説明

低熱収縮を示すポリエステルフィルムの製造プロセス

ガラス転移温度(Tg(℃))を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの巻取りロールを、前記ポリエステルフィルムの収縮を改善する目的で、Tgよりも高い温度Ta(℃)(但し、Tg<Ta≦Tg+100(℃))で熱平衡後に時間t(但し、1時間≦t≦72時間)にわたりアニールし、冷却するプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並外れて低い熱収縮を示すポリエステルフィルムと、電子用、光子用、および光学用アセンブリまたは構造などの用途においてその適正を高めるために、ポリエステルフィルムの後処理によってその熱収縮挙動を改善することができる、低コストプロセスとに関する。そのような用途において、軟質フィルム基材の寸法安定性は、製造中に続けて付着させた電気活性層同士の位置合わせを維持するのに、また信頼性ある性能を確実にするのに、極めて重要である。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、独立型フィルムとして、またはより複雑なシステムおよびデバイスの構成要素として、新たな用途を求め続けている。新たな用途の要件を満足させるその能力は、通常はその化学的性質またはその物理的微細構造の変更を通して実現される、その性質の絶え間ない修正および改善にある。物理的微細構造は、そのプロセスまたは製造履歴と密接に関連している。
【0003】
多くの高付加価値適用例において、ポリエステルフィルムの重要な性質は、その寸法安定性であり、その態様は、線熱膨張係数(CLTE)、線吸湿膨張係数(CLHE)、および不可逆的歪み記憶、即ち「熱収縮」を含めたいくつかの異なるパラメータについて特徴付けることができる。以下に論じる本発明は、ポリエステルフィルムの熱収縮挙動、特に、低コスト処理プロセスを通した超低収縮の実現に、焦点を当てている。
【0004】
ポリエステルから作製された、最も一般的なタイプの商用フィルムは、高温での不可逆的な寸法変化、即ち永続的な収縮または(ある状況下での)膨張を常に示してきた。この特徴は、通常、強度、剛性、および靱性などのその他の性質を強化するために1または2方向で延伸が行われる、製造技術によってもたらされたものである。寸法不安定性の微視的原因は、比較的十分に理解されており、ポリエステル材料の非結晶化領域に存在するポリマー分子のセグメントの伸びおよびアライメントに起因する。フィルムのガラス転移よりも高く加熱すると、フィルムの非晶質画分内の分子鎖は、十分な回転、振動、および並進移動を行って、よりランダムな平衡構造へと引込まれる。巨視的レベルでは、フィルムは物理的に収縮する。膨張が観察される場合、通常は、大きい収縮に対して垂直な方向であり、ポアソン効果を示す。
【0005】
熱処理の結果としての寸法変化は、数パーセントにすることができるが、この値は、何倍にも増大させまたは何分の一かに減少させることができる。例えば、製造プロセスによって、フィルムの物理的緩和がその製造中に数パーセントだけ可能になる場合、その方向での残留収縮をほぼ完全に除去することができる。しかし、垂直TD緩和または「トウイン」が容易に行われる間、連続フィルムプロセスが有限線張力により作用する。その結果、商用フィルム製造技術の最も一般的な形では、MD緩和が一部でのみ実現され、フィルムの残留MD収縮は、再加熱すると明白になる。
【0006】
この解決策は、TDおよびMDの両方に歪み緩和をもたらすことのできる、二軸テンター技術によって提供される。しかし、この技術は高い資本投資を必要とし、データは、有限張力が依然として存在し、それにもかかわらず残留収縮が小さくなることを示している。制御された温度および張力または速度の条件下で緩和させる代替経路も、オンラインおよびオフライン後処理として開発されている。これらのテンター緩和後処理は、低い線張力でも作用するが、プロセス方向で測定されたポリエステルフィルムの熱収縮を、完全に排除することは依然としてできない。
【0007】
ポリエステルフィルムの残留収縮挙動を全て除去することになる、熱収縮の理想的な条件は、歪みの無いまたは応力の無いウェブの緩和を可能にしなければならない。これは、そのような条件下でポリエステルフィルムをアニールすることの利益を主張する文献(例えば、特許文献1参照)の開示によって確認されるが、この手順は、150から220℃の温度範囲で炉内で二軸フィルムの小さなシートを単にアニールするステップを含むものであった。このバッチプロセスの限度は、安定化したフィルムが、任意の下流の「ロールツーロール」加工に応じることができないことである。
【0008】
したがって現状は、熱収縮の究極の改善を実現するのに高コストが必要であり、実際、安定化したポリエステルフィルムの製造コストとその性質との間で、バランスがしばしば実現される。しかし、絶え間ない改善が、新たな用途および新たな市場にアクセスするための前提条件であることを思い起こせば、そのプロセス方向および横断方向の両方で超低熱収縮を有するポリエステルフィルムを製造する、低コストプロセスに関する明らかな要件がある。
【0009】
ポリエステルフィルムの寸法安定化をもたらすのにしばしば用いられる別の技術は、例えば文献に開示されている(例えば、特許文献2および3参照)、ロールアニーリングである。この手法では、ポリエステルフィルムのロールを周囲温度から第2の高温に加熱し、これらの条件下である時間保持し、最後に冷却する。リールの物理的品質、加熱および冷却の結果として確立された熱勾配、および処理中にロールに応力の局所領域を発生させることができる任意のその他の源には、注意を払わなければならない。しかし、この手順は、低温アニーリングについて主張するだけである。特に、ポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)よりも低い温度が指定され、このTgよりも15から20℃の間だけ低いことが最適である。この処理は、「Tg未満のアニーリング」(BTA)として知られており、後で、最終用途において直径の小さいスピンドルの周りに巻き付け保持するときに、ポリエステルフィルムの巻き癖カール(CSC)の特定の性質が改善されるように設計される。BTAプロセスは、低コストの製造後処理である。この処理は、しばしば、無秩序分子鎖の稠密化およびCSCに対する高い抵抗力をもたらすエンタルピー緩和と言われる、ポリマーの基本的な挙動を活用する。熱処理は、ポリマーフィルムがそのTgよりも高く再加熱される場合、可逆的である。これらの因子、即ちTgよりも低い最適な温度範囲、基本的な分子プロセスおよびその可逆性、および問題となっている巨視的性質および用途は、BTA技術を、収縮挙動の改善を目的とした熱安定化とは明らかに異なったものにする。
【0010】
【特許文献1】特開昭62−149415号公報
【特許文献2】米国特許第4141735号明細書
【特許文献3】米国特許第6071682号明細書
【特許文献4】米国特許第3443950号明細書
【特許文献5】米国特許第4198465号明細書
【特許文献6】米国特許第3708225号明細書
【特許文献7】米国特許第4177315号明細書
【特許文献8】米国特許第4309319号明細書
【特許文献9】米国特許第4436851号明細書
【特許文献10】米国特許第4455205号明細書
【特許文献11】米国特許第0142362号明細書
【特許文献12】国際公開第03/087247号パンフレット
【特許文献13】欧州特許第1418197号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第0429179号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第0408197号明細書
【非特許文献1】“PET Packaging Technology,” D.W.Brooks and G.A.Giles Editors (Sheffield Academic Press, 2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、任意選択で良好な光学特性も示す、低収縮ポリエステルフィルムと、その製造プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ガラス転移温度(Tg(℃))を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの巻取りロールを、Tgよりも高い温度Ta(℃)(但し、Tg<Ta≦Tg+100(℃))で、熱平衡後時間t(但し1時間≦t≦72時間)にわたりアニールし、冷却するプロセスを提供する。
【0013】
本発明はさらに、前記ポリエステルフィルムの収縮を改善する目的で、ガラス転移温度(Tg(℃))を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの巻取りロールを、Tgよりも高い温度Ta(℃)(但し、Tg<Ta≦Tg+100(℃))で、熱平衡後時間t(但し1時間≦t≦72時間)にわたりアニールし、冷却するプロセスの使用を提供する。
【0014】
本発明はさらに、ガラス転移温度(Tg(℃))を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの収縮を改善する方法であって、前記フィルムの巻取りロールをTgよりも高い温度Ta(℃)(但し、Tg<Ta≦Tg+100(℃))で、熱平衡後時間t(但し1時間≦t≦72時間)にわたりアニールするステップと、次いで冷却するステップとを含む方法を提供する。
【0015】
時間tは、1時間≦t≦48時間であることが好ましく、より典型的には1時間≦t24時間である。
【0016】
本発明のアニーリングプロセスは、巻取り状態にある場合、フィルムのロール上で実施される。
【0017】
本発明はさらに、180℃で30分間加熱した後に、その機械(またはプロセスもしくは長手方向)方向(MD)およびその横断方向(TD)の両方で、0.08%以下、より好ましくは0.05%以下、最も好ましくは0.03%以下の寸法変化を示す、二軸延伸ポリエステルフィルムの巻取りロールを提供する。前記寸法安定特性を有するフィルムの巻取りロールは、本明細書に記述されるロールアニーリングプロセスによって、即ちフィルムの巻取りロール上で実施されるアニーリングプロセスによって製造されたフィルムの、ロールアニールされた巻取りロールである。
【0018】
本発明は、ポリエステルフィルムに寸法安定性を与えるのに適切とはこれまで認識されなかった、物理的および熱的状態の組合せを活用する。本発明者等は、リールアニーリングの原理を開発し、それをポリエステルフィルムの熱収縮問題に利用することが可能であることを示した。BTAとは異なって、この処理は不可逆的であり、したがって、ポリエステルフィルムのTgよりも高い温度で、さらにアニーリング手順の場合より高い収縮試験温度でも、利益を示す。さらに、アニーリング処理は、従来の方法で製造されまたは既存の技術を使用して製造し安定化させたフィルムを首尾良く後処理できる点において、付加的である。したがって本発明者等はついに、小さな残留熱収縮を示す任意の製造されたポリエステルフィルムの性質を、改善することができる。本発明の利点は、その低コストにある。
