説明

低反射膜およびその形成方法およびそれを用いた低反射部材

【課題】
透明基体上に形成する低反射膜およびその形成方法に関し、単層膜において低屈折率且つ低反射率を有し、より簡便な方法で大面積の成膜が容易な低反射膜およびその形成方法およびそれを用いた低反射部材を提供する。
【解決手段】
シリカ微粒子と、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化クロム、酸化セリウム、酸化モリブデンおよび酸化ランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物をシリカ微粒子に対し5質量%以上、40質量%以下、バインダーとして含有してなり、屈折率1.20以上、1.40以下であることを特徴とする低反射膜およびその形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反射膜およびその形成方法およびそれを用いた低反射部材に関する。具体的には、本発明は低反射膜が透明性基体表面に形成された低反射部材としての、太陽電池用カバーガラス、自動車ガラスまたは照明器具の保護部材等に関し、特に太陽電池用カバーガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
低反射膜は、基体の表面反射を防止し、表面反射による光透過率(以下、単に透過率と言うことがある)の損失をなくして、ガラスや透明プラスチック等の透明性基体の透過率を向上させるために、基体表面に形成されるものである。
【0003】
低反射膜は太陽電池用カバーガラス表面に形成される他、スチルカメラ、ビデオカメラ、液晶プロジェクタ等の光学機器向けレンズ等の表面、陰極線管や液晶表示装置等の画像表示面、または複写機、撮像管、LED表示素子、照明、有機EL、窓やショーケース、自動車ヘッドランプのリフレクタ部材等の表面に形成される。
【0004】
太陽電池を屋外使用する際、太陽電池は常時暴露されるので、寒暖の差および風雨に耐える、耐熱性、耐水性および耐摩耗性等の耐候性を有することが要求され、好ましくは保護部材としての太陽電池用カバーガラスを必要とする。太陽電池用カバーガラスには、太陽電池に高い受光効率を得、変換効率を低下させないために、透明性および低反射性が要求される。したがって、劣化しにくく長期にわたり性能を維持できることから、基体にはガラス板が使われ、ガラス板の表面に低反射膜を形成した太陽電池用カバーガラスが市販されている。低反射膜を表面に形成することで、基体が透明であれば、表面反射による損失なく、透過率が上昇する。例えば、低反射膜を表面に形成してなる太陽電池用カバーガラスは、低反射膜の屈折率が低いほどに透過率が大きくなり、太陽電池の受光効率がよく、光から電気へのエネルギー変換効率が上がる。
【0005】
また、スチルカメラ、ビデオカメラ等では、収差補正のため多群複数のレンズを用いるので表面反射を抑制しないと、解像度が低下するばかりか、フレア、ゴーストの原因となる。よって、レンズ表面の低反射コート、言い換えれば、低反射膜の形成が重要である。表示装置やショーケース等では、低反射膜により表面反射を低下させないと、反射像の映り込みにより視認性が悪くなる。
【0006】
従来、光学レンズおよびプリズムには、透明基体上に屈折率および厚さの異なる薄膜を重ね合わせた多層膜、即ち、マルチコートが多く用いられてきた。反射膜を多層構造にすれば、広範囲の波長域で反射防止が可能となる。しかしながら、複数の薄膜を真空蒸着等により成膜する際、低反射とするためには、各薄膜の厚みの精密制御が必要である。さらに、大板ガラスにマルチコートするには、大型の真空成膜装置が必要であり、技術的に難しく、高価なものとなる欠点があった。
【0007】
このため、最近では、低コストで容易に大面積の低反射部材を作製するに有利な、単層且つ、より低屈折率の低反射膜の開発が望まれている。単層の低反射膜は、多層膜に比べ、基体表面への形成が簡便であり、太陽電池用カバーガラスに使用することで、受光効率向上、光から電気への変換効率向上が図れる。また、自動車ガラス、特にフロントガラスの映り込み防止、照明器具の保護部材、例えば、カバーガラスおよび透明プラスチックに用いての照度向上等に好適に用いられる。
【0008】
単層の低反射膜において、基体表面に形成された膜内部に、屈折率が1である空気を微小ボイド(空隙)またはメタ細孔として取り込むことで、膜の屈折率を低下させる方法が試みられている。例えば、多孔質シリカ膜、中空性シリカ微粒子を用いたシリカ膜からなる低反射膜を基体表面に形成することが検討されている。
【0009】
多孔質シリカ膜は、シリカゾルと、界面活性剤または高沸点溶剤等を混合してなる原料液を、基体に塗布した後、ゾルゲル法で成膜してシリカ膜にメソ細孔を形成すること等で得られる。尚、ゾルゲル法とは、ケイ素アルコキシドおよびそれを脱水縮合したコロイダルシリカからなるゾル等を、其体表面に塗布した後にゲル化させ、その後、加熱焼成することで、非晶質、多結晶等の比較的硬質な膜を形成する技術である。
【0010】
中空シリカ微粒子は、特定のアルキル基を有するアルコキシシラン等を用い、これを凝集縮合させることで、微小ボイドまたはメソ細孔を含有させたシリカ微粒子である。これら中空シリカ微粒子を用いて基体上に形成された膜は、中空シリカ微粒子に由来するボイドまたはメソ細孔を有し、ボイドまたはメソ細孔に含有した空気により低反射膜となる。
【0011】
しかしながら、中空シリカ微粒子は、製造工程が複雑であるという問題があった。よって、汎用品である太陽電池用カバーガラス、照明器具の保護部材および自動車ガラス向けとして、採用し難い。
【0012】
例えば、特許文献1には、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる多孔質の複合酸化物粒子が、厚さが0.5nm〜20nmである多孔質のシリカ系無機酸化物層で被覆されてなることを特徴とする微粒子が開示される。この微粒子を含有する被膜を基材の表面に形成することで、低屈折率で、樹脂等との密着性、強度、反射防止能等に優れた被膜付きの基材を提供できるとされている。
【0013】
また、特許文献2には、シリカとAl、B、TiO、ZrO、SnO、Ce、P、Sb、MoO、WOから選ばれるシリカ以外の無機酸化物とからなる平均粒径が5nm〜300nmの範囲にある複合酸化物コロイド粒子が水および/または有機溶媒に分散した複合酸化物ゾルであって、前記コロイド粒子は、前記無機酸化物を構成するシリカ以外の元素の一部が除去されると共に粒子表面がシリカ被膜で被覆されてなり、屈折率が1.36〜1.44の範囲にあることを特徴とする複合酸化物ゾルが開示される。当該複合酸化物ゾルを用いて、低屈折率の塗布膜を形成した低反射用の基材が提供できるとされる。
【0014】
具体的には、無機酸化物の一部が除去されボイドが生成した粒子表面を、シリカ皮膜で被覆した中空シリカ微粒子で、中空シリカ微粒子としての複合酸化物コロイド粒子が水および/または有機溶媒に分散した複合酸化物ゾルである。
【0015】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に記載の複合酸化物ゾルは、その製造において、無機酸化物の一部を除去する工程、コロイド粒子の表面をシリカ被膜する工程を有し、工程が複雑であるという問題があり、太陽電池用カバーガラス、自動車ガラスおよび照明器具の保護部材向けとしては採用し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際特許公開公報WO00/37359号
【特許文献2】特開2006−117526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、耐熱性、耐摩耗性および防汚性に優れた低反射部材を提供することを目的とする。さらに、単層膜において低屈折率且つ低反射率を有する低反射膜を提供することを目的とする。
【0018】
さらに、本発明は、より簡便な方法で、基材表面に大面積の低反射膜の形成が容易な低反射膜の形成方法を提供することを目的とする。
【0019】
さらに、本発明は、太陽電池の受光効率向上、自動車のフロントガラスの映り込み防止、照明器具の保護部材として照度向上等に使用するための、より簡便な方法で大面積の成膜が可能な低反射膜およびその形成方法およびそれを用いた低反射部材を提供することを目的とする。
【0020】
また、シリカ微粒子を含有してなるシリカ膜を形成する際に、シリカ微粒子が球形であると充填し易く、シリカ微粒子の粒度分布を揃えれば、充填密度を高くすることが可能であり、得られたシリカ膜は、最密充填で充填密度70%以上を確保できる。しかしながら、球状シリカ微粒子同士は、バインダーを用いても、狭い接触面積で接合しており、外部から応力を受け微粒子間にせん断力が働けば、脆く容易に破壊されやすく、形成されたシリカ膜が耐摩耗性に劣るという問題があった。
【0021】
一方、棒状シリカ微粒子は、アスペクト比の大きな嵩高の粒子であり、棒状シリカ微粒子が立体的に絡みあい、3次元のブリッジ構造を形成するため、得られたシリカ膜は、嵩高で空隙率が大きくなる。当該シリカ膜は多孔質で空気層に富み、見かけ屈折率は1.25以下の優れた低反射性能を示すが、摩擦強度は極めて脆く、軽い摩擦程度で簡単に剥離して実用に耐えられるものではないという問題があった。
【0022】
さらに、本発明は、上記問題を解決する低反射膜およびその形成方法およびそれを用いた低反射部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上記問題に鑑み、鋭意検討した結果、膜とした際にシリカ微粒子を結合させるバインダーに特定の金属酸化物を使用することで、膜強度が低いことおよび耐候性に乏しく劣化しやすいことを解決し、屈折率の低い低反射膜を得たものである。
【0024】
さらに、本発明は、棒状シリカ微粒子と球状シリカ微粒子という形状の異なるシリカ微粒子を低反射膜中に共存させることで、低反射性能等の光学性能に優れ、摩擦強度に優れた低反射膜を見いだしたものである。
【0025】
特に、本発明において、形状の異なるシリカ微粒子と、シリカ微粒子を接合するバインダーとしての金属酸化物を低反射膜中に共存させて、ガラス板等の透明基体に低反射膜を形成してなる低反射部材の光学特性および摩擦強度を、太陽電池のカバーガラス用途に適したものとした。
【0026】
本発明において、棒状シリカ微粒子とは、細長い形状のシリカ微粒子をいい、数珠上であっても、湾曲していてもよい。また、球状シリカ微粒子とは、丸い形状のシリカ微粒子をいい完全な球体でなく、歪な楕円体でもよい。シリカ微粒子の最大径のことを、棒状シリカ微粒子においては長径と言い、球状シリカ微粒子においては、粒径と言う。また、棒状シリカ微粒子の最小径を短径という。棒状コロイダルシリカ、球状コロイダルシリカにおいても同様である。微粒子とは、最大径が概ね、100nm以下の粒子を言う。尚、コロイダルシリカとは、酸化ケイ素またはその水和物が凝集したコロイドであり、通常、アルコキシシラン(テトラエトキシシラン等)を原料とし脱水縮合させたもの、もしくはアルカリケイ酸塩より、イオン交換にてアルカリ分を除去しコロイドとしたものが挙げられる。
【0027】
また、バインダーとは、結合させるものの意味であり、金属酸化物がシリカ微粒子の界面において、シリカ微粒子を接合する。
【0028】
また、本発明において、低反射膜とは、基体表面の光の反射防止のために基体表面に形成した低屈折率(エリプソメーターで測定した屈折率(nD)=1.40以下)の膜である。
【0029】
また、本発明において、屈折率は、エリプソメーターによる分光エリプソメトリー測定で得られた測定値であり、平均透過率および平均反射率は、分光光度計を用いて、光の波長域、380nm〜1200nmの透過率、反射率を測定し、当該波長域における平均透過率、平均反射率を算出した値である。透過率曲線とは、ある波長域における分光光度計による透過率の測定値を連続的にプロットした曲線である。
【0030】
本発明の低反射膜において、シリカ微粒子のバインダーとして、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化セリウムおよび酸化ランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物を用いたことで、加熱焼成、濡れおよび経時等により、強度低下がなく、摩擦強度に優れた低反射膜が基体表面に形成された。
【0031】
特に、タングステン化合物、ニオブ化合物、タンタル化合物は、粒子となるとそれ自体が硬く、耐摩耗性等の摩擦強度が向上する。また、低反射膜に含有させることで、光学特性の調整を図ることができる。
【0032】
即ち、本発明は、以下、発明1〜4の低反射膜である。
【0033】
[発明1]
シリカ微粒子と、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化セリウムおよび酸化ランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物からなるバインダーを含有してなり、シリカ微粒子に対する金属酸化物からなるバインダーの含有比が5質量%以上、40質量%以下であり、屈折率1.20以上、1.40以下であることを特徴とする低反射膜。
【0034】
[発明2]
シリカ微粒子が、走査型電子顕微鏡(Scanning ElectronMicroscope、以下、SEMと略する。)による観察で、長径が5nm以上、100nm以下である棒状シリカ微粒子と、粒径が5nm以上、50nm以下である球状シリカ微粒子が主であることを特徴とする発明1の低反射膜。
【0035】
[発明3]
棒状シリカ微粒子と球状シリカ微粒子の質量比が棒状シリカ微粒子:球状シリカ微粒子=20:80〜80:20であることを特徴とする発明2の低反射膜。
【0036】
[発明4]
金属酸化物が、酸化タングステン、酸化ニオブおよび酸化タンタルからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物であることを特徴とする発明1〜3の低反射膜。
【0037】
また、本発明の低反射膜を形成する透明基体には、ガラス板、ポリカーボネート板、アクリル板、ポリエチレンテレフタレート等の透明性樹脂板が挙げられる。しかしながら、硬くキズがつきにくく、耐熱性、耐候性に優れることより、ガラス板が好ましい材料である。特に、本発明の低反射膜は、基体としてガラス板を使った場合においても、耐久性の高い低反射部材を与えることができ、太陽電池用カバーガラスに、特に好ましく用いることができる。
【0038】
発明1〜4の低反射膜を透明基体表面に形成することで、以下、発明5、6の低反射部材が得られた。
【0039】
[発明5]
透明基体表面に発明1〜4の低反射膜が形成されてなる低反射部材。
【0040】
[発明6]
透明基体がガラス板であり、光波長域380nm〜1200nmの平均透過率が95%以上であることを特徴とする発明5の低反射部材。
【0041】
通常、シリカのみからなる低反射膜を有する低反射部材の透過率曲線の最大値を示すピーク位置は500nm付近であるが、表面に形成した低反射膜に金属酸化物を含有させたことで、ピーク位置が500nm以上、900nm以下にシフトし、低反射膜の透明性が増し、太陽電池用カバーガラスとして使用すると、太陽電池の変換効率が上昇し、太陽電池用カバーガラス用として優れた低反射部材が得られた。
【0042】
[発明7]
透過率曲線の最大値のピークが500nm以上、900nm以下の範囲であることを特徴とする発明5または発明6の低反射部材。
【0043】
発明5〜7に記載の低反射部材は、特に太陽電池用カバーガラスとして使用するに好適である。
【0044】
[発明8]
発明5〜7の低反射部材からなる太陽電池用カバーガラス。
【0045】
また、本発明は、発明1〜4に記載の低反射膜を基体上に形成するための低反射膜の形成方法である。
【0046】
本発明の低反射膜の形成方法においては、低反射膜中にシリカ微粒子を含有させるためには、その前駆体であるコロイダルシリカの分散液を用いることが好ましい。
【0047】
また、形状の異なるシリカ微粒子を共存させるために、その前駆体として、形状の異なるコロイダルシリカを有する低反射膜用形成用塗布液を用いることが好ましい。尚、低反射膜形成用塗布液とは、基体表面に塗布して基体に低反射膜を形成するものである。
【0048】
本発明において、コロイダルシリカおよび特定の金属化合物が分散した液を低反射膜形成用塗布液として基体に塗布後、加熱焼成することで、コロイダルシリカをシリカ微粒子とし、金属化合物を金属酸化物とし、金属酸化物をバインダーとしシリカ微粒子を接合した低反射膜を得た。
【0049】
