説明

住宅用火災警報システム

【課題】電源供給線路と連動信号線路を共用させて電源供給兼連動信号線とした住宅用火災警報システムにおいて、電源供給兼連動信号線に短絡事故が発生すると、システム全体の機能が失われるという問題がある。
【解決手段】親器の火災警報器から電源供給兼連動信号線を介して子器の火災警報器に電源供給を行い、各火災警報器は、火災検出箇所に設置される取付べ一スと、火災を検出して音響・表示部により報知動作を行う火災警報手段を格納する本体とを備え、親器取付べ一スには、電源供給兼連動信号線と親器本体に電源供給を行う電源供給部と、電源供給兼連動信号線に発生する短絡を監視する短絡監視部と、短絡監視部からの短絡信号によって短絡の発生を親器本体に知らせる短絡信号送信部とを設けると共に、親器本体には、短絡信号を受信する短絡信号受信部を設け、親器本体の音響・表示部が電源供給兼連動信号線に短絡が発生したことを報知動作する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅用火災警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅火災の早期発見を可能とするため、住宅用火災警報器の普及が進められている。住宅用火災警報器は、火災の要因である煙や熱を検出して警報音の鳴動(警報出力)を行うことが可能である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
さらに、住戸の複数箇所に設置された個々の住宅用火災警報器を信号線で接続することで、いずれかの火災警報器が火災検出を行うと連動信号を他の火災警報器に発して、全ての火災警報器を連動させて警報を行う住宅用火災警報システムが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-338495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記住宅用火災警報システムにあっては、連動信号を送るのに専用線路を設けていたものを、電源供給線路と共用させることにより電源供給兼連動信号線として、線路数の削減と配線作業の軽減を図るようにしたものがある。
【0006】
しかし、電源供給線路と連動信号線路を共用させて電源供給兼連動信号線としたシステムにあっては、電源供給兼連動信号線に短絡事故が発生すると、電源供給兼連動信号線に接続された各住宅用火災警報器への電源供給が断たれて各住宅用火災警報器の機能が失われるばかりでなく、連動信号を送ることができなくなるため、全ての火災警報器を連動させて警報を行うというシステム全体の機能も失われるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、親器の火災警報器から電源供給兼連動信号線を介して子器の火災警報器に電源供給を行い、各火災警報器は、火災検出箇所に設置される取付べ一スと、取付べ一スに対して着脱可能とされ、検出部により火災を検出して音響・表示部により報知動作を行う火災警報手段を格納する本体とを備えた住宅用火災警報システムにおいて、親器取付べ一スには、電源供給兼連動信号線と親器本体に電源供給を行う電源供給部と、電源供給兼連動信号線に発生する短絡を監視する短絡監視部と、短絡監視部からの信号により電源供給兼連動信号線に短絡が発生したことを短絡信号によって親器本体に知らせる短絡信号送信部とを設けると共に、親器本体には、短絡信号送信部からの短絡信号を受信する短絡信号受信部を設け、その短絡信号受信部が短絡信号を受信すると、親器本体の音響・表示部は電源供給兼連動信号線に短絡が発生したことを報知動作する構成を採っている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記構成により電源供給兼連動信号線に短絡事故が発生した場合には、親器の本体に備わる音響・表示部によって電源供給兼連動信号線に短絡が発生したことを報知動作するので、直ちに事故に対処させることができる。
そして、この短絡発生の報知動作を行う音響・表示部は、元もと火災検出時の報知動作に使用される本体の音響・表示部を利用するので、新たな音響・表示部を設ける必要もなく、構成が簡単で安価にシステムを提供することができる。