【0019】
本発明は意外にも、ポリエステルフィルムがたとえ既に良好な熱寸法安定性(低熱収縮)を示すとしても、連続ロールの形を保持しながらポリエステルフィルムのTgよりも高くアニールすることによって、処理できることを見出した。さらに、得られたフィルムロールは、密着(粘着)がなく、さらに改善された熱収縮挙動を示し、それによって、電子および光電子の分野、および超低熱収縮が必要とされるその他の用途で利用するのに最も適したものになる。
【0020】
本発明は、支持ポリエステル基材上に1つまたは複数のコーティングを含む、二軸延伸複合フィルムのロールの処理を含む。高温アニーリングプロセスの欠点は、フィルム内に環式オリゴマーが生成され、このオリゴマーがフィルム表面に移行し、汚染する可能性があり、その結果、フィルムがかすみがかったものになる。本発明者等は、意外なことに、コーティングの存在、好ましくは下記においてハードコーティング組成物と呼ばれるものの存在により、巻取りロールの高温アニーリングによって誘発されたかすみのレベルが低下することを見出した。ハードコート組成物は、フィルムのアニール済みロールを巻き取りまた巻き解く際に、粘着(または密着)を低減しまたは回避するのに役立てることもできる。
【0021】
したがって、本発明はさらに、前記基材の片面または両面に1つまたは複数のコーティングを支持するポリエステル基材を含む、二軸延伸複合フィルムの巻取りロールであって、前記フィルムを180℃で30分間加熱した後に、そのMDおよびTDの両方で0.08%以下、好ましくは0.05%以下、最も好ましくは0.03%以下の寸法変化を示し、好ましくは1.5%以下のヘイズ値および/または少なくとも85%の全輝度透過率(TLT)を示す、巻取りロールを提供する。前記寸法安定特性を有する複合フィルムの巻取りロールは、本明細書に記述されるロールアニーリングプロセス、即ち、複合フィルムの巻取りロール上で実施されるアニーリングプロセスによって生成された、複合フィルムのロールアニール済み巻取りロールである。一実施形態において、コーティングは、ポリエステル基材の両面に存在する。
【0022】
したがって、低収縮と優れた光学特性(即ち、低ヘイズおよび/または高TLT)との組合せが必要とされる場合、本明細書に記述されるハードコートおよびアニール済み複合フィルムは、予期せぬ有利な解決策を提示する。ハードコートは、低収縮しか必要とされずかつヘイズが重要ではない用途での選択肢である。
【0023】
アニーリングプロセス
プロセス用機器は、そのサイズが実験室規模から工業規模に及ぶポリエステルフィルムの1つまたは複数のロールを収容する、適切な寸法のアニーリング炉を含む。炉は、内部空気温度の正確でプログラム可能な制御をもたらすことが可能な循環空気設計のものであることが好ましく、どのような場合でも、各ロールの表面のあらゆる点に、熱をむらなく均一に分布させる伝達が可能になる。アニーリング炉の運転温度範囲は、周囲温度から少なくともTg+60℃、より好ましくはTg+80℃、最も好ましくはTg+100℃であるべきであり、但しTgは、ポリエステルフィルム(または、コーティングが基材表面にある場合には、ポリエステル基材)のガラス転移を指す。
【0024】
処理されるフィルム材料
本明細書で使用されるポリエステルという用語は、その最も単純な形にありまたは化学的にかつ/もしくは物理的に修正が加えられた形の、ポリエステルホモポリマーを含む。具体的には、アニーリングプロセスによって処理される材料は、
(i)1種または複数のジオール;
(ii)1種または複数の芳香族ジカルボン酸;および
(iii)任意選択で、一般式Cn2n(COOH)2(式中、nは2から8である)の1種または複数の脂肪族ジカルボン酸
から得られたポリエステルまたはコポリエステルの層を含む、二軸延伸ポリマーフィルムであり、但し、芳香族ジカルボン酸は、(コ)ポリエステル中のジカルボン酸成分の総量に対して約80から約100モル%の量で、(コ)ポリエステル中に存在する。コポリエステルは、ランダム、交互、またはブロックコポリエステルである。
【0025】
フィルムの厚さは、好ましくは約12から約250μmであり、より好ましくは約12から約150μmであり、典型的には約25〜125μmの厚さである。
【0026】
ポリエステルは、前記ジカルボン酸またはその低級アルキル(炭素原子6個まで)ジエステルと1種または複数のジオールとの縮合によって、得ることが可能である。芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−、2,6−、または2,7−ナフタレンジカルボン酸から選択され、好ましくはテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸である。ジオールは、好ましくは脂肪族および脂環式グリコール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールから選択され、好ましくは脂肪族グリコールから選択される。好ましくは、コポリエステルは1種のグリコールしか含有せず、好ましくはエチレングリコールである。脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、またはセバシン酸でよい。好ましいホモポリエステルは、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはテレフタル酸とエチレングリコールとのポリエステルである。特に好ましいホモポリエステルは、ポリ(エチレンナフタレート)であり、特に、2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとのポリエステルである。
【0027】
ポリエステルの形成は、一般には約295℃までの温度で、縮合またはエステル交換により、知られている手法で都合良く行われる。
【0028】
好ましいホモポリエステル、PENのTgは、一般に、120℃であることが認められており、一方、その他の好ましいホモポリエステル、PETの場合、一般に80℃であることが認められている。コポリエステルは、組み込まれるコモノマーの性質に応じて、親ホモポリマーの場合よりも低くまたは高いTg値を示すことができる。ポリエステルから作製されたフィルムは、フィルムの結晶化度に応じて、ポリエステル原材料の場合よりもTg値を示してよい。このように、フィルムの結晶化度が上昇するにつれ、フィルムの非晶質領域内のポリエステル鎖は、その動きがより制限され、即ち、より高い温度でガラス転移が観察されることを意味する。この疑義を避けるために言うなら、本発明のプロセスのアニーリング温度(Ta)は、ポリエステル原材料ではなくポリエステルフィルムのTgに依存する。
【0029】
フィルムの形成は、当技術分野で周知の従来の技法により行ってよい。フィルムの形成は、以下に記述する手順に従って、押出し成形により行われることが都合よい。大まかに言えば、このプロセスは、溶融ポリマーの層を押出し成形するステップと、押出し物を急冷するステップと、急冷した押出し物を少なくとも一方向に延伸するステップとを含む。
【0030】
フィルムは、二軸延伸される。延伸は、延伸フィルムを製造する分野で知られている任意のプロセス、例えばチューブラまたはフラットフィルムプロセスによって行ってよい。二軸延伸は、機械的および物理的性質の満足のいく組合せを実現するために、フィルムの平面における2つの相互に垂直な方向に引っ張ることによって行われる。
【0031】
チューブラプロセスにおいて、同時二軸延伸は、熱可塑性ポリエステルチューブを押出し成形し、これを引き続き急冷し、再加熱し、次いで内部ガス圧により膨張させて横断延伸を誘発させ、長手方向の延伸が誘発するような速度で引き出すことにより行ってよい。
【0032】
好ましいフラットフィルムプロセスでは、フィルム形成ポリエステルは、スロットダイを通して押出し成形され、冷却された流延用ドラム上で素早く急冷し、それによってポリエステルが非晶質状態にまで確実に急冷されるようにする。次いで延伸は、急冷された押出し物を、ポリエステルのガラス転移温度よりも高い温度で少なくとも一方向に引き伸ばすことによって行う。一連の延伸は、平らで急冷された押出し物を、まず一方向に、通常は長手方向に引き伸ばし、即ちフィルム引き伸ばし機の順方向に引き伸ばし、次いで横断方向に引き伸ばすことによって行ってよい。押出し物の順方向の引き伸ばしは、一組の回転ロール上で、または2対のニップロール間で都合良く行われ、次いで横断方向の引き伸ばしは、テンター装置で行われる。引き伸ばしは一般に、延伸フィルムの寸法が、引き伸ばし方向またはそれぞれの引き伸ばし方向において、その当初の寸法の2から5倍、より好ましくは2.5から4.5倍になるように行われる。典型的には、引き伸ばしは、ポリエステルのTgよりも高い温度、好ましくはTgよりも約15℃高い温度で行われる。一方向での延伸しか必要とされない場合、より大きな延伸比(例えば、約8倍まで)を使用してよい。流れ方向および横断方向に均等に引き伸ばすことは、必ずしも必要ではないが、バランスのとれた性質が望まれる場合は好ましい。
【0033】
延伸フィルムは、ポリエステルの結晶化を誘発させるため、ポリエステルのガラス転移温度よりも高い温度で、しかしその溶融温度よりも低い温度で、寸法支持下でヒートセットすることにより、寸法を安定化させてもよく、また寸法を安定させることが好ましい。ヒートセット中、「トウイン」として知られる手順により、少量の寸法緩和を横断方向TDで行うことができる。トウインでは、2から4%程度の寸法収縮をもたらすことができるが、プロセス方向または流れ方向MDにおける同様の寸法緩和は、低い線張力が必要でありかつフィルムの制御および巻取りが問題となるので、実現するのが難しい。実際のヒートセット温度および時間は、フィルムの組成およびその所望の最終熱収縮に応じて変わることになるが、引裂き抵抗などのフィルムの靱性が実質的に低下するように選択すべきではない。これらの制約の範囲内で、約180から245℃のヒートセット温度が一般に望ましい。
【0034】
フィルムは、オンライン緩和段階の使用によってさらに安定化されてもよく、またそのように安定化されることが確かに好ましい。この追加のステップでは、フィルムを、ヒートセット段階の場合よりも低い温度で、かつ非常に低いMDおよびTD張力状態で加熱する。あるいは緩和処理は、オフラインで行うことができる。このように加工されたフィルムは、そのようなヒートセット後の緩和を行わずに製造された場合よりも、小さな熱収縮を示すことになる。
【0035】
