説明

低温液化ガス輸送車

【課題】複数の消費先に低温液化ガスを継続的に供給しても、車載タンク内の水素ガスを大気放出せずに済む低温液化ガス輸送車を提供すること。
【解決手段】車載タンク1内の気相部ガスを抜き出す手段と、抜き出したガスを蓄える補助タンク3とを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低温液化ガス輸送車に関する。低温液化ガス輸送車(以下、単に「輸送車」という。)とは、低温液化ガスを蓄える車載タンクを備えた自動車を意味する。構造的には石油やガソリンを搬送するローリー車と類似するが、積載するものが、「低温液化ガス」である点で異なる。
「低温液化ガス」とは、常温ではガス(気体)の状態で存在するが、ガスの温度を下げる(例えば−180℃以下にする)と液化するガスを言う。「低温液化ガス」としては、「空気」、「酸素」、「窒素」、「アルゴン」、「水素」、「ヘリウム」等を挙げることができる。
車載タンクに「低温液化ガス」を貯蔵すると、車載タンクの内部では、液相部の上に気相部ができる。液相部の上にできる気相部を特に「気相部ガス」と言う。
なお、以下の説明で、「水素」の記載は、物性上の水素を意味し、気体、液体等、任意の状態を示す。「水素ガス」の記載は、特に気体状態の水素を意味する。「液化水素」の記載は、特に液体状態の水素を意味する。「液化水素」を車載タンクに貯蔵すると、「液化水素」の一部が気化し、「液化水素」の上に「気相部ガス」としての「水素ガス」ができる。
【背景技術】
【0002】
近年の世界的環境規制の高まりから、化石燃料やバイオマス、水など、様々な原料から製造できる水素が、燃料電池自動車や家庭用、業務用のエネルギーとしてその利用が期待されている。
【0003】
水素は、他の「低温液化ガス」と同様、「液化水素」にすると、「水素ガス」に比べ容積が約800分の1になる。従って、工場で製造された水素を消費先に設置された受入タンクに供給する際は、液化酸素や液化窒素と同様、液化水素を車載タンクに充填して消費先に搬送する。このような供給形態は特許文献1に開示されている。
【0004】
しかし、液化酸素や液化窒素用の輸送車は、液化水素の供給においては不都合な面がある。以下、これを説明する。
車載タンク内の液化水素を、消費先の受入タンクに液化水素のまま移充填するには、車載タンクの内圧を受入タンクの内圧より上昇させ、圧力差を利用して供給する。このように、移充填時に車載タンクの内圧を上昇させるので、車載タンクの内圧は搬送時よりも移充填時の方が高くなる。
移充填を続けると、車載タンク内の内圧が低下し圧力差による供給ができなくなる。そこで、車載タンク内の液化水素の一部を外部に取り出し、大気と熱交換させて水素ガスとし、この水素ガスを車載タンクの気相部(水素ガス部分)に戻して車載タンクの内圧を上げ、移充填を継続する。従って、移充填の終了時は車載タンクの内圧は搬送中より高い圧力になっている。ゆえに、移充填の終了後も車載タンク内に液化水素が残っていると、大気からの熱侵入により液化水素が気化して水素ガスとなり、車載タンクの内圧は更に上昇する。
このため、引き続き、車載タンクに残った液化水素を別の消費先に供給しようとすると、搬送中に車載タンクの内圧が車載タンクの耐圧圧力以上に高まり、放置すると車載タンクが破裂する危険が生じる。このため、別の消費先に移動する途中で、車載タンク内の水素ガスを適宜大気放出し、車載タンクの内圧を耐圧圧力以下に保持する必要がある。
【0005】
このように、車載タンクに貯蔵した液化水素を複数のユーザーに引き続き供給するには、搬送の途中で水素ガスを大気放出せざるを得ない。大気放出する場合、貯蔵する低温液化ガスが、液化酸素や液化窒素の場合は、これらは大量に製造でき安価であるから、大気放出による経済的損失はあまり考慮しなくても済む。しかし、水素ガスは高価なので、大気放出することは大きな経済的損失である。
このようなことから、現状は、搬送途中における水素ガスの大気放出を避けるため、消費先に大容量の受入タンクを設置し、車載タンクに積載した液化水素を一度で全量移充填する供給方法(ワンドロップ供給方法)を行っているのが実情である。
