説明

位置検出装置

【課題】被検出体の板厚が徐々に変化する変化部を容易に加工や製品検査を実施することが可能な位置検出装置を提供する。
【解決手段】ハンドルバー1に設けられたハンドルグリップ3の回動動作に基づいて回動するマグネット4aと、マグネット4aの回転を検出する磁気検出手段5とを備えた位置検出装置1において、マグネット4aは、その外面4bと内面4cに曲面を備えた板状部を備え、外面4bと内面4cの形状の少なくとも一部はマグネット4aの回転軸方向に対して垂直方向の断面形状が円弧形状であり、外面4bの円弧形状の中心を第1の中心4dとし、内面4cの円弧形状の中心を第2の中心4eとし、第1の中心4dと第2の中心4eとを異なる位置とし、マグネット4aの板状部に肉厚部4fと肉薄部4gとを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車のハンドルグリップ等の操作位置を検出する位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の位置検出装置は、例えば、下記特許文献1に示されているものがある。特許文献1に記載された位置検出装置は、互いに相対変位可能なアクセル及び筐体を有し、前記アクセルには被検出体として永久磁石が配設され、前記筐体には、前記永久磁石の磁場の磁束密度が単調変化する範囲内に、この磁束密度の変化を検出する磁気検出手段であるリニアホールICが配置されたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−112880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の位置検出装置において、前記永久磁石の特性を変更するために、前記永久磁石には、その端面側に向けて板厚が薄くなるような傾斜面などを形成していた。
【0005】
この傾斜面のような前記永久磁石の板厚の変化する部分を、徐々に変化するように形成する場合、均一な品質で形成することは、加工や製品検査が容易ではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、前述した問題点に着目し、被検出体の板厚が徐々に変化する変化部を容易に加工や製品検査を実施することが可能な位置検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の位置検出装置は、ハンドルバーに設けられたハンドルグリップの回動動作に基づいて回動するマグネットと、前記マグネットの回転を検出する磁気検出手段とを備えた位置検出装置において、前記マグネットは、その外面と内面に曲面を備えた板状部を備え、前記外面と前記内面の形状の少なくとも一部は前記マグネットの回転軸方向に対して垂直方向の断面形状が円弧形状であり、前記外面の円弧形状の中心を第1の中心とし、前記内面の円弧形状の中心を第2の中心とし、前記第1の中心と前記第2の中心とを異なる位置とし、前記マグネットの板状部に肉厚部と肉薄部とを設けたものである。
【0008】
また、前記マグネットを、前記板状部を備えた円筒形状としたものである。
【0009】
また、前記磁気検出手段を前記マグネットの円筒内に設けたものである。
【0010】
また、前記マグネットの前記肉厚部若しくは前記肉薄部に、着磁方向を定める規定部を設けたものである。
【0011】
また、前記規定部は、切り欠き部からなるものである。
【0012】
また、前記規定部は、突起部からなるものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、被検出体の板厚が徐々に変化する変化部を容易に加工や製品検査を実施することが可能な位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の位置検出装置の側面図。
【図2】図1中A−A線の断面図。
【図3】図2中B−B線の断面図。
【図4】同実施形態の磁石の断面図。
【図5】同実施形態の磁石の斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態の磁石の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明の第1実施形態を、二輪車のハンドルバーに回動可能に設けられたハンドルグリップの操作位置(回動角)を検出する位置検出装置を例にとって説明する。
【0016】
本発明の位置検出装置1は、二輪車のハンドルバー2に設けられるものであり、操作手段であるハンドルグリップ3とともに回動する保持部材4と、この保持部材4に固定される被検出部4aであるマグネットと、マグネット4aを検出する磁気検出手段5と、保持部材4を回動可能に支持するとともに磁気検出手段5を固定した支持部材6と、保持部材4、マグネット4a、磁気検出手段5及び支持部材6を収納するケース7とを備えている。
【0017】
ハンドルバー2は、鉄やアルミニウム等の金属からなり、円筒形状である。
【0018】
ハンドルグリップ3は、スリーブ3aとグリップ部3bとで構成されており、スリーブ3aは、合成樹脂からなる円筒形状で、ハンドルバー2の外周に回動自在に位置している。スリーブ3aは、図3中左側の端部に、鍔部3cを備えている。鍔部3cは円盤形状で、ハンドルグリップ3の外周に切れ目なく設けられている。そして、その縁の一部に、保持部材4と連結し、ハンドルグリップ3の回動を伝達する連結部3dを備えている。
【0019】
グリップ部3bは、運転者が握る部分であり、ゴム等の弾性部材からなり、スリーブ3aの外周を切れ目なく覆っており、スリーブ3aに強固に固定されている。
【0020】
保持部材4は、合成樹脂からなり、環状で、支持部材6が貫通する孔部41を備えており、支持部材6に回動可能に支持されている。また、保持部材4には、ハンドルグリップ3の連結部3dが挿入される凹みからなる受け部42を備えている。ハンドルグリップ3の連結部3dを受け部42に挿入することによって、ハンドルグリップ3の回動が、保持部材4に伝わり、保持部材4が回動するものである。
