説明

低粉塵吹付け工法及びそのための吹付け装置

【課題】急結剤の添加量を変更する毎にベースコンクリートの配合を見直す必要がなく、吹付け作業を一旦中止し再開する場合や吹付け作業終了時であっても発生する粉塵量が少ない、低粉塵吹付け工法及びそのための吹付け装置を提供すること。
【手段】粉末急結剤の圧送経路への圧縮空気の供給と連動して、粉末急結剤の圧送経路、混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内に、水を供給する。粉末急結剤を供給せずに粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前及び/又は圧縮空気を供給する時に、特定位置への水の供給が制御されている吹付け装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル、地下空間、法面等の建設工事に適する低粉塵吹付け工法及びそのための吹付け装置に関し、特に、急結剤の添加量を変更する毎にベースコンクリートの配合を見直す必要がなく、吹付け作業を一旦中止し再開する場合や吹付け作業終了時であっても、粉塵の発生量が少ない低粉塵吹付け工法及びそのための吹付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル、地下空間、法面等の建設工事においてコンクリートを打設する方法として、吹付け工法が用いられている。一般の吹付け工法においては、ベースコンクリートと粉末急結剤を別々の輸送管を通して別経路で圧送し、圧送途中で合流混合した後に吹付けノズルの筒先より地山等に吹き付けている。ベースコンクリート及び粉末急結剤の圧送には、一般的には圧縮空気が用いられている。このため、コンクリートの吹き付け時に粉塵が多く発生してしまい、この粉塵が作業環境を悪化させているので、粉塵の発生量が少ない吹付け工法が強く求められている。吹き付け時に発生する粉塵を抑制させる方法として、粉塵低減剤を含むベースコンクリートに粉末急結剤を添加させる方法が従来より知られている。また、吹付け時の粉塵を抑制させる急結剤として、粉末急結剤と水を混合したスラリー型急結剤(例えば特許文献1参照)や液体急結剤(例えば特許文献2参照)が知られている。
【0003】
しかし、スラリー型急結剤や液体急結剤では、急結剤自体に水分を多く含むために、予めベースコンクリート中の水量を急結剤の添加量に応じて減じなければならなかった。そのため、急結剤の添加量を変更する毎にベースコンクリートの配合を見直す必要があった。また、急結剤が過剰添加になった場合に、吹付けコンクリート中の単位水量が増加し水セメント比が増大するために、所定の強度に達しない虞があった。
【0004】
また、粉塵低減剤を含むベースコンクリートに粉末急結剤を添加させる方法では、吹付けノズルの筒先より地山等の吹付け面に吹付けコンクリートを吹き付けている間は粉塵の発生が抑制される。しかし、吹付け作業を終了する場合や吹付け作業を一旦中止し再開する場合に、粉末急結剤の圧送経路に残存する粉末急結剤が、粉末急結剤供給装置を通さずに粉末急結剤の圧送経路に供給される圧縮空気、即ちバイパスエアとともに吹付けノズルの筒先より吐出し、周囲の粉塵濃度が高くなってしまうことがあった。
【特許文献1】特許第3532068号公報
【特許文献2】特許第3600155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題の解決、即ち、急結剤の添加量を変更する毎にベースコンクリートの配合を見直す必要がなく、吹付け作業を一旦中止し再開する場合や吹付け作業終了時であっても発生する粉塵量が少ない、低粉塵吹付け工法及びそのための吹付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者等は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、粉末急結剤の圧送経路への圧縮空気の供給と連動して、粉末急結剤の圧送経路、混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内に、水を供給することにより、前記課題を克服することができることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)で表す低粉塵吹付け工法及び(5)で表す吹付け装置である。
