説明

作業機

【課題】作業機を警告が出ている状況下で使用することを抑制することができるようにする。
【解決手段】異常であるか否かを判断し且つ異常であるときに警告を発生する警告発生手段55と、警告に関する警告情報を記憶する警告記憶手段56と、警告記憶手段56に記憶された警告情報を表示する表示手段と、警告情報を消去する警告疑似消去手段57とを備え、警告記憶手段56は、警告疑似消去手段57によって消去後に発生した警告に関する警告情報を記憶するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー、トラクタ、コンバイン等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、作業機において当該作業機内で異常が発生すると、異常であることを作業機に設けた制御装置に記憶させるようになっている(例えば、特許文献1)。
特許文献1の作業機の表示装置では、作業機の運転において、作業機に異常が発生するとその異常に関する異常情報をコントローラに記憶し、異常情報を当該表示装置を介して見ることができるようになっている。このように、作業機の表示装置では、異常情報を記憶することができる一方で表示装置に記憶された異常情報を消去することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−95345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、作業機を使用中に異常が発生して警告が発生しているのにも関わらず、作業機を使用し続けると、作業機に多大な負荷が掛かることになる。このような状況下でも、特許文献1に示したような作業機では、警告に相当する異常情報が自動的に記憶されるため、記憶された異常情報を見れば、作業機を多大な負荷で使用していることが分かる。
ここで、特許文献1に示すような表示装置では、ユーザが作業機を多大な負荷で使用していることを隠すために、表示装置に具備された消去機能を用いて異常情報(警告情報)を消去してしまうと、警告情報は事実上取り出すことが困難であり、ユーザが作業機を多大な負荷で使用していたことが分からなくなる虞がある。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、作業機を警告が出ている状況下で使用することを抑制することができる作業機を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
請求項1に係る発明では、異常であるか否かを判断し且つ異常であるときに警告を発生する警告発生手段と、警告に関する警告情報を記憶する警告記憶手段と、警告記憶手段に記憶された警告情報を表示可能な表示手段と、警告情報を疑似的に消去する警告疑似消去手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明では、警告疑似消去手段にて疑似的に消去を行った時期を記憶する疑似消去時期記憶手段を備えていることを特徴とする。
請求項3に係る発明では、警告疑似消去手段は、疑似消去する警告情報を指定する疑似消去指定部と、この疑似消去指定部によって疑似消去を指定された警告情報に対し疑似消去が指定されたことを示す疑似消去フラグを設定するフラグ設定部と、フラグ設定部によって疑似消去フラグが設定された警告情報に対し表示手段にて表示しないように指令する非表示指令部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明によれば、作業機を警告が出ている状況下で使用することを抑制す
ることができる。
請求項2に係る発明によれば、警告情報を消去しようと試みた時期を特定することができる。
【0009】
請求項3に係る発明によれば、警告記憶手段に保存されている警告情報に対して簡単に疑似消去の処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】作業機における制御システムのブロック図である。
【図2】表示装置の正面全体図を示したものである。
【図3】表示装置を通常表示モードにしたときの表示する情報の一例を示したものである。
【図4】警告コードの一覧表を示した図である。
【図5】警告記憶手段の記憶テーブルに警告情報を記憶した一例を示したものである。
【図6】警告情報の上書きを説明する説明図である。
【図7】表示装置を特別表示モードにしたときの表示する情報の一例を示したものである。
【図8】疑似消去する警告情報を自動的に設定したときの説明図である。
【図9】疑似消去前と疑似消去後における警告情報を表示例を示したものである。
【図10】疑似消去する警告情報を手動で設定したときの説明図である。
【図11】作業機の全体側面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図11は本発明の作業機の全体図を示している。図11に示すように、本発明において作業機はバックホーとしているが、トラクタであってもコンバインであっても、その他の作業を行うものであってもよい。
