説明

低温乾燥装置及びパネル体並びにパネル体の組立方法

【課題】乾燥時間を短縮してコストを低減する低温乾燥装置及びパネル体並びにパネル体の組立方法を提供する。
【解決手段】乾燥対象物3を搬入し得る乾燥室5を備えた低温乾燥装置1であって、乾燥室5を低温で乾燥可能な温度に加熱する加熱手段12と、乾燥室5内へ熱風を送風する送風手段13と、乾燥室5の側面を構成するパネル体23とを備え、パネル体23は、木材の板面を用いて木材の調湿性により乾燥室5内の水分を外部へ放出し得るように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温乾燥装置及びパネル体並びにパネル体の組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、木材等を乾燥する乾燥装置の中には、木材の割れや歪みを防止するよう、35〜60℃の低温で木材を乾燥する低温乾燥装置がある。このような低温乾燥装置の一例を挙げると、低温乾燥装置は、台車に積載した木材を収納し得るよう開閉扉を設けた乾燥室を備え、乾燥室の内部には、乾燥室内を昇温する加熱機と、水分を外部へ排出する除湿機と、加熱及び除湿した風を乾燥室内で循環させる送風機と、風を所望の方向へ制御する整流版とを備えている。
【0003】
木材を乾燥する際には、台車に積載した木材を搬入して扉を閉め、加熱機により乾燥室内を35〜60℃に昇温し、送風機により空気流を乾燥室内で導入し、除湿機により乾燥室内の水分を排出し、木材等を徐々に乾燥している。
【0004】
ここで、低温乾燥装置に関連する先行技術文献としては、下記の特許文献1、2がある。
【特許文献1】特開平9−318251号公報
【特許文献2】特開平7−4847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような低温乾燥装置は、乾燥に時間がかかるため、この乾燥時間を短くすることが求められていた。又、水分を排出する除湿機等の手段や構造を備える必要があるため、ランニングコストや設置コストがかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、乾燥時間を短縮すると共にコストを低減する低温乾燥装置及びパネル体並びにパネル体の組立方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、乾燥対象物を搬入し得る乾燥室を備えた低温乾燥装置であって、前記乾燥室を低温で乾燥可能な温度に加熱する加熱手段と、前記乾燥室内へ熱風を送風する送風手段と、前記乾燥室の側面を構成するパネル体とを備え、前記パネル体は、木材の板面を用いて木材の調湿性により乾燥室内の水分を外部へ放出し得るように構成されたことを特徴とする低温乾燥装置にかかるものである。
【0008】
本発明において、パネル体は、木材の板面で内側面と外側面を構成すると共に、内側面と外側面の間にダンボール材を隙間なく積層し、内側面と外側面の間に生じる水分を吸収、伝達し、乾燥室内の水分を外部へ放出して乾燥対象物の乾燥と共に、パネル体の乾燥回復を為し得るよう構成されることが好ましい。
【0009】
本発明は、乾燥室外の環境を調整するよう乾燥室を取り囲む外室を備えることが好ましい。
【0010】
本発明は、乾燥室内へ送風する熱風を制御可能にするよう、側面のパネル体に隣接する調整ダクトを備えることが好ましい。
【0011】
本発明において、乾燥室は、側面の上部に外気を取り入れる流入口を備えると共に、側部の下部に、湿った重い空気を排出する排出口を備えることが好ましい。
【0012】
本発明は、加熱手段で加熱された熱風により遠赤外線を発生させるようセラミック体を備えると共に、加熱手段及び送風手段並びに前記セラミック体を乾燥対象物の上部に配置することが好ましい。
【0013】
本発明は、加熱手段及び送風手段を複数備えて切替可能にすることが好ましい。
【0014】
本発明は、複数の木材の板面間にダンボール材を隙間なく積層し、複数の板面の間に生じる水分を吸収、伝達し、一方の板面から他方の板面へ水分を伝達して放出し、乾燥回復を為し得るよう構成されたことを特徴とするパネル体にかかるものである。
【0015】
