影響を低減できる。
【0051】
また、このような位置検出装置を用いた電子機器を提供することができる。本発明の位置検出装置は、デジタルカメラやカムコーダ、カメラ付き携帯電話などに代表される、カメラ部を有した電子機器に好適であり、オートフォーカスや光学ズーム、光学手ブレ補正など、内部で高精度にレンズやCCDなどの位置検出を行う際、好適に使用可能である。
【0052】
以下に図2に示した位置検出回路の動作について説明する。
【0053】
位置検出装置30は、2個のホールセンサ32a、32bの駆動回路19と、このホールセンサ32a、32bからの出力に基づいて位置検出を行う信号処理回路20とを備えている。
【0054】
第1のホールセンサ32aの正極入力端子32a(A)と、第2のホールセンサ32bの正極入力端子32b(E)とを接続し、第1のホールセンサ32aの負極入力端子32a(C)と、第2のホールセンサ32bの負極入力端子32b(G)とを接続して駆動回路19の入力端子とする。
【0055】
第1のホールセンサ32aの正極出力端子32a(B)と負極出力端子32a(D)は、信号処理回路20の第1の差動増幅器21aに接続され、第2のホールセンサ32bの正極出力端子32b(F)と負極出力端子32b(H)は、信号処理回路20の第2の差動増幅器21bに接続される。第1の差動増幅器21aの出力端子と第2の差動増幅器21bの出力端子は、ADコンバータに入力され、適宜出力を計算する計算処理部22に伝達される。
【0056】
このような駆動・処理回路によって、第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbを用いた差信号(Va−Vb)、和信号(Va+Vb)、差/和信号(Va−Vb)/(Va+Vb)の値である出力値Voが、直方体磁石31の位置に対応したものになる。
【0057】
本発明の構成では、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bの入力端子を並列に接続しているが、これは特に並列接続に限定されるものではない。また、差動増幅器21aと21bについても、より高精度な計装アンプを用いてもよいことは言うまでもない。また、21aと21bの信号をAD変換して、(Va−Vb)、(Va+Vb)、(Va−Vb)/(Va+Vb)の値を計算処理部で計算して求めたが、別途差動増幅器などを設けて、アナログ信号のままで、(Va−Vb)、(Va+Vb)、(Va−Vb)/(Va+Vb)の値を求めることもできる。
【0058】
<本発明の位置検出方法>
次に、位置検出方法について説明する。
【0059】
従来の位置検出方法は、2個のホールセンサ32a、32bの差出力もしくは差/和出力のみを用いて、直方体磁石31の位置を検出していた。
【0060】
本発明の位置検出方法は、従来の方法とは異なり、直方体磁石31の位置に応じて、第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbより演算した、(Va−Vb)、(Va+Vb)、(Va−Vb)/(Va+Vb)を使いわけて、直方体磁石31の位置を検出する。
【0061】
具体的には、直方体磁石31の移動範囲を約4等分し、真ん中の2ヶ所部分を第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbより演算した(Va−Vb)もしくは(Va−Vb)/(Va+Vb)を用いて位置検出し、約4等分した移動範囲の真ん中の2ヶ所部分以外は、(Va+Vb)を用いて位置検出を行うと、良好な特性が得られることが多い。
【0062】
<位置検出装置の各実施例>
実施例1
次に、位置検出装置30の具体的な実施例1について説明する。
【0063】
7mm(±3.5mm)の位置検出範囲を、位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度で位置検出する場合について示す。図1における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
【0064】
後述する図10(a),(b)に示すように、直方体磁石31の長辺方向Xの長さA1=6.3mm、直方体磁石31の短辺方向Yの長さA2=4.7mm、直方体磁石31の厚み方向Zの長さ(磁石の着磁方向の長さ)A3=2.3mmとする。
【0065】
また、直方体磁石31のホールセンサ32a、32bに対向する平面100からホールセンサ32a、32bの感磁部の中心までの距離B1=2.2mm、第1のホールセンサ32aの感磁部の中心と第2のホールセンサ32bの感磁部の中心との距離B2=3.1mmとする。
【0066】
上記設計の際、ホールセンサ32a、32bを1つのパッケージ内に搭載する方が、ホールセンサ32a、32bの配置誤差が小さくなり、位置検出装置の高精度化に貢献できる。また、例えばSi基板上にホールセンサ32a、32bを設ける事も可能である。
【0067】
従って、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bとを、1つのパッケージ内に封入することが望ましい。