本発明の低反射膜の形成方法において、基体上にコロイダルシリカの分散液に加え、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、ハフニウム、クロム、モリブデン、セリウムおよびランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物の分散液を用いたことで、加熱焼成、濡れまたは経時等による付着強度の低下がなく、摩擦強度に優れた低反射膜が基体表面に形成された。
【0050】
特に、タングステン、ニオブおよびタンタル化合物は、粒子となるとそれ自体が硬く、低反射膜に含有させることで、耐摩耗性等の摩擦強度が向上すると思われる。
【0051】
本発明の低反射膜の形成方法を発明9〜14に示す。
【0052】
[発明9]
コロイダルシリカを含む分散液に、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、ハフニウム、クロム、モリブデンおよび希土類からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の金属化合物を含む分散液を加えてなる低反射膜形成用塗布液を、基体に塗布し塗膜とした後に加熱焼成し、コロイダルシリカをシリカ微粒子とし、金属化合物を金属酸化物とし硬化させることを特徴とする低反射膜の形成方法。
【0053】
発明9の方法は、例えば、発明1の低反射膜を基体上に形成する方法である。
【0054】
[発明10]
コロイダルシリカが、SEMによる観察で、長径が5nm以上、100nm以下の棒状コロイダルシリカと、粒径が5nm以上、50nm以下の球状コロイダルシリカがロイダルシリカの全個数の90%以上であり、コロイダルシリカに対する金属化合物の含有が酸化物換算で5質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする発明9の方法。
【0055】
発明10の方法は、例えば、発明2の低反射膜を基体上に形成する方法である。
【0056】
[発明11]
棒状コロイダルシリカと球状コロイダルシリカの質量比が、酸化物換算で棒状コロイダルシリカ:球状コロイダルシリカ=20:80〜80:20であることを特徴とする発明10の方法。
【0057】
発明11の方法は、例えば、発明3の低反射膜を基体上に形成する方法である。
【0058】
[発明12]
金属化合物が、タングステン、ニオブおよびタンタルからなら群から選ばれた少なくとも1種の金属の金属化合物であることを特徴とする発明9〜11の方法。
【0059】
発明12の方法は、例えば、発明4の低反射膜を基体上に形成する方法である。
【0060】
[発明13]
発明9〜12の方法で透明基体表面に屈折率が1.20以上、1.40以下である低反射膜が形成されてなる低反射部材。
【0061】
[発明14]
透明基体がガラス板であり、光波長域380nm〜1200nmの平均透過率が95%以上であることを特徴とする発明13の低反射部材。
【0062】
[発明15]
透過率曲線の最大値のピークが500nm以上、900nm以下の範囲であることを特徴とする発明13または14の低反射部材。
【0063】
[発明16]
発明13〜15に記載の低反射部材からなる太陽電池用カバーガラス。
【発明の効果】
【0064】
本発明により、簡便な方法で大面積の成膜が可能な、単層膜としての低反射膜およびその形成方法およびそれを用いた低反射部材が提供された。本発明の低反射膜の形成方法により、低反射膜が透明基体表面に形成された低反射部材は、高い平均透過率を有する。
【0065】
本発明により、単層膜で十分な低反射効果を有する低反射膜が得られ、且つ大面積への成膜が容易な低反射膜の形成方法が得られ、本発明の低反射膜の形成方法により得られた低反射部材は、太陽電池用カバーガラス、自動車用ガラス(特にフロントガラス)または照明器具の保護部材に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】タングステンアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板の図面代用SEM写真である。
【図2】タングステンアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板の透過率曲線である。
【図3】ニオブアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板の図面代用SEM写真である。
【図4】ニオブアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板の透過率曲線である。
【図5】タンタルアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板の図面代用SEM写真である。
【図6】タンタルアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板の透過率曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
1.低反射膜
始めに、本発明の低反射膜について説明する。
【0068】
本発明は、シリカ微粒子と、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化セリウムおよび酸化ランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物からなるバインダーを含有してなり、シリカ微粒子に対する金属酸化物からなるバインダーの含有比が5質量%以上、40質量%以下であり、屈折率1.20以上、1.40以下であることを特徴とする低反射膜である。屈折率は低いほど好ましく、より好ましくは、1.35以下、さらに、好ましくは1.30以下である。
【0069】
さらに、本発明は、シリカ微粒子が、SEMによる観察で、長径が5nm以上、100nm以下である棒状シリカ微粒子と、粒径が5nm以上、50nm以下である球状シリカ微粒子が主であることを特徴とする上記の低反射膜である。主とするとは、コロイダルシリカの全個数の90%以上であることを指し、残りは前記範囲を満たさない形状のシリカ微粒子である。
【0070】
また、本発明は、棒状シリカ微粒子と球状シリカ微粒子の質量比が棒状シリカ微粒子:球状シリカ微粒子=20:80〜80:20であることを特徴とする上記の低反射膜である。
【0071】
また、本発明は、金属酸化物が、酸化タングステン、酸化ニオブおよび酸化タンタルからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物であることを特徴とする上記の低反射膜である。
【0072】
本発明の低反射膜において、低反射膜中の金属酸化物の含有は、棒状シリカ微粒子と球状シリカ微粒子を合わせたシリカの質量(固形分の質量)に対して、5質量%以上、40質量%以下となるようにした。5質量%未満であると、得られる膜が摩擦強度に劣り、また40質量%より多いと、得られる膜の屈折率が高くなり低反射膜にならない。好ましくは、10質量%以上、30質量%以下である。
【0073】
また、本発明の低反射膜において、シリカ膜中に金属酸化物を含有させることは、透過率曲線の最大値のピークを長波長側にシフトさせる効果がある。また、金属酸化物自体が硬いので耐摩耗性を向上させる効果がある。
【0074】
この際、金属酸化物がシリカ微粒子の空隙を充填しないために、膜中で、金属酸化物が球状シリカ微粒子とほぼ同じ、粒径5nm以下、50nm以上の微粒子として存在する、または金属酸化物がシリカ微粒子の粒界にあって、シリカ微粒子を接着し、低反射膜に強度を与えること、および金属酸化物が高温の環境、水の付着および紫外線の照射により、変化しないことが求められる。
【0075】
このような金属酸化物には、酸化タングステン(WO、屈折率1.75)、酸化ニオブ(五酸化ニオブ:Nb、屈折率1.9)、酸化タンタル(五酸化タンタル:Ta、屈折率2.0)、酸化チタン(TiO、屈折率2.2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO、屈折率1.85)、酸化スズ(SnO、屈折率1.7、酸化アルミニウム(アルミナ:Al、屈折率1.65)、酸化ハフニウム(ハフニア:HfO、屈折率1.90)、酸化クロム(Cr、屈折率2.1)、酸化モリブデン(MoO、MoO、屈折率1.80)、酸化セリウム(セリア:CeO、屈折率1.8)および酸化ランタン(La、屈折率1.75)が挙げられる。
【0076】
また、本発明の低反射膜は、形状の異なるシリカ微粒子を、金属酸化物がバインダーとして接合し、微小ボイド(間隙)に取り込まれた屈折率1の空気により低屈折率を得るもので、SEMによる観察で、棒状シリカ微粒子の長径が5nm以上、100nm以下であることが好ましい。長径が、5nmより小さい、または100nmより大きいと、膜中に微小なボイドが形成され難い。また、この際、棒状シリカ微粒子のアスペクト比、即ち、長径/短径は2以上、10以下であることが好ましい。長径/短径が2より小さい、10より大きいと、膜中に空気からなる微小なボイドが形成され難い。
【0077】
一方、球状シリカ微粒子においては、粒径が5nm以上、50nm以下であることが好ましい。粒径が5nmより小さい、また粒径が50nmより大きいと、膜中に微小なボイドが形成され難い。
【0078】
本発明において、棒状シリカ微粒子および球状シリカ微粒子を含む、全シリカ微粒子中で、前記範囲に入る形状のシリカ微粒子が、SEMによる観察で全個数の90%以上必要である。残りは前記範囲を満たさない形状のシリカ微粒子である。10%より多く範囲が外れるものが含まれると微小なボイドの形成に支障がある。
【0079】
また、本発明の低反射膜において、棒状シリカ微粒子と球状シリカ微粒子の質量比は、棒状シリカ微粒子:球状シリカ微粒子=80:20〜20:80である。これ以外の範囲は、ボイドの生成が少なく低反射膜が得られ難く、基体、特にガラス板に対する低反射膜の付着強度に劣る。
【0080】
本発明の低反射膜の基体表面における、好ましい膜厚は、20nm以上、500nm以下である。膜厚を20nmより薄くすると耐磨耗性に劣る、また成膜が困難である。また500nmより厚くすると、膜厚が不均一となり、成膜し難い。好ましくは、50nm以上、150nm以下である。可視光に対する低い反射率を得るためには、100nm以上、120nm以下であることが好ましい。
【0081】
また、本発明の低反射膜は、多数の微小ボイドを含む膜となる。詳しくは、異なる形状のシリカ微粒子を金属酸化物がバインダーとして接合させることでボイドが形成され、ボイド内に取り込まれた屈折率1の空気の効果により、通常のシリカ膜に対して低屈折率(1.20以上、1.40以下)の低反射膜が得られた。加えて、低反射膜中に金属酸化物を含むことにより硬質の膜が得られ、基体との密着性よく親水性であり、導電性があり静電気を帯びにくいため、本発明の低反射膜を形成してなる低反射部材は汚れ難い。
【0082】
具体的には、SEMによる観察で、シリカ微粒子の全個数の90%以上が、長径が5nm以上、100nm以下の棒状シリカ微粒子と、粒径が5nm以上、50nm以下の球状シリカ微粒子であり、タングステン、ニオブまたはタンタルから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を、全てのシリカ微粒子に対し、5質量%以上、40質量%以下の範囲に含む本発明の低反射膜は、防汚性に加え、耐熱性、屋外使用に耐える耐熱性および耐磨耗性等の耐久性に優れる。また、金属酸化物を含むことで、親水性且つ導電性であり静電気を帯び難く、防汚性に優れる。
【0083】
2.低反射膜の形成方法
次いで、上記の低反射膜を与える本発明の低反射膜の形成方法について説明する。
【0084】
即ち、本発明は、コロイダルシリカを含む分散液に、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、ハフニウム、クロム、モリブデン、セリウムおよびランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物を含む分散液を加えてなる低反射膜形成用塗布液を、基体に塗布し塗膜とした後に加熱焼成し、コロイダルシリカをシリカ微粒子とし、金属化合物を金属酸化物とし硬化させることを特徴とする低反射膜の形成方法である。
【0085】
さらに、本発明は、コロイダルシリカが、SEMによる観察で、長径が5nm以上、100nm以下の棒状コロイダルシリカと、粒径が5nm以上、50nm以下の球状コロイダルシリカがコロイダルシリカの全個数の90%以上であり、コロイダルシリカに対する金属化合物の含有が酸化物換算で、5質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする上記の方法である。
【0086】
また、本発明は、棒状コロイダルシリカと球状コロイダルシリカの質量比が、棒状シリカコロイダルシリカ:球状コロイダルシリカ=20:80〜80:20であることを特徴とする上記の方法である。
【0087】
また、本発明は、金属化合物が、タングステン、ニオブおよびタンタルからなら群から選ばれた少なくとも1種の金属の金属化合物であることを特徴とする上記の方法である。
【0088】
本発明の低反射膜の形成方法において、低反射膜を基体上に形成する際は、コロイダルシリカの分散液と特定の金属化合物が分散した低反射膜形成用塗布液を用いる。
【0089】
尚、本発明の低反射膜の形成方法において、低反射膜形成用塗布液中の金属化合物の含有は、棒状コロイダルシリカと球状コロイダリシリカを合わせたコロイダルシリカの質量(固形分の質量、以下、同じ)に対して、酸化物換算で5質量%以上、40質量%以下の範囲となるようにした。好ましくは10質量%以下、30質量%以上の範囲である。5質量%未満であると、得られる膜が耐摩耗性に劣り、また40質量%より多いと、得られる膜の屈折率が高くなり低反射膜になり難い。好ましくは、10質量%以上、30質量%以下である。
【0090】
本発明の低反射膜の形成方法における膜の形成機構を推察すれば、形状の異なるコロイダルシリカが共存した低反射膜形成用塗布液を基体に塗布被覆したことで、液中でのコロイダルシリカのブラウン運動により、アスペクト比が大きい棒状コロイダルシリカが絡みブリッジ状に接合してなる間隙に、球状シリカ微粒子が捕捉された状態で塗膜が形成され、塗膜を加熱焼成することにより生成した膜中の微小ボイドに屈折率1の空気が間隙に取り込まれた効果により、低屈折率の膜、即ち、低反射膜が形成されたと考えられる。
【0091】
詳しくは、塗膜の乾燥工程で、棒状コロイダルシリカと球状コロイダルシリカの空隙の中に毛細管現象により満たされた溶媒が、両者の接点を強力に接合させる作用をもたらし、さらに溶剤の蒸発につれて、棒状コロイダルシリカの間隙に微細な球状コロイダルシリカがトラップされ、形状の異なるシリカ同士がより多くの接点で隣接するように再配列しながら収縮し乾燥していくと考えられる。このようにして、形状の異なる2種類のコロイダルシリカを用いたことで、棒状コロイダルシリカのみを用いた場合より密な、且つ球状コロイダルシリカのみを用いた場合より粗な空隙率の膜となり、かつ接点が多くより強く接合した摩擦強度に優れた多孔質の膜が形成されると推察される。
【0092】
しかしながら、形状の異なる2種類のシリカ微粒子と空気からなる多孔質の膜を透明基体表面に形成すれば、波長500nm〜550nm付近の可視光線に対しては、優れた低反射性を発現するが、太陽電池用カバーガラスに形成し低反射膜とする際に、変換効率を向上させるために、波長380nm〜1200nmの広範囲にわたり、透過率を制御するのは困難であった。そのためには、屈折率調整材として金属化合物をさらに加え、加水分解させた後、縮合させることが好ましい。
【0093】
本発明の低反射膜の形成方法において、低反射膜形成用塗布液を、形状の異なるコロイダルシリカを含む分散液中に、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、ハフニウム、クロム、モリブデン、セリウムおよびランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物を含む分散液を加え、低反射膜形成用塗布液とした。尚、これら金属の単体は疎水性であり、微粒子にしたとしても塗布液中で分散させることは困難である。これら金属の酸化物または水和物等は、金属単体の微粒子と同様に、一概に塗布液とした際に分散性が悪く、結晶や固形分が析出する等、安定性に劣る傾向があり、液寿命に問題のあることが多い。
【0094】
よって、本発明の低反射膜の形成方法においては、金属化合物は金属アルコキシドが好適に使用される。特に、タングステン、ニオブまたはタンタルのアルコキシドが液安定性に優れ、液寿命に優れた低反射膜形成用塗布液を与える。
【0095】
また、タングステン化合物においては、珪タングステン酸(SiO・12WO・26HO)を用いてもよく、珪タングステン酸は、水、アルコールに可溶であり、液安定性、液寿命に優れる。