フィルムは、ポリエステルフィルムの製造で従来用いられてきた、添加剤のいずれかを都合良く含有してよい。したがって、架橋剤、染料、顔料、ボイド形成剤、潤滑剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、UV吸収剤、熱安定剤、難燃剤および火炎阻害剤、ブロッキング防止剤、表面活性剤、スリップ助剤、蛍光増白剤、光沢向上剤、分解促進剤、粘度改良剤、および分散安定剤などの薬剤を、必要に応じて組み込むことができる。一実施形態では、添加剤は、フィルムからその表面に移行しないことで知られているものから選択され、したがって添加剤は、表面ヘイズを生成することによってアニーリング中にフィルムの表面を汚染するようなことがなく、したがって、架橋剤、顔料、およびボイド形成剤などの薬剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、UV吸収剤、熱安定剤、難燃剤および火炎阻害剤であって、固体であるもの、またはポリエステルに共有結合しているもの、最後に、安定な非移行型蛍光増白剤、光沢向上剤、分解促進剤、粘度改良剤、および分散安定剤である薬剤を、必要に応じて組み込むことができる。フィルムは、製造中の取扱いおよび巻取り可能性を改善することができる粒子状充填剤を含んでよい。粒子状充填剤は、例えば、粒子状無機充填剤(例えば、アルミナ、シリカ、およびチタニアなどのボイド形成または非ボイド形成金属またはメタロイド酸化物、焼成白土、カルシウムおよびバリウムの炭酸塩および硫酸塩などのアルカリ金属塩)、または不相溶性樹脂充填剤(例えば、ポリアミドおよびオレフィンポリマー、特に、その分子内に最大6個の炭素原子を含有するモノ−α−オレフィンのホモまたはコポリマー)、または2種以上のそのような充填剤の混合物でよい。
【0036】
層の組成物の成分は、従来の手法で一緒に混合してよい。例えば、フィルム形成ポリマーが得られるモノマー反応物質と混合することによって、あるいはこの成分は、回転させまたは乾式ブレンドすることにより、または押出し機で配合することにより、ポリエステルと混合し、その後、冷却し、通常は顆粒またはチップに粉砕してよい。マスタバッチ技術を用いてもよい。
【0037】
好ましい実施形態では、フィルムは光学的に透明であり、標準的なASTM D 1003により測定したときに、好ましくは散乱可視光の%(ヘイズ)が<10%、好ましくは<6%、より好ましくは<3.5%であり、特に<1.5%である。この実施形態では、充填剤は、典型的には少量でのみ存在し、一般には所与の層の0.5重量%を超えず、好ましくは0.2重量%未満である。
【0038】
代替の実施形態では、フィルムは不透明であり、高度に充填されており、好ましくは0.1から2.0の範囲の透過光学密度(TOD)(Sakura濃度計;タイプPDA 65;透過モード)、より好ましくは0.2から1.5、より好ましくは0.25から1.25、より好ましくは0.35から0.75、特に0.45から0.65を示す。フィルムは、有効量の不透明剤をポリマーブレンドに組み込むことによって、都合良く不透明になる。適切な不透明剤には、前述のような、不相溶性樹脂充填剤、粒子状無機充填剤、または2種以上のそのような充填剤の混合物が含まれる。所与の層に存在する充填剤の量は、層ポリマーの重量に対して好ましくは1重量%から30重量%、より好ましくは3重量%から20重量%、具体的には4重量%から15重量%、特に5重量%から10重量%の範囲内である。不透明フィルムの表面は、本明細書に記述されるように測定された、60から120、より好ましくは80から110、具体的には90から105、特に95から100単位の白色度指数を示す。
【0039】
ポリエステルフィルムの片面または両面には、1つまたは複数のさらなるポリマー層またはコーティング材料を配置することができる。任意のコーティングは、インラインで行うことが好ましい。
【0040】
好ましい実施形態において、ポリエステル基材は、その片面または両面に、ハードコートまたは引っ掻き抵抗層と、任意選択でフィルムとハードコートとの間のプライマー層(文献(例えば、特許文献4参照)に開示されているようなもの)とを有する。ハードコート層は、例えば、サンプルのヘイズ%がASTM法D−1003によって決定されるTaber摩耗試験機による試験(ASTM法D−1044)によって判断されるように、ある程度の機械的保護をフィルムにもたらす。Taber摩耗試験は、標準的な処理条件下でフィルムのヘイズに40〜50%の増大が見られるように、典型的には保護されていないフィルムの表面に制御された損傷を引き起こすことになる。ハードコートの使用により、同様の条件下でフィルム表面が劣化しにくくなり、その結果、測定された材料のヘイズが好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下増大する。ハードコート層の別の機能は、自然な表面粗さをその組成物中に存在する無機充填剤粒子に応じて変化させてもよい基材フィルムに、フラットな平坦化された表面を提供することでもある。フィルム表面に平坦化性も与える適切なハードコート層は、下記の3つの種類、即ち有機、有機/無機の混成、および主に無機コートである3つの種類の1つに、広く包含される。
【0041】
有機ハードおよび平坦化コーティングは、典型的には(i)光開始剤、(ii)低分子量反応性希釈剤(例えば、モノマーアクリレート)、(iii)不飽和オリゴマー(例えばアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、またはポリエステルアクリレート)、および(iv)溶媒を含む。本明細書で使用される「低分子量」という用語は、重合性モノマー種を指す。「反応性」という用語は、モノマー種の重合性を示す。そのような有機コーティングは、光分解経路によって開始されるフリーラジカル反応によって、硬化することができる。特定の配合物は、所望の最終的な性質に応じて変えてもよい。一実施形態では、コーティング組成物は、モノマーおよびオリゴマーアクリレート(好ましくはメチルメタクリレートおよびエチルアクリレートを含む)を溶媒(メチルエチルケトンなど)に混合したUV硬化性混合物を含み、典型的にはコーティング組成物は、この組成物の全重量の約20から30重量%の固形分としてアクリレートを含み、さらに、少量(例えば、固形分を約1重量%)の光開始剤(例えば、Irgacure(商標)2959;Ciba)を含む。
【0042】
有機/無機混成コーティングは、直前に記述されたものと同様の成分を含有することができる有機ポリマーマトリックス全体に分布された、無機粒子を含む。コーティングは、熱によって、または光分解経路により開始されるフリーラジカル反応によって硬化し、光開始剤を存在させることは任意である。しばしばシリカまたは金属酸化物粒子である無機相は、いくつかの戦略によって重合性有機マトリックスに分散される。一実施形態では、有機/無機混成コーティングは、シリカおよび金属酸化物から好ましく選択された無機粒子;低分子量反応性成分(例えばモノマーアクリレート)および/または不飽和オリゴマー成分(例えばアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、およびポリエステルアクリレート)を含む有機成分;および溶媒を含み、任意選択で光開始剤をさらに含む。別の実施形態では、熱硬化可能な混成コーティングは、エポキシ樹脂を、好ましくはこのコーティング組成物(好ましくは、アルコール溶液中に5から約20重量%の固形分を含む)の固形分の少なくとも約10重量%(好ましくは少なくとも約20%、かつ好ましくは約75%以下)の濃度で存在する無機(好ましくはシリカ)粒子と組み合わせて含む。別の実施形態において、UV硬化性混成コーティングは、モノマーアクリレート(典型的には多官能性アクリレート)を、溶媒(メチルエチルケトンなど)中で無機(好ましくはシリカ)粒子と組み合わせて含み、典型的にはこのコーティング組成物は、コーティング組成物の全重量の固形分の約5から50重量%でアクリレートおよびシリカを含み、典型的には少量の光開始剤(例えば、固形分の約1重量%)をさらに含む。多官能性モノマーアクリレートは当技術分野で知られており、その例には、ジペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが含まれる。
【0043】
主に無機のハードコートは、ポリシロキサンなどの、主に無機の重合性マトリックス中に含有される無機粒子を含む。このタイプのハードコートは、熱により硬化する。
【0044】
ハードコートおよび平坦化層の適切な例は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている文献(例えば、特許文献5、6、7、8、9、10、11、12、および13参照)に開示されている。
【0045】
存在する場合には、コーティングは、好ましくはアニーリングプロセスの温度よりも高いTgを有するべきである。
【0046】
一実施形態において、ハードコートは、
(a)シリカを約10から約70重量%(好ましくは約20から60重量%)、および一般式RSi(OH)3の部分的に重合した有機シラノール(式中、Rは、メチルと、ビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリルオキシプロピルからなる群から選択された約40%までの基から選択される)を約90から約30重量%含む固形分を、約5から約50重量%と、
(b)水を約10から約90重量%および低級脂肪族アルコールを約90から約10重量%含む溶媒を約95から約50重量%と
を含むコーティング成分から得られ、
特に、コーティング組成物は、約3.0から約8.0、好ましくは約3.0から約6.5、好ましくは6.2未満、好ましくは約6.0以下のpH、かつ好ましくは少なくとも3.5、好ましくは少なくとも4.0のpHを有する。
【0047】
好ましいコーティング組成物のシリカ成分は、例えば、ポリケイ酸を形成するためのオルトケイ酸テトラエチルの加水分解によって、得ることができる。加水分解は、例えば脂肪族アルコールおよび酸の添加による従来の手順を使用して、実施することができる。あるいは、本発明のコーティング組成物で使用されるシリカは、コロイド状シリカにすることができる。コロイド状シリカは、一般に、約5〜25nm、好ましくは約7〜15nmの粒度を有するべきである。本発明で使用することができる典型的なコロイド状シリカには、「Ludox SM」、「Ludox HS−30」、および「Ludox LS」(Grace Davison)分散体として市販されているものが含まれる。有機シラノール成分は、一般式RSi(OH)3を有する。R基の少なくとも約60%、好ましくはこれらの基の80%から100%はメチルである。R基の約40%までは、ビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピルおよびγ−メタクリルオキシプロピルから選択された、高級アルキルまたはアリールにすることができる。溶媒成分は、一般に、水と、1種または複数の低級脂肪族アルコールとの混合物を含む。水は一般に、溶媒の10から90重量%を構成し、一方で低級脂肪族アルコールは、相補的に溶媒の90から10重量%を構成する。脂肪族アルコールは一般に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、および第3級ブタノールなど、1から4個の炭素原子を有するものである。
【0048】
他の実施形態において、コーティング組成物は、架橋性有機ポリマー、例えばポリエチレンイミン(PEI)、ポリエステル、またはポリビニルアルコール(PVOH)と、架橋剤(Cymel(商標)385、または以下に記述されるものなど)とを、溶媒(典型的には水性溶媒)中に含む。この実施形態では、コーティング組成物は、PEIを含むことが好ましい(好ましくは、600000から900000の範囲内の分子量(Mw)を有する)。
【0049】
