説明

低ゆがみ中間層

本発明は、望ましい表面特性を有するポリマーシート(14)を含む多層ガラスパネルの分野に属し、より具体的には、本発明は、ポリ(エチレンテレフタレート)(16)および/または他のポリ(ビニルブチラール)タイプの層に接触して配設された、比較的低い波打ちおよび高度な粗さの仕上がり表面を有するポリ(ビニルブチラール)を含む多層ガラスパネルの分野に属する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、望ましい表面特性を有するポリマーシートを含む多層ガラスパネルの分野に属し、より具体的には、本発明は、ポリ(エチレンテレフタレート)および/または他のポリ(ビニルブチラール)タイプの層に接触して配設された、比較的低い波打ちおよび高度な粗さの仕上がり表面を有するポリ(ビニルブチラール)を含む多層ガラスパネルの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
金属、金属化合物、およびその他の作用物質の、オングストロームまたはそれ以上の厚さの層が、多層ガラスパネルにおいて従来使用され、可視光線を透過させながら、熱を発生させる太陽赤外線を反射させてきた。これらの層は積み重ね(stack)として順番に配置することができ、二軸延伸された熱可塑性ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムまたは類似の材料などの、適切ないかなる基板上にも配設されうる。干渉フィルタとして知られている1つの形態は、反射抑制または反射防止誘電体層の間に挟まれた、反射性金属の少なくとも1つの層を含む。
【0003】
干渉フィルタなどの金属化フィルムが、多層ガラス積層板において、例えば車両のフロントガラスにおいて、ガラスと組み合わされる場合、衝撃を散逸させる可塑化ポリ(ビニルブチラール)(PVB)の中間層が通常組み込まれ、フロントガラスを貫通させることなく、車両内の乗員の頭によるまたは車両外部からの異質物体による衝撃を吸収する。典型的な配置においては、ポリ(エチレンテレフタレート)タイプの被覆フィルムの単層が、ポリ(ビニルブチラール)タイプの材料の2つの層の間に配設され、この後でガラスの2つの層の間に配設される3層構造体を形成する。仕上がり多層ガラスパネルは、安全および放射透過制御を合わせた利点を有する。
【0004】
斜め視角において特に顕著でありうる光学品質の欠点は、約0.002から0.012mmの振幅および2.5〜7.5mmの波長を有すると見積もられる、視覚的には明瞭な、等方性の、波様の反射像として、安全ガラスパネルに存在しうる。これを今後、「アップルソース」という用語によって呼ぶ。アップルソースが生じると考えられている理由は、斜め視角で光を反射するポリエチレンタイプの層が、積層する間にポリ(ビニルブチラール)タイプの層に順応し、ポリ(ビニルブチラール)タイプの層上に存在する、なんらかの非線形性または波打ちをも帯びることになることである。また、別の不快な、「まだら(まだらな色の外観)」などの視覚上の欠点は、ポリ(ビニルブチラール)タイプの層が互いに接触して配設される場合、着色されたポリ(ビニルブチラール)ガラス積層板に存在する。例えば、着色されたポリ(ビニルブチラール)が、非着色のポリ(ビニルブチラール)と共押出し成形され、次いで得られた層が別の層またはガラスによって積層される場合、まだらが生じうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アップルソースおよびまだらの酷さを軽減させるいくつかの試みが報告されている(例えば、米国特許第4465736号、第4973511号および第5091258号を参照されたい)が、アップルソースおよびまだらを低減させるさらなる方法が必要とされる。したがって、得られた多層構造体の光学特性に悪影響を及ぼすことなく、ポリマーフィルム層、および特にポリ(エチレンテレフタレート)と共に使用されるポリマーおよびポリ(ビニルブチラール)シートの特性を向上させる、さらなる改善された組成物および方法が、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
さて、本発明によれば、積層に先立ち、低い波打ちと高い粗さ値を有するポリマーシートが作りだされ、ポリ(エチレンテレフタレート)タイプの層を組み込んだ、低ゆがみ多層合わせガラスパネルまたはポリ(ビニルブチラール)タイプの材料の隣接層を組み込んだ、低ゆがみ多層合わせガラスパネルを生産することが可能となる。
【0007】
本発明は、ポリ(ビニルブチラール);および可塑剤を含むポリマーシートを含み、前記ポリマーシートは、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数、少なくとも20マイクロメートルのR値、および10から95の間の耐久度を有する表面を有する。
【0008】
本発明は、以下の諸ステップ:ポリ(ビニルブチラール)および可塑剤を含む第1ポリマーシート(前記第1ポリマーシートは第1表面および第2表面を有し、前記第1表面は、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数、少なくとも20マイクロメートルのR値、および10から95の間の耐久度を有する。)を形成するステップと、ポリマーフィルムの層を、前記第1ポリマーシートの前記第1表面に接触させて配設し、積み重ねを形成するステップと、前記積み重ねを積層するステップとを含む、多層中間層を製造する方法を含む。
【0009】
本発明は、ポリ(ビニルブチラール)および可塑剤を含む層(前記層は、第1表面および第2表面を有し、前記第1表面上で20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数および20マイクロメートル未満のRを有する。)を形成すること、および前記層の前記第1表面を粗さパターンで型押ししてポリマーシート(前記ポリマーシートは、前記層の前記第1表面に対応する側で、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数および少なくとも20マイクロメートルのR値を有する。)を製造することを含む、ポリマーシートの製造方法を含む。
【0010】
本発明は以下の諸ステップ:ポリ(ビニルブチラール)および可塑剤を含む第1ポリマーシート(前記第1ポリマーシートは第1表面および第2表面を有し、前記第1表面は、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数、少なくとも20マイクロメートルのR値、および10から95の間の耐久度を有する。)を形成するステップと、ポリマーフィルムの層を、前記第1ポリマーシートの前記第1表面に接触させて配設し、積み重ねを形成するステップと、ガラス層を、前記ポリマーフィルムの反対側の前記ポリマーシートに接触させて配設するステップと、前記積み重ねを積層するステップとを含む、多層パネルを製造する方法を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に積層されたポリマーシート/ポリマーフィルム構造を示す。
【0012】