また、構成が簡単であるので、標準で全ての本体に本発明の構成を具備させておけば、親器の取付ベースに取り付ける本体は何れの本体を取り付けてもよくなり、間違えることなくシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】住宅に設置された状態の火災警報システムを示す概略図である。
【図2】火災警報システムの構成図である。
【図3】火災検出又は試験動作指示が入力された火災警報器における制御を示すフローチャートである、
【図4】連動信号を受けたときの火災警報器における制御を示すフローチャートである。
【図5】短絡を監視する電源供給部における制御を示すフローチャートである。
【図6】短絡信号を受けたときの火災警報器における制御を示すフローチャートである。
【図7】本発明に用いられる伝送方式を説明する図であって、図7(a)は連動信号送信部から送出される連動信号の様子を示し、図7(b)は短絡信号送信部から送出される短絡信号の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(火災警報システムの全体構成)
本発明の実施形態である火災警報システム100について図1乃至図5を参照して説明する。図1は住宅に設置された状態の火災警報システム100を示す概略図、図2は火災警報システム100の構成図である。
火災警報システム100は、主に、住宅の随所(例えば各部屋)の屋内の天井や壁面に設置され、火災により生じる煙や熱を感知することで警報による報知を行う親器と子器とからなる複数の火災警報器1,2と、これらの火災警報器1,2を接続する電源供給兼連動信号線L1とから構成される。
そして、上記親器としての火災警報器1は家庭用100[V]の交流電源より電源供給配線L2を介して電源供給を受けて直流電源に変え、電源供給兼連動信号線L1を介して子器としての火災警報器2に直流電源の供給を行うものである。
以下、各構成について詳細に説明することとする。
【0011】
(親器としての火災警報器)
親器としての火災警報器1は、大別すると、火災を検出してその報知を行う火災警報手段10と、外部から入力される交流電源を直流電源に変えて出力する電源供給部20と、電源供給部20を保持すると共に屋内天井或いは壁面等の火災検出箇所に設置される取付べ一ス30と、火災警報手段10を格納すると共に所定の取付構造により取付べ一ス30に対して着脱可能とする本体40とを備えている。
【0012】
(火災警報器の火災警報手段)
火災警報手段10は、火災により生じる煙や熱の検出を行う検出部11と、周囲に警報音を発生する警報ブザー等の音響装置や、火災警報器の各種の状態を点灯により表示する表示灯を有する音響・表示部12と、火災警報器の動作試験の実行を指示したり、音響・表示部12の動作を停止させるためのスイッチ部14と、他の火災警報器に連動信号を送信する連動信号送信部15と、他の火災警報器からの連動信号を受信したり、電源供給部20からの短絡信号を受信する連動(短絡)信号受信部16と、これら検出部11、音響・表示部12、スイッチ部14、連動信号送信部15および連動(短絡)信号受信部16との信号送受および動作制御を行う制御部17と、これら各部に所定の電源供給を行う電源部18とを備えている。
【0013】
検出部11は、当該検出部11が煙を検出するタイプの場合を説明すると、発光ダイオード等の発光素子とフォトトランジスタ等の受光素子とをラビリンス構造の暗箱内に設け、煙が暗箱内に侵入すると発光素子からの照射光の散乱光が受光素子により検出されて煙検出を行うものである。受光素子による散乱光の検出信号は制御部17に出カされるように接続されている。また、検出部11が熱を検出するタイプの場合には、感熱センサやバイメタル素子を備え、検出部11が所定温度以上になると検出信号が制御部17に出力されるように接続されている。
なお、この検出部11は本体40の内部に配置され、本体40の正面側に設けられた開口部から侵入する煙や熱を検出するようになっている。
【0014】
音響・表示部12は、圧電振動板に圧電素子が密着状態で設けられており、制御部17から圧電素子に通電が行われることで振動し、ブザー音を発生する。この音響・表示部12は本体40の正面側に設けられた放音開口部からブザー音を発するようになっている。