コーティング組成物は、連続的ならびに浸漬コーティング手順を含めた、従来のコーティング技法を使用して付着させることができる。コーティングは、一般に、約1から約20ミクロンの乾燥厚さ、好ましくは約2から10ミクロン、特に約3から約10ミクロンの乾燥厚さで付着される。コーティング組成物は、フィルム製造とは全く異なるプロセスステップとして「オフライン」で、またはフィルム製造プロセスの続きとして「インライン」で付着させることができる。コーティング組成物は、基材に付着させた後、約20から約200℃の温度で、好ましくは約20から約150℃の温度で硬化することができる。周囲温度の20℃では、数日の硬化時間を要するが、150℃という高温では、コーティングを数秒で硬化することになる。
【0050】
必要に応じて、フィルムの露出面を化学的または物理的な表面改質処理にかけて、表面と、その後に付着される層との間の結合を、改善することができる。好ましい処理は、その処理が簡単で有効であることから、フィルムの露出面を、コロナ放電を伴う高電圧電気ストレスにかけることである。コロナ放電による好ましい処理は、好ましくは1から100kVの電位で1から20kWの出力を有する高周波数高電圧発生器を使用する、従来の装置によって、大気圧の空気中で行うことができる。放電は、フィルムを放電ステーションの誘電体支持ローラに、好ましくは分当たり1.0から500mの線速度で通すことによって、従来都合良く実現される。放電電極は、移動するフィルム表面から0.1から10.0mmに位置決めしてもよい。
【0051】
上述のように、基材と前述のコーティング組成物との接着を改善するために、ポリエステル基材には、前述のコーティングを付着させる前にプライマー層を被覆してもよい。プライマー層は、ポリエステルおよびアクリル樹脂を含めた、当技術分野で知られている任意の適切な接着促進ポリマー組成物でよい。プライマー組成物は、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂との混合物でもよい。アクリル樹脂は、任意選択で、オキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を含んでよい。プライマー組成物のポリマーは、好ましくは水溶性または水分散性である。
【0052】
ポリエステルプライマー成分には、下記のジカルボン酸およびジオールから得られたものが含まれる。適切な二酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フタル酸無水物、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、および5−ナトリウムスルホイソフタル酸が含まれる。2種以上のジカルボン酸成分を使用するコポリエステルが好ましい。ポリエステルは、任意選択で、マレイン酸、またはイタコン酸などの少量の不飽和二酸成分、またはp−ヒドロキシ安息香酸などの少量のヒドロキシカルボン酸成分を含有してよい。適切なジオールには、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、およびポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが含まれる。ポリエステルのガラス転移点は、好ましくは40から100℃であり、さらに好ましくは60から80℃である。適切なポリエステルには、PETまたはPENと、比較的少量の1種または複数のその他のジカルボン酸コモノマー、特に、イソフタル酸、ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族二酸、および任意選択で比較的少量の、ジエチレングリコールなどのエチレングリコール以外の1種または複数のグリコールとのコポリエステルが含まれる。
【0053】
一実施形態において、プライマー層は、アクリレートまたはメタクリレートポリマー樹脂を含む。アクリル樹脂は、1種または複数のその他のコモノマーを含んでよい。適切なコモノマーには、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(但しアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、またはシクロヘキシルなどが好ましい);アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、およびメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ含有モノマー;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、およびアリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸、およびこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、または第四級アンモニウム塩など)などの、カルボキシル基またはその塩含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリレート(但しアルキル基は、上述のものから選択されることが好ましい)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基は、好ましくはメトキシ、エトキシ、ブトキシ、またはイソブトキシなどである)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、およびN−フェニルメタクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;無水マレイン酸および無水イタコン酸などの酸無水物;イソシアン酸ビニル、イソシアン酸アリル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、モノアルキルマレエート、モノアルキルフマレート、モノアルキルイタコネート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、およびブタジエンが含まれる。好ましい実施形態では、アクリル樹脂は、オキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を含有する1種または複数のモノマーと共重合する。オキサゾリン基含有モノマーには、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、および2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンが含まれる。1種または複数のコモノマーを使用してもよい。2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。ポリアルキレンオキシド鎖含有モノマーには、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル部分にポリアルキレンオキシドを添加することによって得られるモノマーが含まれる。ポリアルキレンオキシド鎖には、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびポリブチレンオキシドが含まれる。ポリアルキレンオキシド鎖の反復単位は、3から100であることが好ましい。
【0054】
プライマー組成物が、ポリエステルとアクリル成分、特にオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を含むアクリル樹脂との混合物を含む場合、ポリエステルの含量は、5から95重量%、好ましくは50から90重量%であり、アクリル樹脂の含量は、5から90重量%、好ましくは10から50重量%であることが好ましい。
【0055】
その他の適切なアクリル樹脂には、
(i)(a)アルキルアクリレートが35から40モル%、(b)アルキルメタクリレートが35から40%、(c)イタコン酸などの遊離カルボキシル基を含有するコモノマーが10から15モル%、および(d)p−スチレンスルホン酸などの芳香族スルホン酸および/またはその塩が15から20モル%のコポリマーであって、その例は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる文献(例えば、特許文献14参照)に開示されるように、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/イタコン酸/p−スチレンスルホン酸および/またはその塩を、37.5/37.5/10/15モル%の比で含むものであるコポリマー;および
(ii)アクリルおよび/またはメタクリル酸ポリマー樹脂であって、その例は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる文献(例えば、特許文献15参照)に開示されるように、アクリル酸エチルを約35から60モル%、メタクリル酸メチルを約30から55モル%、およびメタクリルアミドを約2から20モル%を含むポリマーである樹脂
が含まれる。
【0056】
プライマーまたは接着層は、基剤との接着を改善する架橋剤を含んでもよく、内部架橋も可能であるべきである。適切な架橋剤は、任意選択で、メラミンとホルムアルデヒドとのアルコキシル化縮合生成物を含む。プライマーまたは接着層は、架橋剤の架橋を促進させるため、硫酸アンモニウムなどの架橋触媒を含んでもよい。その他の適切な架橋剤および触媒は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる文献(例えば、特許文献14参照)に開示されている。
【0057】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる文献(例えば、特許文献4参照)に開示されているプライマーは、上述のハードコートと関連付けて使用するのに特に適している。
【0058】
基材へのプライマー層のコーティングは、インラインまたはオフラインで行うことができるが、好ましくは「インライン」で行われ、好ましくは二軸延伸操作の順方向と横方向への引き伸ばしの間に行われる。
【0059】
処理されるロール
本発明によりさらに処理することができるフィルムのロールは、好ましくはその長さが少なくとも10mであり、好ましくは少なくとも20m、より好ましくは少なくとも100m、最も好ましくは少なくとも500mである。またフィルムは、その幅が少なくとも250mm、好ましくは少なくとも370mm、好ましくは少なくとも500mm、好ましくは少なくとも1000mm、最も好ましくは少なくともまたは約1500mmの幅であるべきである。
【0060】
フィルムロールの収集中に加えられる巻取り張力は、フィルムを何重にも巻き取ったときの、内側の芯から外側の層に至るフィルイム間の空隙が、一定に維持されるようにするべきである。何重にも巻いた層の間の空隙の寸法は、2μmよりも大きく、好ましくは10μmよりも大きく、最も好ましくは15μmよりも大きいものであるべきである。実現することができる空隙の寸法は、フィルムの厚さおよびその均一性も含めたいくつかの要因に左右されることが理解される。全体を通して一貫した物理的性質を有するロールを作製できることを確実にするために、行うことのできる検討事項の数を単に強調するために、刊行物(例えば、非特許文献1参照)を参照されたい。
【0061】
