説明

作業機械の把持装置及びこれを備えた作業機械

【課題】大きな把持力による処理対象物の把持と、微細な把持力の調整との双方が可能な作業機械の把持装置を提供すること。
【解決手段】把持駆動シリンダ19の駆動に伴い軸J2と把持部材本体22とを所定の位置関係に保持しつつ把持駆動シリンダ19からの駆動力を把持部材本体22に伝えるとともに、把持部材本体22の回動により接触する処理対象物Pから受ける反力により弾性変形して軸J2に対する把持部材本体22の後退変位を許容し、かつ、その弾発力により、把持部材本体22の後退変位に伴って処理対象物Pに対する把持部材本体22の接触圧を増加させるように、把持部材本体22と軸J2との間に設けられたコイルばね24を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の作業腕の先端に設けられ、建築解体作業や産業廃棄物の解体分別作業等を目的として処理対象物を把持するのに用いられる把持装置、及びこれを備えた作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機械の作業腕の先端に設けられる把持装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この把持装置は、前記作業腕の先端に装着されるフレームブラケットと、このフレームブラケットに開閉可能に設けられた一対のアームリンクと、これらアームリンクを開閉させるアームシリンダと、各アームリンクの先端にそれぞれ設けられた把持用リンクの連結体とを備えている。具体的に、把持用リンクの連結体は、複数の把持用リンクと、これらの把持用リンクの隣接するもの同士を連結するピンとを備え、最も先端の把持用リンクと前記回転式フレームとの間に設けられたワイヤ等の緊張性部材を緊張又は解放することにより、把持物の周囲に沿って折れ曲がるように構成されている。
【0003】
また、別の把持装置として、特許文献2に記載されたものが知られている。この把持装置は、前記作業腕の先端に装着される支持ブラケットと、この支持ブラケットに回動可能に取り付けられる一対の把持アームと、これらの把持アームを回動させるシリンダ装置とを備えている。このシリンダ装置は、両把持アームを互いに逆の向きに回動させることによって、これらの把持アームに把持動作を行わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2691795号明細書
【特許文献2】実開昭57−80554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記把持装置には、大きな把持力が要求されることがある。特に、頑強な作業対象物の破砕を目的とするものは、極めて大きな駆動力を要することから、前記シリンダ装置として大出力のものを具備する必要がある。
【0006】
また、上記のように強力な破砕等を目的とした大型の把持装置では、逆に、比較的小さな作業対象物を破壊せずに把持することは難しい。かかる強力な把持装置では、操縦者の僅かな操作によっても把持力が大きく変動するので、その操縦によって把持力を微妙に調整するのは困難である。
【0007】
ここで、特許文献1の把持装置は、把持物の周囲に沿って折れ曲がった形態とされた一対の把持用リンクの連結体によって把持物を把持することができるので、把持物を破壊せずに把持することはできるものの、このように把持物の周囲に沿って折れ曲がった形態を採ることができる把持用リンクの連結体により把持物を把持することとしているため、この把持用リンクを開閉するアームシリンダとして大出力のものを採用しても、把持用リンクの連結体が変形することにより駆動力を把持物に十分に伝えることができない。
【0008】
