説明

低シリカ/アルミナ比を有する菱沸石ゼオライト触媒

低シリカ/アルミナ比を有するCHA結晶構造を有するゼオライト触媒、該触媒を組み込む物品およびシステム、ならびにそれらの調製方法および使用方法が、開示される。該触媒を使用して、排気ガス流からのNOx、特に、ガソリンまたはディーゼルエンジンから発するものを低下させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年11月6日出願の米国仮出願第61/111,960号の利益を主張し、その全体の内容が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、CHA結晶構造を有するゼオライト、その調製方法、ならびにこのようなゼオライトを含む触媒物品およびシステムに関する。より具体的には、本発明の実施形態は、CHAゼオライト触媒、その調製方法、および排気ガス処理システムにおけるこの触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ゼオライトは、ゼオライトのタイプおよびゼオライト格子中に含まれるカチオンのタイプおよび量に依存して、典型的には、直径が約3〜10オングストロームの範囲である、比較的均一な孔径を有するアルミノシリケート結晶材料である。合成および天然の両方のゼオライト、ならびに酸素の存在下のアンモニアによる酸化窒素の選択的還元反応を含む、特定の反応の促進におけるそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0004】
触媒としての使用が見出されているある特定のゼオライトは菱沸石(CHA)である。その調製方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Zonesの米国特許第4,544,538号は、SSZ−13として知られる菱沸石の高シリカ形態(Si/Al比が約15〜30)の合成方法を開示している。これは、高温(約150℃)および自己圧での有機的にテンプレートされた(N55N−トリメチル−1−アダマントアンモニウム)熱水合成を用いて調製される。
【0005】
高シリカSSZ−13CHAを調製するために使用される有機的にテンプレートされた熱水合成プロセス以外のプロセスを通じて、CHA触媒を得るおよび/または調製することが所望される。このように、より手頃かつ経済的な方法で、CHA触媒を得るおよび/または調製することが可能である。さらに、CHA触媒は有機的にテンプレートされた熱水合成を使用しない供給源から得られた。
【発明の概要】
【0006】
本発明の態様は、CHA結晶構造(International Zeolite Associationにより定義される)を有するゼオライト、このようなゼオライトを調製するためのプロセス、このようなゼオライトを含む触媒物品、ならびにこのような触媒物品を組み込む排気ガス処理システムおよび方法を対象とする。本触媒物品は、特にガソリンまたはディーゼルエンジンから放出される、排気ガス流を処理するために使用される排気ガス処理システムの一部であり得る。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、NOxを低下させるように機能する基材上に配置されたCHA結晶構造を有するゼオライトを含む触媒物品を対象とし、前記ゼオライトは、低シリカ菱沸石であり、低アルカリ含有量を有する。このゼオライトは低シリカ/アルミナ比、例えば約15未満、より具体的には約10未満、さらに具体的には約5未満を有する。ゼオライトの配置には、例えば、ハニカム基材、発泡基材、およびすすフィルタを含むいずれの基材も使用することができる。
【0008】
幾つかの実施形態では、ゼオライトは非合成の、天然に存在するBowie菱沸石等のゼオライト菱沸石である。他の実施形態では、ゼオライトは合成菱沸石である。ゼオライトは1つもしくは複数の金属カチオンで修飾することができる。好適な金属には、銅、鉄、およびコバルトを含むが、これらに限定されない、任意の酸化還元活性金属が含まれる。ゼオライトは、イオン交換等の当該技術分野で知られる任意の方法で修飾することができる。
【0009】
本発明の別の態様は、NOxを低下させるように機能する基材上に配置されたCHA結晶構造を有するゼオライトを含む触媒物品を含む、排気ガス処理システムを対象とし、このゼオライトは、低シリカ菱沸石である。様々な実施形態では、触媒物品は、酸化触媒、SCR触媒、AMOX触媒、すすフィルタ等のガス処理構成成分と流体連結している。
【0010】
本発明の別の態様は、ガス流中のNOxを低下させるためのプロセスを対象とし、本プロセスは、ガス流を、NOxを低下させるように機能する基材上に配置されたCHA結晶構造を有するゼオライトを含む請求項1に記載の触媒物品と接触させることを含み、このゼオライトは、低シリカ菱沸石である。幾つかの実施形態では、ガス流がNH3の存在下で排気物品と接触され、それによって選択的触媒還元(SCR)システムを提供する。
【0011】
本発明の別の態様は、物品にウォッシュコートとして、CHA結晶構造を有するゼオライトを塗布することを含む、触媒物品を調製するためのプロセスを対象とし、このゼオライトは低シリカ菱沸石であり、本明細書に記載されるような低アルカリ含有量を有する。幾つかの実施形態では、ウォッシュコートは結合剤をさらに含む。さらに他の実施形態では、ウォッシュコートは耐火性金属酸化物担体を含む。白金族基の構成成分は、さらなる触媒機能のために耐火性金属酸化物担体上に配置されてもよい。
【0012】
幾つかの実施形態では、触媒物品のゼオライトは、アルミナ源、シリカ源、ならびにナトリウム、カリウム、およびTMAのうちの1つもしくは複数の源を混合し、水性ゲルを形成することと、加熱することによってそのゲルを結晶化し、ゼオライトを形成することと、を含む、プロセスによって提供される。特定の実施形態では、本プロセスは約100℃以下の温度で、大気圧で実行される。他の実施形態では、ゼオライトは、例えばKOH、NaOH、およびテトラメチルアンモニウム水酸化物の存在下で、有機的にテンプレートされた熱水合成プロセスを用いて提供され得る。1つもしくは複数の実施形態では、触媒物品のゼオライトは、CHA結晶構造を有し、以下でさらに記載されるように、15を超えるシリカ/アルミナのモル比を有するゼオライト等の第2のゼオライトと混合される。