【0068】
図3(a),(b)及び図4(a)乃至(c)は、直方体磁石の移動距離に対するホールセンサの出力電圧もしくは演算後の値を磁気シミュレーションから求めた結果を示す図である。
【0069】
図3(a)は、磁石の移動距離に対する第1のホールセンサ32aの出力電圧Vaの変化a1、及び磁石の移動距離に対する第2のホールセンサ32bの出力電圧Vbの変化b1を示す図である。図3(b)は、磁石の移動距離に対する第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bとの出力電圧の差(Va−Vb)の変化c1及び出力電圧の和(Va+Vb)の変化d1を示す図である。
【0070】
図4(a)は、磁石の移動距離を4等分し、真ん中の2ヶ所部分(−1.75mm〜+1.75mm)において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va−Vb)の変化e1及び理想直線f1を示す図である。
【0071】
図4(b)は、4等分した移動距離の真ん中の2ヶ所部分以外のうち、第1のホールセンサ32aに近い部分(−3.5mm〜−1.75mm)において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)の変化g1及び理想直線h1を示す図である。
【0072】
図4(c)は、4等分した移動距離の真ん中の2ヶ所部分以外のうち、第2のホールセンサ32bに近い部分(1.75mm〜3.5mm)において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)の変化i1及び理想直線j1を示す図である。
【0073】
磁気シミュレーションの前提として、2個のホールセンサ32a、32bの感度を2.2mV/mT(一般的なホールセンサの感度)、直方体磁石31の残留磁束密度Brを1300mT(一般的なネオジム焼結磁石の値)として行った。
【0074】
図4(a)に示した磁気シミュレーション結果より、直方体磁石31の移動距離を4等分し、真ん中の2ヶ所部分において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va−Vb)が、高い線形性を持ち、理想直線とよく一致することが分かる。
【0075】
図4(b)に示した磁気シミュレーション結果より、直方体磁石31の移動距離を4等分し、真ん中の2ヶ所部分以外のうち、第1のホールセンサ32aに近い部分において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)が、高い線形性を持ち、理想直線とよく一致することが分かる。
【0076】
図4(c)に示した磁気シミュレーション結果より、直方体磁石31の移動距離を4等分し、真ん中の2ヶ所部分以外のうち、第2のホールセンサ32bに近い部分において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)が、高い線形性を持ち、理想直線とよく一致することが分かる。
【0077】
ここで、図4(a)に記載した理想直線f1は、直方体磁石31の移動距離が−1.75mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va、Vbの値を用いて演算した値(Va−Vb)と、この直方体磁石31の移動距離が+1.75mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va,Vbの値を用いて演算した値(Va−Vb)とを結んだ直線である。
【0078】
図4(b)に記載した理想直線h1は、この直方体磁石31の移動距離が、−3.5mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va,Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)と、この直方体磁石31の移動距離が、−1.75mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va,Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)とを結んだ直線である。
【0079】
図4(c)に記載した理想直線j1は、この直方体磁石31の移動距離が、+1.75mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va,Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)と、この直方体磁石31の移動距離が、+3.5mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va,Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)とを結んだ直線である。
【0080】