従って、従来の輸送車では、複数の消費先に継続して液化水素を供給するには不都合である。
【特許文献1】特開2001−335120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、複数の消費先に低温液化ガスを継続的に供給しても、車載タンク内の水素ガスを大気放出せずに済む輸送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1にかかる本発明の輸送車は、車載タンク内の気相部ガスを抜き出して蓄える手段と、該手段により蓄えたガスを前記車載タンクに戻す手段とを備えたことを特徴とする。
請求項2にかかる本発明の輸送車は、車載タンクにおいて気化したガスを加圧するブースターと、前記ブースターで加圧されたガスを蓄える補助タンクと、前記車載タンク、前記ブースター、及び前記補助タンクを接続し、かつ、前記補助タンクと前記車載タンクとを接続して前記気化したガスを循環させる管路とがシャシーに設けられたことを特徴とする。
請求項1、2に記載の輸送車によれば、車載タンク内の気相部ガスを抜き出して補助タンクに蓄えることができる。従って、次の消費先に液化水素を搬送する前に、車載タンクの圧力を下げることができる。ゆえに、搬送途中で大気からの熱侵入により車載タンク内の液化水素が蒸発したとしても、車載タンク内の圧力は十分に下がっているので、車載タンクの内圧を耐圧限度内の圧力に維持できる。
このように、請求項1、2に記載の輸送車によれば、搬送途中での水素ガスの大気放出を要しないので、従来のワンドロップ供給方法に限定されずに、経済的に複数の消費先に継続して液化水素を供給できる。
更に、次の消費先で液化ガスを受入タンクに移充填する際は、車載タンクの内圧を補助タンクに蓄えたガスを用いて上昇させることができるので、車載タンクの液化水素を蒸発させることなく、すばやく車載タンクの圧力を所定の圧力にまで上昇させて、スムーズに液化ガスを提供することが可能となる。
【0008】
請求項3にかかる本発明の輸送車は、請求項1または2において、車載タンクとブースターとの間の経路に第一熱交換器が配されていることを特徴とする。第一熱交換器としては、大気との熱交換を行うプレートフィン式熱交換器を用いることができる。
本記載の輸送車によれば、車載タンク内の−250℃前後の温度の水素ガスを、第一熱交換器を用いて、−20℃前後の温度に上昇できる。従って、特殊素材を用いた低温用のブースターに代えて一般素材を用いた室温用のブースターを使えるのでブースターのコストを低減できる。また、通常、低温用のブースターよりも室温用のブースターの方が軽量なので、輸送車の重量を軽くできる。軽量なブースターを用いることにより、輸送に係る燃料費を低減することができる。
【0009】
請求項4にかかる本発明の輸送車は、請求項1または2において、ブースターと補助タンクとの間の経路に第二熱交換器が配されていることを特徴とする。第二熱交換器は第一熱交換器で同様なものを用いることができる。
本記載の輸送車によれば、ブースターで加圧されて温度が上昇した水素ガスを第二熱交換器を用いて冷却できる。従って、補助タンクの材質を高温に耐えるが重量の大きい金属製から、高温に弱いが軽量のカーボン製等にすることができる。軽量な補助タンクを用いることにより輸送に係る燃料費を低減することができる。
【0010】
請求項5にかかる本発明の輸送車は、請求項4において、ブースターと補助タンクとの間の経路に第二熱交換器が配されていることを特徴とする。
本記載の輸送車によれば、特殊素材を用いた低温用のブースターに代えて一般素材を用いた室温用のブースターが使えると共に、補助タンクの材質を高温に耐えるが重量の大きい金属製から、高温に弱いが軽量のカーボン製等にすることができる。従って、より輸送車の重量を軽くでき、輸送に係る燃料費を更に低減することができる。
【0011】
請求項6にかかる本発明の輸送車は、請求項5において、第一熱交換器と第二熱交換器が一体形成されて第三熱交換器をなしていることを特徴とする。