本発明によれば、「アップルソース」(これは、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリマーフィルム層に接触して配設される、ポリ(ビニルブチラール)タイプのシートを組み込む多層ガラスパネルに存在しうる。)として知られている欠点は、本発明のポリマーシートおよび/または方法を使用することによって、低減されうることがわかった。さらに、まだら欠点も同様に低減されうる。本発明のポリマーシートは、低波打ち指数またはWI(これは、シートの表面の波打ちの尺度である。)、および高い粗さ値またはR(これは、シートの表面上に、通常は意図的に、生じる小さな不規則性の尺度である。)を有する。
【0013】
全体を10として図1において示したように、本発明のいくつかの実施形態は、ポリマーシート14およびポリマーフィルム層16の境界面12の結果として生じうるゆがみを低減させることを含む。以下でさらに詳細に述べるように、ポリマーシート14はいかなるポリ(ビニルブチラール)タイプの材料でも含むことができ、ポリマーフィルム層16は、いかなるポリ(エチレンテレフタレート)タイプの材料でも含むことができる。通常、多層ガラスパネルは、図1に示されたポリマーシート14およびポリマーフィルム層16ならびに前記ポリマーシート14の反対側のポリマーフィルム層16に接触して配設される、第2のポリマーシート層(示されていない)を含むことができる。次いで、この3層構成体を、ガラスの2つの層の間に配設して、多層ガラスパネルを形成することができる。
【0014】
本発明によるポリマーシートの形成は、低波打ち指数および高い粗さ値を有するポリマーシートを製造することを含む。ポリマーシート14の波打ち指数が低いと、ポリマーシート14およびポリマーフィルム層16の間の、またはポリマーシート(示されていない)の2層間の境界面12におけるゆがみを減少させることによって、仕上がりガラスパネルにおけるアップルソースおよび/またはまだらの出現が低減され、同時に、粗さ値が高いと、積層中の層の適切な脱気が可能になる。本発明のさまざまな実施形態において、ポリマーシートの片面または両面は、低い波打ち指数および高い粗さ値を有することができる。
【0015】
本発明は、本発明の方法によって製造されたポリマーシートを含む。本発明は、低い波打ち指数および低い粗さ値を有する表面を有するポリマーシートを製造するステップと、このポリマーシートのこの表面に粗さパターンを型押しして、この表面上に高い粗さ値を付与する型押しステップとを備えたポリマーシートの製造方法を含む。
【0016】
アップルソースを低減または解消させるこれまでの試みには、特に、低い波打ち指数を有する可塑化ポリ(ビニルブチラール)層を製造することが含まれてきた。このような試みにおいて、望ましい品質に欠ける層がしばしば製造されたのであり、その理由は、製造された滑らかな層の粗さ値が低く、これによって組立工程の積層ステップに困難がもたらされたからである。アップルソースを低減させる別の試みには、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリマーフィルムの層が、ポリ(ビニルブチラール)の2つの層の間に配設され、圧延されて3層積層板を形成し、次いで、ポリ(ビニルブチラール)層の曝露された表面上で型押しされる工程が包含されている(日本特許出願JP59223256を参照されたい。)。滑らかなポリ(ビニルブチラール)をポリ(エチレンテレフタレート)で積層すると、積層工程の脱気ステップにおいて困難がもたらされうる。
【0017】
本発明は、低い波打ち指数および高い粗さ値を有するポリマーシートを製造し、これによって、ポリマーフィルムがポリ(ビニルブチラール)などのポリマーシートと一緒に使用される際に出現しうるアップルソースおよびその他の光学的欠点、またはポリ(ビニルブチラール)の多層が使用される際に出現しうる欠点を低減または解消させるための製造方法を提供する。
【0018】
本発明のさまざまな実施形態の第1ステップにおいて、片方または両方の表面上に必ずしも同一ではない、20,000平方マイクロメートル未満、15,000平方マイクロメートル未満、12,000平方マイクロメートル未満、10,000平方マイクロメートル未満、8,000平方マイクロメートル未満、6,000平方マイクロメートル未満、または5,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数および15マイクロメートル未満、12マイクロメートル未満、10マイクロメートル未満、9マイクロメートル未満、8マイクロメートル未満、7マイクロメートル未満、6マイクロメートル未満、または5マイクロメートル未満の粗さ値を有するポリマーシートが製造され、波打ち指数および粗さ値の上記の値は、いかなる組合せにでも組み合わせることができる。本発明のさまざまな具体的な実施形態において、WIおよびRは、20,000平方マイクロメートル未満および20マイクロメートル未満、15,000平方マイクロメートル未満および10マイクロメートル未満、15,000平方マイクロメートル未満および7マイクロメートル未満、または15,000平方マイクロメートル未満および5マイクロメートル未満である。このパラグラフにおいて与えられた値は、波打ちおよび粗さの「型押し前」の値である。
【0019】
これらの実施形態の次のステップにおいて、比較的滑らかな1つの表面または複数の表面に、粗さパターンを型押しする。この粗さパターンは、適切ないかなるパターンであることもでき、さまざまな実施形態において、少なくとも20マイクロメートル、少なくとも25マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも35マイクロメートル、少なくとも45マイクロメートル、または少なくとも55マイクロメートルの最終粗さ値(型押し後の値)を有するポリマーシートをもたらす。この型押しステップは、層が、ポリ(エチレンテレフタレート)、またはガラス、またはポリ(ビニルブチラール)の別の層と積層される前に実施されるので、型押しされた表面は、最終製品の層間の脱気が良好に行われることを可能にする。
【0020】
本発明の方法を用いることによって、好都合に低い波打ち指数および比較的高い粗さ値を持つ、1つのまたは両方の表面を有するポリマーシートを製造することができることを発見した。具体的には、本発明のさまざまな実施形態において、粗さパターンを型押しした後のポリマーシートは、20,000平方マイクロメートル未満、15,000平方マイクロメートル未満、12,000平方マイクロメートル未満、10,000平方マイクロメートル未満、8,000平方マイクロメートル未満、6,000平方マイクロメートル未満、または5,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数および少なくとも20マイクロメートル、少なくとも25マイクロメートル、少なくとも30マイクロメートル、少なくとも35マイクロメートル、少なくとも45マイクロメートル、または少なくとも55マイクロメートルの粗さ値を有し、波打ち指数および粗さ値の上記の値は、必要に応じて、いかなる組合せにでも組み合わせることができる。このパラグラフにおいて与えられた値は、波打ちおよび粗さの「型押し後」の値である。WIおよび粗さ値の両方が与えられる、本発明のこれらのおよびその他の実施形態に関して、与えられた粗さ値のみを使用し、WIを使用せずにポリマーシートを特徴付けている、対応する、さらなる実施形態もまた、本発明の一部である。
【0021】
WIおよび粗さ値に加えて、本発明のポリマーシートは、また、シートの微細な表面形態の変更性(alterability)の尺度である、耐久度によって特徴付けられる。ポリマーシートの1つのまたは両方の表面の耐久度の測定は、本明細書の他の場所の手順に従って行うことができる。