また、特許文献2には、前記把持アームの先端部に着脱可能に装着される補助把持体を備え、この補助把持体のうち処理対象物と接触する部位をゴム等の弾性体で構成し、比較的小型の処理対象物の把持にのみ当該補助把持体を装着することが開示されている。しかし、このような補助把持体を装着しても、シリンダ装置の駆動力はそのまま処理対象物に伝達されるため、その把持力の微細な調整を行うことは難しい。また、前記弾性体の厚みを増やすことには著しい限界があり、当該弾性体の弾性変形のみで把持力の急増を有効に吸収することは事実上不可能である。したがって、小型の処理対象物を把持する際に把持操作によって油圧シリンダ装置の出力が急激に増加した場合、これによる処理対象物の破損を回避することは難しい。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、大きな把持力による処理対象物の把持と、微細な把持力の調整との双方が可能な作業機械の把持装置及びこれを備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、先端が変位可能な作業腕をもつ作業機械の当該作業腕の先端部に設けられ、処理対象物を把持する把持装置であって、前記作業腕の先端部に回動可能に支持された第1の把持部材と、前記作業腕の先端部に回動可能に支持され、前記第1の把持部材との間で前記処理対象物を把持するように当該第1の把持部材に対して相対的に回動可能な第2の把持部材と、伸縮動作を行うことにより、前記処理対象物を把持するように前記両把持部材を相対的に回動させる把持駆動シリンダとを備え、前記第1の把持部材及び第2の把持部材のうちの少なくとも一方の把持部材は、前記把持駆動シリンダの伸縮動作により相手方の把持部材に対して相対的に回動する把持部材本体と、前記把持駆動シリンダの伸縮動作に従動するように当該把持駆動シリンダに固定されているとともに、前記把持部材本体に対して前記把持駆動シリンダの伸縮方向に所定範囲内でのみ相対変位可能となるように当該把持部材本体に設けられ、かつ、前記把持駆動シリンダと前記把持部材本体とを回動可能に連結する連結軸と、前記把持駆動シリンダの駆動に伴い前記連結軸と前記把持部材本体とを所定の位置関係に保持しつつ前記把持駆動シリンダからの駆動力を把持部材本体に伝えるとともに、前記把持部材本体の回動により接触する前記処理対象物から受ける反力により弾性変形して前記連結軸に対する把持部材本体の後退変位を許容し、かつ、その弾発力により、前記把持部材本体の後退変位に伴って前記処理対象物に対する前記把持部材本体の接触圧を増加させるように、前記把持部材本体と前記連結軸との間に設けられたばね部材とを備えていることを特徴とする作業機械の把持装置を提供する。
【0011】
この把持装置では、把持駆動シリンダの伸縮動作に伴い、この把持駆動シリンダと第1の把持部材及び第2の把持部材のうちの少なくとも一方の把持部材に含まれる把持部材本体との間に設けられたばね部材により当該把持部材本体と連結軸とが所定の位置関係に保持された状態で当該把持部材本体が閉じ方向に回動され、この把持部材本体が処理対象物に接触し、かつ、この処理対象物から受ける反力によりばね部材の弾性変形を伴いながら把持部材本体が連結軸に対して後退変位する。この把持部材本体の後退変位の範囲では、把持駆動シリンダの駆動力にかかわらず、前記処理対象物に対する把持部材本体の接触圧は、前記ばね部材の弾発力に相当する圧力となるため、当該接触圧の微細な調整を行うことが可能である。その一方、前記把持部材本体の後退変位が所定範囲を超えた時点からは、把持駆動シリンダの駆動力がそのまま処理対象物に作用するため、大きな把持力で処理対象物を把持することが可能である。
【0012】
また、本発明では、前記所定の範囲を超えた時点において連結軸から把持部材本体に対して直接駆動力が作用するように構成したから、連結軸と処理対象物を把持する把持部材本体との間に他の部材を介在させることなく把持部材本体の後退変位を実現することができる。したがって、例えば、後退変位を実現するために把持部材本体に相当する部分を2分割して両者を相対変位するように連結する構成等と比較して、処理対象物の把持や破砕を行うための構成(本発明では把持部材本体)の強度を十分に確保することができる。なお、連結軸と把持部材本体との間にはばね部材が介在しているが、このばね部材は、連結軸に対して後退変位する範囲(前記所定範囲)内でその弾発力を発揮させるためのものであり、前記所定範囲を超えた把持部材本体の回動範囲においては、連結軸と把持部材本体とが接触して連結軸から把持部材本体に対して直接駆動力が伝達される。
【0013】
具体的に、前記把持部材本体には、前記連結軸を挿通可能で、かつ、当該連結軸に対する前記把持部材本体の後退変位を許容する形状を有する貫通溝が形成され、前記把持駆動シリンダの伸縮方向のうち前記把持駆動部材を閉じる方向における前記貫通溝の内側面と前記連結軸とが当接することにより、前記所定量を超える把持部材本体の後退変位が阻止される構成とすることができる。