まず、作業機の全体構成から説明する。
【0012】
図11に示すように、作業機1は、下部の走行装置2と、上部の旋回体3とを備えている。
走行装置2は、ゴム製覆帯を有する左右一対の走行体4を備え、両走行体4を走行モータMで動作するようにしたクローラ式走行装置が採用されている。また、該走行装置2の前部にはドーザ5が設けられている。
【0013】
旋回体3は、走行装置2上に旋回ベアリング11を介して上下方向の旋回軸回りに左右旋回自在に支持された旋回台12と、該旋回台12の前部に備えられた作業装置13(掘削装置)とを有している。旋回台12上には、エンジン,ラジエータ,運転席9,燃料タンク,作動油タンク,作動油タンクからの作動油を制御する制御弁等が設けられている。運転席9の周囲には、作業機1に関する様々な情報を表示する表示装置15が設けられている。運転席9は、旋回台12上に設けられたキャビン14により囲まれている。
【0014】
作業装置13は、旋回台12の前部に左右方向の中央部よりやや右寄りにオフセットして設けられた支持ブラケット16に上下方向の軸心回りに左右揺動自在に支持されたスイングブラケット17と、該スイングブラケット17に基部側を左右方向の軸心廻りに回動自在に枢着されて上下揺動自在に支持されたブーム18と、該ブーム18の先端側に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢着されて前後揺動自在に支持されたアーム19と、該アーム19の先端側にスクイ・ダンプ動作可能に設けられたバケット20とを備えている。
【0015】
スイングブラケット17は、旋回台12内に備えられたスイングシリンダの伸縮によって揺動され、ブーム18は、該ブーム18とスイングブラケット17との間に介装されたブームシリンダ22の伸縮によって揺動され、アーム19は、該アーム19とブーム18との間に介装されたアームシリンダ23の伸縮によって揺動され、バケット20は、該バケット20とアーム19との間に介装されたバケットシリンダ21の伸縮によってスクイ・ダンプ動作される。
【0016】
各シリンダ(スイングシリンダ、ブームシリンダ22、アームシリンダ23バケットシリンダ21)は、制御弁によって流量が制御された作動油によって動作するようになっている。
図1は、作業機における制御システムのブロック図を示したものである。
図1に示すように、作業機における制御システムは、主に作業機の制御を行うメイン制御装置30と、このメイン制御装置30とは別に配置された表示装置15とが備えられている。メイン制御装置30と表示装置15とは、Controller Area Network(CAN通信)などの車両用通信ネットワークNを介してデータの送受信が行えるようになっている。なお、車両用通信ネットワークは、主制御部30と従制御部31とがデータの送受信が行えるものであれば何でもよく、FlexRay(フレックスレイ)であっても、その他のネットワークであってもよい。
【0017】
メイン制御装置30は、CPU等から構成されていて、作業機1に備えられた各種装置(走行装置、作業装置など)を制御することが可能である。
例えば、メイン制御装置30は、走行2速制御、アンロード切換制御、スタータ切換制御、盗難防止制御などを行うことが可能である。
走行2速制御は、走行装置2を高速と低速とに切り換える走行2速スイッチ32からのオン又はオフの入力信号に基づいて、走行装置2を高速と低速とに切り換える制御である。アンロード切換制御は、運転席9の側方に設けられたレバーロックスイッチ33からのオン又はオフの入力信号に基づいて、ポンプから吐出された作動油を制御弁に供給可能と供給不能とに切り換える制御である。スタータ切換制御は、スタータスイッチ34からのオン又はオフの入力信号に基づいてスタータリレー35を切り換える制御である。盗難防止制御は、エンジンを始動するエンジンキーに内蔵されたIDコードと、当該メイン制御装置30に内蔵されたIDコードとの照合が成立したときにスタータリレー35をオフからオンにすることを許可し、照合が不成立であるときにスタータリレー35をオフからオンにすることを許可しない制御である。盗難防止手段は、新しいエンジンキーのIDコードを当該メイン制御装置30に登録する登録機能が設けられている。なお、メイン制御装置30は、各種装置を制御するものであればよく、例示した制御に限定されない。
【0018】
メイン制御装置30には、作業機の様々な状態をセンサ等により検出する複数の検出器40が接続されている。