【0022】
低い粗さおよび波打ちを持って製造され、型押しされて高い粗さ値を持つようにされた本発明のポリマーシートは、95から10までの範囲の耐久度値を有することができる。この範囲は、メルトフラクチャのみを拠り所として表面粗さを獲得し、100または100に近い耐久度値を一般に有するポリマーシートとは対照的である。ポリマーシートに与えられる耐久度の値は、所望される用途および使用されうる積層工程条件に依存することになる。アップルソースを最大限に減少させることが望ましい用途に関しては、例えば、本発明のポリマーシートは、40未満、30未満、または20未満の耐久度値を有することができるが、だからといって、より高い耐久度値を有するその他の実施形態においては、アップルソースが低減されないとは云えない。他の欠点を明確に低減することが望ましい別の実施形態において、60から95、65から90、または70から80の耐久度値を、ポリマーシートに付与することができる。本発明のさまざまな実施形態において有用である、他の耐久度値は、10から30、30から50および50から95、50から90、または50から85である。
【0023】
このパラグラフにおいて与えられたこれらの耐久度値を、上記で与えられた、型押し後の粗さ値および波打ち値と、いかなる組合せにおいても、組み合わせることができる。
【0024】
本発明のポリマーシートの耐久度値は、例えば、以下のパラメータのうちのいずれかを変更することによって制御することができる:接触ローラーの空気圧を変更して、型押しおよび/または圧延ローラーで材料を圧延すること(より高い圧力にはより高い耐久度が伴う。);接触法または非接触法、例えば赤外ヒータによりポリマー表面の温度を上げること(より高い温度にはより高い耐久度が伴う。);およびライン速度を変化させてポリマーの熱吸収速度を制御すること(より遅いライン速度にはより高い耐久度が伴う。)。
【0025】
耐久度を変更することにより、本発明のポリマーシートを、特定の製造工程に適するように、調製することができる。例えば、25から40の耐久度は、ニップロールプレプレス(nip roll pre press)を用いた工程に使用することができ、50から80の耐久度は、真空バッグプレプレスを用いた工程に使用することができる。
【0026】
十分に滑らかであり、上記に与えられた型押し前の値をもたらす―すなわち、十分に低い波打ち値および粗さ値を有する―ポリマーシートの製造は、以下に従って、ポリマーシートの従来の製造を変更することによって達成されうる:
ダイを用いてポリマーシートを製造する方法に関しては、極めて滑らかな層を、ダイのダイリップ(die lip)の温度を十分に上げて、前記型押し前の波打ち指数および粗さパラメータを有するシートを製造することによって製造しうる。さまざまな実施形態において、ダイリップの温度は、170℃から230℃、190℃から210℃、または195℃から205℃の間に維持される。
【0027】
ダイロール(die roll)を用いてポリマーシートを製造する用途に関しては、滑らかさは、例えば、クロムから製造された、表面粗さまたは波打ちをまったく、または殆ど有していない、鏡面仕上げのキャスティングロール(casting roll)を使用することおよび/または高いブレード温度を使用することによって達成されうる。他の実施形態は、鏡面仕上げのキャスティングロールを使用して同一効果をあげている。一般に、製造されたシートの波打ちは、ダイロール表面の波打ちに類似しており、したがって、ダイロールの波打ちは、仕上がりシートの所望の波打ちと等しい水準に維持されるはずである。勿論、当業者は、使用される製造パラメータは、使用されるポリマーメルトおよびポリマーシートを製造するために使用されている装置に依存するはずであるが、本発明による受け入れ可能な滑らかさは、製造パラメータを本明細書において開示された通りに変更することによって、容易に達成されうることを理解するはずである。
【0028】
滑らかなポリマーシートに粗さパターンを型押しする第2ステップは、例えばポリマーシートの1つの面または両方の表面上に、反対(「負の像」)のパターンを与える粗さパターンを有するローラーを使用することによるものを含む、適切ないかなる方法によってでも、実行されうる。このステップの正味の効果は、所望するより高い値にまで粗さ値を増大させることである。シートを誘導し、成形するために必要な場合は、1つまたはそれ以上の追加ローラーを、シートの押出し成形地点とこの方法のさまざまなステップとの間で使用することができる。
【0029】
本発明は、以下のさまざまな実施形態を含む:
さまざまな実施形態において、本発明は、上記で与えられたWIおよびRの型押し後の値を有する、少なくとも1つの表面を有するポリ(ビニルブチラール)などのポリマーシートを含む。本発明は、上記で与えられたWIおよびRの型押し後の値を有する、2つの表面を持つポリ(ビニルブチラール)などのポリマーシートをさらに含む。
【0030】
また、本発明は、上記で与えられたWIおよびRの型押し後の値を有する、1つまたは2つの表面を有する、ポリ(ビニルブチラール)などのポリマーシートを含み、層は他のいかなる層とも接触していず、いかなる積層にも配設されていない単一のポリマーシートである。
【0031】
さまざまな実施形態において、本発明は、合わせガラスにおいて使用する多層中間層を含み、この中間層は、表面をポリ(エチレンテレフタレート)などのポリマーフィルムに積層する以前に、上記で与えられたWIおよびRの型押し後の値を有する表面を持つポリ(ビニルブチラール)などのポリマーシートを備えている。
【0032】
本発明は、本発明の任意の方法によって製造された、任意のポリマーシートまたはポリマーシートおよびポリマーフィルムを有する多層中間層を含む。
【0033】
さまざまな実施形態において、本発明は、1つまたはそれ以上のポリマーフィルムまたはポリマーシートを有する積み重ねにおいて、本発明のポリマーシートを積み重ねること、および中間層を形成することを含む、多層ガラスパネルを製造する方法を含む。
【0034】
さまざまな実施形態において、本発明は、1つまたはそれ以上のポリマーフィルムまたはポリマーシートを有する積み重ねにおいて本発明のポリマーシートを積み重ねること、中間層を形成すること、次いで、2つのガラスの層の間に中間層を積層することによって多層ガラスパネルを形成することを含む、多層ガラス組立体を製造する方法を含む。これらのパネルは、これに限らないが、建築用ガラスおよび自動車用フロントガラスを含む、合わせガラス構造体の任意のタイプでありうる。
【0035】
さまざまな実施形態において、本発明は、本発明の任意のポリマーシートまたは中間層を備えたフロントガラスまたは窓を含む。
【0036】
さまざまな実施形態において、本発明は、ポリマーシートを形成すること(この際、ポリマーシートの両表面は、上記で与えられた型押し前の値を有する。)、2つの表面の1表面または2表面上でポリマーシートを型押しすること(この際、型押しによって、上記で与えられた型押し後の値を有する表面がもたらされる。)、およびポリマーシートをポリマーフィルムへ積層すること(この際、ポリマーフィルムは、ポリマーシートの型押しされた表面上に配設される。)を含む、多層中間層を製造する方法を含む。
【0037】