この研究においてフィルムのロールが作製された条件の例は、厚さ125μm、巻取り速度60m/分、巻取り張力300N/m幅、および巻取り器の振幅距離が少なくとも100mmであるフィルムに関する。これらの条件は、例示として純粋に提供されるものであり、本出願の範囲をどのようにも限定するものではない。
【0062】
フィルムの縁部には、ロール中の後続層の分離と、適切な寸法の空隙とが確立できるように、フィルム表面の物理的なエンボス加工であるローレット切りをすることが、特に有利である。空隙の寸法は、その自然な熱膨張および収縮と不可逆的な熱収縮の結果生ずるフィルムの寸法変化に順応するために、Tgよりも高い温度でのアニーリング処理に極めて重要である。ローレット切り処理の別の利点は、取扱い中のロール巻取りの望ましくない相対的な動きを防止することである。テレスコーピングとして知られるこの挙動は、低張力下で巻き取られかつその層の間に大きな空隙を含むロールにおいて、容易に生ずる。
【0063】
インターリーブフィルムの使用は、フィルムのロール、特に平坦化フィルムの巻取り中およびその後のTgよりも高い温度でのアニーリング中に、利点をもたらすこともできる。インターリーブは、第2の長さのフィルム、または主要フィルムと同時に巻き取られる材料を含む。インターリーブによって、主要フィルムの保護および支持が行われ、それと同時に、ロールに巻き取られた各層同士の物理的分離が行われる。
【0064】
Tgを超えるアニーリングのための熱プログラム
そのTgよりも高いアニーリングによってポリエステルフィルムの寸法安定性を高めるために、フィルムのロールを、加熱、等温状態、および冷却のステップを含む少なくとも1回のサイクルにかけなければならない。各サイクル内での加熱および冷却の速度は、ロールの層同士の温度勾配を最小限に抑えるのに、また不均等な膨張、縮小、収縮に起因する歪みを最小限に抑えるのに、極めて重要である。フィルムロールの各層のそれぞれは、時間(t)にわたるアニーリング温度(Ta)を経験すべきである。適切にプログラムされた、炉内の循環空気の温度変化速度は、フィルムロールの長さ、フィルムの厚さ、およびロール上のそれぞれの層の間の空隙などの要因に左右されることになる。加熱および冷却の最適な速度は、実験または計算によって得ることができ、理想的には、そのTg付近でのフィルイムの自然な挙動の変化、即ち熱可逆的性質であるその熱膨張係数に支配される挙動から、その不可逆的熱収縮によってさらに影響を受ける挙動まで、考慮することになる。厚さ125μm、長さ1000m、幅1mのフィルムのロールについて、典型的な熱サイクルは、分当たり0.03℃超で周囲温度から(Tg)まで、0.01℃超/分で(Tg)からアニーリング温度(Ta)までを含むと考えられる。サイクルは、72時間以下にわたりTaでの等温期間が継続し、その後、0.02℃超/分でTaからTgまで冷却し、次いで0.03℃超/分でTgから周囲温度に冷却されると考えられる。
【0065】
歪みの危険性をさらに最小限に抑えるために、2回以上の熱サイクルを行ってもよく、その場合、連続する処理のそれぞれは、次第に高くなるアニーリング温度を利用する。これは、冷却後および連続するサイクルの間にフィルムが巻き戻す場合、有利である。巻き戻しは、好ましくは逆方向の巻取りであり、この場合、フィルムの流れ方向(MD)の任意の自然なカールは、巻き戻し方向により阻止される。
【0066】
好ましくは、上昇および冷却段階中での連続する層同士の温度差は、0.4℃以下であり、好ましくは0.3℃以下、好ましくは0.2℃以下、好ましくは0.1℃以下、好ましくは0.06℃以下である。好ましい熱サイクルの例として、ロール上のフィルムの連続する層同士の温度差が0.06℃よりも小さい値で確実に維持されるように、下記の条件を計算した。この後者の限界は、隣接するフィルム巻取り部間の差次的膨張または収縮あるいは不可逆的収縮が、層の間に局在化した圧力およびロールの物理的歪みを確実にもたらさないように選択した。
【0067】
下記の表AおよびBは、本発明のプロセスによる、PENフィルムの熱サイクルに関して計算された温度プロファイルの例を示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
一実施形態では、本発明は、ガラス転移温度(Tg(℃))を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの巻取りロールが、Tgよりも高い温度Ta(℃)(但し、Tg<Ta≦Tg+100(℃))で熱平衡後に時間tにわたってアニールされ(但し、1時間≦t≦72時間)、冷却されるプロセスを提供し、但し、
(i)アニールされるポリエステルフィルムが、99℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルムであり、Taが100または149℃である場合、tは1、2、4、または8時間ではなく、
(ii)アニールされるポリエステルフィルムが、104℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルムであり、Taが116または149℃である場合、tは8または24時間ではなく、
(iii)アニールされるポリエステルフィルムが、109℃のTgを有するポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)フィルムであり、Taが120または149℃である場合、tは24時間ではないことを条件とし、より好ましくは、
(i−a)アニールされるポリエステルフィルムが、99℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルムである場合、Taは100または149℃ではなく、
(ii−a)アニールされるポリエステルフィルムが、104℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルムである場合、Taは116または149℃ではなく、
(iii−a)アニールされるポリエステルフィルムが、109℃のTgを有するポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)フィルムである場合、Taは120または149℃ではないことを条件とし、最も好ましくは、
(i−b)アニールされるポリエステルフィルムが、99℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルムではなく、
(ii−b)アニールされるポリエステルフィルムが、104℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルムではなく、
(iii−b)アニールされるポリエステルフィルムが、109℃のTgを有するポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)フィルムではないことを条件とし、
特に、前記ポリエステルフィルムは、その表面にゼラチン層を持たないことを条件とする。
【0071】
他の実施形態では、本発明は、二軸延伸ポリエステルフィルムの巻取りロールであって、前記フィルムが180℃で30分間加熱された後に、そのMDおよびTDの両方で0.08%以下、より好ましくは0.05%以下、最も好ましくは0.03%以下の寸法変化を示すロールをさらに提供し、但し第1の前提として、前記ポリエステルフィルムはその表面にゼラチン層を持たず、一実施形態では被覆されておらず、かつ/または第2の前提として、ポリエステルフィルムは、
(i)99℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルム、特に、100または149℃の温度Taで、特に1、2、4、または8時間アニールされたもの、
(ii)104℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルム、特に、116または149℃の温度Taで、特に8または24時間アニールされたもの、および
(iii)109℃のTgを有するポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)フィルム、特に、120または149℃の温度Taで、特に24時間アニールされたもの
以外のものであり、
前記Tgの値は、前記アニーリングの前に測定され、
本発明はさらに、前記二軸延伸ポリエステルフィルム自体を提供する。
【0072】
他の実施形態では、本発明はさらに、ポリエステル基材の片面または両面に1つまたは複数のコーティングを支持するポリエステル基材を含む、二軸延伸複合フィルムの巻取りロールであって、前記フィルムが180℃で30分間加熱された後に、そのMDおよびそのTDの両方で0.08%以下、より好ましくは0.05%以下、最も好ましくは0.03%以下の寸法変化を示し、好ましくは1.5%以下のヘイズ値および少なくとも85%の全輝度透過率(TLT)も示すロールを提供し、
第1の前提として、前記コーティングはゼラチン層ではなく、かつ/または第2の前提として、ポリエステルフィルムは、
(i)99℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルム、特に、100または149℃の温度Taで、特に1、2、4、または8時間アニールされたもの、
(ii)104℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルム、特に、116または149℃の温度Taで、特に8または24時間アニールされたもの、および
(iii)109℃のTgを有するポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)フィルム、特に、120または149℃の温度Taで、特に24時間アニールされたもの
以外のものであり、
前記Tg値は前記アニーリングの前に測定され、
本発明はさらに、前記二軸延伸組成物フィルム自体を提供する。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明は、二軸延伸ポリ(エチレンナフタレート)フィルムの巻取りロールであって、前記フィルムが180℃で30分間加熱された後に、そのMDおよびそのTDで0.08%以下、より好ましくは0.05%以下、最も好ましくは0.03%以下の寸法変化を示し、
任意選択で、前記ポリ(エチレンナフタレート)フィルムが前記フィルムの片面または両面に1つまたは複数のコーティングを支持し、前記ポリ(エチレンナフタレート)フィルムおよび前記コーティングを含む複合体構造が、好ましくは1.5%以下のヘイズ値および少なくとも85%の全輝度透過率(TLT)も示し、
特に、前記コーティングはゼラチン層以外のものであるロールを提供し、
また本発明は、前記二軸延伸フィルム自体をさらに提供する。
【0074】
コーティングされ、その後アニールされた本発明のフィルムは、標準的なASTM D 1003により測定したときに、<10%、好ましくは<6%、より好ましくは<3.5%、特に<1.5%の散乱可視光(ヘイズ)%を有することが好ましい。
【0075】
