説明

作業機械

【課題】作業機械の輸送前後における分解・組み立て作業を容易化する。
【解決手段】ベッド側ブラケット30をフレーム部材61,71の下面に固定するように構成した。そして、ベッド側ブラケット30の右側面がフレーム部材71の右側面から突出しないように構成した。これにより、クレーンを分解して旋回体3をトレーラに搭載して一般の道路を移動させる場合に、フレーム部材61,71からベッド側ブラケット30を取り外す必要がなくなるので、ベッド側ブラケット30の着脱作業を省略でき、作業効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械本体の周囲を作業者が移動するために作業者が載るステップが設けられた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンなどの作業機械では、作業機械本体のメンテナンス等のため、作業機械本体の周囲には歩行用のステップが作業機械本体のフレームから側方に突出するように設けられている。ここで、履帯走行式の作業機械の場合、一般の道路を走行できないため、一般の道路を使って作業機械を移動させるためには、作業機械をトレーラに搭載して運搬する。作業機械をトレーラに搭載して運搬する場合には、車幅制限を遵守しなければならないが、上述した歩行用のステップによって車幅制限を超えてしまうことがある。そのため、歩行用のステップを収納可能に構成した作業機械が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−310334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献に記載の作業機械では、歩行用のステップを下方に回動させることで作業機械の幅方向の寸法を最小限に抑制できるように構成されている。しかし、作業機械によっては、作業機械本体の幅方向の寸法が大きく、上述した特許文献に記載の作業機械のように歩行用のステップを構成しても、車幅制限を超えてしまう場合がある。この場合には、歩行用のステップや、このステップを作業機械本体のフレームに取り付けるためのブラケットを取り外す必要がある。
【0005】
しかし、作業機械本体のフレームからブラケットを取り外すと、フレーム側にはボルトの取り付け孔が露出するので、見栄えが悪く、取り付け孔からフレームの内側に異物が侵入するおそれもある。ブラケットおよびステップの取り外し作業および取り付け作業では、1人の作業者がステップを保持している間に、別の作業者がブラケットとステップとの連結解除作業や連結作業を行うため、少なくとも2人の作業者が必要であった。また、ブラケットをフレームから着脱するため、フレームに対するブラケットの取り付け位置が変化することでステップの姿勢が変化するおそれがある。ステップは長手方向に複数に分割されているので、フレームに対するブラケットの取り付け位置が変化すると、隣接するステップ同士で段差が生じてしまう。そのため、ブラケットおよびステップを取り付けた後、ステップの姿勢などを再調整する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 請求項1の発明による作業機械は、走行体と、各機器を搭載するためのベッドを有し、走行体の上部に設けられた作業機械本体と、ベッドの側方に配設されて、作業機械本体の周囲を作業者が移動するために作業者が載るステップと、ベッドの下面に固定されて、ステップが着脱可能に取り付けられるベッド側ブラケットとを備え、ベッド側ブラケットは、側端部がベッドの側面よりも側方外側に突出しないことを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載の作業機械において、ベッドは、作業機械本体の前後方向に延在して略コの字状の断面を有する2本のフレームが、略コの字状の断面の開口部を互いに向かい合わせるように配設され、2本のフレームのうち少なくとも作業機械本体の側方外側のフレームに対して、略コの字状の断面の内側で少なくとも下面と側面とを接続して上下方向および左右方向に向かって立設された壁部を有し、ベッド側ブラケットは、複数設けられており、ベッド側ブラケットの少なくとも1つは、壁部の近傍に固定されていることを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の作業機械において、ステップは、ステップにあらかじめ設けられていて、ステップがベッド側ブラケットに取り付けられるとベッド側ブラケットに支持されて係止される被支持部を有し、ベッド側ブラケットは、ステップがベッド側ブラケットに取り付けられると被支持部を支持して係止する支持部を有し、ステップは、被支持部をステップから取り外すことなくベッド側ブラケットに着脱可能であることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明は、請求項3に記載の作業機械において、ステップは、ステップをベッド側ブラケットに取り付ける過程における、支持部で支持された被支持部を中心としたステップの自重による回動を防止する回動防止部をさらに有することを特徴とする。