さらなる実施形態は、ポリマーフィルムを2つのポリマーシートの間に積層することを含み、この際、ポリマーフィルムに接触したポリマーシートの1つのまたは両方の表面が本発明によって製造される。さらなる実施形態は、記載されたばかりの3層中間層をガラスの2層の間に積層することを含む。さらなる例として、いくつかの実施形態は、1枚を超えるポリマーフィルム(例えば、ポリマーシート‖ポリマーフィルム‖ポリマーシート‖ポリマーフィルム‖ポリマーシートなどの構成体)を有することができる。
【0038】
さらなる実施形態において、ガラス‖ポリマーシート‖ポリマーフィルムの配置を有する構成体を、最初にポリマーシートおよびポリマーフィルムを積層させ、次いでこの組合せをガラスに積層することによって、またはこの3つ全部を同時に積層することによって、形成することができる。本発明の任意のポリマーシートを、この実施形態において使用することができる。この3層組立体が使用される従来の分野において、通常ポリ(エチレンテレフタレート)であるポリマーフィルム層は、ガラス‖シート‖フィルム‖シート‖ガラスの実施形態において使用されるポリマーフィルムよりも、通常厚い。この余分な厚さは、ポリマー層を支持するための、第2の剛性ガラス板を使用しない場合に出現しやすい変形およびこの結果生じる光学的欠点を阻止することのできる、より剛性であるフィルムを提供するために、一般に必要とされる。ガラス層、本発明のポリマーシート、およびポリマーフィルムを有する本発明の実施形態において、本発明のポリマーシートの優れた品質が、光学的欠点の低減を増進させるので、得られた3層ユニットは、比較的薄いポリマーフィルムを使用することができる。
【0039】
さらに本発明を使用して、勾配がついているまだら(gradient mottle)として知られている欠点を低減させることができる。勾配のついているまだらは、黒ずんだ色のポリ(ビニルブチラール)が、透明なポリ(ビニルブチラール)層内に共押出し成形されている勾配のついているポリ(ビニルブチラール)および類似のポリマーによって製造されたフロントガラスにおいて観察される欠点である。フロントガラスの勾配のついている(ぼかされている(shaded))部分は、不均一な、暗いおよび明るい領域を表すことができる。いくつかの製品においては、フロントガラスは、また、太陽から保護するためにポリ(エチレンテレフタレート)を含んでいる。この場合は、勾配のついているまだらとアップルソースとが、同時に出現しうる。
【0040】
顔料、染料、またはその他の作用物質を用いてフロントガラス内に暗い領域を作りだしている用途においては、例えば、本発明の方法を用いてポリマーシートを製造すると、さまざまな実施形態において、上記の型押し前および型押し後の値を有する製品がもたらされる。次いで、ガラス組立体中に勾配を有し、その他の層を有するまたは有しない、ポリマーシートを積層すると、勾配のついているまだらが減少する。したがって、本発明は、色の勾配を有するポリマーシートが本発明の方法により製造される実施形態、およびこのようにして製造されるポリマーシートを組み込んだ多層ガラスパネルを含む。
【0041】
さらなる実施形態は、互いに接触している、透明および着色ポリ(ビニルブチラール)の層からできている建築用の着色積層板に出現しうる、LAGまだらを改善する。LAGまだらは勾配のついたまだらと同様の外観を有する。本発明のさまざまな実施形態には、多重ポリマーシート層を有する建築用の多層ガラスパネルが含まれる。本発明のこれらの実施形態は、ポリマーシートの中の少なくとも1つが本発明の方法によって製造されている、2つまたはそれ以上のポリマーシートが、互いに、場合によりポリ(エチレンテレフタレート)などのポリマーフィルム層およびガラス層と、接触して積み重ねられ、次いで積層されて仕上がり製品となる、多重ポリマーシート構成体を製造するための方法を含む。これらの実施形態は、互いに接触して積層されている2つのポリ(ビニルブチラール)タイプのポリマーシートを含み、ポリマーシートの1つまたは両方が本明細書の他の場所において与えられる、型押し前および型押し後の値を有する1つまたは両方の表面を有することができ、ポリマーシートの1つまたは両方が染料を含むことができる。他の実施形態において、本発明のポリマーシートは、別のポリマーシートと接触して配設され、どちらのポリマーシートも顔料または染料を含まない。
【0042】
(ポリマーフィルム)
図1に示されているポリマーフィルム層16は、多層ガラスパネルにおいて性能強化層として従来通り使用されている、適切な任意の熱可塑性フィルムでありうる。さまざまな実施形態において、ポリマーフィルム層16は、0.013mmから0.20mm、好ましくは0.025mmから0.1mm、または0.04から0.06mmの厚さを有する。ポリマーフィルム層16は、場合により表面処理または被覆されて、接着または赤外線反射などの、1つまたはそれ以上の性質を改善することができる。これらの機能的性能層には、例えば、太陽光に曝された場合、太陽赤外線を反射し、可視光を透過させる多層積み重ね(multi−layer stack)が含まれる。この多層積み重ねは、当技術分野において知られており(例えば、WO88/01230および米国特許第4799745号を参照されたい。)、例えば、1つまたはそれ以上のオングストローム厚さの金属層および1つまたはそれ以上の(例えば、2つの)順番に堆積された、光学的に協調する誘電体層を含むことができる。これもまた知られているように(例えば、米国特許第4017661号および第4786783号を参照されたい。)、金属層を、関連している任意のガラス層を除霜または防曇するために、場合により電気的に抵抗加熱してもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、ポリマーフィルム層16は、光学的に透明(すなわち、層のある一面に隣接する物体を、別の側から層を通して見つめる特定の観察者の目が、快適に見ることができる。)であり、通常、隣接ポリマーシート14よりも大きな、いくつかの実施形態においては著しく大きな、引張り弾性率を、組成に関係なく有する。さまざまな実施形態において、ポリマーフィルム層16は、熱可塑性材料を含む。適切な特性を有する熱可塑性材料には、ナイロン、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、酢酸セルロースおよび三酢酸セルロース、塩化ビニルポリマーおよびコポリマーなどがある。さまざまな実施形態において、ポリマーフィルム層16は、知られた特性を有する再延伸熱可塑性フィルムなどの、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンテレフタレート)グリコール(PETG))を含む材料を含む。さまざまな実施形態において、ポリ(エチレンテレフタレート)が使用され、さまざまな実施形態において、ポリ(エチレンテレフタレート)は、2軸方向に延伸されて強度を向上させ、高温に曝された際に熱的に安定化されて低収縮特性をもたらす(例えば、150℃で30分保持した後の収縮は、両方向とも2%未満)。
【0044】
本発明が使用することのできる、ポリ(エチレンテレフタレート)フィルムのための、さまざまな被覆および表面処理技術は、公開された欧州特許出願番号0157030において開示されている。
【0045】
(ポリマーシート)
以下の節において、図1において要素14として示されたような、安全ガラスの中間層として有用な性質を有する、本発明のポリマーシートを形成するために使用することのできる、さまざまな材料(ポリ(ビニルブチラール)など)を説明する。
【0046】