【0013】
本発明の別の態様は、上述のタイプの触媒を作製する方法であって、溶液と共に初期アルカリ含有量を含有する前記CHA結晶構造を有するゼオライトのアルカリ形態をイオン交換し、前記アルカリ含有量を低下させることと、前記アルカリ含有量の低下に伴って、前記イオン交換したゼオライトを焼成し、焼成ゼオライトを提供することと、続いて、前記アルカリ含有量をさらに低下させるために、溶液を用いて前記焼成ゼオライトをイオン交換し、約15未満のシリカ/アルミナのモル比および約3質量パーセント未満のアルカリ含有量を有する前記ゼオライトを提供することと、を含む方法に関連する。特定の実施形態では、該溶液はアンモニウム塩溶液であり、前記焼成は、少なくとも約350℃の温度で、少なくとも約1時間生じる。1つもしくは複数の実施形態では、方法は、鉄または銅溶液を用いて金属イオン交換を行い、金属促進性のゼオライトを提供することをさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従って作製された新鮮なおよび熟成したCuSynCHA SCR触媒物品の、温度に対するNOx変換(%)の標準化されたデータを、Fe−β SCR触媒物品と比較して表したグラフである。
【図2】本発明の実施形態に従って作製された新鮮なおよび熟成したCuNatCHA SCR触媒物品の、温度に対するNOx変換(%)を、新鮮なおよび熟成したFe−β SCR触媒物品と比較して表したグラフである。
【図3】本発明の実施形態に従って作製された新鮮なおよび熟成したCuNatCHA SCR触媒物品の、温度に対するNOx変換およびN2O作製を表したグラフである。
【図4A】本発明に従って作製された触媒物品を含む様々な排気ガス処理システムを表す。
【図4B】本発明に従って作製された触媒物品を含む様々な排気ガス処理システムを表す。
【図4C】本発明に従って作製された触媒物品を含む様々な排気ガス処理システムを表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の幾つかの例示的実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスのステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態および様々な様式で実践または実行され得る。
【0016】
本発明の態様は、CHAゼオライト、およびSCR触媒等の触媒物品におけるその使用を対象とする。かかる触媒物品は、排気ガス流、特にガソリンまたはディーゼルエンジンから発するものの処理に特定の実用性が見出される。出願者は、本明細書で開示されるプロセスによって作製された触媒物品が、広い温度範囲にわたって優れた熱水安定性および高い触媒活性を示すことを見出した。本分野における用途を見出す他のゼオライト触媒と比較して、本発明の実施形態に関するFe−βゼオライト、CHA触媒物品等は、改善された低温活性および熱水安定性を提示する。さらに、本明細書で開示されるCHA触媒物品は、SSZ−13CHA触媒より手頃で経済的な方法で調製され得る。以前は、低Si/Al比のCHAゼオライトはNOx還元触媒として使用されるのに十分なNOx変換および/または熱水安定性を示さないと考えられていた。1つもしくは複数の本発明の実施形態によれば、低アルカリ含有量の低Si/Al比のCHAゼオライトは、良好な熱水安定性および少なくとも約50%を超えるNOx変換を示す。
ゼオライト
【0017】
本明細書で示す触媒物品を調製するために使用されたゼオライトは、CHA結晶構造を有する。特定の実施形態では、CHAゼオライトのSi/Al比は低く、より具体的にはSSZ−13CHAのものより低い。CHAゼオライトのSi/Al比は、具体的には約15未満、より具体的には約10未満、さらに具体的には約5未満である。出願者は、そのようなCHAゼオライトが、迅速かつ経済的に天然資源から得られるか、またはSSZ−13CHA等の高Si/Al比でCHAゼオライトを調製するために使用されるプロセスとは異なるプロセスを用いて合成的に調製可能であることを見出した。1つもしくは複数の実施形態では、CHAゼオライトは低Si/Al比および低アルカリ含有量も有する。本明細書で使用される、アルカリ含有量は、ゼオライト中のカチオンとして存在する、ナトリウム、カルシウム、およびカリウムのそれぞれの酸化物に関して、質量%ベースで表現される。1つもしくは複数の実施形態では、このようなCHAゼオライトは、NOx還元触媒としての使用に良好な熱水安定性およびNOx変換を示す。
【0018】
したがって、幾つかの実施形態では、CHAゼオライトは、非合成の、天然に存在するゼオライトである。任意の天然菱沸石を使用することができる。1つの特に有用な形態はBowie菱沸石である。幾つかの実施形態では、天然菱沸石は処理前に精製される。他の実施形態では、天然菱沸石は、精製されずに使用され、HCまたはS中毒の標的としての触媒効果を提供することができ、それにより触媒物品の不活性化を防止することができる。
【0019】
天然菱沸石の代替物として、ゼオライトは合成CHAであってもよい。具体的な実施形態において、合成CHAゼオライトを調製するために使用されるプロセスは、SSZ−13CHA等の高シリカCHAゼオライトの調製に使用される有機的にテンプレートされた熱水合成を使用しないプロセスである。菱沸石の合成形態は、アルミナ源、シリカ源、ならびにナトリウム、カリウム、およびトリメチルアンモニウム(TMA)のうちの1つもしくは複数の源を混合し、水性ゲルを形成すること、ならびに加熱することによってそのゲルを結晶化し、ゼオライトを形成することを含む、プロセスによって調製され得る。典型的なシリカ源は、種々のタイプのヒュームドシリカ、沈降シリカ、およびコロイド状シリカ、ならびにシリコンアルキキシドを含む。典型的なアルミナ源は、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムサルフェート等のアルミニウム塩、およびアルニミウムアルコキシドを含む。水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを反応混合物に加えてもよいが、必要ではない。具体的な実施形態では、本プロセスは約100℃以下の温度および大気圧で実行される。しかしながら、特定のSi/Al比を有する好適な合成CHAは、有機的にテンプレートされた熱水合成を用いて、KOH、NaOH、およびテトラメチルアンモニウム水酸化物等の存在のもとで得られることが見出された。