本発明は、木材のユニット体にダンボール材を隙間なく積層し、ダンボール材を収納した複数のユニット体を、木材の板面に配置し、ユニット体の一面と木材の板面でダンボール材を密封してパネル体を構成することを特徴とするパネル体の組立方法にかかるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の低温乾燥装置及びパネル体並びにパネル体の組立方法によれば、乾燥時間を短縮してコストを低減することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1〜図12は本発明の実施の形態例である。
【0019】
本発明の形態例の低温乾燥装置1は、台車2に積載した木材等の乾燥対象物3を収納し得るよう開閉扉4を設けた乾燥室5を備え、乾燥室5の上部には、木板の仕切上面6を介して天井裏空間7を形成し、乾燥室5内の一側には、台車2の搬出入方向に沿うよう調整ダクト8を形成している。
【0020】
天井裏空間7には、乾燥室5へ通じる吸込口9と、調整ダクト8へ通じる吹出口10とを形成するよう、乾燥室5の幅方向へ向かって延在する複数のダクト部11(図2、図3では4つ)を配置しており、複数のダクト部11の内部には、木材等の乾燥対象物3の上方に位置するよう、夫々、ヒータ等の加熱手段12と、加熱手段12の上流側でダクト部11内に設置される送風機等の送風手段13と、加熱手段12の下流側でダクト部11内に配置されるセラミック体14と、加熱手段12の近傍に配置されて温度を検出する過昇防止センサ15とを備え、加熱手段12及び送風手段13を駆動した際には、送風手段13により乾燥室5内の空気を吸込口9よりダクト部11へ吸引し、加熱手段12で空気流を加熱して赤外線を含む熱風にし、熱風の赤外線をセラミック体14に当てて遠赤外線を生じさせ、ダクト部11の吹出口10より調整ダクト8へ排出するようにしている。
【0021】
ここで、ヒータ等の加熱手段12は、木材等の乾燥対象物3を低温で乾燥し得る温度に昇温し且つ赤外線を発生するものならば特に限定されるものではないが、発熱効率等を高めるよう、M字状に形成したシーズヒータが好ましい。又、送風機等の送風手段13は、加熱手段12の異常加熱を解消し得るよう加熱手段12に近接して配置されることが好ましく、送風手段13の吸込口9には、木屑等を吸引しないよう吸引防止網を設けることが好ましい。更に、セラミック体14は、加熱手段12による赤外線で遠赤外線を生じるならば、特に形状や組成は限定されるものではない。なお、図中、13aは送風手段13のモータを示している。
【0022】
調整ダクト8は、乾燥室5の側面に隣接して延在する木材の仕切側面(板面)16と、仕切側面16を両側で支持するよう上下方向の溝を備える支柱17と、仕切側面16の上下方向の間に所定位置(図1では上位置、中央位置、下方位置の三ケ所)で挟み込まれる複数の金網面18とを備えており、熱風が調整ダクト8内にダクト部11の吹出口10より吹き出された際には、仕切側面16と金網面18の配置により熱風を下方へ誘導すると共に金網面18により熱風を分散し、熱風を制御して乾燥室5内へ送風する。なお、仕切側面16と金網面18は、仕切側面16と金網面18の配置の変更、設置の容易性、設置コストの低減の点から、支柱17の溝にスライド挿入して組み立てること(ケンドン方式)が好ましい。
【0023】
乾燥室5の床面19は、コンクリートの土台20に木材の板面21が敷き詰め、コンクリートから出る強アルカリ成分、薬剤成分、冷輻射を遮断するようにしており、板面21の上面には、図10に示す如く、台車2の車輪2aをガイドするガイドレール22を、開閉扉4から乾燥室5の奥へ向かって配置している。なお、ガイドレール22は、開閉扉4の手前で一部切られており、乾燥室5内の熱がガイドレール22を通して外部へ漏れないようにしている。
【0024】
乾燥室5の両側の側面は、木材の板面を用いたパネル体23で構成されており、パネル体23は、図4に示す如く、木材の板面で内側面(一方の板面)24と外側面(他方の板面)25を構成すると共に、内側面24と外側面25の間に複数枚のダンボール材26を隙間なく積層しており、内側面24の外面に水分が付着した際には、図5に示す如く、内側面24と外側面25の間に生じた水分を、内側面24から、ダンボール材26を介して、乾いた外側面25へ水分を吸収、伝達し、乾燥室5内の水分を水蒸気として外部へ放出し得るようにしている。ここで、ダンボール材26は、波型に形成された中芯26aと、中芯26aを保持するように中芯26aの両面に貼り合わせライナ26bとから構成されると共に、複数枚を積層しており、これにより、水分を吸収し、伝達し、外部へ放出し、乾燥室5内が乾燥した際には回復するようになっており、同時に、断熱性を高めるようになっている。又、ダンボール材26は、無機質の不燃剤を塗布して難燃処理されており、熱風等の昇温に耐られると共に、防虫防蟻効果も得られるようになっている。
