説明

作業システムおよび作業方法

【課題】沸騰水型原子炉のジェットポンプ近傍などの狭隘な領域に設置された配管の溶接部の洗浄、点検、検査予防保全、補修などの作業を容易に行えるようにする。
【解決手段】作業システムに、ベース24と、ベース24を水平に対して傾斜させる第1ロータリシリンダ27と、ベース24を上下に移動させる伸縮ガイド19と、アーム20と、アーム20を回動させる回転ローラ25と、アーム20に取り付けられた検査プローブ23とを備える。アーム20は、リンク22で結合された複数の部分からなる。アーム20は、隣り合う部分を結合するエアシリンダ21の伸縮により、その形状が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉のジェットポンプ近傍などの狭隘な領域に設置された配管溶接部などの管状の作業対象に対して洗浄、点検、検査予防保全、補修など所定の作業を行う作業システムおよび作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉は、原子炉圧力容器の内部に炉心を収めている。この炉心は、シュラウドと呼ばれる円筒で囲まれている。あるタイプの沸騰水型原子炉では、原子炉圧力容器とシュラウドとの間には、主要構造物の一つであるジェットポンプが設置されている。
【0003】
ジェットポンプには、インレットミキサを介してディフューザが接続されている。ディフューザには、ライザー管が接続されている。このライザー管には、原子炉圧力容器を貫通する配管のエルボが溶接により接続されている。ライザー管を原子炉圧力容器に固定されたライザーブレースによって支持することにより、ジェットポンプは原子炉圧力容器に固定されている。
【0004】
ライザー管は、エルボと溶接により接合されている。定期的に、原子炉内水中において、この溶接線の点検・検査が行われる。この溶接線の点検、検査作業は、作業工期短縮、コスト削減のために燃料交換中に並行して行うことが求められている。そこで、作業時間、検査範囲、およびコストの優位性を供えたシステムが必要である。
【0005】
沸騰水型原子炉のジェットポンプ近傍などでは、原子炉圧力容器とシュラウドとの間を上方からアクセスして、検査などを行う必要がある。また、このような場所では、ライザー管とジェットポンプとが隣接して設けられており、狭隘な領域での作業が必要である。沸騰水型原子炉のジェットポンプ近傍などの狭隘な領域に設置された配管溶接部の洗浄、点検、検査予防保全、補修などを行う検査装置などを検査対象位置まで移動させることは容易ではない。
【0006】
このような狭隘な領域内の検査対象まで検査装置を移動させる方法として、たとえば原子炉上部に設置された燃料交換機より専用の吊り具と操作ポールによりビーム、エルボおよびインレットミキサを取り外した後に、検査装置を移動させる方法がある。検査装置の移動は、たとえば燃料交換機の補助ホイストのワイヤーロープを用いる方法がある。
【0007】
また、原子炉圧力容器とシュラウドとの間の領域の構造物を取り外さずに、検査装置を検査対象まで移動させる場合には、検査装置をライザーブレースと原子炉圧力容器との間の狭い隙間などを通過させる必要がある。そこで、たとえば、燃料交換機から操作ポールを連結しながら検査装置を吊り下げ、検査装置本体を鉛直にした姿勢で狭い隙間を通過させ、検査時にはその姿勢を水平に戻す方法がある。
【0008】
このように検査装置を燃料交換機などから直接位置決めする方法の他に、検査装置の位置決めにガイド機構を用いる方法もある。たとえば燃料交換機より検査装置本体を吊り下げジェットポンプのライザーブレースの薄板に保持部を固定し、ライザーブレースの薄板を通過させたスキャナ部をライザー管に位置決めする。また、燃料交換機より検査ヘッドが取り付けられたアクセス装置とアクセス装置の操作用ロープと補助ツールとを同時に吊り下げ、補助ツールをシュラウド上部に固定し、操作用ロープを補助ツールで操作しながらアクセス装置をライザー管に位置決めする方法がある。あるいは、燃料交換機よりアクセス装置吊り具と操作ポールを連結したアクセス装置旋回補助装置とを同時に吊り下げ、アクセス装置旋回補助装置をシュラウド上部に固定し、アクセス装置旋回補助装置のワイヤガイドが付いたアームを操作してアクセス装置をライザー管に位置決めする方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−75080号公報
【特許文献2】特開2004−317236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
原子炉内の主要構造物の配管であるジェットポンプのライザー管の溶接線の点検や検査または補修は、点検、検査補修用のアクセス装置を燃料交換機や作業台車上から作業員が操作し、対象溶接線への位置決めや動作状況の監視などを作業員が直接確認しながら進めているために、作業時間がばらつくと共に遅延を招きやすい状況であった。
【0011】
さらに、作業工期短縮、コスト削減のためにジェットポンプの点検、検査を燃料交換中に並行して行うことが求められており、作業時間が短いこと、検査範囲が広いこと、およびコストが低いことが点検、検査を行う作業システムに必要である。
【0012】
このようなジェットポンプのライザー管の点検や検査または補修を遠隔/自動で行う手法として、移動や位置決めにワイヤーロープや操作ポールを用いる方法がある。原子炉上部の燃料交換機や作業台車からワイヤーロープや操作ポールを用いる方法では、点検、検査中も常に燃料交換機や作業台車が必須であり燃料交換中の並行作業には不向きと考えられる。さらに、ジェットポンプを分解した後に、検査装置を吊り込む方法では、ジェットポンプの分解、再組み立てが発生し多くの作業時間が必要と考えられる。
【0013】
また、検査/補修装置の位置決めに、炉内構造物であるジェットポンプやシュラウド上部などを利用したガイド機構を用いる方法がある。このガイド機構を用いる方法では、検査/補修装置の遠隔の位置決めの効果はあるが、検査/補修装置の検査/補修部位の移動毎に燃料交換機や作業台車が必須であり燃料交換中の並行作業には不向きと考えられる。