(5) 請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載の作業機械において、ベッド側ブラケットは、第1のピン孔をさらに有し、ステップは、第2のピン孔をさらに有し、支持部で被支持部を支持させた後に、第1のピン孔と第2のピン孔とに挿通させてベッド側ブラケットにステップを固定する挿通ピンをさらに有することを特徴とする。
(6) 請求項6の発明による作業機械は、走行体と、各機器を搭載するためのベッドを有し、走行体の上部に設けられた作業機械本体と、ベッドの側方に配設されて、作業機械本体の周囲を作業者が移動するために作業者が載るステップと、ステップをベッドの側方で支持する支持部材とを備え、支持部材は、ベッドの下面に固定されるベッド側ブラケットと、ベッド側ブラケットとステップとの間に介在してベッド側ブラケットに着脱可能に取り付けられるステップ側ブラケットとを有し、ベッド側ブラケットは、側端部がベッドの側面よりも側方外側に突出しないことを特徴とする。
(7) 請求項7の発明は、請求項6に記載の作業機械において、ベッドは、作業機械本体の前後方向に延在して略コの字状の断面を有する2本のフレームが、略コの字状の断面の開口部を互いに向かい合わせるように配設され、2本のフレームのうち少なくとも作業機械本体の側方外側のフレームに対して、略コの字状の断面の内側で少なくとも下面と側面とを接続して上下方向および左右方向に向かって立設された壁部を有し、支持部材は、複数設けられており、支持部材の少なくとも1つは、壁部の近傍にベッド側ブラケットが固定されていることを特徴とする。
(8) 請求項8の発明は、請求項6または請求項7に記載の作業機械において、ステップ側ブラケットは、ステップ側ブラケットにあらかじめ設けられていて、ステップ側ブラケットがベッド側ブラケットに取り付けられるとベッド側ブラケットに支持されて係止される被支持部を有し、ベッド側ブラケットは、ステップ側ブラケットがベッド側ブラケットに取り付けられると被支持部を支持して係止する支持部を有し、ステップ側ブラケットは、被支持部をステップ側ブラケットから取り外すことなくベッド側ブラケットに着脱可能であることを特徴とする。
(9) 請求項9の発明は、請求項8に記載の作業機械において、ステップ側ブラケットは、ステップが取り付けられたステップ側ブラケットをベッド側ブラケットに取り付ける過程における、支持部で支持された被支持部を中心としたステップの自重による回動を防止する回動防止部をさらに有することを特徴とする。
(10) 請求項10の発明は、請求項8または請求項9に記載の作業機械において、ベッド側ブラケットは、第1のピン孔をさらに有し、ステップ側ブラケットは、第2のピン孔をさらに有し、支持部材は、支持部で被支持部を支持させた後に、第1のピン孔と第2のピン孔とに挿通させてベッド側ブラケットにステップ側ブラケットを固定する挿通ピンをさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業機械本体の周囲を作業者が移動するために作業者が載るステップを着脱可能に取り付けられるベッド側ブラケットが、ベッドの側面よりも側方外側に突出しないように構成した。これにより、作業機械を分解して作業機械本体をトレーラに搭載して一般の道路を移動させる場合に、ベッドからベッド側ブラケットを取り外す必要がなくなるので、ベッド側ブラケットの着脱作業を省略でき、作業効率が向上する。また、ベッドからベッド側ブラケットを取り外す必要がなくなるので、ベッド側ブラケット取り付けのためのボルト孔露出することがなく、見栄えが悪くならない。また、当該ボルト孔からベッド内への異物侵入のおそれがなくなり、作業機械の不具合の原因をなくして信頼性を向上できる。また、ベッド側ブラケットに対するステップの着脱を繰り返しても、ベッドに対するステップの位置がずれることがほとんどない。これにより、ベッドとベッド側ブラケットとの位置がずれることがなくなり、ステップ取り付け後のステップの傾き調整などを省略して作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施の形態に係る作業機械の一例としてのクローラクレーンの外観側面図である。