【0014】
前記作業機械の把持装置において、前記把持部材本体の後退変位の変位量よりも前記ばね部材の弾性変形量を大きくするための増幅手段が設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、把持部材本体の限られた後退変位の範囲内で、ばね部材による弾発力を幅広く利用することができるため、より細やかな把持力の調整が可能となる。
【0016】
具体的に、前記増幅手段は、前記連結軸と略平行な回動軸回りに前記把持部材本体に対して回動可能に取り付けられたリンク部材を備え、前記リンク部材は、前記把持部材本体との間で伸縮可能となるように前記ばね部材を保持する保持部と、前記把持駆動シリンダの伸縮動作により当該リンク部材が前記回動軸回りに回動可能となるように、前記連結軸に固定された固定部とを有し、前記回動軸から前記保持部までの回動半径は、前記回動軸から前記固定部までの回動半径よりも大きい構成とすることができる。
【0017】
この構成によれば、回動軸から保持部までの回動半径が回動軸から固定部までの回動半径よりも大きいため、連結軸の変位量よりもばね部材の弾性変形量を大きくすることができる。
【0018】
前記作業機械の把持装置において、前前記リンク部材の保持部は、前記把持駆動シリンダを挟んで前記両把持部材の回動中心軸とは反対側の位置で前記ばね部材を保持することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、処理対象物を把持する把持部材本体及び相手方の把持部材の先端部から離れた位置にばね部材を配置することができるので、ばね部材が処理対象物に接触する可能性を低くすることにより当該ばね部材の破損を抑制することができる。
【0020】
前記作業機械の把持装置において、前記第1の把持部材及び前記第2の把持部材の双方が、前記把持部材本体と、前記連結軸と、前記ばね部材とを含むことが好ましい。
【0021】
この構成によれば、一方の把持部材のみが把持部材本体等を含む構成に比べ、把持部材本体の後退変位により把持力の調整が可能であるストローク範囲が倍増する。
【0022】
また、本発明は、移動可能な作業機械本体と、この作業機械本体に搭載され、当該作業機械に対して先端が変位するように動作可能な作業腕とを備え、この作業腕の先端に前記把持装置が取り付けられる作業機械を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、把持部材本体に対する把持部材本体の弾性的な後退変位を利用して微細な把持力の調整を行うことができる一方、前記後退変位の変位量が所定量に到達した時点からは処理対象物を大きな把持力で把持することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る把持装置及びこれを備えた作業機械を示した図である。
【図2】図1の把持装置を拡大して示す正面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2の把持部材の把持動作を説明するための正面図であり、把持動作開始前の状態を示すものである。
【図5】図2の把持部材の把持動作を説明するための正面図であり、(a)は把持部材本体と処理対象物Pとが接触した状態、(b)は把持部材本体が後退変位した状態をそれぞれ示している。
【図6】図2の把持部材の把持動作を説明するための断面図であり、(a)は図5の(a)に対応する状態、(b)は図5の(b)に対応する状態をそれぞれ示している。
【図7】本発明の別の実施形態に係る把持装置を示す断面図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態に係る把持装置を示す正面図である。
【図9】本発明のさらに別の実施形態に係る把持装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る把持装置及びこれを備えた作業機械を示した図である。この図では、作業機械として油圧ショベルを利用したものが例示されているが、本発明に係る作業機械はこれに限られず、先端が変位可能な作業腕をもつ様々の作業機械について本発明の適用が可能である。