【0025】
ここで、パネル体23は、低温乾燥装置1の側面に限定されるものでなく、天井面等の他の面に使用しても良く、更に、サウナの壁面や建築材等に適用しても良い。又、パネル体23の木材の板面は、調湿性を有する無垢の木材が好ましく、同時に、乾燥室5の仕切上面6の木材、床面19の木材も、外部からの影響を低減するよう無垢の木材が好ましい。
【0026】
又、このようパネル体23を組み立てる際には、図6に示す如く、周囲面27a及び支持面27bを備えた木材のユニット体27に、複数枚のダンボール材26を隙間なく積層し、図7、図8に示す如く、複数のダンボール材26を収納したユニット体27を、木材の板面の内側面24に沿って積み上げるよう配置し、内側面24の外方突起部24aとユニット体27の支持面27bの突起部27cとを釘等の締結手段(図示せず)により固定し、ユニット体27の支持面27bと側面の内側面24とでダンボール材26を密封し、ユニット体27の支持面27bをパネル体23の外側面25としてパネル体23を構成している。ここで、パネル体23は、工場等で予め組み立てて設置場所に輸送して配置することが好ましいが、設置場所で組み立てても良い。
【0027】
乾燥室5の反調整ダクト8側の側面は、図2、図3に示す如く、前方及び奥方に照明手段28を配置すると共に、中央に室温センサ29を設置し、室温センサ29から制御盤41へデータを送って乾燥室5内の温度管理をするようにしている。ダクト部11の吸込口9の隣接位置には、給気ファン30aを備えた流入口30を設け、照明手段28及び流入口30の下方位置には、所定口径の排出口31を備えている。又、側面の外側には、過昇防止センサ15と連結した過昇防止温度調整器32を配置して過昇温度の設定を行い、温度の異常昇温の際は、データを送って制御盤41の電源が強制的に遮断され、乾燥室5内の温度制御と共に過昇防止により二重の安全管理を行っている。
【0028】
乾燥室5の天井裏空間7を形成する側面は、乾燥室5の側面から連なるよう、外側面25及び内側面24を備えると共に、外側面25及び内側面24の間にダンボール材26を隙間なく積層しており、乾燥室5の天井裏空間7を形成する頂部面は、一枚の木材の板面34により構成されている。ここで、一枚の木材の板面34からなる頂部面には、機器の点検口(図示せず)を構成しても良い。又、頂部面は、一枚の板面34の代わりに、二枚の板面の間に複数のダンボール材を隙間なく積層したパネル体でも良い。
【0029】
一方、乾燥室5の外方には、乾燥室5の外部環境を調整し得るよう乾燥室5を取り囲む断熱保温壁の外室35を設けており、外室35は、乾燥室5の開閉扉4側に対抗する前方面に、シャッタ等の開閉部36及び換気用のファン37を設け、乾燥室5の奥側に位置する側方面及び奥方面には、複数の給気口(図3では三つ)38を配置している。又、乾燥室5の側面と外室35の側方面との間には複数の除湿器(図3では二つ)39を夫々配置し、湿度除去と外気との温度差の改善を可能にしている。ここで、図中、40はシャッタ等の開閉部36を収納するボックス部を示している。
【0030】
以下、本発明を実施する形態例の作用を説明する。
【0031】
木材等の乾燥対象物3を乾燥する際には、図9に示す如く、台車2に積載した木材等の乾燥対象物3を搬入して外室35の開閉部36を降ろすと共に乾燥室5の開閉扉4を閉め、加熱手段12及び送風手段13を駆動して乾燥室5内を40〜50℃、好ましくは42℃〜45℃に昇温し、最初の乾燥時には、図10に示す如く、乾燥室5の外気(外室35内の空気)を流入口30の給気ファン30aにより乾燥室5内へ取り込んで、外気を直接、乾燥対象物3に当てないよう、送風手段13によりダクト部11内へ取り込み、加熱手段12で加熱して熱風にすると共にセラミック体14により遠赤外線を含んだ状態にして調整ダクト8内へ排出し、熱風を調整ダクト8内から仕切側面16及び金網面18により振り分けて乾燥室5へ送風し、乾燥室5内では熱風を循環させると共に、湿った重い空気を排出口31より乾燥室5の外部へ排出する。
【0032】
次に、時間経過に伴い、乾燥室5内の湿度が少なくなった場合には、図11に示す如く、流入口30の給気ファン30aを止めると共に加熱手段12及び送風手段13の駆動を維持し、ダクト部11及び調整ダクト8を介して、遠赤外線を含んだ熱風を乾燥室5内で循環させ、木材等の乾燥対象物3を最終的に乾燥させる。