本発明では、本明細書に記述される二軸延伸ポリエステルフィルム(または、そのロールアニール済み巻取りロール)の寸法安定特性は、(a)コーティングされていない二軸延伸ポリエステルフィルム(または、そのロールアニール済み巻取りロール)、または(b)本質的に、ポリエステル基材、この基材の片面または両面にある任意選択のプライマー層、および任意選択でプライマー被覆した基材の片面または両面にあるコーティング層からなる二軸延伸複合フィルム(または、そのロールアニール済み巻取りロール)を指し、前記コーティング層は、上述のものから選択され、好ましくは上述のハードコート平坦化組成物から選択され、より好ましくは、
(i)好ましくはアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、およびポリエステルアクリレートから選択された低分子量反応性希釈剤;溶媒;および光開始剤を含む有機コーティング、
(ii)好ましくはシリカおよび金属酸化物から選択された無機粒子;および低分子量反応性成分(例えばモノマーアクリレートから選択されたもの)および/または不飽和オリゴマー成分(好ましくは、アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、およびポリエステルアクリレートから選択されたもの)を含む有機成分;および溶媒、および任意選択で光開始剤をさらに含む有機/無機混成コーティング、および
(iii)好ましくはポリシロキサンから選択された、重合性で、主に無機のマトリックスに含有される無機粒子を含む、大部分を占める無機ハードコート
から選択され、前記コーティング層は、好ましくはその乾燥厚さが1から20ミクロンであることが理解されよう。
【0076】
特性測定
下記の手法を使用して、本明細書に記述されるプロセスの結果変化する、フィルム特性を特徴付けた。
(i)熱収縮は、フィルムの流れ方向および横断方向に対して特定の方向に切断され、かつ目視測定用にマークが付された、寸法が200mm×10mmのフィルムのサンプルについて評価した。サンプルのより長いほうの寸法(即ち、200mm寸法)は、収縮が試験されるフィルム方向に対応し、即ち、流れ方向の収縮を評価する方向に対応し、試験サンプルの200mm寸法は、フィルムの流れ方向に延伸される。試験片を所定温度に加熱し、30分間保持した後、室温に冷却し、その寸法を手作業で再び測定した。熱収縮を計算し、当初の長さのパーセンテージとして表した。この方法を使用することにより、180および200℃での熱収縮が測定された。
(ii)フィルムのサンプルをその平らな面に関して試験する場合、物理的なカールがしばしば示される。これは、そのプロセス履歴から、または永久的な物理的歪みの下で第2のより遅いクリーププロセスを通して生ずる可能性がある。フィルムのカールは、試験片の縁部またはコーナー部が隆起する、平らな面からの「浮き上がり」または高さの簡単な物理測定によって、評価することができる。このように、カールは、寸法が100mm×10mmのフィルムのサンプルに関して測定し、親ロールに対して特定の方向に(即ち、100mmの寸法が、測定が望まれるフィルム方向に対応するように)切断し、これを平らな水平面上に置いた。浮き上がりを各コーナー部に関して測定し、平均を計算した。
(iii)十分に低いレベルの添加剤、顔料、ボイド、またはその他の不透明にする可能性がある物質を含有する、本質的に透明なフィルムサンプルに関し、フィルムの透明度を評価した。これは、ASTM D−1003−61により、Gardner XL 211視程計を使用して、フィルムの全厚を通る全輝度透過率(TLT)およびヘイズ(散乱した透過可視光%)を測定することによって実現された。
(iv)ポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量計(DSC)技法を使用して測定した。測定は、インジウム標準物質を使用して較正した、TA Instruments Q100 DSCシステムを使用して行った。フィルムのサンプルを、周囲温度よりも低い温度(約−20℃)から300℃に加熱し、最終的な温度の値を、20°K/分の加熱速度で報告した。Tgを、本明細書に記述される本発明のアニーリングプロセスにかける前に、二軸延伸ポリエステルフィルムに関して測定したが、疑義を避けるために言うなら、このTgの値を使用して、プロセスのアニーリング温度(Ta)を決定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
本発明を、下記の実施例によりさらに例示する。これらの実施例は、上述の本発明を限定するものではない。詳細に関する変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0078】
(実施例)
(比較例1)
PENを含むポリマー組成物を押し出し、高温の回転する磨きドラム上に流延した。次いでフィルムを順方向引出しユニットに送り、一連の温度制御ローラ上で、押出し方向に、その当初の寸法の約3.1倍に延伸した。引出し温度は約130℃であった。次いでフィルムを、温度135℃のテンター炉に通し、そこでフィルムを、その当初の寸法の約3.4倍に横方向に延伸した。次いで二軸延伸フィルムを、従来の手段によって235℃までの温度でヒートセットし、その後、冷却し、リールに巻き取った。全厚は125μmであった。次いでヒートセット二軸延伸フィルムの巻き解き、次いでこのフィルムを、その最高温度が190℃であるもう一組の炉に通過させることよるロールツーロールプロセスで、さらに熱安定化させた。フィルムは、その縁部が支持されておらず、低い線張力下で炉内に移送され、それによって、さらに緩和され安定化された。
【0079】
(参考例1〜9)
比較例1の手順を繰り返し、そのプロセスによって得られた1枚のフィルムを、循環空気炉内でアニーリングすることによってさらに処理した。これらの条件を、180℃で30分間試験した後の寸法変化(収縮)および光学特性(ヘイズおよびTLT)と共に、表1にまとめた。
【0080】
【表3】

【0081】
アニーリング温度を上昇させることにより、その後の試験中に処理されたフィルムの残留寸法変化または収縮がより低下したことが明らかである。表1のデータでは、寸法安定性の最も著しい改善は、アニーリングプロセスの温度がPENポリエステルフィルム出発材料のTg(約120℃)よりも高い場合に観察された(参考例6から9)ことを実証している。当技術分野では、アニールされたフィルムの収縮を0%の値または0%に近い値で実現するために、アニーリングプロセスを、その温度で材料に加えられるあらゆる張力が存在しない状態で実施しなければならないことが知られている。巻取りによってアニール済みフィルムが収集される連続緩和プロセスでは、プロセス全体を通してのウェブの横向きの逸れまたはトラッキングの問題を抑制するために、また最終的な巻取りステップを作動させるために、有限線張力が常に存在することになる。したがって、工業規模の連続緩和プロセスは、アニール済みフィルムに有限残留収縮が常に生ずるという欠点を抱えている。比較例1は、連続アニーリングプロセスのオフライン熱緩和にもかかわらず、180℃に再加熱した後に測定可能な収縮がさらに示されるような場合を表す。これとは対照的に、参考例8および9に関する結果は、これらのフィルムのアニーリングサイクル中にはフィルムに張力が存在しないことを実証している。
【0082】
表1は、フィルムサンプルのヘイズ特性、および熱アニーリングに対する感受性についても強調する。各サンプルで発生するヘイズは、環状オリゴマーの結晶によって引き起こされることがわかっている。フィルムの大部分に存在するオリゴマーは、表面に拡散し、そこで昇華し結晶化する。このプロセスは高温で増強され、ヘイズは135℃超で著しくなることが、データから明らかである。多くの適用例では、この表面堆積によって性能が損なわれ、フィルムの魅力が制限されると考えられる。したがって、フィルム表面を清浄にするのに一般に使用される技法は、高温でアニールされたフィルムを使用可能にするために、用いる必要があると考えられる。
【0083】
アニーリング中のオリゴマー材料の表面堆積に対処する、別の選択肢とは、フィルムの大部分からオリゴマーが移動するのを防ぐことである。高寸法安定性であるという性質、したがって本発明のアニーリングプロセスが意図される主な適用例は、電子工学的および光学的なビジネスにあるので、フィルムは通常、コーティングおよび追加の機能層を支持することになる。したがって、コーティングの適切な選択によって2つの機能を発揮することができ、即ち、最終製品の使用に関連する機能、およびオリゴマー堆積に対する表面の保護を発揮できる。
【0084】
(比較例2)
押出し方向(MD)に適用される延伸比を3.3に増大させたこと以外、比較例1の手順を繰り返し、ヒートセット段階中に、ウェブの横断寸法は4%減少した。また製造中に、その後に続くより厚いコーティングとの接着を促進させるため、フィルムの両面をプライマーコーティングで処理した。次いで、二軸延伸し、ヒートセットし、表面をプライマー被覆し、オフラインで安定化したフィルムの巻きを解き、その両面を、硬質で滑らかな仕上がりに硬化するよう設計された材料によるコーティングで改質し、再び加熱し、冷却し、巻き戻した。コーティングは、前述の無機ハードコートタイプのものであり、文献(例えば、特許文献12参照)に開示されている。これは、下記のステップにより付着させる前に調製した。
(i)メチルトリメトキシシラン(Osi Specialitiesから得られた)517cm3を、室温で脱塩水1034cm3に添加し、24時間撹拌した。
(ii)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Aldrich Chemical Companyから得られた)54cm3を、室温で脱塩水108cm3に添加し、24時間撹拌した。
(iii)10%酢酸水溶液(Aldrich Chemical Company)53cm3を、Ludox LSコロイド状シリカ(12nm)700cm3に添加した。これに、加水分解した3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン/水の混合物162cm3、および加水分解したメチルトリメトキシシラン/水の混合物1551cm3を添加した。この混合物を、コーティング前に12時間撹拌した。組成物の最終pHは、6.05であった。
【0085】
コーティングは、ポリエステルフィルムの両面に3μmの厚さで付着させ、熱によって架橋した。
【0086】
(参考例10〜18)
比較例2の手順を繰り返し、1枚のフィルムを、循環空気炉内でのアニーリングによってさらに処理した。条件を、対応する光学特性(ヘイズおよびTLT値)と共に表2にまとめる。
【0087】
【表4】

【0088】
表1および2を比較すると、アニーリングプロセスにかけられるPENフィルムの各面の、適切なコーティングの利益が示されている。光学特性は、コーティングの結果、初めは比較例1の場合よりも改善され、この品質が、155℃までのアニーリング中持続する。確かに、コーティングされたフィルムの光学特性は、175℃で24時間アニーリングした後であっても、比較例1より優れたままである。
【0089】
(比較例4および実施例19〜22)
比較例1に関して述べたものと同様の手順を実施して、フィルムのロールを生成した(比較例4)。最小限の線張力を、熱安定化ステップ中に加え、それによって、MDおよびTDでよりバランスのとれた収縮特性をもたらすという効果が発揮された。次いで実施例19〜22を生成するために、フィルムのロールを、循環空気炉内でのアニーリングによってさらに処理した。