一般的には、この理想直線上の値を用いて位置検出を行うため、第1のホールセンサ32aの出力電圧Vaと、第2のホールセンサ32bの出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va−Vb)が理想直線f1からのズレが大きい場合もしくは、第1のホールセンサ32aの出力電圧Vaと、第2のホールセンサ32bの出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)が理想直線h1からのズレが大きい場合もしくは、第1のホールセンサ32aの出力電圧Vaと、第2のホールセンサ32bの出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)が理想直線j1からのズレが大きい場合、位置検出誤差が大きくなる。
【0081】
図5(a)乃至(c)は、理想直線と図3(a),(b)及び図4(a)乃至(c)に示した磁気シミュレーション結果のズレとから換算した磁石の移動距離に対する位置検出誤差を示す図である。
【0082】
図5(a)は、図4(a)に示したシミュレーション結果e1と理想直線f1とのズレから換算した位置検出における誤差p1を示した図である。図5(b)は、図4(b)に示したシミュレーション結果g1と理想直線h1とのズレから換算した位置検出における誤差q1を示した図である。図5(c)は、図4(c)に示したシミュレーション結果i1と理想直線j1とのズレから換算した位置検出における誤差r1を示した図である。図5(d)は、図5(a)乃至(c)の全範囲位置誤差を示す図である。
【0083】
図5(a)及至(c)に示す結果より、位置検出誤差は最大でも5.0μm程度であり、分解能は全ストローク7mmに対して0.07%と高精度な位置検出を達成していることがわかる。
【0084】
当然、図4(a)で示したシミュレーション結果から最小2乗法で求めた直線を理想直線f1としてもかまわない。さらに図4(b)で示したシミュレーション結果から最小2乗法で求めた直線を理想直線h1としてもかまわない。さらに図4(c)で示したシミュレーション結果から最小2乗法で求めた直線を理想直線j1としてもかまわない。最小2乗法で求めた直線を理想直線とすると、さらに位置検出誤差は小さくなり、分解能は高くなる。また、上述したように、直方体磁石31の移動距離を4等分し、演算方法を変更させたが、完全に4等分でなくとも良い。
【0085】
実施例2
次に、位置検出装置30の具体的な実施例2について説明する。
【0086】
7mm(±3.5mm)の位置検出範囲を、位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度で位置検出する場合について示す。図1における各構成部品のパラメータの最適値の設計例を説明する。
【0087】
後述する図11(a),(b)に示すように、直方体磁石31の長辺方向Xの長さA1=7.0mm、直方体磁石31の短辺方向Yの長さA2=5.8mm、直方体磁石31の厚み方向Zの長さ(磁石の着磁方向の長さ)A3=1.8mmとする。
【0088】
また、直方体磁石31のホールセンサ32a、32bに対向する平面100からホールセンサ32a、32bの感磁部の中心までの距離B1=3.36mm、第1のホールセンサ32aの感磁部の中心と第2のホールセンサ32bの感磁部の中心との距離B2=5.1mmとする。
【0089】
上記設計の際、ホールセンサ32a、32bを1つのパッケージ内に搭載する方が、ホールセンサ32a、32bの配置誤差が小さくなり、位置検出装置の高精度化に貢献できる。また、例えばSi基板上にホールセンサ32a、32bを設ける事も可能である。
【0090】
従って、第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bとを、1つのパッケージ内に封入することが望ましい。
【0091】
図6(a),(b)及び図7(a)乃至(c)は、直方体磁石の移動距離に対するホールセンサの出力電圧もしくは演算後の値を磁気シミュレーションから求めた結果を示す図である。
【0092】
図6(a)は、磁石の移動距離に対する第1のホールセンサ32aの出力電圧Vaの変化a2、及び磁石の移動距離に対する第2のホールセンサ32bの出力電圧Vbの変化b2を示す図である。図6(b)は、磁石の移動距離に対する第1のホールセンサ32aと第2のホールセンサ32bとの出力電圧の差(Va−Vb)の変化c2及び出力電圧の和(Va+Vb)の変化d2を示す図である。
【0093】
図7(a)は、磁石の移動距離を4等分し、真ん中の2ヶ所部分(−1.75mm〜+1.75mm)において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va−Vb)/(Va+Vb)の変化e2及び理想直線f2を示す図である。
【0094】
図7(b)は、4等分した移動距離の真ん中の2ヶ所部分以外のうち、第1のホールセンサ32aに近い部分(−3.5mm〜−1.75mm)において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)の変化g2及び理想直線h2を示す図である。
【0095】