【0021】
また、保持部材4は、後述するリターンスプリング8を収納する収納凹部43を備えている。この収納凹部43は、孔部41を形成する円筒形の第1の筒部44と、この第1の筒部44より径の大きな円筒形の第2の筒部45と、第1、第2の筒部44、45を連結する連結部46で構成されている。連結部46は、図3中の第1、第2の筒部44、45の右側で連結されており、収納凹部43は、図3中左側が、開放している。
【0022】
マグネット4aは、磁性材を含んだ合成樹脂からなり、本実施形態では、一対の磁極を有し、板状部を含む円筒形状である。マグネット4aは、インサート成形によって保持部材4に固定されており、本実施形態では、保持部材4の第2の筒部45の図3中左側に固定されている。マグネット4aは、外面4bと内面4cとを備えている。
【0023】
外面4bの形状は、マグネット4aの回転軸方向に対して垂直方向の断面形状が、円の曲面である。また、内面4cの形状は、マグネット4aの回転軸方向に対して垂直方向の断面形状が、二つの円弧を合わせた曲面を備えた形状である。
【0024】
外面4bの円の中心である第1の中心4dは、一つであり、マグネット4aの回転中心と同一の位置である。すなわち、外面4bの断面形状は、第1の中心4dを中心とした半径R1の円である。
【0025】
また、内面4dの円弧形状の中心である第2の中心4eは、二つあり、マグネット4aの回転中心とは、異なる位置である。すなわち、第1の中心4dとは異なる位置である。図4に示すように、第1の中心4dの上側に位置する第2の中心4eは、上側の内面4cの円弧の中心であり、第1の中心4dの下側に位置する第2の中心4eは、下側の内面4cの円弧の中心である。
【0026】
図4中、上側の内面4cの断面形状は、第2の中心4eを中心とした半径R2の円弧であり、下側の内面4cの断面形状は、第2の中心4eを中心とした半径R2の円弧である。
【0027】
第1の中心4dと第2の中心4eとを異なる位置としたことによって、マグネット4aの板状部に肉厚部4fと肉薄部4gとを設けたものである。図4中右側の肉厚部4fがN極であり、図4中左側の肉厚部4fがS極となるように着磁されており、肉薄部4gは、磁極間である。この肉薄部4gを中心とした回転方向前後45°の範囲(図4中肉薄部4gの回転方向左右45°の範囲)を検出範囲として用いる。
【0028】
また、本実施形態では、マグネット4aの肉厚部4fに、マグネット4aの着磁方向を定める規定部4hを備えている。規定部4hは、マグネット4aの回転軸方向の端部に凹んだ切り欠き部である。この規定部4hによって、マグネット4aを着磁治具に位置決めを行って着磁を行う。また、この規定部4hによって、マグネット4aを保持する保持部材4への位置決めを行うことも可能となる。
【0029】
なお、規定部4hは、切り欠き部である必要はなく、図示していないが、例えば、マグネット4aの回転軸方向の端部から突出した突起部であってもよい。
【0030】
磁気検出手段5は、磁束密度の変化を電気信号に変換するものであり、例えば、ホール素子等の磁気検出素子である。磁気検出手段5は、2つ設けられており、マグネット4aの円筒内に配設され、マグネット4aの位置を検出するものである。
【0031】
磁気検出手段5は、回路基板51に表面実装されている。回路基板51は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性の基材に図示しない導電路やこの導電路と電気的に接続された電子部品等を備えたものである。また、回路基板51には、外部回路に接続された配線52が電気的に接続されている。磁気検出手段5の信号は、回路基板51と配線52を介して外部の回路に出力される。
【0032】
支持部材6は、合成樹脂からなり、環状で、ハンドルバー2が貫通する孔部61を備えた円筒形状の筒状部62を備えており、ハンドルバー2の外周を取り囲んでいる。そして、支持部材6は、ハンドルバー2に対して、図示しない手段によって回動しないように固定されている。また、支持部材6は、筒状部62によって、保持部材4を回動可能に支持している。
【0033】
支持部材6は、図3中、筒状部62の中程に、円盤形状の移動規制部63を備えている。この移動規制部63は、ハンドルグリップ3の回動軸方向において、保持部材4が、図3中左側への移動することを規制するものである。
【0034】
また、支持部材6は、図3中、筒状部62の右側に、抜け止め部材64が取り付けられている。この抜け止め部材64は、保持部材4が、筒状部62から脱落することを防止するとともに、ハンドルグリップ3の回動軸方向において、保持部材4が図3中右側への移動することを規制するものである。
【0035】
支持部材6は、移動規制部63の左下側に、検出体5と回路基板51を、配設する収納部65が設けられている。この収納部65は、図3中左側が開放した凹部からなり、この収納部65は、回路基板51の両端部を保持する保持部66を備えている。この保持部66は、収納部65の内壁に設けた溝から構成されている。また、この収納部65内は、硬化する合成樹脂からなる保護材67によって満たされており、磁気検出手段5と回路基板51を水分や塵埃などから保護している。
【0036】
ケース7は、第1、第2のケース71、72とから構成されている。第1、第2のケース71、72とも、合成樹脂製で、およそ半円形状のカップ形状である。第1、第2のケース71、72は、ハンドルグリップ3の回動中心軸方向に沿って分割するものである。第1、第2のケース71、72は、溶着等の適宜手段によって固定されている。
【0037】
ケース7は、保持部材4、マグネット4a、磁気検出手段5及び支持部材6を収納するものである。ケース7は、ピン73を備えている。このピン73は、ハンドルバー2に設けた貫通孔2aに差し込まれており、ケース7をハンドルバー2に対して移動しないように固定するものである。
