説明

作業機械、その操作方法及びエネルギー回生シリンダ

【課題】作業機械の操作の信頼性を高める。
【解決手段】少なくとも1つの油圧駆動シリンダによって動作する可動部を備える作業機械、特に掘削機又は荷役機械に関し、上記可動部の動作からエネルギーを回生する少なくとも1つのエネルギー回生シリンダが設けられ、当該エネルギー回生シリンダはその基部側4にガスが充填されていて、さらに媒体が充填された環状空間6を有している。このエネルギー回生シリンダには、そのピストンロッド1の突然の進出時における環状空間からの媒体の流れを制限する流量制限部8が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの油圧駆動シリンダによって動作する可動部と、該可動部の動作からエネルギーを回生するエネルギー回生シリンダとを備え、該エネルギー回生シリンダはその基部側にガスが充填されていて、さらに媒体が充填されている環状空間を有する作業機械に関する。本発明は、作業機械、特に掘削機又は荷役機械に関する。
【背景技術】
【0002】
このような作業機械は特許文献1で公知であり、その内容全ては本願の主題となっている。エネルギー回生シリンダは、例えば可動部の降下による位置エネルギーをガスが充填された基部側において該ガスを圧縮することによって蓄え、蓄えた位置エネルギーを可動部の上昇を補助するのに再度利用する。当該エネルギー回生シリンダの負荷状態において、通常、大きなエネルギーが圧縮ガスに蓄えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2008 034 582号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上述のような作業機械の操作の信頼性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1に係る作業機械によって達成される。本発明に係る作業機械は、少なくとも1つの油圧駆動シリンダによって動作する可動部と、該可動部の動作からエネルギーを回生する少なくとも1つのエネルギー回生シリンダとを備え、該エネルギー回生シリンダはその基部側にガスが充填されていて、さらに媒体が充填された環状空間を有している。このエネルギー回生シリンダのピストンロッドの突然の進出時に上記環状空間からの上記媒体の流れを制限する流量制限部が設けられてもよい。本発明は、特に水平軸周りに回動可能なブーム又はアームが可動部を構成するような機械に利用され、特に掘削機又は荷役機械に利用されると有利である。
【0006】
本発明の発明者らは、何らかの理由でエネルギー回生シリンダの支承点もしくは支承部品又は装置に欠陥がある場合に、エネルギー回生シリンダに蓄積された高いエネルギーが負荷状態で安全性リスクになりうることを確認した。本発明は、エネルギー回生シリンダの支承点又は密閉点が破損してエネルギー回生シリンダのピストンロッドが機械的に安全でない場合に該ピストンロッドが制御できない速度で進出するのを防ぐために、そのような突然の故障による環状空間からの媒体の流れを制限する流量制限部を備えている。これにより、エネルギー回生シリンダのピストンロッドの進出速度が制御される。その結果、エネルギー回生シリンダ、作業機械、又は人への被害を防止することができる。
【0007】
この目的のために、第1実施形態では、環状空間が流量制限部を介して外部容器に連通し、ピストンロッドの進出によってこの外部容器内を媒体が流れる。特に、追加の容器は、エネルギー回生シリンダに外部容器として組み込まれ、ピストンロッドの進出によって媒体を収容し、ピストンロッドの後退によって媒体を環状空間に充填する。
【0008】
本発明では、非圧縮性の媒体が利用されるのが好ましい。特に、油圧オイルが利用されるのが好ましい。その場合、エネルギー回生シリンダの伸長は、非圧縮性媒体の流速によって制御される。
【0009】
リストリクタ又はダイヤフラムを流量制限部として利用すると有利である。この流量制限部は、リストリクタ又はダイヤフラムによって流速が設定されうるように調節されるのが有利である。
【0010】
弁装置、特に体積流量を調節可能な弁装置が流量制限部として利用されてもよい。例えば、流量制御弁又は破裂管プロテクト(burst pipe protection)がこの目的で用いられてもよい。
【0011】
本発明の他の実施形態では、環状空間は、エネルギー回生シリンダのガスが充填されている基部側に流量制限部を介して連通している。ピストンロッドを進出させるためには、流量制限部を介して環状空間と基部側との間でガス交換が実行されなければならない。これにより、ピストンロッドの進出速度が同様に制御されうる。
【0012】
流量制限部がリストリクタであると有利である。逆止弁がリストリクタと平行に配置されていると有利であり、ピストンロッドの後退時に、エネルギー回生シリンダの基部側と環状空間との間のガス流れが上記リストリクタによって制限されない。
【0013】
本発明の可能な応用例として、流量制限部は、環状空間からの媒体の流れを作業機械の制御とは独立に制限し、特に可動部の動作制御とは独立に制限する。
【0014】
さらに、流量制限部は受動要素、即ち制御部によって制御される要素でもよい。流量制限部は、損傷時に単独でエネルギー回生シリンダを安全にする役割を果たす。その結果、特に簡素且つ安価な設計が可能である。
【0015】