【0096】
また、低反射膜の形成において、例えば、テトラエトキシシラン(以下、TEOSと略する)は、塗布液中でコロイダルシリカに対しての含有が5質量%以下でないと、硬化して膜を作ることが困難であるが、例えば、タングステンアルコキシド、ニオブアルコキシドまたはタンタルアルコキシドは、コロイダルシリカに対して任意の割合で含有させることが可能であった。
【0097】
このように低反射膜形成用塗布液を、基体表面に塗布した後に加熱焼成することで、金属化合物は、酸化タングステン(WO、屈折率1.75)、酸化ニオブ(五酸化ニオブ:Nb、屈折率1.9)、酸化タンタル(五酸化タンタル:Ta、屈折率2.0)、酸化チタン(TiO、屈折率2.2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO、屈折率1.85)、酸化スズ(SnO、屈折率1.7、酸化アルミニウム(アルミナ:Al、屈折率1.65)、酸化ハフニウム(ハフニア:HfO、屈折率1.90)、酸化クロム(Cr、屈折率2.1)、酸化モリブデン(MoO、MoO、屈折率1.80)、酸化セリウム(セリア:CeO、屈折率1.8)または酸化ランタン(La、屈折率1.75)となり、バインダーとして、シリカ微粒子を接合する。
【0098】
本発明において、金属酸化物を低反射膜に含有させたことが、透過率曲線の最大値のピークを長波長側にシフトさせる効果と、低反射膜が形成された低反射部材の耐摩耗性を向上させる効果をもたらしたと考えられる。低反射膜形成用塗布液中の金属化合物には、膜中で金属酸化物となる際に、シリカ微粒子の粒界におけるバインダーとしてシリカ微粒子を接着し、低反射膜に強度を与えた。尚、金属酸化物には、高温および紫外線で変化しないことが要求される。
【0099】
以上の点を鑑みて、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、ハフニウム、クロム、モリブデン、セリウムおよびランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物金属化合物を選定した。特に、タングステン、ニオブおよびタンタルの化合物、例えばタングステン、ニオブおよびタンタルのアルコキシドまたは珪タングステン酸が優れる。低反射膜形成用塗布液へのこれら金属化合物の添加効果により、低反射膜とした際に、ガラス板に対する付着強度が向上する。
【0100】
また、本発明の低反射膜の形成方法において、形状の異なる特定のコロイダルシリカと特定の金属化合物を有する低反射膜形成用塗布液を用い、加熱焼成することで、シリカ微粒子をバインダーとしての金属酸化物で接合した低反射膜を得る。この際、微小ボイド(間隙)に取り込まれた屈折率1の空気により低屈折率を得るためには、SEMによる観察で、長径が5nm以上、100nm以下の棒状コロイダルシリカおよび粒径が5nm以上、50nm以下の棒状コロイダルシリカが、コロイダルシリカの全個数の90%以上であることが好ましい。長径が、5nmより小さい、または100nmより大きいと、前述の作用効果がなく、膜中に前述の微小なボイドが形成され難い。棒状コロイダルシリカのアスペクト比、即ち、長径/短径が2より小さい、または10より大きいと前述の作用効果がなく、膜中に前述の微小なボイドが形成され難い。球状コロイダルシリカにおいては、粒径が5nmより小さい、また粒径が50nmより大きいと、膜中に微小なボイドが形成され難い。微小なボイド得るためには、SEMによる観察で前記範囲に入る形状のコロイダルシリカが全個数の90%以上であることが必要である。10%より多く範囲が外れるものが含まれると微小なボイドの形成に支障がある。また、大径側に大きく外れたもの、具体的には5倍以上、外れたもの、即ち、粒径500nm以上のものがあると、膜厚が不均一となり好ましくない。
【0101】
SEMによる観察で、長径が5nm以上、100nm以下、長径/短径=2以上、10以下が棒状コロイダルシリカと、粒径が5nm以上、50nm以下である球状コロイダルシリカが、コロイダルシリカの全個数の90%以上であり、前述の金属化合物を含む分散液からなる低反射膜形成用塗布液を用いることで、ボイドの生成が容易となる。
【0102】
本発明の低反射膜の形成方法において、このように形状の異なるシリカ微粒子を与えるコロイダルシリカを用いたことで、形状の異なるシリカ微粒子と酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化セリウムおよび酸化ランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物を含有してなる屈折率1.20以上、1.40以下の低反射膜が得られた。より好ましくは、金属酸化物として、酸化タングステン、酸化ニオブおよび酸化タンタルからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物を含有してなる低反射膜である。
【0103】
また、本発明の低反射膜の形成方法において、ボイドの生成が容易且つガラス板に対する付着強度に優れた低反射膜を与える、低反射膜形成用塗布液中の棒状コロイダルシリカ:球状コロイダルシリカの質量比は、酸化物換算で80:20〜20:80である。これ以外の範囲は、ボイドの生成が少なく低反射膜が得られ難く、基体に対する低反射膜の付着強度に劣る。
【0104】
詳しくは、本発明は、SEMによる観察で、コロイダルシリカの全個数の90%以上が、長径が5nm以上、100nm以下、長径/短径が2以上、10以下である棒状コロイダルシリカ、と、粒径が5nm以上、50nm以下の球状コロイダルシリカを含む分散液に、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、ハフニウム、クロム、モリブデン、セリウムおよびランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物、例えば、金属アルコキシドを含む分散液を、コロイダルシリカに対する金属化合物の含有が酸化物換算で、5質量%以上、40質量%以下となるように加えた低反射膜塗布液を、基体に塗布し塗膜とした後に加熱焼成し、金属化合物、例えば、金属アルコキシドを金属酸化物とし硬化させることを特徴とする低反射膜の形成方法である。
【0105】
本発明の低反射膜の形成方法において、このようにして、屈折率1.20以上、1.40以下の低反射膜を有してなる低反射膜付き部材、即ち、低反射部材が得られた。
【0106】
例えば、基体としての、フロート法による厚さ3mmのソーダライムシリケートガラス板の両面に前記低反射膜を形成した場合、形成しない場合に比べ、平均透過率が8%向上した。尚、当該ガラス板の平均透過率は90%程度であり、当該ガラス板に、コロイダルシリカとTEOSからなる従来のシリカコート膜を両面に形成した場合の平均透過率は、92%程度である。
【0107】
また、前記コロイダルシリカの分散液、金属化合物、例えば、金属アルコキシドの分散液は、液安定性より、コロイダルシリカの分散液においては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール(別名、イソプロピルアルコールまたは2−プロパノール、以下、IPAと略する)等のアルコール系、酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン等の極性溶剤に代表される有機溶剤が用いられ、金属化合物、特に金属アルコキシドの分散液においては、メタノール、エタノール、n−プロパノールまたはIPA等のアルコールに代表される有機溶剤が好適に用いられ、本発明の低反射膜の製造方法において、好適に用いられる。
【0108】
通常、コロイダルシリカの分散液に水を加えることで、コロイダルシリカは不安定になり、固形分が析出することが多く、普通は加えることはないが、コロイダルシリカと、タングステン、ニオブおよびタンタルからなる群から選ばれたアルコキシドをともに用いた低反射膜形成用塗布液は、前記アルコキシドの作用により、全重量に対し、水を50質量%まで加えても固形分が析出し難い。また、前記低反射膜形成用塗布液に、水を1質量%以上加えることでガラス板との濡れ性が良くなり、塗布が容易となる。本発明の低反射膜の形成方法に用いる、低反射膜形成用塗布液において、全質量に対し、水の含有を1質量%以上、50質量%以下の間で任意に調製できる。
【0109】
よって、本発明の低反射膜の形成方法において、水の含有が1質量%以上、50質量%以下の低反射膜形成用塗布液を用いることが可能である。好ましくは、1質量%以上、30質量%以下である。さらに、好ましくは、1質量%以上、10質量%以下である。
【0110】
本発明の低反射膜の形成方法による低反射膜は、多数の微小ボイドを含む膜となり、異なる形状シリカ微粒子を、金属酸化物がバインダーとなり接合させることで形成したボイドに取り込まれた屈折率1の空気層の効果により、低屈折率となる。
【0111】
本発明の低反射膜の形成方法において、低反射膜形成用塗布液の基体への塗布方法は、ゾルゲル法により基体への成膜が可能である。
【0112】
例えば、蒸着法およびスパッタリング法等の真空中における成膜法では、数種類の組成物を有する混合膜を、基体表面への1回の成膜で得ることは難しいが、ゾルゲル法等の湿式塗布法では基体表面への1回の塗布で形成することが容易であり、紫外、可視および赤外域の幅広い調光膜への応用が期待され、汎用の自動車用ガラス(フロントガラス内側)、照明器具の保護部材、特に太陽電池用カバーガラスの製造に、ゾルゲル法は好適に使用される。
【0113】
低反射膜形成用塗布液の基体、特に基板上への塗布は、スピーンコーター法、浸漬引き上げ法、即ち、ディップコーティング法、スプレー法、ローラーコート法、フローコート法、スクリーン印刷法、刷毛塗り、インクジェット等の方法により行うことができる。
【0114】
各種塗布方法により基体に塗布形成された被膜は、80℃以上、150℃以下で10分から6時間乾燥した後、さらに加熱焼成することが好ましい。加熱温度は、基材の耐熱温度に応じて決定される。親水性等の特性が維持できる温度範囲で焼成するのが好ましい。プラスチック製透明基体の場合、概ね300℃以下で処理することが好ましい。また、無機質のガラス板においては、焼成時間を調整することにより、750℃程度の高温での焼成も可能である。好ましい態様として、500℃以上、800℃以下で2分〜3分間、即ち、120秒〜180秒間、焼成することにより、耐磨耗性に優れた被膜が得られる。
【0115】
低反射膜形成用塗布液を調製する際に、タングステン、ニオブ、タンタルの化合物は、特にこれら金属のアルコキシド、珪タングステン酸はコロイダルシリカ任意に混ぜることが可能である。
【0116】
特に、本発明の低反射膜の形成方法において、低反射膜形成用塗布液にタングステン、ニオブ、タンタルの化合物を含有させた場合には、即ち、これら金属のアルコキシド、珪タングステン酸を用いた低反射膜形成用塗布液をガラス板に塗布した後、加熱焼成し、低反射膜が形成された低反射部材を得る際の加熱焼成条件は、500℃以上であることが好ましい。上限は、ガラスの変形も考慮して800℃以下であり、800℃以上より高くする必要はない。所望の焼成温度に達してから、2分〜3分間、即ち、120秒〜180秒間、加熱保持することで硬質な低反射膜が得られる。
【0117】
このように基体にガラス板を用い、前記コロイダルシリカと、タングステン、ニオブまたはタンタルから選ばれた少なくとも1種の金属化合物を組合せた低反射膜形成用塗布液を基体に前記方法で塗布した後、加熱焼成することで、耐摩耗性に優れた低反射部材が得られた。
【0118】
3.コロイダルシリカを含む分散液
次いで、本発明おける低反射膜形成用塗布液に使用するコロイダルシリカを含む分散液について説明する。
【0119】
本発明の低反膜にシリカ微粒子を含有させるためのコロイダルシリカを生成するためのケイ素化合物としては、以下の物が挙げられる。
【0120】
例えば、ケイ素化合物としては、アルコキシドが好ましく、一般式 Si(OR)、(式中、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基またはフェニル基である。)で表されるアルコキシ化合物またはそれらの加水分解物または部分加水分解物であって、特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラノルマルプロポキシシラン、テトラノルマルブトキシシラン、テトラターシャリブトキシシラン等またはその加水分解物が好ましい。また、アルコキシドの−OR基を、塩素原子等のハロゲン原子で置換したものでもよく、例えば、クロロトリエトキシシラン、ジクロロジノルマルブトキシシラン、トリクロロノルマルブトキシシラン等が用いられる。本発明の低反射膜の製造方法においては、これらケイ素化合物を脱水縮合して、長径が5nm以上、100nm以下、長径/短径=2以上、10以下の棒状コロイダルシリカ、粒径が5nm以上、50nm以下の球状コロイダルシリカに調製したものを原料として用いる。
【0121】
4.金属アルコキシド
次いで、本発明おける低反射膜形成用塗布液に使用する金属化合物としての各種金属アルコキシドについて、順を追って説明する。
【0122】
[タングステンアルコキシド]
本発明において、低反射膜に酸化タングステンを含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、タングステンアルコキシドを用いることが好ましい。
【0123】
このような、タングステンアルコキシドには、W(OR)またはW(OR)6−n(nは1≦n≦5、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i−ブチル基、t―ブチル基、n―アミル基、i―アミル基、s―アミル基、2−エチルヘキシル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基またはフェニル基であり、Xはハロゲン原子を表す。)等が挙げられる。また、当該タングステンアルコキシドに、Ca、Fe、Mn等の無機・有機塩およびアルコキシドを共存させて焼成して得られたタングステン酸カルシウム、即ちCaWO、タングステン酸鉄、即ちFeWO、タングステン酸マンガン、即ち、MnWO等のタングステン酸化合物が挙げられる。
【0124】
本発明の低反射の製造方法おいて、中でも、W(OR)6−nClを用いることが好ましい。nは1≦n≦5、Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i−ブチル基、t―ブチル基、n―アミル基、i―アミル基またはs―アミル基である。
【0125】
中でも、W(OR)Clが好ましい。尚、Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i−ブチル基、t―ブチル基、n―アミル基、i―アミル基またはs―アミル基である。
【0126】
W(OR)Clは、低反射膜形成用塗布液の液安定性に有用であり、メタノール、エタノールまたはIPAに分散した分散液とし、コロイダルシリカを含む分散液と混合して使用することが好ましい。
【0127】
W(OR)Clは、IPA溶媒下、下記の反応で合成される。
【0128】
WCl + 5Na(OR) → W(OR)Cl+5NaCl
[ニオブアルコキシド]
本発明において、低反射膜に酸化ニオブを含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、ニオブアルコキシドを用いることが好ましい。
【0129】
このようなニオブアルコキシドとしては、Nb(OR)、Nb(OR)5−n(nは1≦n≦4、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i−ブチル基、t―ブチル基、n―アミル基、i―アミル基、s―アミル基、2−エチルヘキシル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基またはフェニル基である。Xはハロゲン原子である。)またはFe、Mnとの混合アルコキシド(Fe、Mn):Nb=1:2のものがある。
【0130】
本発明において、中でも、Nb(OR)5−nClを用いることが好ましい。nは1≦n≦4、Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i−ブチル基、t―ブチル基、n―アミル基、i―アミル基またはs―アミル基である。
【0131】
中でも、Nb(OR)Clが好ましい。尚、Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i−ブチル基、t―ブチル基、n―アミル基、i―アミル基またはs―アミル基である。
【0132】