【0014】
さらに、このような沸騰水型原子炉のジェットポンプ近傍などの狭隘な領域に設置された配管溶接部の洗浄、点検、検査予防保全、補修などを行う場合には、検査装置などをライザーブレースの隙間などの狭隘な領域を通過させる必要がある。
【0015】
そこで、本発明は、沸騰水型原子炉のジェットポンプ近傍などの狭隘な領域に設置された配管の溶接部の洗浄、点検、検査予防保全、補修などの作業を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明は、管状の作業対象に対して所定の作業を行う作業システムにおいて、ベースと、前記ベースを水平に対して傾斜させる傾斜手段と、前記ベースを上下に移動させる昇降手段と、前記ベースに取り付けられて前記作業対象の外面に沿って延びるアームと、前記アームを回動させる回転手段と、前記アームに取り付けられた作業手段と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、管状の作業対象に対してベースと前記ベースに取り付けられて前記作業対象の外面に沿って延びて回動可能なアームと前記アームに取り付けられた作業手段を備えた作業システムで所定の作業を行う作業方法において、前記ベースを水平に対して傾斜させ、前記アームを回動させて前記ベースおよび前記アームの鉛直方向への投影面積を減少させる第1工程と、前記第1工程の後に、前記ベースを前記作業対象に向かって下降させる第2工程と、前記第2工程の後に、前記ベースの姿勢を水平に戻し、前記アームを回動させながら前記作業手段によって前記作業対象に対して作業を行う第3工程と、前記第3工程の後に、前記ベースを水平に対して傾斜させ、前記アームを回動させて前記ベースおよび前記アームの鉛直方向への投影面積を減少させる第4工程と、前記第4工程の後に、前記ベースを上昇させる第5工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、沸騰水型原子炉のジェットポンプ近傍などの狭隘な領域に設置された配管の溶接部の洗浄、点検、検査予防保全、補修などの作業が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態の正面図である。
【図2】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態における補修検査装置の側面図である。
【図3】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態を用いた作業中における原子炉圧力容器内の立断面図である。
【図4】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態におけるアクセス装置の側面図である。
【図5】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態の伸縮ガイドが伸びた状態を示す側面図である。
【図6】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態における検査補修装置のライザーブレース通過時の正面図である。
【図7】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態において検査補修装置が最も下降した位置における正面図である。
【図8】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態において検査補修装置のアームがエルボを囲む様子を示す正面図である。
【図9】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態において検査補修装置のアームがエルボを囲む様子を示す正面図である。
【図10】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態において検査補修装置のアームがエルボを囲む様子を示す正面図である。
【図11】本発明に係る作業システムの第1の実施の形態における作業対象である原子炉の一部を切り出した斜視図である。
【図12】本発明に係る作業システムの第2の実施の形態における検査補修装置の正面図である。
【図13】本発明に係る作業システムの第2の実施の形態における検査補修装置を下降させる際の姿勢を示す正面図である。
【図14】本発明に係る作業システムの第2の実施の形態における検査補修装置がライザーブレース近傍を通過する状態を示す上面図である。
【図15】本発明に係る作業システムの第2の実施の形態における検査補修装置がライザーブレース近傍を通過する状態を示す斜視図である。
【図16】本発明に係る作業システムの第2の実施の形態において検査補修装置の検査中の状態を示す側面図である。
【図17】本発明に係る作業システムの第2の実施の形態において検査補修装置による鉛直面内の検査対象を検査中の状態を示す正面図である。
【図18】本発明に係る作業システムの第2の実施の形態において検査補修装置による鉛直面内の検査対象を検査中の状態を示す斜視図である。
【図19】本発明に係る作業システムの第2の実施の形態において検査補修装置による水平面内の検査対象を検査中の状態を示す斜視図である。
【図20】本発明に係る作業システムの第3の実施の形態におけるアクセス装置の側面図である。
【図21】本発明に係る作業システムの第4の実施の形態における検査補修装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る作業システムの実施形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
[第1の実施の形態]
図11は、本発明に係る作業システムの第1の実施の形態における作業対象である原子炉の一部を切り出した斜視図である。
【0022】
原子炉を収める原子炉圧力容器1の内部には、円筒状のシュラウド2が設けられている。シュラウド2の外面と原子炉圧力容器1の内面との間には、ジェットポンプ3が配置されている。ジェットポンプ3には、インレットミキサ5を介してディフューザ8が接続されている。ディフューザ8には、ライザー管4が接続されている。