本発明は、特に中空ピストンロッドを備えるエネルギー回生シリンダが設けられた作業機械に利用される。作業機械及びエネルギー回生シリンダは特許文献1で公知のものとして組み立てられると有利である。
【0016】
作業機械は走行可能な作業機械、特に掘削機又は荷役機械であるとさらに有利である。この作業機械は少なくとも1つの油圧駆動シリンダによって作動する可動部を備え、エネルギー回生シリンダはこの可動部の動作からエネルギーを回生する。
【0017】
本発明に係る作業機械の可動部は、垂直回転軸周りに回転可能な該作業機械に枢動可能に連結され、1以上の油圧駆動シリンダによって垂直回転面において枢動可能であることが有利である。可動部は、特に掘削機のアーム又は荷役機械のブームである。上記走行可能な作業機械は、走行装置が設けられた車台及び垂直な回転軸周りに枢動可能に配置され且つ可動部が枢動可能に連結された上部構造を備えていると有利である。
【0018】
作業機械の一部(例えばシャベル又はグリップ)が可動部に配置されてもよい。可動部が下がると、可動部及び作業機械の一部の位置エネルギーが該可動部の次の上昇時にその重量の少なくとも一部を支えるためにエネルギー回生シリンダによって蓄積される。したがって、可動部を上昇させるときに油圧駆動シリンダで消費されるエネルギーがより少なくなる。
【0019】
本発明に係るエネルギー回生シリンダが作業機械の上部構造と可動部との間の油圧駆動シリンダとして配置されると有利である。エネルギー回生シリンダは可動部の動作時に油圧駆動シリンダと並行して動く。作業機械は特許文献1に詳細に示されているように設計されうる。
【0020】
上記作業機械に加えて、本発明は該作業機械用のエネルギー回生シリンダをさらに含んでいる。このエネルギー回生シリンダは、基部側にガスが充填され、媒体が充填された環状空間を備え、ピストンロッドの突然の動作による環状空間からの媒体の流れを制限する流量制限部が設けられている。エネルギー回生シリンダが上記のように設計されると有利である。
【0021】
本発明は、少なくとも1つの油圧駆動シリンダで動作する可動部と、該可動部の動作からエネルギーを回生する少なくとも1つのエネルギー回生シリンダとを備え、該エネルギー回生シリンダはその基部側にガスが充填されると共に媒体が充填された環状空間を有する作業機械、特に掘削機又は荷役機械の操作方法に関する。本発明によると、この方法では、ピストンロッドの不必要な動作時に環状空間からの媒体の流れが制限される。特に、エネルギー回生シリンダ又は作業機械の支承点又は支承部品の損傷によってピストンロッドがもはや機械的に安全ではなく、エネルギー回生シリンダに蓄積されたエネルギーがピストンロッドの制御できない動きを引き起こす場合に、環状空間からの媒体の流れが制限される。損傷がある場合に環状空間からの媒体の流れを制限してピストンロッドの動作を制御するため、部品や環境への損傷を防止することができる。エネルギー回生シリンダは上記のように設計や操作がなされると有利である。
【0022】
本発明は、実施形態及び図面を参照してより詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ピストンロッドが進出した状態における本発明の第1実施形態を示す図である。
【図2】ピストンロッドが後退した状態における本発明の第1実施形態を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
本発明の作業機械の実施形態を図1〜3を参照して説明する。この作業機械は、少なくとも1つの油圧駆動シリンダによって動作する少なくとも1つの可動部と、この可動部の動作からエネルギーを回生する少なくとも1つのエネルギー回生シリンダとを備えている。このエネルギー回生シリンダは、基部側にガスが充填され、この基部側が可動部の動作から回生されたエネルギーを蓄積する役割を果たしている。エネルギー回生シリンダのピストンロッドが動作して基部側のガスが圧縮される。蓄積されたエネルギーはピストンロッド上昇時に油圧駆動シリンダを補助するために再度利用される。
【0026】
本発明に係るエネルギー回生シリンダが負荷状態にある場合、このエネルギー回生シリンダは大きな内部エネルギーを蓄積している。この負荷状態でエネルギー回生シリンダの支承点若しくは他の支承部品又は設備に何らかの理由で欠陥が生じた場合、蓄積エネルギーは更なる安全措置無く制御されずに開放される。本発明は、この蓄積エネルギーが制御不能な速度でエネルギー回生シリンダのピストンロッドを進出させるのを防止し、エネルギー回生シリンダ、作業機械又は環境に損傷を与えるのを防止する。
【0027】
図1〜3に示す本発明の2つの実施形態は、シリンダジャケット2内に移動可能に配置されたピストンロッド1を有するエネルギー回生シリンダに基づくものである。シリンダジャケット2の基部側4にはガスが充填されている。さらにピストンロッド1は中空であって基部側4に向かって開口している。したがって、ピストンロッド1の内部5には同様にガスが充填されている。
【0028】
本発明に係るエネルギー回生シリンダは二重筒であるため、環状空間6はピストンロッド1とシリンダジャケット2との間に設けられている。シリンダジャケット2を向くピストンロッド1をシールするスタッフィングボックス3が設けられている一方、基部側4近くの環状空間6をシールするピストンシール7が設けられている。
【0029】