具体的には、このメイン制御装置30には、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ(エンジン回転検出器)40aと、水温を検出する水温センサ(水温検出器)40bと、燃料(残量)を検出する燃料センサ(燃料検出器)40cとが接続されている。即ち、メイン制御装置30には、エンジン回転センサ40a、水温センサ40b、燃料センサ40cなどの検出器40で検出した状態が入力されるようになっている。なお、メイン制御装置30には、エンジンを始動するエンジンキーのIDコード、バッテリーの電圧なども入力されるようになっている。
【0019】
このようなメイン制御装置30にエンジン回転数、燃料、水温などの様々な検出情報が入力されると、当該メイン制御装置30は、それぞれの検出情報(実測値)を表示装置15に車両用通信ネットワークNを介して表示装置15に送信する。また、メイン制御装置30は、検出器40から取得した検出情報(エンジン回転数、燃料、水温など)に基づい
て、作業機1に異常は発生したか否かを判断して異常であると判断したときには、警告を発生して、その警告に関する情報(警告情報という)を記憶(保存)したり、表示装置15にて警告情報が表示可能となるように当該警告情報を表示装置15に送信するようになっている。
【0020】
以下、表示装置15、メイン制御装置30について詳しく説明する。
図2に示すように、表示装置15は、様々な情報を表示可能な表示部41と、表示部41を制御する制御部31とを備えている。
具体的には、表示装置15を正面視すると、当該表示装置15の左側には12個の単一式LED表示部41Aが設けられ、下側にはセグメント式表示部41Bが設けられ、右側には上下に並ぶ2つの指針式表示部41Cが設けられている。
【0021】
各単一式LED表示部41A(LED表示部41Aということがある)は、LED素子の点灯、消灯、点滅によって検出情報自体や警告情報を表示するものである。
詳しくは、表示装置15に設けられたLED表示部41Aには、走行用LED表示部41A1、登録用LED表示部41A2、抜き忘れLED表示部41A3、燃料用LED表示部41A4、水温用LED表示部41A5、警告用LED表示部41A6などがある。
【0022】
走行用LED表示部41A1は、作業機1が高速の走行状態となると点灯する。登録用LED表示部41A2は、登録機能でIDコードを登録する際にエンジンキーのシリンダへの挿入時に点灯する(挿入のタイミングを知らせるために点灯する)。抜き忘れLED表示部41A3は、IDコードの登録時にシリンダーに挿入したエンジンキーが長時間にわたり挿入されている状況下においてエンジンキーの抜き忘れを知らせるときに点灯する。燃料用LED表示部41A4は、燃料不足の状態になったときに点滅する。水温用LED表示部41A5は、水温が異常状態となったり、水温センサ40bが異常状態となり、警告が発せられたときに点滅する。警告用LED表示部41A6は、作業機1に何らかの異常が発生して警告が発せられたときに点滅する。その他に、表示装置15のLED表示部41Aには、AUX用LED表示部41A7、時間合わせ用LED表示部41A8、ブロー用LED表示部41A9等があるが説明を省略する。
【0023】
セグメント式表示部41Bは、複数のセグメント42を点灯又は消灯させることによって様々な情報を表示するものである。セグメント式表示部41Bは48個のセグメント42(セグメント素子)により構成されたものである。
詳しくは、このセグメント式表示部41Bは、7つのセグメント42により構成されたセグメント群43(7セグメントという)が左右方向に5個配置され、7セグメント43の周りに、文字(Y、M、D、AM、PM)や記号(△)で構成された9つのセグメントが配置され、7セグメント43の間にドット(:、.)から構成された4つのセグメントが配置されることにより構成されている。7セグメント43は、数字、文字、記号等を表示するためのものであり、7セグメント43の周りに配置された文字や記号のセグメントは、画面操作を指示したり、どのような画面であるか分かるように補足するものである。
【0024】
図3は、セグメント式表示部41Bで表示する情報の一例を示したものである。
図3に示すように、エンジンキーにてシリンダを回し、表示装置15に電源を供給した後に、表示装置15に接続された第1スイッチ50を押すと、セグメント式表示部41Bにはアワーメータ(累積時間)が表示される。
なお、アワーメータとは、作業機1を製造する製造メーカが作業機1を出荷後、作業機1の駆動した累積時間のことであり、メイン制御装置30又は表示装置15に記憶されるようになっている。
【0025】
次に、セグメント式表示部41Bに累積時間(アワーメータ)が表示されている状態で
、第1スイッチ50とは別に表示装置15に接続された第2スイッチ51を押すと、セグメント式表示部41Bの表示する情報が切り替わり、セグメント式表示部41Bには現在の時刻が表示される。
セグメント式表示部41Bに時刻が表示されている状態で、第2スイッチ51を押すと、セグメント式表示部41Bにはエンジン回転数が表示される。さらに、セグメント式表示部41Bにエンジン回転数が表示されている状態で、第2スイッチ51を押すと、セグメント式表示部41Bには、作業機1に発生している警告の警告コードNが表示される。なお、作業機1に複数の警告が発生している場合は、警告コードNが順番に表示される。警告が発生していない場合は、警告コードNは表示されない。