また、音響・表示部12は、制御部17に接続された例えばLED等の発光素子であり、本体40の正面側に設けられ、その表示すべき内容に応じて点灯、消灯或いは点滅等を行うようになっている。
【0015】
スイッチ部14は、本体40の正面側に設けられた押下式のスイッチであり、押下操作を受けると、火災警報手段10の動作試験の実行信号を制御部17に出力する。また、警報音の停止スイッチも兼ねている。
【0016】
連動信号送信部15は、他の火災警報器に対して連動信号の送信を行う信号送信回路であり、火災検出時及びスイッチ部14による試験実行時に制御部17の制御により、電源供給兼連動信号線L1を介して他の火災警報器に連動信号を送信する。
【0017】
また、連動(短絡)信号受信部16は、電源供給兼連動信号線L1を介して送られる他の火災警報器からの連動信号、あるいは、電源供給部20からの短絡信号を受信して、制御部17に出力する。
【0018】
(火災警報手段の制御部)
制御部17は、例えばマイコンから構成され、検出制御部、試験制御部、連動制御部および短絡警報制御部としての制御を実行する。
制御部17による検出制御部としての制御内容を説明する。
制御部17は、平常時に検出部11により火災検出の有無を監視し、検出部11により火災検出すると、音響・表示部12により警報音を鳴動させると共に、点滅表示を行わせ、連動信号送信部15から他の火災警報器に対して連動信号を送出させる。また、警報音の鳴動中には、スイッチ部14の押下の有無を監視して、押下が行われると、警報音の鳴動中止と表示ランプの消灯、さらに、連動信号送信部15による連動信号の送出を中止させる。つまり、スイッチ部14は、火災警報動作の中止スイッチとしても機能する。
【0019】
次に、制御部17による試験制御部としての制御内容を説明する。
試験的な警報動作の実行は、火災検出時と同じ鳴動パターンで音響・表示部12に警報音を鳴動させ、同じ点滅パターンで点滅表示を行わせる。また、これらの報知動作と共に連動信号送信部15から他の火災警報器に対して連動信号を送出させる。かかる試験的な警報動作は、スイッチ部14の押下状態が終了するまで継続される。つまり、スイッチ部14の押下が止むと、制御部17は、警報音の鳴動と点滅表示と連動信号出力を全て終了させる。
【0020】
次に、制御部17による連動制御部としての制御内容を説明する。
連動制御部の制御は、他の火災警報器から連動信号を受信した場合に実行される。連動信号は、火災検出時とスイッチ部14の押下時のいずれの場合でも外部に送信されるが、これらのどちらを受信した場合でも連動制御部としての制御が実行される。
制御部17は、平常時に外部からの連動信号の受信を監視し、連動信号を受信すると、火災検出時と同じパターンで音響・表示部12に警報音を鳴動させると共に同じパターンで点滅表示を行わせる。
連動制御部において実行される報知制御は、スイッチ部14の押下か連動信号の受信停止により終了となる。
【0021】
次に、制御部17による短絡警報制御部としての制御内容を説明する。
短絡警報制御部の制御は、親器としての火災検出手段10の制御部17が電源供給部20から短絡信号を受信した場合に実行される。短絡信号は、電源供給部20の短絡監視部22が電源供給兼連動信号線L1に短絡が発生したことを検出すると短絡信号送信部25から送信され、その短絡信号を受信した場合に短絡警報制御部としての制御が実行される。
制御部17は、平常時に外部からの短絡信号の受信を監視し、短絡信号を受信すると、火災検出時と異なるパターンで音響・表示部12に警報音を鳴動させると共に点滅表示を行わせる。
短絡警報制御部において実行される報知制御は、短絡信号の受信停止により終了となる。
【0022】
(火災警報器の電源供給部)
電源供給部20は、家庭用交流電源100Vから電源供給配線L2を介して電源供給を受けて直流電源に変え、電源供給兼連動信号線L1を介して子器としての火災警報器2に電源供給を行うと共に、親器としての火災警報手段10並びに下記各部に所定の電源供給を行う電源部21を備えている。また、電源供給部20は、電源供給兼連動信号線L1側に発生する短絡を監視し、下記制御部24に信号を送る短絡監視部22と、電源部21から電源供給兼連動信号線L1への電源供給路を切り替える電源切り替え部23と、電源供給兼連動信号線L1側に短絡が発生したことを知らせる短絡信号を親器としての火災警報手段10に送る短絡信号送信部25と、短絡監視部22からの信号を受けて電源切り替え部23に電源供給路を切り替えさせると共に、短絡信号送信部25に短絡信号を出力させる制御部24とを備えている。