【0020】
合成反応の終わりに、CHA生成品は一般的に濾過され、水で洗浄される。その代わりに、生成品を遠心分離してもよい。有機添加剤を使用し、固体生成物の処理と分離を補助することができる。生成物の処理において、任意にスプレー乾燥工程を行うことができる。固体生成物は一般的に空気または窒素中で熱的に処理される。その代わりに、種々のシーケンスで、各ガス処理を施してもよく、またはガスの混合物を施してもよい。生成品は焼成してもよい。典型的な焼成温度は、400〜700℃の範囲である。
【0021】
天然または合成菱沸石は1つもしくは複数の金属カチオンで修飾することができる。好適な金属には、銅、鉄、およびコバルトを含むが、これらに限定されない、任意の酸化還元活性金属が含まれる。修飾菱沸石の1つの具体的な形態はCu−CHAである。Cu−修飾天然CHAは、本明細書で「CuNatCHA」と称され、一方Cu−修飾合成CHAは、本明細書で「CuSynCHA」と称される。ゼオライトは、イオン交換等の当該技術分野で知られるいずれの方法で修飾されてもよい。
【0022】
本発明の一態様では、低Si/Al比を有するCuNatCHAおよびCuSynCHAが比較的低いアルカリ含有量を提供する。一実施形態では、アルカリ含有量は約6質量パーセント未満であり、より具体的には約3質量パーセント未満、約2質量パーセント未満、約1質量パーセント未満、約0.5質量パーセント未満、約0.1質量パーセント未満、または0.05質量パーセント未満の量で存在する。アルカリ含有量は、種々の手順で所望のレベルまで低下させることができる。典型的な実施形態では、ゼオライトのアルカリ形態をイオン交換することができ、次に焼成を行い、続いて次のイオン交換を行なうことができる。本明細書で使用されるゼオライトの「アルカリ形態」は、NaまたはK等のアルカリ金属含有物を含むゼオライトを指す。具体的な実施形態では、複数のイオン交換、例えば、2、3、4、または5回の交換が、焼成の前に発生する。具体的な実施形態では、イオン交換は硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩を用いて実行され、ゼオライトのアンモニウム形態を提供する。他の好適な塩には、アンモニウム、アセテート、カーボネート、塩化物、クエン酸塩、硫酸塩、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。具体的な実施形態では、焼成は温度が少なくとも約350℃、400℃、少なくとも約450℃、少なくとも約500℃、または約540℃で、少なくとも約1、2、3、または4時間実行される。高温は例えば600℃、650℃、700℃、および約1000℃までの温度で、アンモニウムイオン交換の後の焼成で利用することができる。具体的な実施形態では、焼成は硝酸アンモニウムを使用した1回のイオン交換の後、540℃で少なくとも2時間実行され、続いて少なくとも2回起こるイオン交換は低アルカリ含有量のゼオライトを提供するよう実行される。複数のイオン交換の後、焼成し、焼成後に少なくとも1回のイオン交換を実施するというシーケンスは、ゼオライトのアルカリ含有量を大幅に低下させることが見出された。具体的な実施形態では、アルカリ含有量は約6、5、3、1、0.5、0.1、または0.01質量パーセント未満に減少される。ゼオライトのアルカリ酸化物質量パーセントの減少は、低Si/Al比および低アルカリ含有量のCuNatCHAおよびCuSynCHAを提供し、排気ガス流中のNOxを少なくとも約50%超減少させることを示す。
【0023】
1つもしくは複数の実施形態では、触媒物品は低Si/Al比(例えば、15または10未満)を有するCuNatCHAまたはCuSynCHAが、比較的低いアルカリ含有量(例えば、約6質量パーセント、3質量パーセント、1質量パーセント、または0.5質量パーセント未満)で、シリカ/アルミナ比が15より高く、例えばSSZ−13のようなCHA結晶構造を有するゼオライトと混合されたものも提供することを含む。この混合物は所望のNOx還元および熱水安定性を得るために任意の好適な各ゼオライト量を含むことができる。例えば、この混合物は約15より高いシリカ/アルミナ比のCHA結晶構造を有するゼオライトを、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%、または90質量%まで含むことができる。望ましくは、ゼオライトは鉄または銅等の金属で促進され得る。ゼオライト類の混合物は、2種のゼオライト粉の個々のスラリーを形成、およびそのスラリーを混合、またはその2種の粉から1つのスラリーを形成することで獲得される。CHA結晶構造を有する特に好適なゼオライトは、約15より大きいシリカ/アルミナのモル比を有し、約0.25超の銅/アルミニウムの原子比を有する。より具体的には、シリカ/アルミナのモル比が約15〜約256で、例えば15〜40または約30、および銅/アルミニウムの原子比が約0.25〜約0.50、より具体的には約0.30〜約0.50、例えば0.40である。このゼオライトの実施例は、米国特許番号7,601,662で開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0024】
実験は、本発明の実施形態に従う触媒物品の性能の改良が、Cuの装填量に関連していることを示した。ゼオライトの構造内の交換部位に結合したCuのレベルを上げるためにCuを交換することができるが、非交換Cuを塩の状態、例えばCuSO4の状態でゼオライト触媒内に残すことが有利であることが見出された。焼成されると、銅塩は、本明細書で「遊離銅」または「溶解性銅」と知られるものに分解される。1つもしくは複数の実施形態では、この遊離銅は、活性かつ選択的であり、NOxを含むガス流の処理に使用した場合には、N2Oの形成を減らす。予期しないことであったが、この遊離銅は、約800℃以下の温度での熱的熟成に付した触媒を安定化させることが見出された。
【0025】
基材