【0023】
ライザー管4は、鉛直上方に延び、上端において下方に折れ曲がっている。ライザー管4の鉛直に延びる部分は、ライザーブレース9によって原子炉圧力容器1に固定されている。ライザーブレース9は、ライザー管4よりも少し広い間隔をあけて原子炉圧力容器1の内面からシュラウド2の外面に向かって延びる板と、この板の先端をつなぐ板とで構成されている。ライザー管4は、原子炉圧力容器1の内面とライザーブレース9とで形成された空間を通過している。
【0024】
ライザー管4は、原子炉圧力容器1を貫通するエルボ4aと溶接により接続されている。本実施の形態の作業システムは、ライザー管4とエルボ4aとの溶接部を作業対象とし、この溶接部の溶接線49の検査を行う。
【0025】
図1は、本実施の形態の作業システムの正面図である。図2は、本実施の形態の作業システムを用いた作業中における補修検査装置の側面図である。なお、図2には、補修検査装置の姿勢が変化した状態を破線で示した。
【0026】
この作業システムは、検査補修装置14を有している。検査補修装置14は、ベース24と、第1ロータリシリンダ27と、第2ロータリシリンダ28と、2組の回転ローラ25およびガイドローラ26と、アーム20とを有している。ベース24は、鉛直方向に延びる伸縮ガイド19によって吊り下げられている。ベース24は、たとえば上面が水平で、下面が円弧を描くものである。
【0027】
アーム20は、複数の部分20a,20b,20c,20d,20e,20fに分割されている。アーム20のそれぞれの部分20a,20b,20c,20d,20e,20fは、円弧状に形成されている。
【0028】
アーム20のそれぞれ部分20a,20b,20c,20d,20e,20fは、隣り合う部分とリンク22a,22b,22c,22d,22eで結合されている。また、アーム20のそれぞれのリンク22a,22b,22c,22d,22eに対応して、エアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eが設けられている。アーム20の1つの部分20fには、円弧の中心に向かう検査面を持つ検査プローブ23が固定されている。
【0029】
それぞれのエアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eは、たとえば圧縮空気を供給されて伸縮する。たとえば、圧縮空気の供給が遮断された場合、エアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eは、伸縮自在となることが好ましい。また、エアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eは、電力などの他の駆動力を供給されて伸縮するものであってもよい。この場合も、その駆動力の供給が遮断されたときには、伸縮自在となることが好ましい。
【0030】
エアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eの伸縮によって、それぞれのリンク22a,22b,22c,22d,22eでのアーム20のそれぞれの部分20a,20b,20c,20d,20e,20fの結合角度は変化する。それぞれのリンク22a,22b,22c,22d,22eでの結合角度の変化によって、アーム20の全体の形状は、変化可能である。
【0031】
エルボ4aの検査の際には、アーム20は、全体としては、エルボ4aのライザー管4との接合部分の外面に沿った閉じた円形となる。この際、検査プローブ23は、エルボ4aの外面に押しつけられる。検査プローブ23は、たとえば超音波検査装置であって、押しつけられたエルボ4aの溶接線49の健全性を超音波によって検査する。
【0032】
アーム20は、回転ローラ25と回転ローラ25に対して小さな隙間を挟んで設けられたガイドローラ26とに挟まれている。回転ローラ25およびガイドローラ26は、2組設けられている。
【0033】
回転ローラ25は、回転センサ付駆動モータ31によって駆動されて、アーム20が閉じた円形となった状態におけるエルボ4aの中心軸の周りにアーム20を回転させる方向に回転する。つまり、アーム20は、回転ローラ25によって、ベース24に対して回転運動をする。また、アーム20の端部に外れ止めなどを設けることによって、アーム20がベース24に対して所定の角度以上回動しないようにしておく。
【0034】
第1ロータリシリンダ27および第2ロータリシリンダ28は、伸縮ガイド19が延びる方向に対してそれぞれ垂直な軸の周りに、ベース24を回動させる。第1ロータリシリンダ27は、アーム20の回転ローラ25による回転面内でベース24を回動させる。つまり、第1ロータリシリンダ27は、ベース24を水平に対して傾斜させる傾斜手段である。
【0035】
第2ロータリシリンダ28は、アーム20の回転ローラ25による回転面を回動させる。つまり、第2ロータリシリンダ28は、アーム20の回転面が変化するようにベース24を旋回させる旋回手段である。
【0036】
第1ロータリシリンダ27および第2ロータリシリンダ28は、たとえば圧縮空気を供給されて回動する。圧縮空気の供給が遮断された場合、第1ロータリシリンダ27および第2ロータリシリンダ28は、回転自在となることが好ましい。また、第1ロータリシリンダ27および第2ロータリシリンダ28は、電力などの他の駆動力を供給されて回転するものであってもよい。この場合も、その駆動力の供給が遮断されたときには、回転自在となることが好ましい。
【0037】
検査補修装置14は、さらに、2つのクランプ47,48およびこれらのクランプ47,48を移動させる2つのエアシリンダ29,30を有している。2つのクランプ47,48は、エアシリンダ29,30によって、それぞれ原子炉圧力容器1の内面およびライザー管4に向かって移動する。
【0038】
