説明

位置決め装置

【課題】簡単な構造でベローズにねじり力が作用せず、密閉容器内の被操作体を容器外から良好に回転、直進運動させることを可能にする。
【解決手段】複数の操作棒6を、密閉容器7を密閉するために該密閉容器7とZ軸ステージ4の上面プレート5の間に、ベローズ9内を貫通させて配設することにより気密性を図る。前記ベローズ9におけるZ軸ステージ4の上面プレート5の接続面と、該ベローズ9における密閉容器7との接続面とにおいて、中心位置を偏心させて取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器内の被操作体を容器外から、操作棒を介して回転および直進させて位置決めを行う位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、密閉容器内の被操作体を容器外から回動および直線移動操作する位置決め装置において、密閉容器を貫通して一端が被操作体に連結された一対の操作棒と、該操作棒の他端をそれぞれ支持して密閉容器外に配設された揺動腕と、被操作体を所定の直交軸それぞれの回りに回動せしめる各軸別の回動機構を積層してなる回動操作手段、および前記直交軸のそれぞれによって直進せしめる各軸別の直進機構を積層してなる直線移動操作手段とを備え、揺動腕を回動操作手段で支承し、さらに該回動操作手段を直線移動操作手段で支承し、操作棒と被操作体および操作棒と揺動腕をそれぞれ操作棒のねじり方向に回転する回転支持手段を介して接続した装置が知られている。
【0003】
さらに、特許文献1に記載された位置決め装置では、密閉容器に挿入される操作棒の周囲をベローズで覆い、密閉容器内に対する気密性を図っており、また、操作棒と被操作体を接続する回転支持手段として回転板ばねを用いることが開示されている。
【特許文献1】特許第2638946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の位置決め装置では、密閉容器内での発塵を抑え、ベローズにねじり力が加わらないようにするために、前記のように回転支持手段として回転板ばねを使用している。このため構造が複雑になることが課題となる。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みなされたものであり、簡単な構造でベローズにねじり力が作用せず、密閉容器内の被操作体を容器外から良好に回転、直進運動させることを可能にする位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、密閉容器内の被操作体を、前記密閉容器外から回転および直線移動操作する位置決め装置であって、前記密閉容器を貫通して一端が前記被操作体に連結された複数の操作棒と、該操作棒の他端をそれぞれ支持して前記密閉容器外に配設されたプレートと、前記被操作体を前記操作棒と略平行な軸回りに回転せしめる回転機構と、前記被操作体を前記操作棒と略平行な軸と該軸に略直交しかつ互いに略直交する2軸との3方向に直進せしめる直進機構を備えた位置決め装置において、前記操作棒をベローズ内に貫通させ、該ベローズの前記密閉容器に接続する端面の中心と、前記プレートに接続する端面の中心とを偏心させて設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、密閉容器に挿入される操作棒における気密性を保持するため該操作棒に設けられたベローズにおいて、密閉容器に接続する端面の中心と、固定側のプレートに接続する端面の中心とを偏心させて設置することにより、ねじり力が作用にないようにすることができ、従来に比して、簡単な構造で、密閉容器内の被操作体を容器外から良好に回転、直進運動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0009】
図1は本発明の一実施形態である位置決め装置の構成を示す正面断面図である。
【0010】
図1において、1はベースプレート、2はXYθ軸ステージ、3はあおり調整機構、4はZ軸ステージ、5は上面プレート、6は操作棒、7は密閉容器、8は被操作体、9はベローズを示す。
【0011】
図1に示すように、ベースプレート1の上に水平方向の移動のためのXYθ軸ステージ2があおり調整機構3を介して取り付けられている。ここで、XYは図では水平方向と紙面に垂直な方向との2方向の軸を示し、θはZ軸(垂直方向の軸)回りの回転軸を示す。XYθ軸ステージ2は、図示していないが、駆動源としてモータを使用し、ギヤなどの駆動力伝達系によりなる公知の回転機構および直進機構が設けられており、また、あおり調整機構3は、本実施形態では、最も簡単な構造として押しボルト,引きボルトによりなるを採用している。さらに、XYθ軸ステージ2の上に、Z軸ステージ4を積み重ねるように配置されている。
【0012】
また、本実施形態では、Z軸ステージ4としてクサビを利用したステージを採用している。このZ軸ステージ4の上面プレート5に複数の操作棒6が垂直方向に立設され、かつ一部が密閉容器7に挿入され、密閉容器7内において被操作体8が操作棒6の端部に固定されている。
【0013】
前記複数の操作棒6は、密閉容器7を密閉するために該密閉容器7とZ軸ステージ4の上面プレート5の間においてベローズ9内に貫通され、周囲が覆われて気密性が図られている。このような構造にすることによって、X軸,Y軸,Z軸,θ軸の各方向にステージが移動しても、被操作体8および被操作体8上に載置されたワーク(図示せず)を密閉された状態で移動させることができる。
【0014】