(1)ベースコンクリートの圧送途中で、別経路より空気圧送された粉末急結剤を混合して吹付けノズルの筒先より吹き付ける吹付け工法であって、粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前及び/又は圧縮空気を供給する時に、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ水を供給し、その後粉末急結剤の供給を開始することを特徴とする低粉塵吹付け工法。(2)上記水の供給を、粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前又は圧縮空気を供給する時に開始し、吹付けコンクリートを吹き付け始めるまでに終了する上記(1)の低粉塵吹付け工法。(3)ベースコンクリートの圧送途中で、別経路より空気圧送された粉末急結剤を混合して吹付けノズルの筒先より吹き付ける吹付け工法であって、粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給しながら粉末急結剤の供給を終了する前及び/又は終了する時に、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ水を供給することを特徴とする低粉塵吹付け工法。(4)上記水の供給を、吹付けコンクリートの吹付け面への吹き付け終了から、吹付けコンクリートが吹付けノズルの筒先より吐出しなくなるまでの間に開始し、粉末急結剤の圧送経路への圧縮空気の供給を停止するまでの間に終了する上記(3)の低粉塵吹付け工法。(5)(A)粉末急結剤の空気圧送経路と、(B)ベースコンクリートの圧送経路と、(C)ベースコンクリートと粉末急結剤とを混合する混合手段と、(D)混合後の吹付けコンクリート圧送経路と、(E)粉末急結剤の圧送経路,混合手段及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内への水の供給手段と、を備える吹付け装置において、粉末急結剤を供給せずに粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前及び/又は圧縮空気を供給する時に、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ水を供給するように、水の供給が制御されている吹付け装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、即ち、急結剤の添加量を変更する毎にベースコンクリートの配合を見直す必要がなく、コンクリートの吹付け時に発生する粉塵量を著しく低減できる。また、吹付け作業を一旦中止し再開する場合や吹付け作業終了時であっても、コンクリートの吹付け時に発生する粉塵量を著しく低減できる。本発明によれば、コンクリートの吹付け時に発生する粉塵量が少ないので、吹付け作業者が吹き付けたコンクリートの状態や量等を目視により確認しながら吹付け作業を効率良く行える。また、吹付け作業環境の粉塵濃度を強制除去する集塵機や換気設備を省くことも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の低粉塵吹付け工法は、ベースコンクリートの圧送途中で、別経路より空気圧送された粉末急結剤を混合して吹付けノズルの筒先より吹き付ける吹付け工法であって、粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前及び/又は圧縮空気を供給する時に、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ水を供給し、その後粉末急結剤の供給を開始することを特徴とする。水の供給を行った後に、ベースコンクリートの圧送を開始し、更にその後に粉末急結剤の供給を開始することが、粉末急結剤を添加しないまま吹付けノズルの筒先から排出されるコンクリートの量が少なく、且つ発生する粉塵量が少ないので好ましい。
【0009】
本発明において使用するベースコンクリートは、少なくとも水硬性セメント、水及び骨材を混合した混練物のことを云い、必要により更にモルタルやコンクリートで使用可能な混和材料を添加しても良い。本発明で使用するベースコンクリートに用いる材料は、通常セメントコンクリートに用いられているものを使用できる。水硬性セメントとしては、例えば、普通,早強,中庸熱,低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、高炉セメント,フライアッシュセメント等の混合セメント、アルミナセメント、或いは、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰等の廃棄物を原料として利用したエコセメント等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することができる。また、骨材としては、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石及び人工骨材等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することができる。また、混和材料としては、例えば、高性能減水剤,高性能AE減水剤,AE減水剤及び流動化剤を含む減水剤、シリカフューム等のポゾラン、高炉スラグ等の潜在水硬性物質、石粉、樹脂エマルション、膨張材、起泡剤、発泡剤、防錆剤、顔料、繊維、粉塵低減剤、撥水剤、保水剤、防水材、消泡剤、凝結遅延剤、硬化促進剤、収縮低減剤等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を本発明による効果を阻害しない範囲で使用することができる。ベースコンクリートの配合は、圧送できる配合であれば特に限定されないが、スランプが10cm以上となる配合であれば吹付け時に発生する粉塵量が少ないことからより好ましい。