【0027】
油圧ショベル1は、下部走行体2と、その上に旋回可能に搭載される上部旋回体3とを備えている。上部旋回体3は、旋回フレーム4を有し、旋回フレーム4上に、カウンタウェイト5、キャビン6、及び作業腕7が搭載される。
【0028】
前記作業腕7は、ブーム8及びアーム9と、これらをそれぞれ駆動するためのブームシリンダ10及びアームシリンダ11を備えている。ブーム8は、旋回フレーム4上に起伏可能に(すなわち旋回フレーム4の左右方向の軸回りに回動可能に)搭載され、ブームシリンダ10の伸縮により当該起伏方向に駆動される。アーム9は、ブーム8の先端部に回動可能に連結され、アームシリンダ11の伸縮により当該回動方向に駆動される。これらブーム8及びアーム9の回動動作と、旋回フレーム4の旋回動作との組み合わせにより、当該アーム9の先端部は、自在に変位することが可能である。
【0029】
なお、本発明に係る作業機械は、旋回可能なものに限られない。また、作業腕は、一の関節を有するもの、あるいは多数の関節を有するものであってもよい。
【0030】
前記アーム9の先端部には、通常、図略のバケットがバケットピン12を介して回動可能に取り付けられるとともに、バケットシリンダ14によって当該回動方向に駆動される。具体的には、アーム9にアイドラリンク15の一端が回動可能に取り付けられるとともに当該リンク15の他端がバケットシリンダ14に連結され、このアイドラリンク15の他端に前記バケットがバケットリンクを介して連結される。そして、前記バケットシリンダ14の伸縮によりアイドラリンク15、バケットリンク及び図略のバケットが駆動される。そして、この実施の形態では、前記バケットに代えて作業アタッチメントとして把持装置16が着脱可能に装着される。
【0031】
この把持装置16は、図2にも示すように、把持装置本体17と、互いに対をなす第1の把持部材18A及び第2の把持部材18Bと、これらの把持部材18A、18Bを駆動するための把持駆動シリンダ19と、各把持部材18A、18B同士を回動可能に連結する連結ピン20とを備えている。把持装置本体17の後部には、取付部21が設けられ、この取付部21がアーム9及びアイドラリンク15に着脱可能に連結される。
【0032】
両把持部材18A、18Bは、図1〜図4に示すように、処理対象物P(図4参照)を両側から把持するためのもので、それぞれ、把持部材本体22と、リンク部材23と、コイルばね24とをそれぞれ含む。
【0033】
把持部材本体22は、その基端部が把持駆動シリンダ19によって互いに逆向きに回動駆動されることにより、把持部材本体22の先端部同士が互いに密着した状態(図2参照)と、把持部材本体22の先端部が互いに離間した状態(図4参照)とに切り換えられる。
【0034】
具体的に、両把持部材本体22は、処理対象物Pを把持するための先端プレート25と、この先端プレート25を挟む一対の基端プレート26とを備え、両基端プレート26を貫通するピン27を中心として回動可能となるように前記把持装置本体17にそれぞれ連結されている。
【0035】
前記先端プレート25は、前記基端プレート26に挟持される被挟持部50と、この被挟持部50の先端部に着脱可能に取り付けられる把持部51とを備えている。前記被挟持部50には、その表面側(把持部材18Aは図2の奥側、把持部材18Bは図2の手前側)へ開くとともに先端側へ延びる溝50aが形成されている。この溝50a内に基端部が挿入された把持部51と、被挟持部50とが4本のボルトB1によって固定される。このように把持部51の側面と溝50aの内側面とが当接した状態で被挟持部50と把持部51とが固定されているので、両把持部51による把持の際に処理対象物Pから受ける反力が各ボルトB1に生じるのを抑制することができる。また、把持部51が被挟持部50に対して着脱可能とされているので、長さの異なる把持部51を準備しておけば、作業内容に応じて長さの異なる把持部51を適宜選択することができる。また、曲げ剛性の異なる複数の把持部51を準備しておけば、把持部51の種類に応じて異なる把持力で処理対象物Pの把持を行うことができる。なお、両把持部51は、その先端から内側に突出して相手方の把持部51との間で処理対象物Pを把持可能な突出部51aをそれぞれ備えている。
【0036】