幾つかの本発明の実施形態に関し、CHAゼオライトは自立触媒粒子の形態となり得る。しかし、具体的には、CHAゼオライト触媒は触媒物品を提供するため基材上に配置される。基材は、触媒を調製するために使用されるいかなるものであってもよく、そして通常、セラミックまたは金属のハニカム構造を含む。適切ないかなる基材も使用してよく、例えば基材の入口面または出口面から基材を通して伸びる微細で平行なガス流通路(該ガス流通路は開口しており、流体が通路を流れることができる)を有するモノリス基材(ハニカム流通基材と称される)を使用することができる。その流体入口から流体出口まで本質的に直線である通路は、壁部によって画定されており、この壁部に触媒物品がウォッシュコートとして配置され、これにより通路を流れるガスが触媒物品と接触する。モノリス基材の流体通路は薄壁の流路であり、該流路は、台形、長方形、四角形、正弦曲線、六角形、長円形、円形等の適切ないかなる断面形状および大きさを有していてもよい。このような構造は、断面の1平方インチ当たり、約60〜約400またはそれ以上の入口開口部(すなわちセル)を含んでいてもよい。
【0026】
基材は、流路が交互に閉塞されており、そして一方向(入口方向)から流路に入るガス状流を、流路壁を通って流し、そして他方向(出口方向)から、流路から出す構成の壁流フィルタ基材も可能である。壁流基材が使用された場合、得られるシステムは、ガス状汚染物質の他に、粒子状物質も除去することができる。壁流フィルタ基材は、コージライト、アルミニウムチタネートまたはシリコンカーバイド等の当該技術分野では公知の材料から作ることができる。壁流基材に触媒組成物を装填することは、基材の特性、例えば多孔度および壁の厚さに依存し、そして典型的には、その装填量は、流通基材への装填量よりも少ないことが理解される。
【0027】
セラミック基材は、適切ないかなる耐火材料から作製してもよく、適切な耐火材料は、例えば、コージライト、コージライト−アルミナ、シリコンニトライド、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ−シリアマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、葉長石、アルファ−アルミナ、アルミナシリケート等である。
【0028】
基材は、本質的に金属であってもよく、そして1種もしくは複数種の金属または金属合金で構成されていてもよい。金属基材は、種々の形状、例えば波形シートまたはモノリス状態であり得る。適切な金属担体には、耐熱金属および金属合金、例えばチタンおよびステンレス鋼、ならびに鉄が主体の(または鉄が大部分を占める)他の合金が含まれる。このような合金は、1つもしくは複数のニッケル、クロム、および/またはアルミニウを含んでもよく、これらの金属の合計量は、合金の少なくとも15質量%、例えば10〜25質量%のクロム、3〜8質量%のアルミニウムおよび20質量%以下のニッケルを含むことが有利である。合金は、少量または微量の1種もしくは複数種の金属、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタン、およびこれらに類するものを含んでもよい。金属基材の表面を、高温、例えば1000℃以上で酸化し、基材の表面上に酸化物層を形成することにより、合金の腐食に対する抵抗性を改良してもよい。このような高温起因の酸化は耐火性金属酸化物担体および触媒的に促進する金属成分の基材への付着力を高める。
【0029】
代替的な実施形態において、CHAゼオライト触媒は開放気泡フォーム基材上に配置されてもよい。このような基材は、当該技術分野では公知であり、そして典型的には、耐火セラミックまたは金属材料で形成されている。これらの触媒も、触媒すすフィルタを調製するためにすすフィルタ上に配置されてもよい。
ウォッシュコートの調製
【0030】
本発明の実施形態の触媒物品は、一般に、基材にウォッシュコートとして、CHAゼオライトを塗布することによって調製される。CHAゼオライトのウォッシュコートは、バインダーを使用して調製することができる。1つもしくは複数の実施形態によれば、適切な前駆体、例えばジルコニルアセテートまたは任意の他の適切なジルコニウム前駆体、例えば硝酸ジルコニルから誘導されるZrO2バインダーが使用される。一実施形態において、ジルコニルアセテートバインダーは、均質性を保持し、熱的熟成の後、例えば、触媒が、少なくとも約600℃、例えば、約800℃以上で、約10%以上の高水蒸気の環境に曝された場合に損なわれていない触媒被覆を提供する。弛んだ、または遊離した被覆物は、CSFの下流を塞ぎ、背圧が増加する原因を引き起こし得るため、ウォッシュコートを損なうことなく保持することは有利である。
【0031】
1つもしくは複数の本発明の実施形態において、CHAゼオライト触媒は、貴金属成分、すなわち、白金族金属成分を含む。例えば、以下に論じられるように、アンモニア酸化(AMOX)触媒は、典型的には、白金族金属成分を含む。適切な白金族金属成分は、白金、パラジウム、ロジウム、およびこれらの混合物を含む。触媒材料の幾つかの成分(例えば、CHAゼオライトおよび貴金属成分)を、耐火物担体部材、すなわち基材に、2種以上の成分のウォッシュコート混合物として、または個々のウォッシュコート成分を連続するステップで、触媒製造の分野の当業者にとって容易に理解できる方法で、塗布してもよい。これは、微細な粒子状の耐火性金属酸化物担体材料、例えば、ガンマアルミナを、1種もしくは複数種の触媒金属成分、例えば貴金属、すなわち白金族金属、または他の貴金属もしくは卑金属に浸漬させ、乾燥させ、および浸漬した担持粒子を焼成し、およびこれら粒子の水性スラリーを形成することによって達成され得る。CHAゼオライトの粒子は、このスラリーに含まれ得る。触媒成分を活性化したアルミナの上に分散させる前に、活性化したアルミナを熱的に安定化させてもよく、この熱的な安定化は、当該技術分野では公知のように、例えば、バリウム、ランタン、ジルコニウム、希土類金属の溶解性の塩または他の適切な安定剤前駆体の溶液に浸漬させ、次に乾燥(例えば、110℃で1時間)させ、そして浸漬させて活性化したアルミナを、焼成(例えば、550℃で1時間)させてアルミナ上に分散した安定化金属酸化物を形成することにより行ってもよい。卑金属触媒を、任意に活性化アルミナに含浸させてもよく、例えば、卑金属の溶液をアルミナ粒子に含浸させ、焼成してアルミナ粒子に分散した卑金属酸化物を得てもよい。