【0010】
本発明に使用する粉末急結剤は、上記ベースコンクリートに急結性を付与できる粉末であればその成分は限定されない。例えば、カルシウムアルミネート,カルシウムサルホアルミネート,カルシウムナトリウムアルミネート,アルミン酸アルカリ,炭酸アルカリ,CaO−Al−Fe系組成物等の粉末が挙げられる。これらの一種又は二種以上に、例えば硫酸塩,水酸化物,酸化物等の他の混和材料を混合し、粉末急結剤として用いても良い。
【0011】
本発明に用いる、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ供給する水の単位時間当りの供給量は、1〜50リットル/分であることが好ましい。1リットル/分未満の単位時間当りの供給量では粉塵発生を抑制し難い。また、50リットル/分を超える単位時間当りの供給量では、装置をコンパクトにすることが難しく、使用した水の後処理が必要となることがある。この供給する水は、水溶液、水を分散媒とするエマルション等の形態で供給しても良い。水溶液、水を分散媒とするエマルション等の形態で供給する場合は、これらの液状物の粘度が100mPa・S以下のものが、粉塵の発生を抑制する効果が高いので好ましい。更に好ましい水の単位時間当りの供給量は、2〜10リットル/分である。
【0012】
水を供給する位置は、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内であれば良いが、使用する粉末急結剤がカルシウムアルミネート,カルシウムサルホアルミネート,カルシウムナトリウムアルミネート,CaO−Al−Fe系組成物等の水硬性の成分を含有する場合は、混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内とするのが良い。更に好ましくは、混合位置とする。なお、本発明及び本明細書中において、混合位置とは、粉末急結剤とベースコンクリートが混合する位置のことで、例えば、Y字管を用いて混合する場合はY字管の合流部のことをいう。
【0013】
水を供給する時期は、吹付けコンクリートを吹き付ける前の場合は、粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前又は圧縮空気を供給する時に開始し、吹付けコンクリートを吹き付け始めるまでに終了することが、コンクリート強度が低下する虞が無いので好ましい。更に好ましくは、粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する60秒前から供給するまでの間に水を供給し始め、吹付けコンクリートが吹付けノズルの筒先より吐出し始めるときから吹付けコンクリートを地山等の吹付け面に吹き付け始めるまでの間に水の供給を終了する。
【0014】
また、本発明の低粉塵吹付け工法は、ベースコンクリートの圧送途中で、別経路より空気圧送された粉末急結剤を混合して吹付けノズルの筒先より吹き付ける吹付け工法であって、粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給しながら粉末急結剤の供給を終了する前及び/又は終了する時に、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ水を供給することを特徴とする。本発明において、使用するベースコンクリート、使用する粉末急結剤、使用する水、水の単位時間当りの供給量及び水を供給する位置は、上記のそれぞれのものと同じである。水の供給を行った後に、粉末急結剤の供給を終了し、更にその後にベースコンクリートの圧送を終了することが、発生する粉塵量が少ないので好ましい。
【0015】
水を供給する時期は、吹付けコンクリートの吹付け面への吹き付け終了から、吹付けコンクリートが吹付けノズルの筒先より吐出しなくなるまでの間に水の供給を開始し、粉末急結剤の圧送経路への圧縮空気の供給を停止するまでの間に水の供給を終了することが好ましい。
【0016】
また、本発明の吹付け装置は、(A)粉末急結剤の空気圧送経路と、(B)ベースコンクリートの圧送経路と、(C)ベースコンクリートと粉末急結剤とを混合する混合手段と、(D)混合後の吹付けコンクリート圧送経路と、(E)粉末急結剤の圧送経路,混合手段及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内への水の供給手段と、を備える吹付け装置において、粉末急結剤を供給せずに粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前及び/又は圧縮空気を供給する時に、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ水を供給するように、水の供給が制御されている吹付け装置である。
【0017】
本発明に用いる(A)粉末急結剤の空気圧送経路としては、耐圧ゴムホース、セラミックス管、鋼管等の圧送空気の圧力に耐え得るものを使用できる。該空気圧送経路の長さ、断面形状、大きさ等は特に限定されず、該経路内にバルブや継手等が備わっていても良い。また、異なる材質の管、ホース、バルブ、継手等を組み合わせても良い。この粉末急結剤の空気圧送経路は、粉末急結剤の供給機(例えば、商品名「ナトムクリート」(電気化学工業社製),商品名「T−クリート」(太平洋マテリアル社製),商品名「Qガン」(日本プライブリコ社製))につながり、粉体急結剤がこの粉末急結剤の空気圧送経路に定量供給される。