【0033】
この時、乾燥室5内を循環する熱風は、木材等の乾燥対象物3から生じた水分や乾燥室5内に存在する水分を内側面24に付着させ、木材の調湿性及びダンボール材26の吸収性・伝達性・放出性・回復性により、水分を、内側面24、ダンボール材26、外側面25の順に伝達して外側面25の外部へ水蒸気として排出しており、特に調整ダクト8では、水分を含んだ熱風をダクト部11の吹出口10から下方へ誘導して水分が側面のパネル体23に接触する時間を増やし、パネル体23の調湿性、及び吸収性・伝達性・放出性・回復性を介して、乾燥室5内の水分の排出効率を高めている。
【0034】
又、外室35は、乾燥室5より排出された水分を適宜、除湿機により吸収し、乾燥室5の側面の外側に水滴が生じないよう適度な乾燥状態(環境状態)に維持している。ここで、最初の乾燥段階から、乾燥室5内の湿度が少ない状態へ移行した場合には、流入口30の給気ファン30aを止め、乾燥室5の外気(外室35内の空気)が乾燥室5内へ流入しないようにしている。又、最初の乾燥段階から、乾燥室5内の湿度が少ない状態への移行切替は、所定の時間経過によっても良いし、乾燥対象物3の状態の判断によっても良い。
【0035】
ここで、この形態例の低温乾燥装置1を使用した際の結果を、他の低温乾燥装置1の場合と比較すると、
(1)杉板(熊本県阿蘇郡小国町の小国杉)を、厚さ15mm、幅110mm、長さ2m、設定温度40℃で一日乾燥した結果、含水率62.9〜78.4%から10.8〜18.2%へ低減し、同じ杉板を設定温度50℃で一日乾燥した結果、含水率60.2〜74.8%から8.9〜16.0%へ低減した。
(2)製材直後の杉板(青森県十和田市の十和田杉)を、厚さ10mm、幅110mm、長さ2.2m、42枚(≒0.1m)、設定温度45℃で一日乾燥した結果、総重量65.80kgが出庫5日後には総重量36.26kgに低減し、同じ杉板を、厚さ20mm、幅110mm、長さ2.2m、21枚(≒0.1m)、設定温度45℃で47時間乾燥した結果、総重量66.58kgが出庫5日後には総重量37.44kgに低減した。
ここで低減量の平均値を1mに換算すると293.4kgとなると共に、本形態例の低温乾燥装置1の一例では一回の乾燥で約2.9トンの水分の重量差が生じる。なお、未乾燥材を運搬することは木と共に水分を運搬することであるため、多大なエネルギーの損失を生じ、環境も汚染される。
(3)一方、従来の低温の乾燥装置は、殆どが除湿式であり、上記の如き乾燥結果を求めた場合は、5日から10日前後を要すると言われている。
以上のことから本発明の低温乾燥装置1は乾燥時間を大幅に短くし得ることが明らかである。又、1mの乾燥に要する燃費は(消費電気量)約500円であって非常に安価であり、従来の1mに対する燃費は2000円〜4000円と言われている。
【0036】
このように、本発明を実施する形態例の低温乾燥装置1によれば、金属やコンクリート等の側面と異なり、パネル体23の木材の調湿性を用いて水分を排出するので、乾燥対象物3の乾燥時間を短縮することができる。又、パネル体23の木材の調湿性を用いて水分を排出するので、乾燥対象物3の含水率を容易に安定化して全体の平準化を早くすることができる。更に、加熱手段12及び送風手段13により熱風を乾燥室5内で乾燥対象物3の周囲に循環させるので、熱風をムラなく乾燥対象物3に行き渡らせ、乾燥対象物3を好適に乾燥させると共に、乾燥時間を短縮することができる。更に又、水分を排出する除湿機等の手段や構造を備える必要がなく、パネル体23の木材の調湿性を用いて水分を排出するので、ランニングコストや設置コストを低減することができる。又、40℃〜50℃、好ましくは42℃〜45℃の低温で乾燥処理し得るので、乾燥処理の監視のための人員を不要にすることができる。更に、稼働中の乾燥室5内へ人が出入りして作業することができる。
【0037】
又、パネル体23の木材の調湿性を用いて乾燥対象物3の木材の水分を排出するので、木材に過剰な負荷をかけることなく、木材の樹脂の排出を防止して好適に乾燥処理することができる。更に、パネル体23の木材の調湿性により、乾燥対象物3の木材の含水率を容易に安定化するので、木材の樹種や厚みを問わず、好適に乾燥処理することができる。なお、従来の低温乾燥装置1では、木材の樹種や厚みが同一のものに限定されている。
【0038】