本明細書において使用される「ポリマーシート」は、適切な任意の方法によって、合わせガラス構造体における中間層として使用するのに適した薄層に成形された、いかなるポリマー組成物をも意味する。本明細書において使用される「樹脂」は、酸触媒反応および続いて行われるポリマー前駆体の中和から得られる混合物から取り出されるポリマー(例えば、ポリ(ビニルブチラール))成分のことをいう。樹脂は一般に、ポリマー(例えば、ポリ(ビニルブチラール))に加えて、酢酸、塩、およびアルコールなどの他の成分を有する。本明細書において使用される「メルト」は、樹脂と可塑剤および場合によりその他の添加物との、融解された混合物のことをいう。
【0047】
本明細書において開示された方法によって製造されたポリマーシートは、本発明の一部であり、本発明の範囲内に含まれる。
【0048】
本発明のポリマーシートは、適切ないかなるポリマーをも含むことができ、好ましい実施形態においては、上で例示されたように、ポリマーシートはポリ(ビニルブチラール)を含む。ポリマーシートのポリマー成分として、ポリ(ビニルブチラール)を含む、本明細書に記載された本発明のいずれの実施形態においても、ポリマー成分が、ポリ(ビニルブチラール)からなる、または本質的になる別の実施形態が含まれている。これらの実施形態において、本明細書において開示された、可塑剤を含む添加物のいかなる変更をも、ポリ(ビニルブチラール)からなる、または本質的になるポリマーを有するポリマーシートに関して、用いることができる。
【0049】
一実施形態において、ポリマーシートは部分的に酢酸化されたポリ(ビニルアルコール)をベースとするポリマーを含む。別の実施形態において、ポリマーシートは、ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、これらの組合せなどからなる群から選択されたポリマーを含む。一実施形態において、ポリマーシートはポリ(ビニルブチラール)を含む。他の実施形態において、ポリマーシートは、可塑化ポリ(ビニルブチラール)を含む。さらなる実施形態において、ポリマーシートは、ポリ(ビニルブチラール)および1つまたはそれ以上のその他のポリマーを含む。適切なガラス転移温度を有するその他のポリマーも、また、使用することができる。ポリ(ビニルブチラール)に関して、(例えば、これに限らないが、可塑剤、成分の百分率、厚さ、および特性強化用添加物の)、好ましい範囲、値、および/または方法が、具体的に与えられる本明細書における節のいずれにおいても、これらの範囲は、適用可能な場合は、ポリマーシートにおける成分と同程度に有用である、本明細書において開示されたその他のポリマーおよびポリマーブレンドにも、また、当てはまる。
【0050】
ポリ(ビニルブチラール)を含む実施形態に関しては、ポリ(ビニルブチラール)は、ポリ(ビニルアルコール)(PVOH)を酸触媒の存在下でブチルアルデヒドと反応させ、次いで触媒を中和、分離、安定化し、樹脂を乾燥することを含む、周知のアセタール化プロセスによって製造することができる。
【0051】
さまざまな実施形態において、ポリ(ビニルブチラール)を含むポリマーシートは、ポリ(ビニルアルコール)として計算された10から35重量パーセント(wt%)のヒドロキシル基、ポリ(ビニルアルコール)として計算された13から30wt%のヒドロキシル基、またはポリ(ビニルアルコール)として計算された15から22wt%のヒドロキシル基を含む。ポリマーシートは、ポリビニルアセテートとして計算された、15wt%未満の残留エステル基、13wt%、11wt%、9wt%、7wt%、5wt%または3wt%未満の残留エステル基を含み、残部はアセタール、好ましくはブチルアルデヒドアセタールであるが、場合により、その他の少量のアセタール基、例えば、2−エチルヘキサナール基(例えば、米国特許第5137954号を参照されたい。)を含む。
【0052】
さまざまな実施形態において、ポリマーシートは、1モル当たり、少なくとも30,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、120,000、250,000、または少なくとも350,000グラム(g/moleまたはダルトン)の分子量を有する、ポリ(ビニルブチラール)を含む。ジアルデヒドまたはトリアルデヒドの少量を、アセタール化ステップの間に添加して、分子量を少なくとも350g/mまで増大させることができる(例えば、米国特許第4902464号;第4874814号;第4814529号;第4654179号を参照されたい。)。本明細書において使用される用語「分子量」は、重量平均分子量を意味する。適切な任意の方法を使用して、本発明のポリマーシートを製造することができる。ポリ(ビニルブチラール)を製造するための適切な方法の詳細は、当業者に知られている(例えば、米国特許第2282057号および第2282026号を参照されたい。)。一実施形態においては、B.E.Wade著、Encyclopedia of Polymer Science & Technology(2003年)、第3版、Volume 8、381〜399頁の、Vinyl Acetal Polymersの溶媒法を使用することができる。別の実施形態においては、前記文献の水性法を使用することができる。ポリ(ビニルブチラール)は、例えば、Butvar(ビューツバル)(商標)樹脂としてSolutia Inc.、ミズリー州セントルイスから、さまざまな形態で商業的に入手することができる。
【0053】
酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、およびマグネシウム塩を含む、さまざまな接着制御剤を、本発明のポリマーシートにおいて使用することができる。本発明の実施形態に対して使用することができるマグネシウム塩には、これに限らないが、米国特許第5728472号において開示されたもの(サリチル酸マグネシウム、ニコチン酸マグネシウム、マグネシウムジ−(2−アミノベンゾエート)、マグネシウムジ−(3−ヒドロキシ−2−ナフトエート)、およびマグネシウムビス(2−エチルブチレート)(ケミカルアブストラクト番号79992−76−0)など)が含まれる。本発明のさまざまな実施形態において、マグネシウム塩は、マグネシウムビス(2−エチルブチレート)である。
【0054】
添加物をポリマーシート中に取り入れて最終製品の性能を高めてもよい。このような添加物には、これに限らないが、当技術分野において知られているように、可塑剤、染料、顔料、安定剤(例えば、紫外線防止剤)、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、および前述の添加物の組合せなどが含まれる。
【0055】
本発明のポリマーシートのさまざまな実施形態において、ポリマーシートは、樹脂100部当たり(phr)、20から60、25から60、20から80、または10から70部の可塑剤を含むことができる。勿論、特定の用途に適切であるこの他の量を使用することができる。いくつかの実施形態においては、可塑剤は、20個未満、15個未満、12個未満または10個未満の炭素原子を有する、炭化水素セグメントを有することができる。
【0056】
可塑剤の量を調節して、ポリ(ビニルブチラール)シートのガラス転移温度(T)に影響を及ぼすことができる。一般に、可塑剤をより多く添加すると、Tが低下する。本発明のポリ(ビニルブチラール)ポリマーシートは、40℃以下の、35℃以下の、30℃以下の、25℃以下の、20℃以下の、および15℃以下のTを有することができる。
【0057】