両基端プレート26には、当該両基端プレート26を貫通して前記ピン27の軸線と平行に延びる3本の軸J1、軸J2及び軸J3が設けられている。軸J1は、前記ピン27の外側位置で両基端プレート26を貫通している。軸J2は、前記軸J1よりも作業腕7側に設けられ、前記軸J1を中心とする円弧形状で両基端プレート26を貫通する貫通溝26a(図6参照)で摺動可能となるように、当該貫通溝26a内に挿通されている。具体的に、軸J2は、貫通溝26aの内側端部に当接する図6の(a)に示す位置と、貫通溝26aの外側端部に当接する図6の(b)に示す位置との間で当該貫通溝26a内で摺動可能とされている。
【0037】
また、この軸J2は、前記両基端プレート26の間に配置された把持駆動シリンダ19の伸縮動作する一の端部(ロッド側の端部又はヘッド側の端部)を当該両基端プレート26に対し回動可能に軸支する。軸J3は、前記コイルばね24を支持するためのばね支持軸28を回動可能に軸支する。具体的に、軸J3は、両基端プレート26の間に配置されたばね支持軸28の基端部を回動可能に軸支する。
【0038】
前記把持駆動シリンダ19は、油圧シリンダからなり、前記両把持部材本体22の基端部同士の間に挟まれた位置で保持される。この把持駆動シリンダ19は、シリンダ本体19aと、このシリンダ本体19a内に収容されるピストン19bと、このピストン19bからシリンダ軸方向に沿って一方の側に延びるロッド19cとを有し、このロッド19cの先端部が第1の把持部材18Aの把持部材本体22の基端部に回動可能に連結され、前記シリンダ本体19aのヘッド側端部が第2の把持部材18Bの把持部材本体22の基端部に連結される。したがって、この把持駆動シリンダ19の伸縮により、前記両把持部材本体22が開閉方向に駆動される。
【0039】
具体的に、ロッド19cの先端部は、第1の把持部材18Aの両基端プレート26同士の間に挟まれた状態で、当該両基端プレート26に対し軸J2によって回動可能に軸支されている。一方、シリンダ本体19aのヘッド側端部は、第2の把持部材18Bの両基端プレート26同士の間に挟まれた状態で、当該両基端プレート26に対し軸J2によって回動可能に軸支されている。つまり、把持駆動シリンダ19の両端部(軸J2)は、両基端プレート26に対し貫通溝26aに沿って所定の変位量だけ相対変位することができるように、当該両基端プレート26に支持されている。
【0040】
前記両リンク部材23は、前記両基端プレート26の外側に設けられた一対のレバープレート23aを備えている。両レバープレート23aの基端部は、前記軸J1によって基端プレート26に対して回動可能に軸支されている一方、両レバープレート23aの途中部は、前記軸J2により把持駆動シリンダ19の端部に回動可能に軸支されている。また、両レバープレート23aの先端部には、前記ピン27の軸線と平行に延びて両レバープレート23aに跨る軸J4が設けられている。この軸J4には、その軸線と直交する方向に当該軸J4を貫通する孔J41(図3参照)が設けられ、この孔J41に前記ばね支持軸28が挿通している。したがって、両リンク部材23の先端部を互いに離間させる方向に前記軸J1を中心として両リンク部材23を回動させると、ばね支持軸28に外装されたコイルばね24が軸J4の側面と前記軸J3との間で押し縮められる一方、このように押し縮められた弾発力により両リンク部材23は、その先端部が互いに近接する方向に回動する。つまり、コイルばね24は、前記軸J2(リンク部材23の途中部)を把持部材本体22に対して内向きに付勢するように設けられている。
【0041】
ここで、軸J1(リンク部材23の回動軸)から軸J4(コイルばね24を保持する部分)までの回動半径R1は、軸J1から軸J2までの回動半径R2よりも大きくされている。したがって、把持駆動シリンダ19の駆動による軸J2の変位量よりもコイルばね24の弾性変形量を大きくすることができる。
【0042】
また、コイルばね24は、把持駆動シリンダ19を挟んでピン27よりも作業腕7側(基端部側)の位置に設けられている。具体的に、本実施形態において、両レバープレート23aは、基端プレート26の基端部(軸J3の配設位置)を超えて作業腕7まで延びる長手寸法を有しており、その先端位置で上記ばね支持軸28を支持している結果、コイルばね24は、軸J2よりも作業腕7よりの位置に配設されている。