【0023】
これら電源供給部20の各部は、取付べ一ス30の内部に配置されていて、かかる取付べ一ス30は住宅の天井面あるいは壁面に取り付けられる。
電源供給部20は、取付べ一ス30の本体40に対する合わせ面31側に設けられた二つの内部電源供給端子32,32が、本体40の取付べ一ス30に対する合わせ面41側に設けられた二つの内部電源供給端子42,42に接続されることにより火災警報手段10への電源供給を行う。
【0024】
短絡監視部22は、電源供給兼連動信号線L1側に発生する短絡を電源供給兼連動信号線L1に流れる電流値の急増から検出するものであって、検出すると制御部24に信号を送るようになっている。
【0025】
短絡信号送信部25は、制御部24により制御され、内部電源供給端子32,32に接続された親器としての火災警報手段10に電源供給線路を介して短絡信号をに送るものである。
【0026】
電源部21は、電源供給兼連動信号線L1に対して、通常時には大きな電流値の電源供給を行う電源供給路L3と、短絡時には短絡状態からの復旧監視用に電流制限の掛かった電源供給を行う電源供給路L4の2系統の電源供給路を備えている。
【0027】
電源切り替え部23は、制御部24により制御され、通常時には電源部21から大きな電流値の電源供給が行える電源供給路L3と、短絡時には電源部21から復旧監視用の電流制限の掛かった電源供給を行う電源供給路L4との、2系統の電源供給路のどちらから電源供給を行うかを切り替える。
【0028】
(電源供給部の制御部)
制御部24は、例えばマイコンから構成され、短絡検出制御部としての制御を実行する。その短絡検出制御部としての制御内容を説明すると、制御部24は、電源供給兼連動信号線L1側が短絡していない平常時においては短絡監視部22から信号がないため、電源切り替え部23による制御を大きな電流値の電源供給が行える電源供給路L3側に切り替えている。
電源供給兼連動信号線L1側に短絡が生じると、その大きな短絡電流によって短絡監視部22が短絡状態を検出し、信号を制御部24に送る。この信号を受けて制御部24は、電源切り替え部23によって電源供給兼連動信号線L1への電源供給を復旧監視用の電流制限の掛かった電源供給路L4側に切り替えると共に、短絡信号送信部25に親器としての火災警報手段10に対して短絡信号を送らせる。
また、電源供給兼連動信号線L1側の短絡が復旧すると、制御部24は短絡監視部22からの信号がなくなるため、電源切り替え部23に電源供給を大きな電流値の電源供給が行える電源供給路L3側に切り替えさせる。
【0029】
(火災警報器の本体)
本体40と取付べ一ス30とは、それぞれ略円盤状を呈しており、図示はしていないが、互いの円形の合わせ面41,31を密接させた状態で結合するための結合構造を備えている。
本体40の合わせ面41側には、内部電源供給端子42,42が突出した状態で設けられている。
一方、取付べ一ス30の取付面31には、内部電源供給端子42,42を挿通可能なスリットが形成され、各スリットに各端子42,42を挿入すると、取付べ一ス30の内部に配設された内部電源供給端子32,32のそれぞれに接続されるようになっている。
【0030】
(火災警報器の取付べ一ス)
上記取付べ一ス30は、その取付面33を壁面或いは天井面に密接させた状態でネジ止め或いは接着等の公知の手法で取付が行われる。
そして、取付べ一ス30の取付面33に設けられた外部電源入力端子34,34には、壁面内或いは天井内を通された家庭用交流電源を供給する配線L2が接続されている。
また、取付面33に設けられた外部電源兼連動信号端子35,35には、壁面内或いは天井内を通された電源供給兼連動信号線L1が接続されている。かかる電源供給兼連動信号線L1には、複数の子器である火災警報器2の各外部電源兼連動信号端子35A,35Aが並列に接続され、一つの親器である火災警報器1から複数の子器である火災警報器2に直流電源を供給すると共に、連動信号の送受を行うようになっている。
【0031】
(子器としての火災警報器)