【0032】
そして、基材をCHAゼオライト、バインダー、および含浸させた活性化アルミナ、または他の担持粒子(または非担持貴金属)のスラリーに浸漬させ、そして余分のスラリーを除去し、基材のガス流通路の壁にスラリーの薄い被覆(被膜)を設けてもよい。代替的に、担持または非担持貴金属およびCHAゼオライトは、別々のスラリーとして塗布される。ハニカムモノリス基材に堆積された場合、触媒組成物は、少なくとも約0.5g/in3、例えば約1.3g/in3、約2.4g/in3またはそれ以上の濃度で堆積され、NOx還元が達成され、および長期の使用にわたり、触媒物品の適切な耐久力が達成される。そして、被覆基材は乾燥され、一般的に焼成され、触媒物質付着の被覆をそれらの通過壁に提供する。1層もしくは複数層の追加的なスラリーの層を担体に設けてもよい。各層を塗布した後、または幾つかの所望の層を塗布した後、次に担体を乾燥し、そして焼成して、本発明の一実施の形態に従う、仕上げられた触媒物品が得られる。
【0033】
触媒物品
本発明の触媒物品は、排気ガス流、特に、ガソリンまたはディーゼルエンジンから発せられる排気ガス流の処理に特定の実用性が見出されている。使用時、排気ガス流は、本発明の実施形態に従って調製された触媒物品と接触する。以下に論じられるように、該触媒物品は、広範な動作温度にわたって卓越してNOx還元を活性化する。そのため、該触媒物品は、SCR触媒として有用である。「SCR」触媒という用語は、還元剤と窒素酸化物の触媒反応が起こり、窒素酸化物を還元する、選択的触媒還元を意味するために、広い意味で本明細書に使用される。また、「還元体」または「還元剤」も、昇温で、NOxを還元するあらゆる化学物質または化合物を意味するために、本明細書では広い意味で使用される。特定の実施形態において、該還元剤は、アンモニア、特にアンモニア前駆体、すなわち、尿素であり、該SCRは、窒素還元体SCRである。しかしながら、本発明の広い範囲では、該還元剤は、燃料、特にディーゼル燃料、およびその留分、および集合的にHC還元体と称されるいかなる炭化水素および酸化炭化水素も含み得る。
【0034】
反応を完了させるのを助長し、およびガス状流中のアンモニアの不適切な混合を克服するのを助けるために、理論上は、SCRプロセスでは、存在するNOxを完全に反応させるのに必要とされる化学量論的量を超える還元体(すなわち、アンモニア)を供給することが望ましい。しかしながら、実際には、触媒から大気への未反応アンモニアの排出自体が、空気汚染問題を発生させるため、このような化学量論的量を上回る、かなりの量の過剰なアンモニアは、通常では供給されない。未反応アンモニアのこのような排出は、アンモニアが化学量論的量または半化学量論的量でのみ存在する場合でも発生し得、ガス状流中のアンモニアの不完全な反応および/またはアンモニアの混合不良の結果として、そこに高アンモニア濃度のチャネルの形成を生じる。このようなチャネリングは、粒子状触媒の床の場合とは異なり、チャネル間でガスを混合する機会がないため、耐火物本体を通って延在する、複数の微細で平行なガス流通路を有する耐火物本体を含む、モノリス状ハニカムタイプの基材を含む触媒を使用する場合に特に懸念される。
【0035】
この懸念に対処するために、AMOX触媒が、未反応アンモニアを酸化するために触媒システムに提供され得る。出願者は、貴金属、例えば、Ptを含有するCuCHAのウォッシュコートが、AMOX触媒を提供することを見出している。該触媒を通してガス流中のアンモニアが破壊されるのみならず、N2への変換によって、NOxの連続的な除去も期待されている。
【0036】
当該技術分野において既知の方法に従って、該CHA触媒物品は、ゼオライト(存在する場合)のCu含有量を制御することによって、SCRプロセスあるいはAMOXプロセスのいずれか一方を助長するために製剤化することができる。米国特許第5,516,497号は、SCR反応あるいはSCRプロセスを犠牲にして酸素によるアンモニアの酸化のいずれか一方のための選択性を得、それによって、アンモニアの除去を向上させる、ゼオライトへの鉄および銅の装填レベルを教示している。本発明の実施形態に従って、CuNatCHAまたはCuSynCHA銅の装填を調節して、SCR反応および酸素によるアンモニアの酸化のための選択性を得ることができ、触媒の両方のタイプを使用する排気ガス処理システムを提供することができる。
【0037】
この目標に続き、段階的な、または2領域触媒物品は、SCRを促進するCHAゼオライトを含む第1の触媒領域、および続いて、アンモニアの酸化を促進するCuCHAゼオライトを含む第2の触媒領域が提供され得る。このようにして得られる触媒物品は、窒素酸化物をアンモニアで還元させることを助長する第1の(上流)領域と、アンモニアの酸化を助長する第2の(下流)領域を有する。このように、アンモニアが化学量論的量よりも過剰に存在する場合、ガス状流の流れの断面が処理されていても、または高濃度のアンモニアの局所化したチャネル中であっても、酸素による残留アンモニアの酸化は、下流つまり第2の触媒領域によって助長される。触媒から放出されたガス状流中のアンモニアの量は、これにより、低減され、または除去される。第1の領域および第2の領域は、単一の触媒物品上に、または別個の触媒物品として提供され得る。
排気ガス処理システム
【0038】
本発明のCHAゼオライト触媒物品は、ガソリンおよびディーゼルエンジンで動く自動車に見出されるもの等の排気ガス処理システムに提供され得る。かかる排気ガス処理システムにおいて、該CHAゼオライト触媒物品は、一般に、触媒物品の上流あるいは下流で、他のガス処理成分と流体連通して提供される。
【0039】
11Aとして示された本発明の排気処理システムのある実施形態を、図4Aに図式的に示す。ガス状汚染物質を含有する排気物(未燃炭化水素、一酸化炭素、およびNOxを含む)および粒子状物質が、エンジン19から排気ガスシステムの下流側の位置に運ばれ、ここで、還元体、すなわち、アンモニアまたはアンモニア前駆体が排気ガス流に加えられる。該還元体は、ノズル(図示せず)を介してスプレーとして排気流に注入される。ライン25で示される水性尿素は、アンモニア前駆体としての機能を果たすことができ、混合ステーション24で、別のライン26上の空気と混合させることができる。バルブ23は、排気流中でアンモニアに変換される水性尿素の正確な量を計量するために使用することができる。