【0043】
次に、この把持装置16の作用を説明する。
【0044】
この把持装置16では、把持駆動シリンダ19の伸縮により両把持部材18A、18Bが開閉方向に駆動され、処理対象物Pの把持動作が行われる。まず、図4に示すように、両把持部材18A、18Bが開いた状態で、当該把持部材18A、18Bにおける把持部材本体22(突出部51a)が処理対象物Pの両外側に位置するように、作業腕7が操作される。そして、この位置で前記把持駆動シリンダ19が伸張方向に作動することにより、コイルばね24が一定量だけ縮んだ状態を維持した状態で、当該コイルばね24の付勢力により、両把持部材18A、18Bが閉じ方向に回動する。
【0045】
前記把持動作に伴い、前記処理対象物Pには突出部51aが接触する(図5の(a)参照)。前記把持部材本体22には、図6の(a)に示すように、コイルばね24の弾発力により、軸J2が把持部材本体22から内向きに変位した位置に保持されているため、前記接触開始後の把持駆動シリンダ19の伸張動作により軸J2が把持部材本体22に対して相対変位する。つまり、把持部材本体22が軸J2に対して後退変位する。この後退変位によって、把持力の繊細な調整と、大きな把持力での把持の双方を可能にする。
【0046】
具体的に、前記把持部材本体22の突出部51aが処理対象物Pに接触してからしばらくは、両把持部材本体22が閉じ方向に回動するのに伴い、前記把持部材本体22は、その突出部51aが処理対象物Pから受ける反力により、コイルばね24の弾性変形を伴いながら軸J2に対して後退変位する(図5の(b)及び図6の(b)参照)。この後退変位が許容される範囲(図6の(a)の状態から図6の(b)の状態までの範囲)では、前記把持駆動シリンダ19の駆動力にかかわらず、把持部材本体22と処理対象物Pとの接触圧は、コイルばね24の弾発力に基づく圧力となる。具体的に、把持装置16では、コイルばね24の弾発力が作用する軸J3(力点)とピン27(支点)との間の距離と、当該ピン27と処理対象物Pの接触位置(作用点)との間の距離に応じた比率でコイルばね24の弾発力が処理対象物Pに作用することになる。
【0047】
したがって、この範囲では、前記把持駆動シリンダ19による把持部材本体22の後退変位に伴うコイルばね24の弾発力の変化を利用して当該接触圧の微細な調整を行うことが可能であり、例えば小さな処理対象物Pを破壊せずに把持するといったことが可能となる。
【0048】
これに対し、前記把持部材本体22の後退変位が所定量に達すると、図6の(b)に示すように、軸J2が貫通溝26aの外側端部に当接することにより、当該把持部材本体22のそれ以上の後退変位が阻止される(すなわち、把持部材本体22と軸J2とが一体化される)ため、把持駆動シリンダ19から各把持部材本体22に加えられる駆動力がそのまま把持力として処理対象物Pに加えられる。したがって、この状態で処理対象物Pを大きな把持力で把持することが可能であり、例えば、当該処理対象物Pの破砕を目的とした把持も行うことができる。
【0049】
特に、把持装置16は、軸J2が貫通溝26aの外側端部に当接した後の時点において軸J2から把持部材本体22に対して直接駆動力が作用するように構成されているため、軸J2と処理対象物Pを把持する把持部材本体22との間に他の部材を介在させることなく把持部材本体22の後退変位を実現することができる。したがって、例えば、後退変位を実現するために把持部材本体22を2分割して両者を相対変位するように連結する構成と比較して、処理対象物Pの把持や破砕を行うための構成(前記実施形態では把持部材本体22)の強度を十分に確保することができる。
【0050】
なお、前記実施形態では、軸J2と把持部材本体22との間にリンク部材23を介在させているが、図7に示すように、軸J2と把持部材本体22(軸J4)との間に直接コイルばね24を設ける構成とすることもできる。ただし、前記実施形態のように、リンク部材23を介在させて、軸J2よりもリンク部材23の先端部でコイルばね24を保持する構成とすることにより、把持駆動シリンダ19による軸J2の変位量よりもコイルばね24の伸縮変位量を大きくすることができるので、より細かな把持力の調整が可能となる。
【0051】