【0038】
なお、74は、パッキンであり、磁気検出手段5の配線52が、貫通しており、配線52からケース7内に水や塵埃が侵入することを防止するものである。
【0039】
8は、コイルスプリングからなるリターンスプリングであり、運転者によって操作されたハンドルグリップ3を初期の位置に復帰させるものである。このリターンスプリング8の一端は、保持部材4の連結部46に固定されており、他端は、支持部材6の移動規制部63に固定されている。
【0040】
以上のように構成したことによって、被検出体であるマグネット4の板厚が、徐々に変化する変化部を容易に加工可能であるとともに、製品検査を実施することが可能となる。また、製品検査において、使用する検査治具なども検査対象の形状が円弧であるために、容易に精度良く製作することができる。
【0041】
また、マグネット4aを円筒形状としたことによって、マグネット4aの構造上の剛性が向上し、マグネット4aの破損を防止することができる。
【0042】
また、磁気検出手段5をマグネット4aの円筒内に設けたことによって、磁気検出手段5は、位置検出装置1の外部の磁界の影響を受けにくくなり、外部磁界による磁気検出手段5の検出精度への影響を抑えることが可能となる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態を図6に基づいて説明する。
【0044】
第2実施形態は、マグネット14aの形状が、第1実施形態と異なっている。
【0045】
本実施形態のマグネット14aの外面14bの形状は、マグネット14aの回転軸方向に対して垂直方向の断面形状が、二つの円弧を合わせた曲面を備えた形状である。また、内面14cの形状は、マグネット14aの回転軸方向に対して垂直方向の断面形状が、円の曲面である。
【0046】
外面14bの円弧形状の中心である第1の中心14dは、二つあり、マグネット14aの回転中心とは、異なる位置である。
【0047】
また、内面14dの円弧形状の中心である第2の中心14eは、一つであり、マグネット14aの回転中心と同一の位置である。すなわち、第1の中心14dとは異なる位置である。
【0048】
図6に示すように、第2の中心14eの上側に位置する第1の中心14dは、下側の外面14bの円弧の中心であり、第2の中心14eの下側に位置する第1の中心14dは、上側の外面14bの円弧の中心である。
【0049】
図6中、上側の外面14bの断面形状は、第1の中心14dを中心とした半径R11の円弧であり、下側の外面14bの断面形状は、第1の中心14dを中心とした半径R11の円弧である。
【0050】
また、内面14cの断面形状は、第2の中心14eを中心とした半径R12の円である。
【0051】
第1の中心14dと第2の中心14eとを異なる位置としたことによって、マグネット14aの板状部に肉厚部14fと肉薄部14gとを設けたものである。
【0052】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
なお、前記各実施形態では、マグネット4aは、円筒形状であったが、円筒形状に限定されるものではなく、外面4bと内面4cに曲面を備えた断面形状が円弧である板状部であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、二輪車のハンドルグリップ等の操作手段の操作位置を検出する位置検出装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 位置検出装置
2 ハンドルバー
3 ハンドルグリップ
4a、14a マグネット(被検出部)
4b、14b 外面
4c、14c 内面
4d、14d 第1の中心
4e、14e 第2の中心
4f、14f 肉厚部
4g、14g 肉薄部
4h 規定部(切り欠き部)
5 磁気検出手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルバーに設けられたハンドルグリップの回動動作に基づいて回動するマグネットと、前記マグネットの回転を検出する磁気検出手段とを備えた位置検出装置において、
前記マグネットは、その外面と内面に曲面を備えた板状部を備え、前記外面と前記内面の形状の少なくとも一部は前記マグネットの回転軸方向に対して垂直方向の断面形状が円弧形状であり、前記外面の円弧形状の中心を第1の中心とし、前記内面の円弧形状の中心を第2の中心とし、前記第1の中心と前記第2の中心とを異なる位置とし、前記マグネットの板状部に肉厚部と肉薄部とを設けたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記マグネットを、前記板状部を備えた円筒形状としたことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記磁気検出手段を前記マグネットの円筒内に設けたことを特徴とする請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記マグネットの前記肉厚部若しくは前記肉薄部に、着磁方向を定める規定部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記規定部は、切り欠き部からなることを特徴とする請求項4に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記規定部は、突起部からなることを特徴とする請求項4に記載の位置検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137353(P2012−137353A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289277(P2010−289277)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】