【図2】旋回体の周囲に設けられたステップの配設状況について示す図である。
【図3】左側フレーム(左側ベッド)を示す図である。
【図4】右側フレーム(右側ベッド)を示す図である。
【図5】右側ベッドの右側のフレーム部材に対してステップが取り付けられた状態を説明する図である。
【図6】ベッド側ブラケットの外観を示す図である。
【図7】ステップ側ブラケットの外観を示す図である。
【図8】ステップの取り付け作業について説明する図である。
【図9】ステップの取り付け作業について説明する図である。
【図10】ステップの取り付け作業について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜10を参照して、本発明による作業機械の一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例としてのクローラクレーンの外観側面図である。このクローラクレーン(以下、単にクレーンと呼ぶ)100は、走行体1と、旋回輪2を介して走行体1上に旋回可能に設けられた作業機械本体である旋回体3と、旋回体3に回動可能に軸支されたブーム4とを有する。なお、後述する図2に示すように、走行体1は、トラックフレーム1aと、トラックフレーム1aの左右に設けられた一対のサイドフレーム1R,1Lとを有する。旋回体3の右側前部には運転室8が設けられ、旋回体3の後部にはカウンタウエイト9が取り付けられている。旋回体3には巻き上げ用のウインチドラムである巻上ドラム5と、起伏用のウインチドラムである起伏ドラム6が搭載されている。
【0010】
巻上ドラム5には巻上ロープ5aが巻回され、巻上ドラム5の駆動により巻上ロープ5aが巻き取りまたは繰り出され、フック装置(フック)10が昇降する。起伏ドラム6には起伏ロープ6aが巻回され、起伏ドラム6の駆動により起伏ロープ6aが巻き取りまたは繰り出され、ブーム4が起伏する。巻上ドラム5は巻上用油圧モータにより駆動され、起伏ドラム6は起伏用油圧モータにより駆動される。これら油圧モータの回転は不図示のブレーキ装置によって制動可能である。
【0011】
図2は、旋回体3の周囲に設けられたステップ20の配設状況について示す図であり、図2(a)は側面図であり、図2(b)は平面図であり、図2(c)は正面図である。なお、図2では、ブーム4や巻上ドラム5、起伏ドラム6等の記載を省略している。図3は、旋回体3のフレームのうち、メインフレーム50の左側に取り付けられる左側フレーム(左側ベッド)60を示す図であり、図3(a)は上面図であり、図3(b)は側面図であり、図3(c)は下面図である。図4は、旋回体3のフレームのうち、メインフレーム50の右側に取り付けられる右側フレーム(右側ベッド)70を示す図であり、図4(a)は上面図であり、図4(b)は側面図であり、図4(c)は下面図である。なお、以下の説明では、特にことわりがない限り、各図で示す前後上下方向および左右方向を、図2に示したクレーン100の前後上下方向および左右方向と同じ方向を指すこととする。
【0012】
図2に示すように、旋回体3のフレームは、メインフレーム50と、メインフレーム50の左側に取り付けられる左側ベッド60と、メインフレーム50の右側に取り付けられる右側ベッド70と、メインフレーム50の右側前部に取り付けられる運転室フレーム(運転室ベッド)80とを有する。左側のステップ20は、後述する支持部材であるブラケット30,40を介して左側ベッド60の左方に取り付けられている。右側のステップ20は、ブラケット30,40を介して右側ベッド70および運転室ベッド80の右方に取り付けられている。なお、ステップ20は、取り付けおよび取り外しの便宜上(主として1人で取り付け、取り外しができるように重量の観点から)、前後方向に複数枚に分割して設けられている。
【0013】
メインフレーム50は、図2では図示していないが、巻上ドラム5や起伏ドラム6、旋回モータ等が搭載され、ブーム4やカウンタウエイト9等が取り付けられるフレームである。
【0014】
左側ベッド60は、たとえば、不図示の燃料タンクや、巻上ドラム5や起伏ドラム6などを駆動する不図示の油圧モータに供給する圧油を制御するコントロールバルブ等が搭載されるフレームである。左側ベッド60の上部には、左側建屋カバー13が取り付けられている。左側建屋カバー13の左側面には扉が設けられている。左側建屋カバー13の扉を開けば、左側ベッド60に取り付けられたステップ20の上に作業者が載って、左側ベッド60に搭載された各機器の点検が可能である。
【0015】