エアシリンダ29,30は、それぞれ圧縮空気を供給されて、伸縮する。圧縮空気の供給が遮断された場合、エアシリンダ29,30は、伸縮自在となることが好ましい。また、エアシリンダ29,30の代わりに、電力などの他の駆動力を供給されて伸縮するものを用いてもよい。この場合も、その駆動力の供給が遮断されたときには、伸縮自在となることが好ましい。
【0039】
また、補修検査装置14は、監視カメラ32を有している。監視カメラ32は、第2ロータリシリンダ28の回動によって、ベース24の姿勢の変化に合わせて向きが変化するようになっている。つまり、監視カメラ32の撮像方向は、常にベース24に向かうようになっている。監視カメラ32の撮像方向を自由に変化させられるように、別途駆動機構を設けてもよい。
【0040】
図3は、本実施の形態の作業システムを用いた作業中における原子炉圧力容器内の立断面図である。図4は、本実施の形態におけるアクセス装置の側面図である。
【0041】
この作業システムは、アクセス装置15を有している。アクセス装置15は、台車16の上に載置されている。台車16は、シュラウド2の上端縁に載っている。台車16は、シュラウド2の上端縁に沿って移動可能である。検査補修装置14を吊り下げる伸縮ガイド19は、アクセス装置15に吊り下げられている。
【0042】
アクセス装置15を載せる台車16は、水平面内を回転するガイド輪34および補助輪35を有している。ガイド輪34は、シュラウド2上端の上部リング10の内面に接するように設けられている。補助輪35は、シュラウド2よりも外側に設けられている。また、台車16は、鉛直面内を回転する車輪33を有している。この車輪33は、シュラウド2の上部リング10の上面に形成された水平面に接するように設けられる。
【0043】
車輪33には、たとえば歯車を介して、プ一リとタイミングベルトで連結された回転センサ付駆動モータが連結されている。この回転センサ付駆動モータの回転によって、この車輪33が回転する。その結果、台車16は、シュラウド2の上端縁に沿って移動する。この際、台車16は、ガイド輪34および補助輪35にガイドされることにより、走行中の姿勢が安定する。
【0044】
台車16の走行距離は、回転センサ付駆動モータの回転数を測定することによって求められる。また、シュラウド2の上部リング10の上面に接する計測用車輪を設けて、走行距離を測定してもよい。さらに、台車16の原子炉圧力容器1に向かう側に位置検出センサ37を備えて、シュラウドラグ11などの位置を検出してもよい。
【0045】
また、台車16の上部には、原子炉圧力容器1の内面に対して近づいたり離れたりする方向に移動するスライド機構36が設けられている。このスライド機構36は、たとえば回転センサ付駆動モータと、ボールねじおよびナットの組み合わせとを備えている。回転センサ付駆動モータの回転によって、ボールねじおよびナットを駆動して、原子炉圧力容器1の内面に近づいたり離れたりすることができる。
【0046】
台車16の上には、ケーブル処理装置17が搭載されている。ケーブル処理装置17は、たとえばモータを備えていて、ケーブル18を繰り出し、あるいは巻き取る。ケーブル18は、ケーブルガイド38でガイドされ、滑車39に掛けられている。このケーブル18のケーブル処理装置17に対して反対側の端部は、伸縮ガイド19の下端に固定されている。ケーブル処理装置17によるケーブル18の繰り出しおよび巻き取りによって、伸縮ガイド19は、上下に伸縮する。ケーブル18の繰り出し量あるいは巻き取り量は、滑車39の回転量を検出する回転センサ40によって検出される。また、ケーブル処理装置17に備えられたモータを回転センサ付モータとして、そのモータの回転数から繰り出し量あるいは巻き取り量を求めてもよい。
【0047】
図5は、本実施の形態の伸縮ガイドが伸びた状態を示す側面図である。
【0048】
伸縮ガイド19は、たとえば直線状の溝が形成された鋼性のプレートの集合体であって、ケーブル18の繰り出しによって順次繰り出され、ケーブル18の巻き取りによって順次重なり合うようになっている。伸縮ガイド19は、それぞれのプレートが他のプレートの溝と係合することにより、直線状にのみ移動するようになっている。また、これらのプレートの端部には、隣り合うプレートから離れないようにストッパが設けられている。ケーブル処理装置17でケーブル18を繰り出し、あるいは巻き取ることにより、伸縮ガイド19が直線上に伸縮し、ケーブル18のねじれによる回転や揺れが抑えられ、検査補修装置14は安定して昇降する。
【0049】
検査補修装置14への圧縮空気などの駆動力の供給は、たとえばケーブル18を介して、あるいはケーブル18とは別途設けられたチューブなどを介して行われる。また、検査補修装置14の制御、検査プローブ23が検出した信号の伝達などは、たとえばケーブル18中に通した電線、あるいは、別途設けた信号ケーブルなどを介して行われる。
【0050】
このような作業システムを用いて、エルボ4aの溶接線49の検査が行われる。検査の際、検査補修装置14は、たとえば最も上方に引き上げた状態で台車16によってライザーブレース9の上方まで移動される。これにより、炉内構造物のシュラウドラグ11、LPCIカップリング12、炉心スプレイ配管などに干渉しないように、検査補修装置14を移動させることができる。その後、ライザーブレース9の隙間を通して、検査補修装置14をエルボ4aの近傍に下降させる。検査補修装置14の下降の際には、監視カメラ32で撮影した画像に基づいて、他の構造物に干渉しないように、自動あるいは手動で、検査補修装置14の位置を変化させてもよい。
【0051】
図6は、本実施の形態において検査補修装置のライザーブレース通過時の正面図である。
【0052】
ライザーブレース9の隙間を通過する際、検査補修装置14は、検査時とは異なる姿勢をとる。ベース24は、第1ロータリシリンダ27の回動によって、上面が水平に対して傾いた状態になる。これにより、ベース24は、上面が水平となった姿勢のときに比べて、鉛直方向への投影形状が小さくなる。その結果、ライザーブレース9の隙間を通過しやすくなる。
【0053】