また、軸J2と把持部材本体22との間に直接コイルばね24を配設する場合、さらに、軸J3を省略することもできる。つまり、図8に示すように、貫通溝26aの内側面と、軸J2の外周面との間にコイルばね24を縮めた状態で配設する構成とすることにより、前期軸J3を省略することができる。
【0052】
さらに、前記実施形態では、1本の把持駆動シリンダ19により両把持部材18A、18Bの双方を回動させる構成について説明したが、図9に示すように、各把持部材18A、18Bのそれぞれを回動させるための把持駆動シリンダ19を1本ずつ設けた構成とすることもできる。
【0053】
具体的に、図9に示す実施形態では、前記把持装置本体17にそれぞれヘッド側の端部が固定された一対の把持駆動シリンダ29(図9では1本のみ示している)と、前記軸J1回りに回動可能となるように前記把持部材本体22に軸支されたリンク部材30とを備えている。リンク部材30は、前記実施形態と異なり「く」の字型の形状を有している。前記軸J2は、リンク部材30の屈曲部分で当該リンク部材30を貫通し、前記把持駆動シリンダ29のロッド側の端部を当該リンク部材30及び把持部材本体22に対して軸支している。
【0054】
この実施形態においても、把持駆動シリンダ29の伸縮動作に伴い貫通溝26aに沿って軸J2に対して把持部材本体22が後退変位することができるので、この後退変位の変位量に応じたコイルばね24の弾発力により、把持力の微調整を行うことができる。
【0055】
なお、前記実施形態では、ばね部材としてコイルばね24を採用した例について説明しているが、前記軸J2と把持部材本体22との間で弾性変形可能な板ばね等を採用することもできる。
【0056】
以上説明したように、前記把持装置16では、把持駆動シリンダ19の伸縮動作に伴い、この把持駆動シリンダ19と把持部材18A、18Bの把持部材本体22との間にそれぞれ設けられたコイルばね24により把持部材本体22と軸J2とが所定の位置関係(図6の(a)の状態)に保持された状態で当該把持部材本体22が閉じ方向に回動され、この把持部材本体22が処理対象物Pに接触し、かつ、この処理対象物Pから受ける反力によりコイルばね24の弾性変形を伴いながら把持部材本体22が軸J2に対して後退変位する。この把持部材本体22の後退変位の範囲では、把持駆動シリンダ19の駆動力にかかわらず、処理対象物Pに対する把持部材本体22の接触圧は、コイルばね24の弾発力に相当する圧力となるため、当該接触圧の微細な調整を行うことが可能である。その一方、前記把持部材本体22の後退変位が所定範囲を超えた時点からは、把持駆動シリンダ19の駆動力がそのまま処理対象物Pに作用するため、大きな把持力で処理対象物Pを把持することが可能である。
【0057】
また、前記実施形態では、前記所定の範囲を超えた時点において軸J2から把持部材本体22に対して直接駆動力が作用するように構成したから、軸J2と処理対象物Pを保持する把持部材本体22との間に他の部材を介在させることなく把持部材本体22の後退変位を実現することができる。したがって、例えば、後退変位を実現するために把持部材本体22に相当する部分を2分割して両者を相対変位するように連結する構成等と比較して、処理対象物Pの把持や破砕を行うための構成(本実施形態では把持部材本体22)の強度を十分に確保することができる。
【0058】
前記実施形態のように、リンク部材23を備え、軸J1から軸J4(保持部)までの回動半径R1が軸J1から軸J2までの回動半径R2よりも大きい構成とすれば、軸J2の変位量よりもコイルばね24の弾性変形量を大きくすることができる。
【0059】
前記実施形態のように、前記把持駆動シリンダ19を挟んでピン27とは反対側の位置でコイルばね24を保持する構成とすれば、処理対象物Pを把持する把持部材本体22及び相手方の把持部材の先端部から離れた位置にコイルばね24を配置することができるので、コイルばね24が処理対象物Pに接触する可能性を低くすることにより当該コイルばね24の破損を抑制することができる。
【符号の説明】
【0060】
J1〜J4 軸
P 処理対象物
1 油圧ショベル(作業機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
7 作業腕
16 把持装置
18A、18B 把持部材
19、29 把持駆動シリンダ
22 把持部材本体
23、30 リンク部材