【0090】
(比較例3および実施例23から29)
比較例4に関して述べたものと同様の手順を実施して、フィルムのロールを生成し、次いでこれを、各縁部の全長に添って、隆起したローレットパターンを付けることによってさらに改質した(比較例3)。次いで、実施例23〜29を生成するために、そのフィルムのロールを、循環空気炉内でのアニーリングによってさらに処理した。
【0091】
(比較例5および実施例30〜31)
比較例2に関して述べたものと同様の手順を実施して、コーティングされたフィルムを生成し(比較例5)、そのフィルムのロールを、実施例30および31を生成するために、循環空気炉内でアニーリングすることによりさらに処理した。
【0092】
上記実施例に関するロールの長さおよびアニーリング条件を、180℃で30分間加熱した後の寸法安定性データと共に、表3にまとめる。
【0093】
【表5】

【0094】
結果は、主な発見、即ちそのTg(即ち、疑義を避けるために言うなら、アニーリング前に測定されたポリエステルフィルムのTg)超でロールの形をしたポリエステルフィルムをアニーリングすることにより、以前の安定化プロセスによって与えられたものをしのぐ収縮特性の改善が実現されたことを実証する。0.03%未満の残留寸法収縮は、アニーリング中のフィルムには張力がほとんど存在しないことを示しており、そのレベルは、他の連続安定化プロセスによって実現することができないものである。さらにこのアニーリング処理は、連続する下流プロセスでさらに用いることのできる安定化フィルムのロールを提供するので、厳密には連続プロセスである。実施例の対、24および25、26および27、28および29、30および31によって実証された別の特徴は、改善された収縮挙動が、フィルムのロールの長さに添って一貫して与えられることである。そのような特徴の発見、即ち非常に低いレベルの張力、したがって極めて低い収縮挙動が、Tgよりも高い温度でのアニーリング中にロールの形をしたフィルムで実現することができるという発見は、完全に予測されなかった。ロールの形をしたフィルムのアニーリングによって、並外れて低い収縮がもたらされるという観察は、同じフィルムの1枚のシートを同様の温度でアニールしたときに観察された並外れて低い収縮に基づいて、予測することができなかった。フィルムのロールの形をしたフィルムは、若干の残留張力に関連付けられることが予測される。ロール形態にありながら、アニールされたフィルムに関して観察された収縮は、意外なことに、1枚のシートの形をとる0張力下でアニールされたフィルムに関して観察された収縮と類似している。これらの収縮は、フィルムが低張力下で巻き解かれた形でアニールされる、従来のロールツーロールアニーリングプロセスよりも、著しく改善される。したがって本発明は、経済性およびフィルム品質の両方に関して、そのようなアニーリングプロセスよりも優れた利点を提供する。ロールツーロールアニーリングプロセスでは、フィルムの逸れまたは伸縮が生ずる可能性があり、リール上の連続フィルム層に空気が混入される可能性がある。
【0095】
したがって本発明のプロセスは、ロールツーロールまたは連続製作プロセスが、従来の安定化プロセスよりも大きな熱、寸法安定度を有するフィルムを用いる新たな機会を提供する。
【0096】
コーティングの光学特性の利益は、ロール構成でアニールされるフィルムにも適用されることが示される。実施例30および31では、両面がコーティングされたフィルムのアニーリングの結果、それぞれ0.85%および0.86%よりも大きいヘイズ値はもたらされなかった。
【0097】
アニーリングプロセスで生成されたヘイズを低減させるためのコーティングの使用について、さらに調査するために、下記の実施例32から38に記載されるコーティング組成物を用い、基材としてPENおよび/またはPETを使用して、比較例2の手順を繰り返した。PETフィルムは、Dupont Teijin Filmsから市販されている、厚さが125μmのMalinex(登録商標)ST506である。硬化/乾燥後の最終的な乾燥コーティング厚は、2μmであった。次いでコーティングされたフィルムを、約Tg+80℃(即ち、PENフィルムの場合は200℃;PETフィルムの場合は150℃)で30時間まで、炉内でアニールし、ヘイズをその期間にわたり測定した。下記の結果は、
これらの条件下でアニールされた場合の、
(i)図1のグラフに示されるように、初期平均ヘイズ値(即ちt=0時間)1.4%を示し、これが48.8%まで上昇する(47.4%の上昇)、コーティングされていないPENフィルム;および
(ii)図2のグラフに示されるように、初期平均ヘイズ値0.91%を示し、これが41.4%まで上昇する(40.5%の上昇)、コーティングされていないPETフィルム
と比較することができる。平均ヘイズ値は、フィルムの幅を横断して測定された3つの値の平均をとることによって、計算した。
【0098】
(実施例32)
モノマーおよびポリマーアクリレート(メチルメタクリレートおよびエチルアクリレートを含む)の混合物と、光開始剤(Irgacure(商標)2959;Ciba)とを、メチルエチルケトン(2−ブタノン)の溶媒中に含む有機コーティング組成物を、固形分26.5重量%(これらの固形分の約1%は光開始剤である)で粘度約1.22cP(センチポアズ)に調製した。コーティングを80℃で乾燥し、次いでUV放射線によって硬化した。30時間までアニーリングした後の、コーティングされたフィルムのヘイズ測定を、図3および4のグラフに示す。PENおよびPETフィルムの初期平均ヘイズ値は、それぞれ0.74%および0.48%であった。
【0099】
(実施例33)
アクリレートモノマー1およびシリカ粒子をMEK溶媒中に含む、混成有機/無機コーティング組成物を、固形分10%および粘度約1.7cPに調製した。コーティングを付着させ、次いですぐにUV放射線により硬化した。30時間までアニーリングした後の、コーティングされたフィルムのヘイズ測定を、図5および6のグラフに示す。PENおよびPETフィルムの初期平均ヘイズ値は、それぞれ0.88%および0.53%であった。
【0100】
(実施例34)
比較例2のコーティング組成物を、上述のPET基材上にコーティングし、30時間までアニーリングした後の、コーティングされたフィルムのヘイズ測定を、図7のグラフに示す。フィルムの初期平均ヘイズは0.50%であった。
【0101】
(実施例35)
ポリエチレンイミン(Sigma Aldrichコード181978−8;平均分子量Mw 約750000)および架橋剤(Cymel(商標)385)を、PEI固形分約5重量%で水中に含むコーティングを、基材上にコーティングし、180℃で熱硬化した。30時間までアニーリングした後の、コーティングフィルムのヘイズ測定を、以下の表4および5に示す。
【0102】
【表6】

【0103】
【表7】

【0104】
(実施例36)
シリカ粒子と組み合わせてエポキシ樹脂を含む、熱硬化可能なコーティング組成物は、コーティング組成物に対して固形分が約41重量%の濃度を示し、言い換えると、アルコール溶液(イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、およびシクロヘキサノンの混合溶媒系)中に約10重量%の固形分を含む。この組成物を、室温で6時間撹拌し、コーティングし、次いで180℃で熱硬化する。30時間までアニーリングした後の、コーティングされたフィルムのヘイズ測定を、図8および9のグラフに示す。PENおよびPETフィルムの初期平均ヘイズ値は、それぞれ0.65%および0.45%であった。
【0105】
(実施例37)
ポリエステル(TPE 62C;竹本油脂(株)、日本)、架橋剤(Cymel(商標)385)を、水性溶媒中に含む、熱硬化可能なコーティング(全固形分8%、その86%はポリエステルである)を、PEN基材上にコーティングし、180℃で熱硬化した。30時間までアニーリングした後の、コーティングフィルムのヘイズ測定を、以下の表6に示す。
【0106】
【表8】

【0107】
(実施例38)
コーティング組成物に対してPVOH(Airvol(商標)24−203;Air Products)を24重量%、コーティング組成物に対して界面活性剤(Caflon(商標)NP10;Uniquema)を10重量%、および架橋剤(Cymel(商標)350)を様々な量(組成物中の存在するPVOHの0、9、17、24、および29重量%)で水性溶媒中に含む、コーティング組成物を、PEN基材上にコーティングし、180℃で熱硬化した。30時間までアニーリングした後の、コーティングフィルムのヘイズ測定を、図10のグラフに示す。コーティングされたPENフィルムの初期平均ヘイズ値は、0.73%(架橋剤なし)、0.74%(架橋剤9%)、0.76%(架橋剤17%)、0.59%(架橋剤24%)、および0.8%(架橋剤29%)であった。
【0108】
実施例32から38は、コーティングされていないフィルムに比べて、本明細書に記載のアニーリングプロセス中にヘイズ形成を低減させる、本明細書に記載のコーティングの有効性を実証している。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】コーティングされていないPENに関し、ヘイズの上昇(%)と時間(時)との関係を示すグラフである。
【図2】コーティングされていないPETに関し、ヘイズの上昇(%)と時間(時)との関係を示すグラフである。
【図3】実施例32(a)のPENに関し、ヘイズの上昇(%)と時間(時)との関係を示すグラフである。
【図4】実施例32(b)のPETに関し、ヘイズの上昇(%)と時間(時)との関係を示すグラフである。
【図5】実施例33(a)のPENに関し、ヘイズの上昇(%)と時間(時)との関係を示すグラフである。
【図6】実施例33(b)のPETに関し、ヘイズの上昇(%)と時間(時)との関係を示すグラフである。
【図7】ヘイズの上昇(%)と時間(時)との関係を示すグラフである。
【図8】実施例36(a)のPENに関し、ヘイズの上昇(%)と時間(時)との関係を示すグラフである。
【図9】実施例36(b)のPETに関し、ヘイズの上昇(%)と時間(時)との関係を示すグラフである。
【図10】PEN研究のPVOHコーティング(200℃で加熱)に関し、ヘイズの上昇(%)と時間(時)との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度(Tg(℃))を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの巻取りロールを、Tgよりも高い温度Ta(℃)(但し、Tg<Ta≦Tg+100(℃))で、熱平衡後に時間t(但し、1時間≦t≦72時間)にわたりアニールし、冷却することを特徴とするプロセス。
【請求項2】
ガラス転移温度(Tg(℃))を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの収縮を改善する方法であって、前記フィルムの巻取りロールを、Tgよりも高い温度Ta(℃)(但し、Tg<Ta≦Tg+100(℃))で、熱平衡後に時間t(但し、1時間≦t≦72時間)にわたりアニールするステップと、次いで冷却するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