適切な任意の可塑剤を本発明のポリマー樹脂に添加して、ポリマーシートを形成するようにすることができる。本発明のポリマーシートにおいて使用される可塑剤には、とりわけ、多塩基酸または多価アルコールのエステルが含まれる。適切な可塑剤には、例えば、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチルおよびノニルアジペートの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、油で改質されたセバシン酸アルキドなどのポリマー可塑剤、および米国特許第3841890号において開示されたものなどのホスフェートとアジペートとの混合物および米国特許第4144217号において開示されたものなどのアジペート、および前述したものの混合物および組合せが含まれる。使用することのできる他の可塑剤は、米国特許第5013779号に開示されたように、CからCのアルキルアルコールおよびCからC10の環式アルコールから製造された混合アジペートおよびヘキシルアジペートなどのCからCのアジピン酸エステルである。いくつかの実施形態において、可塑剤は、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)である。
【0058】
型押し前に、所望の波打ち指数および粗さ値を有するポリマーシートを製造するために、上記の工程に変更を加えて、ポリ(ビニルブチラール)ポリマーおよび可塑剤添加物を、当業者に知られている方法に従って熱的に処理してシート形状に成形することができる。ポリ(ビニルブチラール)シートを成形する1つの例示的な方法は、樹脂、可塑剤、および添加物を含む融解されたポリ(ビニルブチラール)(以後「メルト」)を、メルトをダイ(例えば、1つの寸法が、これと垂直な寸法よりも実質的に大きい開口部を有するダイ)に強制的に通すことによって、押出成形することを含む。ポリ(ビニルブチラール)シートを成形する別の例示的な方法は、メルトをダイからローラー上へ流し出し、樹脂を固化させ、引き続き固化された樹脂をシートとして取り出すことを含む。さまざまな実施形態において、ポリマーシートは、0.1から2.5ミリメートル、0.2から2.0ミリメートル、0.25から1.75ミリメートル、および0.3から1.5ミリメートル(mm)の厚さを有することができる。
【0059】
また、任意に組み合わされた、本明細書において開示された本発明のいかなるポリマー組成物シートの積み重ねまたはロールでも、本発明に含まれる。
【0060】
さらに、本発明は、本発明の任意のポリマーシート‖ポリマーフィルム実施形態と接触して配設された、通常、二酸化ケイ素を含有するガラスの層を含む、合わせ安全ガラスを含む。本発明の任意のポリマーシート‖ポリマーフィルム構成体が間に配設されている、ガラス板2枚を含む合わせ安全ガラスが、さらに含まれる。
【0061】
また、本発明には、フロントガラス、窓ガラス、および本発明の任意の多層構成体を含む他のガラス最終製品が含まれる。
【0062】
本発明が使用する、さまざまなポリマーシートおよび/または合わせガラスの特性および測定技法を、今から説明することにする。
【0063】
本明細書において使用される「波打ち指数」または「WI」および「粗さ値」または「R」は、以下に従って測定される:
を測定するために、可塑化ポリマーシートの15cm×15cmの試験試料を、プレートの中を通り抜けて循環する室温の流体によって制御されている真空プレート上に設置する。5psiの真空を印加して、試料をプレート表面に向けて引っ張る。PRK駆動ユニットおよびRFHTB−250トレーシング触針を備えた、型式S8PのPerthometer(Mahr Gage Co.、ニューヨーク州から入手可能)を用いて、試験試料のそれぞれの側のシート表面粗さを直接測定する。プロフィール選択を測定器の「R」に設定する。トレーシング触針が試料表面を横断して自動的に移動する。それぞれのトレースの長さは、2.5mmの7個の一連の測定長さLからなる17.5mmである。測定長さは12.5mmであり、最初および最後の部分を削除することにより得られた、5個の測定長さからなる。これらの5個の一連の測定長さLの、個々の粗さ深さの平均値が測定され、Rは10回のこのような測定の平均値であり、5回は、押出し成形の装置方向(MD)において測定され、5回は、装置方向と交差する方向(CMD)において測定される。個々の方向における2つの連続したトレース間の距離は、3mmである。
【0064】
波打ち指数(WI)を測定するために、上記のPerthometerを、プロフィール選択を「W」に設定して使用する。この測定では、56mmのトレーシング長さおよび40mmの測定長さを用いる。
【0065】
40mmの測定長さは、5個の8mmの測定長さからなる(端の2個の8mmの測定長さが排除される。)。Perthometerの背面に接続されたプラグからのデジタル出力を用いて、Perthometerからの変動する波打ち出力電圧の信号が、電子的にコンピュータへ供給される。10回のトレースが実施され、5回のトレースは押出し成形の装置の方向において行われ、5回のトレースは装置方向と交差する方向において行われ、2つの連続したトレース間の距離は3mmである。コンピュータにロードされ、本明細書において記載されているプログラムSub SmoothDataOは、10回のトレースの入力から1つのWI値を計算する。
【0066】
ポリマーシート表面のWI値が、次いで例えば、自動車のフロントガラスにおいて使用するために裁断されたシートから、シート表面上に隈無く均等に分配されたサンプリング点からの100個の単独WI値を平均することによって計算される。
【0067】
同じ計算は、反対側の表面について実施することができ、別の場所で示されているように、製造方法および所望の製品によって、同様のまたは異なる結果を生み出しうる。本発明のさまざまな実施形態において、得られた100個の値の少なくとも90個は、前記100個の値の平均値の±20%の範囲に、100個の平均値の±15%、±10%、±5%、または±2%の範囲内に収まる。特許請求の範囲において特段の指示がない限り、ポリマーシート表面の「WI値」が特許請求の範囲において与えられる場合、上記の測定法において得られた100個の値の少なくとも90個は、前記100個の値の平均値の±20%の範囲に収まる。
【0068】
上記のPerthometerを用いる場合、粗さの他の設定スイッチ位置は以下の通りである:フィルタ:GS、プロフィール:R、LC:N2.5mm、LT:17.5mm、VB:625マイクロメートル。波打ちの設定は以下の通りである:フィルタ:GS、プロフィール:W、LC:N8.0mm、LT:56mm、VB:625マイクロメートル。
【0069】
本発明のポリマーシートは、また、以下の技法に従って測定される「耐久度」によって特徴付けられる:型押しされたポリマーシートに関しては、型押しに先立って、ポリマーシートのR(R基底)を測定する。型押しの後で、2番目のR測定を行う(R最終)。型押しされていないポリマーシートに関しては、粗さ測定、R、を行い、R最終と表示し、R基底には値0が与えられる。型押しおよび非型押しシートに関しては、次に、12.7センチメートル平方の試料を、ポリマーシートから切り出す。ポリ(エチレンテレフタレート)の14センチメートル平方の断片を、水平面上に設置されている木枠(枠の周囲は、ポリマーシート試料より若干小さい。)上に設置する。次いで、ポリマーシート試料をポリ(エチレンテレフタレート)フィルムの上に設置し、次にポリ(エチレンテレフタレート)フィルムの別の断片をポリマーシートの上に設置する。次いで、第2の枠をポリマー層の最上面の上に設置する。次いで、枠をバインダクリップによって一緒にして締め付ける。次いで、枠およびポリマーの組立体を、予熱された加熱器内に100℃で5分間設置する。次いで、組立体を取り出し、放冷する。次に、ポリマーシート試料の別のR値を測定する(R100℃)。