図7(c)は、4等分した移動距離の真ん中の2ヶ所部分以外のうち、第2のホールセンサ32bに近い部分(1.75mm〜3.5mm)において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)の変化i2及び理想直線j2を示す図である。
【0096】
磁気シミュレーションの前提として、2個のホールセンサ32a、32bの感度を2.2mV/mT(一般的なホールセンサの感度)、直方体磁石31の残留磁束密度Brを1300mT(一般的なネオジム焼結磁石の値)として行った。
【0097】
図7(a)に示した磁気シミュレーション結果より、直方体磁石31の移動距離を4等分し、真ん中の2ヶ所部分において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va−Vb)/(Va+Vb)が、高い線形性を持ち、理想直線とよく一致することが分かる。
【0098】
図7(b)に示した磁気シミュレーション結果より、直方体磁石31の移動距離を4等分し、真ん中の2ヶ所部分以外のうち、第1のホールセンサ32aに近い部分において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)が、高い線形性を持ち、理想直線とよく一致することが分かる。
【0099】
図7(c)に示した磁気シミュレーション結果より、直方体磁石31の移動距離を4等分し、真ん中の2ヶ所部分以外のうち、第2のホールセンサ32bに近い部分において第1のホールセンサ32aのホール出力電圧Vaと第2のホールセンサ32bのホール出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)が、高い線形性を持ち、理想直線とよく一致することが分かる。
【0100】
ここで、図7(a)に記載した理想直線f2は、直方体磁石31の移動距離が−1.75mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va、Vbの値を用いて演算した値(Va−Vb)/(Va+Vb)と、この直方体磁石31の移動距離が+1.75mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va,Vbの値を用いて演算した値(Va−Vb)/(Va+Vb)とを結んだ直線である。
【0101】
図7(b)に記載した理想直線h2は、この直方体磁石31の移動距離が、−3.5mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va,Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)と、この直方体磁石31の移動距離が、−1.75mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va,Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)とを結んだ直線である。
【0102】
図7(c)に記載した理想直線j2は、この直方体磁石31の移動距離が、+1.75mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va,Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)と、この直方体磁石31の移動距離が、+3.5mmにおける2個のホールセンサ32a,32bの出力電圧Va,Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)とを結んだ直線である。
【0103】
一般的には、この理想直線上の値を用いて位置検出を行うため、第1のホールセンサ32aの出力電圧Vaと、第2のホールセンサ32bの出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va−Vb)/(Va+Vb)が理想直線f2からのズレが大きい場合もしくは、第1のホールセンサ32aの出力電圧Vaと、第2のホールセンサ32bの出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)が理想直線h2からのズレが大きい場合もしくは、第1のホールセンサ32aの出力電圧Vaと、第2のホールセンサ32bの出力電圧Vbの値を用いて演算した値(Va+Vb)が理想直線j2からのズレが大きい場合、位置検出誤差が大きくなる。
【0104】
図8(a)乃至(c)は、理想直線と図6(a),(b)及び図7(a)乃至(c)に示した磁気シミュレーション結果のズレとから換算した磁石の移動距離に対する位置検出誤差を示す図である。
【0105】
図8(a)は、図7(a)に示したシミュレーション結果e2と理想直線f2とのズレから換算した位置検出における誤差p2を示した図である。図8(b)は、図7(b)に示したシミュレーション結果g2と理想直線h2とのズレから換算した位置検出における誤差q2を示した図である。図8(c)は、図7(c)に示したシミュレーション結果i2と理想直線j2とのズレから換算した位置検出における誤差r2を示した図である。図8(d)は、図8(a)乃至(c)の全範囲位置誤差を示す図である。