本記載の輸送車によれば、第三熱交換器は、大気との熱交換だけでなく、車載タンクからの低温のガスと、ブースターから吐出される高温のガスとを熱交換させることができ、熱交換効率高めることができる。
【0012】
請求項7にかかる本発明の輸送車は、請求項6において、第三熱交換器とブースターとの間の経路、及び第三熱交換器と補助タンクとの間の経路には、温調器が配されていることを特徴とする。
本記載の輸送車によれば、第三熱交換器を出てブースターに導入されるガスの温度が低温過ぎる場合は、第三熱交換器とブースターとの間の経路に設けた温調器によって適当な温度に加温できる。また、第三熱交換器を出て補助タンクに導入されるガスの温度が高温過ぎる場合は、第三熱交換器と補助タンクとの間の経路に設けた温調器によって適当な温度に冷却できる。これによって、ブースター及び補助タンクへの悪影響を排除できる。
【0013】
請求項8にかかる本発明の輸送車は、請求項6または7において、車載タンクと第三熱交換器との間の経路には、加温器が配されていることを特徴とする。
本記載の輸送車によれば、第三熱交換器が設計条件を外れた使用状態となり、第三熱交換器を出てブースターや補助タンクに導入されるガスの温度が低過ぎる際に、車載タンクからの水素ガスの温度を、加温器を用いて上げることができるので、ブースターや補助タンクに悪影響を与えることがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の輸送車は、車載タンク内の気相部ガスを抜き出して蓄える手段と、該手段により蓄えたガスを前記車載タンクに戻す手段とを備えている。
かかる構成によれば、搬送途中での水素ガスの大気放出を要しないので、従来のワンドロップ供給方法に限定されずに、経済的に複数の消費先に継続して液化水素を供給できる。
このような、大気放出をしなくて済む効果は、液化酸素や液化窒素の輸送の場合にも有効であるが、特に液化水素の輸送に有効である。一般に液化水素や液化ヘリウムなど、輸送中の大気放出が経済的損失が大きいときに特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る輸送車で、図1(a)は、輸送車の模式図で、車載タンク1に低温液化ガスLが充填されている様子を示す。図1(b)は車載タンク1と、ブースター2と、補助タンク3と、管路4からなる供給装置10を示す概略構成図である。
【0017】
車載タンク1内の気相部ガスを抜き出して加圧するブースター2と、ブースター2で加圧されたガスを蓄える補助タンク3と、車載タンク1、ブースター2、及び補助タンク3を接続し、かつ、補助タンク3と車載タンク1とを接続して気化したガスを循環させる管路4とが輸送車のシャシー9に設けられている。
以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0018】
車載タンク1は、工場で製造した液化水素を貯蔵する貯槽である。車載タンク1の材質は貯蔵する水素の温度や圧力に応じて適宜に設計する。耐圧性能は、例えば0.3MPa〜1.3MPa、内容積は例えば15m〜20mである。
車載タンク1には、次の機器が付属している。
a.消費先の受入タンクに液化水素を移充填するための管路、弁。
b.車載タンク1の内圧上昇時に、気相部ガスを大気放出する管路、弁。
c.車載タンク1内の液化水素の一部を外部に取り出し、大気と熱交換させて気化し、気化した水素ガスを車載タンク1の気相部に戻す熱交換器、管路、弁。
上記a〜cは図示を省略するが、液化水素以外の低温液化ガスの車載タンクにも付属している。
【0019】
ブースター2は、車載タンク1内の気相部ガスを抜き出して加圧し、補助タンク3に蓄える圧縮機である。例えば、吸入圧力は0.2MPa〜0.3MPa、吐出圧力は0.5mPa〜1.5MPa、吐出温度は90℃〜100℃、処理量は20Nm/h〜30Nm/hとする。車載タンク1の水素ガスは例えば−180℃〜−250℃と非常に低温なので、低温に耐久性のあるブースター2を用いる。
【0020】