子器としての火災警報器2は、図2に示すように、親器である火災警報器1と等しい火災警報手段10と、親器である火災警報器1から供給される直流電源を火災警報手段10に供給すると共に、連動信号の伝達を行う電源供給兼連動信号伝達部20Aと、電源供給兼連動信号伝達部20Aを保持すると共に、天井或いは壁面等の火災検出箇所に設置される取付べ一ス30Aと、親器である火災警報器1と等しい本体40とを備えている。
【0032】
子器としての火災警報器2については、親器である火災警報器1と異なる構成についてのみ説明する。
取付べ一ス30Aは、その形状及び構造については前述した取付べ一ス30とほぼ等しく、合わせ面31Aに本体40の内部電源供給端子42,42が挿入されるスリットが形成されている点も同じである。
そして、この取付べ一ス30Aには、電源部20に替えて電源伝達部20Aが設けられている点が取付べ一ス30と異なっている。この電源伝達部20Aは、取付べ一ス30Aの取付面33Aに設けられ、外部から電源の供給を受けると共に、連動信号の送受を行う外部電源兼連動信号端子35A,35Aと、取付べ一ス30Aと本体40との連結時に内部電源供給端子42,42に接続される内部電源供給端子32A,32Aと外部電源兼連動信号端子35A,35Aとを個別に接続する伝達配線26A,26Aとを備えている。
【0033】
(火災警報システムの各種報知動作)
上記構成により、親器である火災警報器1は、その電源部21に対して外部から家庭用交流電源が外部電源入力端子34,34を介して供給され、当該電源部21は家庭用交流電源100Vから直流電源に変え、電源供給兼連動信号線L1を介して子器としての火災警報器2に電源供給を行うと共に、親器としての火災警報手段10並びに電源供給部20内の各部に所定の電源供給を行う。
したがって、親器および子器の火災警報手段10に対して直流電源の供給が行われて火災の監視状態となると共に、電源供給部20にも直流電源の供給が行われて短絡監視状態となる。
火災監視動作、連動動作及び試験動作については、親器である火災警報器1と子器である火災警報器2とで区別されることなく全く同一の動作が行われる。
【0034】
図3は火災検出又は試験動作指示が入力された火災警報器1,2における制御を示すフローチャート、図4は連動信号を受けたときの火災警報器1,2における制御を示すフローチャートある。
まず、火災検出又は試験動作指示が入力された火災警報器1,2の制御について説明する。ここでは説明の便宜上、親器である火災警報器1が火災検出又は試験動作指示の入力が行われ、子器である複数の火災警報器2がこれに連動する場合を想定して説明することとする。以下の処理は、火災警報器1,2が有する制御部17のマイコンが実行するものである。
【0035】
図3に示すように、火災警報器1,2の検出部11では常時火災監視を行い、火災を検出すると(ステップS1:YES)、音響・表示部12による報知動作(警報音の鳴動と点滅表示)を実行すると共に、連動信号送信部15から各火災警報器1,2に対して連動信号を送出する(ステップS2)。
報知動作の実行中には、これを停止させるためのスイッチ部14の押下の有無が監視され(ステップS3)、スイッチ部14の押下が検出されると(ステップS3=YES)、報知動作が停止されると共に連動信号の送出が停止される(ステップS4)。
【0036】
また、火災警報器1の検出部11では火災が検出されない時には(ステップS1:NO)、試験動作指示が入力されたか否かをスイッチ部14の押下の有無により判定し、スイッチ部14の押下も行われないときには処理を終了する(ステップS5:NO)。
一方、スイッチ部14の押下より試験動作指示が入力されると(ステップS5:YES)、制御部17は、火災検出時と同じ報知動作を実行すると共に連動信号送信部15から各火災警報器1,2に対して連動信号を送出する(ステップS6)。
なお、この報知動作と連動信号出力はスイッチ部14の押下操作が継続されている限り継続して実行される。従って、制御部17は、スイッチ部14の押下が止む(スイッチoff)か否かを監視し(ステップS7)、押下が止むと(ステップS7:YES)、ステップS4に処理を進めて報知動作を停止すると共に連動信号の送出を停止する。
【0037】
次に、連動信号の受信を監視して受信した場合の火災警報器1,2の制御について説明する。
