説明

作業機

【課題】車体に対する作業機の装着にあたり、装着手順を間違えると、ドッキングミスなどによる不慮の事故を招いたり、作業機の姿勢変化によって正常な作業ができなくなる問題がある。
本発明の課題は、作業機の着脱作業順序を音声によって一行程づつオペレータに案内報知することで、上記問題点を解消し、作業の安全化を図ることにある。
【解決手段】 本発明は、走行車両に着脱ヒッチを介して作業装置を着脱可能に構成して設け、作業装置の着脱において、着脱を要する複数の連結部を備え、各連結部の着脱を促す音声案内を着脱作業が必要な順に順次出力する音声出力手段(37)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタや田植機等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行車体に植付作業機や肥料・薬剤散布機等の複数種の作業機を選択的に装着でき、且つ、作業機の着脱容易化を図るようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開平7−312931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車体に対する作業機の着脱に際し、例えば、作業機の装着にあたり、その装着手順を間違えると、ドッキングミスなどによる不慮の事故を招いたり、作業機の姿勢変化によって正常な作業ができなくなる問題があった。
【0004】
本発明の課題は、作業機の着脱作業順序を音声によって一行程づつオペレータに報知することで、上記問題点を解消し、作業の安全化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、走行車両に着脱ヒッチ(63,71)を介して作業装置(10)を着脱可能に構成して設け、作業装置(10)の着脱において、着脱を要する複数の連結部(63a,71a、63b,71b)を備え、各連結部の着脱を促す音声案内を着脱作業が必要な順に順次出力する音声出力手段(37)を設けてあることを特徴とする。
【0006】
作業装置(10)の着脱に際し、その着脱作業順序が一行程づつ音声によって案内される。例えば、着脱作業開始時に音声ガイダンスボタン(30)を押すと、音声出力手段(37)によって一行程分の音声ガイドが流れ、作業者はその音声ガイドに習って作業する。そして、この一行程分の作業が終了し、再度、ガイダンスボタンを押すと、次行程分の音声ガイドが流れる。
【発明の効果】
【0007】
要するに、本発明によれば、作業装置の着脱作業順序を一行程づつ音声ガイドするので、作業装置の着脱作業における誤作業を防止でき、着脱の適正化並びに作業の安全化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、農作業機の一例として苗植付作業機を装備した乗用型田植機を示すものであり、この車体1の略中央に駆動源であるエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4及び後輪5とに伝えるようにしている。エンジンEの上方に運転席6が設置され、運転席6の前方には、操作ボックス3や前輪4,4を操舵するステアリングハンドル7が装備され、更に、車体1の後部には作業装置10として苗植付作業機がアッパリンク8とロアリンク9からなる昇降リンク機構を介して装着され、この植付作業機10と車体1との間には植付作業機10を上下に昇降する油圧昇降シリンダ11が装備されている。
【0009】
苗植付作業機10は、植付条数分に仕切られた苗載せ面に土付きのマット状苗が載置される苗載タンク12と、苗載タンク上の苗を圃場に植え付ける植付条数分の植付装置13と、圃場面上を滑走して整地するセンタフロート14a、サイドフロート14b等からなり、前記油圧昇降シリンダ11の伸縮によって昇降させ、非作業位置に上昇したり、対地作業位置(対地植付位置)下降したりすることができる。また、苗植付作業機10への動力伝達は、前記エンジンEから植付伝動軸15を介して行われ、この植付伝動軸15の伝動を入り切りする植付クラッチケース16内の植付作業クラッチを介して行われる。
【0010】
苗植付作業機10の昇降操作は、操作ボックス3の右側部に配備した昇降レバー17の操作に基づいて手動操作できるように構成されている。
また、図1において、運転席6の後側に施肥装置60が設けられ、苗植付けと同時に植え付けた苗の側部近傍に肥料を施肥ホース61、施肥ガイド67を介して施すようになっている。68は施肥ブロア、69はブロア駆動用モータを示す。
【0011】
前輪車軸4aは、回動中心軸20aから偏心しており、回動中心軸20a回りに前輪ファイナルケース20を回動させることにより、機体に対する前輪4の上下位置を調節することができるようになっている。また、後輪車軸5aを軸支する後輪ファイナルケース21は、軸21a回りに揺動変位可能であり、後輪昇降シリンダ22によって角度調節し、後輪5の昇降位置を任意に調節できる構成としている。