補助タンク3は、ブースター2で加圧された水素ガスを封入するもので、内容積は、例えば2m〜4mである。ブースター2からの水素ガスの温度は90℃〜100℃と高温なので、高温に耐える材質、例えば金属製とする。
【0021】
車載タンク1、ブースター2、補助タンク3は、順に管路4で接続されている。また、補助タンク3と車載タンク1の間も管路4によって接続されている。これによって、補助タンク3に封入された水素ガスは、車載タンク1の気相部に供給できるようになっている。なお、管路4には、ガスの流れを停止できる弁αを適宜設ける。
【0022】
次に、本発明の輸送車による液化水素の移充填を説明する。
液化水素を貯蔵した輸送車は、第一の消費先(輸送側から見ると第一の供給先でもある)に到着後、消費先の受入タンクに液化水素の移充填を行う。
具体的には、管路4に設けた液化水素取出し弁(図示せず)と受入タンクの液化水素取入れ弁(図示せず)とをホースで接続後、車載タンク1内の液化水素を受入タンクに液体状態のまま移充填する。
車載タンク1内の液化水素が受入タンク内に充填されるに伴って車載タンク1の内圧が低下し、単位時間当たりの移充填量が減少してくる。このため、車載タンク1内の液化水素の一部を管路4にて外部に取り出して大気と熱交換させて水素ガスとして体積を増加し、水素ガスを車載タンク1内の気相部に戻して車載タンク1の圧力を高めて移充填を継続する。
このようにして、車載タンク1の内圧は、液化水素の移充填終了時は、搬送時よりも高くなっている。この状態で輸送車が第二の消費先へと移動すると、移動中に、大気からの熱侵入により車載タンク1内の液化水素が気化し、車載タンク1の内圧が高くなる。そこで、管路4に設けた弁(安全弁)が時々開き、車載タンク1内の水素ガスを大気放出して、車載タンク1内圧を耐圧性能以下に保つ必要が出てくる。
【0023】
これに対し、本発明の輸送車では、前記移充填の完了後、ブースター2を作動させ、車載タンク1内の水素ガスを抜き出して補助タンク3に蓄える。車載タンク1内の水素ガスが抜き出されることにより、車載タンク1内の内圧が低下する。
車載タンク1内の内圧を低くして輸送車が第二の消費先に向かった場合、移動中に、大気からの熱侵入により車載タンク1内の液化水素が気化しても、車載タンク1の内圧を耐圧性能以下の圧力に維持することができる。
【0024】
輸送車が第二の消費先に到着し、そこの受入タンクに液化水素を移充填するには、前記第一の消費先と同様の手順を踏むが、この場合、車載タンク1の内圧低下に対しては、補助タンク3内の水素ガスを供給することによって車載タンク1の内圧を高めることができる。車載タンク1内の液化水素の一部を外部に取り出して大気との熱交換で水素ガスを得る操作は、補助タンク3での圧力上昇が終了した後で行えば良く、移充填を迅速に行うことができる。また、第一の消費先から第二の消費先への移動に伴う水素ガスの気化は、第二の消費先での移充填に無駄なく使用できるメリットもある。
【0025】
図2は、本発明の第2実施形態に係る輸送車で、前記図1と同一の構成のものは同じ番号を付してある(以下、同様)。本実施形態が前記図1と異なるのは、車載タンク1と、ブースター2との間に第一熱交換器25を設けたことである。
【0026】
第一熱交換器25は、車載タンク1からの水素を大気と熱交換させて温度を上昇させるもので、例えばプレートフィン式熱交換器である。加熱源としては、通常は大気が簡便だが、輸送車のラジエーターの温水(大気より高温)を用いることも可能である。
【0027】
車載タンク1からの低温の水素を、第一熱交換器25を通過させて−20℃前後まで上昇させると、ブースター2としては、第1実施形態の、特殊素材を用いた低温用のブースター2に代えて、一般素材を用いた室温用のブースター2を使用することができる。室温用のブースター2は低温用のブースター2より安価であり、経済的である。また、室温用のブースター2は低温用のブースター2より軽量なので、輸送車の重量が軽くなり、輸送に係る燃料費を削減することが可能である。
【0028】
図3は、本発明の第3実施形態に係る輸送車で、本実施形態が前記図2と異なるのは、ブースター2と補助タンク3との間に第二熱交換器36を設けたことである。