【0026】
即ち、エンジンキーにてシリンダを回したときは、表示装置15は通常表示モードとなり、セグメント式表示部41Bにて、アワーメータ、時刻、エンジン回転数、警告を順に表示することができる。
図2に示すように、指針式表示部41Cは、回転中心部を中心として所定角度で回動する針部45と、針部45と重なるようにゲージ表示部46とを備えていて、針部45の回動し、ゲージ表示部46に対する針部45の先端部の位置によって様々な情報を表示するものである。
【0027】
例えば、表示装置15を正面視して上側には、燃料用指針式表示部41C1が設けられ、燃料用指針式表示部41C1の下側には、水温用指針式表示部41C2が設けられている。
燃料用指針式表示部41C1は、針部45の先端がゲージ表示部46の上端を指し示したときは燃料が満タンであることを示し、ゲージ表示部46の下端を示したときは燃料が不足(無くなっている)であることを示す。
【0028】
水温用指針式表示部41C2は、針部45の先端がゲージ表示部46の上端を指し示したときは水温が高いことを示し、ゲージ表示部46の下端を示したときは水温が低いことを示す。
表示装置15の制御部31は、メイン制御装置30と当該表示装置15とのデータ(情報)の送受信を行ったり、入力された様々な情報(検出情報、警告情報)を表示部41に表示させるための制御を行うものであり、CPUや汎用IC等から構成されている。また、表示装置15における「通常表示モード」や「特別表示モード」は、表示装置15の制御部31に組み込まれた制御プログラムにて実行するものであっても、メイン制御装置30に組み込まれた制御プログラムであってもよい。
【0029】
次に、メイン制御装置30について詳しく説明する。
メイン制御装置30は、警告発生手段55と、警告記憶手段56とを備えている。警告発生手段55は、メイン制御装置30内に格納されたプログラム等で構成されている。
警告発生手段55は、検出器40によって検出された検出情報などに基づいて作業機1が異常であるか否かを判断すると共に、異常であると判断したときには警告を発生するものである。
【0030】
図4に示すように、警告発生手段55は、例えば、検出されたエンジン回転数が所定回転以上(例えば、700rpm)であり且つ検出された水温が所定温度以上(例えば、120℃以上)で、さらに、所定時間以上(例えば、1秒以上)続いたときに、作業機1が異常(オーバーヒート)であると判断し、オーバーヒートであるという警告を発生させる。
【0031】
また、警告発生手段55は、CAN通信異常、燃料センサ断線異常、水温センサ断線異常など異常が発生したときに警告を発生する。
CAN通信異常とは、メイン制御装置30が正常に動作しているのにも関わらず、例えば、表示装置15と正常にCAN通信が出来ない異常である。
燃料センサ断線異常とは、燃料センサ40cで検出される抵抗値が所定以上であって非常に抵抗値が大きく当該燃料センサ40cとメイン制御装置30とが断線であると考えられる異常である。水温センサ断線異常とは、水温センサ40bで検出される抵抗値が所定以上であって非常に抵抗値が大きく当該水温センサ40bとメイン制御装置30とが断線であると考えられる異常である。
【0032】
警告発生手段55は、警告を発生する際、それぞれの警告(異常)が識別できるように、図4に示したような警告コードN(警告種別)を出力するようになっている。
CAN通信異常に関する警告コードNは「01」とされ、オーバーヒートに関する警告コードNは「15」とされ、燃料センサ断線異常に関する警告コードNは「17」とされ、水温センサ断線異常に関する警告コードNは「18」とされている。
【0033】
例えば、警告発生手段55は、CAN通信異常が発生したときには、当該CAN通信異常に対応した警告コード「01」を出力したり、オーバーヒートが発生したときには、当該オーバーヒートに対応した警告コード「15」を出力する。
つまり、警告発生手段55は、メイン制御装置30に入力される様々な情報を用いて作業機1が異常であるか否かを判断し、異常であると判断した場合には、その異常に関する警告に対応した警告コードNを発生する。なお、警告発生手段55によって発生する警告は、当然の如く、上述した例に限定されず、どのような警告であってもよい。
【0034】
警告記憶手段56は、例えば、不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ)等から構成され、警告に関する情報(警告情報)を記憶するものである。この警告記憶手段56は、少なくとも警告の警告コードN(警告種別)と警告が発生したときの時間とを対応させて記憶するようになっている。以下、警告コードNは、警告情報を識別(区別)するためのものとして説明する。
【0035】