アーム20は、それぞれのエアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eが伸びることにより、閉じた円形ではなく、鉛直方向に延びた形状となる。このとき、アーム20の最も上の部分20aがアーム20の回転ローラ25に係合している。これにより、アーム20の鉛直方向への投影形状が小さくなり、ライザーブレース9の隙間を通過しやすくなる。
【0054】
本実施の形態においては、検査補修装置14の下降の際、ベース24は図6において左側が低くなるように傾いており、アーム20は、ベース24の図6における左側から下方に延びた姿勢とする。アーム20およびベース24がライザーブレース9の隙間を通過するまで、伸縮ガイド19は、ライザーブレース9の隙間の水平方向中央部を通る位置にある。アーム20およびベース24がライザーブレース9の隙間を通過した後、伸縮ガイド19は、傾いたベース24の低い方の側に少し移動される。台車16の移動によって伸縮ガイド19を水平方向に移動させてもよいし、伸縮ガイド19をエルボ4aの半径の半分程度水平方向に移動させる機構をアクセス装置15に別途設けてもよい。
【0055】
このようにして、台車16と搭載されたケーブル処理装置17と伸縮ガイド19を制御することにより、検査補修装置14を炉内構造物のシュラウドラグ11、LPCIカップリング12、炉心スプレイ配管13に干渉しないように移動させ、ジェットポンプ3の検査部位のひとつであるエルボ4aまで接近させることができる。台車16、ケーブル処理装置17および伸縮ガイド19は、自動制御してもよい。
【0056】
図7は、本実施の形態において検査補修装置が最も下降した位置における正面図である。
【0057】
この検査作業において検査補修装置14が最も下降した位置では、ベース24の下面の円弧は、エルボ4aの外周に沿うように配置される。このとき、伸びたアーム20の最も上の部分20aは、エルボ4aの外周に沿った位置となる。検査補修装置14を下降させる際、最も下降させた状態となる前に、アーム20の下端が何らかの構造物に接触する場合には、下降の途中で適宜アーム20の形状を変化させてもよい。
【0058】
図8ないし図10は、本実施の形態において検査補修装置のアームがエルボを囲む様子を示す正面図である。図7の状態でエルボ4aの近傍に配置された検査補修装置14は、図8ないし図10の状態に順次変化していく。
【0059】
まず、第1ロータリシリンダ27を駆動して、ベース24の上面が水平となるようにベース24の姿勢を変化させる。この際、伸縮ガイド19を水平方向に移動させて、伸縮ガイド19がエルボ4aの中心の鉛直上方となるようにする。
【0060】
次に、2つのエアシリンダ29,30が伸びてクランプ47,48を原子炉圧力容器1の内面およびライザー管4に向かって移動させる。それぞれのクランプ47,48が原子炉圧力容器1の内面およびライザー管4に押しつけられることによって、検査補修装置14全体の姿勢が安定する。この際、第2ロータリシリンダ28の回転中心軸は、エルボ4aの中心軸が描く弧の中心にできるだけ近い位置であることが好ましい。
【0061】
検査補修装置14の姿勢を安定させた後、回転ローラ25を駆動して、アーム20をベース24に対して移動させる。本実施の形態では、図8ないし図10における右に向かってアーム20を移動させている。また、アーム20をベース24に対して移動させるのにあわせてエアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eを順次縮めて、アーム20をエルボ4aの外周に沿った形状としていく。最後に、両端部のエアシリンダ21a,21eを縮めることにより、アーム20が、エルボ4aに巻きつき、図1に示すような閉じた円形となる。このような手順により、狭隘な空間内であっても、アーム20をライザーブレース9と原子炉圧力容器1との間の空間の通過に適した形状から、検査に適した形状に変化させることができる。
【0062】
このようにして、検査補修装置14の検査プローブ23は、エルボ4aの溶接線49に接触する。エルボ4aの溶接線49に接触した検査プローブ23は、超音波を発し、受けることなどにより、エルボ4aの検査を行う。その後、回転ローラ25を駆動してアーム20を少し回転させる。これにより、検査プローブ23をエルボ4aの溶接線49の別の位置に接触させる。その後、超音波を発し、受けることなどにより、エルボ4aの溶接線の別の部分の検査を行う。順次、この作業を繰り返すことにより、アーム20はエルボ4aの周方向に走行し、エルボ4aの外周全体にわたって溶接線49の検査を行うことができる。
【0063】
アーム20を回転させる際には、エアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eの全部または一部を伸ばして、検査プローブ23がエルボ4aと接触しない状態としてもよい。また、アーム20を回転移動させながら、連続的に検査を行ってもよい。また、検査の際、監視カメラ32によって、アーム20などの動きを観察して、不具合の発生の有無を確認するなどしてもよい。
【0064】
次に、2つのエアシリンダ29,30を伸ばしてクランプ47,48を原子炉圧力容器1の内面およびライザー管4に押しつけた状態のまま、第2ロータリシリンダ28をたとえば90度回動させる。これにより、ベース24がエルボ4aの水平面内の溶接線と向かい合う位置まで移動する。この移動の際には、必要に応じてエアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eの全部または一部を伸ばし、アーム20および検査プローブ23がエルボ4aと干渉しない状態としておく。
【0065】
このようにして、アーム20を、エルボ4aの水平面内の溶接線49に接触させる。その後、エルボ4aの鉛直面内の溶接線49の検査と同様に、水平面内の溶接線の検査を行う。
【0066】
作業システムは、これらの一連の作業を自動で行えるように制御装置を有していてもよい。この制御装置は、ベース24の傾斜角度、ベース24の上下の移動量、アーム20の回転角度、および、アクセス装置15の走行距離を測定するセンサ群から信号を伝達される。伝達されたこれらの信号に基づいて、制御装置は、検査補修装置14の位置、姿勢を認識し、所定の作業が行えるようにアクセス装置15によって検査補修装置14を移動させ、また検査補修装置14の姿勢を変化させる。