パネル体23は、木材の板面で内側面(一方の板面)24と外側面(他方の板面)25を構成すると共に、内側面24と外側面25の間にダンボール材26を隙間なく積層し、内側面24と外側面25の間に水分を溜めることなく乾燥室5内の水分を外部へ放出し得るよう構成されると、パネル体23の木材の調湿性及びダンボール材26の吸収性・伝達性・放出性・回復性を用いて水分を排出するので、乾燥対象物3の乾燥時間を一層短縮することができる。又、ダンボール材26の保温性を利用して乾燥室5内の温度低下を抑制することができる。ここで、内側面24と外側面25の間に配置するダンボール材26は、複数の薄いダンボール材26を積層した場合が、吸収性・伝達性・放出性・回復性及び保温性を好適に高めることができる。
【0039】
乾燥室5外の環境を調整するよう乾燥室5を取り囲む外室35を備えると、乾燥室5の側部の外側面25に水滴が生じるような状態や、外部の高湿度により乾燥室5内の水分を外部へ放出できない状態を防止し得るので、乾燥対象物3を好適に乾燥して乾燥対象物3の乾燥時間を一層短縮することができる。
【0040】
乾燥室5内へ送風する熱風を制御可能にするよう、側面のパネル体23に隣接する調整ダクト8を備えると、水分を含んだ熱風をダクト部11の吹出口10から下方へ誘導して水分を側面のパネル体23に十分に接触させるので、乾燥室5内の水分を効率的に外部へ放出し、乾燥対象物3の乾燥時間を一層短縮することができる。又、調整ダクト8は、仕切側面16と金網面18を支柱17の溝にスライド挿入して組み立てるので(ケンドン方式)、熱風の流れを容易に変更して乾燥対象物3の乾燥処理を好適にすることができると共に、設置コストを低減することができる。
【0041】
乾燥室5は、側面の上部に外気を取り入れる流入口30を備えると共に、側部の下部に、湿った重い空気を排出する排出口31を備えると、流入口30の位置により、外気を乾燥対象物3に直接当てることを抑制するので、乾燥対象物3にストレスを与えることなく、乾燥対象物3を好適に乾燥させることができる。又、排出口31の位置により、最初の乾燥時に生じる湿った重い空気を容易に乾燥室5の外部へ排出するので、乾燥対象物3を好適に乾燥させると共に、乾燥時間を一層短縮することができる。
【0042】
加熱手段12で加熱された熱風により遠赤外線を発生させるようセラミック体14を備えると共に、加熱手段12及び送風手段13並びにセラミック体14を乾燥対象物3の上部に配置すると、遠赤外線により乾燥対象物3を好適に乾燥することができる。又、加熱手段12及び送風手段13並びにセラミック体14の上部位置により、熱風を乾燥室5内で乾燥対象物3の周囲に容易に循環させるので、熱風をムラなく乾燥対象物3に行き渡らせ、乾燥対象物3を好適に乾燥させると共に、乾燥時間を一層短縮することができる。
【0043】
加熱手段12及び送風手段13を複数備えて切替可能にすると、加熱手段12及び送風手段13の一部が故障した場合であっても、乾燥装置の稼動を停止することなく、乾燥処理を行い、乾燥対象物3を好適に乾燥させることができる。
【0044】
ここで、低温乾燥装置1は、内部空間の奥行きを長くして大型化すると共に、開閉扉4を乾燥室5の前後に設けても良く、この場合には、長尺の木材に対応できると共に大容量の乾燥対象物3を乾燥処理することができる。又、このような大型の低温乾燥装置1は、図12に示す如く、乾燥室5の内部中央に着脱可能な仕切壁42を備えて乾燥室5内を区分しても良く、この場合には、夫々の乾燥室5でローテーションにより、異なる乾燥対象物3を別個に乾燥処理するようにしても良い。
【0045】
パネル体23の組立方法は、木材のユニット体27にダンボール材26を隙間なく積層し、ダンボール材26を収納した複数のユニット体27を、木材の板面に配置し、ユニット体27の一面と木材の板面でダンボール材26を密封してパネル体23を構成すると、パネル体23を極めて容易に構成し得るので、製造コストや輸送コストを削減し、全体のコストを低減することができる。又、ユニット体27を取り外した際には、ユニット体27ごとに、ダンボール材26の点検及び側面の点検を行うことができる。更にユニット体27及びダンボール材26を容易に交換することができる。
【0046】
尚、本発明の低温乾燥装置及びパネル体並びにパネル体の組立方法は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、乾燥対象物を木材以外の食品等に適用しても良いこと、パネル体はダンボール材の枚数に制限がないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を実施する形態例の低温乾燥装置の構成を示す正面図である。