Nb(OR)Clは、低反射膜形成用塗布液の液安定性のためには有用であり、メタノール、エタノールまたはIPAに分散した分散液としてコロイダルシリカを含む分散液と混合して使用することが好ましい。
【0133】
Nb(OR)Clは、IPA溶媒下、下記の反応で合成される。
【0134】
NbCl+4Na(OR) → Nb(OR)Cl+4NaCl
[タンタルアルコキシド]
本発明において、低反射膜に酸化タンタルを含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、タンタルアルコキシドを用いることが好ましい。
【0135】
このようなタンタルアルコキシドとしては、Ta(OR)、Ta(OR)5−n(nは1≦n≦4、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i−ブチル基、t―ブチル基、n―アミル基、i―アミル基、s―アミル基、2−エチルヘキシル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基またはフェニル基であり、Xはハロゲン原子である。)またはFe、Mnとの混合アルコキシド(Fe、Mn):Ta=1:2のものが挙げられる。
【0136】
本発明において、中でも、Ta(OR)5−nClを用いることが好ましい。nは1≦n≦4、Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i−ブチル基、t―ブチル基、n―アミル基、i―アミル基またはs―アミル基である。
【0137】
中でも、Ta(OR)Clが好ましく、Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i−ブチル基、t―ブチル基、n―アミル基、i―アミル基またはs―アミル基である。
【0138】
Ta(OR)Clは、低反射膜形成用塗布液の液安定性のために有用であり、メタノール、エタノールまたはIPAに分散した分散液としてコロイダルシリカを含む分散液と混合して使用することが好ましい。
【0139】
Ta(OR)Clは、IPA溶媒下、下記の反応で合成される。
【0140】
TaCl+4Na(OR) → Ta(OR)Cl+4NaCl
[チタンアルコキシドおよび錯体]
本発明において、低反射膜に酸化チタンを含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、チタンアルコキシドを用いることが好ましい。
【0141】
このようなチタンアルコキシドとしては、一般式 Ti(OR) (Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基またはフェニル基である。)で表されるアルコキシ化合物またはそれらの加水分解ゾルが挙げられ、テトラエトキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタンまたはテトラノルマルブトキシチタンが好適に用いられる。またそれらの縮重合した2〜10量体も用いられる。
【0142】
またチタンアルコキシドの−ORが塩素原子等のハロゲン原子に置換したものでもよく、例えば、クロロトリエトキシチタン、ジクロロジノルマルブトキシチタンまたはトリクロロノルマルブトキシチタン等を用いることも可能である。
【0143】
またチタン金属錯体は、一般式 Ti(OR)4−n で表される。式中、ORはアルコキシ基、Y:はキレートを示す。n:0〜3の整数を示す。Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基またはフェニル基である。
【0144】
[ジルコニウムアルコキシド]
本発明において、低反射膜に酸化ジルコニウムを含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、ジルコニウムアルコキシドを用いることが好ましい。
【0145】
このようなジルコニウムアルコキシドとしては、一般式 Zr(OR)、(Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基またはフェニル基である。)で表されるアルコキシ化合物またはそれらの加水分解ゾルが挙げられる。
【0146】
かかるZrアルコキシドとしては、テトラエトキシジルコニウム、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウムまたはテトラノルマルブトキシジルコニウムおよびそれらの加水分解物である水酸化ジルコニウムゾル等が好適に用いられる。
【0147】
またZrアルコキシドの−ORがハロゲンに置換したものでもよく、例えば、クロロトリエトキシジルコニウム、ジクロロジノルマルブトキシジルコニウムまたはトリクロロノルマルブトキシジルコニウム等が挙げられる。
【0148】
[スズアルコキシド]
本発明において、低反射膜に酸化スズを含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、スズアルコキシドを用いることが好ましい。
【0149】
このようなスズアルコキシドとしては、テトラエトキシスズ、テトラノルマルプロポキシスズ、テトライソプロポキシスズもしくはテトラノルマルブトキシスズ等のスズアルコキシドまたはそれらの加水分解ゾルが挙げられる。SnOは半導体であり、本発明の親水性低反射部材に有する親水性低反射膜に帯電防止の機能を与える。
【0150】
[アルミニウムアルコキシド]
本発明において、低反射膜に酸化アルミニウムを含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、アルミニウムアルコキシドを用いることが好ましい。
【0151】
このようなアルミニウムアルコキシドは、一般式Al(OR)(Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基またはフェニル基である。)で表されるアルコキシ化合物またはそれらの加水分解ゾルであって、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリノルマルプロポキシアルミニウムまたはトリセカンダリブチルアルミニウムが挙げられ、好適に用いることができる。
【0152】
また、アルミニウムアルコキシドの−ORを、塩素原子等のハロゲン原子で置換したものでもよく、クロロジイソプロポキシアルミニウム、クロロジセカンダリブチルアルミニウム、ジクロロイソプロポキシアルミニウムまたはジクロロセカンダリブチルアルミニウムが挙げられる。
【0153】
アルミニウム金属錯体は、一般式Al(OR)3−n、1≦n≦3で表される。式中、ORはアルコキシド、Y:はキレートを示す。ここでnは0〜3の整数を示す。Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基またはフェニル基である。また、キレートとしてはアセチルアセトン(以後acacと略すこともある)、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸プロピル、トリフロロアセチルアセトン、ヘキサフロロアセチルアセトン、メタンスルフォン酸またはトリフロロメタンスルフォン酸が挙げられる。さらに、アルミニウムアルコキシドとこれらアルミニウム金属錯体の縮重合した2〜3量体も挙げられる。
【0154】
[ハフニウムアルコキシド]
本発明において、低反射膜に酸化ハフニウムを含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、ハフニウムアルコキシドを用いることが好ましい。
【0155】
本発明の低反射膜の製造方法において、低反射膜に酸化ハフニウムを含有させるためのハフニウムアルコキシドには、一般式 Hf(OR) (Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基またはフェニル基である。)で表されるアルコキシ化合物またはそれらの加水分解ゾルが挙げられる。
【0156】
かかるハフニウムアルコキシドには、テトラエトキシハフニウム、テトラノルマルプロポキシハフニウム、テトライソプロポキシハフニウムまたはテトラノルマルブトキシハフニウムおよびそれらの加水分解物である水酸化ハフニウムゾル等が好適に用いられる。
【0157】
またハフニウムアルコキシドの−ORがハロゲンに置換したものでもよく、例えば、クロロトリエトキシハフニウム、ジクロロジノルマルブトキシハフニウムまたはトリクロロノルマルブトキシハフニウムが挙げられる。
【0158】
[クロムアルコキシドおよび錯体]
本発明において、低反射膜に酸化クロムを含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、クロムアルコキシドを用いることが好ましい。
【0159】
このようなクロムアルコキシドには、一般式Cr(OR)(Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基またはフェニル基である。)で表されるアルコキシ化合物またはそれらの加水分解ゾルであるトリエトキシクロム、トリイソプロポキシクロム、トリノルマルプロポキシクロムまたはトリセカンダリブチルクロムが挙げられ、好適に用いることができる。
【0160】
その他錯体としてクロムアセチルアセトン、無機塩として硝酸クロム、塩化クロム、酢酸クロム、リン酸クロム、有機塩としてオクチル酸クロムまたはナフテン酸クロムも用いられる。
【0161】
[モリブデンアルコキシド]
本発明において、低反射膜に酸化モリブデンを含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、モリブデンアルコキシドを用いることが好ましい。
【0162】
モリブデンアルコキシドは、Mo(OR)、Mo(OR)6−n、(1≦n≦5であり、Rは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基またはフェニル基であり、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)で表される。当該モリブデンアルコキシドにCa、Fe、Mn等の無機・有機塩およびアルコキシドを共存させて焼成後に得られた、モリブデン酸カルシウム、即ちCaMoO、モリブデン酸鉄、即ちFeMoO、モリブデン酸マンガン、即ちMnMoO等のモリブデン酸化合物を用いてもよい。
【0163】
[希土類アルコキシド・錯体]
本発明において、低反射膜に希土類を含有させるためには、低反射膜形成用塗布液中において析出することなく安定性に優れる、希土類アルコキシドを用いることができ、セリウムアルコキシドまたはランタンアルコキシドを用いることができる。
【0164】
希土類アルコキシドは、一般式 M(OR)(Mは希土類元素:La、Y、Ce、Pr、Nd、SmまたはEuを表し、Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリブチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基またはフェニル基である。)で表される。セリウムアルコキシドとしては、トリエトキシセリウム、トリイソプロポキシセリウムまたはトリノルマルプロポキシセリウムを挙げることができる。ランタンアルコキシドには、トリエトキシランタンがあり、トリノルマルプロポキシイットリウム、トリエトキシサマリウムも使用される。
【0165】
その他、セリウムまたはランタンの錯体としてアセチルアセトン塩、希土類の無機塩として硝酸塩、塩化物、酢酸塩、リン酸塩、有機塩としてオクチル酸塩、ナフテン酸塩も用いられる。
【0166】
[シリカゾル]
ケイ素または金属の塩化物あるいはアルコキシドを加水分解して得られる酸化物を溶媒置換して製造したシリカおよび金属のゾルが市販されており、本発明の低反射膜の製造方法において、シリカ微粒子の原料に用いることができる。
【0167】
例えば、オルガノシリカゾルは、日揮触媒化成株式会社より、商品名、オスカル1132、オスカル1232、オスカル1332、オスカル1432またはオスカル1632が、日産化学工業株式会社より、商品名、メタノールシリカゾル、IPA−ST、IPA−ST−UP、IPA−ST−ZL、EG−ST、NPC−ST−30、DMAC−ST、MEK−ST、市販される。オルガノアルミナゾルは、川研ファインケミカル株式会社より、商品名、アルミゾル−CSA55、アルミゾル−CSA110ADが市販される。
【0168】
さらに、有機溶剤系酸化アンチモンゾルは、日産化学工業株式会社より、商品名、サンコロイドATL−130、サンコロイドAMT−130が市販される。
【0169】
また、水性分散液として市販されているゾルを溶媒置換して使用することもできる。
【0170】
このような水性ゾルは、例えば、日産化学工業株式会社より、商品名、スノーテックス40、スノーテックスO、スノーテックスCまたはスノーテックスNが市販され、日揮触媒化成株式会社より、商品名、カタロイドS−30H、カタロイドSI−30、カタロイドSNまたはカタロイドSAが市販され、旭電化工業株式会社より、商品名、アデライトAT−30、アデライトAT−20N、アデライトAT−20AまたはアデライトAT−20Qが市販され、日本化学工業株式会社より、商品名、シリカドール−30、シリカドール−20Aまたはシリカドール−20Bが市販され、水系酸化ケイ素ゾルは、日産化学工業株式会社より、商品名、アルミナゾル−100、アルミナゾル−200またはアルミナゾル−520が市販され、水系アルミナゾルは、川研ファインケミカル株式会社より、商品名、アルミナクリアーゾル、アルミゾル−10、アルミゾル−20、アルミゾル−SV−102またはアルミゾル−SH5が市販され、水系酸化アンチモンゾルは、日産化学工業株式会社より、商品名、A−1550、A−2550が市販され、水系酸化ジルコニウムゾルは、日産化学工業株式会社より、NZS−30A、NZS−30Bが市販され、水系酸化スズゾルは、多木化学株式会社より、商品名、セラメースS−8、セラメースC−10が市販され、水系酸化チタンゾルは、多木化学株式会社より、商品名、タイノックA−6、タイノックM−6が市販され、酸化スズと酸化アンチモンから成る水系ゾルは、多木化学株式会社より、商品名、セラメースF−10が市販される。
【0171】
5.低反射膜形成用塗布液の安定性
透明基板に塗布する低反射膜形成用塗布液は、長期安定性が必要であり、室温で30日以上、保存できることが好ましい。低反射膜形成用塗布液に、上記の加水分解可能な金属アルコキシドを混合する際、1種類のみの金属アルコキシドの混合で、低反射膜に、目的とする波長の屈折率の低減が図れない場合は、2〜4種の金属化合物を混合させる必要がある。このような混合において、金属化合物が1種類の場合は比較的安定なゾルとして存在できる場合であっても、混合した金属化合物の相溶性が合わない場合はゲル化、凝集、沈殿してしまい均一な塗膜を得ることが困難となる場合がある。
【0172】
一般的にコロイドの安定性は、ゼータ電位が重要であり、液中に分散したコロイド粒子は、多くの場合、それ自体のイオン性、双極子特性等により正または負に帯電しており、これらのコロイド粒子は、表面電荷を中和する量の反対符号の電荷で囲まれ、固定層と拡散層から成る電気二重層を形成している。
【0173】
ゼータ電位とは、溶液中の微粒子の周りに形成する電気二重層中の、液体流動が起こり始める「すべり面」の電位として定義される。ゼータ電位がゼロに近づくと、コロイド粒子の相互の反発力は弱まりやがて凝集してしまう。ゼータ電位は界面の性質を評価する上で重要な値である。特にコロイドの分散・凝集性、相互作用等の安定性を制御する上での重要な指標となる。コロイド粒子の凝集や分散の制御は、金属アルコキシドを複数混合して使用する場合、コロイドの安定性、ポットライフに考慮して、使用する金属アルコキシドを慎重に選択する必要がある。
【0174】
コロイド粒子は表面積をなるべく小さくした方が安定する。表面積が大きいと、コロイド粒子は凝集しようとする傾向がある。金属アルコキシドは、溶液中で極めて小さい微粒子として存在し、コロイダルシリカの様な比較的大きいコロイド粒子の周囲を取り巻くようにすることで、コロイド粒子がより分散し、安定化すると推定される。
【0175】
一方、コロイド粒子は帯電しており、粒子間には静電的な反発が働く。ゼータ電位が、コロイドの分散・凝集性、相互作用等、安定性の指標となる。ゼータ電位がゼロに近づくとコロイド粒子の凝集する傾向が静電的反発に打ち勝つため、コロイド粒子の凝集が起こる。逆にゼータ電位の絶対値を大きくするような添加剤をコロイド粒子表面に吸着させることや、pH制御で安定なコロイドを得ることが可能となる。
【0176】
また、ゾル中の金属酸化物前駆体、例えば、金属アルコキシドの安定性を比較したとき、アルコキシシラン等のSi系アルコキシドは加水分解が遅く、経時によるゲル化および固形分の析出なく比較的安定であるが、Al系、Zr系、Ti系、Sn、遷移金属、希土類系のアルコキシドは不安定であることが、当業者には知られている。
【0177】
本発明の低反射膜の形成方法に使用する低反射膜形成用塗布液は、棒状および球状の形状の異なるコロイダルシリカと、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、ハフニウム、クロム、モリブデンまたは希土類(ランタン、セリウム)から選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシドまたはその加水分解物が混合したものであり、特に、前記コロイダルシリカと、タングステン、ニオブまたはタンタルから選ばれた少なくとも1種の金属アルコキシドの組合せにおいて長期に安定であることを見出したものである。
【0178】
6.低反射部材
シリカのみからなるシリカコート膜を表面に形成してなる低反射部材は、波長500nmにおける透過率が高い。異なる形状のシリカ微粒子を、金属酸化物をバインダーとし接合させた本発明の低反射膜を表面に形成した低反射部材においても、波長500nmをピークとする透過率曲線を与えるものと類推された。しかしながら、実際には、最大透過率のピークはやや長波長側、500nm〜900nmの範囲内にシフトして、それに伴い長波長領域の透過率が高くなる傾向がある。このことは、本発明の低反射膜が形成された低反射部材の平均透過率が高くなる要因である。
【0179】
シリカ微粒子の全個数の90%以上が、長径が5nm以上、100nm以下、長径/短径=2以上、10以下である棒状シリカ微粒子と、粒径が5nm以上、50nm以下である球状シリカ微粒子を含む分散液に、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、ハフニウム、クロム、モリブデン、セリウムおよびランタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属化合物を含む分散液を混合させてなる低反射膜形成用塗布液を透明基体に塗布した後に加熱焼成して、低反射膜を形成してなる低反射は、この傾向が顕著であり、500nm以上、1200nm以下の波長域において、透過率が改善された。これは前記金属アルコキシドの焼成によって生じた金属酸化物の含有効果による。
【0180】
シリカ微粒子と各金属酸化物、即ち、酸化タングステン(WO、屈折率1.75)、酸化ニオブ(五酸化ニオブ:Nb、屈折率1.9)、酸化タンタル(五酸化タンタル:Ta、屈折率2.0)、酸化チタン(TiO、屈折率2.2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO、屈折率1.85)、酸化スズ(SnO、屈折率1.7、酸化アルミニウム(アルミナ:Al、屈折率1.65)、酸化ハフニウム(ハフニア:HfO、屈折率1.90)、酸化クロム(Cr、屈折率2.1)、酸化モリブデン(Mo0、Mo0、屈折率1.80)、酸化セリウム(セリア:CeO、屈折率1.8)または酸化ランタン(La、屈折率1.75)については、それぞれの相性もあり、組合せにおいて、単なる屈折率の単純な平均値にはならない。シリカ微粒子と金属酸化物が共存する場合、その組合せによって特定の波長範囲の透過率を高める傾向が見られる。当該波長の範囲を厳密に規定することはできないが、金属酸化物の屈折率が低い場合は、シリカ単独の透過率曲線の最大値を示すピークよりも、やや長波長側にシフトする。そして金属酸化物の屈折率が高くなるに従い、さらに長波長側に最大値のピークを示すようになる。
【0181】
従って、この性質を利用して、屈折率の異なる数種の金属酸化物をシリカ微粒子と混合した場合、例えば、屈折率の比較的低い金属酸化物は可視領域の透過性を、それより屈折率の高い金属酸化物はさらに長い波長領域の透過性を高める傾向にあるので、これらを適宜組合せることにより、金属酸化物が屈折率調整材として働き、幅広い波長で透過率を増大させると思われる。
【0182】
本発明の低反射膜を形成するための基体としての透明基板には、無機質のガラス基材、以外に有機質のプラスチック製基材等を用いることが出来る。無機質のガラス基材の例としては、ソーダライムシリケートガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、バリウム硼珪酸ガラスまたは石英ガラス等の板状のものを用いることができる。さらには、これらガラス基材は、クリアガラス品、グリーン、ブロンズ等の着色ガラス品、UV、IRカットガラス等の機能性ガラス品、強化ガラス、半強化ガラス、合せガラス等の安全ガラス品も使用されうる。また、セラミックスとしてはSi、SiC、サファイヤ、Siウェハー、GaAs、InPまたはAlN等の基板にも使用される。
【0183】
プラスチック製基材の例としては、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)またはポリイミド等が挙げられる。
【0184】
本発明の低反射膜は、単層膜においても極めて低い反射率を示すため、透明基体の片面または両面に形成した場合、高い平均透過率の低反射部材が得られた。
【0185】
本発明の低反射部材は、太陽電池用カバーガラスとして有用である。太陽電池用カバーガラスとして使用する場合においては、高い平均透過率および低い平均反射率が要求されるうえ、太陽電池は太陽光に常時暴露されるため、防汚性、耐水性および耐候性等を併せ持つ材料が望まれる。前述のように本発明の形状の異なる前記コロイダルシリカと、タングステン、タンタルまたはニオブから選ばれた少なくとも1種の金属化合物を用いた本発明の低反射部材としての低反射膜付ガラス板は、防汚性、耐熱性または耐摩耗性等の、耐候性に優れる。
【0186】
また、近年開発されている、CIS薄膜系の薄膜太陽電池および結晶性シリコンは、波長400nm以上、1200nm以下の幅広い吸収を有しており、従来のアモルファスシリコン系と比較して長波長域の光を吸収することが可能で、その吸収のピークが900nm付近にある。前述のように、本発明の低反射膜の形成方法による低反射膜は、紫外・可視光波長域、300nm以上、800nm以下、および近赤外波長域、800nm以上、1200nm以下での高い光透過性を有するので、アモルファスシリコン系太陽電池はもちろんのこと、長波長域に吸収を有する太陽電池用のカバーガラスとして好適に用いられる。
【実施例】
【0187】
実施例に基づき、本発明の低反射膜およびその形成方法およびそれを用いた低反射部材を示すが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0188】
最初に基体上に低反射膜を形成するための低反射膜形成用塗布液について説明する。
【0189】
[タングステンアルコキシドを用いた低反射膜形成用塗布液]
形状の異なる2種類のコロイダルシリカ(棒状コロイダルシリカ+球状コロイダルシリカ)とタングステンアルコキシドを用いた低反射膜形成用塗布液であって、コロイダルシリカに対するタングステンアルコキシドの含有が酸化物換算で14質量%である低反射膜形成用塗布液(実施例1)、コロイダルシリカに対するタングステンアルコキシドの含有が酸化物換算で40質量%である低反射膜形成用塗布液(実施例2)およびコロイダルシリカに対するタングステンアルコキシドの含有が酸化物換算で50質量%である低反射膜形成用塗布液(比較例1)を用意した。
【0190】
次いで、棒状コロイダルシリカとタングステンアルコキシドを用い、棒状コロイダルシリカに対するタングステンアルコキシドの含有が20質量%の低反射膜形成用塗布液(実施例3)を用意した。
【0191】
次いで、球状コロイダルシリカとタングステンアルコキシドを用い、球状コロイダルシリカに対するタングステンアルコキシドの含有が20質量%の低反射膜形成用塗布液(実施例4)を用意した。
【0192】
[ニオブアルコキシドを用いた低反射膜形成用塗布液]
形状の異なる2種類のコロイダルシリカ(棒状コロイダルシリカ+球状コロイダルシリカ)とニオブアルコキシドを用いた低反射膜形成用塗布液であって、コロイダルシリカに対するニオブアルコキシドの含有が酸化物換算で25質量%である低反射膜形成用塗布液(実施例5)、コロイダルシリカに対するニオブアルコキシドの含有が酸化物換算で40質量%である低反射膜形成用塗布液(実施例6)およびコロイダルシリカに対するニオブアルコキシドの含有が酸化物換算で50質量%である低反射膜形成用塗布液(比較例2)を用意した。
【0193】
次いで、棒状コロイダルシリカとニオブアルコキシドを用い、棒状コロイダルシリカに対するニオブアルコキシドの含有が20質量%の低反射膜形成用塗布液(実施例7)を用意した。
【0194】
次いで、球状コロイダルシリカとニオブアルコキシドを用い、球状コロイダルシリカに対するニオブアルコキシドの含有が20質量%の低反射膜形成用塗布液(実施例8)を用意した。
【0195】
[タンタルアルコキシドを用いた低反射膜形成用塗布液の調製]
形状の異なる2種類のコロイダルシリカ(棒状コロイダルシリカ+球状コロイダルシリカ)とタンタルアルコキシドを用いた低反射膜形成用塗布液であって、コロイダルシリカに対するタンタルアルコキシドの含有が酸化物換算で20質量%である低反射膜形成用塗布液(実施例9)、コロイダルシリカに対するタンタルアルコキシドの含有が酸化物換算で40質量%である低反射膜形成用塗布液(実施例10)およびコロイダルシリカに対するタンタルアルコキシドの含有が酸化物換算で50質量%である低反射膜形成用塗布液(比較例3)を用意した。
【0196】
次いで、棒状コロイダルシリカとタンタルアルコキシドを用い、棒状コロイダルシリカに対するタンタルアルコキシドの含有が20質量%の低反射膜形成用塗布液(実施例11)を用意した。
【0197】
次いで、球状コロイダルシリカとタンタルアルコキシドを用い、球状コロイダルシリカに対するタングステンアルコキシドの含有が20質量%の低反射膜形成用塗布液(実施例12)を用意した。
【0198】
[比較例の塗布液]
次いで、2種類のコロイダルシリカのみを用い、金属アルコキシドを用いない塗布液(比較例4)を用意した。また、2種類のコロイダルシリカとTEOSを用いた塗布液(比較例5)を用意した。また、タングステンアルコキシドのみ(比較例6)、ニオブアルコキシドのみ(比較例7)またはタンタルアルコキシド(比較例8)のみからなる塗布液を用意した。
【0199】
実施例1〜12による低反射膜形成用塗布液および比較例1〜8の塗布液をガラス基板に被覆し低反射膜を成形し、得られた低反射膜付きガラス基板の物性評価を行った。尚、ガラス基板には、フロート法によるソーダライムシリケートガラスを用いた。
【0200】
以上、実施例1〜12の低反射膜形成用塗布液および比較例1〜8の塗布液の組成について、表1に纏める。
【表1】

【0201】
次いで、実施例1〜12の低反射膜形成用塗布液および比較例1〜8の塗布液を、厚み3mm、大きさ100mm×100mmの無色透明なガラス基板に塗布し低反射膜付きガラス基板を得た。得られた低反射膜付きガラス基板の物性評価方法を表2に示す。
【表2】

【0202】
以下、本発明の実施例1〜12、比較例1〜5について詳細に説明する。
【0203】
[実施例1〜4、比較例1(タングステンアルコキシドを用いた例)]
以下、実施例1〜4、比較例2にタングステンアルコキシドを用いた例を示す。
【0204】
実施例1
<コロイダルシリカ分散液の調製>
容量1000mlの3口フラスコに、棒状コロイダルシリカのイソプロパノール(以下、IPAと略する)分散液(日産化学工業株式会社製、品番、IPA−ST、固形分濃度30.3質量%、長径10nm〜20nm)16.34gを量り入れ、エタノール231.21gを撹拌しながら加えた。次いで、球状コロイダルシリカの分散液(日揮触媒化成株式会社製、品番、OSCAL1432、固形分濃度20.2質量%、粒径5nm〜10nm)12.28gに、エタノール111.50gを撹拌しながら加えたものを混合して、コロイダルシリカ分散液、371.3gを得た。
【0205】
棒状コロイダルシリカと球状コロイダルシリカの混合比は質量比で67:33であった。
【0206】
<タングステンアルコキシド分散液の調製>
窒素気流下で、六塩化タングステン(WCl)5.86gを、容量300mlの3口フラスコに採取し、5℃に氷冷したIPAを79.5g加えた。これに金属ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)、1.70gを加え、次に75℃下に24時間、窒素雰囲気中で還流を行い、室温(約20℃)まで冷却した。次いで、加圧ろ過を行い、タングステンアルコキシド(W(OCH(CHCl)と副生成物のNaClを濾別した。濾液中のタングステンの濃度はWO換算で4.22質量%であった。このようにして、タングステンアルコキシド(W(OCH(CHCl)の分散液を約70g得た。
【0207】
<低反射膜形成用塗布液の調製>
前記コロイダルシリカ分散液179.8gに、窒素雰囲気中で室温下、撹拌しながら、上記で合成したタングステンアルコキシド分散液、13.9gを3時間かけて徐々に滴下し、淡茶褐色の透明な液を得た。混合後、さらに窒素雰囲気下、70℃下に6時間還流して、コロイダルシリカとタングステンアルコキシドを酸化物換算の質量比でSiO:WO=86:14、即ち、タングステンアルコキシドが酸化物換算で14質量%になるように調製し、固形分濃度2.2質量%の低反射膜形成用塗布液とした。
【0208】
<低反射膜付きガラス基板の作製>
厚み3mm、大きさ100mm×100mmのガラス基板の表面をアルミナ粒子で湿式研磨し、蒸留水、次いでIPAで洗浄後、100℃に加熱して乾燥させた。表面の状態を確認するために、純水の接触角を測定したところ、接触角5°以下の強い親水性を示し、清浄であった。
【0209】
次いで、ガラス基板の表面に、ディップ法による低反射膜の形成を行った。
【0210】
前記低反射膜形成用塗布液に、洗浄したガラス基板を浸漬し、上向きに、速度3.4mm/secで引き上げ、低反射膜形成用塗布液をガラス基板の両面に塗布した。50℃下に30分間乾燥させ、さらに110℃で60分乾燥させた。これを750℃に加熱した焼成炉に投入して、150秒間保持した後に取り出し、室温下で急冷し、淡青色の反射色を有する低反射膜を両面に成膜してなる低反射膜付きガラス基板を得た。
【0211】
図1に、タングステンアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板表面の図面代用SEM写真を示す。
【0212】
前記低反射膜形成用塗布液を用いてガラス基板上に形成した低反射膜のSEMによる拡大写真である。整然と並ぶ粒子はシリカ微粒子であり、シリカ微粒子はバインダーの役割を果たすタングステン酸化物により接合され、微小ボイドを含むポーラスな膜でありながら、硬質の膜であった。
【0213】
<低反射膜付きガラス基板の評価>
図2に、タングステンアルコキシドを用いて得られた低反射膜付きガラス基板の透過率曲線を示す。
【0214】
前記低反射膜形成用塗布液を用いてゾルゲル法により、ガラス基板表面に低反射膜を形成した。1の透過率曲線が、塗布槽からの引き上げ速度3mm/secで前記ガラス基板に塗付した低反射膜付きガラス基板の透過率曲線、同様に、2の透過率曲線が引き上げ速度5mm/secでの低反射膜付きガラス基板の透過率曲線、3の透過率曲線が引き上げ速度7mm/secでの低反射膜付きガラス基板の透過率曲線である。引き上げ速度が速くなるにつれて、膜厚が厚くなり、透過率の最大値のピークは長波長側に移動する。リファレンスの低反射膜を有さないガラス基板の透過率曲線(Rで表す)に比べると、全波長域において、透過率が向上している。
【0215】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、前述の引き上げ速度3.4mm/secの条件で、低反射膜を両面に形成してなる低反射膜付きガラス基板の平均透過率は98.0%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が7.5%向上した。
【0216】
次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、108nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.298であり、低反射膜付きガラス基板として満足のいく性能が得られていた。
【0217】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。外観は、やや擦り傷がありヘイズが見えたが、膜は剥離しておらず、平均透過率を測定したところ、97.4%であり、試験前に比べ、0.6%低下した。また純水の接触角を測定したところ6.5°であり、強い親水性を示した。
【0218】
また、この低反射膜付きガラス基板の、室温(25℃)、相対湿度50%下で30日間経過後の表面抵抗値を測定したところ、9.0exp10Ω.cmであり、優れた帯電防止性能を保持していることを確認した。
【0219】
実施例2
形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液を、実施例1と同様に、調製した。次いで、当該コロイダルシリカ分散液に、実施例1で調整したタングステンアルコキシド分散液を、コロイダルシリカの質量に対して、タングステンアルコキシドが酸化物換算で40質量%含有される様に加え、即ち、SiO:WO=60:40になるように加え、固形分濃度1.9質量%の低反射膜形成用塗布液を調製した。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0220】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.4mm/secの条件で、実施例1と同様に低反射膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率は97.3%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が6.8%向上した。 次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、105nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.279であり、低反射膜付きガラス基板として満足の行く性能が得られていた。
【0221】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。外観は、やや擦り傷がありヘイズが見えたが、膜は剥離しておらず、平均透過率を測定したところ、96.6%であり、試験前に比べ、0.7%低下した。また純水の接触角を測定したところ12°であり、強い親水性を示した。
【0222】
また、この低反射膜付きガラス基板の、室温(25℃)、相対湿度50%下で30日間経過後の表面抵抗値を測定したところ、5.2exp10Ω.cmであり、優れた帯電防止性能を保持していることを確認した。
【0223】
比較例1
形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液を、実施例1と同様に調製した。次いで、当該コロイダルシリカ分散液に、実施例1で調整したタングステンアルコキシド分散液を、コロイダルシリカの質量に対して、タングステンアルコキシドが酸化物換算で50質量%含有される様に加え、即ち、SiO:WO=50:50になるように加え、固形分濃度1.9質量%の低反射膜形成用塗布液を調製した。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して膜付きガラス基板を得た。
【0224】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.4mm/sec条件で、実施例1と同様に膜を両面に形成してなる、膜付き基板の平均透過率は、膜を設ける前のガラス基板より1.6%向上し、92.1%であり、低反射膜付きガラス基板としての所望の性能は得られなかった。
【0225】
次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、122nmであった。また、膜の屈折率をエリプソメーターで測定したところ、n=1.362であった。屈折率は、所望より高い値であった。
【0226】
これは、コロイダルシリカに対するタングステン化合物の含有が、酸化物換算で5質量%以上、40質量%以下の好ましい含有範囲より外れた結果である。
【0227】
実施例3
実施例1で用いた棒状コロイダルシリカのIPA分散液(日産化学工業株式会社製、品番、IPA−ST、固形分濃度30.3質量%、長径10nm〜20nm)をエタノールで薄めた後、タングステンアルコキシドが酸化物換算での質量比でSiO:WO=80:20、即ち、タングステンアルコキシドが酸化物換算で20質量%になるように調製し、固形分濃度2.0質量%の低反射膜形成用塗布液とした。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0228】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.4mm/sec条件で、実施例1と同様に低反射膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率は97.5%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が7.0%向上した。 次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、112nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.292であり、低反射膜付き基板として所望の性能が得られていた。
【0229】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。低反射膜の摩擦強度は、ネル布摩耗試験による3000回往復摩擦後の外観は曇りがあり、部分的に剥離があり、実施例1および実施例2の低反射膜付きガラス基板の摩擦強度と比較し劣っていた。
【0230】
これは、特定の粒径の形状の異なるコロイダルシリカ(棒状コロイダルシリカ+球状コロイダルシリカ)を使わず、棒状コロイダルシリカのみを使ったため、摩擦強度に劣る膜が成膜された結果である。
【0231】
実施例4
実施例1で用いた球状コロイダルシリカのIPA分散液(日揮触媒化成株式会社製、品番、OSCAL1432、固形分濃度20.2質量%、粒径5nm〜10nm)をエタノールで薄めた後、タングステンアルコキシドが酸化物換算での質量比でSiO:WO=80:20、即ち、タングステンアルコキシドが酸化物換算で20質量%になるように調製し、固形分濃度2.0質量%の低反射膜形成用塗布液とした。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0232】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.0mm/secの条件で、実施例1と同様に低反射膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率は96.9%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が6.4%向上した。次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、109nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.303であり、低反射膜としての所望の性能が得られていた。
【0233】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。低反射膜の摩擦強度は、ネル布摩耗試験による3000回往復摩擦後の外観は曇りがあり、部分的に剥離があり、実施例1および実施例2の低反射膜付きガラス基板の摩擦強度と比較し劣っていた。
【0234】
これは、特定の粒径の形状の異なるコロイダルシリカ(棒状コロイダルシリカ+球状コロイダルシリカ)を使わず、球状コロイダルシリカのみを使ったため、摩擦強度に劣る膜が成膜された結果である。
【0235】
[実施例5〜8、比較例2(ニオブアルコキシドを用いた例)]
以下、実施例5〜8、比較例2にニオブアルコキシドを用いた例を示す。
【0236】
実施例5
<コロイダルシリカ分散液の調製>
容量1000mlの3口フラスコに、棒状コロイダルシリカのIPA分散液(日産化学工業株式会社製IPA−ST−UP、固形分濃度15.2質量%、長径40nm〜100nm)31.58gを量り入れ、IPA、186.6gを撹拌しながら加えた。次いで、球状コロイダルシリカ(日揮触媒化成株式会社製、品番、OSCAL1632、固形分濃度20.5質量%、粒径8nm〜15nm)23.41gに、IPA、194.8gを撹拌しながら加えたものを混合して、コロイダルシリカ分散液436gを得た。
【0237】
棒状コロイダルシリカと球状コロイダルシリカの混合比は質量比で50:50であった。
【0238】
<ニオブアルコキシド分散液の調製>
窒素気流下で、五塩化ニオブ(NbCl)9.76gを、容量500mlの3口フラスコに採取し、5℃に氷冷したIPAを205g加えた。これに金属ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)3.32gを加え、ニオブアルコキシド(Nb(OCH(CHCl)と副生成物のNaClの混合したスラリーを218g得た。
【0239】
次に75℃で24時間、窒素雰囲気中で還流を行い、室温(約20℃)まで冷却した。次いで、加圧ろ過を行い、ニオブアルコキシド(Nb(OCH(CHCl)と副生成物のNaClを濾別した。濾液中のニオブの濃度はNb換算で2.3質量%であった。この濾液を、二オブアルコキシド(Nb(OCH(CHCl)の分散液とし用いた。
【0240】
<低反射膜形成用塗布液の調製>
前記コロイダルシリカ分散液に、窒素雰囲気中で室温下、撹拌しながら、上記で合成したニオブアルコキシド分散液、139.74gを、3時間かけて徐々に滴下し、乳白色の透明な液を得た。混合後、さらに窒素雰囲気下、70下に8時間還流して、コロイダルシリカとニオブアルコキシドを、酸化物換算の質量比でSiO:Nb=3:1、即ちニオブアルコキシドが酸化物換算で25質量%になるように調製し、これを低反射膜形成用塗布液とした。
【0241】
<低反射膜付きガラス基板の作製>
厚み3mm、大きさ100mm×100mmのガラス基板の表面をアルミナ粒子で湿式研磨し、蒸留水、次いでIPAで洗浄後、100℃に加熱して乾燥させた。表面の状態をみるために、純水の接触角を測定したところ、接触角5°以下の強い親水性を示し、清浄であった。
【0242】
前記低反射膜形成用塗布液に洗浄したガラス基板を浸漬し、ディップ法により、上向きに速度3.0mm/secで引き上げ、低反射膜形成用塗布液をガラス基板の両面に塗布した。50℃下に30分間乾燥させ、さらに110℃で60分乾燥させた。これを750℃に加熱した焼成炉に投入して、150秒間保持した後で取り出し、室温下で急冷し、淡青色の反射色を有する低反射膜を両面に成膜してなる低反射膜付きガラス基板を得た。
【0243】
図3に、ニオブアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板表面の図面代用SEM写真を示す。
【0244】
前記低反射膜形成用塗布液を用いてガラス基板上に形成した低反射膜のSEMによる拡大写真である。整然と並ぶ粒子はシリカであり、シリカ微粒子はバインダーの役割を果たすニオブ酸化物により接合され、微小ボイドを含むポーラスな膜でありながら、硬質の膜となった。
【0245】
<低反射膜付きガラス基板の評価>
図4に、ニオブアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板の透過率曲線を示す。
【0246】
前記低反射膜形成用塗布液を用いてゾルゲル法により、ガラス基板表面に低反射膜を形成した。1の透過率曲線が塗布槽からの引き上げ速度3mm/secで前記ガラス基板に塗付した低反射膜付きガラス基板の透過率曲線、同様に、2の透過率曲線が引き上げ速度5mm/secでの低反射膜付きガラス基板の透過率曲線、3の透過率曲線が引き上げ速度7mm/secでの低反射膜付きガラス基板の透過率曲線である。引き上げ速度が速くなるにつれて、膜厚が厚くなり、透過率の最大値のピークは長波長側に移動する。リファレンスの低反射膜を有さないガラス基板の透過率曲線(Rで表す)に比べると、全波長域において、透過率が向上している。
【0247】
次いで、表2の物性評価方法に従い、引き上げ速度3.0mm/secの条件で、実施例5と同様に低反射膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率を測定したところ、平均透過率は、98.2%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が7.7%向上していた。 次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、113nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.275であり、低反射膜付きガラス基板として満足の行く性能であった。
【0248】
この被膜の摩擦強度をネル布の摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回往復摩擦し低反射膜の摩擦強度を評価した。外観は、ややヘイズはあるが色調は変わらず、平均透過率は97.7%であり、試験前に比べ、0.5%わずかに低下した。純水接触角を測定したところ、6.5°で、強い親水性を示した。
【0249】
また、この低反射膜付きガラス基板の、25℃、相対湿度50%で30日間経過後の表面抵抗値を測定したところ、6.7exp10Ω.cmであり、優れた帯電防止性能を保持していることを確認した。
【0250】
実施例6
形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液を、実施例5と同様に、調製した。次いで、当該コロイダルシリカ分散液に、実施例1で調整したニオブアルコキシド分散液を、コロイダルシリカの質量に対して、ニオブアルコキシドが酸化物換算で40質量%含有される様に加え、即ち、Nb:WO=60:40になるように加え、固形分濃度1.9質量%の低反射膜形成用塗布液を調製した。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0251】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.0mm/secの条件で、実施例5と同様に低反射膜を両面に形成してなる低反射膜付きガラス基板の平均透過率は98.0%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が7.5%向上した。次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、108nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.281であり、低反射膜ガラス基板として満足のいく性能であった。
【0252】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。外観は、やや擦り傷がありヘイズが見えたが、膜は剥離しておらず、平均透過率を測定したところ、97.1%であり、試験前に比べ、0.9%低下した。また純水の接触角を測定したところ18°であり、強い親水性を示した。
【0253】
また、この低反射膜付きガラス基板の、室温(25℃)、相対湿度50%下で30日間経過後の表面抵抗値を測定したところ、11.2exp10Ω.cmであり、優れた帯電防止性能を保持していることを確認した。
【0254】
比較例2
形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液を、実施例5と同様に調製した。次いで、当該コロイダルシリカの分散液に、実施例5で調整したニオブアルコキシドの分散液を、コロイダルシリカの質量に対して、二オブアルコキシドが酸化物換算で50質量%になるように加え、即ち、SiO:Nb=50:50になるように加え、固形分濃度2.0質量%の低反射膜形成用塗布液を調製した。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例3と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0255】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.0mm/secの条件で、実施例5と同様に膜を両面に形成してなる、膜付き基板の平均透過率は、膜を設ける前のガラス基板より、−0.9%低下し、89.6%であり、低反射膜付きガラス基板と言えるものではなかった。
【0256】
次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、115nmであった。また、膜の屈折率をエリプソメーターで測定したところ、n=1.353であり、屈折率は、所望より高い値であった。
【0257】
これは、コロイダルシリカに対する二オブアルコキシドの含有が、酸化物換算で5質量%以上、40質量%以下の好ましい含有範囲より外れた結果である。
【0258】
実施例7
実施例5で用いた棒状コロイダルシリカのIPA分散液(日産化学工業株式会社製IPA−ST−UP、固形分濃度15.2質量%、長径40nm〜100nm)をIPAで薄めた後、ニオブアルコキシドが酸化物換算での質量比でSiO:Nb=80:20、即ち、ニオブアルコキシドが酸化物換算で20質量%になるように調製し、固形分濃度2.0質量%の低反射膜形成用塗布液とした。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0259】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.0mm/secの条件で、実施例5と同様に膜を両面に形成してなる、低反射膜を両面に形成してなる低反射膜付きガラス基板の平均透過率は97.2%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が6.7%向上した。次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、102nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.296であり、低反射膜付きガラス基板として満足の行く性能であった。
【0260】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。低反射膜の摩擦強度は、ネル布摩耗試験による3000回往復摩擦後の外観は曇りがあり、部分的に剥離があり、実施例5および実施例6の低反射膜付き基板の摩擦強度と比較し劣っていた。
【0261】
これは、球状コロイダルシリカを使わず、棒状コロイダルシリカのみを使ったため、摩擦強度に劣る膜が成膜された結果である。
【0262】
実施例8
実施例5で用いた球状コロイダルシリカのIPA分散液(日揮触媒化成株式会社製、品番、OSCAL1632、固形分濃度20.5質量%、粒径8nm〜15nm)をIPAで薄めた後、ニオブアルコキシドが酸化物換算での質量比でSiO:Nb=80
:20、即ち、ニオブアルコキシドが酸化物換算で20質量%になるように調製し、固形分濃度2.0質量%の低反射膜形成用塗布液とした。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0263】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.0mm/secの条件で、実施例5と同様に膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率は97.6%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が7.1%向上した。次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、117nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.284であり、低反射膜付きガラス基板として満足のいく性能であった。
【0264】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。低反射膜の摩擦強度は、ネル布摩耗試験による3000回往復摩擦後の外観は曇りがあり、部分的に剥離があり、実施例5および実施例6の低反射膜付きガラス基板の摩擦強度と比較し劣っていた。
【0265】
これは、特定の粒径の形状の異なるコロイダルシリカ(棒状コロイダルシリカ+球状コロイダルシリカ)を使わず、球状コロイダルシリカのみを使ったため、摩擦強度に劣る膜が成膜された結果である。
【0266】
[実施例9〜12、比較例3(タンタルアルコキシドを用いた例)]
以下、実施例9〜12、比較例3にタングステンアルコキシドを用いた例を示す。
【0267】
実施例9
<コロイダルシリカ分散液の調製>
容量1000mlの3口フラスコに、棒状コロイダルシリカのIPA分散液(日産化学工業株式会社製、品番、IPA-ST−UP、固形分濃度15.2質量%、長径40nm〜100nm)14.28gを量り入れ、IPA106.14gを撹拌しながら加えた。次いで、球状コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名、メタノールシリカゾル、固形分濃度30.2質量%、粒径10nm〜20nm)16.75gに、IPA264.2gを撹拌しながら加えたものを混合して、約401gのコロイダルシリカ分散液、401gを得た。
【0268】
このようにして、コロイダルシリカ分散液において、酸化物(SiO)換算で棒状コロイダルシリカと球状コロイダルシリカの酸化物換算の質量比が、棒状コロイダルシリカ:球状コロイダルシリカ=30:70になるように調製した。固形分濃度は1.8質量%である。
【0269】
<タンタルアルコキシド分散液の調製>
窒素気流下で、五塩化タンタル8.20gを、容量500mlの3口フラスコに採取し、5℃に氷冷したメタノールを255.10g加えた。これに28質量%濃度のナトリウムメトキシド(和光純薬工業株式会社製)、17.66gを加え、タンタルアルコキシド(Ta(OCH(CHCl)と副生成物のNaClの混合スラリー、281gを得た。
【0270】
次に65℃下に16時間、窒素雰囲気中で還流を行い、室温(約22℃)まで冷却後、窒素を流しつつ、加圧ろ過でタンタルアルコキシド(Ta(OCH(CHCl)と副生成物のNaClを濾別した。濾液中のタンタルの濃度はTa換算で1.8質量%であった。
【0271】
<低反射膜形成用塗布液の調製>
前記コロイダルシリカ分散液401gに、窒素雰囲気中で室温下、撹拌しながら、上記で合成したタンタルアルコキシド分散液100.3gを、室温で2時間かけて徐々に滴下し、微乳白色の透明な液を得た。混合後、さらに窒素気流下、60℃下に8時間かけて還流して、コロイダルシリカとタンタルアルコキシドを、酸化物換算の質量比でSiO:Ta=80:20、即ち、タンタルアルコキシドが酸化物換算で20質量%になるように調製し、低反射膜形成用塗布液とした。
【0272】
<低反射膜付きガラス基板の作製>
厚み3mm、大きさ100mm×100mmのガラス基板の表面をアルミナ粒子で湿式研磨し、蒸留水、次いでIPAで洗浄後、100℃に加熱して乾燥させた。表面の状態をみるために、純水の接触角を測定したところ、接触角5°以下の強い親水性を示し、清浄であった。
【0273】
前記低反射膜形成用塗布液に洗浄したガラス基板を浸漬し、ディップ法により、引き上げ速度4.0mm/secで両面に被覆した。50℃下に30分間乾燥させ、さらに110℃で60分乾燥させた。これを750℃に加熱した焼成炉に投入して、150秒間保持した後で取り出し、室温下で急冷し、淡青色の反射色を有する低反射膜を両面に成膜してなる低反射膜付きガラス基板を得た。
【0274】
図5に、タンタルアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板表面の図面代用SEM写真を示す。
【0275】
前記低反射膜形成用塗布液を用いてガラス基板上に形成した低反射膜のSEM鏡による拡大写真である。整然と並ぶ粒子はシリカであり、シリカ微粒子はバインダーの役割を果たすタンタル酸化物により接合され、微小ボイドを含むポーラスな膜でありながら、硬質の膜であった。
【0276】
<低反射膜付きガラス基板の評価>
図6に、タンタルアルコキシドを用いた低反射膜付きガラス基板の透過率曲線を示す。
【0277】
前記低反射膜形成用塗布液を用いてゾルゲル法により、ガラス基板上に低反射膜を形成した。1の透過率曲線が、塗布槽からの引き上げ速度3mm/secで前記ガラス基板に塗付した低反射膜付きガラス基板の透過率曲線、同様に、2の透過率曲線が引き上げ速度5mm/secでの低反射膜付きガラス基板の透過率曲線、3の透過率曲線が引き上げ速度7mm/secでの低反射膜付きガラス基板の透過率曲線である。引き上げ速度が速くなるにつれて、膜厚が厚くなり、透過率の最大値のピークは長波長側に移動する。リファレンスの低反射膜を有さないガラス基板の透過率曲線(Rで表す)に比べると、全波長域において、透過率が向上している。
【0278】
前述の引き上げ速度4.0mm/secにおける低反射膜付きガラス基板の平均透過率を測定したところ、平均透過率は97.9%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率90.5%と比較して、7.4%平均透過率が向上していた。次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、121nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、屈折率はn=1.260であり、低反射膜付きガラス基板として満足のいくものであった。
【0279】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜つきガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。外観はややヘイズが見えたが、色調は変化なく、平均透過率を測定したところ、97.5%であり、試験前に比べ、0.4%低下した。また純水の接触角を測定したところ、8.0°であり、強い親水性を示した。
【0280】
また、この低反射膜付きガラス基板の、25℃、相対湿度50%で30日間経過後の表面抵抗値を測定したところ、9.0exp10Ω.cmであり、優れた帯電防止性能を保持していることを確認した。
【0281】
実施例10
形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液を、実施例9と同様に調製した。次いで、当該コロイダルシリカ分散液に、実施例1で調整したタンタルアルコキシド分散液を、コロイダルシリカの質量に対して、タンタルアルコキシドが酸化物換算で40質量%含有される様に加え、即ち、Ta:WO=60:40になるように加え、固形分濃度1.9質量%の低反射膜形成用塗布液を調製した。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例9と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0282】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.4mm/secの条件で、実施例9と同様に低反射膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率は97.1%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率90.5%と比較して、平均透過率が6.6%向上した。次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、109nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.279であり、低反射膜付きガラス基板として満足のいく性能であった。
【0283】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。外観は、やや擦り傷がありヘイズが見えたが、膜は剥離しておらず、平均透過率を測定したところ、96.5%であり、試験前に比べ、0.6%低下した。また純水の接触角を測定したところ19.3°であり、強い親水性を示した。
【0284】
また、この低反射膜付きガラス基板の、室温(25℃)、相対湿度50%下で30日間経過後の表面抵抗値を測定したところ、3.6exp10Ω.cmであり、優れた帯電防止性能を保持していることを確認した。
【0285】
比較例3
形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液を、実施例9と同様に調製した。次いで、当該コロイダルシリカ分散液に、実施例5で調整したタンタルアルコキシド分散液を、コロイダルシリカの質量に対して、タンタルアルコキシドが酸化物換算で50質量%含有されるように加え、即ち、SiO:Ta=50:50になるように加え、固形分濃度1.7質量%の低反射膜形成用塗布液を調製した。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例9と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0286】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.0mm/secの条件で、実施例9と同様に膜を両面に形成してなる、膜付き基板の平均透過率は、膜を設ける前のガラス基板より、2.7%向上し、93.3%であり、低反射膜付きガラス基板としての所望の性能は得られなかった。
【0287】
次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、107nmであった。また、膜の屈折率をエリプソメーターで測定したところ、n=1.310であり、屈折率は、所望より高い値であった。
【0288】
これは、コロイダルシリカに対するタンタル化合物の含有が、酸化物換算で5質量%以上、40質量%以下の好ましい含有範囲より外れた結果である。
【0289】
実施例11
実施例9で用いた棒状コロイダルシリカのIPA分散液(日産化学工業株式会社製IPA−ST−UP、固形分濃度15.2質量%、長径40nm〜100nm)をIPAで薄めた後、タンタルアルコキシドが酸化物換算での質量比でSiO:Ta=80:20、即ち、タンタルアルコキシドが酸化物換算で20質量%になるように調製し、固形分濃度2.0質量%の低反射膜形成用塗布液とした。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0290】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.0mm/secの条件で、実施例9と同様に膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率は96.9%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が6.5%向上した。次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、115nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.294であり、低反射膜付きガラス基板として満足のいく性能であった。
【0291】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。低反射膜の摩擦強度は、ネル布摩耗試験による3000回往復摩擦後の外観は曇りがあり、部分的に剥離があり、実施例9および実施例10の低反射膜付きガラス基板の摩擦強度と比較し劣っていた。
【0292】
これは、特定の粒径の形状の異なるコロイダルシリカ(棒状コロイダルシリカ+球状コロイダルシリカ)を使わず、棒状コロイダルシリカのみを使ったため、摩擦強度に劣る膜が成膜された結果である。
【0293】
実施例12
実施例9で用いた球状コロイダルシリカのIPA分散液(日産化学工業株式会社製、商品名、メタノールシリカゾル、固形分濃度30.2質量%、粒径10nm〜20nm)をIPAで薄めた後、タンタルアルコキシドが酸化物換算での質量比でSiO:Nb=80:20、即ち、タンタルアルコキシドが酸化物換算で20質量%になるように調製し、固形分濃度2.0質量%の低反射膜形成用塗布液とした。当該低反射膜形成用塗布液を、実施例9と同様の手順で、ガラス基板に塗布し加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0294】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.0mm/secの条件で、実施例9と同様に膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率は97.0%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が6.5%向上した。次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、113nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.307であり、低反射膜付きガラス基板として満足のいく性能であった。
【0295】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。低反射膜の摩擦強度は、ネル布摩耗試験による3000回往復摩擦後の外観は曇りがあり、部分的に剥離があり、実施例5および実施例6の低反射膜付きガラス基板と比較し摩擦強度に劣っていた。