右側ベッド70は、たとえば、不図示のエンジンや油圧ポンプ、作動油タンク、ラジエータ等が搭載されるフレームである。右側ベッド70の上部には、右側建屋カバー14が取り付けられている。右側建屋カバー14の右側面には扉が設けられている。右側建屋カバー14の扉を開けば、右側ベッド70に取り付けられたステップ20の上に作業者が載って、右側ベッド70に搭載された各機器の点検が可能である。運転室ベッド80は、運転室8が搭載されるフレームである。なお、クレーン100の機種によっては、右側ベッド70と運転室ベッド80とが一体化されていることもある。
【0016】
図3に示すように、左側ベッド60は、前後方向に延在して略コの字状の断面を有する左側のフレーム部材61および右側のフレーム部材62が、略コの字状の断面の開口部を互いに向かい合わせるように配設されている。左側のフレーム部材61と右側のフレーム部材62との間には、左右方向に延在する板状の壁部63が設けられている。壁部63の左右端は、それぞれ左側のフレーム部材61および右側のフレーム部材62の略コの字状の断面の内周面に接続されている。左側ベッド60の左部下面には、ボルト孔64が設けられている。ボルト孔64は、ステップ20を左側ベッド60に取り付けるための後述するベッド側ブラケット30を左側ベッド60の下面にボルトで固定するための貫通孔である。なお、ボルト孔64は、左側のフレーム部材61の下面、または左側のフレーム部材61の下面と略同一平面を有する左側ベッド60の底面であって、壁部63の近傍に設けられている。これは、ベッド側ブラケット30が取り付けられる左側のフレーム部材61の近傍の強度を確保して、ステップ20の取り付け強度を確保するためである。
【0017】
右側ベッド70の構成も、左側ベッド60と略同じである。すなわち、図4に示すように、右側ベッド70は、前後方向に延在して略コの字状の断面を有する右側のフレーム部材71および左側のフレーム部材72が、略コの字状の断面の開口部を互いに向かい合わせるように配設されている。右側のフレーム部材71と左側のフレーム部材72との間には、左右方向に延在する板状の壁部73が設けられている。壁部73の左右端は、それぞれ右側のフレーム部材71および左側のフレーム部材72の略コの字状の断面の内周面に接続されている。右側ベッド70の右部下面には、ボルト孔74が設けられている。ボルト孔74は、後述するベッド側ブラケット30を右側ベッド70の下面にボルトで固定するための貫通孔である。なお、ボルト孔74は、右側のフレーム部材71の下面、または右側のフレーム部材71の下面と略同一平面を有する右側ベッド70の底面であって、壁部73の近傍に設けられている。これは、ベッド側ブラケット30が取り付けられる右側のフレーム部材71の近傍の強度を確保して、ステップ20の取り付け強度を確保するためである。
【0018】
図5は、右側ベッド70の右側のフレーム部材71に対してステップ20が取り付けられた状態を説明する図である。なお、左側ベッド60の左側のフレーム部材61に対してステップ20が取り付けられた状態、および、運転室ベッド80に対してステップ20が取り付けられた状態も同様である。右側のフレーム部材(以下、単にフレーム部材と呼ぶ)71とステップ20との間には、ベッド側ブラケット30とステップ側ブラケット40とが設けられている。なお、後述の説明では、ステップ側ブラケット40が取り付けられたステップ20をステップAssyとも呼ぶ。
【0019】
ベッド側ブラケット30は、ボルト孔74に挿通されたボルト91によってフレーム部材71の下面に固定されている。ステップ側ブラケット40は、ステップ20の側面に設けられた長孔21に挿通されたピン94によって、ステップ20に回動可能に軸支されている。フレーム部材71に対してステップ20が取り付けられた状態では、ステップ20は、ピン94を中心として図示反時計方向に回動させることで、上方に折りたたむことができる。ステップ20を折りたたんだ後、ステップ20に設けられたピン孔23とステップ側ブラケット40に設けられた後述するピン孔46aとに不図示のピンを挿通させることで、ステップ20を折りたたんだ状態で固定できる。なお、ピン94を中心としたステップ20の図示時計方向への回動は、ステップ20に設けられた当接部22と、ステップ側ブラケット40に取り付けられた後述する調整ボルト95との当接によって制限される。
【0020】
ベッド側ブラケット30とステップ側ブラケット40とは、後述する支点ピン92と固定ピン93とによって連結されている。
【0021】