【0012】
また、機体の前後水平制御を機能させるようにしておくと、水平センサ24の検出値が機体水平に維持されるように後輪昇降シリンダ22が制御され、前輪ファイナルケース20の回動に応じて後輪ファイナルケース21も軸21aを回動支点として上下に回動し、機体に対する後輪5の上下位置が変化し、これによって、機体を水平に保ったまま車高を調節することができる。
【0013】
作業機の昇降リンク機構8,9は、平行リンク構成であり、アッパリンク8、ロアリンク9の基端側がメインフレーム23の後端部に立設したリンクベースフレーム62に回動自在に取り付けられ、その先端側に走行車体側ヒッチ63が連結されている。
【0014】
走行車体側ヒッチ63の上端部と背面部に、後記作業機側ヒッチ71の係合ピン71a,71b,71bを係合させる上側係合部材63aと下側係合部材63b,63bがそれぞれ固着されている。上側係合部材63aは上向きに開口する凹状になっており、上側係合部材63aと係合ピン71aとは上下方向に係脱する。また、下側係合部材63b,63bは後方向きに開口する凹状になっており、下側係合部材63b,63bと係合ピン71b,71bとは前後方向に係脱する。そして、着脱レバー63c,63cで操作される固定フック63d,63dによって、下側係合部材63b,63bに係合させた係合ピン71b,71bが後方に逸脱しないように固定する構成となっている。さらに、走行車体側ヒッチ63の下端部には、先端が左右水平な棒状に形成されたローリングロック解除アーム63eが設けられている。
【0015】
作業機側ヒッチ71には、走行車体側ヒッチ63の係合部材63a,63b,63bに係合する係合ピン71a,71b,71bと、ローリングロック装置と、リンク押下げ装置とが設けられている。
【0016】
ローリングロック装置は、回動軸71cに取り付けた丸棒71d,71dとローリングロック解除レバー71cとをスプリング71fによって軸回りに付勢した構成となっている。作業機側ヒッチ71が走行車体側ヒッチ63から外されている時は、丸棒71d,71dが植付作業機10に固定ローリングストッパ71g,71gに当接して、苗載タンク12が中立位置からずれた位置で停止していても、植付作業機10がヒッチ71に対しローリングしない。作業機側ヒッチ71を走行車体側ヒッチ63に連結すると、ローリングロック解除アーム63cがローリング解除レバー71cを押すことにより、丸棒71d,71dがローリングストッパ71g、71gから外れ、植付作業機10がヒッチ71に対しローリング可能な状態となる。
【0017】
リンク押下装置は、前方に突設された押下げ板71hをスプリング71iによって下向きに付勢してあり、作業機側ヒッチ71を走行車体側ヒッチ63から外した際に、少なくとも上側の係合部材63aが上側の係合ピン71aよりも下位になるまで走行車体側ヒッチ63を押し下げるようになっている。
【0018】
図4に示すように、制御部(コントローラ)28の入力側には、リンクベースフレーム62の上部に設置された音声ガイダンスボタン29の音声ガイダンスボタンスイッチ30、作業機の着脱状態を検出する着脱スイッチ31、施肥装置60の施肥ホース61のセット状態を検出するホース検出スイッチ32、電装部のカプラ33、作業機の着脱を要する連結部がロック状態にあるかロック解除状態にあるかを検出するロック検出スイッチ34、作業機をスタンド65で水平に接地保持するか否かを検出するスタンド検出スイッチ35、作業機の上げ下げを検出する昇降リンクセンサ36等が接続して設けられ、また、制御部の出力側には、作業機の着脱作業を音声案内する音声出力装置37が接続して設けられている。
【0019】
音声ガイダンスボタン29は、このボタン29を押す毎に作業機の着脱作業順序が一行程づつ音声によって案内されるようになっている。例えば、着脱作業開始時にガイダンスボタンを押すと、作業機の着脱スイッチ31やロック検出スイッチ34等を介して音声出力装置37を出力し、一行程分の音声ガイド(例えば、「昇降リンクを上げて車体側ヒッチの係合部材を作業機側ヒッチの係合ピンに係合させて下さい。」)が流れる。そして、この一行程分の作業が終了し、再度、ガイダンスボタンを押すと、次行程分の音声ガイドが流れるようになっている。
【0020】
走行車体に対する植付作業機10の装着は次のような作業順序で行う。この時、音声ガイダンスボタン29を押す毎に、一行程分づつの音声ガイドが流れるようにすることで、作業機の着脱作業における誤作業を防止でき、作業機の装着を正確にし、作業の安全化を図ることができる。
【0021】