【0070】
次に、耐久度を、以下の式に従って算出することができる:
【0071】
【数1】

【0072】
ポリマーシート、特にポリ(ビニルブチラール)シートの透明性は、シートを透過されない光の定量化であるヘーズ値を測定することによって、測定することができる。パーセントヘーズを、以下の方法に従って測定することができる。ヘーズの量を測定するための装置、ヘーズメータ、型式D25(Hunter Associates(レストン、バージニア州)から入手可能)を、C光源を用い、視野角2°において、ASTM D−1003−61(再認可1977)−手順Aに従って使用することができる。本発明のさまざまな実施形態において、パーセントヘーズは5%未満、3%未満、および1%未満である。
【0073】
ポメル(pummel)接着は、以下の技法に従って測定することができ、ポリマーシートのガラスに対する接着強度を定量化するために、本明細書において「ポメル」が参照される場合は、以下の技術を用いてポメルを測定する。2層のガラス積層板試料を、標準のオートクレーブ積層条件によって作製する。積層板を、約−17℃(0°F)まで冷却し、ガラスを破壊するために、手を使用してハンマーで打ちつける(ポメルする。)。次いでポリ(ビニルブチラール)シートに接着されていないすべての破損ガラスを除去し、ポリ(ビニルブチラール)シートに接着されている残りのガラスの量を、目視により標準のセットと比較する。標準は、さまざまな程度のガラスが、ポリ(ビニルブチラール)シートに接着されたまま残っている尺度に対応している。特に、ゼロのポメル標準においては、ポリ(ビニルブチラール)シートに接着されたまま残っているガラスは存在しない。10のポメル標準においては、ガラスの100%がポリ(ビニルブチラール)シートに接着されたまま残っている。本発明の合わせガラスパネルに関しては、さまざまな実施形態は、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも9または10のポメルを有する。その他の実施形態は、両端を含めて8から10の間のポメルを有する。
【0074】
ポリマーシートの「黄色指数(yellowness index)」は、以下に従って測定することができる:本質的に平面で平行である滑らかなポリマー表面を有する、厚さが1cmのポリマーシートの透明な、成形円板を形成する。指数は、可視スペクトルにおける分光光度計の光透過率から、ASTM法D1925「プラスチックの黄色指数の標準試験法(Standard Test Method for Yellowness Index of Plastics)」に従って測定される。数値は、測定された試料の厚さを用いて、1cmの厚さに合わせて修正される。さまざまな実施形態において、黄色指数は0.6、0.5、または0.25未満である。
【実施例1】
【0075】
第1の多層ガラスパネルを、以下の層により形成する:
ガラス‖ポリ(ビニルブチラール)‖ポリ(エチレンテレフタレート)‖ポリ(ビニルブチラール)‖ガラス(ただし、ポリ(エチレンテレフタレート)は、0.05mmのDupont Mylar(登録商標)であり、ポリ(ビニルブチラール)層は、それぞれ0.38ミリメートル厚さであり従来の技法によって製造されている。)。
【0076】
第2の多層ガラスパネルを、以下の層により形成する:
ガラス‖ポリ(ビニルブチラール)‖ポリ(エチレンテレフタレート)‖ポリ(ビニルブチラール)‖ガラス(ただし、ポリ(エチレンテレフタレート)は、0.05mmのDupont Mylar(登録商標)であり、ポリ(ビニルブチラール)層は、それぞれ0.38ミリメートル厚さであり本発明の方法によって製造されている。)。
【0077】
2つの多層ガラスパネルを主観的に解析すると、第1のパネルは目に見えるアップルソースを有するが、第2のパネルは目に見えるアップルソースを有していないことが示される。
【実施例2】
【0078】
0.76mm厚のポリ(ビニルブチラール)シート(第1シート)を、青く着色された顔料と共に共押出し成形する。このシートは、13,000のWIおよび15ミクロンのRを有する。このシートを40ミクロンのRおよび16,000のWIに型押しする。次いで、シートを2枚のガラス板の間に積層する。
【0079】
第2のポリ(ビニルブチラール)シートを、従来法によって製造すると、このシートは0.76mmの厚さおよび35のRを有する。この第2のシートも、2枚のガラス板の間に積層する。
【0080】
結果は、まだらが、第2のシートにおいて見られ、第1のシートにおいては見られないことを示す。画像ソフトウエアによれば、3.9のまだら値が第1のシートで得られるが、14.5のまだら値が、第2のシートで得られることが示された。
【0081】
本発明によって、他のさまざまなポリマーシートと一緒に用いた場合、優れた光学的性質を有するポリ(ビニルブチラール)シートおよび他のポリマーシートを提供することが今や可能である。アップルソースおよびまだらの問題は、本発明の方法、ポリマーシートおよび多層構成体を使用することによって、低減または解消することができる。
【0082】
本発明の実施形態を、さまざまな実施形態において説明してきたが、他の多くの変更が可能であり、これらの変更が本発明の範囲と精神の範囲内にあることが、当業者には明らかなはずである。
【0083】
本発明を例示的な実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、さまざまな変更をなしうることおよび同等物を本発明の要素と置換しうることを理解するはずである。加えて、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、多くの変更をなしうる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図された最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲に当てはまるすべての実施形態を含むものであることが意図されている。
【0084】
さらに、本発明のいかなる単一構成要素に与えられた、いかなる範囲、数値、または特性であっても、本発明のその他のいかなる構成要素に与えられた、いかなる範囲、数値、または特性とも、交換可能な場合は交換して使用し、本明細書全体を通じて与えられたように、構成要素のそれぞれについて決まった値を有する実施形態を構成することができることが理解されるはずである。例えば、可塑剤の与えられた任意の範囲を含むのみならず、与えられた任意の範囲の表面トポグラフィを含むポリマーシートを形成して、本発明の範囲の範囲内にある多くの変更を形成することができる。
【0085】
要約またはいかなる請求項の範囲内において与えられたいかなる図の参照番号も、単に説明する目的のためであり、特許請求された発明を、任意の図において示された、任意のある特定の実施形態に限定するものであると解釈されるべきではない。図は、特段の記述がない限り、縮尺率を示してはいない。
【0086】