図6はベッド側ブラケット30の外観を示す図である。ベッド側ブラケット30がフレーム部材71に取り付けられた姿勢を基準として、図6(a)はクレーン100の後側から見た図であり、図6(b)はクレーン100の上側から見た図である。ベッド側ブラケット30は、ブロック状の部材であり、ベッド側ブラケット30がフレーム部材71に取り付けられた状態で前後方向に貫通しているピン孔31と、右側の面(側面)34から左側に向かって切り欠かれている切り欠き部32とが設けられている。後述するようにピン孔31には固定ピン93が挿通される。また、切り欠き部32は、支点ピン92を介してステップ側ブラケット40およびステップ20を支持する。またベッド側ブラケット30には、上面33から下面35に向かうねじ穴33aが上面33に開口した状態で設けられている。
【0022】
図7はステップ側ブラケット40の外観を示す図である。ステップ側ブラケット40がベッド側ブラケット30を介してフレーム部材71に取り付けられた姿勢を基準として、図7(a)はクレーン100の左側から見た図であり、図7(b)はクレーンの後側から見た図である。同様に、図7(c)はクレーン100の右側から見た図であり、図7(d)は、クレーン100の前側から見た図であり、図7(e)はクレーン100の上側から見た図である。
【0023】
ステップ側ブラケット40は、略L状に形成された2枚の板状部材41,42が前後方向に離間して設けられている。なお、ベッド側ブラケット30にステップ側ブラケット40を取り付けると、2枚の板状部材41,42の間には、ベッド側ブラケット30が介在することとなる。したがって、板状部材41と板状部材42とは、ベッド側ブラケット30の前後方向の厚さに加えて、ベッド側ブラケット30にステップ側ブラケット40を取り付ける作業で必要な隙間の分だけ離間している。
【0024】
板状部材41,42の下面には、板状部材41,42の下面同士を接続するように回り止め板43が設けられている。板状部材41,42の上下方向に延在する部位の左側端面には、当該端面同士を接続する垂直板44が設けられている。板状部材41,42の右側端面には、当該端面同士を接続するようにステップ位置調整用ねじ穴板45が設けられている。ステップ位置調整用ねじ穴板45には、後述する調整ボルト95が螺合されるねじ穴45aが設けられている。
【0025】
垂直板44の上部には、ゴムブッシュ96を取り付けるための取り付け孔44aが設けられている。なお、ゴムブッシュ96は、ステップAssyをベッド側ブラケット30に取り付ける際に垂直板44がフレーム部材71側面に当接してフレーム部材71の塗装を痛めるのを防止するための緩衝材である。垂直板44の右側面には、ピン94を中心として上方に折りたたまれたステップ20を係止するためのピン孔46aが設けられたステップ係止部46が立設されている。
【0026】
板状部材41,42にはそれぞれ、固定ピン93が挿通されるピン孔47と、支点ピン92が挿通されるピン孔48と、ピン94が挿通されるピン孔49とが設けられている。板状部材41の前面には、ピン孔47と同心円状の円筒部41aが立設されている。円筒部41aの側面には、ピン孔47に挿通された固定ピン93の抜け止め用の割りピンを挿通させるための孔41bが設けられている。
【0027】
−−−ステップ20の取り付け作業について−−−
右側ベッド70の右側のフレーム部材71に対してステップ20を取り付ける作業について説明する。なお、左側ベッド60の左側のフレーム部材61に対してステップ20を取り付ける作業、および、運転室ベッド80に対してステップ20を取り付ける作業についても同様であるので、その説明は省略する。なお、以下に説明するステップ20の取り付け作業およびステップ20の取り外し作業は、1人の作業者で作業可能である。
【0028】
フレーム部材71に対してステップ20を取り付けるには、図8に示すように、フレーム部材71に対してベッド側ブラケット30を固定しておく。この状態では、ベッド側ブラケット30の右側面34は、フレーム部材71の右側面から突出していない。なお、この状態は、クレーン100を分解して旋回体3をトレーラに搭載して一般の道路を移動させるときの状態と同じである。すなわち、図8に示すように、フレーム部材71に対してベッド側ブラケット30を固定したままで、ステップAssyを取り外すだけで、一般の道路を通行する際の車幅制限を超えないように構成されている。
【0029】
一方、ステップ20にはステップ側ブラケット40を取り付けておく。すなわち、ステップ20の長孔21とステップ側ブラケット40のピン孔49とにピン94を挿通させて、ステップ20とステップ側ブラケット40とを連結して、ステップAssyをして構成しておく。また、ステップ側ブラケット40のピン孔48には支点ピン92を挿通しておく。
【0030】