26a 貫通溝
27 ピン(回動軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が変位可能な作業腕をもつ作業機械の当該作業腕の先端部に設けられ、処理対象物を把持する把持装置であって、
前記作業腕の先端部に回動可能に支持された第1の把持部材と、
前記作業腕の先端部に回動可能に支持され、前記第1の把持部材との間で前記処理対象物を把持するように当該第1の把持部材に対して相対的に回動可能な第2の把持部材と、
伸縮動作を行うことにより、前記処理対象物を把持するように前記両把持部材を相対的に回動させる把持駆動シリンダとを備え、
前記第1の把持部材及び第2の把持部材のうちの少なくとも一方の把持部材は、
前記把持駆動シリンダの伸縮動作により相手方の把持部材に対して相対的に回動する把持部材本体と、
前記把持駆動シリンダの伸縮動作に従動するように当該把持駆動シリンダに固定されているとともに、前記把持部材本体に対して前記把持駆動シリンダの伸縮方向に所定範囲内でのみ相対変位可能となるように当該把持部材本体に設けられ、かつ、前記把持駆動シリンダと前記把持部材本体とを回動可能に連結する連結軸と、
前記把持駆動シリンダの駆動に伴い前記連結軸と前記把持部材本体とを所定の位置関係に保持しつつ前記把持駆動シリンダからの駆動力を把持部材本体に伝えるとともに、前記把持部材本体の回動により接触する前記処理対象物から受ける反力により弾性変形して前記連結軸に対する把持部材本体の後退変位を許容し、かつ、その弾発力により、前記把持部材本体の後退変位に伴って前記処理対象物に対する前記把持部材本体の接触圧を増加させるように、前記把持部材本体と前記連結軸との間に設けられたばね部材とを備えていることを特徴とする作業機械の把持装置。
【請求項2】
前記把持部材本体には、前記連結軸を挿通可能で、かつ、当該連結軸に対する前記把持部材本体の後退変位を許容する形状を有する貫通溝が形成され、
前記把持駆動シリンダの伸縮方向のうち前記把持駆動部材を閉じる方向における前記貫通溝の内側面と前記連結軸とが当接することにより、前記所定量を超える把持部材本体の後退変位が阻止されることを特徴とする請求項1に記載の作業機械の把持装置。
【請求項3】
前記把持部材本体の後退変位の変位量よりも前記ばね部材の弾性変形量を大きくするための増幅手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械の把持装置。
【請求項4】
前記増幅手段は、前記連結軸と略平行な回動軸回りに前記把持部材本体に対して回動可能に取り付けられたリンク部材を備え、
前記リンク部材は、前記把持部材本体との間で伸縮可能となるように前記ばね部材を保持する保持部と、前記把持駆動シリンダの伸縮動作により当該リンク部材が前記回動軸回りに回動可能となるように、前記連結軸に固定された固定部とを有し、
前記回動軸から前記保持部までの回動半径は、前記回動軸から前記固定部までの回動半径よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の作業機械の把持装置。
【請求項5】
前記リンク部材の保持部は、前記把持駆動シリンダを挟んで前記両把持部材の回動中心軸とは反対側の位置で前記ばね部材を保持することを特徴とする請求項4に記載の作業機械の把持装置。
【請求項6】
前記第1の把持部材及び前記第2の把持部材の双方が、前記把持部材本体と、前記連結軸と、前記ばね部材とを含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の作業機械の把持装置。
【請求項7】
移動可能な作業機械本体と、この作業機械本体に搭載され、当該作業機械に対して先端が変位するように動作可能な作業腕とを備え、この作業腕の先端に請求項1〜6の何れか1項に記載の把持装置が取り付けられることを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−265089(P2010−265089A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118814(P2009−118814)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】