【0040】
アンモニアが加えられた排気流は、1つもしくは複数の実施形態に従って、CuNatCHAまたはCuSynCHAを含有するSCR触媒基材12(また、請求項を含む本明細書において「第1の物質」または「第1の基材」と称される)に運ばれる。第1の基材12を通過する際、排気流のNOx成分は、NH3とのNOxの選択的触媒還元により、N2およびH2Oに変換される。加えて、入口領域から出てくる過剰のNH3は、CuNatCHAまたはCuSynCHAも含有する、下流のアンモニア酸化触媒(図示せず)による酸化により変換し、該アンモニアをN2およびH2Oに変換することができる。第1の基材は、一般に、モノリス基材を通る流れである。
【0041】
11Bとして示した、排気処理システムの代替的な実施形態を、図4Bに示し、NH3インジェクターと第1の基材12との間に間置された第2の基材27を含有する。この実施形態において、第2の基材が、第1の基材12または異なる組成物をコーティングするために使用されるものと同様の組成物であり得るSCR触媒組成物でコーティングされている。この実施形態の有利な点は、基材をコーティングするのに使用されるSCR触媒組成物を、排気ガスシステムに沿った部位の特徴的な操作条件のために、NOxの変換を最適化するために選択することができるということである。例えば、第2の基材は、排気システムの上流部分で生じる、より高い操作温度のために、より適切なSCR触媒組成物でコーティングすることができ、一方、別のSCR組成物は、排気ガスシステムの下流部分で生じる、より低い排気温度に、より適切な、第1の基材(すなわち、第1の基材の入口領域)をコーティングするのに使用することができる。
【0042】
図4Bに示される実施形態において、第2の基材27は、基材を通るハニカム流、開放気泡フォーム基材、またはハニカム壁流基材のいずれかであり得る。第2の基材が、壁流基材または高効率開放気泡フォームフィルタである、この実施形態の構成において、該システムは、すす留分およびSOFを含む粒子状物質の80%以上を除去することができる。SCRで被覆された壁流基材ならびにNOxおよび粒子状物質を還元するためのその使用が、例えば、2003年8月5日出願の同時係属米国特許出願第10/634,659号に記載されており、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
幾つかの適用例では、アンモニア/アンモニア前駆体注入の部位の上流に酸化触媒を含むことが有利であり得る。例えば、図4Cに示された実施形態において、酸化触媒は、触媒基材34上に配置される。排気処理システム11Cは、第1の基材12が提供され、任意に、第2の基材27を含む。この実施形態において、排気流は、最初に、触媒基材34に運ばれ、少なくとも一部のガス状炭化水素、COおよび粒子状物質が、燃焼され、無害の物質とされる。加えて、排気物のNOx成分のNOの相当量が、NO2に変換される。NOx成分中のNO2の割合が高いほど、下流に配置されたSCR触媒でN2およびH2OへのNOxの還元が促進される。図10Cに示される実施形態において、第1の基材12は、触媒されたすすフィルタであり得、該SCR触媒は、触媒されたすすフィルタ上に配置され得る。代替的な実施形態において、SCR触媒を含む第2の基材27は、触媒基材34から上流に設置され得る。
【0044】
ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流でSCR触媒物品を利用するシステムにおいて、本明細書に開示されるCHAゼオライト触媒の特性は、1つもしくは複数の有益な結果を提供し得る。立ち上げ(start−up)と長期間にわたる低温での操作の間、SCR触媒の上流にあるDOC、またはDOCおよびCSFは、炭化水素を酸化するのに、完全には活性化されない。本明細書に提供されるCHAゼオライトSCR触媒物品が、低温では、炭化水素によって影響されないので、低温操作枠の広い範囲で、活性が維持される。例えば、以下に論じられるように、CuNatCHAおよびCuSynCHA触媒物品は、250℃以下の温度で、実質的なNOxの変換を示す。また、酸化触媒は、時間と共にNOをNO2に酸化する能力を失うため、NO2と同様に効果的にNOを処理することができるSCR触媒を提供することは有益である。以下に論じられるように、CuNatCHAおよびCuSynCHA触媒物品は共に、低温でさえ、NOをNH3によって還元することが可能である。
【0045】
いずれの様式でも本発明を限定することを意図せず、本発明の実施形態を以下の実施例によってより完全に説明する。
【実施例1】
【0046】
K−菱沸石を、Al23:5.2SiO2:2K2O:224H2Oゲル組成物から調製した。CBV500(Zeolyst International, Conshohocken, Pennsylvaniaから入手可能なゼオライト−Y生成物)は、最初に、540℃で4時間、空気中で焼成し、H型を調製した。反応混合物は、991gの脱イオン水中で125gのこの焼成ゼオライト(H−CBV500)と134gの水酸化カリウム(45%)の混合物を混合することによって形成された。得られるゲルは、2リットルの圧力鍋中で、95℃で6日間加熱された。混合物は、32rpmで連続的に撹拌された。結晶性生成物は、濾過により回収され、200μSの伝導度まで洗浄した。試料は、90℃で乾燥させた。結晶性生成物は、それが菱沸石であることを示すX線粉末回折パターンを有した。
【0047】
NH4+状の菱沸石は、硝酸アンモニウムの溶液中(500gの脱イオン水と混合された500gの54質量%硝酸アンモニウム)で100gのK−菱沸石を交換することによって調製された。この交換は、80℃で1時間、スラリーを撹拌することによって行われ、その間、pHが、2.57〜3.2の間であった。固体は、次いで、ブルナーフィルタ上で濾過し、濾液が、200μSより低い伝導度を有するまで洗浄した。粉末は、次いで、合計2回の交換のために上記のアンモニウム交換プロセスを実行する前に16時間乾燥させた。XRF化学分析によって、固体生成物の組成物は、22.86質量%Al23、73.62質量%SiO2、および3.52質量%K2Oであるように構築された。SiO2:Al23は、5.5であるように算出された。
【0048】