上述した状態からステップAssyを左方へ移動させて、図9に示すように、支点ピン92を切り欠き部32に左方から挿入して、支点ピン92を切り欠き部32で支持させる。この状態で、仮に作業者がステップAssyから手を放すと、ステップAssyは自重によって切り欠き部32で支持された支点ピン92を中心として図示時計方向に僅かに回転する。しかしその回転は、図10に示すように、ステップ側ブラケット40の回り止め板43がベッド側ブラケット30の下面35に当接することで規制される。そのため、図9の状態で仮に作業者がステップAssyから手を放しても、図10に示すように、切り欠き部32で支持された支点ピン92と、ベッド側ブラケット30の下面35に当接する回り止め板43によって、その姿勢が保持される。
【0031】
この状態から、切り欠き部32で支持された支点ピン92を中心として作業者が適宜ステップAssyの姿勢を修正してベッド側ブラケット30のピン孔31とステップ側ブラケット40のピン孔47の位置を合わせて固定ピン93を挿通させる(図5参照)。その後、円筒部41aの側面の孔41bに挿通させた固定ピン93の抜け止めの割りピン(不図示)を挿通させる。以上でステップ20の取り付け作業が完了する。
【0032】
固定後のステップ20の傾きを調整するためには、ステップ位置調整用ねじ穴板45のねじ穴45aに螺合された調整ボルト95を適宜回転させればよい。調整ボルト95は、ナット95aを緩めることで回転可能となり、ナット95aを閉め込むことで固定される。なお、ステップ20の傾きは、一度調整してしまえば、再調整の必要はほとんどない。すなわち、クレーン100を分解して旋回体3をトレーラに搭載する際に、フレーム部材71からベッド側ブラケット30を取り外す必要がないために、フレーム部材71とベッド側ブラケット30との位置がずれることがない。そのため、ベッド側ブラケット30に対するステップAssyの着脱を繰り返しても、フレーム部材71に対するステップAssyの位置がずれることがほとんどないからである。
【0033】
なお、ステップ20の取り外し作業は、上述したステップ20の取り付け作業と逆の手順で行えばよいので、その説明を省略する。
【0034】
上述したクレーン100では、次の作用効果を奏する。
(1) ベッド側ブラケット30をフレーム部材61,71の下面に固定するように構成した。そして、ベッド側ブラケット30の右側面34がフレーム部材71の右側面から突出しないように構成した(フレーム部材61に固定したベッド側ブラケット30についても同様である)。これにより、クレーン100を分解して旋回体3をトレーラに搭載して一般の道路を移動させる場合に、フレーム部材61,71からベッド側ブラケット30を取り外す必要がなくなるので、ベッド側ブラケット30の着脱作業を省略でき、作業効率が向上する。また、フレーム部材61,71からベッド側ブラケット30を取り外す必要がなくなるので、ボルト孔64,74が露出することがなく、見栄えが悪くならない。また、ボルト孔64,74からベッド60,70内への異物侵入のおそれがなくなり、クレーン100の不具合の原因をなくして信頼性を向上できる。
【0035】
また、ベッド側ブラケット30に対するステップAssyの着脱を繰り返しても、フレーム部材71に対するステップAssyの位置がずれることがほとんどない。これにより、フレーム部材71とベッド側ブラケット30との位置がずれることがなくなり、ステップAssy取り付け後のステップ20の傾き調整を省略して作業効率を向上できる。
【0036】
(2) 図8に示した状態からステップAssyを左方へ移動させると、図9に示すように、支点ピン92が切り欠き部32に左方から挿入されて、支点ピン92が切り欠き部32で支持されるように構成した。これにより、作業者は、ステップAssyの着脱の際、ステップAssyの重量を支点ピン92を介して切り欠き部32で負担させることができるので、ステップAssyの着脱が容易になる。
【0037】
(3) 図9に示す状態で、仮に作業者がステップAssyから手を放しても、切り欠き部32で支持された支点ピン92を中心としたステップAssyの回転は、図10に示すように、ステップ側ブラケット40の回り止め板43がベッド側ブラケット30の下面35に当接することで規制される。そのため、図9の状態で仮に作業者がステップAssyから手を放しても、図10に示すように、切り欠き部32で支持された支点ピン92と、ベッド側ブラケット30の下面35に当接する回り止め板43によって、その姿勢が保持される。したがって、ステップAssyの着脱が容易になる。
【0038】
(4) ベッド側ブラケット30が壁部63,73の近傍に配設されるように構成した。これにより、ベッド側ブラケット30が取り付けられるフレーム部材61,71の近傍の強度を確保して、ステップ20の取り付け強度を確保できるので、フレーム部材61,71の強度を不必要に向上させる必要がなくなり、クレーン100の重量増を抑制できる。したがって、コスト増の抑制、および、燃費向上に資する。
【0039】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、ベッド側ブラケット30が壁部63,73の近傍に配設されるように構成したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、ベッド側ブラケット30が取り付けられるフレーム部材61,71の近傍の強度を確保して、ステップ20の取り付け強度を確保できればよいので、ベッド側ブラケット30が壁部63,73の近傍以外の位置に配設されていてもよい。たとえば、ベッド側ブラケット30がフレーム部材61,71に対して、略コの字状の断面の内側で少なくとも下面と側面とに接続されていて上下方向および左右方向に向かって立設された部材の近傍に取り付けられていればよい。
【0040】
(2) 上述の説明では、ステップ20にステップ側ブラケット40が取り付けられるように構成されているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ステップ20とステップ側ブラケット40とが一体化されていてもよい。
【0041】
(3) 上述の説明では、作業機械の一例としてクローラクレーン100を挙げているが、本発明はこれに限定されず、油圧ショベルやホイールローダ等の他の作業機械にも適用できる。
(4) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、走行体と、各機器を搭載するためのベッドを有し、走行体の上部に設けられた作業機械本体と、ベッドの側方に配設されて、作業機械本体の周囲を作業者が移動するために作業者が載るステップと、ベッドの下面に固定されて、ステップが着脱可能に取り付けられるベッド側ブラケットとを備え、ベッド側ブラケットは、側端部がベッドの側面よりも側方外側に突出しないことを特徴とする各種構造の作業機械を含むものである。
また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、走行体と、各機器を搭載するためのベッドを有し、走行体の上部に設けられた作業機械本体と、ベッドの側方に配設されて、作業機械本体の周囲を作業者が移動するために作業者が載るステップと、ステップをベッドの側方で支持する支持部材とを備え、支持部材は、ベッドの下面に固定されるベッド側ブラケットと、ベッド側ブラケットとステップとの間に介在してベッド側ブラケットに着脱可能に取り付けられるステップ側ブラケットとを有し、ベッド側ブラケットは、側端部がベッドの側面よりも側方外側に突出しないことを特徴とする各種構造の作業機械を含むものである。
【符号の説明】
【0043】
3 旋回体、20 ステップ、30 ベッド側ブラケット、40 ステップ側ブラケット、43 回り止め板、60 左側フレーム(左側ベッド)、63,73 壁部、70 右側フレーム(右側ベッド)、80 運転室フレーム(運転室ベッド)、92 支点ピン、93 固定ピン、100 クローラクレーン(クレーン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
各機器を搭載するためのベッドを有し、前記走行体の上部に設けられた作業機械本体と、
前記ベッドの側方に配設されて、前記作業機械本体の周囲を作業者が移動するために作業者が載るステップと、
前記ベッドの下面に固定されて、前記ステップが着脱可能に取り付けられるベッド側ブラケットとを備え、
前記ベッド側ブラケットは、側端部が前記ベッドの側面よりも側方外側に突出しないことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記ベッドは、前記作業機械本体の前後方向に延在して略コの字状の断面を有する2本のフレームが、略コの字状の断面の開口部を互いに向かい合わせるように配設され、前記2本のフレームのうち少なくとも前記作業機械本体の側方外側のフレームに対して、略コの字状の断面の内側で少なくとも下面と側面とを接続して上下方向および左右方向に向かって立設された壁部を有し、
前記ベッド側ブラケットは、複数設けられており、
前記ベッド側ブラケットの少なくとも1つは、前記壁部の近傍に固定されていることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の作業機械において、