図2は図1におけるA−A断面図であり、Z軸ステージ4の上面プレート5に操作棒6が3本接続された場合を示している。図示したように、各操作棒6の周囲を覆うように、それぞれベローズ9が取り付けられ、ベローズ9とZ軸ステージ4の上面プレート5の接続面(図では実線で示す)と、ベローズ9と密閉容器7との接続面(図では2点鎖線で示す)は、中心位置が偏心して取り付けられ、図1に示すように、ベローズ9全体としては対向する上下面において中心がずれて斜めに設置される。
【0015】
図3,図4を参照してベローズに作用するねじり力について説明する。
【0016】
図3は図2における1つのベローズ9を拡大して示す説明図であり、灰色で示す四角い領域Aは、XYθ軸ステージ2の可動範囲を示す。XYθ軸ステージ2がθ軸まわりに最大可動量だけ回転し、かつ、ベローズ最上面の中心OがO’に移動し、さらにXY軸が移動した場合に、本実施形態のように、ベローズ上面と下面の中心が偏心していると、XYθ軸がどのように移動しても、ベローズ9の上面と下面の中心はずれた状態にある。
【0017】
一方、図4は従来の位置決め装置におけるベローズと操作棒とを示す説明図であり、灰色で示す四角い領域Aは前記と同様に、XYθ軸ステージの可動範囲を示す。図4に示すように、従来ではベローズ上面と下面の中心が一致しているため、θ軸回りに回転し、かつXY軸方向にも移動すると、ベローズ6の上下面の中心が一致する場合がある。
【0018】
図5(a),(b)はベローズ9の中心軸の変形状態を示す説明図であり、ベローズ9の上下面の中心がずれている場合は、図5(a)に示すように、ベローズ9の中心軸Cが螺旋状に変形するため、ベローズ9にはねじり力が作用しない。一方、図5(b)に示すように、ベローズ9の上下面の中心が一致している場合には、中心軸Cは螺旋状に変形することができずに、ねじり力が作用することになるため、ねじり力によってベローズ9が破損してしまう。
【0019】
以上のように、本実施形態の構成により、被操作体8および位置決め用のステージ2,4が可動範囲内でどのように移動しても、常にベローズ9の上下面の中心が偏心した状態になるようにすることによって、ベローズ9の破損の原因となるねじり力を発生させない構造にすることができる。
【0020】
このベローズ9の上下面の偏心量は大きい程良いが、偏心量を大きくすると、ベローズ9の全長が長くなる。このため、最低限1.5mm以上の偏心量をとることが望ましい。また、本実施形態において、前記θ軸回りの可動範囲が小さい程、また、被操作体8の回転軸とベローズ9の中心軸の距離が大きい程、効果がある。
【0021】
なお、本実施形態に上述した構成に限定されるものではなく、さまざまな変更が可能である。
【0022】
例えば、あおり調整機構3は球面を利用した構造のステージを利用してもよいし、XYθ軸ステージ2はスペース的な制約がなければ、X軸ステージ,Y軸ステージ,θ軸ステージを積み重ねた構造でもよい。また、XYZθ軸を積み重ねる順番はどのような順番でもよい。
【0023】
また、Z軸ステージ4についても、図1に示す構成例ではクサビを利用した構造にしているが、垂直方向にボールねじ、LM(リニアモータ)ガイドを配置した構造など、他の方法を用いてもよい。
【0024】
また、ベローズ9の上下面の偏心方向については、XYθ軸の可動範囲外になるように配置すれば、どの方向でもよい。
【0025】
さらに、本実施形態では、XYZθの4軸の変位について示したが、θ軸を含む最低2軸以上の移動をさせる場合に、本実施形態を利用することができる。また、本実施形態では、被操作体8が垂直軸回りに回転する場合を示しているが、水平軸回りの回転についても前記と同様の構成を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、半導体製造装置など真空容器内でウエハの位置決めを行って処理を行う装置に用いて有効であって、密閉容器内にてワークの位置決めを行う必要がある場合など、様々な技術分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態である位置決め装置の構成を示す正面断面図
【図2】図1におけるA−A断面図
【図3】本実施形態のベローズに作用するねじり力を説明するためのベローズ部分を拡大して示す説明図
【図4】従来の位置決め装置のベローズに作用するねじり力を説明するためのベローズ部分を拡大して示す説明図
【図5】(a),(b)はベローズの中心軸の変形状態を示す説明図
【符号の説明】
【0028】
1 ベースプレート
2 XYθ軸ステージ
3 あおり調整機構
4 Z軸ステージ
5 上面プレート
6 操作棒
7 密閉容器
8 被操作体
9 ベローズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内の被操作体を、前記密閉容器外から回転および直線移動操作する位置決め装置であって、前記密閉容器を貫通して一端が前記被操作体に連結された複数の操作棒と、該操作棒の他端をそれぞれ支持して前記密閉容器外に配設されたプレートと、前記被操作体を前記操作棒と略平行な軸回りに回転せしめる回転機構と、前記被操作体を前記操作棒と略平行な軸と該軸に略直交しかつ互いに略直交する2軸との3方向に直進せしめる直進機構を備えた位置決め装置において、
前記操作棒をベローズ内に貫通させ、該ベローズの前記密閉容器に接続する端面の中心と、前記プレートに接続する端面の中心とを偏心させて設置したことを特徴とする位置決め装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate