説明

低抵抗ヒューズおよび低抵抗ヒューズを製造する方法

【課題】本発明は、フォイルヒューズ素子を利用したヒューズおよびその製造方法に関し、ヒューズの電気抵抗値の増大を抑制することによって能動回路部品の動作に悪影響を及ぼすのを阻止することを目的とする。
【解決手段】第1中間絶縁レイヤ26と、第2中間絶縁レイヤ28と、第1中間絶縁レイヤおよび第2中間絶縁レイヤの各々から独立して形成されかつ製造された独立型のヒューズ素子レイヤ20であって、第1接触パッド32および第2接触パッド34と、第1接触パッドと第2接触パッドとの間で伸びるヒューズ可融リンク30とを含むヒューズ素子レイヤ20とを有し、第1中間絶縁レイヤおよび第2中間絶縁レイヤは、ヒューズ素子レイヤの反対の面上に伸びており、第1中間絶縁レイヤと第2中間絶縁レイヤとの間においてヒューズ素子レイヤと一体に積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ヒューズに関するものであり、さらに詳しくは、フォイルヒューズ(foil fuse)素子を利用したヒューズに関するものである。
関連出願に対する相互参照
本発明に係る出願は、2004年1月29日付けで出願された米国特許出願第10/767,027号の一部継続出願である。この一部継続出願は、2002年1月10日付けで出願された仮特許出願第60/348,098号の利益を主張する2003年1月9日付けで出願された米国特許出願第10/339,114号の一部継続に対応するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒューズは、電気回路に対する高価な損傷を防止するべく、過電流保護装置として広く使用されている。通常は、ヒューズ端子または接点が、電源と、電気回路内に配置された単一の電気部品または複数の電気部品の組み合わせとの間において電気接続を形成している。ヒューズを流れる電流が予め定められた閾値を越えると、ヒューズ素子が、溶融、分解、切断、またはその他の方法によってヒューズと関連付けられている回路を開路状態にすることにより、電気部品の損傷を防止するべく、1つもしくは複数のヒューズ可融リンク(fusible link)またはヒューズ可融素子(fusible element:あるいは、ヒューズ素子のアセンブリ)が、ヒューズ端子または接点間に接続されている。
【0003】
最近の電子装置の急増の結果として、ヒューズ形成技術に対する需要が増大している。例えば、従来のヒューズは、ガラスの円筒またはチューブ内に収容され、チューブ内の空中で吊り下げられているワイヤヒューズ素子(あるいは、代替的に、打抜きおよび/または成形により作製された金属製のヒューズ素子)を含んでいる。ヒューズ素子は、電気回路に接続するためにチューブに装着されている導電性のエンドキャップ間で伸びている。しかしながら、電子的な応用製品のプリント回路基板にヒューズを使用する場合には、当該ヒューズは、通常、非常に小さくなければならない。この結果、上記のようなタイプのヒューズを製造しかつ設置することは困難であり、ヒューズの保護対象製品の製造および組立上のコストが上昇することになる。
【0004】
その他のタイプのヒューズには、電子的な応用製品用のヒューズ素子を形成するべく、高温有機誘電体基板(例えば、FR−4や石炭酸、またはその他のポリマーを含む材料)上に形成された金属被覆が含まれている。このようなヒューズ素子は、既知の方法を使用することにより、基板に蒸着、スクリーン印刷、電気メッキ、または塗布することが可能である。さらに、ヒューズ素子を形成する金属被覆レイヤを化学エッチングまたはレーザートリミングすることにより、ヒューズ素子の形状を変更することも可能である。しかしながら、これらのタイプのヒューズの場合には、過電流状態において、ヒューズ素子から基板に熱が伝導する。この結果、ヒューズの定格電流が増大するのみならず、ヒューズの電気抵抗値も増大するという傾向を有している。これによって、低電圧電子回路に対して悪影響が及ぶ可能性がある。また一方で、ヒューズ素子が誘電体基板の近傍に位置している(または、この上に直接形成されている)場合には、カーボン・トラッキング(carbon tracking)が発生する可能性がある。このカーボン・トラッキングにより、ヒューズは、その本来の目的どおりに回路を完全にクリア状態または開路状態にすることができなくなる。
【0005】
上記以外のその他のヒューズにおいては、成形されたヒューズ素子と電気回路への接続のための導電性パッドを形成する導電性インク等の印刷厚膜導電性材料を有するセラミック基板を利用している。しかしながら、印刷の厚さと形状を制御することができないため、ヒューズの保護対象装置に、許容不可能なばらつきが生じる可能性がある。また一方で、ヒューズ素子を形成する導電性材料は、通常、高温で発火するため、高温セラミック基板を使用しなければならない。しかしながら、過電流状態においては、これらの基板は、ヒートシンクとして機能するので、ヒューズ素子から熱を奪い、ヒューズの電気抵抗値を増大させる傾向を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、ヒューズの電気抵抗値が増大することは、多数の回路において、能動回路部品の動作に有害である。特定の応用製品においては、ヒューズの電気抵抗値の増大に起因する電圧効果により、能動回路部品が機能不全に陥るおそれが生じるという問題が発生する。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ヒューズの電気抵抗値の増大を抑制することによって能動回路部品の動作に悪影響を及ぼすのを阻止することが可能な低抵抗ヒューズおよび低抵抗ヒューズを製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明の代表的な態様において、低抵抗ヒューズは、第1中間絶縁レイヤと、第2中間絶縁レイヤと、第1および第2中間絶縁レイヤの各々から独立して形成されかつ製造された独立型のヒューズ素子レイヤとを有している。この独立型のヒューズ素子レイヤは、第1接触パッドおよび第2接触パッドと、この第1接触パッドと第2接触パッドとの間で伸びるヒューズ可融リンクを有している。ここで、第1および第2中間絶縁レイヤは、独立型のヒューズ素子レイヤの反対の面上に伸びており、第1中間絶縁レイヤと第2中間絶縁レイヤとの間においてヒューズ素子レイヤと一体に積層されている。
【0008】
本発明の別の代表的な態様によれば、低抵抗ヒューズを製造する方法が提供される。この方法は、第1中間絶縁レイヤを供給する段階と、この第1中間絶縁レイヤとは別個に事前に形成されたヒューズ素子レイヤを供給する段階と、このヒューズ素子レイヤを介して、第2中間絶縁レイヤを第1中間絶縁レイヤに接着・積層する段階とを有している。事前に形成されたヒューズ素子レイヤは、第1接触パッドと第2接触パッドとの間で伸びるヒューズ可融リンクを具備している。
【0009】
本発明の別の代表的な態様によれば、低抵抗ヒューズを製造する方法が提供される。この方法は、その内部に事前に形成されたヒューズ素子開口部を具備する第1中間絶縁レイヤを供給する段階と、第1中間絶縁レイヤとは別個に事前に形成されたヒューズ素子レイヤを供給する段階と、第1中間絶縁レイヤと第2中間絶縁レイヤとの間でヒューズ素子レイヤが伸びている状態で第1中間絶縁レイヤに第2中間絶縁レイヤを接着・積層する段階と、第2中間絶縁レイヤを第1中間絶縁レイヤに積層した後に、ヒューズ素子開口部を通じてヒューズ可融リンクにMスポットを形成する段階とを有している。事前に形成されたヒューズ素子レイヤは、第1接触パッドと第2接触パッドとの間で伸びるヒューズ可融リンクを具備している。
【0010】
本発明の別の代表的な態様によれば、低抵抗ヒューズは、第1中間絶縁レイヤおよび第2中間絶縁レイヤを有しており、これらの第1および第2中間絶縁レイヤの少なくとも1つは、それを貫通する事前に形成された開口部を有している。薄いフォイルのヒューズ素子レイヤが、第1および第2中間絶縁レイヤとは別個に形成される。これらの第1および第2中間絶縁レイヤは、ヒューズ素子レイヤの反対の面上に伸びており、このヒューズ素子レイヤに結合されている。アーク消去媒体が、事前に形成された開口部内に配置され、この開口部内において、ヒューズ素子レイヤを取り囲んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の代表的な第1実施例に係るフォイルヒューズ10の斜視図である。以下に記述する理由から、ヒューズ10は、性能における顕著な利点を提供しつつ、従来のヒューズよりも低コストで製造することが可能であると考えられる。例えば、ヒューズ10は、既知の匹敵するヒューズと比べて、小さな電気抵抗値と、ヒューズの動作後においては、大きな絶縁抵抗値とを具備していると考えられる。これらの利点は、ヒューズ可融リンク形成用の薄い金属フォイル材料とポリマーフィルム上に装着された接触終端を使用することにより、少なくとも部分的に実現されている。なお、本願明細書の説明においては、薄い金属フォイル材料は、約1〜100ミクロン(μm)、さらに詳しくは、約1〜20ミクロン(特定の実施例においては、約3〜12ミクロン)の厚さの範囲にあるものと見なされている。
【0012】
本発明による少なくとも1つのヒューズは、薄い金属フォイル材料から製造された際に特に有利であることが判明しているが、その他の金属被覆法も有用であろうと考えられる。例えば、ヒューズ素子を形成するべく3〜5ミクロン未満の金属被覆を必要とする相対的に低いヒューズ定格の場合には、当技術分野において既知の技法により、スパッタリングされた金属膜を含む(ただし、これに限定されない)薄膜材料を使用することが可能である。また一方で、本発明の態様は、無電解金属メッキ構造または薄膜印刷構造にも適用可能であることをさらに理解されたい。したがって、ヒューズ10は、例示を目的として説明されているものにすぎず、本願明細書におけるヒューズ10の説明は、本発明の態様をヒューズ10の詳細項目に限定することを意図するものではない。
【0013】
ヒューズ10は、後程詳述する積層構造から構成されており、はんだ接点12(しばしば、はんだバンプと呼ばれる)の間で(かつ、このはんだ接点と導電性の関係において)電気的に伸びるフォイルヒューズ素子(これは、図1には示されていない)を含んでいる。使用の際には、ヒューズ10を通じて(さらに詳しくは、ヒューズ素子を通じて)電気回路を確立するべく、はんだ接点12がプリント回路基板(これは、図示されていない)の端子、接触パッドまたは回路終端に接続される。ヒューズ10を流れる電流が、ヒューズ素子とヒューズ10の製造に利用されている材料の特性に応じた許容不可能な限度に到達すると、ヒューズ素子は、溶融、蒸発、またはその他の方法によってヒューズを通じた回路を開路状態にすることにより、ヒューズ10と関連する回路内の電気部品に対する高価な損傷を防止する。
【0014】
例示用の一実施例においては、ヒューズ10は、一般に、形状が矩形であり、ヒューズ10のプリント回路基板への表面実装に適した幅W、長さLおよび高さHを含んでおり、小さなスペースを占有している。例えば、特定の一実施例においては、Lは、約0.060インチであり、Wは、約0.030インチであり、Hは、ヒューズ10のロープロファイル(low profile)を維持するべく、LまたはWと比べて格段に小さい。以下において明らかとなるように、Hは、ヒューズ10を製造するために利用されている様々なレイヤの合計の厚さに略等しい。ただし、ヒューズ10の実際の寸法は、本発明の範囲を逸脱することなしに、1インチを上回る寸法を含む本願明細書に示されている例示用の寸法よりも大きなまたは小さな寸法に変化させることが可能であることを認識されたい。
【0015】
また一方で、ヒューズ10を電気回路に接続するべく図示のはんだ接点12とは異なるその他のヒューズ終端を利用することにより、本発明の利点の中の少なくともいくつかを実現することが可能であることを認識されたい。したがって、所望と必要性に応じて、はんだ接点12の代わりに、例えば、接点リード(すなわち、ワイヤ終端)、ラップアラウンド終端、浸漬金属被覆終端、メッキ終端、キャストレート接点(castellated contact)、およびその他の既知の接続方式を利用することが可能である。
【0016】
図2は、ヒューズ10の製造に利用されている様々なレイヤを示すヒューズ10の分解斜視図である。より具体的には、代表的な実施例において、ヒューズ10は、基本的に、上部および下部中間絶縁レイヤ22、24の間に狭持されたフォイルヒューズ素子レイヤ20と、これらの中間絶縁レイヤをその間に挟持する上部および下部外部絶縁レイヤ26、28を含む5つのレイヤにより構成されている。
【0017】
一実施例においては、フォイルヒューズ素子レイヤ20は、既知の技法により、下部中間絶縁レイヤ24に適用された電着による3〜5ミクロンの厚さの銅フォイルである。代表的な実施例においては、フォイルは、オリン インコーポレイティド(Olin, Inc.)社から入手可能なCopperBond(登録商標)の極薄の薄膜フォイル(Extra Thin Foil)である。薄いヒューズ素子レイヤ20は、大文字のIの形状に形成されており、狭いヒューズ可融リンク30が、矩形の接触パッド32、34間で伸びている。ヒューズ可融リンク30は、このヒューズ可融リンク30を通じて流れる電流が指定のレベルに到達した場合に開路状態になるような寸法になっている。例えば、代表的な実施例においては、ヒューズ可融リンク30の幅は、このヒューズが1アンペア未満において動作するように、約0.003インチである。ただし、代替実施例においては、様々な寸法のヒューズ可融リンクを利用することが可能であり、銅フォイルの代わりに、ニッケル、亜鉛、すず、アルミニウム、銀、これらの合金(例えば、銅/すず、銀/すず、および銅/銀合金)、およびその他の導電性フォイル材料を含む(ただし、これらに限定されない)その他の金属フォイルから薄いヒューズ素子レイヤ20を形成することが可能であることを理解されたい。代替実施例においては、9ミクロンまたは12ミクロンの厚さのフォイル材料を利用し、化学エッチングすることによって、ヒューズ可融リンクの厚さを低減させることが可能である。また一方で、さらなる実施例においては、既知のM効果ヒューズ形成法を利用し、ヒューズ可融リンクの動作を向上させることができる。
【0018】
当業者であれば、ヒューズ可融リンクの性能(例えば、短絡および遮断能力)は、使用する材料の溶融温度と、ヒューズ可融リンクの形状とによって左右されかつ決定され、使用する材料の溶融温度とヒューズ可融リンクの形状の各々の変更を通じて、様々な性能特性を具備する実質的に無限数のヒューズ可融リンクを得ることが可能であることを理解するであろう。また一方で、複数のヒューズ可融リンクを並列に伸ばすことにより、ヒューズ性能をさらに変更することも可能である。このような実施例においては、単一のヒューズ素子レイヤ内の接触パッド間で複数のヒューズ可融リンクが並列に伸びるようにすることが可能であり、あるいは、垂直方向に積み重ねられた構成で、互いに並列に伸びるヒューズ可融リンクを含む複数のヒューズ素子レイヤを利用することも可能である。
【0019】
望ましいヒューズ素子の定格を有するヒューズ素子レイヤ20を製造する材料を選択するために(あるいは、選択された材料から製造されるヒューズ素子の定格を判定するために)、ヒューズ性能は、主に、3つのパラメータに依存していることが判定されている。これらのパラメータには、ヒューズ素子の形状、ヒューズ素子を取り囲む材料の熱伝導率、および、ヒューズ形成用の金属の溶融温度が含まれる。これらのパラメータの各々により、ヒューズの時間対電流特性が決定されることが判明している。したがって、ヒューズ素子レイヤの材料、ヒューズ素子レイヤを取り囲む材料、およびヒューズ素子レイヤの形状を慎重に選択することにより、許容可能な低抵抗ヒューズを製造することが可能である。
【0020】
例示を目的として、まず、ヒューズ素子20の形状を検討することにより、代表的なヒューズ素子レイヤの特性を分析する。例えば、図6は、代表的な寸法を含む比較的単純なヒューズ素子形状の平面図を示している。
【0021】
図6を参照すれば、略大文字のIの形状のヒューズ素子レイヤが絶縁レイヤ上に形成されている。ヒューズ素子レイヤのヒューズ形成特性は、ヒューズ素子レイヤの形成に使用される金属の電気伝導率(ρ)、ヒューズ素子レイヤの寸法的なアスペクト(すなわち、ヒューズ素子レイヤの長さと幅)、および、ヒューズ素子レイヤの厚さによって決定される。例示用の一実施例においては、ヒューズ素子レイヤ20は、3ミクロンの厚さの銅フォイルから形成されており、これは、1/ρΩcmまたは約0.016770Ω/□のシート抵抗値(これは、1ミクロンの厚さにおいて計測される)を具備することが知られている(ここで、□は、「四角形」によって表現された検討対象のヒューズ素子部分の寸法比である)。
【0022】
例えば、図6に示されているヒューズ素子を検討すれば、ヒューズ素子は、第1セグメントに対応する寸法l1およびw1、第2セグメントに対応するl2およびw2、および第3セグメントに対応するl3およびw3によって識別可能な3つの別個のセグメントを含んでいる。セグメント内の四角形を合計することにより、ヒューズ素子レイヤの抵抗値をかなり直接的な方式で概略的に判定することが可能である。したがって、図6のヒューズ素子の場合には、次の式(1)に示すとおりになる。
【0023】
【数1】

【0024】
この結果、ヒューズ素子レイヤの電気抵抗値(R)は、次の関係によって判定することが可能である。
【0025】
ヒューズ素子のR=(シート抵抗率)*(□の数)/T (2)
【0026】
ここで、Tは、ヒューズ素子レイヤの厚さである。前述の例に戻り、式(2)を適用することにより、次のようになる。
【0027】
ヒューズ素子の電気抵抗値=(0.016779Ω/□)*8.5*□)/3
=0.0475Ω
【0028】
当然のことながら、同様の方式により、さらに複雑な形状のヒューズ素子の電気抵抗値を同様に判定することが可能であろう。
【0029】
つぎに、ヒューズ素子レイヤを取り囲んでいる材料の熱伝導率を検討することにより、当業者であれば、異なる材料のサブボリューム間における熱流(H)が次の式(3)の関係によって決定されることを理解することができるであろう。
【0030】
【数2】

【0031】
ここで、Km,nは、材料の第1サブボリュームの熱伝導率であり、Km+1,nは、材料の第2サブボリュームの熱伝導率であり、Zは、対象となる材料の厚さであり、θは、選択された基準点におけるサブボリュームm、nの温度であり、Xm,nは、基準点からの第1サブボリューム計測値の第1座標の場所であり、Ynは、基準点からの第2座標の場所の計測値であり、Δtは、対象の時間値である。
【0032】
式(3)を詳細に検討することによって、積層ヒューズ構造の正確な熱流特性を判定することが可能であるが、この式は、ヒューズ内の熱流が、主に、使用される材料の熱伝導率に比例しているということを示すべく本願明細書に提示されたものである。次の表には、いくつかの代表的な既知の材料の熱伝導率が示されており、ヒューズ素子周辺のヒューズ内にて利用される絶縁レイヤの伝導率を低減させることにより、ヒューズ内の熱流をかなり低減させることが可能であることがわかる。特に、注目すべきは、ヒューズ素子レイヤの上部および下部の絶縁材料として本発明の例示用の実施例において利用されているポリイミドの顕著に低い熱伝導率である。
【0033】
【表1】

【0034】
つぎに、ヒューズ素子レイヤの製造に利用されるヒューズ形成用の金属の動作温度を検討することによって、当業者であれば、所定の時点におけるヒューズ素子レイヤの動作温度θtは、次の式(4)の関係により決定されることを理解することができるであろう。
【0035】
【数3】

【0036】
ここで、mは、ヒューズ素子レイヤの質量であり、sは、ヒューズ素子レイヤを形成する材料の比熱であり、Ramは、周辺基準温度θにおけるヒューズ素子レイヤの電気抵抗値であり、iは、ヒューズ素子レイヤを通じて流れる電流であり、αは、ヒューズ素子材料の抵抗温度係数である。当然のことながら、ヒューズ素子レイヤは、ヒューズ素子材料の溶融温度までは、ヒューズを通じて回路を完成させるべく機能することが可能である。次の表には、一般的に使用されているヒューズ素子材料の代表的な融点が示されており、ヒューズ素子の高い電流定格を実現する銅の極めて高い溶融温度に起因し、本発明においては、銅ヒューズ素子レイヤが特に有利であることに留意されたい。
【0037】
【表2】

【0038】
したがって、ヒューズ素子レイヤの材料の溶融温度、ヒューズ素子レイヤを取り囲んでいる材料の熱伝導率、および、ヒューズ素子レイヤの抵抗率を組み合わせた効果を検討することにより、様々な性能特性を具備する許容可能な低抵抗ヒューズを製造することが可能であることは明らかであろう。
【0039】
再度図2を参照すれば、上部中間絶縁レイヤ22は、フォイルヒューズ素子レイヤ20上に位置しており、フォイルヒューズ素子レイヤ20の各々の接触パッド32、34に対する電気接続を円滑に実行するべく、これを貫通して伸びる矩形の終端開口部36、38またはウィンドウを含んでいる。円形のヒューズ可融リンク開口部40が、終端開口部36、38の間で伸びており、かつ、フォイルヒューズ素子レイヤ20のヒューズ可融リンク30上に位置している。
【0040】
下部中間絶縁レイヤ24は、フォイルヒューズ素子レイヤ20上に位置しており、フォイルヒューズ素子レイヤ20のヒューズ可融リンクの下に位置する円形のヒューズリンク開口部(すなわち、ヒューズ可融リンク開口部)42を含んでいる。したがって、ヒューズ可融リンク30がフォイルヒューズ素子20の接触パッド32、34間において伸びる際に、ヒューズ可融リンク30が中間絶縁レイヤ22、24のいずれの表面とも接触しないように、ヒューズ可融リンク30は、上部および下部中間絶縁レイヤ22、24内の各々のヒューズリンク開口部(すなわち、ヒューズ可融リンク開口部)40、42を横断して伸びている。換言すれば、ヒューズ10の製造が完了した際に、ヒューズ可融リンク30は、各々の中間絶縁レイヤ22、24内のヒューズリンク開口部40、42により、エアポケット内において、事実上、吊り下げられている。
【0041】
したがって、ヒューズリンク開口部40、42は、従来のヒューズの場合にはヒューズの電気抵抗値の増大に寄与する中間絶縁レイヤ22、24への熱伝達を防止している。したがって、ヒューズ10は、既知のヒューズよりも低い電気抵抗値において動作し、この結果、既知の匹敵するヒューズよりも、回路が安定する。また一方で、既知のヒューズとは異なり、ヒューズ可融リンク開口部40、42によって生成されるエアポケットにより、アークトラッキングが阻止され、ヒューズ可融リンク30を通じた回路の完全なクリアリングが円滑に実行される。さらなる実施例においては、ヒューズ可融リンクが動作した際に、適切に成形されたエアポケットが、その内部のガス抜きを円滑に実行し、ヒューズ内の望ましくないガスの蓄積および圧力を軽減させることが可能である。したがって、代表的な実施例においては、開口部40、42は、実質的に円形であるものとして示されているが、本発明の範囲および精神を逸脱することなしに、非円形の開口部40、42を同様に利用することが可能である。また一方で、中間絶縁レイヤ22、24内のヒューズリンク開口部として、非対称な開口部を利用することも可能であると考えられる。ただし、前述の空気の代わりに(あるいは、これに加えて)、ヒューズリンク開口部を固体またはガスによって充填することにより、アークトラッキングを阻止することも可能であると考えられる。
【0042】
例示用の一実施例においては、上部および下部中間絶縁レイヤは、それぞれ、デラウエア州ウィルミントンに所在するイー.アイ.デュポン デュ ネモーラ アンド カンパニー社(E. I. du Pont de Nemours and Company of Wilmington, Delaware)からKAPTON(登録商標)という商標で市販されている0.002インチの厚さのポリイミドフィルム等の誘電体フィルムにより製造されている。ただし、代替実施例においては、KAPTON(登録商標)の代わりに、CIRLEX(登録商標)無接着型ポリイミドラミネーション材料、宇部工業株式会社(Ube Industries)から市販されているUPILEX(登録商標)ポリイミド材料、ピロラックス(Pyrolux)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート(これは、しばしば、PENと呼ばれている)、ロジャーズ コーポレーション社(Rogers Corporation)から市販されているザイブレックス(Zyvrex)液晶ポリマー材料、およびこれらに類似したもの等のその他の好適な電気絶縁材料(ポリイミドおよび非ポリイミド)が利用可能であることを理解されたい。
【0043】
上部外部絶縁レイヤ26は、上部中間絶縁レイヤ22上に位置しており、上部中間絶縁レイヤ22の終端開口部36、38と実質的に一致する矩形の終端開口部46、48を含んでいる。上部外部絶縁レイヤ26内の終端開口部46、48と上部中間絶縁レイヤ22内の終端開口部36、38は、協働して、薄いヒューズ素子接触パッド32、34上に個別の空洞を形成している。開口部36、38、46および48をはんだ(これは、図2には示されていない)によって充填すると、例えば、プリント回路基板等の外部回路に接続するべくヒューズ素子接触パッド32、34と導電性の関係にあるはんだ接触パッド12(これは、図1には示されていない)が形成されることになる。上部外部絶縁レイヤ26の終端開口部46、48の間には、上部中間絶縁レイヤ22のヒューズ可融リンク開口部40上に位置する連続した表面50が伸びており、これによって、ヒューズ可融リンク30が封入され十分に絶縁されている。
【0044】
さらなる実施例においては、上部外部絶縁レイヤ26および/または下部外部絶縁レイヤ28は、ヒューズ可融リンク開口部40、42内の開路状態になっているヒューズの視認を容易にする半透明または透明な材料から製造されている。
【0045】
下部外部絶縁レイヤ28は、下部中間絶縁レイヤ24の下に位置しており、切れ目のない状態にある(すなわち、開口部を具備していない)。したがって、下部外部絶縁レイヤ28の連続した切れ目のない表面は、下部中間絶縁レイヤ24のヒューズ可融リンク開口部42の下においてヒューズ可融リンク30を十分に絶縁している。
【0046】
例示用の一実施例においては、上部および下部外部絶縁レイヤは、それぞれ、デラウエア州ウィルミントンに所在するイー.アイ.デュポン デュ ネモーラ アンド カンパニー社からKAPTON(登録商標)という商標で市販されている0.005インチの厚さのポリイミドフィルム等の誘電体フィルムにより製造されている。ただし、代替実施例においては、CIRLEX(登録商標)無接着型ポリイミドラミネーション材料、ピロラックス(Pyrolux)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、およびこれらに類似したもの等のその他の好適な電気絶縁材料が利用可能であることを理解されたい。
【0047】
ヒューズ10の製造に利用される代表的な製造プロセスについて説明するために、次の表に示されているように、ヒューズ10の各々のレイヤに名称を付与することとする。
【0048】
【表3】

【0049】
図3は、ヒューズ10(これは、図1および図2に示されている)を製造するための代表的な方法60を説明するためのフローチャートである。この図には、先程の表に示したような呼称法が使用されている。フォイルヒューズ素子レイヤ20(レイヤ3)が、既知のラミネーション法により、下部中間絶縁レイヤ24(レイヤ4)に積層される(ステップ62)。ついで、フォイルヒューズ素子レイヤ20(レイヤ3)が、塩化第2鉄溶液の使用を含む(ただし、これに限定されない)既知の技法を使用し、下部中間絶縁レイヤ24(レイヤ4)上において所望の形状にエッチングされる(ステップ64)。代表的な実施例においては、フォイルヒューズ素子レイヤ20(レイヤ3)は、図2との関連で前述したように、既知のエッチングプロセスにより、大文字のIの形状のフォイルヒューズ素子が残るように形成されている。代替実施例においては、エッチング処理の代わりに、打抜き処理を利用し、ヒューズ可融リンク30と接触パッド32、34を形成することが可能である。
【0050】
下部中間絶縁レイヤ(レイヤ4)上においてフォイルヒューズ素子レイヤ(レイヤ3)を形成した後に(ステップ64)、上記のステップ62からの事前に積層されたフォイルヒューズ素子レイヤ20(レイヤ3)および下部中間絶縁レイヤ(レイヤ4)に、既知のラミネーション法により、上部中間絶縁レイヤ22(レイヤ2)が積層される(ステップ66)。これによって、中間絶縁レイヤ22、23(レイヤ2および4)の間にフォイルヒューズ素子レイヤ20(レイヤ3)が挟持された3レイヤ積層物が形成される。
【0051】
ついで、終端開口部36、38、およびヒューズ可融リンク開口部40(これらは、いずれも図2に示されている)が、既知のエッチング、パンチング、または穿孔プロセスにより、上部中間絶縁レイヤ22(レイヤ2)内に形成される(ステップ68)。ヒューズ可融リンク開口部42(これは、図2に示されている)も、エッチング、パンチング、および穿孔を含む(ただし、これらに限定されない)既知のプロセスにより、下部中間絶縁レイヤ28内に形成される。この結果、ヒューズ素子レイヤの接触パッド32、34(これらは、図2に示されている)が、上部中間絶縁レイヤ22(レイヤ2)内の終端開口部36、38を通じて露出する。ヒューズ可融リンク30(これは、図2に示されている)も、各々の中間絶縁レイヤ22、24(レイヤ2および4)のヒューズ可融リンク開口部40、42内において露出している。代替実施例においては、エッチング処理の代わりに、打抜き処理、穿孔およびパンチング処理、ならびにこれらに類似したものを利用し、ヒューズ可融リンク開口部40、42と終端開口部36、38を形成することが可能である。
【0052】
中間絶縁レイヤ22、24(レイヤ2および4)内に開口部またはウィンドウを形成した後に(ステップ68)、上記のステップ66およびステップ68からの3レイヤの組み合わせ(レイヤ2、3、および4)に、外部絶縁レイヤ26、28(レイヤ1および5)が積層される(ステップ70)。外部絶縁レイヤ26、28(レイヤ1および5)は、当技術分野において既知のプロセスと技法を使用し、3レイヤの組み合わせに対して積層される。
【0053】
外部絶縁レイヤ26、28(レイヤ1および5)が積層され、5レイヤの組み合わせが形成された後に(ステップ70)、ヒューズ素子接触パッド32、34(これらは、図2に示されている)が上部外部絶縁レイヤ26(レイヤ1)と上部中間絶縁レイヤ22(レイヤ2)の各々の終端開口部36、38、46および48を通じて露出するように、終端開口部46、48(これらは、図2に示されている)が、既知の方法および技法により、上部外部絶縁レイヤ26(レイヤ1)内に形成される(ステップ72)。ついで、下部外部絶縁レイヤ28(レイヤ5)に、電圧または電流定格やヒューズ分類コード等のヒューズ10(これは、図1および図2に示されている)の動作特性に関係する標識をマーキングする(ステップ74)。このようなマーキング(ステップ74)は、例えば、レーザーマーキング、化学エッチング、またはプラズマエッチング等の既知のプロセスによって実行可能である。代替実施例においては、はんだ接点12の代わりに、ニッケル/金、ニッケル/すず、ニッケル/すず−鉛、および、すずメッキパッドを含む(ただし、これらに限定されない)その他の既知の導電性接触パッドを利用することが可能であることを理解されたい。
【0054】
ついで、はんだが形成され、ヒューズ素子接触パッド32、34(これらは、図2に示されている)と導電性の通信状態にあるはんだ接点12(これは、図1に示されている)が完成する(ステップ76)。この結果、はんだ接点12を、ラインと、エネルギーの供給対象である回路の負荷電気接続部に接続することにより、ヒューズ可融リンク30(これは、図2に示されている)を通じて電気接続を確立することが可能である。
【0055】
ヒューズ10は、前述の方法によって個々に製造することが可能であるが、例示用の一実施例においては、ヒューズ10は、シートの形態で集合的に製造された後に、個々のヒューズ10に分離またはシンギュレート(singulate)される(ステップ78)。バッチプロセスで形成する場合には、エッチングおよび打抜きプロセスを高精度で制御することにより、様々な形状および寸法のヒューズ可融リンク30を同時に形成することが可能である。また一方で、連続製造プロセスにおいて、ロールツーロール・ラミネーションプロセス(roll to roll lamination process)を利用し、多数のヒューズを最小の時間で製造することが可能である。
【0056】
さらには、前述の基本的な方法を逸脱することなしに、追加のレイヤを含むヒューズを製造することが可能である。すなわち、複数のヒューズ素子レイヤおよび/または追加の絶縁レイヤを利用することにより、異なる性能特性および様々なパッケージサイズを有するヒューズを製造することが可能である。
【0057】
したがって、低コストであって広く利用可能な材料を使用し、バッチプロセスにおいて、廉価な既知の技法およびプロセスを使用して、ヒューズを効率的に形成することが可能である。フォトケミカルエッチングプロセスによれば、非常に小さなヒューズの場合にも、薄いヒューズ素子レイヤ20のヒューズ可融リンク30および接触パッド32、34をかなり高精度に形成することが可能であり、均一な厚さおよび導電性により、ヒューズ10の最終的な性能のばらつきが極小化される。また一方で、薄い金属フォイル材料を使用してヒューズ素子レイヤ20を形成することにより、既知の匹敵するヒューズと比べて、非常に低抵抗のヒューズを構成することが可能である。
【0058】
図4は、下部中間絶縁レイヤ24の構造を除いて、ヒューズ10(これについては、図1〜図3と関連して前述している)に実質的に類似したフォイルヒューズの第2実施例(ヒューズ90)の分解斜視図である。ヒューズ90内には、下部中間絶縁レイヤ24内のヒューズ可融リンク開口部42(これは、図2に示されている)が存在しておらず、ヒューズ可融リンク30が、下部中間絶縁レイヤ24の表面上に直接伸びていることに留意されたい。この特定の構造は、ヒューズ可融リンク開口部40が、ヒューズ可融リンク30から中間絶縁レイヤ22、24への熱伝達を妨げている(または、少なくとも低減している)という点において、中間的な温度におけるヒューズの動作の際に満足できるものである。この結果、ヒューズの動作の際に、ヒューズ90の電気抵抗値が低減され、上部中間絶縁レイヤ22内のヒューズ可融リンク開口部40により、アークトラッキングが阻止され、ヒューズを通じた回路の完全なクリアリングが円滑に実行される。
【0059】
当然のことながら、ヒューズ90は、下部中間絶縁レイヤ24内のヒューズ可融リンク開口部42(これは、図2に示されている)が形成されないという点を除いて、実質的に方法60(これについては、図3との関連で前述している)によって構成される。
【0060】
図5は、上部中間絶縁レイヤ22の構造を除いて、ヒューズ90(これについては、図4との関連で前述している)に実質的に類似したフォイルヒューズの第3実施例(ヒューズ100)の分解斜視図である。ヒューズ100内には、上部中間絶縁レイヤ22内のヒューズ可融リンク開口部40(これは、図2に示されている)が存在しておらず、ヒューズ可融リンク30が、上部および下部中間絶縁レイヤ22、24の両方の表面上に直接伸びていることに留意されたい。
【0061】
当然のことながら、ヒューズ100は、中間絶縁レイヤ22、24内のヒューズ可融リンク開口部40および42(これらは、図2に示されている)が形成されないということを除いて、実質的に方法60(これについては、図3との関連で前述している)によって構成される。
【0062】
上述のいずれの実施例の場合にも、ポリマーフィルムの代わりに、薄いセラミック基板を利用することが可能であるが、これは、ヒューズの適切な動作を確保するべく、特に、ヒューズ100の場合に推奨されることを理解されたい。本発明の代替実施例においては、例えば、低温コファイアブルセラミック材料(low temperature cofireable ceramic material)およびこれに類似したものを利用することが可能である。
【0063】
ヒューズ可融リンクを形成するべく、薄い金属被覆フォイル材料に対して前述のエッチングおよび打抜きプロセスを使用することにより、様々な異なる形状の金属フォイルヒューズリンクを形成し、特定の性能目的を満たすことが可能である。例えば、図6〜図10は、ヒューズ10(これは、図1および図2に示されている)、ヒューズ90(これは、図4に示されている)、およびヒューズ100(これは、図5に示されている)に対して利用可能な複数のヒューズ素子形状を代表的な寸法と共に示している。ただし、本願明細書において説明および図示しているヒューズリンクの形状は、例示を目的としたものにすぎず、本発明の実施内容を特定のフォイル形状またはヒューズ可融リンク構造に限定することを意図したものではないことを認識されたい。
【0064】
図11は、ヒューズの第4実施例(ヒューズ120)の分解斜視図である。前述のヒューズと同様に、ヒューズ120は、図11に示されている積層構造の低抵抗ヒューズを提供する。より具体的には、代表的な実施例においては、ヒューズ120は、基本的に、上部および下部中間絶縁レイヤ22、24の間に挟持されたフォイルヒューズ素子レイヤ20と、これらの中間絶縁レイヤをその間に挟持する上部および下部外部絶縁レイヤ122、124を含む5つのレイヤから構成されている。
【0065】
上述の実施例に従い、ヒューズ素子20は、既知の技法によって下部中間絶縁レイヤ24上に形成された電着による3〜20ミクロンの厚さの銅フォイルである。薄いヒューズ素子レイヤ20は、大文字のIの形状に形成されており、狭いヒューズ可融リンク30が、矩形の接触パッド32、34の間に伸び、ヒューズ可融リンク30を通じて流れる電流が約20アンペアを上回る場合に開路状態にするような寸法になっている。ただし、様々な寸法のヒューズ可融リンクを利用することが可能であり、銅フォイルの代わりに、様々な金属フォイル材料および合金から薄いヒューズ素子レイヤ20を形成することが可能であると考えられる。
【0066】
上部中間絶縁レイヤ22は、フォイルヒューズ素子レイヤ20上に位置しており、これを貫通して伸び、かつ、フォイルヒューズ素子レイヤ20のヒューズ可融リンク30上に位置する円形のヒューズ可融リンク開口部40を含んでいる。前述のヒューズ10、90および100とは対照的に、ヒューズ120内の上部中間絶縁レイヤ22は、終端開口部36、38(これらは、図2〜図5に示されている)を含んではおらず、ヒューズ可融リンク開口部40を除いて、いずれの場所も切れ目のない状態にある。
【0067】
下部中間絶縁レイヤ24は、フォイルヒューズ素子レイヤ20の下に位置しており、フォイルヒューズ素子レイヤ20のヒューズ可融リンク30の下に位置する円形のヒューズリンク開口部42を含んでいる。したがって、ヒューズ可融リンク30がフォイルヒューズ素子20の接触パッド32、34の間で伸びた際に、ヒューズ可融リンク30がいずれの中間絶縁レイヤ22、24の表面とも接触しないように、ヒューズ可融リンク30が上部および下部中間絶縁レイヤ22、24内の各々のヒューズリンク開口部40、42を横断して伸びている。換言すれば、ヒューズ120の製造が完了した際には、ヒューズ可融リンク30は、各々の中間絶縁レイヤ22、24内のヒューズリンク開口部40、42により、エアポケット内において、事実上、吊り下げられている。
【0068】
したがって、ヒューズリンク開口部40、42は、従来のヒューズにおいては、ヒューズの電気抵抗値の増大に寄与する中間絶縁レイヤ22、24に対する熱伝達を防止している。したがって、ヒューズ120は、既知のヒューズよりも低い電気抵抗値において動作し、この結果、既知の匹敵するヒューズよりも、回路が安定する。また一方で、既知のヒューズとは異なり、ヒューズ可融リンク開口部40、42によって生成されるエアポケットにより、アークトラッキングが阻止され、ヒューズ可融リンク30を通じた回路の完全なクリアリングが円滑に実行される。また一方で、エアポケットは、ヒューズ可融リンクが動作した際に、その内部のガス抜きを実行し、ヒューズ内部の望ましくないガスの蓄積および圧力を軽減させる。
【0069】
前述のように、上部および下部中間絶縁レイヤは、それぞれ、例示用の一実施例においては、デラウエア州ウィルミントンに所在するイー.アイ.デュポン デュ ネモーラ アンド カンパニー社からKAPTON(登録商標)という商標で市販されている0.002インチの厚さのポリイミドフィルム等の誘電体フィルムにより製造されている。代替実施例においては、CIRLEX(登録商標)無接着型ポリイミドラミネーション材料、ピロラックス(Pyrolux)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート(これは、しばしば、PENと呼ばれる)、ロジャーズ コーポレーション社から市販されているザイブレックス(Zyvrex)液晶ポリマー材料、およびこれらに類似したもの等のその他の好適な電気絶縁材料を利用することが可能である。
【0070】
上部外部絶縁レイヤ122は、上部中間レイヤ22の上に位置しており、上部外部絶縁レイヤ122上に伸び、かつ、上部中間絶縁レイヤ22のヒューズ可融リンク開口部40上に位置する連続した表面50を含んでおり、これによって、ヒューズ可融リンク30が封入され十分に絶縁されている。図11に示されているように、上部外部レイヤ122は、終端開口部46、48(これらは、図2〜図5に示されている)を含んでいないことに留意されたい。
【0071】
さらなる実施例においては、上部外部絶縁レイヤ122および/または下部外部絶縁レイヤ124は、ヒューズ可融リンク開口部40、42内の開路状態になっているヒューズの視認を容易にする半透明または透明な材料から製造されている。
【0072】
下部外部絶縁レイヤ124は、下部中間絶縁レイヤ24の下に位置しており、切れ目のない状態にある(すなわち、開口部を具備していない)。したがって、下部外部絶縁レイヤ124の連続した切れ目のない表面は、下部中間絶縁レイヤ24のヒューズ可融リンク開口部24の下においてヒューズ可融リンク30を十分に絶縁している。
【0073】
例示用の一実施例においては、上部および下部外部絶縁レイヤは、それぞれ、デラウエア州ウィルミントンに所在するイー.アイ.デュポン デュ ネモーラ アンド カンパニー社からKAPTON(登録商標)という商標で市販されている0.005インチの厚さのポリイミドフィルム等の誘電体フィルムにより製造されている。ただし、代替実施例においては、CIRLEX(登録商標)無接着型ポリイミドラミネーション材料、ピロラックス(Pyrolux)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、およびこれらに類似したもの等のその他の好適な電気絶縁材料が利用可能であることを理解されたい。
【0074】
はんだバンプ終端を含む図2〜図5に示されているヒューズの前述の実施例とは異なり、上部外部絶縁レイヤ122と下部外部絶縁レイヤ124は、それぞれ、その横側面内に形成され、ヒューズリンク接触パッド32、34の上下に伸びる長い終端スロット126、128を含んでいる。ヒューズの各々のレイヤが組み立てられた際に、スロット126、128をその垂直面上において金属被覆することにより、それぞれ、上部中間絶縁レイヤおよび下部中間絶縁レイヤ22、24の金属被覆された垂直横表面130、132、ならびに、上部および下部外部絶縁レイヤ122、124の外部表面上に伸びる金属被覆ストリップ134、136と共に、ヒューズ120のそれぞれの側端部上に接触終端を形成する。この結果、ヒューズ120は、ヒューズ素子の接触パッド32、34への電気接続を確立しつつ、プリント回路基板に表面実装することが可能である。
【0075】
ヒューズ120の製造に利用される代表的な製造プロセスを説明するために、次の表に示されているように、ヒューズ120の各々のレイヤに名称を付与することとする。
【0076】
【表4】

【0077】
図12は、ヒューズ120(これは、図11に示されている)を製造するための代表的な方法150のプロセスを説明するためのフローチャートである。この図には、先程の呼称法が使用されている。フォイルヒューズ素子レイヤ20(レイヤ3)が、既知の積層法により、下部中間レイヤ24(レイヤ4)に積層され、金属被覆構造が形成される(ステップ152)。ついで、フォイルヒューズ素子レイヤ20(レイヤ3)が、塩化第2鉄溶液のエッチングプロセスの使用を含む(ただし、これに限定されない)既知の技法を使用し、下部中間絶縁レイヤ24(レイヤ4)上において望ましい形状に形成される(ステップ154)。代表的な実施例においては、フォイルヒューズ素子レイヤ20(レイヤ3)は、前述のように、大文字のIの形状のフォイルヒューズ素子が残るように形成される。代替実施例においては、エッチング処理の代わりに、打抜き処理を利用してヒューズ可融リンク30の接触パッド32、34を形成することが可能である。本発明のさらなる実施例および/または代替実施例においては、図6〜図10に示されているものを含む(ただし、これらに限定されない)ヒューズ形成可能素子の様々な形状を利用することが可能であることを理解されたい。さらなる実施例および/または代替実施例においては、当業者には周知のスパッタリングプロセス、メッキプロセス、スクリーン印刷プロセス、およびこれらに類似したものを使用し、ヒューズ素子レイヤを金属被覆および形成することが可能であるとさらに考えられる。
【0078】
下部中間絶縁レイヤ(レイヤ4)上におけるフォイルヒューズ素子レイヤ(レイヤ3)の形成が完了した後に、ステップ152からの事前に積層されたフォイルヒューズ素子レイヤ20(レイヤ3)および下部中間絶縁レイヤ24(レイヤ4)に、既知の技法により、上部中間絶縁レイヤ22(レイヤ2)を積層する(ステップ156)。これによって、フォイルヒューズ素子レイヤ20(レイヤ3)が中間絶縁レイヤ22、24(レイヤ2および4)の間に挟持された3レイヤ積層物が形成される。
【0079】
ついで、ヒューズ可融リンク開口部40(これは、図11に示されている)が、上部中間絶縁レイヤ22(レイヤ2)内に形成されると共に(ステップ158)、ヒューズ可融リンク開口部42(これは、図11に示されている)が、下部中間絶縁レイヤ24内に形成される(ステップ158)。ヒューズ可融リンク30(これは、図11に示されている)が、各々の中間絶縁レイヤ22、24(レイヤ2および4)のヒューズ可融リンク開口部40、42内において露出する。代表的な実施例においては、ヒューズ可融リンク開口部40および42を形成するべく、開口部40を既知のエッチング、パンチング、穿孔、および打抜き処理によって形成している。
【0080】
中間絶縁レイヤ22、24(レイヤ2および4)内に開口部をエッチングした後に(ステップ158)、上記のステップ156およびステップ158からの3レイヤの組み合わせ(レイヤ2、3、および4)に、外部絶縁レイヤ122、124(レイヤ1および5)を積層する(ステップ160)。外部絶縁レイヤ122、124(レイヤ1および5)は、当技術分野において周知のプロセスおよび技法を使用して3レイヤの組み合わせに積層される(ステップ160)。
【0081】
本発明にとって特に有利であるラミネーションの1つの形態は、デラウエア州ベアに所在するアーロン マテリアルズ フォー エレクトロニクス社(Arlon Materials for Electronics of Bear, Delaware)から入手可能なもの等の非フロー型ポリイミドプリプレグ材料を使用するものである。このような材料は、スルーホール障害の可能性を低減させると共に、層割れを伴うことなしに、その他のラミネーション接合剤よりも良好な熱サイクルに対する耐性を有する(アクリル接着剤の膨張特性を下回る)膨張特性を具備している。ただし、接合剤の要件は、製造するヒューズの特性に応じて変化し得るものであり、したがって、1つのタイプのヒューズまたはヒューズ定格に不適当なラミネーション接合剤が、別のタイプのヒューズやヒューズ定格には、許容可能であることを理解されたい。
【0082】
外部絶縁レイヤ26、28(これらは、図2に示されている)とは異なり、外部絶縁レイヤ122、124(これらは、図11に示されている)は、中間絶縁レイヤとは反対側のその外部表面上において、銅フォイルによって金属被覆される。例示用の一実施例においては、これは、ヒューズの適切な動作を阻害し得る接着剤を伴うことなしに、銅フォイルと積層されたポリイミドシートを含むCIRLEX(登録商標)ポリイミド技術によって実現可能である。別の代表的な実施例においては、これは、接着剤を伴うことなしに、スパッタリングされた金属フィルムと積層されたエスパネックス(Espanex)ポリイミドシート材料によって実現可能である。代替実施例においては、このために、銅フォイルの代わりに、その他の導電性材料および合金を利用することが可能であり、さらには、CIRLEX(登録商標)材料の代わりに、その他のプロセスおよび技法によって外部絶縁レイヤ122、124を金属被覆することが可能であると考えられる。
【0083】
外部絶縁レイヤ122、124(レイヤ1および5)が積層され、5レイヤの組み合わせが形成された後に(ステップ160)、このステップ160において形成された5レイヤの組み合わせを貫通して、スロット126、128に対応した長いスルーホールが形成される(ステップ164)。様々な実施例においては、スロット126、128を形成する際には(ステップ164)、これらは、レーザー機械加工、化学エッチング、プラズマエッチング、パンチング、または穿孔によって形成される。ついで、エッチングプロセスにより、スロット終端ストリップ134、136(これらは、図11に示されている)が外部絶縁レイヤ122、124の金属被覆された外部表面上に形成され(ステップ166)、ヒューズ素子レイヤ20がエッチングされ、終端スロット126、128内において、ヒューズ素子レイヤの接触パッド32、34(これらは、図11に示されている)が露出する(ステップ166)。積層された組み合わせをエッチングして終端ストリップ134、136を形成し、ヒューズ素子レイヤ20をエッチングしてヒューズ素子レイヤの接触パッド32、34を露出させた後に(ステップ166)、メッキプロセスにより、終端スロット126、128が金属被覆され、スロット126、128内の金属被覆された接触終端が完成する(ステップ168)。代表的な実施例においては、既知のメッキプロセスにおいて、ニッケル/金、ニッケル/すず、およびニッケル/すず−鉛を利用し、スロット126、128内の終端を完成させることができる。したがって、例えば、プリント回路基板に表面実装するのに特に好適なヒューズ120を製造することが可能であるが、その他のアプリケーションにおいては、表面実装の代わりに、その他の接続方式を使用することが可能である。
【0084】
代替実施例においては、前述のスロット126、128内のスルーホールの金属被覆の代わりに、円筒状のスルーホールを含むキャストレート接触終端(castellated contact termination)を利用することが可能である。
【0085】
スロット126、128内の接触終端が完成したら、電圧または電流定格やヒューズ分類コード等のヒューズ120(これは、図11に示されている)の動作特性に関係する標識によって下部外部絶縁レイヤ124(レイヤ5)をマーキングする(ステップ170)。このマーキング(ステップ170)は、例えば、レーザーマーキング、化学エッチング、またはプラズマエッチング等の既知のプロセスによって実行可能である。
【0086】
ヒューズ120は、前述の方法によって個々に製造することが可能であるが、例示用の一実施例においては、ヒューズ120は、シートの形態で集合的に製造された後に、個々のヒューズ120に分離またはシンギュレートされる(ステップ172)。バッチプロセスで形成する場合には、エッチングおよび打抜きプロセスを高精度で制御することにより、ヒューズ可融リンク30(これは、図11に示されている)の様々な形状と寸法を同時に形成することが可能である。さらには、連続的な製造プロセスにおいて、ロールツーロール・ラミネーションプロセスを利用し、多数のヒューズを最小時間で製造することが可能である。さらなる追加ヒューズ素子レイヤおよび/または絶縁レイヤを利用することにより、大きなヒューズ定格および物理サイズのヒューズを供給することが可能である。
【0087】
製造が完了した後に、接触終端を、ラインと、エネルギーの供給対象である回路の負荷電気接続部に接続することにより、ヒューズ可融リンク30(これは、図11に示されている)を通じて電気接続を確立することが可能である。
【0088】
ヒューズ120は、図4および図5において前述したように、中間絶縁レイヤ22、24内のヒューズ可融リンク開口部40、42の1つまたは両方を除去することにより、さらに変更可能であることを認識されたい。この結果、ヒューズ120の様々なアプリケーションおよび様々な動作温度について、ヒューズ120の電気抵抗値を変化させることができる。
【0089】
さらなる実施例においては、半透明の材料から外部絶縁レイヤ122、124の1つまたは両方を製造することにより、局所的なヒューズの状態標識を外部絶縁レイヤ122、124を通じて供給することが可能である。この結果、ヒューズ可融リンク30が動作した際に、ヒューズ120を容易に識別して交換することが可能である。これは、電気システム内に多数のヒューズが利用されている場合に、特に有利である。
【0090】
したがって、前述の方法によれば、低コストであって広く入手可能な材料を使用し、バッチプロセスにおいて、低廉な既知の技法およびプロセスを使用して、ヒューズを効率的に形成することが可能である。フォトケミカルエッチングプロセスによれば、非常に小さなヒューズの場合にも、薄いヒューズ素子レイヤ20のヒューズ可融リンク30および接触パッド32、34をかなり高精度に形成することが可能であり、均一な厚さおよび導電性により、ヒューズ10の最終的な性能のばらつきが極小化される。また一方で、薄い金属フォイル材料を使用してヒューズ素子レイヤ20を形成することにより、既知の匹敵するヒューズと比べて、非常に低い電気抵抗値のヒューズを構成することが可能である。
【0091】
図13および図14は、それぞれ、本発明の代表的な態様に従って形成されたヒューズの第5実施例(ヒューズ200)の斜視図および分解斜視図である。前述のヒューズと同様に、ヒューズ200は、積層構造の低抵抗ヒューズを提供する。ヒューズ200は、後述する部分を除いて、ヒューズ120(これは、図11に示されている)と実質的に同様に構成されており、ヒューズ120の類似の参照符号が、図13および図14の類似の参照符号によって示されている。
【0092】
代表的な実施例においては、ヒューズ200は、上部および下部中間絶縁レイヤ22、24の間に挟持されたフォイルヒューズ素子レイヤ20と、これらの中間絶縁レイヤをその間に挟持する上部および下部外部絶縁レイヤ122、124とを含んでいる。ヒューズ素子レイヤ20と、レイヤ22、24、122および124は、図11および図12と関連して前述したように製造され、組み立てられる。
【0093】
ヒューズ素子レイヤ20が、ヒューズ可融リンク開口部40および42の近傍にて吊り下げられているか、あるいは、上部または下部中間絶縁レイヤ22、24と直接接触した状態にある前述の実施例とは異なり、図13および図14のヒューズ素子レイヤ20は、ポリマーメンブレイン(polymer membrane)202上において支持されている。ポリマーメンブレイン202は、ヒューズ素子20を支持すると共に、ヒューズ素子レイヤ20を形成する表面を提供する役割を果たしている。動作の際には、ポリマーメンブレイン202の炭化やポリマーメンブレイン202の表面上におけるアークトラッキングを伴うことなしに、ヒューズ素子レイヤ20の金属製のヒューズ可融リンク30が、溶融し、ヒューズ200を通じた回路をクリア状態にする。
【0094】
ポリマーメンブレイン202は、ヒューズ素子レイヤ20内の特定の形状および長さのヒューズ可融リンクに対して、特に推奨される。例えば、ヒューズ素子レイヤ20内において、曲がった(または、切り欠かれた)リンクを利用している場合には、回路をクリア状態にする前に、ヒューズ素子レイヤ20が、ヒューズ可融リンクの上下に配置されているヒューズ可融リンク開口部40および42の表面に接触しないように、ポリマーメンブレイン202がヒューズ可融リンクを支持する。相対的に高電圧のヒューズおよび/または長さが長いヒューズ可融素子を具備する時間遅延ヒューズ素子の場合には(ならびに、複数の形および/または幾何学的形状のヒューズ可融リンクを利用している場合には)、許容可能なヒューズの動作を得るためにポリマーメンブレイン202が大きな役割を果たすと考えられる。素子の長さが長い時間遅延ヒューズの設計においては、ヒューズ素子レイヤ20は、過負荷状態において、ヒューズ素子レイヤ20の形成に使用した金属の熱膨張に関連する係数に従って膨張する。ヒューズ素子レイヤ20の加熱は、そのヒューズ素子レイヤ20の少なくとも一部が液体状態に溶融するまで継続される。ヒューズ素子レイヤ20の加熱の際のポリマーメンブレイン202を通じた熱発散の結果として、ヒューズ200の時間/電流特性における重要かつ望ましい変化を得ることができる。
【0095】
ポリマーメンブレイン202は、ヒューズ200のさらなる構造的な利益をさらに提供している。例えば、ポリマーメンブレイン202は、製造プロセスにおいて、ヒューズ素子レイヤ20を支持することにより、ヒューズ可融リンクに構造的な強度を提供し、これによって、ヒューズ可融リンクを硬化させて、高温および高圧における一連のラミネーションプロセスにおける潜在的な破損を回避する。また一方で、ポリマーメンブレイン202は、ヒューズ素子レイヤを強化し、ヒューズの取扱および設置の際のヒューズ可融リンクの潜在的な破損を回避する。また一方で、ポリマーメンブレイン202は、使用の際の電流のオン/オフによる熱応力に起因する(これは、ヒューズ素子レイヤの熱膨張および収縮を引き起こす)ヒューズ可融リンクの破損の可能性を低減させる。したがって、このポリマーメンブレイン202の構造的な強度に起因し、電流のオン/オフに起因したヒューズ可融リンクの疲労による障害が軽減される。
【0096】
したがって、ポリマーメンブレイン202またはヒューズ素子レイヤ20用のその他の支持構造を内蔵することにより、ヒューズ200は、向上した機械的なショック、熱的なショック、および衝撃に対する抵抗力、振動に対する耐性、ならびに、おそらくは、例えば、ヒューズ可融リンク30が空中で吊り下げられているヒューズ120(これは、図11に示されている)よりも優れた性能を発揮する。
【0097】
ポリマーメンブレイン202は、前述の特定のタイプまたはアプリケーションのヒューズの場合に、望ましいものであることがわかるが、高速で動作するヒューズおよび相対的に短いヒューズリンクを具備するヒューズの場合には、ヒューズ可融リンクは、ポリマーメンブレイン202を任意選択とするのに十分な構造的完全性と許容可能な性能を具備することが可能である。短いヒューズ可融リンクおよび高速動作ヒューズの場合には、ポリマーメンブレイン202の供給がヒューズ200の時間/電流特性に大きな影響を具備する可能性は低い。
【0098】
代表的な実施例においては、ポリマーメンブレイン202は、約0.0005インチ以下の厚さを具備する薄いメンブレインであるが、代替実施例においては、これよりも厚いメンブレインを使用することが可能であることを理解されたい。薄いポリマーメンブレインは、理想的には、ヒューズが動作した際に、溶融、蒸発、またはその他の方法で分解する。ポリマーメンブレイン202の代表的な材料は、液晶ポリマー(LCP)材料および前述のもの等のポリイミドフィルム材料を含んでいる(ただし、これらに限定されない)。液体ポリイミド材料を利用し、スピンコーティング処理またはドクターブレード(doctor blade)による塗布を含む(ただし、これらに限定されない)既知のプロセスまたは技法により、ヒューズ素子レイヤ20用の支持メンブレイン202を形成することも可能である。所望と必要性に応じて、ポリマーメンブレイン202を様々な形状に形成し、特定のヒューズ形成特性を具備するヒューズを構成することが可能である。
【0099】
ヒューズ200は、ポリマーメンブレイン202上にヒューズ素子レイヤ20を形成する(または、その他の方法により、ポリマーメンブレイン202によってヒューズ素子レイヤ20を支持する)ための変更を加えることにより、図12に示されている方法150によって製造することが可能である。
【0100】
図15は、本発明の代表的な態様に従って形成されたヒューズの第6実施例(ヒューズ210)の分解斜視図である。前述のヒューズと同様に、ヒューズ210は、積層構造の低抵抗ヒューズを提供する。ヒューズ210は、後述する部分を除いて、ヒューズ120(これは、図11に示されている)と実質的に同様に構成されており、ヒューズ120の類似の参照符号が、図15の類似の参照符号によって示されている。
【0101】
代表的な実施例においては、ヒューズ20は、上部および下部中間絶縁レイヤ22、24に挟持されたフォイルヒューズ素子レイヤ20と、これらの中間絶縁レイヤをその間に挟持する上部および下部外部絶縁レイヤ122、124とを含んでいる。ヒューズ素子レイヤ20と、レイヤ22、24、122および124は、図11および図12と関連して前述したように製造され、組み立てられる。
【0102】
図15の実施例では、前述の実施例とは異なり、アーク消去媒体212が、上部および下部中間絶縁レイヤ22および24のヒューズ可融リンク開口部40および42内に形成されている。この結果、ヒューズ素子レイヤ20が開路状態になった際に、アークエネルギーの発散が円滑に行われ、ヒューズの電圧定格が増大することから、これは有益である。アークエネルギーによって、ヒューズが破裂し、周辺環境に及ぶと、ヒューズと関連する高感度な電気装置および電子部品が危険に晒され、この結果、近隣の人々や要員が危険な状態におかれる可能性がある。アークが発生した場合には、取り囲んでいるアーク消去媒体212が加熱して相遷移を経験し、エントロピーのために、アークエネルギーがアーク消去媒体に吸収される。したがって、アークエネルギーは、事実上、ヒューズ210内のヒューズ可融リンク開口部40および42の領域内に閉じ込められる。この結果、電気装置および部品への損傷が回避され、安全な動作環境が保たれる。
【0103】
一例として、アーク消去媒体212としては、アーク抑制特性を具備することが判明しているセラミック、シリコン、およびセラミック/シリコン複合材料を利用することが可能である。当業者であれば、粉末、懸濁液、または接着剤の形態のセラミック製品を使用し、既知のプロセスおよび技法により、ヒューズリンク開口部40および42に適用可能であることを理解することができるであろう。さらに詳しくは、RTV等のシリコンと変性アルコキシシリコンをアーク消去媒体212として使用することが可能である。アルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ三水和物(Al23*3H2O)、および/またはAl23*MgO*SiO2三元系の任意の化合物等のセラミック材料をアーク消去媒体212として同様に使用することが可能である。MgO*ZrO2化合物およびAl23*MgO等の尖晶石、ならびに、硝酸ナトリウム(NaNO2、NaNO3)等の大きな変態熱を有するその他のアーク消去媒体も、アーク消去媒体210として使用するのに適している。
【0104】
図15に示されているように、1つまたは複数の追加レイヤ(絶縁材料214)をヒューズ素子レイヤ20の近傍に形成し、この内部に、ヒューズ可融リンク開口部216を形成することが可能である。絶縁レイヤ214は、前述の上部および下部絶縁レイヤ22および24と同一または類似の材料から製造することが可能である。アーク消去媒体212により、絶縁レイヤ214内の開口部216を充填する。この結果、追加的な絶縁およびアーク消去能力が付与され、相対的に高電圧のヒューズの望ましいヒューズ形成特性が実現する。
【0105】
このヒューズ210と組み合わせて、ポリマーメンブレイン202(これは、図14に示されている)を利用することが可能であることを理解されたい。また一方で、ヒューズ210は、アーク消去媒体212と1つまたは複数の追加絶縁レイヤ214を内蔵するための適切な変更を加えることにより、図12に示されている方法150によって製造することが可能であることをも理解されたい。
【0106】
図16は、本発明の代表的な態様に従って形成されたヒューズの第7実施例(ヒューズ220)の分解斜視図である。前述のヒューズと同様に、ヒューズ220は、積層構造の低抵抗ヒューズを提供する。ヒューズ220は、ヒューズ120(これは、図11に示されている)と共通の要素を含んでいることから、ヒューズ120の類似の参照符号が、図16の類似の参照符号によって示されている。
【0107】
代表的な実施例においては、ヒューズ220は、上部および下部中間絶縁レイヤ22、24の間に挟持されたフォイルヒューズ素子レイヤ20と、これらの中間絶縁レイヤをその間に挟持する上部および下部外部絶縁レイヤ122、124とを含んでいる。ヒューズ素子レイヤ20と、レイヤ22、24、122および124については、図11および図12との関連で前述したとおりである。
【0108】
図16の実施例では、無接着型である前述の実施例とは異なり、ヒューズ220は、ヒューズ素子レイヤ20を上部および下部中間絶縁レイヤ22、24に固定されると共に、上部および下部中間絶縁レイヤ22および24を外部絶縁レイヤ122、124に固定するための接着要素222(これは、図16に破線によって示されている)を含んでいる。従来の接着剤とは異なり、例示用の一実施例の接着要素222は、ヒューズ素子レイヤ20が開路状態になり、ヒューズ220を通じた回路をクリア状態にする際に、炭化したり、あるいは、アークトラッキングしたりしない。また一方で、接着要素222は、ヒューズ220の製造の際に、相対的に低いラミネーション温度および圧力を許容しているのに対し、前述の無接着型の実施例は、相対的に高いラミネーション温度および圧力を必要としている。ヒューズ220を製造する際のラミネーション温度および圧力の低減により、ヒューズ220を製造する際のエネルギー消費量の節減と製造手順の単純化を含む(ただし、これらに限定されない)多数の利益が提供され、これらのそれぞれによって、ヒューズ220を形成するためのコストが節減される。
【0109】
様々な実施例において、接着要素222は、例えば、ポリイミド液体接着剤、ポリイミド接着フィルム、またはシリコン接着剤であってよい。さらに詳しくは、エスパネックス SPI(Espanex SPI)およびエスパネックス SPC(Espanex SPC)接合フィルムを使用することが可能である。あるいは、その代わりに、液体ポリマーをスクリーン印刷または鋳造した後に、硬化させて、接着要素222を形成することも可能である。
【0110】
接着フィルムを接着要素222として利用する際には、接着フィルムを事前にパンチングし、上部および下部中間絶縁レイヤ22および24内にヒューズ可融リンク開口部40および42を形成することが可能である。開口部40および42の形成が完了したら、接着要素222を各々の中間絶縁レイヤ22および24と外部レイヤ122、124に積層する。ラミネーションプロセスにおいては、オーバーレイフィルムおよびインクの形態のポリイミドプレカーソルを利用することが可能であり、硬化が完了した後には、ポリイミドの電気的、機械的および寸法的な特性のいずれもが、先程詳述したポリイミドの利点と共に、適切なものになる。
【0111】
さらなる実施例においては、接着要素222は、金属製のフォイルヒューズ素子レイヤ20を封入することが可能である。例えば、相対的に低い溶融温度のヒューズ形成合金または金属を使用したり、メトカルフ(Metcalf)タイプの合金系を使用したりする場合には、相対的に低い硬化温度の封入材料を使用することが可能である。
【0112】
図16には、4つの接着要素222が示されているが、代替実施例においては、本発明の範囲を逸脱することなしに、ヒューズ220の利益の少なくともいくつかを取得しつつ、さらに多くのまたは少ない数の接着要素222を利用することが可能であることを理解されたい。
【0113】
必要に応じて、ヒューズ220と組み合わせて、ポリマーメンブレイン202(これは、図14に示されている)を利用することが可能であることを理解されたい。また一方で、接着要素222を内蔵するための適切な変更を加えることにより、図12に示されている方法150によってヒューズ220を製造することが可能であることをも理解されたい。また一方で、必要に応じて、ヒューズ220内において、アーク消去媒体212(これは、図15に示されている)および1つまたは複数の追加絶縁レイヤ214(これも、図15に示されている)を利用することも可能であることを理解されたい。
【0114】
図17は、本発明の代表的な態様に従って形成されたヒューズの第8実施例(ヒューズ230)の概略図である。前述のヒューズと同様に、ヒューズ230は、積層構造の低抵抗ヒューズを提供する。ヒューズ230は、前述の実施例と共通の要素を含んでおり、ヒューズ230の類似の参照符号が、図17の類似の参照符号によって示されている。
【0115】
代表的な実施例においては、ヒューズ230は、上部および下部中間レイヤ22、24によって挟持されたフォイルヒューズ素子レイヤ20と、これらの中間レイヤをその間に挟持する上部および下部外部絶縁レイヤ122、124とを含んでいる。ヒューズ素子レイヤ20と、レイヤ22、24、122および124は、図11および図12との関連で前述したとおりである。
【0116】
図17の実施例では、前述の実施例とは異なり、ヒューズ230は、ヒートシンク232と追加の絶縁レイヤ214(これは、図15にも示されている)を含んでいる。熱的なヒートシンク232は、ヒューズ素子レイヤ20のヒューズ可融リンク30の近傍に配置されており、ヒートシンク232は、特定のヒューズ応用製品における時間遅延特性を改善する。電流が流れるに伴って、通常、ヒューズ素子レイヤ20の中心が(すなわち、図17に示されているヒューズ可融リンク30の場所が)局所的に加熱した際に、ヒートシンク232は、ヒューズ素子レイヤ20から熱を除去する。この結果、ヒューズ素子レイヤ20をその溶融点まで加熱し、指定の電流過負荷状態において、ヒューズ230を開路状態にするかまたは作動させるのに必要な期間が増大することになる。
【0117】
代表的な実施例においては、ヒートシンク232は、ヒューズ素子レイヤ20の上または下において、ヒューズ素子の近傍に配置されたセラミックまたは金属要素であるが、その他の実施例においては、その他のヒートシンク材料およびヒートシンク232の相対的な位置を利用することが可能であることを理解されたい。一実施例においては、図17に示されているように、ヒートシンク232は、動作の際に、ヒューズ素子レイヤ20の最も熱い部分から離れたところに配置されている。すなわち、ヒートシンク232は、図17の例示用の実施例においては、素子レイヤ20の中心またはヒューズ可融リンク30から離れたところに配置されている(すなわち、離隔している)。ヒューズ可融リンク30からヒートシンク232を離隔させることにより、ヒューズ素子レイヤ20を通じた回路の開路およびクリアリングをヒートシンク232が妨げないようにしている。
【0118】
必要に応じて、ヒューズ220と組み合わせて、ポリマーメンブレイン202(これは、図14に示されている)を利用することが可能であることを理解されたい。また一方で、ヒューズ230においては、必要に応じて、アーク消去媒体212(これは、図15に示されている)と1つまたは複数の追加の絶縁レイヤ214(これも図15に示されている)を利用することも可能であることを理解されたい。接着要素(これは、図16に示されている)も同様にヒューズ230内において利用可能である。また一方で、前述の特徴を内蔵するための適切な変更を加えることにより、図12に示されている方法150によってヒューズ220を製造することが可能であることをも理解されたい。
【0119】
図18は、前述のヒューズ素子のいずれかのものに使用可能なヒューズ素子レイヤ20の代表的な一実施例の平面図である。図18に示されているように、ヒューズ素子20は、ヒーター要素240を含んでいる。特に、相対的に低い溶融温度の材料を使用してヒューズ素子レイヤ20を形成する場合には、ヒーター要素240を追加することにより、高速動作および高サージ耐久性を有するヒューズを容易に実現することが可能である。通常、非常に高速の動作特性を有するヒューズは、例えば、LCDフラットパネルディスプレイ等の応用製品において経験する注入電流(inrush current)に耐えることができない。ヒーター要素240により、ヒューズ素子レイヤ20は、ヒューズを開路状態にすることなしに、このような注入電流に耐えることができる。
【0120】
代表的な実施例においては、ニッケル、バルコ(Balco)、白金、カンタル(Kanthal)、またはニクロム等のヒーター合金をヒーター要素240として使用し、既知のプロセスおよび技法により、ヒューズ素子レイヤ20に適用することが可能である。バルク抵抗率、抵抗の温度係数(Temperature Coefficient of Resistance:TCR)、安定性、線形性、およびコスト等の材料特性に基づいて、これらおよびその他の代替材料および金属をヒーター要素240として選択することが可能である。
【0121】
図18の大文字のIの形状の特定のヒューズ素子レイヤ20上には、2つのヒーター要素240が示されているが、ヒューズ素子レイヤは、本発明の範囲を逸脱することなしに、図6〜図10に示されている形状を含む(ただし、これらに限定されない)様々な幾何学的形状に形成することが可能であり、かつ、異なるヒューズ素子形状に適合するように、あるいは、特定の性能パラメータに適用可能な仕様を実現するべく、さらに多くのまたは少ない数のヒーター要素240を利用することが可能であることを理解されたい。
【0122】
図19は、絶縁レイヤ252上に形成されたヒューズ素子レイヤ250の一部の代表的な実施例の平面図である。ヒューズ素子レイヤ250は、前述のヒューズ素子レイヤ20と関連して説明した方式により、図10に示されているものに類似した形状に形成されている。絶縁レイヤ252は、前述の下部中間絶縁レイヤ24と関連して説明したように形成されている。このヒューズ素子レイヤは、前述のヒューズの実施例のいずれかにおいて使用することが可能であり、図14〜図18において説明した任意の選択された特徴(すなわち、ポリマーメンブレイン202、アーク消去媒体212、接着要素222、ヒートシンク232、またはヒーター240)と組み合わせて使用することが可能である。
【0123】
ヒューズ可融リンク254は、絶縁レイヤ252内に形成されたヒューズ可融リンク開口部256を横断して伸びており、ヒューズ可融リンクは、曲がったヒューズ素子レイヤ250の残りの部分と比べて、小さな幅を具備している。曲がったヒューズ素子レイヤ250とヒューズ可融リンク254は、相対的に長い導電性経路を絶縁レイヤ252上において確立しており、時間遅延ヒューズに好適である。
【0124】
当業者であれば、ヒューズ素子レイヤ250が溶融する時点は、ヒューズ素子レイヤ250の最大エネルギー吸収能力(Q)を算出することによって判定可能であることを理解することができるであろう。さらに詳しくは、最大エネルギー吸収能力は、次の関係(式(5))によって演算される。
【0125】
Q=∫i2Rdt=CpΔTδv=CpΔTδAl (5)
【0126】
ここで、vは、形成されたヒューズ素子レイヤ形状の材料の容積であり、iは、ヒューズ素子を通じて流れる瞬間的な電流値であり、tは、ヒューズ素子を通じて流れる電流の時間値であり、ΔTは、時間tにおけるヒューズ素子レイヤを形成するのに使用した材料の溶融温度と材料の周辺温度との差であり、Cpは、ヒューズ素子レイヤ材料の比熱容量であり、δは、ヒューズ素子レイヤの材料の密度であり、Aは、ヒューズの断面積であり、lは、ヒューズ素子の長さである。
【0127】
ヒューズ素子レイヤに使用される材料の断面積、長さおよびタイプは、次の関係式(式(6))により、その電気抵抗値(R)に影響を与えることになる。
【0128】
R=ρl/A (6)
【0129】
ここで、ρは、ヒューズ素子レイヤの材料の抵抗率であり、lは、ヒューズ素子の長さであり、Aは、ヒューズ素子の断面積である。
【0130】
式(4)および式(5)を検討することにより、ヒューズの既定の電気抵抗値以下において、提供されかつ指定されたヒューズ形成特性に対応する適切な断面積と長さを有するヒューズ素子レイヤを設計することが可能である。この結果、低抵抗ヒューズを構成し、特定の目的以上を満足することが可能である。
【0131】
例えば、ヒューズ素子レイヤ250の上および下の両方に位置する絶縁レイヤ内のヒューズ可融リンク開口部256と組み合わせて、低蒸発温度合金から製造されたヒューズ素子レイヤ250と直列の1つまたは複数のヒーター要素240(これは、図18に示されている)を使用することにより、ヒューズの動作に最適な断熱状態が生成される。
【0132】
理想的なヒューズ形成状態は、電流過負荷状態において、熱の利得と損失が存在しない断熱状態である。断熱状態においては、取り囲んでいる要素との熱の交換を伴うことなしに、回路がクリア状態にされる。現実には、断熱状態は、ヒューズの終端またはヒューズのレイヤからの熱の発散に、ほとんど時間を所要しないか、または、この時間がまったく存在しない非常に高速の開路イベントにおいてのみ、発生する。ただし、ヒューズ可融リンクの周りの断熱エンベロープをモデル化することにより、熱の利得または損失が存在しない熱力学系内にヒューズ可融リンクを封入することによって、一貫性のある近似的な断熱状態を実現することが可能である。
【0133】
断熱モデルエンベロープは、ヒューズ可融リンクを低熱伝導率材料によって取り囲むことにより、少なくとも部分的に実現することが可能である。例えば、ヒューズ素子レイヤのいずれかの面上の上部および下部絶縁レイヤ内のヒューズ可融リンク開口部を介してヒューズ形成素子を取り囲んでいるエアポケットは、ヒューズ可融リンクを絶縁しており、ヒューズの各々のレイヤを通じた熱の発散を防止している。また一方で、最小のアスペクト比(すなわち、素子の幅を素子の厚さで除算したもの)を有するヒューズ素子形状を構成することにより、例えば、上部および下部中間絶縁レイヤへの熱伝達に使用されるヒューズ素子レイヤの表面積を低減させる。また一方で、前述のヒーター要素240等のヒーター要素をヒューズ形成素子と直列に配置することにより、ヒューズ素子からヒューズの各レイヤとヒューズ終端への熱伝達を防止する。
【0134】
前述のように断熱エンベロープをモデル化することにより、過電流が発生した際に、ジュール熱が吸収されず、ヒューズ素子を迅速に溶融させて除去することが可能である。ヒューズ素子が溶融した後にアークが生じる場合にも、アークを生成する可能性が高い金属蒸気は、エンベロープ内に閉じ込められる。
【0135】
ヒューズの前述の実施例においては、前述のように、ヒューズ素子の最大エネルギー吸収能力と組み合わせてヒューズマトリックスの熱拡散率を検討することにより、ヒューズの電気特性を予測することが可能である。熱伝導式における熱拡散率は、次の式(7)のように、定数である。
【0136】
δT(r,t)/δt=KΔ2(r,t) (7)
【0137】
これは、熱が媒体を通じて伝導する速度を表しており、次の関係(式(7))により、熱伝導率k、比熱Cpおよび密度ρに関係している。
【0138】
K=Imfpv=k/ρCp (8)
【0139】
図20は、本発明の代表的な態様に従って形成されたヒューズ製品260の分解斜視図である。前述のヒューズと同様に、ヒューズ260は、積層構造の低抵抗ヒューズを提供する。ヒューズ260は、前述の実施例と共通の要素を含んでいることから、類似の参照符号が、図17の類似の参照符号によって示されている。
【0140】
代表的な実施例においては、ヒューズ260は、上部および下部中間絶縁レイヤ22、24によって挟持されたフォイルヒューズ素子レイヤ20と、これらの中間絶縁レイヤをその間に挟持している上部および下部外部絶縁レイヤ122、124とを含んでいる。ヒューズ素子レイヤ20と、レイヤ22、24、122および124については、図11および図12との関連で前述したとおりである。図15との関連で前述した追加の絶縁レイヤ214も形成されている。
【0141】
図20の実施例では、前述の実施例とは異なり、レイヤの中の1つまたは複数のものの形成を円滑に実行するべく、マスク262が形成されている。マスク262は、レイヤの中の1つのものの内部のヒューズ可融リンク開口部に対応する開口部264と、各々のレイヤを成形するための丸い終端溝266とを規定している。マスク262を利用し、製造プロセスにおいて、ヒューズのヒューズ可融リンク開口部と個々のレイヤの終端の形成を円滑に実行することができる。代表的な実施例においては、マスク262は、プラズマエッチングプロセスにおいて使用される銅フォイルマスクであるが、必要に応じて、その他の材料およびその他の技法を利用し、ヒューズの開口部とレイヤの終端を形成および成形することも可能であると考えられる。
【0142】
代表的な実施例においては、マスク262は、ヒューズの各レイヤが1つに積層される前に、その構造から物理的に除去される。別の実施例においては、マスクは、最終的なヒューズ製品の内部のレイヤ内に内蔵することが可能である。
【0143】
図21は、ヒューズの別の代表的な実施例300の分解斜視図である。代表的な実施例においては、ヒューズ300は、いくつかの面において、ヒューズ120(これについては、図12との関連で図示および説明している)に類似しており、したがって、ヒューズ120の類似の構成要素が、図21の類似の参照符号によって示されている。
【0144】
前述のヒューズ120と同様に、ヒューズ300は、図21に示されている積層構造の低抵抗ヒューズを提供する。具体的には、代表的な実施例においては、ヒューズ300は、基本的に、上部および下部中間絶縁レイヤ303、304によって挟持されたフォイルヒューズ素子レイヤ302と、これらの中間絶縁レイヤをその間に挟持する上部および下部外部絶縁レイヤ122、124を含む5つのレイヤから構成されている。
【0145】
図21の実施例では、電着によるヒューズ素子レイヤ(この電着レイヤは、次いで、エッチングまたはその他のプロセスによって絶縁レイヤから除去され、中間絶縁レイヤの1つの上において成形される)を具備する前述のヒューズ実施例とは異なり、ヒューズ素子レイヤ302は、上部および下部中間絶縁レイヤ303および304とは独立的に製造および形成された電気鋳造による3〜20ミクロンの厚さの銅フォイルである。より具体的には、例示用の一実施例においては、ヒューズ素子レイヤは、ヒューズ素子レイヤの所望の形状をメッキし、フォトレジストがコーティングされた基板上において、ネガティブイメージを鋳造する電気鋳造プロセス等の既知の付加的なプロセスによって製造されている。続いて、この鋳造されたネガティブイメージ上に、金属(例えば、銅)の薄いレイヤをメッキし、ついで、メッキされたレイヤを鋳型から剥がすことにより、上部および下部中間絶縁レイヤ303および304の間で伸びる独立型のフォイルを生成している。
【0146】
ヒューズ素子レイヤ302を別個に独立的に形成することにより、ヒューズ300を構成する際に、その他のレイヤに対するヒューズ素子レイヤの制御および位置の精度が向上する等のいくつかの利点が実現する。前述の実施例のエッチングプロセスと比較し、ヒューズ素子レイヤ302を独立的に形成することにより、そのエッジにおけるヒューズ素子レイヤの形状を高精度で制御することが可能になる。エッチングの場合には、形成された際に、生成されるヒューズ素子レイヤの側部エッジが傾くまたは傾斜する傾向を有しているが、電気鋳造プロセスによれば、実質的に垂直の側部エッジを実現することが可能であり、この結果、製造されるヒューズの電気抵抗値の公差が低減される。また一方で、ヒューズ素子を別個に独立的に形成することにより、垂直方向(すなわち、絶縁レイヤに対して垂直方向)の寸法において様々な厚さのヒューズ素子を提供し、ヒューズ素子レイヤ302の垂直方向のプロファイルまたは輪郭を生成し、性能特性を変化させる。さらには、別個で独立した形成プロセスにおいて、複数の金属または金属合金を使用し、ヒューズ素子の異なる領域内に異なる金属組成を具備するヒューズ素子を構成することも可能である。例えば、ヒューズ可融リンク30を第1金属または合金から製造し、接触パッドを第2金属または合金から製造することが可能である。
【0147】
代表的な実施例においては、ヒューズ素子レイヤ302は、大文字のIの形状に形成されており、狭いヒューズ可融リンク30が、矩形の接触パッド32、34間に伸び、ヒューズ可融リンク30を通じて流れる電流が既定の閾値を超過した際に開路状態にするような寸法になっている。ただし、様々な寸法のヒューズ可融リンクを利用することが可能であり、ヒューズ素子レイヤ302は、銅フォイルの代わりに、様々な金属フォイル材料および合金から形成することが可能であると考えられる。また一方で、後程詳述するように、メトカルフ(Metcalf)タイプの合金法をヒューズ可融リンク30に適用し、ヒューズ可融リンク30の動作特性を変更するMスポットを形成することも可能であるとさらに考えられる。
【0148】
上部中間絶縁レイヤ303は、フォイルヒューズ素子レイヤ302上に位置しており、これを貫通して伸び、かつ、フォイルヒューズ素子レイヤ302のヒューズ可融リンク30上に位置する円形のヒューズ可融リンク開口部40を含んでいる。代表的な実施例における開口部40は、ヒューズリンク開口部40が製造プロセスの後工程において形成される以前の実施例とは異なり、上部絶縁レイヤ303内に事前に形成されている。
【0149】
下部中間絶縁レイヤ304は、フォイルヒューズ素子レイヤ302の下に位置しており、円形のヒューズリンク開口部42を含んでいる(この場合も、代表的な実施例においては、下部絶縁レイヤ304内に事前に形成されている)。ヒューズリンク開口部42は、フォイルヒューズ素子レイヤ302のヒューズ可融リンク30の下に位置している。したがって、ヒューズ可融リンク30がフォイルヒューズ素子302の接触パッド32、34間において伸びる際に、ヒューズ可融リンク30が中間絶縁レイヤ303、304のいずれの表面にも接触しないように、ヒューズ可融リンク30は、上部および下部中間絶縁レイヤ303、304内の個々のヒューズリンク開口部40、42を横断して伸びている。換言すれば、ヒューズ300の製造が完了した際に、ヒューズ可融リンク30は、各々の中間絶縁レイヤ303、304内のヒューズリンク開口部40、42により、エアポケット内において、事実上、吊り下げられている。
【0150】
したがって、ヒューズリンク開口部40、42は、従来のヒューズにおいては、ヒューズの電気抵抗値の増大に寄与する中間絶縁レイヤ303、304に対する熱伝達を防止している。したがって、ヒューズ300は、既知のヒューズよりも低い電気抵抗値で動作し、この結果、既知の匹敵するヒューズよりも、回路が安定する。また一方で、既知のヒューズとは異なり、ヒューズリンク開口部40、42によって生成されるエアポケットにより、アークトラッキングが妨げられ、ヒューズ可融リンク30を通じた回路の完全なクリアリングが円滑に実行される。また一方で、エアポケットは、ヒューズ可融リンクが動作した際に、その内部のガス抜きを実行し、ヒューズ内部の望ましくないガスの蓄積および圧力を軽減させる。ただし、さらなる実施例においては、ヒューズリンク開口部40および42は、例えば、ヒューズ210(これについては、図15との関連で図示および説明している)との関連で前述したアーク消去媒体を含むことも可能であることを理解されたい。また一方で、さらなる実施例においては、アーク消去媒体は、後述するように、ヒューズ300のレイヤを1つに接合する接着剤の内部に含むことも可能である。
【0151】
前述のように、上部および下部中間絶縁レイヤは、それぞれ、例示用の一実施例においては、デラウエア州ウィルミントンに所在するイー.アイ.デュポン デュ ネモーラ アンド カンパニー社からKAPTON(登録商標)という商標で市販されている0.002インチの厚さのポリイミドフィルム等の誘電体フィルムにより製造されている。代替実施例においては、CIRLEX(登録商標)無接着型ポリイミドラミネーション材料、ピロラックス(Pyrolux)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート(これは、しばしば、PENと呼ばれる)、ロジャーズ コーポレーション社から市販されているザイブレックス(Zyvrex)液晶ポリマー材料、およびこれらに類似したもの等のその他の好適な電気絶縁材料を利用することが可能である。
【0152】
上部外部絶縁レイヤ122は、上部中間レイヤ303上に位置しており、上部外部絶縁レイヤ122上に伸び、かつ、上部中間絶縁レイヤ303のヒューズ可融リンク開口部40上に位置する連続した表面50を含んでおり、これにより、ヒューズ可融リンク30を上から封入し十分に絶縁している。さらなる実施例においては、上部外部絶縁レイヤ122および/または下部外部絶縁レイヤ124は、ヒューズ可融リンク開口部40、42内の開路状態になっているヒューズの視認を容易にする半透明または透明な材料から製造されている。
【0153】
下部外部絶縁レイヤ124は、下部中間絶縁レイヤ304の下に位置しており、切れ目のない状態にある(すなわち、開口部を具備していない)。したがって、下部外部絶縁レイヤ124の連続した切れ目のない表面は、下部中間絶縁レイヤ304のヒューズ可融リンク開口部42の下においてヒューズ可融リンク30を十分に絶縁している。
【0154】
例示用の一実施例においては、上部および下部外部絶縁レイヤは、それぞれ、デラウエア州ウィルミントンに所在するイー.アイ.デュポン デュ ネモーラ アンド カンパニー社からKAPTON(登録商標)という商標で市販されている0.005インチの厚さのポリイミドフィルム等の誘電体フィルムにより製造されている。ただし、代替実施例においては、CIRLEX(登録商標)無接着型ポリイミドラミネーション材料、ピロラックス(Pyrolux)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、およびこれらに類似したもの等のその他の好適な電気絶縁材料が利用可能であることを理解されたい。
【0155】
上部外部絶縁レイヤ122と下部外部絶縁レイヤ124は、それぞれ、その横側面内に形成され、ヒューズリンク接触パッド32、34の上および下を伸びる丸い終端スロットまたは孔126、128を含んでいる。同様に、上部および下部中間絶縁レイヤ303、304も、その横側面内に形成された丸い終端スロットまたは孔306、308を含んでおり、ヒューズ素子レイヤ302も、その横側面上に丸い終端スロットまたは孔310、312を含んでいる。ヒューズ300の各々のレイヤが組み立てられた際に、終端スロット126、128、306、308、310および312の垂直面が金属被覆されて、ヒューズ300のそれぞれの横端部上に接触終端が形成され、金属被覆ストリップ134、136が、それぞれ、上部および下部外部絶縁レイヤ122、124の外部表面上に伸びる。この結果、ヒューズ300は、ヒューズ素子の接触パッド32、34に対する電気接続を確立しつつ、プリント回路基板に表面実装することが可能である。
【0156】
ヒューズ300の製造に利用する代表的な製造プロセスについて説明するために、次の表に示されているように、ヒューズ300の各々のレイヤに名称を付与することとする。
【0157】
【表5】

【0158】
図22は、ヒューズ300(これは、図21に示されている)を製造するための代表的な方法320のプロセスを説明するためのフローチャートである。この図においては、前述の呼称法を使用している。フォイルヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)が、例えば、前述の電気鋳造プロセスによって事前に形成され、上部および下部中間絶縁レイヤ303および304(レイヤ2および4)のそれぞれとは別個に独立的に製造された独立型のヒューズ素子レイヤが製造される322。ヒューズ素子レイヤ302の電気鋳造は、その他のものに加え、化学エッチング法と比べた場合に、中間絶縁レイヤ303および304に対するヒューズ素子構造の良好な制御、アライメントおよび精度と、前述のヒューズ素子の化学エッチングと比べた場合に、ヒューズ300の製造コストの低減とを提供すると考えられる。
【0159】
フォイルヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)は、大文字のIの形状のフォイルヒューズ素子が、前述のように残るように、形成されるが、本発明のさらなる実施例および/または代替実施例においては、図6〜図10に示されているものを含む(ただし、これらに限定されない)様々な形状のヒューズ可融素子が利用可能であることを理解されたい。さらなる実施例および/または代替実施例においては、前述の電気鋳造プロセスの代わりに、その他の既知の製造技法により、ヒューズ素子レイヤ302を独立型のレイヤに形成することが可能であるとさらに考えられる。
【0160】
フォイルヒューズ素子レイヤ(レイヤ3)を形成した後に(ステップ322)、ヒューズ素子開口部またはウィンドウ40および42が、穿孔等の既知の方法により、上部および下部中間レイヤ303、304(レイヤ2および4)内に形成されるが(ステップ324)、その他のウィンドウ形成技法も同様に利用することが可能である。ヒューズ素子開口部40および42は、ヒューズのレイヤの中のいくつかを1つに積層した後に上部および下部中間絶縁レイヤ内にヒューズ素子開口部が形成される前述の実施例のいくつかとは異なり、ヒューズの各々のレイヤを組み立てる前に、レイヤ2および4内に事前に形成される。
【0161】
ヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)の形成と上部および下部中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)内におけるヒューズ素子開口部40、42の形成が完了したら、ヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)が上部および下部中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)の間に挟持されるように、ヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)を上部および下部中間絶縁レイヤ(レイヤ2および4)の間に配置する。上部および下部中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)は、前述のように既知のラミネーション法により、独立型のヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)上に積層される(ステップ326)。これによって、中間絶縁レイヤ303および304(レイヤ2および4)の間にフォイルヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)が挟持された3レイヤ積層物が形成される。
【0162】
レイヤ2、3、および4の積層が完了したら、ヒューズリンクの動作の際にメトカルフ(Metcalf)効果を生成するべく、Mスポット328がヒューズ可融リンク30上に形成される(ステップ330)。当業者であれば、ヒューズ可融リンク30が電気的過負荷に起因して加熱するに伴い、低融点材料がヒューズ可融リンク30の親材料内に拡散し、これによって、ヒューズ可融リンクの電気抵抗値が上昇し、ヒューズ可融リンクの電気負荷がさらに増大するように、ヒューズ可融リンク30の親材料(例えば、銅または銅合金)よりも低い融点を具備する材料(例えば、すずまたはすず合金)を導入することにより、Mスポットが形成または生成されることを理解するであろう。負荷が過大になると、ヒューズ可融リンクが機能を停止し、電気接続が維持されなくなる。低融点材料の存在により、ヒューズ可融リンクの動作特性が変化し、この結果、高過負荷におけるヒューズリンクの動作に大きな影響を与えることなしに、溶融を伴うことなく無制限に搬送される最大電流が減少することになる。この機能は、しばしば、「メトカルフ(Metcalf)効果」または「M効果」と呼ばれている。
【0163】
代表的な実施例においては、Mスポットを形成するための低融点材料は、電気メッキまたは電着法等の既知のプロセスにより、上部および下部中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)内の事前に形成されたヒューズ素子開口部40、42の中の1つまたは両方を通じて、ヒューズ可融リンク30に形成される。図22に示されているように、Mスポット328は、レイヤ2、3、および4が互いに積層された後に(ステップ326)、ヒューズ可融リンク30に形成される。このヒューズ構造によれば、ヒューズが部分的に組み立てられた後に、かつ、ヒューズ可融リンクがレイヤ2および4のヒューズ素子開口部40および42内の空中で吊り下げられている際に、Mスポットを形成することが可能である。レイヤ2、3、および4が1つに積層された後にMスポットを形成することにより、Mスポットの高精度の配置および形成を保証することが可能である。また一方で、中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)のヒューズ素子開口部40、42を事前に形成することにより、前述の実施例におけるレイヤ2、3、および4のラミネーション後のウィンドウの事後形成とは対照的に、ヒューズの製造が簡単になり、ウィンドウを形成する際のMスポットおよび/またはヒューズ可融リンクに対する損傷を回避しつつ、Mスポットの形成が円滑に実行される。
【0164】
Mスポット328は、特定の実施例においては、有益であると考えられるが、その他の実施例においては、必要に応じて、省略することが可能であることを理解されたい。
【0165】
図22を再度参照すれば、レイヤ2、3、および4を互いに積層した後に(ステップ326)、アーク消去媒体332を上部および下部中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)内のヒューズ素子開口部40および42に形成する(ステップ334)。前述のように、アーク消去媒体は、前述の材料のいずれかまたはアーク抑制特性を具備するその他の既知の材料であってよい。一実施例においては、アーク消去材料は、硫酸バリウム、アルミニウム三水和物、およびこれらに類似したもの等の無機充填剤を有するポリマーベースの材料である。粒子サイズが1〜5ミクロンの10〜60重量%のアーク抑制材料(例えば、硫酸バリウム、アルミニウム三水和物、およびこれらに類似したもの)を含むUVアクリル接着剤を利用して、ヒューズ素子開口部40および42内にスクリーン印刷または供給することにより、アーク消去媒体を形成することが可能である。アーク消去材料は、代表的な実施例においては、UV硬化可能である。
【0166】
アーク消去媒体332は、ヒューズ可融リンク30の近傍のヒューズ素子開口部40および42を実質的に充填し、一実施例においては、アーク消去媒体は、その内部にヒューズ可融リンク30を封入している。
【0167】
アーク消去媒体をヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)の近傍に形成した後に(ステップ334)、ステップ326からの3レイヤの組み合わせ(レイヤ2、3、および4)に、外部絶縁レイヤ122、124(レイヤ1および5)を積層する(ステップ336)。外部絶縁レイヤ122、124(レイヤ1および5)は、当技術分野において既知のプロセスおよび技法を使用し、3レイヤの組み合わせに積層される(ステップ336)。一実施例においては、外部絶縁レイヤ122、124(レイヤ1および5)は、事前に金属被覆されており、その上部に、メッキ、堆積、またはその他の方法で形成された(中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)から外側に面している)金属フォイルの薄いレイヤ337(例えば、銅フォイル)を含んでおり、この金属フォイル337は、後述するように、ヒューズ300の表面実装終端を形成している。
【0168】
本発明にとって特に有利であるラミネーションの1つの形態は、デラウエア州ベアに所在するアーロン マテリアルズ フォー エレクトロニクス社から入手可能なもの等の非フロー型プリプレグ材料を使用するものである。このような材料は、スルーホール障害の可能性を低減させるアクリル接着剤の膨張特性を下回る膨張特性を具備すると共に、層割れを伴うことなしに、その他のラミネーション接合剤よりも良好な熱サイクルに対する耐性を有している。しかしながら、接合剤の要件は、製造されるヒューズの特性に応じて変化し得るものであり、したがって、1つのタイプのヒューズまたはヒューズ定格に不適当なラミネーション接合剤が、別のタイプのヒューズまたはヒューズ定格には許容可能であることを理解されたい。
【0169】
外部絶縁レイヤ122、124(レイヤ1および5)が積層され、5レイヤの組み合わせが形成された後に(ステップ336)、このステップ336において形成された5レイヤの組み合わせを貫通して、スルーホール126、128、306、308、310および312によって集合的に規定されたヒューズ300のそれぞれの端部上の長いスルーホールが形成され(ステップ338)、ヒューズ素子レイヤ302の接触パッド32、34を露出させる。様々な実施例においては、スロット306、308、310および312を形成する際には(ステップ338)、レーザー機械加工、化学エッチング、プラズマエッチング、パンチング、または穿孔が行われる。
【0170】
外部絶縁レイヤ122、124(レイヤ1および5)が、中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)とは反対の外部表面上において、既知のメッキ処理等の銅フォイルによって金属被覆され(ステップ340)、かつ、ステップ338において形成されたスルーホール内においても、一実施例においては、銅によって金属被覆メッキされ、この結果、ヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)と外部絶縁レイヤ(レイヤ1および5)の事前に金属被覆されている外部表面との電気接続が確立される。ついで、事前に金属被覆されている外部絶縁レイヤ122、124がエッチングされ、外部絶縁レイヤの横エッジにおいて終端ストリップ134および136(図21)が形成される(ステップ342)。代表的な実施例においては、既知のメッキプロセスにおいて、ニッケル/金、ニッケル/すず、ならびに、ニッケル/すず/鉛およびすず−ニッケル/すず−鉛を利用し、スルーホール126、128、306、308、310および312内の終端と終端ストリップ134、136を完成させることができる。この結果、例えば、プリント回路基板等への表面実装に特に適したヒューズ300を製造することが可能であるが、その他のアプリケーションにおいては、表面実装の代わりに、その他の接続方式を使用することが可能である。
【0171】
代替実施例においては、図22に示されている円筒形のスルーホールを具備する前述のキャストレート接触終端(castellated contact termination)の代わりに、ヒューズ300の横エッジ内に、長いスルーホール終端およびスロット(図11の実施例に類似したもの)を形成することが可能である。また一方で、別の実施例においては、エッジ終端は、例えば、銀充填エポキシ等の導電性インク内にヒューズ300の端部を浸してヒューズ300の端部エッジを包むことにより、ヒューズレイヤの横エッジ上に形成することが可能である。
【0172】
ステップ340およびステップ342において接触終端が完成したら、電圧または電流定格やヒューズ分類コード等のヒューズ300(これは、図22に示されている)の動作特性に関係する標識により、上部および下部外部絶縁レイヤ122および124の1つ(レイヤ1または5)をマーキングすることが可能である(ステップ344)。このマーキング(ステップ344)は、例えば、レーザーマーキング、化学エッチング、プラズマエッチング、スクリーン印刷、またはフォトイメージャブルインク(photo-imagable ink)等の既知のプロセスによって実行可能である。
【0173】
ヒューズ300は、前述の方法によって個々に製造することが可能であるが、例示用の一実施例においては、ヒューズ300は、シートの形態で集合的に製造された後に、個々のヒューズ300に分離またはシンギュレートされる(ステップ346)。追加のヒューズ素子レイヤおよび/または絶縁レイヤを利用し、大きなヒューズ定格および物理サイズのヒューズを供給することが可能である。
【0174】
製造が完了したら、接触終端を、ラインと、エネルギーの供給対象である回路の負荷電気接続部に接続することにより、ヒューズ可融リンク30(これは、図21に示されている)を通じて電気接続を確立することが可能である。
【0175】
前述のように、中間絶縁レイヤ303、304内のヒューズ可融リンク開口部40、42の1つまたは両方を除去することにより、ヒューズ300をさらに変更することが可能であることを認識されたい。この結果、ヒューズ300の様々な応用製品および様々な動作温度について、ヒューズ300の電気抵抗値を変更することが可能である。
【0176】
前述の方法より、ヒューズ300は、低コストの広く入手可能な材料を使用し、バッチプロセスにおいて、低廉な既知の技法およびプロセスを使用して効率的に形成することが可能である。均一なまたは変化する厚さを有し、ヒューズ素子およびヒューズ形成特性が正確に制御された電気鋳造によるヒューズ素子を中間絶縁レイヤとは独立的に形成することが可能である。ヒューズ素子は、ヒューズ300の最終的な性能のばらつきを極小化するべく、実質的に均一な導電性を有するように製造することが可能である。また一方で、薄い金属フォイル材料を使用してヒューズ素子レイヤ302を形成することにより、既知の匹敵するヒューズと比べて、非常に低抵抗のヒューズを構成することが可能である。
【0177】
図23は、ヒューズ300(図21)といくつかの面において類似したヒューズ354を製造するための代表的な方法350のプロセスを説明するためのフローチャートである。この方法350は、図22に示されている方法320に多くの面において類似しており、方法320の類似のステップが、図23の類似の参照符号によって示されている。
【0178】
方法320と同様に、方法350は、ヒューズのその他のレイヤとは独立的にヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)を独立した形態で形成するステップ322と、上部および下部中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)内にヒューズ素子開口部またはウィンドウ40および42を形成するステップ324とを含んでいる。ただし、方法320とは異なり、方法350は、レイヤ2、3、4および5を互いに積層し、フォイルヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)が中間絶縁レイヤ303および304(レイヤ2および4)の間に挟持され、下部外部絶縁レイヤ124(レイヤ5)が下部中間絶縁レイヤ304(レイヤ4)に積層された4レイヤ構造を形成するステップ352を含んでいる。
【0179】
Mスポット328が、前述の方式により、ヒューズ可融リンク30に形成され(ステップ334)、ついで、アーク消去媒体332が、上部中間絶縁レイヤ303(レイヤ2)内のヒューズ素子開口部40を通じて形成され(ステップ336)、前述のように、スルーホールが形成され(ステップ338)、メッキされる(ステップ340)。終端ストリップがエッチングされ(ステップ342)、外部絶縁レイヤ124(レイヤ5)がマーキングされ(ステップ344)、必要に応じて、バッチ製品から個々のヒューズ354をシンギュレートすることにより(ステップ346)、製品が完成する。
【0180】
図21、図22および図23を比較することにより、方法350(図23)によって製造されるヒューズ354は、上部外部絶縁レイヤ(レイヤ1)を省略しており、かつ、図23の方法350は、図22の方法320に示されている連続した2段階ラミネーションプロセスの代わりに、ヒューズのすべてのレイヤが単一の製造段階において1つに積層される1段階ラミネーションプロセスを利用していることがわかる。一度にすべてのレイヤを同時に1つに積層することにより、ヒューズ354は、例えば、図22の方法320によって製造されるヒューズ300よりも、少ない時間および費用で製造することが可能である。
【0181】
図24は、ヒューズ300(図21)にいくつかの面において類似したヒューズ364を製造するための別の代表的な方法360のプロセスを説明するためのフローチャートである。方法360は、図22に示されている方法320に多くの面において類似しており、方法320の類似のステップが、図24の類似の参照符号によって示されている。
【0182】
方法320と同様に、方法360は、ヒューズのその他のレイヤとは独立的にヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)を独立した形態で形成するステップ322と、上部および下部中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)内にヒューズ素子開口部またはウィンドウ40および42を形成するステップ324とを含んでいる。ただし、方法320とは異なり、方法360は、レイヤ1、2、3、4および5を互いに積層することにより、フォイルヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)が中間絶縁レイヤ303および304(レイヤ2および4)の間に挟持され、上部および下部外部絶縁レイヤ122、124(レイヤ1および5)が上部および下部中間絶縁レイヤ303、305(レイヤ2および4)に積層され、かつ、これらを挟持する5レイヤ構造を形成するステップ362を含んでいる。
【0183】
前述のように、スルーホールが形成され(ステップ338)、メッキされる(ステップ340)。終端ストリップがエッチングされ(ステップ342)、ヒューズにマーキングがなされ(ステップ344)、必要に応じて、ヒューズ364を互いにシンギュレートすることにより(ステップ346)、製品が完成する。
【0184】
図21、図22および図24を比較することにより、方法360(図23)によって製造されるヒューズは、アーク消去媒体332とMスポット328を省略しており、かつ、図24の方法360は、図22の方法320に示されている連続した2段階ラミネーションプロセスの代わりに、ヒューズの5つのすべてのレイヤが単一の製造段階において1つに積層される1段階ラミネーションプロセスを利用していることがわかる。方法360は、方法320と比べて、含まれている製造段階が少ないため、相対的に迅速かつ低コストで実行可能である。
【0185】
図25は、ヒューズ300(図21)にいくつかの面において類似したヒューズ376を製造するための別の代表的な方法370のプロセスを説明するためのフローチャートである。方法370は、図22に示されている方法320に多くの面において類似しており、方法320の類似のステップが、図25の類似の参照符号によって示されている。
【0186】
方法320と同様に、方法370は、ヒューズのその他のレイヤとは独立的にヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)を独立した形態で形成するステップ322を含んでいるが、上部および下部中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)内にヒューズ素子ウィンドウ40および42を形成するステップ324(図22)を含んではいない。その代わりに、方法370は、開口部を有しておらず切れ目のない構造を具備する上部および下部中間絶縁レイヤ303、304(レイヤ2および4)にアーク抑制材料を含む接着剤を塗布するステップ372を含んでいる。粒子サイズが1〜5ミクロンの10〜60重量%のアーク抑制材料(例えば、硫酸バリウム、アルミニウム三水和物、およびこれらに類似したもの)を含むUVアクリル接着剤を利用し、ラミネーションプロセスにおいて、これをレイヤ上にスクリーン印刷または供給することが可能である。接着剤は、熱硬化およびUV硬化可能であり、あるいは、熱可塑性のホットメルトであってもよい。
【0187】
また一方で、方法320とは異なり、方法370は、レイヤ2、3、4および5を互いに積層し、フォイルヒューズ素子レイヤ302(レイヤ3)が中間絶縁レイヤ303および304(レイヤ2および4)の間に挟持され、下部外部絶縁レイヤ124(レイヤ5)が下部中間絶縁レイヤ304(レイヤ4)に積層された4レイヤ構造を形成するステップ374を含んでいる。
【0188】
前述のように、スルーホールが形成され(ステップ338)、メッキされる(ステップ340)。終端ストリップがエッチングされ(ステップ342)、ヒューズにマーキングがなされ(ステップ344)、必要に応じて、ヒューズ376を互いにシンギュレートすることにより(ステップ346)、製品が完成する。
【0189】
図21、図22および図25を比較することにより、方法370(図25)によって製造されるヒューズは、Mスポットとアーク消去媒体328を省略しているが、レイヤを1つに結合するのに使用される接着剤にアーククエンチング材料を含んでいることがわかる。また一方で、図22の方法320に示されている連続した2段階ラミネーションプロセスの代わりに、図25の方法370は、ヒューズのすべてのレイヤが単一の製造段階において同時に1つに積層される1段階ラミネーションプロセスを利用している。
【0190】
ヒューズ構造内のレイヤの数、アーク消去材料の存在または不存在、アーク消去媒体またはヒューズ素子レイヤ近傍の材料(例えば、中間絶縁レイヤ内のヒューズ素子開口部内またはレイヤを接合する接着剤に内蔵されているもの)のタイプおよび場所、Mスポットの存在または不存在、およびラミネーションシーケンス(すなわち、ヒューズレイヤの単一段階または多段階ラミネーション)を変更することにより、異なる応用製品用に様々な特性、動作および性能のヒューズを提供し、特定の目的を満足させることができる。より具体的には、様々な電気抵抗値、ヒューズ可融リンクの電流および/または電圧定格、指定の電気的状態において開路状態になる時間、およびアーク抑制特性のヒューズを提供することが可能である。
【0191】
さらには、図21〜図25に示されているヒューズおよび方法は、本願明細書に記述されているその他の実施例の特徴と組み合わせて使用することが可能であることを理解されたい。例えば、図21〜図25のヒューズおよび方法は、開路状態になっているヒューズ可融リンクの容易な識別のための半透明な外部絶縁レイヤ、様々なヒューズ素子レイヤ構造、終端ウィンドウおよびはんだバンプ終端、ヒーター要素、ならびに、ヒートシンク等を含むことができる。前述の実施例は、例示を目的として提供されているにすぎず、互いに組み合わせることにより、非常に効率的かつ非常に正確な製造プロセスによって非常に低抵抗のヒューズを製造することが可能な代表的な特徴を示している。
【0192】
図26は、前述の実施例よりも高電圧および高電流の応用製品に適用されるヒューズの別の代表的な実施例400の分解斜視図である。ヒューズ400は、図26に示されている積層構造の低抵抗ヒューズを提供する。具体的には、代表的な実施例においては、ヒューズ400は、基本的に、上部および下部中間絶縁レイヤ404、406の間に挟持されたフォイルヒューズ素子レイヤ402と、これらの中間絶縁レイヤをその間に挟持する上部および下部外部絶縁レイヤ408、410を含む5レイヤにより構成されている。
【0193】
一実施例においては、ヒューズ素子レイヤ402は、上部および下部中間絶縁レイヤ402、404の中の1つの上に電着された後に、この電着レイヤを絶縁レイヤから除去する前述の化学エッチングプロセスおよびこれに類似したもの等の既知の方法によって成形された薄い金属フォイル(例えば、銅または銅合金)である。さらなる実施例においては、所望または必要性に応じて、前述のメンブレイン202(図13)等のポリマーメンブレインを利用することが可能である。
【0194】
代替実施例においては、ヒューズ素子レイヤ402は、例えば、図21〜図25に関連して前述した電気鋳造プロセスにより、上部および下部中間絶縁レイヤ404および406とは独立的に製造および形成することが可能である。この結果、独立型のフォイルヒューズ素子レイヤ402が供給され、上部および下部中間絶縁レイヤ404および406の間で伸びることが可能である。
【0195】
代表的な実施例においては、ヒューズ素子レイヤ402は長くなっており、向かい合った接触パッド414、416の間を伸び、かつ、ヒューズ可融リンク412を通じて流れる電流が既定の量または程度を超過した際に開路状態にするような寸法になっている狭いヒューズ可融リンク412を含んでいる。また一方で、前述の実施例とは異なり、ヒューズ可融リンク412は、接触パッド414および416の間において互いに離隔した複数の弱化スポット418(すなわち、低減された断面積の領域)を含んでいる。図26に示されている実施例においては、ヒューズ可融リンク412は、弱化スポット418のそれぞれにおいて、ヒューズ可融リンク412の長手方向の軸に垂直の方向に計測された実質的に均一な寸法Tと、ヒューズ可融リンクの長手方向の軸に対して横方向に計測された低減された寸法Wとを具備している。ただし、その代わりに、ヒューズ可融リンク412は、弱化スポット418において、実質的に均一な寸法Wと低減された寸法Tを具備するように形成することにより、ヒューズ可融リンク412の残りの部分に対して弱化スポット418の断面積を低減させることも可能であろう。一実施例においては、弱化スポット418は、その他の場所におけるヒューズ可融リンク418の断面積の略50%に相当する断面積を具備している。ただし、弱化スポット418とヒューズ可融リンク412の残りの部分の断面積のさらに大きなまたは小さな比率を利用することも可能であることを理解されたい。
【0196】
複数の弱化スポット418は、過負荷状態におけるヒューズ素子レイヤの動作に実質的に影響を与えることなしに、ヒューズ素子レイヤ402の短絡開路特性を改善するべく、ヒューズ可融リンク412内に形成されている。より具体的には、短絡電流状態においては、ヒューズ可融リンク412は、弱化スポット418の場所に対応したいくつかの既定の場所における弱化スポット418において開路状態になる。この結果、ヒューズ可融リンク412がヒューズ400を通じた回路を開路状態にした際に、アークエネルギーが、複数の弱化スポット418の場所に分散される。図26の実施例には、3つの弱化スポット418が示されているが、代替実施例においては、3つを上回るまたは下回る数の弱化スポット418を利用することが可能であることを理解されたい。
【0197】
さらには、弱化スポット418のいくつかまたはすべてと組み合わせて、Mスポットを利用することにより、ヒューズ素子レイヤ402のヒューズ開路特性をさらに変更することが可能であると考えられる。Mスポットは、図21〜図23との関連で前述した方式によってヒューズ素子レイヤ上に形成することが可能である。
【0198】
上部中間絶縁レイヤ404は、フォイルヒューズ素子レイヤ402上に位置しており、これを貫通して伸び、かつ、ヒューズ可融リンク412の弱化スポット418上に位置するいくつかの円形のヒューズ可融リンク開口部420を含んでいる。代表的な実施例における開口部420は、上部絶縁レイヤ404内に事前に形成されているが、別の実施例においては、開口部420は、製造プロセスの後工程において形成することが可能であることを理解されたい。
【0199】
下部中間絶縁レイヤ406は、フォイルヒューズ素子レイヤ402の下に位置しており、代表的な実施例においては、こちらも下部絶縁レイヤ406内に事前に形成されたいくつかの円形のヒューズリンク開口部422を含んでいる。ヒューズリンク開口部422は、弱化スポット418のそれぞれの近傍においてフォイルヒューズ素子レイヤ402のヒューズ可融リンク412の下に位置している。したがって、ヒューズ可融リンク412がフォイルヒューズ素子402の接触パッド414、416間において伸びた際に、ヒューズ可融リンク412が中間絶縁レイヤ404、406のいずれの表面とも接触しないように、ヒューズ可融リンク412は、上部および下部中間絶縁レイヤ404、406内の各々のヒューズリンク開口部420、422を横断して伸びている。換言すれば、ヒューズ400が製造が完了した際に、ヒューズ可融リンク412の各部分は、各々の中間絶縁レイヤ404、406内のヒューズリンク開口部420、422により、エアポケット内において、事実上、吊り下げられている。さらに詳しくは、弱化スポット418のそれぞれが、中間絶縁レイヤ404、406の間のエアポケット内において、吊り下げられている。
【0200】
ヒューズリンク開口部420、422は、従来のヒューズにおいては、ヒューズの電気抵抗値の増大に寄与する中間絶縁レイヤ404、406に対する熱伝達を防止している。したがって、ヒューズ400は、既知のヒューズよりも低い電気抵抗値において動作し、この結果、既知の匹敵するヒューズよりも、回路が安定する。また一方で、既知のヒューズとは異なり、ヒューズリンク開口部420、422によって生成されたエアポケットにより、アークトラッキングが防止され、ヒューズ可融リンク412を通じた回路の完全なクリアリングが円滑に実行される。さらには、エアポケットは、ヒューズ可融リンクが動作した際に、その内部のガス抜きを実行し、ヒューズ内部の望ましくないガスの蓄積および圧力を軽減する。ただし、さらなる実施例においては、ヒューズリンク開口部420、422は、例えば、ヒューズ210(これは、図15との関連で図示および説明されている)、ヒューズ300(これは、図21に示されている)、および図22〜図25の方法と関連して本願明細書において説明したアーク消去媒体を含むことが可能であることを理解されたい。
【0201】
上部および下部中間絶縁レイヤは、それぞれ、一実施例においては、前述のように、上述のヒューズの実施例および方法において前述した材料およびそれらに類似したもの等のポリマーを含む誘電体フィルム材料から製造されている。
【0202】
上部外部絶縁レイヤ408は、上部中間レイヤ404上に位置しており、上部外部絶縁レイヤ408上に伸び、かつ、上部中間絶縁レイヤ404のヒューズ可融リンク開口部420上に位置する切れ目のない連続した表面を含んでおり、これによって、ヒューズ可融リンク412を上から封入し十分に絶縁している。さらなる実施例においては、上部外部絶縁レイヤ408および/または下部外部絶縁レイヤ410は、ヒューズ可融リンク開口部420、422内の開路状態になっているヒューズの視認を容易にする半透明または透明な材料から製造されている。
【0203】
下部外部絶縁レイヤ410は、下部中間絶縁レイヤ406の下に位置しており、切れ目のない状態にある(すなわち、開口部を具備していない)。したがって、下部外部絶縁レイヤ410の連続した切れ目のない表面は、下部中間絶縁レイヤ406のヒューズ可融リンク開口部422の下においてヒューズ可融リンク412を十分に絶縁している。
【0204】
代替実施例においては、上部および下部外部絶縁レイヤ408、410は、それぞれ、前述のポリマーベースの誘電体フィルムおよびこれらに類似のものから製造されている。
【0205】
図26の例示用の実施例においては、5つのレイヤが示されているが、代替実施例においては、さらに多くのまたは少ない数のレイヤを提供または利用することが可能であることを理解されたい。必要に応じて、複数のヒューズ素子レイヤおよびヒューズ可融リンクを提供し、直列または並列に電気的に相互接続することが可能である。
【0206】
図26に示されているように、上部外部絶縁レイヤ408および下部外部絶縁レイヤ410は、それぞれ、その横側面内に形成され、かつ、ヒューズリンク接触パッド414、416の上下を伸びる丸い終端スロットまたは孔424、426を含んでいる。同様に、上部および下部中間絶縁レイヤ404、406も、その横側面内に形成された丸い終端スロットまたは孔428、430を含んでおり、ヒューズ素子レイヤ402も、その横側面上に丸い終端スロットまたは孔432、434を含んでいる。ヒューズ400の各々のレイヤが組み立てられた際に、終端スロット424、426、428、430、432および434は、その垂直面上において金属被覆され、ヒューズ400のそれぞれの横端部上に接触終端が形成される。金属被覆されたストリップ436、438が、前述の方式によって形成され、それぞれ、上部および下部外部絶縁レイヤ408、410の外部表面上に伸びる。この結果、ヒューズ400は、ヒューズ素子の接触パッド414、416に対する電気接続を確立しつつ、プリント回路基板に表面実装することが可能である。
【0207】
複数の弱化スポット418とヒューズ素子開口部420および422をヒューズレイヤ内に形成することにより、相対的に高い電圧および電流定格と相対的に高い遮断能力が実現可能である。例えば、一実施例においては、ヒューズ400は、約600V以下の電圧の開路に適しており、ヒューズの積層構造に起因し、ヒューズ400は、このような動作レンジにおいて動作可能な既知の表面実装ヒューズと比べて、ヒューズのレイヤ面に垂直の方向に計測された格段に低いプロファイル(ロープロファイル)を有するように形成されることが可能である。したがって、ヒューズ400は、特に、従来のヒューズが対応不能な基板間の既定のクリアランスだけ互いに離隔した複数の回路基板を含むシステムに使用するのに有利であろう。
【0208】
また一方で、ヒューズ400の積層構造および増大した遮断容量により、ヒューズ400は、既知のヒューズと略同一サイズの物理パッケージにおいて、より優れた開路特性および性能を提供することが可能であり、あるいは、既知のヒューズよりも低減された物理パッケージサイズにおいて、等価な開路特性および性能を提供することが可能である。
【0209】
さらには、ヒューズ400の積層ポリマー構造は、その他の材料を含む既知の匹敵するヒューズ(特に、セラミックチューブを具備する既知のヒューズ)と比べて、重量を節約することが可能である。回路基板上に多数の部品を収容する場合には、この重量の節約は大きなものとなるであろう。
【0210】
また一方で、ヒューズ400は、ヒューズリンクに対して適切な変更を加えると共に、ヒューズレイヤ内において適切な場所に適切な数のヒューズ素子開口部を形成することにより、前述の方法のいずれかに従って、既知のヒューズと比べて低減されたコストにて供給することが可能である。
【0211】
ヒューズ400は、本願明細書に記述されているその他のヒューズ実施例の特徴を含むことが可能であることを理解されたい。例えば、ヒューズ400は、開路状態になっているヒューズ可融リンクを容易に識別するための半透明の外部絶縁レイヤ、様々なヒューズ素子レイヤ構造、終端ウィンドウおよびはんだバンプ終端、ヒーター要素、ならびに、ヒートシンク等を含むことができる。ヒューズ400は、例示を目的として提供されているものにすぎず、その他のヒューズの特徴と組み合わせることにより、非常に効率的かつ非常に正確な製造プロセスによって非常に低い電気抵抗値のヒューズを製造することが可能な代表的な特徴を示している。
【0212】
以上、様々な実施例の観点から本発明について説明してきたが、当業者であれば、特許請求の範囲の各請求項の精神および範囲内において、変更を加えつつ、本発明を実施することが可能であることを認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】フォイルヒューズの第1実施例の斜視図である。
【図2】図1に示されているヒューズの分解斜視図である。
【図3】図1および図2に示されているヒューズを製造する方法のプロセスを説明するためのフローチャートである。
【図4】フォイルヒューズの第2実施例の分解斜視図である。
【図5】フォイルヒューズの第3実施例の分解斜視図である。
【図6】図1〜図5に示されているヒューズのヒューズ素子形状の平面図(その1)である。
【図7】図1〜図5に示されているヒューズのヒューズ素子形状の平面図(その2)である。
【図8】図1〜図5に示されているヒューズのヒューズ素子形状の平面図(その3)である。
【図9】図1〜図5に示されているヒューズのヒューズ素子形状の平面図(その4)である。
【図10】図1〜図5に示されているヒューズのヒューズ素子形状の平面図(その5)である。
【図11】フォイルヒューズの第4実施例の分解斜視図である。
【図12】図11に示されているヒューズを製造する方法のプロセスを説明するためのフローチャートである。
【図13】フォイルヒューズの第5実施例の斜視図である。
【図14】図13に示されているヒューズの分解斜視図である。
【図15】フォイルヒューズの第6実施例の分解斜視図である。
【図16】フォイルヒューズの第7実施例の分解斜視図である。
【図17】フォイルヒューズの第8実施例の概略図である。
【図18】ヒューズ素子の一実施例の平面図である。
【図19】ヒューズ素子の別の実施例の平面図である。
【図20】ヒューズ製品の分解斜視図である。
【図21】低抵抗ヒューズの別の代表的な実施例の分解斜視図である。
【図22】図21に示されているヒューズを製造する方法の代表的なプロセスを説明するためのフローチャートである。
【図23】低抵抗ヒューズを製造するための別の方法の代表的なプロセスを説明するためのフローチャートである。
【図24】低抵抗ヒューズを製造するためのさらに別の方法の代表的なプロセスを説明するためのフローチャートである。
【図25】低抵抗ヒューズを製造するためのさらに別の方法の代表的なプロセスを説明するためのフローチャートである。
【図26】低抵抗ヒューズのさらに別の代表的な実施例の分解斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中間絶縁レイヤと、
第2中間絶縁レイヤと、
前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤの各々から独立して形成されかつ製造された独立型のヒューズ素子レイヤであって、第1接触パッドおよび第2接触パッドと、前記第1接触パッドと前記第2接触パッドとの間で伸びるヒューズ可融リンクとを含む独立型のヒューズ素子レイヤとを有し、
前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤは、前記独立型のヒューズ素子レイヤの反対の面上に伸びており、前記第1中間絶縁レイヤと前記第2中間絶縁レイヤとの間において前記ヒューズ素子レイヤと一体に積層されていることを特徴とする低抵抗ヒューズ。
【請求項2】
前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤの少なくとも1つは、前記ヒューズ可融リンク上に位置する開口部を有する請求項1記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項3】
前記ヒューズ素子レイヤは、薄膜フォイルを有する請求項1記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項4】
前記低抵抗ヒューズが、さらに、前記ヒューズ素子レイヤ、前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤの側面の端部内に形成された終端スロットまたは孔を有する請求項1記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項5】
前記低抵抗ヒューズが、さらに、前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤにそれぞれ積層された第1外部絶縁レイヤおよび第2外部絶縁レイヤを有する請求項1記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項6】
前記第1外部絶縁レイヤおよび前記第2外部絶縁レイヤの少なくとも1つと前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤの少なくとも1つは、ポリマー材料を有する請求項5記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項7】
前記低抵抗ヒューズが、さらに、前記ヒューズ可融リンクの近傍にアーク消去媒体を有する請求項1記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項8】
前記低抵抗ヒューズが、さらに、前記ヒューズ可融リンク上に形成されたMスポットを有する請求項1記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項9】
第1中間絶縁レイヤを供給する段階と、
前記第1中間絶縁レイヤとは別個に事前に形成されたヒューズ素子レイヤを供給する段階であって、前記事前に形成されたヒューズ素子レイヤは、第1接触パッドと第2接触パッドとの間で伸びるヒューズ可融リンクを具備している段階と、
前記ヒューズ素子レイヤを介して、第2中間絶縁レイヤを前記第1中間絶縁レイヤに接着・積層する段階とを有することを特徴とする、低抵抗ヒューズを製造する方法。
【請求項10】
前記第2中間絶縁レイヤを前記第1中間絶縁レイヤに接着・積層する段階は、ポリマー接着フィルムを積層する段階を含む請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記第2中間絶縁レイヤを前記第1中間絶縁レイヤに接着・積層する段階は、アーク抑制特性を有する接着剤によって積層する段階を含む請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、さらに、第1外部絶縁レイヤおよび第2外部絶縁レイヤを供給する段階と、前記第1外部絶縁レイヤを前記第1中間絶縁レイヤに接着・積層すると共に前記第2外部絶縁レイヤを前記第2中間絶縁レイヤに接着・積層する段階とを有する請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記ヒューズ素子レイヤ、前記第1中間絶縁レイヤ、前記第2中間絶縁レイヤ、前記第1外部絶縁レイヤおよび前記第2外部絶縁レイヤは、同時に互いに積層される請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記第1中間絶縁レイヤを供給する段階は、その内部に事前に形成されたヒューズ素子開口部を具備する第1中間絶縁レイヤを供給する段階を含み、
前記方法は、さらに、前記第2中間絶縁レイヤを前記第1中間絶縁レイヤに積層した後に、前記ヒューズ素子開口部を通じて前記ヒューズ可融リンクにMスポットを形成する段階を有する請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤの1つは開口部を含んでおり、前記ヒューズ素子レイヤを介して、前記第2中間絶縁レイヤを前記第1中間絶縁レイヤに接着・積層する段階は、前記ヒューズ可融リンク上に位置するように前記開口部を位置決めする段階を含む請求項9記載の方法。
【請求項16】
前記事前に形成されたヒューズ素子を供給する段階は、前記ヒューズ可融リンクと前記第1接触パッドおよび前記第2接触パッドを規定している独立型の薄膜フォイルを供給する段階を含む請求項9記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、さらに、前記ヒューズ素子レイヤ、前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤの側面の端部内に形成されるべき終端スロットまたは孔を形成する段階を有する請求項9記載の方法。
【請求項18】
第1中間絶縁レイヤを供給する段階は、ポリマー材料のレイヤを供給する段階を含む請求項9記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、さらに、前記ヒューズ可融リンクの近傍にアーク消去媒体を形成する段階を有する請求項9記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、さらに、前記ヒューズ可融リンク上にMスポットを形成する段階を有する請求項9記載の方法。
【請求項21】
第1中間絶縁レイヤおよび第2中間絶縁レイヤであって、前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤの少なくとも1つは、それを貫通する事前に形成された開口部を含む第1中間絶縁レイヤおよび第2中間絶縁レイヤと、
前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤとは別個に形成された薄いフォイルのヒューズ素子レイヤとを有し、
前記第1中間絶縁レイヤおよび第2中間絶縁レイヤは、前記ヒューズ素子レイヤの反対の面上に伸びて、前記ヒューズ素子レイヤに結合されており、
アーク消去媒体が、前記事前に形成された開口部内に配置され、前記開口部内において、前記ヒューズ素子レイヤを取り囲んでいることを特徴とする低抵抗ヒューズ。
【請求項22】
前記低抵抗ヒューズが、さらに、前記ヒューズ素子レイヤ、前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤの側面の端部内に形成された終端スロットまたは孔を有する請求項21記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項23】
前記低抵抗ヒューズが、さらに、前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤにそれぞれ積層された第1外部絶縁レイヤおよび第2外部絶縁レイヤを有する請求項21記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項24】
第1中間絶縁レイヤと、
第2中間絶縁レイヤと、
その内部に形成された少なくとも1つの弱化スポットを含むヒューズ可融リンクを具備するヒューズ素子レイヤとを有し、
前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤは、前記独立型のヒューズ素子レイヤの反対の面上に伸びており、前記第1中間絶縁レイヤと前記第2中間絶縁レイヤとの間において前記ヒューズ素子レイヤと一体に積層されていることを特徴とする低抵抗ヒューズ。
【請求項25】
前記ヒューズ可融リンクは、複数の弱化スポットを含んでおり、前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤの少なくとも1つは、前記複数の弱化スポットに対応する場所に、それを貫通する複数の開口部を有する請求項24記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項26】
前記低抵抗ヒューズが、さらに、前記第1中間絶縁レイヤおよび前記第2中間絶縁レイヤの前記少なくとも1つの前記複数の開口部を封入する少なくとも1つの外部絶縁レイヤを有する請求項24記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項27】
前記ヒューズ可融リンクは、該ヒューズ可融リンク上に形成された少なくとも1つのMスポットを含む請求項24記載の低抵抗ヒューズ。
【請求項28】
前記低抵抗ヒューズが、さらに、前記ヒューズ可融リンクの近傍にアーク消去媒体を有する請求項24記載の低抵抗ヒューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2006−237008(P2006−237008A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−48668(P2006−48668)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(598131524)クーパー・テクノロジーズ・カンパニー (4)
【Fターム(参考)】