前記ステップは、前記ステップにあらかじめ設けられていて、前記ステップが前記ベッド側ブラケットに取り付けられると前記ベッド側ブラケットに支持されて係止される被支持部を有し、
前記ベッド側ブラケットは、前記ステップが前記ベッド側ブラケットに取り付けられると前記被支持部を支持して係止する支持部を有し、
前記ステップは、前記被支持部を前記ステップから取り外すことなく前記ベッド側ブラケットに着脱可能であることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記ステップは、前記ステップを前記ベッド側ブラケットに取り付ける過程における、前記支持部で支持された前記被支持部を中心とした前記ステップの自重による回動を防止する回動防止部をさらに有することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の作業機械において、
前記ベッド側ブラケットは、第1のピン孔をさらに有し、
前記ステップは、第2のピン孔をさらに有し、
前記支持部で前記被支持部を支持させた後に、前記第1のピン孔と前記第2のピン孔とに挿通させて前記ベッド側ブラケットに前記ステップを固定する挿通ピンをさらに有することを特徴とする作業機械。
【請求項6】
走行体と、
各機器を搭載するためのベッドを有し、前記走行体の上部に設けられた作業機械本体と、
前記ベッドの側方に配設されて、前記作業機械本体の周囲を作業者が移動するために作業者が載るステップと、
前記ステップを前記ベッドの側方で支持する支持部材とを備え、
前記支持部材は、前記ベッドの下面に固定されるベッド側ブラケットと、前記ベッド側ブラケットと前記ステップとの間に介在して前記ベッド側ブラケットに着脱可能に取り付けられるステップ側ブラケットとを有し、
前記ベッド側ブラケットは、側端部が前記ベッドの側面よりも側方外側に突出しないことを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項6に記載の作業機械において、
前記ベッドは、前記作業機械本体の前後方向に延在して略コの字状の断面を有する2本のフレームが、略コの字状の断面の開口部を互いに向かい合わせるように配設され、前記2本のフレームのうち少なくとも前記作業機械本体の側方外側のフレームに対して、略コの字状の断面の内側で少なくとも下面と側面とを接続して上下方向および左右方向に向かって立設された壁部を有し、
前記支持部材は、複数設けられており、
前記支持部材の少なくとも1つは、前記壁部の近傍に前記ベッド側ブラケットが固定されていることを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の作業機械において、
前記ステップ側ブラケットは、前記ステップ側ブラケットにあらかじめ設けられていて、前記ステップ側ブラケットが前記ベッド側ブラケットに取り付けられると前記ベッド側ブラケットに支持されて係止される被支持部を有し、
前記ベッド側ブラケットは、前記ステップ側ブラケットが前記ベッド側ブラケットに取り付けられると前記被支持部を支持して係止する支持部を有し、
前記ステップ側ブラケットは、前記被支持部を前記ステップ側ブラケットから取り外すことなく前記ベッド側ブラケットに着脱可能であることを特徴とする作業機械。
【請求項9】
請求項8に記載の作業機械において、
前記ステップ側ブラケットは、前記ステップが取り付けられた前記ステップ側ブラケットを前記ベッド側ブラケットに取り付ける過程における、前記支持部で支持された前記被支持部を中心とした前記ステップの自重による回動を防止する回動防止部をさらに有することを特徴とする作業機械。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の作業機械において、
前記ベッド側ブラケットは、第1のピン孔をさらに有し、
前記ステップ側ブラケットは、第2のピン孔をさらに有し、
前記支持部材は、前記支持部で前記被支持部を支持させた後に、前記第1のピン孔と前記第2のピン孔とに挿通させて前記ベッド側ブラケットに前記ステップ側ブラケットを固定する挿通ピンをさらに有することを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−75728(P2013−75728A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215076(P2011−215076)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)
【Fターム(参考)】