作業機装着時の走行車体1は、左右の前輪4,4を上げ、左右の後輪5,5を下げた後下がりの状態にする。植付作業機10はスタンド65を起立させて水平に接地保持させた状態にしておく。走行車体1を植付作業機10に向けてバックさせ、走行車体側ヒッチ63が作業機側ヒッチ71の下側になる位置で走行車体を停止させる。そして、昇降リンク機構8,9を上に回動させ、上側の係合部材63aを上側の係合ピン71aに係合させる。(なお、この時、走行車体1が後下がりになっているので、走行車体側ヒッチ63が上位ほど後方に位置する斜めの軌跡を描いて上動し、走行車体側ヒッチ63と作業機側ヒッチ71とが干渉しない。)続いて昇降リンク機構8,9を上に回動させると、植付作業機10が上方に持ち上げられるのに伴い、作業機側ヒッチ71の下部が走行車体側ヒッチ63側に引き寄せられ、下側の係合部材63b,63bが下側の係合ピン71b,71bに係合する。然る後、着脱レバー63c,63cを前方に回動させ、下側係合部材63b,63bと係合ピン71b,71bを固定フック63d,63dで固定する。
【0022】
図5に示す実施例は、音声認識機能をもつ音声認識装置(操作ボックス3内にセット)40を備えた田植機やトラクタ等の農作業機において、オペレータの音声認識用マイク41をオペレータ正面のステアリングハンドル7の中央部に設けた構成例を示すものである。これによって、作業中、ステアリングハンドルを回してもオペレータから発する音声を的確に認識させることができる。
【0023】
また、音声認識機能をもつ田植機において、数字を音声認識できるように構成しておくと、例えば、コントローラ基準値等の書き換え時、数字を音声認識することにより、書き換え作業を容易にすることができる。また、昇降制御の感度調整、植付深さ、苗取り量調整、株間調整、施肥繰出し量調整等を数字の音声認識により簡単に変更することができるようになる。更には、畦クラッチ入り切り条を数字の音声認識により操作できるし、また、植付速度に於いても数字の音声認識により簡単に操作できるようになる。
【0024】
図6に示す実施例は、苗載タンク12が上端側の支軸43を支点として上下に揺動開閉するように構成したもので、ロックピン44に対するロック爪45の係合によってロックするロック状態と、ロックピンに対するロック爪の係合を外すことによってロックを解除するロック解除状態とに切り替えができる構成であり、そして、この苗載タンク12には、ロックを解除して苗載タンクを上方に持ち上げるための取手46を設けた構成としている。また、この取手46には前記ロックを解除するためのロック解除レバー47が設けられている。
【0025】
従来、広い圃場で田植作業を行う時、植付部に多量の苗を補給する必要があり、直進植付途中であっても苗補給作業が必要なときがあり、また、田植機に多量の予備苗を搭載すると、機体全体の重量が増大して植付作業性能の悪化を招く問題がある。
【0026】
そこで、田植機とは別に、圃場内を走行し得る苗供給機を設け、直進植付途中でもこの苗供給機から田植機へ苗補給することができる。例えば、図7に示すように、予備苗台50を具備する苗供給機51は、田植機1の未植側を田植機と一定距離を保ちながら追走するように構成する。苗供給機の走行パターンとしてはリモコン式又はGPS自動走行方式等が考えられる。また、図8に示すように、操作ボックス3上に設置された苗補給ボタン52を押すと、苗供給機が田植機の横側で苗補給のし易い位置で停止するよう構成することもできる。更に、また苗補給ボタンを押すと、苗供給機の運転操作を田植機のステアリングハンドル7を使用して操作できるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】田植機の側面図
【図2】走行車体側ヒッチと作業機側ヒッチが係合した状態を示す側面図
【図3】同上要部の背面図
【図4】制御ブロック回路図
【図5】ステアリングハンドル及び操作ボックスの関係を示す要部の背面図
【図6】苗植付作業機の苗載タンクの側面図
【図7】田植機と苗供給機との関連作業状態を示す平面図
【図8】田植機の運転操作部の平面図
【符号の説明】
【0028】
1 走行車体
10 作業装置(苗植付作業機)
30 音声ガイダンスボタンスイッチ
31 着脱スイッチ
34 ロック検出スイッチ
37 音声出力装置
63 走行車体側ヒッチ
63a 上側係合部材
63b 下側係合部材
71 作業機側ヒッチ
71a 上側係合ピン
71b 下側係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両に着脱ヒッチ(63,71)を介して作業装置(10)を着脱可能に構成して設け、作業装置(10)の着脱において、着脱を要する複数の連結部(63a,71a、63b,71b)を備え、各連結部の着脱を促す音声案内を着脱作業が必要な順に順次出力する音声出力手段(37)を設けてあることを特徴とする作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−283941(P2008−283941A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134480(P2007−134480)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】