図5に示すように、この警告記憶手段56は、警告コードN毎に、警告情報の内容を分けて格納するための記憶テーブルを有している。つまり、警告の1つ1つに記憶テーブルが割り当てられている。
さらに、各記憶テーブルは、初期アワーメータ部、初期時期部、消去後アワーメータ部、消去後時期部、最終アワーメータ部、最終時期部、カウント部、累積カウント部とに分けられる。
【0036】
初期アワーメータ部は、作業機1を製造するメーカから作業機1を出荷後、初めて警告コードNに対応する警告が発生したときに、当該警告の発生時点での累積時間(アワーメータ)を警告情報として記憶する部分である。初期時期部は、メーカから作業機1を出荷後、初めて警告コードNに対応する警告が発生したときに、警告が発生した時期(発生時期)を警告情報として記憶する部分である。
【0037】
例えば、作業機1の出荷後、オーバーヒートが初めて発生し、警告発生時の累積時間(アワーメータ)が100時間(100h)であり、発生時期が2009年3月2日であるとする。
このとき、警告記憶手段56は、初めてオーバーヒートの警告が発生したときの累積時間である「100時間」を、オーバーヒートに対応する初期アワーメータ部に記憶させると共に、オーバーヒートの発生時期である「2009年3月2日」をオーバーヒートに対応する初期時期部に記憶させる。説明の便宜上、初期アワーメータ部に記憶した警告情報を初期累積時間、初期時期部に記憶した警告情報を初期発生時期ということがある。
【0038】
消去後アワーメータ部は、後述するように警告疑似消去手段57によって警告情報が当該警告記憶手段56から疑似的に消去された後(後述する消去スイッチを押した後)において、新たに警告が発生したときに、新たに警告発生した時点での累積時間(アワーメータ)を警告情報として記憶する部分である。
消去後時期部は、警告疑似消去手段57によって警告情報が疑似的に消去された後(後述する消去スイッチを押した後)、新たに警告が発生したときに、警告の発生時期を警告情報として記憶する部分である。
【0039】
例えば、警告情報が疑似的に消去された後、新たにオーバーヒートが発生し、そのときの累積時間が140時間(140h)で、発生時期が2009年7月6日であるとする。
このとき、警告記憶手段56は、累積時間である「140時間」をオーバーヒートに対応する消去後アワーメータ部に記憶させると共に、オーバーヒートが発生した時期である「2009年7月6日」をオーバーヒートに対応する消去後時期部に記憶させる。
【0040】
なお、警告記憶手段56は、一度疑似的な消去が行われると、消去後アワーメータ部に記憶する累積時間を上書きして更新すると共に、消去後時期部に記憶する時期も上書きをする。説明の便宜上、消去後アワーメータ部に記憶した警告情報を中間累積時間、消去後時期部に記憶した警告情報を中間発生時期ということがある。
最終アワーメータ部は、最新の警告が発生したときに、警告発生時の累積時間(アワーメータ)を警告情報として記憶する部分である。最終時期部は、最新の警告が発生したときに、発生した時期を警告情報として記憶する部分である。
【0041】
図6(a)に示すように、例えば、既に最終アワーメータ部に累積時間である「100時間」が記憶され、且つ、既に最終時期部に時期である「2009年3月2日」が記憶されている場合において、その後、2009年7月6日に同じ警告コードNにおいて警告が発生し、そのときの累積時間が140時間であったとする。
このとき、警告記憶手段56は、最終アワーメータ部に累積時間である「140時間」を上書きして記憶し、最終時期部に発生した時期である「2009年7月6日」を最終時期部に上書きして記憶する。これにより、警告記憶手段56に記憶した警告情報は、図6(a)から図6(b)の状態になる。
【0042】
なお、説明の便宜上、最終時期部に記憶した警告情報を最新累積時間、最終時期部に記憶した警告情報を最新発生時期ということがある。
カウント部は、警告が発生した回数(発生回数)を警告情報として記憶する部分である。例えば、オーバーヒートの警告が繰り返し発生する度に警告が発生回数がカウントアップされて、警告記憶手段56は、カウントアップされる毎に発生回数をカウント部に上書きで記憶する。
【0043】
累積カウント部は、メーカから作業機1を出荷後、同じ警告に関して、警告の累積の発生回数を記憶する部分である。なお、説明の便宜上、カウント部に記憶した警告情報を中間発生回数、累積カウント部に記憶した警告情報を累積発生回数ということがある。
以上、警告記憶手段56は、警告種別毎に定められた記憶テーブルに、8種類の警告情報(初期累積時間、初期発生時期、中間累積時間、中間発生時期、最新累積時間、最新発生時期、中間発生回数、累積発生回数)を記憶するようになっている。
【0044】
さて、警告記憶手段56にて記憶された様々な警告情報は、表示装置15を上述した通常表示モードではなく特別表示モードにすると表示することができる。つまり、表示装置15を、警告記憶手段56に記憶された警告情報を表示する表示手段として動作させることができる。