【0029】
第二熱交換器36の構造は第一熱交換器25と同様だが機能が異なる。
第二熱交換器36は、ブースター2から吐出される90℃〜100℃の高温の水素ガスを室温程度に冷却するものである。補助タンク3は、高温の水素ガスが導入されるときは、高温に耐えられるよう、金属製とする必要がある。しかし、水素ガスの温度が80℃以下であればカーボン等のプラスチック系の材料を用いることができる。
【0030】
本実施形態においては、導入される水素ガスの温度を下げることによって、補助タンク3を、重量の大きい金属製の補助タンク3から軽量なカーボン製の補助タンク3にすることができる。補助タンク3を軽量にすることにより、輸送車の車体重量が軽くなり、燃料費等のコストを抑えることができる。
【0031】
図4は、本発明の第4実施形態に係る輸送車で、本実施形態が前記図3と異なるのは、車載タンク1と、ブースター2との間に第一熱交換器25を設けたことである。
【0032】
本実施形態においては、第一熱交換器25と第二熱交換器36を用いることで、特殊素材を用いた低温用のブースター2に代えて、一般素材を用いた室温用のブースター2を使用することができると共に、重量の大きい金属製の補助タンク3から軽量なカーボン製の補助タンク3にすることができる。従って、輸送車の車体重量をより軽量化することができ、燃料費等のコストを更に抑えることが可能である。
【0033】
図5は、本発明の第5実施形態に係る輸送車で、本実施形態が前記図4と異なるのは、第一熱交換器の機能と、第二熱交換器の機能を一体化した第三熱交換器47を設けたことである。
【0034】
本実施形態によれば、車載タンク1からの低温の水素ガスが、室温用のブースター2から吐出される高温のガスと熱交換されるので、第一熱交換器、第二熱交換器単体における大気との熱交換に比べ熱交換効率が高まり、第一熱交換器、第二熱交換器をそれぞれ設けるよりも、第三熱交換器47一つの方が小型、軽量になる。
【0035】
図6は、本発明の第6実施形態に係る輸送車で、本実施形態が前記図5と異なるのは、第三熱交換器47と室温用のブースター2との間の経路に第一温調器58を設けたことに加え、第三熱交換器47と軽量な補助タンク3との間の経路に第二温調器59を設けたことである。
【0036】
第三熱交換器47は車載タンク1からの低温の水素ガス、室温用のブースター2からの高温の水素ガスを基にして所定の計算を行って設計されるが、天候、季節により、設計値から外れる可能性もある。
第一温調器58は、第三熱交換器47を導出し、室温用のブースター2に向かう水素ガスを大気と熱交換させるもので、構造として第一熱交換器25と同様である。
第一温調器58により、第三熱交換器47を導出する水素ガスの温度が高過ぎる場合も、逆に低過ぎる場合も、室温用のブースター2に好適な温度に調整することができる。
【0037】
第二温調器59は、第三熱交換器47を導出し、軽量な補助タンク3に向かう水素ガスを大気と熱交換させるもので、構造として第一熱交換器25と同様である。
第二温調器59により、第三熱交換器47を導出する水素ガスの温度が高過ぎる場合も、逆に低過ぎる場合も、軽量な補助タンク3に好適な温度に調整することができる。
【0038】
図7は、本発明の第7実施形態に係る輸送車で、本実施形態が前記図6と異なるのは、車載タンク1と第三熱交換器47との間に加温器65を設けた点にある。加温器65の構造は第一熱交換器25と同一である。なお、図7における第一温調器58、第二温調器59は、必要に応じて設ける。
【0039】
加温器65は、車載タンク1内の水素ガスを第三熱交換器47に導入する前に予め加温するものである。仮に、第三熱交換器47が設計条件を外れた使用状態となり、車載タンク1内で気化したガスが十分に加温されない場合、室温用のブースター2から吐出されるガスの温度が低下してしまう虞がある。この場合だと、第三熱交換器47によって車載タンク1で気化したガスを十分に加温することができず、よりガスの温度が低下してしまう。室温用のブースター2及び軽量な補助タンク3は低温用ではないので、損傷が生じる虞がある。従って、加温器68を車載タンク1と第三熱交換器47との間に配して、予めガスを加温することで、室温用のブースター2や軽量な補助タンク3に悪影響を与えることが抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