図1,2に示される本発明の第1実施形態では、環状空間6には非圧縮性媒体、好ましくは油圧オイルが充填されている。環状空間6は流量制限部8を介して外部容器9に連通している。圧縮されたエネルギー回生シリンダが例えば支承点の欠陥が原因で制御不能に伸長する場合、環状空間6内の媒体が流量制限部8を通って外部容器9に流れる。したがって、エネルギー回生シリンダが制御不能に伸長しない。
【0030】
流量制限部8がリストリクタ、ダイアフラム又は弁装置を備えると有利である。流速が流量制限部8によって設定されてもよい。弁装置は特に流量制御弁又は破裂管プロテクトでもよい。
【0031】
図1は、ピストンロッド1が進出して外部容器9に媒体が充填された状態の本発明に係るエネルギー回生シリンダを示す。図2は、ピストンロッド1が後退して外部容器9が部分的に空洞の状態の本発明に係るエネルギー回生シリンダを示す。
【0032】
図3に示される本発明の第2実施形態では、対照的に、環状空間6にガスが充填され、流量制限部10を介して基部側4に連通している。これにより、環状空間6と基部側4との間におけるガスのオーバーフローが制限され、ピストンロッド1の制御不能な進出を防止する。リストリクタ10が流量制限部として用いられると有利である。逆止弁11がこれと平行に設けられると有利であり、この逆止弁11が基部側4から環状空間6へのガスの自由流れを許容する。
【0033】
本発明は、支承点の欠陥が原因で機械的に安全でない場合における高圧条件下でのエネルギー回生シリンダの制御された伸長又は進出を保証する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本発明に係る作業機械は、信頼性のある操作を実現する用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 ピストンロッド
2 シリンダジャケット
3 スタッフィングボックス
4 基部側
5 内部
6 環状空間
7 ピストンシール
8 流量制限部
9 外部容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの油圧駆動シリンダによって動作する可動部と、該可動部の動作からエネルギーを回生する少なくとも1つのエネルギー回生シリンダとを備え、該エネルギー回生シリンダはその基部側にガスが充填されていて、さらに媒体が充填された環状空間を有する作業機械、特に掘削機又は荷役機械であって、
上記エネルギー回生シリンダのピストンロッドの突然の進出時における上記環状空間からの上記媒体の流れを制限する流量制限部が設けられていることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
上記流量制限部は、ピストンロッドの進出時に上記媒体が流れ込む外部容器に連通していることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機械において、
上記媒体は非圧縮性であることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業機械において、
上記流量制限部は、リストリクタ、ダイヤフラム、及び/又は、弁装置、特に、調節可能な容積を有するリストリクタ、ダイヤフラム、及び/又は、弁装置であることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
上記環状空間は、ガスが充填された上記エネルギー回生シリンダの上記基部側に上記流量制限部を介して連通していることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
上記流量制限部は、リストリクタであることを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項6に記載の作業機械において、
上記リストリクタと平行に逆止弁が配置されていることを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の作業機械において、
上記エネルギー回生シリンダは、中空ピストンロッドを有していることを特徴とする作業機械。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の作業機械に用いられるエネルギー回生シリンダ。
【請求項10】
少なくとも1つの油圧駆動シリンダによって動作する可動部と、該可動部の動作からエネルギーを回生する少なくとも1つのエネルギー回生シリンダとを備え、該エネルギー回生シリンダはその基部側にガスが充填されると共に媒体が充填された環状空間を有する作業機械、特に掘削機又は荷役機械の操作方法であって、
ピストンロッドの不必要な進出時における上記環状空間からの上記媒体の流れを制限することを特徴とする作業機械の操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−241900(P2012−241900A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110422(P2012−110422)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【出願人】(502087404)リープヘル−ヒュドラオリクバッガー ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】