例えば、エンジンキーでシリンダを回すという通常作業機にて行う操作ではなく、特別
な操作を行う(例えば、第1スイッチ50を押しながらエンジンキーでシリンダを回す)と、表示装置15は通常表示モードから特別表示モードに切り替わる。
【0045】
そして、図7に示すように、表示装置15を特別表示モードにした後、第2スイッチ51を数秒間長押し、表示装置15を「特別表示モード」の中の「警告来歴モード」にする。警告来歴モードにした後、第2スイッチ51を長押しすると、まず、セグメント式表示部41Bに警告情報の警告コードNが表示される(警告コード表示画面)。
この警告コード表示画面は、複数の警告のうち、どの警告を表示するか選択するための画面であり、警告コード表示画面にて第2スイッチ51を数秒間長押し押すと、警告コードNを変えることができる。即ち、警告コード表示画面では、警告記憶手段56から警告種別毎に設定されたどの記憶テーブルの警告情報を読み出すかを設定することができる。
【0046】
そして、警告コード表示画面が表示されている状態で第2スイッチ51を押すと、警告コードNに対応する記憶テーブルから中間発生回数(カウント部に記憶した警告情報)が表示装置15に読み出され、セグメント式表示部41Bに中間発生回数(カウント部に記憶した警告情報)が表示される。
続いて、第2スイッチ51を押すと、警告コードNに対応する記憶テーブルから初期累積時間(初期アワーメータ部に記憶した警告情報)が表示装置15に読み出され、セグメント式表示部41Bに初期累積時間が表示される。
【0047】
さらに、第2スイッチ51を押すと、警告コードNに対応する記憶テーブルから初期発生時期(初期時期部に記憶した警告情報)が読み出され、セグメント式表示部41Bに初期発生時期の一部(年数)が表示され、次に、第2スイッチ51を押すと、初期発生時期の一部(月日)が表示される。このように、第2スイッチ51を押す毎に記憶テーブルから警告情報が順番に読み出され、セグメント式表示部41Bに表示されることになる。
【0048】
また、初期発生時期が記憶テーブルから読み出された後も、第2スイッチ51を押す度に、中間累積時間、中間発生時期、最新累積時間、最新発生時期が読み出されて、セグメント式表示部41Bに表示される。なお、第2スイッチ51を押す毎に各警告情報を記憶テーブルから読み出すとしているが、警告コード表示画面にて警告コードNを表示したときに、当該警告コードNに対応する記憶テーブルの警告情報を一括して読み出し、一時的に保存して、その後、第2スイッチ51を押すたびに順に警告情報をセグメント式表示部41Bに表示してもよい。
【0049】
上述したように、警告コードN毎に、数多くの警告情報が警告記憶手段56に記憶されるようになっている。
このように、数多くの警告情報が警告記憶手段56に記憶されるようになっているが、作業機1(メイン制御装置30)には、警告記憶手段56に記憶した警告情報を疑似的に消去する警告疑似消去手段57が具備されている。
【0050】
警告疑似消去手段57は、メイン制御装置30内に格納されたプログラム等で構成されている。
以下、警告疑似消去手段57について詳しく説明する。
警告疑似消去手段57は、警告記憶手段56に記憶された警告情報を論理消去を行って警告記憶手段56内の警告情報を無くしてしまうのではなく、警告情報を消去したかのように見せかけるだけで、実態としては警告記憶手段56内の警告情報は消去せずに容易に取り出しができるように処理するものである。具体的には、警告疑似消去手段57は、疑似消去前の警告情報は表示装置15にて表示できるようにすることで警告記憶手段56に格納された警告情報が保存されていることを見せる一方で、疑似消去後の警告情報は表示装置15にて表示できないようにすることで警告記憶手段56に格納された警告情報がい
かにも消去されたかのように見せる処理を行う。
【0051】
この実施形態では、次に示す処理を行うことによって警告疑似消去手段57を動作(起動)させることができる。なお、後述する疑似消去指定部60、フラグ設定部61、非表示指令部62は、制御プログラム等から構成されている。
まず、図7に示すように、第2スイッチ51を数秒間長押し、当該表示装置15を「特別表示モード」の中の「来歴消去モード」にする。表示装置15を来歴消去モードにした後、第2スイッチ51を数秒間長押しすると、警告疑似消去手段57が起動する。このとき、第2スイッチ51は、疑似消去を行うための消去スイッチとなる。そして、消去スイッチ51を押して警告疑似消去手段57が起動すると、当該警告疑似消去手段57に具備された疑似消去時期記憶部58によって、消去スイッチ51を押した時期、即ち、疑似的に消去を行った時期(開始時期)を警告記憶手段56に消去不能に記憶する。
【0052】