本明細書において参照された、定期刊行物の論文、特許、特許出願、および書籍を含むそれぞれの参考資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】積層されたポリマーシート‖ポリマーフィルム構成体の概略図を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(ビニルブチラール);および
可塑剤を含むポリマーシートであり、前記ポリマーシートが、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数、少なくとも20マイクロメートルのR値、および10から95の間の耐久度を有する表面を有する、ポリマーシート。
【請求項2】
他のどの層とも接触して配設されていない、請求項1のポリマーシート。
【請求項3】
前記R値が少なくとも30である、請求項1のポリマーシート。
【請求項4】
前記R値が少なくとも35である、請求項1のポリマーシート。
【請求項5】
20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数、少なくとも20マイクロメートルのR値、および10から95の間の耐久度を有する第2の表面を有する、請求項1のポリマーシート。
【請求項6】
ポリ(ビニルブチラール)および可塑剤を含む第1ポリマーシートを形成するステップ(前記第1ポリマーシートは第1表面および第2表面を有し、かつ前記第1表面は、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数、少なくとも20マイクロメートルのR値、および10から95の間の耐久度を有する。);
ポリマーフィルムの層を、前記第1ポリマーシートの前記第1表面に接触させて配設し、積み重ねを形成する配設ステップ;ならびに
前記積み重ねを積層するステップ
を含む、多層中間層を製造する方法。
【請求項7】
前記波打ち指数が15,000平方マイクロメートル未満である、請求項6の方法。
【請求項8】
前記波打ち指数が12,000平方マイクロメートル未満である、請求項6の方法。
【請求項9】
前記ポリマーフィルムが、ポリ(エチレンテレフタレート)を含む、請求項6の方法。
【請求項10】
前記R値が少なくとも30である、請求項6の方法。
【請求項11】
前記R値が少なくとも35である、請求項6の方法。
【請求項12】
前記積層に先立ち、ポリ(ビニルブチラール)および可塑剤を含む第2ポリマーシートを、前記第1ポリマーシートの反対側に前記ポリマーフィルムに接触させて、前記積み重ねに追加するステップをさらに含み、前記ポリマーフィルムに接触して配設される前記第2ポリマーシートの表面が、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数、少なくとも20のR値、および10から95の間の耐久度を有する、請求項6の方法。
【請求項13】
前記積層に先立ち、ガラスの第1層を、前記ポリマーフィルム層の反対側に前記第1ポリマーシートに接触させて、前記積み重ねに追加するステップと、ならびにガラスの第2層を、前記ポリマーフィルム層に反対側の前記第2ポリマーシートに接触させて前記積み重ねに追加するステップとをさらに含む、請求項12の方法。
【請求項14】
前記第1ポリマーシートを形成するステップが、
ポリ(ビニルブチラール)および可塑剤を含む滑らかなポリマー層(前記滑らかなポリマー層は、15,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数および15マイクロメートル未満のR値を有する第1表面を有する。)を形成するステップ、ならびに
前記第1表面に粗さパターンを型押しして前記第1ポリマーシートを製造するステップを含む、請求項6の方法。
【請求項15】
前記滑らかなポリマーシートの前記形成が、ダイリップ温度170℃から230℃のダイを使用することを含む、請求項14の方法。
【請求項16】
前記滑らかなポリマーシートの前記形成が、鏡面ダイロールを使用することを含む、請求項15の方法。
【請求項17】
前記第2表面が、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数、少なくとも20マイクロメートルのR値、および10から95の間の耐久度を有する表面を有する、請求項6の方法。
【請求項18】
ポリマーシートの製造方法であり、
ポリ(ビニルブチラール)および可塑剤を含む層(前記層は、第1表面および第2表面および前記第1表面上で20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数および20マイクロメートル未満のRを有する。)を形成するステップ、ならびに
前記層の前記第1表面を粗さパターンで型押しして前記ポリマーシート(前記ポリマーシートは、前記層の前記第1表面に対応する側で、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数および少なくとも20マイクロメートルのR値および10から95の間の耐久度を有する。)を製造するステップを含む、方法。
【請求項19】
前記ポリマーシートの前記波打ち指数が15,000平方マイクロメートル未満である、請求項18の方法。
【請求項20】
前記ポリマーシートの前記波打ち指数が12,000平方マイクロメートル未満である、請求項18の方法。
【請求項21】
前記ポリマーシートの前記R値が、少なくとも30である、請求項20の方法。
【請求項22】
前記ポリマーシートの前記R値が、少なくとも35である、請求項18の方法。
【請求項23】
前記ポリマーシートの前記耐久度が、少なくとも50である、請求項18の方法。
【請求項24】
前記層の前記R値が、5マイクロメートル未満である、請求項18の方法。
【請求項25】
前記層の前記第2表面を粗さパターンで型押しすることをさらに含み、前記ポリマーシートが、前記層の前記第2表面に対応する側で、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数、および少なくとも20マイクロメートルのR値を有する、請求項18の方法。
【請求項26】
ポリ(ビニルブチラール)および可塑剤を含む第1ポリマーシート(前記第1ポリマーシートは第1表面および第2表面を有し、ならびに前記第1表面は、20,000平方マイクロメートル未満の波打ち指数、少なくとも20マイクロメートルのR値、および10から95の間の耐久度を有する。)を形成するステップ;
ポリマーフィルムの層を、前記第1ポリマーシートの前記第1表面に接触させて配設して、積み重ねを形成するステップ;
ガラス層を、前記ポリマーフィルムの反対側に前記ポリマーシートに接触させて配設するステップ;ならびに
前記積み重ねを積層するステップ
を含む、多層パネルを製造する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−531770(P2008−531770A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556426(P2007−556426)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/006357
【国際公開番号】WO2006/091707
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(500276390)ソリユテイア・インコーポレイテツド (43)
【Fターム(参考)】