NH4+状は、次いで、別の2回の上記のアンモニウム交換プロセスを実行する前に4時間、540℃で焼成した。XRF化学分析によって、固体生成物の組成物は、23.69質量%Al23、76.25質量%SiO2、および0.08質量%K2Oであると確証された。SiO2:Al23は、5.5であると算出された。
【0049】
CuSynCHA粉末触媒は、10gのNH4+型菱沸石と37mlの1.0Mの銅(II)サルフェート溶液とを混合することにより調製された。スラリーを70℃で1時間撹拌することによって、NH4+型菱沸石と銅イオンとの間のイオン交換反応を実行した。反応中、pHは、2.9〜3.2であった。得られる混合物を、次いで、濾過し、濾液が200μS未満の伝導度を有するまで洗浄し、これは、溶解性銅まあは遊離銅が試料内に実質的に残っていないことを示す。次いで、洗浄した試料を、90℃で乾燥させた。得られたCu菱沸触媒は、ICP分析によって決定されるように、3.35質量%のCuOを含んだ。
【実施例2】
【0050】
実施例1の触媒性能が、約12.6mm3の触媒床を含有するマイクロチャネル触媒反応装置を用いて評価された。25cc/分の反応物(以下の表1に示される濃度で)+1.25cc/分の蒸気の流量(標準温度および圧力)を、種々の温度(200、250、300、350、400、450、および500℃)でその床の上に通し、触媒の反応性を測定した。質量スペクトル分析計を使用し、100*(NOxfed−NOxout)/(NOxfed)により、NOxの変換を、測定した。
【0051】
【表1】

【0052】
触媒は、700℃で50時間、空気中で10%蒸気を用いて熟成させた。
【0053】
図1は、マイクロチャネル触媒反応装置上に生成された温度の関数として、新鮮なおよび熟成されたCuSynCHA触媒に対する、NOx除去効率(%)の標準化されたデータを示す。図1に見ることができるように、CuSynCHA触媒は、標準Fe−β技術と比較して、NOxの変換を向上し、また、高い水熱安定性も示す。
【実施例3】
【0054】
GSA Resources of Tuscan,ArizonaからのBowie,Arizonaの堆積物から堆積菱沸石を得た。この物質は、高純度の天然菱沸石である。
【0055】
NH4+状の菱沸石は、硝酸アンモニウムの溶液(1750gの脱イオン水で混合した1750gの54質量%硝酸アンモニウム)中で350gのK−菱沸石を交換することによって調製された。スラリーを80℃で1時間撹拌することによって、交換を行い、その間、pHは、2.57〜3.2の間であった。固体は、次いで、ブルナーフィルタ上で濾過し、濾液が、200μSより低い伝導度を有するまで洗浄した。粉末は、次いで、合計2つの交換のために上記のアンモニウム交換プロセスを実行する前に16時間乾燥させた。XRF化学分析によって、固体生成物の組成物は、19.75質量%Al23、79.85質量%SiO2、および0.4質量%K2Oであると確証された。SiO2:Al23は、6.86であると算出された。
【0056】
菱沸石のNH4+型は、次いで、別の2回の上記のアンモニウム交換プロセスを実行する前4時間、540℃で焼成した。XRF化学分析によって、固体生成物の組成物は、18.92質量%Al23、80.9質量%SiO2、および0.17質量%K2Oであると確証された。SiO2:Al23は、7.26であるように算出された。
【0057】
CuNatCHA粉末触媒は、230gのNH4+型菱沸石と860mlの0.5Mの銅(II)サルフェート溶液とを混合することにより調製された。スラリーを70℃で1時間撹拌することによって、NH4+型菱沸石と銅イオンとの間のイオン交換反応を実行した。反応中、pHは、3.8〜4.2の間であった。得られる混合物を、次いで、濾過し、濾液が200μS未満の伝導度を有するまで洗浄し、これは、溶解性銅または遊離銅が試料内に実質的に残っていないことを示す。次いで、洗浄した試料を、90℃で乾燥させた。得られたCuNatCHA触媒は、ICP分析によって決定されるように、7質量%のCuOを含んだ。
【0058】
CuNatCHAスラリーは、上記のように、215mLの脱イオン水と90gのCu菱沸石を混合することによって調製された。この混合物を、ボールミルで4時間粉砕し、粒子の90%が10μm未満のスラリーを得た。稀酢酸中の15.8gのジルコニウムアセテート(30%ZrO2を含む)を、スラリーに撹拌させながら添加した。
【0059】
セル密度が400cpsi(平方インチ当たりのセル)および壁厚が6.5ミルの直径1インチx長さ3インチの細胞セラミックコア(core)に、スラリーを被覆した。被覆したコアを、110℃で3時間乾燥させ、400℃で1時間焼成した。被覆プロセスを1回繰り返し、2.4g/in3の標的ウォッシュコートの装填量を得た。
【実施例4】
【0060】
500ppmのNO、500ppmのNH3、10%O2、5%H2Oの、N2で平衡を取ったバランスした供給ガス混合物を、実施例3からの直径1インチx長さ3インチの触媒コアを含む定常状態の反応装置に加えることにより、新鮮な触媒コアのNOxの選択的触媒還元(SCR)の効率および選択性を測定した。150℃〜460℃の温度範囲にわたり、空間速度80,000時間-1で、反応を行った。
【0061】
750℃で25時間、10% H2Oの存在下で、触媒コアを熱水的に熟成させ、続いて、新鮮な触媒コアのSCR評価について概説したものと同様のプロセスで、NOxのSCRの効率および選択性を測定し、触媒の水熱安定性を測定した。
【0062】
図2は、従来のFe−β触媒の現在の状態と比較して、新鮮なおよび熟成されたCuNatCHA触媒に対する、NOxの変換対温度を示すグラフである。図2に見ることができるように、CuSynCHA触媒は、標準Fe−β技術と比較して、低温のNOxの変換およびさらに高い水熱安定性を有する。
【0063】
図3は、新鮮なおよび熟成されたCuNatCHA触媒に対する、NOxの変換およびN2Oの作製つまり形成の比較を示すグラフである。図3に見ることができるように、CuSynCHA触媒は、望ましくないN2Oの低い生産性を伴うNOxの変換に対する高い選択性を有する。熟成後、最大N2Oの作製は、450℃で14ppmであった。
【0064】
比較実施例1
K−菱沸石は、実施例1に記載されるように、調製された。
【0065】