ここで、第2スイッチ51を押して警告疑似消去手段57を起動させると、警告疑似消去手段57に具備された疑似消去指定部60によって、自動的に疑似消去する警告情報が指定される。具体的には、疑似消去指定部60は、消去スイッチ51が押されると、警告記憶手段56に記憶されている警告情報のうち、初期累積時間、初期発生時期、累積発生回数以外の中間累積時間、中間発生時期、最新累積時間、最新発生時期、中間発生回数を疑似消去を行うものであると自動的に指定する。
【0053】
例えば、図8(a)に示すように、初期累積時間である「100h」、初期発生時期である「2/3/2009」、中間累積時間である「140h」、中間発生時期である「6/7/2009」、最新累積時間である「140h」、最新発生時期である「6/7/2009」、中間発生回数である「1回」、累積発生回数である「13」が警告記憶手段56されていたとする。
【0054】
ここで、図8(b)に示すように、疑似消去指定部60は、中間累積時間である「140h」、中間発生時期である「6/7/2009」、最新累積時間である「140h」、最新発生時期である「6/7/2009」、中間発生回数である「1回」を疑似消去の対象とする。なお、来歴消去モードでは、疑似消去指定部60が、警告種別毎に疑似消去する警告情報を設定する(記憶テーブルごとに疑似消去する警告情報を指定する)のではなく、全ての記憶テーブルにある中間累積時間、中間発生時期、最新累積時間、最新発生時期、中間発生回数について疑似消去を設定する。
【0055】
次に、警告疑似消去手段57に具備されたフラグ設定部61によって、疑似消去を指定された警告情報(中間累積時間、中間発生時期、最新累積時間、最新発生時期、中間発生回数)に対して疑似消去が指定されたことを示す疑似消去フラグFを設定する。図8(b)に示すように、フラグ設定部61は、疑似消去指定部60にて設定された警告情報と疑似消去フラグFとを関連させた上で、警告記憶手段56(記憶テーブル)に疑似消去フラグF付きの警告情報を保存する。
【0056】
このように、警告情報に対して疑似消去フラグFが付けられると、警告情報を特別表示モードにて表示させる際に、警告疑似消去手段57が起動する。
上述したように、表示装置15を「特別表示モード」の中の「警告来歴モード」にしたとき、警告疑似消去手段57が起動する。ここで、疑似消去手段57によって疑似消去を行っていない場合は、第2スイッチ51を順に押すと順番に警告情報が表示されるようになっているが、フラグ設定部61によって疑似消去フラグFが設定されると、疑似消去手段57に具備された非表示指令部62によって、疑似消去フラグFが設定された警告情報に対し表示装置15にて表示しないように指令され、警告情報が表示されなくなる。
【0057】
即ち、非表示指令部62は、表示装置15にて警告情報を表示する際に、警告記憶手段56に記憶されている警告情報のうち、疑似消去フラグFが設定された警告情報を当該表示装置15に読み込ませないことによって疑似消去フラグFが設定された警告情報を表示装置15で表示できないようにしたり、疑似消去フラグFが設定された警告情報を当該表示装置15が読み込んだとしても、疑似消去フラグFが設定された警告情報については表示させる処理を行わない。
【0058】
例えば、上述した例では、図9(a)に示すように、疑似消去前において、初期累積時間、初期発生時期、中間累積時間、中間発生時期、最新累積時間、最新発生時期、中間発生回数、累積発生回数が表示装置15にて表示可能であったが、図9(b)に示すように、疑似消去後は、疑似消去フラグFが設定されている中間累積時間、中間発生時期、最新累積時間、最新発生時期、中間発生回数は非表示指令部62によって表示されることはなく、表示装置15を見るとあたかも警告情報が消去されたかのように見える。
【0059】
上述したように、本発明の作業機によれば、警告情報を疑似的に消去する警告疑似消去手段57を備えているため、例えば、ユーザなどが表示装置15を「特別表示モード」の中の「来歴消去モード」にして、来歴消去モードにより警告情報を消去した場合、表示装置15には、来歴消去モードにより消去した警告情報は表示されなくなり、一見、警告記憶手段56の警告情報を消去することができたと思わすことができる。しかしながら、実際には、消去した警告情報は、警告記憶手段56に保存されており、消去されておらず、警告情報の取り出しが可能である。
【0060】
例えば、ユーザが、警告が発生している状態で作業機1を使用していたことを意図的に隠すために、来歴消去モードを用いて警告情報の消去を行っても、実際には、警告情報が残されているため、警告を発生させながら作業機1を使用するということを防止することができる。
なお、警告疑似消去手段57では、警告情報の論理消去や物理消去を行わないため、警告記憶手段56に保存されている警告情報は容易に取り出すことが可能である。警告情報の取り出し(出力)は、どのような方法で行ってもよく、例えば、パーソナルコンピュータなどをメイン制御部30や表示装置15に接続できるようにして、これらを用いて、警告記憶手段56の警告情報を外部に取り出せるようにしてもよいし、外部のフラッシュメモリをメイン制御部30や表示装置15に接続して取り出しても良い。