【0067】
本実施の形態では、アーム20に検査プローブ23を取り付けた用いた場合について説明したが、他の作業手段をとりつけてもよい。たとえば、検査プローブ23の代わりに、レーザーピーニングヘッドを取り付けて、アーム20を回転させながらエルボ4aにレーザーピーニング処理を施してもよい。
【0068】
このように、本実施の形態によれば、ジェットポンプ3のライザー管4の溶接線の点検、検査、補修などを行うにあたり、天井クレーンや作業台車を使用する必要がない。このため、燃料交換中であっても、並行して点検などを行うことができる。また、各種センサを設けることにより、装置の移動あるいは検査を自動化し、あるいは、遠隔操作することができる。その結果、作業に要する人手作業を削減するとともに、作業時間を短縮することができる。その結果、定検工程の短縮とコスト低減に寄与することができる。
【0069】
本実施の形態の作業システムにおいて、第1ロータリシリンダ27は、ベース24を水平に対して傾ける傾斜手段として機能している。ベース24を水平に対して傾けることにより、ベース24の鉛直方向の投影面積が小さくなる。このため、検査補修装置14を、ライザーブレース9と原子炉圧力容器1との間の狭い領域を容易に通過させることができる。
【0070】
さらに、複数の部分20a,20b,20c,20d,20e,20fをリンク22a,22b,22c,22d,22eで結合したアーム20は、伸縮手段であるエアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eによって、閉じた円形の状態からほぼ直線上に延びた状態に変化させることができる。つまり、アーム20をベース24から下方にほぼ直線上に垂れ下がった形状とすることにより、溶接線49の検査などの際の円形の状態に比べて、鉛直方向への投影形状を小さくすることができる。したがって、検査補修装置14をライザーブレース9と原子炉圧力容器1との間の狭い領域を通過させることが、さらに容易になる。
【0071】
したがって、本実施の形態によれば、沸騰水型原子炉のジェットポンプ近傍などの狭隘な領域に設置された配管の溶接部の洗浄、点検、検査予防保全、補修などの作業が容易に行える。
【0072】
また、第1ロータリシリンダ27は、駆動力の供給が遮断されると、回転自在の状態となる。このため、なんらかの不具合によって、検査補修装置14への駆動力の供給がなくなった場合、第1ロータリシリンダ27が回転自在の状態となり、アーム20などに働く重力によって、ベース24はいずれかの方向に最も傾いた姿勢となる。つまり、鉛直方向の投影面積が小さい姿勢となる。
【0073】
同様に、アーム20の形状を変化させるエアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eは、駆動力の供給が遮断されると、伸縮自在の状態となる。このため、何らかの不具合によって、検査補修装置14への駆動力の供給がなくなった場合、全てのエアシリンダ21a,21b,21c,21d,21eが伸縮自在の状態となり、重力によって、アーム20はベース24から垂れ下がった状態となる。つまり、鉛直方向の投影面積が小さい姿勢となる。
【0074】
このため、検査補修装置14がライザーブレース9と原子炉圧力容器1との間の狭い領域よりも下方に位置しているときに駆動力の供給が遮断されても、容易にその狭い領域を通して検査補修装置14を引き上げることができる。このように、本実施の形態によれば、作業システムあるいはこの作業システムに駆動力を与えるシステムなどに不具合が生じたとしても、検査補修装置14を原子炉圧力容器1の外部に容易に取り出すことができる。
【0075】
[第2の実施の形態]
図12は、本発明に係る作業システムの第2の実施の形態における検査補修装置の正面図である。
【0076】
本実施の形態の検査補修装置は、第1の実施の形態における複数の部分が結合して変形可能なアーム20(図1参照)の代わりに、単一のアーム43を用いている。このアーム43は、検査対象のエルボ4aよりも若干大きい径のほぼ半円形に形成されている。
【0077】
アーム43は、ウオーム41を介してベース24に係合されている。ウオーム41aは、たとえばウオームホイールで回転センサ付駆動モータ42aに連結されている。アーム43の両端部には、それぞれ検査プローブ44a,44bが駆動機構45a,45bを介して取り付けられている。
【0078】
図13は、本実施の形態における検査補修装置を下降させる際の姿勢を示す正面図である。図14は、本実施の形態における検査補修装置がライザーブレース近傍を通過する状態を示す上面図である。図15は、本実施の形態における検査補修装置がライザーブレース近傍を通過する状態を示す斜視図である。
【0079】
ライザーブレース9の隙間を通過する際、検査補修装置は、検査時とは異なる姿勢をとる。ベース24は、第1ロータリシリンダ27の回動によって、上面が水平に対して傾いた状態になる。この際、回転センサ付駆動モータ42aによってウオーム41aを回転させ、アーム43の姿勢を変化させる。これにより、2つの検査プローブ44a,44bが鉛直方向に並ぶ位置、すなわちアーム43の鉛直方向への投影面積が最も小さくなる位置まで、アーム43を回転移動する。その結果、ベース24およびアーム43は、検査時の姿勢に比べて、鉛直方向への投影形状が小さくなる。その結果、ライザーブレース9の隙間を通過しやすくなる。さらに、ウオーム41aを別の回転センサ付駆動モータ42bに連結された別のウオーム41bで移動させてもよい。
【0080】
図13に示す姿勢で下降した検査補修装置は、検査対象であるエルボ4aの近傍に到達したら、図12に示す姿勢に変化する。つまり、エルボ4aの近傍に到達したときには、アーム43が下に向かって開いた状態、すなわち、検査プローブ44a,44bが水平に向かい合う姿勢としておく。その姿勢で、アーム43がエルボ4aを囲む位置まで検査補修装置がさらに下降する。