ガラス転移温度(Tg(℃))を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの巻取りロールを、前記ポリエステルフィルムの収縮を改善する目的で、Tgよりも高い温度Ta(℃)(但し、Tg<Ta≦Tg+100(℃))で熱平衡後に時間t(但し、1時間≦t≦72時間)にわたりアニールし、冷却することを特徴とするプロセスの使用。
【請求項4】
1時間≦t≦48時間であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項5】
1時間≦t≦24時間であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項6】
アニールされたフィルムは、180℃で30分間加熱した後に、その流れ方向(MD)およびその横断方向(TD)の両方で0.08%以下の寸法変化を示すことを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項7】
寸法変化は0.05%以下であることを特徴とする請求項6に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項8】
寸法変化は0.03%以下であることを特徴とする請求項6に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項9】
フィルムのロールは、支持ポリエステル基材の片面または両面に1つまたは複数のコーティングを含む複合フィルムであることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項10】
180℃で30分間加熱した後に、その流れ方向(MD)およびその横断方向(TD)の両方で0.08%以下の寸法変化を示すことを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムの巻取りロール。
【請求項11】
180℃で30分間加熱した後に、その流れ方向(MD)およびその横断方向(TD)の両方で0.08%以下の寸法変化を示す、二軸延伸ポリエステルフィルムであって、但し、
(i)100または149℃の温度Taで1、2、4、または8時間アニールされる、99℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルム;
(ii)116または149℃の温度Taで8または24時間アニールされる、104℃のTgを有するポリ(エチレンテレフタレート)フィルム;および
(iii)120または149℃のTaで24時間アニールされる、109℃のTgを有するポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)フィルム
以外であることを特徴とするポリエステルフィルム。
【請求項12】
寸法変化は0.05%以下であることを特徴とする請求項10または11に記載のロールまたはフィルム。
【請求項13】
寸法変化は0.03%以下であることを特徴とする請求項10または11に記載のロールまたはフィルム。
【請求項14】
前記フィルムは、支持ポリエステル基材の片面または両面に1つまたは複数のコーティングを含む複合フィルムであることを特徴とする請求項10、11、12、または13に記載のロールまたはフィルム。
【請求項15】
コーティングは、
(i)低分子量反応性希釈剤;不飽和オリゴマー;溶媒;および光開始剤を含む有機コーティング、
(ii)低分子量反応性成分および/または不飽和オリゴマー成分;溶媒;および無機粒子を含み、任意選択で光開始剤をさらに含む、有機/無機混成コーティング、ならびに
(iii)重合性で、主に無機のマトリックスに含有される無機粒子を含む、主に無機のハードコート
から選択された組成物から得られることを特徴とする請求項14に記載のロールまたはフィルム、あるいは請求項9に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項16】
コーティングは、
(i)モノマーアクリレートから選択された低分子量反応性希釈剤;アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、およびポリエステルアクリレートから選択された不飽和オリゴマー;溶媒;および光開始剤を含む有機コーティング、
(ii)モノマーアクリレートから選択された低分子量反応性成分および/またはアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、およびポリエステルアクリレートから選択された不飽和オリゴマー成分;溶媒;およびシリカおよび金属酸化物から選択された無機粒子を含み、任意選択で光開始剤をさらに含む、有機/無機混成コーティング、ならびに
(iii)ポリシロキサンから選択された、重合性で、主に無機のマトリックスに含有される無機粒子を含む、主に無機のハードコート
から選択された組成物から得られることを特徴とする請求項14に記載のロールまたはフィルム、あるいは請求項9に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項17】
コーティングは、
(i)モノマーアクリレートから選択された低分子量反応性希釈剤;ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、およびポリエステルアクリレートから選択された不飽和オリゴマー;溶媒;および光開始剤を含む有機コーティング、
(ii)モノマーアクリレートから選択された低分子量反応性成分および/またはウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、およびポリエステルアクリレートから選択された不飽和オリゴマー成分;溶媒;およびシリカおよび金属酸化物から選択された無機粒子を含み、任意選択で光開始剤をさらに含む、有機/無機混成コーティング、ならびに
(iii)ポリシロキサンから選択された、重合性で、主に無機のマトリックスに含有される無機粒子を含む、主に無機のハードコート
から選択された組成物から得られることを特徴とする請求項14に記載のロールまたはフィルム、あるいは請求項9に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項18】
コーティングは、モノマーおよびオリゴマーアクリレートと光開始剤とを含むUV硬化性組成物から得られることを特徴とする請求項14に記載のロールまたはフィルム、あるいは請求項9に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項19】
コーティングは、モノマーアクリレート、シリカ粒子、および光開始剤を含むUV硬化性組成物から得られることを特徴とする請求項14に記載のロールまたはフィルム、あるいは請求項9に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項20】
コーティングは、
(a)シリカを約10から約70重量%、および一般式RSi(OH)3(式中、Rは、メチルと、ビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリルオキシプロピルからなる群から選択された最大約40%の基とから選択される)である部分的に重合された有機シラノールを約90から約30重量%含む固形分を、約5から約50重量%と、
(b)水を約10から約90重量%、および低級脂肪族アルコールを約90から約10重量%含む溶媒を、約95から約50重量%と
を含む組成物から得られ、前記コーティング組成物は、約3.0から約8.0のpHを有することを特徴とする請求項14に記載のロールまたはフィルム、あるいは請求項9に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項21】
コーティングは、エポキシ樹脂およびシリカ粒子を含む熱硬化性組成物から得られることを特徴とする請求項14に記載のロールまたはフィルム、あるいは請求項9に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項22】
コーティングは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエステル、およびポリビニルアルコール(PVOH)から選択された架橋性有機ポリマーを含み、架橋剤をさらに含む組成物から得られることを特徴とする請求項14に記載のロールまたはフィルム、あるいは請求項9に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項23】
前記コーティング層は、1から20ミクロンの乾燥厚さを有することを特徴とする請求項14から22のいずれかに記載のロールまたはフィルム、あるいは請求項9に記載のプロセス、方法、または使用。
【請求項24】
10%未満のヘイズ値を示すことを特徴とする請求項14から23のいずれかに記載のロールまたはフィルム。
【請求項25】
1.5%以下のヘイズ値および/または少なくとも85%の全輝度透過率(TLT)を示すことを特徴とする請求項10から23のいずれかに記載のロールまたはフィルム。
【請求項26】
前記ポリエステルは、ポリ(エチレンナフタレート)またはポリ(エチレンテレフタレート)であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法、プロセス、使用、ロール、またはフィルム。
【請求項27】
前記ポリエステルはポリ(エチレンナフタレート)であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法、プロセス、使用、ロール、またはフィルム。
【請求項28】
前記ポリエステルは、2,6−ナフタレンジカルボン酸から得られることを特徴とする請求項27に記載の方法、プロセス、使用、ロール、またはフィルム。
【請求項29】
ポリ(エチレンナフタレート)は、0.5〜1.5の固有粘度を有することを特徴とする請求項27または28に記載の方法、プロセス、使用、ロール、またはフィルム。
【請求項30】
前記ポリエステルフィルムは、熱安定化し、ヒートセットした二軸延伸フィルムであることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法、プロセス、使用、ロール、またはフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−525895(P2009−525895A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553831(P2008−553831)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000471
【国際公開番号】WO2007/091090
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(300038826)デュポン テイジン フィルムズ ユー.エス.リミテッド パートナーシップ (36)
【Fターム(参考)】