【0061】
警告疑似消去手段57は、疑似消去する警告情報を指定する疑似消去指定部60と、この疑似消去指定部60によって疑似消去を指定された警告情報に対し疑似消去が指定されたことを示す疑似消去フラグFを設定するフラグ設定部61と、フラグ設定部61によって疑似消去フラグFが設定された警告情報に対し表示装置15にて表示しないように指令する非表示指令部62とを備えている。そのため、警告記憶手段56に保存されている警告情報に対して簡単に疑似消去の処理を行うことができる。
【0062】
さて、上述した実施形態では、来歴消去モードにすると、複数の警告情報のうち予め定められていた警告情報が疑似消去指定部60によって自動的に設定されるようになっていたが、手動にて疑似消去する警告情報を設定できるようにしてもよい。
図10は、表示装置15に表示された警告情報の一覧表を示したものである。図10に示すように、表示装置15にて疑似消去を行う際に、疑似消去指定部60によって、各警告情報を表示すると共に当該警告情報に対応する位置に消去を行うか行わないかを設定する設定欄Aを表示できるようにしておく。
【0063】
ユーザは、第2スイッチ51等を操作して表示装置15の画面に表示されている設定欄Aに記号「レ」を付けることにより、消去したい警告情報を選択できるようにする。そし
て、ユーザが、警告情報の一覧表から消去したい警告情報を選択し、消去スイッチ51によって消去を決定すると、消去が選択された警告情報には、フラグ設定部61によって設定フラグFが付加されて、警告記憶手段56に保存される。
【0064】
これから分かるように、ユーザは、選択した警告情報が消去されたと思うが実際には、このような操作を行っても警告情報は残ることとなるため、ユーザが、警告が発生したことを隠すために消去する行為を行わないようにしたり、警告が発生した状態で無理に作業機1を使用するという行為を止めさせることができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0065】
上述した実施形態では、警告発生手段55と警告記憶手段56と警告疑似消去手段57とをメイン制御装置30に設けていたが、警告発生手段55、警告記憶手段56、警告疑似消去手段57は、作業機1のどこに設けても良い。例えば、警告発生手段55、警告記憶手段56、警告疑似消去手段57とを表示装置15に設けてもよいし、これらを、作業機1を制御する制御装置のいずれかに設けるようにしてもよい。
【0066】
上述した実施形態では、表示装置15は、LED表示部41A、セグメント式表示部41B、指針式表示部41Cを備えたものであったが、これに限らず、例えば、様々な情報を液晶にて表示する液晶表示部を備えたものであってもよいし、その他の表示形式によって情報を表示するものであってもよい。
上述した実施形態では、疑似消去後は、図9(b)に示したように、疑似消去された警告情報のみ、表示装置15によって表示しないようにしているが、これに代え、表示装置15に「来歴がありません」と表示して、来歴が消去されたかのように知らせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
15 表示装置(表示手段)
31 制御部
55 警告発生手段
56 警告記憶手段
57 警告疑似消去手段
60 疑似消去指定部
61 フラグ設定部
62 非表示指令部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常であるか否かを判断し且つ異常であるときに警告を発生する警告発生手段と、警告に関する警告情報を記憶する警告記憶手段と、警告記憶手段に記憶された警告情報を表示可能な表示手段と、警告情報を疑似的に消去する警告疑似消去手段とを備えていることを特徴とする作業機。
【請求項2】
警告疑似消去手段は、当該警告疑似消去手段にて疑似的に消去を行った時期を記憶する疑似消去時期記憶部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
警告疑似消去手段は、疑似消去する警告情報を指定する疑似消去指定部と、この疑似消去指定部によって疑似消去を指定された警告情報に対し疑似消去が指定されたことを示す疑似消去フラグを設定するフラグ設定部と、フラグ設定部によって疑似消去フラグが設定された警告情報に対し表示手段にて表示しないように指令する非表示指令部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−167515(P2012−167515A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30978(P2011−30978)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】