【0018】
本発明に用いる(B)ベースコンクリートの圧送経路としては、耐圧ゴムホース、セラミックス管、鋼管等のベースコンクリート圧送時における圧力に耐え得るものを使用できる。該ベースコンクリート圧送経路の長さ、断面形状、大きさ等は特に限定されず、該経路内にバルブや継手等が備わっていても良い。また、異なる材質の管、ホース、バルブ、継手等を組み合わせても良い。このベースコンクリートの圧送経路は、ベースコンクリート圧送用の圧送装置(コンクリート吹付け機)(例えば、商品名「MEYCO Suprema」(MEYCO Equipment社製),商品名「アリバ285」(富士物産社製))につながり、ベースコンクリートがこのベースコンクリートの圧送経路に定量供給される。
【0019】
本発明に用いる(C)ベースコンクリートと粉末急結剤とを混合する混合手段としては、それぞれ圧送されてくるベースコンクリートと粉末急結剤とを、連続的に混合することができるものであればよい。例えば、連続ミキサ、ラインミキサ及びY字管等が挙げられ、混合のための駆動装置が不要で、内部で粉末急結剤や吹付けコンクリート等が詰り難く且つメンテナンスし易い等のことから、Y字管が好ましい。混合手段の大きさや材質等は、特に限定されず、ゴム等の樹脂、鋼材、セラミックス等の一種又は二種以上を用いても良い。該混合手段は、上記(A)粉末急結剤の空気圧送経路、上記(B)ベースコンクリートの圧送経路、(D)混合後の吹付けコンクリート圧送経路とつながり、別々に圧送されてくるベースコンクリートと粉末急結剤とを連続的に混合し、混合後の吹付けコンクリート圧送経路に排出する。
【0020】
本発明に用いる(D)混合後の吹付けコンクリート圧送経路としては、耐圧ゴムホース、セラミックス管、鋼管、樹脂製管等の吹付けコンクリート圧送時における圧力に耐え得るものを使用できる。該吹付けコンクリート圧送経路の長さ、断面形状、大きさ等は特に限定されず、該経路内にバルブや継手等が備わっていても良い。また、異なる材質の管、ホース、バルブ、継手等を組み合わせても良い。また、吹付けコンクリート圧送経路の最終端部は、セラミックス管、鋼管、樹脂製管等の圧送圧で略変形しない硬さの吹付けノズルが備わっていることが、吹付け面の目的の位置に、吹付けコンクリートを吹き付け易いので好ましい。
【0021】
本発明に用いる(E)粉末急結剤の圧送経路,混合手段及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内への水の供給手段としては、必要量の水を供給でき且つ水の供給を制御できるものであれば、機構、材質、大きさ等は特に限定されない。例えば、この水の供給手段としては、水タンクに通ずる水圧送用ポンプと、この水圧送用ポンプに通ずる耐圧ゴムホースと、この耐圧ゴムホースに通ずる電磁弁等の弁と、このバルブに通ずる水供給ノズルからなり、この水供給ノズルが、粉末急結剤の圧送経路,混合手段及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内に通ずるように構成されたものでも良い。水供給ノズルとしては、例えばエアレス噴霧ノズルや鋼管等を用いることができる。上記水の供給手段が、各種の逆止弁や電磁弁等の弁を備えていると好適である。また、水の単位時間当りの供給量は、上記のものと同じである。
【0022】
本発明において、粉末急結剤を供給せずに粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前及び/又は圧縮空気を供給する時に、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ水を供給するように、水の供給を制御する方法としては、例えば、本発明の吹付け装置に、更に圧縮空気を作り送るコンプレッサーと粉末急結剤の空気圧送経路との間に圧縮空気用電磁弁を備え、水の供給手段に水用電磁弁を備え、該圧縮空気用電磁弁を開ける信号の出力前の所定の時間前に水用電磁弁を開ける信号を出力し、所定時間後に水用電磁弁を閉める信号を出力する制御とすることにより行う方法や、本発明の吹付け装置に、上記の圧縮空気用電磁弁を備え、水の供給手段に水用電磁弁を備え、コンクリート吹付け機の停止制御信号を出力の所定時間後に、水用電磁弁を開ける信号を出力し、圧縮空気用電磁弁を閉めるための信号出力の所定時間後に、水用電磁弁を閉める信号を出力する制御とすることにより行う方法等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を説明する。