【0296】
これは、特定の粒径の形状の異なるコロイダルシリカ(棒状コロイダルシリカ+球状コロイダルシリカ)を使わず、球状コロイダルシリカのみを使ったため、摩擦強度に劣る膜が成膜された結果である。
【0297】
比較例4
実施例1と同様にして、形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液を調製し、ガラス基板に実施例1と同様の手順で塗布後、加熱焼成し低反射膜付きガラス基板を得た。実施例1〜12と異なり、低反射膜には金属酸化物が含有されない。
【0298】
次いで、実施例1と同様に低反射膜付きガラス基板の評価を行った。
【0299】
前記物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、平均透過率は、低反射膜を設ける前のガラス基板より、7.6%向上し、97.4%であった。低反射膜の摩擦強度は、ネル布摩耗試験による3000回往復摩擦後の外観は曇りがあり、ヘイズは試験前に比べ、5.7%増大し、部分的に剥離があり摩擦強度に劣っていた。
【0300】
比較例4の低反射膜付きガラス基板は、膜強度に劣り、耐久性に乏しく、実用に耐えるものではなかった。
【0301】
比較例5
実施例1と同様にして、形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液を調製し、TEOSをコロイダルシリカに対する質量比で20質量%となるように加えた。ガラス基板に実施例1と同様の手順で塗布後、加熱焼成し低反射膜付きガラス基板を得た。実施例1〜12と異なり、低反射膜には金属酸化物が含有されない。
【0302】
次いで、実施例1と同様に低反射膜付きガラス基板の評価を行った。
【0303】
前記物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、平均透過率は、低反射膜を設ける前のガラス基板より、4.1%向上しており、94.6%であった。低反射膜の摩擦強度は、ネル布摩耗試験による3000回往復摩擦後の外観は曇りがあり、ヘイズは試験前に比べ、5.7%増大し、部分的に剥離があり摩擦強度に劣っていた。
【0304】
比較例6
実施例1で調製したタングステンアルコキシド溶液のみをガラス基板に塗布し、実施例1と同様に加熱焼成して成膜し、酸化タングステン膜付きガラス基板を得た。ヘイズが46.8%の白濁したすりガラス状の基板となった。
【0305】
比較例7
実施例5で調製したニオブアルコキシド溶液のみをガラス基板に塗布し、実施例5と同様に加熱焼成して成膜し、酸化ニオブ膜付きガラス基板を得たエリプソメーターで測定したところ、膜の屈折率は1.90であり、平均透過率は、低反射膜を成膜していないガラス基板と比較し低下した。
【0306】
比較例8
実施例9で調製したタンタルアルコキシド溶液のみをガラス基板に塗布し、実施例9と同様に加熱焼成して成膜し、酸化タンタル膜付きガラス基板を得た。膜の屈折率は1.86であり、平均透過率は低反射膜を成膜していないガラス基板と比較し低下した。
【0307】
(結果)
評価結果を表3に示す。
【表3】

【0308】
本発明の低反射膜が形成された低反射膜付きガラス基板は、親水性、防汚性に優れており、帯電防止性能を有し汚れにくい。特に、表3に示す様に、実施例1、2、実施例5、6および実施例9、10の低反射膜付き基板は、高い平均透過率を示し、ネル磨耗試験による膜強度試験の結果、平均透過率が劣化することなく、秀でた耐久性を示した。
【0309】
尚、図1、図3、図5のSEM写真の倍率は同じである。
【0310】
[塗布液に対する水の添加]
前記実施例1、5、9の低反射膜形成用塗布液、形状の異なるコロイダルシリカのみの比較例4の塗布液、形状の異なるコロイダルシリカの分散液にTEOSを加えた比較例5の塗布液に水を添加した塗布液に水を添加し、経時による固形分の析出を観察した。
【0311】
具体的には、実施例1、5、9、比較例4、5の低反射膜形成用塗布液に、純水を10.0質量%を加え、室温(20℃)にて保管し、目視にて白濁および固形分の析出の有無を観察した。
【0312】
形状の異なる2種類のコロイダルシリカ(棒状コロイダルシリカ+球状コロイダルシリカ)に好ましい比率でタングステンアルコキシドを加えた実施例1の低反射膜形成用塗布液、ニオブアルコキシドを加えた実施例5の低反射膜形成用塗布液、タンタルアルコキシドを加えた実施例9の低反射膜形成用塗布液は、形状の異なる2種類のコロイダルシリカのみの比較例4の塗布液は純水を10.0質量%添加し、90日経過しても変化はみられなかった。
【0313】
比較して、形状の異なる2種類のコロイダルシリカの分散液にTEOSを加えた比較例5の塗布液は、純水を10%添加し、1週間経過したところ、ゲル化して塗布液として使用不可能であった。
【0314】
次いで、純水を10.0質量%加え、90日経過した実施例1、5、9で調製した低反射膜形成用塗布液(各々、実施例13、14、15とする)を用い、実施例1、5、9と同様にして、ガラス基板に塗布成膜し、得られた低反射膜付きガラス基板の物性評価を行った。
【0315】
実施例13
形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液にタングステンアルコキシド分散液を加えた低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様に調製し、次いで、純水を、液の総重量に対し10.0質量%加え、室温下(20℃)、90日間静置した。静置後の当該低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様の手順で、ガラス基板に塗布後、加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0316】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.4mm/secの条件で、実施例1と同様に低反射膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率は97.7%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が7.2%向上した。 次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、112nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.285であり、低反射膜付きガラス基板として満足の行く性能が得られていた。
【0317】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。外観は、やや擦り傷がありヘイズが見えたが、膜は剥離しておらず、平均透過率を測定したところ、96.8%であり、試験前に比べ、0.9%低下した。また純水の接触角を測定したところ15.2°であり、強い親水性を示した。
【0318】
実施例14
形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液にニオブアルコキシド分散液を加えた低反射膜形成用塗布液を、実施例5と同様に調製し、次いで、純水を、液の総重量に対し10.0質量%加え、室温下(20℃)、90日間静置した。静置後の当該低反射膜形成用塗布液を、実施例1と同様の手順で、ガラス基板に塗布後、加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0319】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.0mm/secの条件で、実施例5と同様に低反射膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率は96.8%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が6.3%向上した。次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、108nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.277であり、低反射膜付きガラス基板として満足の行く性能が得られていた。
【0320】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。外観は、やや擦り傷がありヘイズが見えたが、膜は剥離しておらず、平均透過率を測定したところ、96.1%であり、試験前に比べ、0.7%低下した。また純水の接触角を測定したところ13.6°であり、強い親水性を示した。
【0321】
実施例15
形状の異なるコロイダルシリカを含有するコロイダルシリカ分散液にタンタルアルコキシド分散液を加えた低反射膜形成用塗布液を、実施例9と同様に調製し、次いで、純水を、液の総重量に対し10.0質量%加え、室温下(20℃)、90日間静置した。静置後の当該低反射膜形成用塗布液を、実施例9と同様の手順で、ガラス基板に塗布後、加熱焼成して低反射膜付きガラス基板を得た。
【0322】
表2の物性評価方法に従い、物性値の測定をしたところ、引き上げ速度3.4mm/secの条件で、実施例1と同様に低反射膜を両面に形成してなる、低反射膜付きガラス基板の平均透過率は96.6%であり、低反射膜を設けていないガラス基板の平均透過率、90.5%と比較して、平均透過率が6.1%向上した。 次いで、膜厚を触針式表面形状測定器で測定したところ、115nmであった。また、屈折率nをエリプソメーターで測定したところ、n=1.264であり、低反射膜付きガラス基板として満足の行く性能が得られていた。
【0323】
次いで、この被膜の摩擦強度を摩耗試験機により、パットに取り付けたネル布を用いて、低反射膜付きガラス基板の表面を15g/cmの荷重で3000回、往復摩擦し、低反射膜の摩擦強度を評価した。外観は、やや擦り傷がありヘイズが見えたが、膜は剥離しておらず、平均透過率を測定したところ、95.8%であり、試験前に比べ、0.8%低下した。また純水の接触角を測定したところ14.4°であり、強い親水性を示した。
【0324】
結果を纏めて表4に示す。純水を加えていない実施例1、5、9の低反射膜形成用塗布液により低反射膜を両面に形成してなる低反射膜付きガラス基板に対し、純水を10.0質量%加え、且つ90日経過後の実施例13、14、15の低反射膜形成用塗布液により低反射膜を両面に形成してなる低反射膜付きガラス基板の物性評価の結果は、実施例1、5、9の低反射膜付き基板に劣らない結果であった。
【表4】

【0325】
水を加えることにより、低反射膜形成用塗布液の粘度の調整が容易であり、対応できる
塗布方法の選択肢が増す。また、火気に対する安全性等も増す傾向がある。
【産業上の利用可能性】
【0326】
本発明の低反射膜の形成方法により、表面に耐久性のある親水性かつ低屈折率である低反射膜が形成された低反射部材が得られた。本発明の低反射部材は、太陽電池用カバーガラス、レンズ等の光学材料、陰極線管や液晶表示装置等の画像表示面、窓やショーケース、天窓材、温水器、照明器具等の板ガラスや透明プラスチック等の親水性・防汚性・低反射帯電防止の求められる広い分野において利用できる。また、紫外から可視光におよび波長域ばかりでなく、近赤外波長域の透過性に優れるため、特に太陽電池用カバーガラスとして特に有用である。
【0327】
具体的には、本発明の低反射膜を表面に形成された低反射部材には、フロントガラスの映り込み防止、照明器具の保護部材として高い平均透過率による照度向上の効果があり、特に、太陽電池用カバーガラスに用いた際は、光学特性の調整が可能で、低反射膜形成の効果による平均透過率向上による受光効率向上、引いては発電効率の向上に格別の効果が見られ、太陽電池用カバーガラスとして極めて好適に用いられる。
【0328】
また、本発明の低反射膜を形成してなる低反射部材は、基体がガラス板であっても、低反射膜の強度が劣化することなく耐久性に優れ、太陽電池用カバーガラスとして使用するに最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ微粒子と、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化セリウムおよび酸化ランタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物からなるバインダーを含有してなり、シリカ微粒子に対する金属酸化物からなるバインダーの含有比が5質量%以上、40質量%以下であり、屈折率1.20以上、1.40以下であることを特徴とする低反射膜。
【請求項2】
シリカ微粒子が、走査型電子顕微鏡による観察で、長径が5nm以上、100nm以下である棒状シリカ微粒子と、粒径が5nm以上、50nm以下である球状シリカ微粒子が主であることを特徴とする請求項1に記載の低反射膜。
【請求項3】
棒状シリカ微粒子と球状シリカ微粒子の質量比が棒状シリカ微粒子:球状シリカ微粒子=20:80〜80:20であることを特徴とする請求項2に記載の低反射膜。
【請求項4】
金属酸化物が、酸化タングステン、酸化ニオブおよび酸化タンタルからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の低反射膜。
【請求項5】
透明基体表面に請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の低反射膜が形成されてなる低反射部材。
【請求項6】
透明基体がガラス板であり、光波長域380nm〜1200nmの平均透過率が95%以上であることを特徴とする請求項5に記載の低反射部材。
【請求項7】
光透過率曲線の最大値のピークが500nm以上、900nm以下の範囲であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の低反射部材。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7に記載の低反射部材からなる太陽電池用カバーガラス。
【請求項9】
コロイダルシリカを含む分散液に、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、ハフニウム、クロム、モリブデンおよび希土類からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の金属化合物を含む分散液を加えてなる低反射膜形成用塗布液を、基体に塗布し塗膜とした後に加熱焼成し、コロイダルシリカをシリカ微粒子とし、金属化合物を金属酸化物とし硬化させることを特徴とする低反射膜の形成方法。
【請求項10】
コロイダルシリカが、走査型電子顕微鏡による観察で、長径が5nm以上、100nm以下の棒状コロイダルシリカと、粒径が5nm以上、50nm以下の球状コロイダルシリカが全個数の90%以上であり、コロイダルシリカに対する金属化合物の含有が酸化物換算で、5質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
棒状コロイダルシリカと球状コロイダルシリカの質量比が、棒状シリカコロイダルシリカ:球状コロイダルシリカ=20:80〜80:20であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
金属化合物が、タングステン、ニオブおよびタンタルからなら群から選ばれた少なくとも1種の金属の金属化合物であることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載の方法で透明基体表面に屈折率が1.20以上、1.40以下である低反射膜が形成されてなる低反射部材。
【請求項14】
透明基体がガラス板であり、波長域380nm〜1200nmの平均透過率が95%以上であることを特徴とする請求項13に記載の低反射部材。
【請求項15】
光透過率曲線の最大値のピークが500nm以上、900nm以下の範囲であることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の低反射部材。
【請求項16】
請求項13乃至請求項15のいずれか1項に記載の低反射部材からなる太陽電池用カバーガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−148950(P2012−148950A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150700(P2011−150700)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】