【0106】
図8(a)及至(c)に示す結果より、位置検出誤差は最大でも2.1μm程度であり、分解能は全ストローク7mmに対して0.03%と高精度な位置検出を達成していることがわかる。
【0107】
当然、図7(a)で示したシミュレーション結果から最小2乗法で求めた直線を理想直線f2としてもかまわない。さらに図7(b)で示したシミュレーション結果から最小2乗法で求めた直線を理想直線h2としてもかまわない。さらに図7(c)で示したシミュレーション結果から最小2乗法で求めた直線を理想直線j2としてもかまわない。最小2乗法で求めた直線を理想直線とすると、さらに位置検出誤差は小さくなり、分解能は高くなる。また、上述したように、直方体磁石31の移動距離を4等分し、演算方法を変更させたが、完全に4等分でなくとも良い。
【0108】
<比較例>
比較例として、従来の方法を用いて、上述した実施例と同様に、広い温度範囲において、7mm(±3.5mm)の位置検出範囲を、位置検出する場合について説明する。
【0109】
図9(a),(b)は、比較例として従来の磁石とホールセンサを用いた位置検出装置の概略構成図で、図9(a)は断面図、図9(b)は上面図である。図中符号41はホールセンサに対向する平面200に垂直に単極着磁された直方体磁石、42a,42bはホールセンサ、43はホールセンサ42a,42bを実装している基板を示している。
【0110】
また、図中符号C1は直方体磁石41の長辺方向Xの長さ、C2は直方体磁石41の短辺方向Yの長さ、C3は直方体磁石41の厚み方向Zの長さ(磁石の着磁方向の長さ)を示している。また、D1は、直方体磁石41のホールセンサ42a,42bに対向する平面200からホールセンサ42a,42bの感磁部の中心までの距離、D2はホールセンサ42aの感磁部の中心とホールセンサ42bの感磁部の中心との距離を示している。
【0111】
この比較例では、直方体磁石41は、図中に示すx軸方向にのみ移動する。また、直方体磁石41の移動方向に対して水平な平面状にホールセンサ42a、42bを配置する。
【0112】
図10(a)乃至(d)及び図11(a)乃至(d)は、図1に示した本発明の位置検出装置の構成と、従来の位置検出装置の構成を比較用の等倍図として示す図で、(a)は本発明による構成の断面図、(b)は本発明による構成の上面図、(c)は従来の構成の断面図、(d)は従来の構成の上面図である(図10は、実施例1の構成を、図11は実施例2の構成を示している)。ここで、図10(a),(b)及び図11(a),(b)におけるホールセンサ32a,32bは1つのパッケージに一体に封入されたセンサを示している。
【0113】
位置検出範囲の0.1%以内の位置検出精度で位置検出を行うには、図10(c),(d)及び図11(c),(d)に示すように、直方体磁石41の長辺方向Xの長さC1=15.4mm、直方体磁石41の短辺方向Yの長さC2=15.3mm、直方体磁石41の厚み方向Zの長さC3=4.3mm、直方体磁石41のホールセンサに対向する面からホールセンサの感磁部までの距離D1=6.3mm、ホールセンサ42aの感磁部の中心とホールセンサ42bの感磁部の中心との距離D2=11.6mmとなる。
【0114】
これにより、本発明に係る図10(a),(b)及び図11(a),(b)に示す位置検出装置30の構成は、比較用の図10(c),(d)及び図11(c),(d)に示す位置検出装置40の従来例の構成に比べて、位置検出装置全体の大きさと厚さを著しく小さくすることができるという効果を得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明に係る位置検出装置の概略構成図で、(a)は断面図、(b)は上面図である。
【図2】図1に示した位置検出装置の位置検出回路例の構成図である。
【図3】(a),(b)は、実施例1における直方体磁石の移動距離に対するホールセンサ部の磁束密度もしくは演算後の値を磁気シミュレーションから求めた結果を示す図(その1)である。
【図4】(a)乃至(c)は、実施例1における直方体磁石の移動距離に対するホールセンサ部の磁束密度もしくは演算後の値を磁気シミュレーションから求めた結果を示す図(その2)である。
【図5】(a)乃至(d)は、実施例1における理想直線と図3(a),(b)及び図4(a)乃至(c)に示した磁気シミュレーション結果のズレとから換算した磁石の移動距離に対する位置検出誤差を示す図である。
【図6】(a),(b)は、実施例2における直方体磁石の移動距離に対するホールセンサ部の磁束密度もしくは演算後の値を磁気シミュレーションから求めた結果を示す図(その1)である。
【図7】(a)乃至(c)は、実施例2における直方体磁石の移動距離に対するホールセンサ部の磁束密度もしくは演算後の値を磁気シミュレーションから求めた結果を示す図(その2)である。
【図8】(a)乃至(d)は、実施例2における理想直線と図6(a),(b)及び図7(a)乃至(c)に示した磁気シミュレーション結果のズレとから換算した磁石の移動距離に対する位置検出誤差を示す図である。