【0081】
図16は、本実施の形態において検査補修装置の検査中の状態を示す側面図である。
【0082】
このようにして、検査補修装置が検査位置まで到達したら、2つのエアシリンダ29,30が伸びてクランプ47,48を原子炉圧力容器1の内面およびライザー管4に向かって移動させる。それぞれのクランプ47,48が原子炉圧力容器1の内面およびライザー管4に押しつけられることによって、検査補修装置全体の姿勢が安定する。
【0083】
図17は、本実施の形態において検査補修装置による鉛直面内の検査対象を検査中の状態を示す正面図である。図18は、本実施の形態において検査補修装置による鉛直面内の検査対象を検査中の状態を示す斜視図である。
【0084】
検査補修装置全体の姿勢が安定した後、回転センサ付駆動モータ42aによってウオーム41aを回転させる。これにより、アーム43をエルボ4aの外周に沿って回転させながら、アーム43の両端に設けられた検査プローブ44a,44bでエルボ4aの鉛直面内の溶接線49の検査を行う。
【0085】
2つの検査プローブ44a,44bをアーム43の両端部に設けているため、アーム43を180度回動させることにより、エルボ4aの全周を検査することが可能である。また、監視カメラ46で検査補修装置の移動作業から検査部位の検査状況までの一連の状況を確認できる。
【0086】
図19は、本実施の形態において検査補修装置による水平面内の検査対象を検査中の状態を示す斜視図である。
【0087】
検査補修装置による鉛直面内の溶接線49の検査が終了したら、第2ロータリシリンダ28を90度回動させてアーム43が水平面内を回動できる姿勢に変化させる。これにより、水平面内の溶接線の検査を行うことができる。
【0088】
このように、本実施の形態によれば、ジェットポンプ3のライザー管4の溶接線の点検、検査、補修などを行うにあたり、天井クレーンや作業台車を使用する必要がない。このため、燃料交換中であっても、並行して点検などを行うことができる。また、各種センサを設けることにより、装置の移動あるいは検査を自動化し、あるいは、遠隔操作することができる。その結果、作業に要する人手作業を削減するとともに、作業時間を短縮することができる。その結果、定検工程の短縮とコスト低減に寄与することができる。
【0089】
また、ライザーブレース近傍などを通過させる際には、鉛直方向の投影面積が小さい姿勢に変化させることができる。このため、沸騰水型原子炉のジェットポンプ近傍などの狭隘な領域に設置された配管の溶接部の洗浄、点検、検査予防保全、補修などの作業が容易に行える。
【0090】
[第3の実施の形態]
図20は、本発明に係る作業システムの第3の実施の形態におけるアクセス装置の側面図である。
【0091】
本実施の形態の作業システムは、吊り具50を有している。アクセス装置15は、吊り具50によって吊りあげられる。
【0092】
吊り具50は、たとえば直方体の枠構造に形成される。吊り具50の下端には、水平方向に延びる掴み部51a,51bが設けられている。掴み部51a,51bは、アクセス装置15に形成された水平方向の開口に係合している。
【0093】
吊り具50の上面には、吊り金具52が取り付けられている。吊り金具52は、ホイスト、クレーンあるいは遊泳移動する搬送ビークルによって把持される。
【0094】
このような吊り具50を用いると、作業システムの搬送作業の信頼性が向上し、また、移動の作業時間が短縮される。また、遊泳移動する搬送ビークルを適用するとクレーンを使用することなくアクセス装置15の設置や移動が可能となる。つまり、定検作業における他の作業との干渉を少なくすることができる。
【0095】
[第4の実施の形態]
図21は、本発明に係る作業システムの第4の実施の形態における検査補修装置の正面図である。
【0096】
本実施の形態の検査補修装置は、第2の実施の形態における伸縮ガイド19、第1ロータリシリンダ27などの代わりに、2本のケーブル53を有している。検査補修装置は、これらの2本のケーブル53でアクセス装置15(図4参照)から吊り下げられている。2本のケーブル53は、連結部材55に結合されている。連結部材55は、ベース24に固定されている。アクセス装置15には、2つのケーブル処理装置17(図4参照)が設けられていて、2本のケーブル53は、独立して繰り出され、あるいは巻き取られる。
【0097】
検査時には、検査補修装置は、2本のケーブル53の繰り出し量を同じとして、ベース24の上面が水平になるようにする。これにより、第2の実施の形態と同様の検査を行うことができる。
【0098】
ライザーブレース9(図1参照)の隙間を通過する際、検査補修装置は、一方のケーブル53の繰り出し量を他方に比べて短くすることにより、ベース24の上面が水平に対して傾いた状態とする。これにより、第2の実施の形態におけるライザーブレース9の隙間を通過する際の姿勢(図13参照)と同様の姿勢をとることができる。
【0099】
このように、本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様に、ライザーブレース近傍などを通過させる際には、鉛直方向の投影面積が小さい姿勢に変化させることができる。このため、沸騰水型原子炉のジェットポンプ近傍などの狭隘な領域に設置された配管の溶接部の洗浄、点検、検査予防保全、補修などの作業が容易に行える。
【0100】
また、2本のケーブル53の繰り出し量あるいは巻き取り量に差を持たせることによりベース24を傾けるができる。ケーブル53の繰り出しあるいは巻き取りは、水面よりも上方に位置するアクセス装置15上で行われている。このため、何らかの不具合が生じた場合であっても、水面より上方での作業でベース24の姿勢を変化させることができる。このため、何らかの不具合が生じた場合であっても、容易に、ライザーブレースの隙間などの狭隘な領域を通過させて検査補修装置を引き上げ、不具合に対応することができる。
【0101】
[他の実施形態]