図1に模式図を示す本発明の吹付け装置23を用いて、高さ8m横幅8m奥行き9mの模擬トンネル15内で、粉塵濃度測定試験を以下の通り行った。模擬トンネル15の外に吹付けノズルの筒先11を出した状態で、粉末急結剤の圧送経路内即ち急結剤輸送用耐圧ホース7の内部に、カルシウムナトリウムアルミネート系粉末急結剤6(商品名「太平洋ショットマスター」(太平洋マテリアル社製))が残存する状態とした。その後吹付けノズルの筒先11を模擬トンネル15内に入れ、模擬トンネル15の両側を封鎖した。圧縮空気用電磁弁14及び水用電磁弁13が閉じ且つ水圧送用ポンプ17を始動した状態で、圧縮空気用電磁弁14を開けるための制御盤8内のスイッチを入れ、制御盤8内のコントローラにその電気信号が送られ、制御盤8内のコントローラから水用電磁弁13を開ける信号を出力し、その5秒後に制御盤8内のコントローラから圧縮空気用電磁弁14を開ける信号を出力した。水用電磁弁13を開ける信号により水用電磁弁13が開き、所定量の水20をエアレス噴霧ノズル付きY字管4内の混合位置(急結剤とベースコンクリートが合流混合する位置)12に備わるエアレス噴霧ノズル18より供給した。その後、制御盤8内のコントローラより出力される圧縮空気用電磁弁14を開ける信号により、圧縮空気用電磁弁14が開き、粉末急結剤の圧送経路から混合後の吹付けコンクリート圧送経路内までの経路内に、エアドライヤー25を通った乾燥した圧縮空気19が送られた。この圧縮空気19が吹付けノズルの筒先11から排出されるときに一緒に吐出された粉体急結剤6による、封鎖した模擬トンネル15内での粉塵濃度を、デジタル粉じん計(柴田科学社製 P−5L2)を用いて、ノズル筒先11より5m後方、地面からの高さが1mの位置にて測定を行なった。圧縮空気用電磁弁14を開けるためのスイッチを入れたときから30秒間粉塵濃度を測定し、このときの平均値を粉塵濃度の値とした。水20の単位時間当りの供給量を、2,5,10リットル/分と変えこのときの粉塵濃度を求め、比較として水20を供給しない水準も合わせて測定し、この結果を表1にまとめて示す。
【0024】
【表1】

【0025】
このとき用いた粉末急結剤の供給機5は、商品名「Qガン」(日本プライブリコ社製))である。図1中、制御盤8からベースコンクリート圧送用の圧送装置(コンクリート吹付け機、商品名「アリバ260」(富士物産社製))1、エアーコンプレッサー2、水用電磁弁13、圧縮空気用電磁弁14及び水圧送用ポンプ17のそれぞれに伸びている線は、電気信号を送受信するためのケーブルである。制御盤8は、ベースコンクリート圧送用の圧送装置(コンクリート吹付け機)1又は粉末急結剤の供給機5の制御盤に組み込んでも良い。また、図1中、符号3はベースコンクリート圧送用圧縮空気の供給管、符号9は吹付けコンクリート輸送管、符号10は吹付けノズル、符号16はベースコンクリート、符号21はベースコンクリート輸送管、符号22は水タンク及び符号24は水圧送用耐圧ホースを意味する。また、図2に、エアレス噴霧ノズル付きY字管4の模式的な断面図を示す。図中、符号16はベースコンクリートを意味する。エアレス噴霧ノズル18はその内壁の一部が狭くなっているので、水20が霧化し易い。
【0026】
本発明の吹付け装置23の圧縮空気用電磁弁14を開けるためのスイッチを入れたときから40秒後に、制御盤8内のコントローラより、ベースコンクリート圧送用の圧送装置(コンクリート吹付け機)1が始動する信号、及び水用電磁弁13を閉める信号が同時に出力され、その5秒後に、制御盤8内のコントローラより粉末急結剤の供給機5を始動する信号が出力され、ベースコンクリート圧送用の圧送装置(コンクリート吹付け機)1が始動し、スランプ14cmのベースコンクリート16の圧送開始とともに水用電磁弁13が閉じ、その5秒後に、粉末急結剤の供給機5が始動し、粉末急結剤6の供給圧送が開始された。ベースコンクリート16が、エアレス噴霧ノズル付きY字管4において圧送された粉末急結剤6と合流混合され、急結性の吹付けコンクリート26となり、この急結性の吹付けコンクリート26を吹付けノズルの筒先11から模擬トンネル15の内周壁(吹付け面)に吹き付けた。
【0027】
本発明の吹付け装置23の圧縮空気用電磁弁14を開けるためのスイッチを入れたときから90秒後に、模擬トンネル15の内周壁(吹付け面)への吹き付け終了後した。圧縮空気用電磁弁14を開けるためのスイッチを入れたときから100秒後に、水用電磁弁13を開ける信号が出力され、水用電磁弁13が開き、水20がエアレス噴霧ノズル18より噴霧供給された。
その5秒後に制御盤8内のコントローラより粉末急結剤の供給機5を停止する信号が出力され、粉末急結剤の供給機5を停止し、粉末急結剤6の供給が終了した。圧縮空気用電磁弁14を開けるためのスイッチを入れたときから135秒後に、制御盤8内のコントローラより、ベースコンクリート圧送用の圧送装置(コンクリート吹付け機)1を停止する信号が出力され、同圧送装置が停止し、ベースコンクリート16の圧送が終了した。圧縮空気用電磁弁14を開けるためのスイッチを入れたときから140秒後に、制御盤8内のコントローラより、圧縮空気用電磁弁14を閉める信号及び水用電磁弁13を閉める信号が同時に出力され、圧縮空気用電磁弁14及び水用電磁弁13が同時に閉じ、急結剤輸送用耐圧ホース7への圧縮空気19の供給及び水20の噴霧供給が停止終了した。
【0028】