【図9】比較例として従来の磁石とホールセンサを用いた位置検出装置の概略構成図で、(a)は断面図、(b)は上面図である。
【図10】本発明の位置検出装置の実施例1の構成と、従来の位置検出装置の構成を比較用の等倍図として示す図で、(a)は本発明による構成の断面図、(b)は本発明による構成の上面図、(c)は従来の構成の断面図、(d)は従来の構成の上面図である。
【図11】本発明の位置検出装置の実施例2の構成と、従来の位置検出装置の構成を比較用の等倍図として示す図で、(a)は本発明による構成の断面図、(b)は本発明による構成の上面図、(c)は従来の構成の断面図、(d)は従来の構成の上面図である。
【図12】従来のホールセンサを用いた従来の位置検出方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0116】
11 第1のホールセンサ
12 第2のホールセンサ
19 駆動回路
20 信号処理回路
21a,21b 差動増幅器
22 演算処理計算部
23 永久磁石
30 位置検出装置
31,41 直方体磁石
32a,42a 第1のホールセンサ
32b,42b 第2のホールセンサ
32a(A),32b(E) 正極入力端子
32a(B),32b(F) 正極出力端子
32a(C),32b(G) 負極入力端子
32a(D),32b(H) 負極出力端子
33,43 基板
100 平面
200 平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置され、感磁方向が前記基板に対して垂直である2個の磁気センサを1組としてなる磁束検出手段と、
前記磁気センサの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向に、かつ前記基板に平行な平面内を移動可能に支持され、前記基板に対して垂直方向にN極とS極が着磁された磁石からなる磁束発生手段と、
前記磁気センサからの出力に基づいて位置検出を行う信号処理手段とを備え、
該信号処理手段が、
前記磁石の移動範囲を3分割し、該3分割した移動範囲のうち中央部分については、前記磁気センサの出力をそれぞれVa及びVbとした場合に、(Va−Vb)の関係式を用いて位置検出を行い、前記3分割した移動範囲のうち両端部分については、(Va+Vb)の関係式を用いて位置検出を行うことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
基板上に配置され、感磁方向が前記基板に対して垂直である2個の磁気センサを1組としてなる磁束検出手段と、
前記磁気センサの感磁部の中心間を結ぶ直線に対して平行方向に、かつ前記基板に平行な平面内を移動可能に支持され、前記基板に対して垂直方向にN極とS極が着磁された磁石からなる磁束発生手段と、
前記磁気センサからの出力に基づいて位置検出を行う信号処理手段とを備え、
該信号処理手段が、
前記磁石の移動範囲を3分割し、該3分割した移動範囲のうち中央部分については、前記磁気センサの出力をそれぞれVa及びVbとした場合に、(Va−Vb)/(Va+Vb)の関係式を用いて位置検出を行い、前記3分割した移動範囲のうち両端部分については、(Va+Vb)の関係式を用いて位置検出を行うことを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
前記3分割は、前記磁石の移動範囲を約4等分したうちの中央2ヶ所と、一端の1ヶ所と、他の一端の1ヶ所となるように3分割することを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記磁気センサの感磁部の中心間を結ぶ直線の中点と、前記磁石の移動範囲の中点とが同じであることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記磁気センサを1つのパッケージに一体に封入していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記磁気センサは、磁気増幅を行うための磁性体チップを有していないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記磁気センサは、GaAs、InAs、InSbなどのIII−V族化合物半導体を含むホールセンサであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記磁気センサは、Si、GeなどのIV族半導体を含むホールセンサであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の位置検出装置を用いたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−96540(P2010−96540A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265516(P2008−265516)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】