図4に示すように、火災警報器1,2の制御部17では常時、連動信号の受信の有無の監視を行い、連動信号を受信しない場合には、制御部17は、処理を終了する(ステップS21:NO)。また、連動信号を受信すると(ステップS21:YES)、制御部17は、音響・表示部12による報知動作(警報音の鳴動と点滅表示)を実行する(ステップS22)。
報知動作の実行中には、これを停止させるためのスイッチ部14の押下の有無が監視され(ステップS23)、スイッチ部14の押下が検出されると(ステップS23:YES)、報知動作が停止される(ステップS25)。
【0038】
また、報知動作の実行中にスイッチ部14の押下が検出されない時には(ステップS23:NO)、制御部17は火災警報器1,2からの連動信号が継続しているか否かを監視し、継続している場合には(ステップS24=NO)、処理をステップS23に戻す。
また、連動信号の受信が途絶えると(ステップS24:YES)、制御部17は報知動作を終了させる(ステップS25)。
【0039】
次に、短絡監視部22が電源供給兼連動信号線L1側に発生する短絡を監視する電源供給部20の制御について説明する。
図5に示すように、電源供給部20の制御部24では常時、短絡監視部22の検出信号有無の監視を行い、検出信号を受信しない場合(ステップS31:NO)には、制御部17は、電源切り替え部23によって電源供給兼連動信号線L1への電源供給を大きな電流値の電源供給が行える電源供給路L3側に切り替えている(ステップS32)。また、短絡信号送信部25による親器としての火災警報手段10への短絡信号を停止している(ステップS33)。
しかし、検出信号を受信した場合(ステップS31:YES)には、制御部17は、直ちに電源切り替え部23によって電源供給兼連動信号線L1への電源供給を、復旧監視用の電流制限の掛かった電源供給路L4に切り替える(ステップS34)。また、短絡信号送信部25により、親器としての火災警報手段10への短絡信号を発生させる(ステップS35)
そして、電源供給部20の制御部24は、上記制御を常時繰り返している。
【0040】
次に、短絡信号の受信を監視して受信した場合の火災警報器1の制御について説明する。
図6に示すように、火災警報器1における火災警報手段10の制御部17では常時、連動(短絡)信号受信部16によって受信される短絡信号の有無を監視し、短絡信号を受信しない場合(ステップS41:NO)には、制御部17は、短絡報知停止の処理を行い終了する(ステップS42)。また、短絡信号を受信すると(ステップS41:YES)、制御部17は、音響・表示部12による報知動作(警報音の鳴動と点滅表示)を実行して終了する(ステップS43)。この場合、前記火災検出時または連動信号受信時における報知動作とは異なる報知動作としておくのがシステム運用上からも望ましい。
上記のように、制御部17は、短絡信号が受信されない場合には短絡報知停止の処理を行っているので、電源供給部20からの短絡信号が途絶えると報知動作は直ちに停止される。
【0041】
(電源供給線による各種信号の伝送)
電源供給線を介して連動信号、短絡信号等の各種信号を伝送するには、従来から幾つかの方法が提案されている。電源供給線には直流電圧が供給されているので、この供給電圧値を送信すべき信号に応じた電圧値に変化させたり、直流電圧に送信すべき信号に応じた周波数の異なる交流信号を重畳させるなどの方法が採られている。
しかし、供給電圧値を変化させる方法は、電源の安定供給上、それを考慮したシステムとしなければならず、交流信号を重畳する方法は、ノイズにより誤動作するという問題がある。
そこで、本発明においては、直流電圧に所定数の連続パルスを周期的に重畳し、その連続したパルスの所定数を伝達情報内容に応じて異ならせることにより伝送するようにした。
この方法を用いたため、本発明による住宅用火災警報システムでは、電源供給を安定的にかつノイズに強く行うことが出来る。
【0042】
つぎに、本発明に用いられている伝送方式を、図7を参照して詳細に説明する。
まず、火災警報手段10から連動信号が送出される際は、連動信号送信部15から図7(a)に示すパルス列TMが繰り返し出力される。なお、実施例においては、パルスは正弦波パルスとしているが、これを矩形波パルスとしてもよい。このパルス列TMは、波高値Vb(例えば1V)、パルス幅T3(例えば数百マイクロ秒)の連続する所定数m個のパルスから構成され、間隔T4(例えば数ミリ秒)を挟んで期間T2(例えば数百ミリ秒)の間繰り返される。そして、この繰り返しが期間T1(例えば数秒)毎に、直流電圧Va(例えば数V)の電源供給線に重畳される。