【図2】本発明を実施する形態例の低温乾燥装置の構成を示す側面図である。
【図3】本発明を実施する形態例の低温乾燥装置の構成を示す平面図である。
【図4】本発明のパネル体の構造を示す断面図である。
【図5】パネル体により水分を外部へ放出する状態を示す概念図である。
【図6】本発明のパネル体の組立方法においてユニット体へダンボール材を積層する状態を示す概念図である。
【図7】本発明のパネル体の組立方法においてユニット体を内側面に取り付ける状態を示す概念図である。
【図8】図7のVIII−VIII方向の矢視図である。
【図9】乾燥室から乾燥対象物を出入する状態を示す側面図である。
【図10】外部から乾燥室内に外気を取り込むと共に、湿った重い空気を排出する状態を示す拡大正面図である。
【図11】乾燥室内で熱風を循環させる状態を示す拡大正面図である。
【図12】前後方向から乾燥対象物を出し入れし得る低温乾燥装置の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 低温乾燥装置
3 乾燥対象物
5 乾燥室
8 調整ダクト
11 ダクト部
12 加熱手段
13 送風手段
14 セラミック体
23 パネル体
24 内側面(一方の板材)
25 外側面(他方の板材)
26 ダンボール材
27 ユニット体
30 流入口
31 排出口
35 外室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥対象物を搬入し得る乾燥室を備えた低温乾燥装置であって、前記乾燥室を低温で乾燥可能な温度に加熱する加熱手段と、前記乾燥室内へ熱風を送風する送風手段と、前記乾燥室の側面を構成するパネル体とを備え、前記パネル体は、木材の板面を用いて木材の調湿性により乾燥室内の水分を外部へ放出し得るように構成されたことを特徴とする低温乾燥装置。
【請求項2】
パネル体は、木材の板面で内側面と外側面を構成すると共に、内側面と外側面の間にダンボール材を隙間なく積層し、内側面と外側面の間に生じる水分を吸収、伝達し、乾燥室内の水分を外部へ放出して乾燥対象物の乾燥と共に、パネル体の乾燥回復を為し得るよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の低温乾燥装置。
【請求項3】
乾燥室外の環境を調整するよう乾燥室を取り囲む外室を備えたことを特徴とする請求項1記載の低温乾燥装置。
【請求項4】
乾燥室内へ送風する熱風を制御可能にするよう、側面のパネル体に隣接する調整ダクトを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低温乾燥装置。
【請求項5】
乾燥室は、側面の上部に外気を取り入れる流入口を備えると共に、側部の下部に、湿った重い空気を排出する排出口を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低温乾燥装置。
【請求項6】
加熱手段で加熱された熱風により遠赤外線を発生させるようセラミック体を備えると共に、加熱手段及び送風手段並びに前記セラミック体を乾燥対象物の上部に配置したことを特徴とする請求項1〜5記載の低温乾燥装置。
【請求項7】
加熱手段及び送風手段を複数備えて切替可能にしたことを特徴とする請求項1〜6記載の低温乾燥装置。
【請求項8】
複数の木材の板面間にダンボール材を隙間なく積層し、複数の板面の間に生じる水分を吸収、伝達し、一方の板面から他方の板面へ水分を伝達して放出し、乾燥回復を為し得るよう構成されたことを特徴とするパネル体。
【請求項9】
木材のユニット体にダンボール材を隙間なく積層し、ダンボール材を収納した複数のユニット体を、木材の板面に配置し、ユニット体の一面と木材の板面でダンボール材を密封してパネル体を構成することを特徴とするパネル体の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−334823(P2006−334823A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159504(P2005−159504)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(500108596)
【出願人】(501231945)
【Fターム(参考)】