本発明における実施例の全てが比較例よりも大幅に粉塵が低減できることが確認された。また、全ての実施例及び比較例の何れも、吹き付けた吹付けコンクリートに特に異常は見られず良好であった。エアレス噴霧ノズル付きY字管4の混合位置12に、該Y字管4の急結剤輸送用耐圧ホース7と接続している側の管から、圧縮空気19又は圧縮空気19と粉末急結剤6が流入し、該Y字管4のベースコンクリート輸送管21と接続している側の管からタイミングによりベースコンクリート16が流入し、また該Y字管4のエアレス噴霧ノズル18からタイミングにより水20が霧状で添加される。このことにより、タイミングにより粉末急結剤6、水20、ベースコンクリート16,吹付けコンクリート26又は/及び圧縮空気19が、該Y字管4からつながっている吹付けコンクリート輸送管9に排出され、更につながっている吹付けノズルの筒先11から吐出される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の低粉塵吹付け工法及びそのための吹付け装置は、粉体急結剤を用いても吹付け開始時及び吹付け終了時に発生する粉塵量が少ないので、トンネル等の閉鎖された空間においてコンクリートを吹き付ける建設工事に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例の粉塵濃度測定試験に用いた吹付け装置を示す模式図である。
【図2】実施例の粉塵濃度測定試験に用いたエアレス噴霧ノズル付きY字管の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ベースコンクリート圧送用の圧送装置(コンクリート吹付け機)
2 エアーコンプレッサー
3 ベースコンクリート圧送用圧縮空気の供給管
4 エアレス噴霧ノズル付きY字管
5 粉末急結剤の供給機
6 粉末急結剤
7 急結剤輸送用耐圧ホース
8 制御盤
9 吹付けコンクリート輸送管
10 吹付けノズル
11 吹付けノズルの筒先
12 混合位置(急結剤とベースコンクリートが合流混合する位置)
13 水用電磁弁
14 圧縮空気用電磁弁
15 模擬トンネル
16 ベースコンクリート
17 水圧送用ポンプ
18 エアレス噴霧ノズル
19 圧縮空気
20 水
21 ベースコンクリート輸送管
22 水タンク
23 吹付け装置
24 水圧送用耐圧ホース
25 エアードライヤー
26 吹付けコンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースコンクリートの圧送途中で、別経路より空気圧送された粉末急結剤を混合して吹付けノズルの筒先より吹き付ける吹付け工法であって、粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前及び/又は圧縮空気を供給する時に、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ水を供給し、その後粉末急結剤の供給を開始することを特徴とする低粉塵吹付け工法。
【請求項2】
上記水の供給を、粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前又は圧縮空気を供給する時に開始し、吹付けコンクリートを吹き付け始めるまでに終了する請求項1記載の低粉塵吹付け工法。
【請求項3】
ベースコンクリートの圧送途中で、別経路より空気圧送された粉末急結剤を混合して吹付けノズルの筒先より吹き付ける吹付け工法であって、粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給しながら粉末急結剤の供給を終了する前及び/又は終了する時に、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ水を供給することを特徴とする低粉塵吹付け工法。
【請求項4】
上記水の供給を、吹付けコンクリートの吹付け面への吹き付け終了から、吹付けコンクリートが吹付けノズルの筒先より吐出しなくなるまでの間に開始し、粉末急結剤の圧送経路への圧縮空気の供給を停止するまでの間に終了する請求項3記載の低粉塵吹付け工法。
【請求項5】
(A)粉末急結剤の空気圧送経路と、(B)ベースコンクリートの圧送経路と、(C)ベースコンクリートと粉末急結剤とを混合する混合手段と、(D)混合後の吹付けコンクリート圧送経路と、(E)粉末急結剤の圧送経路,混合手段及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内への水の供給手段と、を備える吹付け装置において、
粉末急結剤を供給せずに粉末急結剤の圧送経路に圧縮空気を供給する前及び/又は圧縮空気を供給する時に、粉末急結剤の圧送経路,混合位置及び/又は混合後の吹付けコンクリート圧送経路内へ水を供給するように、水の供給が制御されている吹付け装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−177495(P2007−177495A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376723(P2005−376723)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】