NH4+状の菱沸石は、実施例1に記載の同様の実験条件を用いて調製された。つまり、硝酸アンモニウムの溶液(500gの脱イオン水と混合した500gの54質量% 硝酸アンモニウム)中で100gのK−菱沸石を交換した。スラリーを80℃で1時間撹拌することによって、交換を行い、その間、pHは、2.57〜3.2の間であった。固体は、次いで、ブルナーフィルタ上で濾過し、濾液が、200μSより低い伝導度を有するまで洗浄した。次いで、粉末を16時間乾燥させた。このイオン交換を繰り返し、合計6回のアンモニウム交換を得、それぞれの実験後の化学分析を表1に記録する。アンモニウム交換の間で、中間の焼成ステップは、生じなかった。この実施例は、中間の焼成が、約1.72質量%より低い値にカリウムの除去を可能にするために有用であることを示す。
【0066】
【表2】

【0067】
本明細書の本発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は、本発明の原理および適用の例示に過ぎないことを理解すべきである。したがって、例示的な実施形態に対して数多くの修正がなされ得、以下の請求項の範囲によって規定される、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の構成が考案され得ることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOxを低下させるように機能する基材上に配置されるCHA結晶構造を有するゼオライトを含む触媒物品であって、前記ゼオライトは、約15未満のシリカ/アルミナのモル比を有し、約3質量パーセント未満のアルカリ含有量を有する、触媒物品。
【請求項2】
前記ゼオライトのアルカリ含有量は、約1質量パーセント未満である、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記ゼオライトのアルカリ含有量は、約0.5質量パーセント未満である、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記ゼオライトは、非合成の、天然に存在するゼオライトを含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記ゼオライトは、約10未満のシリカ/アルミナのモル比を有する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記ゼオライトは、1個もしくは複数の金属カチオンで修飾される、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記金属カチオンは、銅である、請求項6に記載の触媒物品。
【請求項8】
白金族基の構成成分をさらに含む、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記基材は、すすフィルタである、請求項6に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記すすフィルタは、壁流基材を含む、請求項9に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記基材は、ハニカムフロースルー基材を含む、請求項6に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記CHA結晶構造および約15〜約256のシリカ/アルミナのモル比を有する第2のゼオライトをさらに含み、銅/アルミニウムの原子比が、約0.25〜約0.50であり、前記ゼオライトおよび前記第2のゼオライトは混合される、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記ゼオライトは、アルミナ源、シリカ源、ならびにナトリウム、カリウム、およびテトラメチルアンモニウム源のうちの1種もしくは複数混合し、水性ゲルを形成することと、加熱することによって前記ゲルを結晶化し、前記ゼオライトを形成することと、を含む、プロセスによって調製される、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項14】
請求項1〜13のうちのいずれかに記載の触媒物品を含む、排気ガス処理システム。
【請求項15】
前記触媒物品の上流で前記触媒物品と流体連通している酸化触媒およびすすフィルタをさらに含む、請求項14に記載の排気ガス処理システム。
【請求項16】
ガス流中のNOxを低下させる方法であって、請求項6に記載の触媒物品と前記ガス流を接触させることを含む方法。
【請求項17】
請求項1〜13のうちのいずれかに記載の触媒物品を作製する方法であって、溶液を用いて、初期アルカリ含有量の前記CHA結晶構造を有するゼオライトのアルカリ形態をイオン交換し、前記アルカリ含有量を低下させ、
前記低下したアルカリ含有量の前記イオン交換したゼオライトを焼成し、焼成ゼオライトを得、
次いで、アルカリ含有量をさらに低下させるために、溶液を用いて前記焼成ゼオライトをイオン交換し、約15未満のシリカ/アルミナのモル比および約3質量パーセント未満のアルカリ含有量を有するゼオライトを得ることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記溶液は、アンモニウム塩溶液である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記焼成を、少なくとも約350℃の温度で、少なくとも約1時間行う請求項18に記載の方法。
【請求項20】
鉄または銅溶液を用いて金属イオン交換を行い、金属促進性のゼオライトを提供することをさらに含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2012−508096(P2012−508096A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534913(P2011−534913)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/063331
【国際公開番号】WO2010/054034
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】