上述の各実施形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。また、各実施形態の特徴を組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…原子炉圧力容器、2…シュラウド、3…ジェットポンプ、4…ライザー管、4a…エルボ、5…インレットミキサ、8…ディフューザ、9…ライザーブレース、10…上部リング、11…シュラウドラグ、12…LPCIカップリング、13…炉心スプレイ配管、14…検査補修装置、15…アクセス装置、16…台車、17…ケーブル処理装置、18…ケーブル、19…伸縮ガイド、20…アーム、21…エアシリンダ、22…リンク、23…検査プローブ、24…ベース、25…回転ローラ、26…ガイドローラ、27…第1ロータリシリンダ、28…第2ロータリシリンダ、29,30…エアシリンダ、31…回転センサ付駆動モータ、32…監視カメラ、33…車輪、34…ガイド輪、35…補助輪、36…スライド機構、37…位置検出センサ、38…ケーブルガイド、39…滑車、40…回転センサ、41…ウオーム、42…回転センサ付駆動モータ、43…アーム、44…検査プローブ、45…駆動機構、46…監視カメラ、47,48…クランプ、49…溶接線、50…吊り具、51…掴み部、52…吊り金具、53…ケーブル、55…連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の作業対象に対して所定の作業を行う作業システムにおいて、
ベースと、
前記ベースを水平に対して傾斜させる傾斜手段と、
前記ベースを上下に移動させる昇降手段と、
前記ベースに取り付けられて前記作業対象の外面に沿って延びるアームと、
前記アームを回動させる回転手段と、
前記アームに取り付けられた作業手段と、
を有することを特徴とする作業システム。
【請求項2】
前記アームは相対的に回転可能な連結部で連結された第1部分および第2部分と前記連結部を挟んで前記第1部分および前記第2部分に結合されて伸縮する伸縮手段とを備えることを特徴とする作業システム。
【請求項3】
前記伸縮手段は外部から駆動力を供給されて伸縮するものであって、その駆動力の供給が遮断されると伸縮自在となるものであることを特徴とする請求項2に記載の作業システム。
【請求項4】
前記傾斜手段は外部から駆動力を供給されて回動する回動機構であって、その駆動力の供給が遮断されると回動自在となるものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の作業システム。
【請求項5】
前記傾斜手段は独立して繰り出しおよび巻き取りが可能な鉛直方向に延びる2本のロープであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の作業システム。
【請求項6】
前記アームの回動面が変化するように前記ベースを旋回させる旋回手段をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の作業システム。
【請求項7】
前記アームは半円状に形成され、前記作業手段は前記アームの両端部にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の作業システム。
【請求項8】
前記ベースに固定されたカメラをさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の作業システム。
【請求項9】
前記昇降手段は鉛直方向に延びそれぞれ直線状の溝が形成され互いにそれらの溝に係合した複数のプレートとこれらのプレートを前記溝に沿って移動させるケーブルとを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の作業システム。
【請求項10】
前記作業対象は原子炉圧力容器とこの原子炉圧力容器内に設けられた円筒状の構造物との間に設けられた配管であって、
前記原子炉圧力容器の内面と前記円筒状の構造物の間の空間で互いに対向する2つの面に向かってそれぞれ突出して前記ベースを固定する固定手段をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の作業システム。
【請求項11】
前記構造物の上端縁上を走行し前記ベースを吊り下げるアクセス装置をさらに有することを特徴とする請求項11項に記載の作業システム。
【請求項12】
前記ベースの水平に対する傾斜角度と前記ベースの上下の移動量と前記アームの回動角度と前記アクセス装置の走行距離をそれぞれ測定するセンサ群と、前記センサ群から伝達される信号に基づいて前記傾斜手段と前記昇降手段と前記アームと前記回転手段と前記アクセス装置とを制御する制御装置をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の作業システム。
【請求項13】
管状の作業対象に対してベースと前記ベースに取り付けられて前記作業対象の外面に沿って延びて回動可能なアームと前記アームに取り付けられた作業手段を備えた作業システムで所定の作業を行う作業方法において、
前記ベースを水平に対して傾斜させ、前記アームを回動させて前記ベースおよび前記アームの鉛直方向への投影面積を減少させる第1工程と、
前記第1工程の後に、前記ベースを前記作業対象に向かって下降させる第2工程と、
前記第2工程の後に、前記ベースの姿勢を水平に戻し、前記アームを回動させながら前記作業手段によって前記作業対象に対して作業を行う第3工程と、
前記第3工程の後に、前記ベースを水平に対して傾斜させ、前記アームを回動させて前記ベースおよび前記アームの鉛直方向への投影面積を減少させる第4工程と、
前記第4工程の後に、前記ベースを上昇させる第5工程と、
を有することを特徴とする作業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−93228(P2012−93228A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240858(P2010−240858)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】