低温液化ガスを用いる各種産業分野、例えば、石油産業、化学産業、半導体産業、ガラス産業、金属産業、及び自動車産業等において、経済性・利便性の高い低温液化ガスの提供方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係る輸送車の一例を模式的に示した図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る液化ガス輸送車に搭載された液化ガス供給装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る輸送車に搭載された液化ガス供給装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る輸送車に搭載された液化ガス供給装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る輸送車に搭載された液化ガス供給装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る輸送車に搭載された液化ガス供給装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【図7】本発明の第7実施形態に係る輸送車に搭載された液化ガス供給装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0042】
1 車載タンク、2 ブースター、3 補助タンク、4 管路、25 第一熱交換器、36 第二熱交換器、47 第三熱交換器、58 第一温調器、59 第二温調器、65 加温器、9 シャシー、α 弁、L 低温液化ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載タンク内の気相部ガスを抜き出して蓄える手段と、該手段により蓄えたガスを前記車載タンクに戻す手段とを備えたことを特徴とする低温液化ガス輸送車。
【請求項2】
車載タンク内の気相部ガスを抜き出して加圧するブースターと、該ブースターで加圧されたガスを蓄える補助タンクと、前記車載タンク、前記ブースター、及び前記補助タンクを接続し、かつ、前記補助タンクと前記車載タンクとを接続して前記気相部ガスを循環させる管路とがシャシーに設けられたことを特徴とする低温液化ガス輸送車。
【請求項3】
車載タンクとブースターとの間の経路に第一熱交換器が配されていることを特徴とする請求項1または2に記載の低温液化ガス輸送車。
【請求項4】
ブースターと補助タンクとの間の経路に第二熱交換器が配されていることを特徴とする請求項1または2に記載の低温液化ガス輸送車。
【請求項5】
ブースターと補助タンクとの間の経路に第二熱交換器が配されていることを特徴とする請求項3に記載の低温液化ガス輸送車。
【請求項6】
第一熱交換器と第二熱交換器が一体形成されて第三熱交換器をなしていることを特徴とする請求項5に記載の低温液化ガス輸送車。
【請求項7】
第三熱交換器とブースターとの間の経路、及び第三熱交換器と補助タンクとの間の経路には、温調器が配されていることを特徴とする請求項6に記載の低温液化ガス輸送車。
【請求項8】
車載タンクと第三熱交換器との間の経路には、加温器が配されていることを特徴とする請求項6または7に記載の低温液化ガス輸送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−103165(P2009−103165A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273690(P2007−273690)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】