【0043】
このパルス列TMは、電源供給兼連動信号線L1を介して他の火災警報器の火災警報手段10に送られ、その火災警報手段10の連動(短絡)信号受信部16によって検出される。連動(短絡)信号受信部16は、電源供給兼連動信号線L1上の直流電圧から正弦波パルスを抽出し、これを矩形波パルスに変換して制御部17に入力させるものである。
制御部17は、入力されるパルスの連続パルス数をカウントして、その数が所定数m個であり、かつ、そのパルス列TMが所定回数検出されれば、この送られてきた信号が連動信号であると決定できる。
制御部17は、この決定を受けて上記連動制御部としての制御を実行する。
【0044】
また、電源供給部20から短絡信号が送出される際は、短絡信号送信部25から図7(b)に示すパルス列TNが繰り返し出力される。
このパルス列TNは、上記連動信号送信部15から出力される連動信号のパルス列TMとそのパルスの連続する所定数n個が異なるだけであって、そのほかの波高値Vb、パルス幅T3、間隔T4、期間T2および繰り返し期間T1は同一であり、親器としての火災警報手段10へその電源供給路に重畳して送られる。
【0045】
このパルス列TNは、電源供給路を介して親器としての火災警報器1の火災警報手段10に送られ、その火災警報手段10の連動(短絡)信号受信部16によって検出される。連動(短絡)信号受信部16は、電源供給路上の直流電圧から正弦波パルスを抽出し、これを矩形波パルスに変換して制御部17に入力させるものである。
制御部17は、入力されるパルスの連続パルス数をカウントして、その数が所定数n個であり、かつ、そのパルス列TNが所定回数検出されれば、この送られてきた信号を上記連動信号と区別して短絡信号であると決定できる。
制御部17は、この決定を受けて上記短絡検出制御部としての制御を実行する。
【符号の説明】
【0046】
1 火災警報器(親器)
2 火災警報器(子器)
10 火災警報手段
11 検出部
12 音響・表示部
14 スイッチ部
15 連動信号送信部
16 連動(短絡)信号受信部
17 制御部
18 電源部
20 電源供給部
21 電源部
22 短絡監視部
23 電源切り替え部
24 制御部
25 短絡信号送信部
30 取付べ一ス
40 本体
100 火災警報システム
L1 電源供給兼連動信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親器の火災警報器から電源供給兼連動信号線を介して子器の火災警報器に電源供給を行い、前記各火災警報器は、火災検出箇所に設置される取付べ一スと、該取付べ一スに対して着脱可能とされ、検出部により火災を検出して音響・表示部により報知動作を行う火災警報手段を格納する本体とを備えた住宅用火災警報システムにおいて、
親器取付べ一スには、前記電源供給兼連動信号線と親器本体に電源供給を行う電源供給部と、前記電源供給兼連動信号線に発生する短絡を監視する短絡監視部と、該短絡監視部からの信号により前記電源供給兼連動信号線に短絡が発生したことを短絡信号によって親器本体に知らせる短絡信号送信部とを設けると共に、親器本体には、前記短絡信号送信部からの短絡信号を受信する短絡信号受信部を設け、
該短絡信号受信部が短絡信号を受信すると、親器本体の音響・表示部は前記電源供給兼連動信号線に短絡が発生したことを報知動作することを特徴とする住宅用火災警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−64246(P2012−64246A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−284606(P2011−284606)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2007−20007(P2007−20007)の分割
【原出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000111074)株式会社LIXILニッタン (93)
【Fターム(参考)】