説明

作業機

【課題】従来より、土壌消毒機等の作業機では、薬剤散布等を施した後に鎮圧ローラで鎮圧すると共に、該圃場面に接地輪を接地して作業機の移動距離を検知し、間欠駆動ポンプ等を駆動していたが、接地輪の回転部分が圃場面に直接接触するため、圃場面の凹凸によるバウンド等が生じ、移動距離の検知精度が悪化する、という問題があった。
【解決手段】薬液注入部2B、電動モータ78、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の移動距離を検知する移動距離検知装置80、その接触輪回転センサ89からのパルス信号により電動モータ78に駆動信号を送信するコントローラ99、及び薬液注入部2Bで散布作業後に鎮圧する鎮圧ローラ46を備えたマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1にて、移動距離検知装置80は車輪式の接触輪87を備え、該接触輪87は、鎮圧ローラ46の上方でローラ表面46bに接触して連動回転し、接触輪回転センサ89を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両に装着されて圃場に作業を施す作業機に設けた作業装置と、該作業装置を作動する電動モータと、前記作業機の移動距離を検知する移動距離検知装置と、該移動距離検知装置の距離センサからの移動距離信号に基づいて前記電動モータに駆動信号を送信するコントローラと、前記作業装置による作業を施した後に左右幅略全幅で鎮圧を行う鎮圧ローラとを備えた作業機に関し、特に、移動距離検知装置の配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラクタ等の走行車両に装着される土壌消毒機や播種機等の作業機においては、薬剤散布や播種を施した後の圃場面を左右幅略全幅で鎮圧ローラにより鎮圧すると共に、該圃場面に接地輪を接地して作業機の移動距離を検知し、該移動距離に基づいて、間欠駆動ポンプや繰出装置等の作業装置を電動モータによって駆動制御することにより、移動距離に比例した薬剤散布や播種を施す技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−4835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記技術では、接地輪の回転部分が圃場面に直接接触するため、圃場面の凹凸による回転部分のバウンド、土の付着、石・藁等の絡み込み等が防止できずに、移動距離の検知精度が悪化する、という問題があった。
更に、接地輪の回転部分は、鎮圧ローラの前方左端のような前後左右位置に配置されているため、作業機の左右幅や前後長が増加し、ハウス内や畦際での作業性や旋回性能が低い、という問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、走行車両に装着されて圃場に作業を施す作業機に設けた作業装置と、該作業装置を作動する電動モータと、前記作業機の移動距離を検知する移動距離検知装置と、該移動距離検知装置の距離センサからの移動距離信号に基づいて前記電動モータに駆動信号を送信するコントローラと、前記作業装置による作業を施した後に左右幅略全幅で鎮圧を行う鎮圧ローラとを備えた作業機において、前記移動距離検知装置は車輪式の接触輪を備え、該接触輪は、前記鎮圧ローラの上方に配置すると共に、前記鎮圧ローラのローラ表面に接触して連動回転し、前記距離センサを作動させるものである。
請求項2においては、前記作業機はマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機であって、薬液を間欠的に吸入し吐出する複数の間欠駆動ポンプと、該間欠駆動ポンプからの薬液を圃場に注入する薬液注入爪と、該薬液注入爪より後方に配置する前記鎮圧ローラとを備えるメインユニットに対し、マルチフィルムをフィルムロールから繰り出して前記鎮圧ローラによる鎮圧面上に敷設するマルチユニットを、着脱自在に設けるものである。
請求項3においては、前記マルチユニットは、前記メインユニットから後方へ突出するアームに対し、係止ピンによって着脱自在に連結するものである。
請求項4においては、前記マルチユニットは、前記フィルムロールのみを単独上昇可能なロール吊設構造を備えるものである。
請求項5においては、前記移動距離信号は、前記接触輪の所定の回転角度ごとにコントローラに送信し、該コントローラに前記移動距離信号が所定数読み込まれると、該コントローラから前記電動モータに対して作業装置の単位作業に相当する駆動信号を送信するモータ制御機構を備えるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、前記接触輪が圃場面に直接接触しないようにすることができ、圃場面の凹凸による接触輪のバウンド、土の付着、石・藁等の絡み込み等を防止し、移動距離の検知精度を向上させることができる。更に、鎮圧ローラの上方に接触輪を配置するので、鎮圧ローラの左右または前後に接触輪を配置して作業機の左右幅や前後長が増加するのを、防止することができ、ハウス内や畦際での作業性や旋回性能の向上が図れる。加えて、接触輪は鎮圧ローラのローラ表面に接触して連動回転するので、例えば、接触輪をマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機のマルチフィルム上面に接触させて移動距離を検知するような場合と異なり、鎮圧ローラの接地と同時に接触輪が回転して移動距離の検知を開始し、マルチフィルムが繰り出されて確実に敷設し始めるまでの間も検知を続けることができ、未散布区間の発生を抑制すると共に、該未散布区間に手動で薬液を散布して散布精度が低下したり作業負荷が大きくなるのを確実に防止することができる。
請求項2により、薬液散布後の圃場面を鎮圧ローラで鎮圧した後にマルチフィルムを敷設して高い薬液封入効果が得られるマルチング作業と、鎮圧ローラの圃場面への鎮圧のみにより、ある程度の薬液封入効果が得られる鎮圧作業との両作業に、1台の作業機だけで対応することができ、作業機の汎用性を高めて消毒コストの低減が図れる。更に、薬液注入爪の後方に鎮圧ローラを配置するので、作業機の重量を該鎮圧ローラの幅方向に分散させることができ、左右端に小さな尾輪を配置して作業機を支持する場合に比べて、圃場面における作業機の沈み量の変動を小さくし、薬液の注入深さを一定にして散布精度の向上を図ることができる。
請求項3により、マルチユニットを簡単な構成で着脱することができ、構造の簡素化によるメンテナンス性の向上、部品コストの低減を図ることができる。
請求項4により、例えば、マルチング作業後にフィルムロールを上昇させてからマルチフィルムを引き出して切断する作業(以下、「フィルム切断作業」とする)を行う際、従来の如く、作業機と一緒にしかフィルムロールを上昇できない構成では、作業機の上昇高さが小さくて、作業機の昇降に応じて電動モータ等の駆動入切を行うスイッチ(以下、「リミットスイッチ」とする)が作動中のまま、作業機と一緒に上昇した鎮圧ローラが惰性で回転し、該鎮圧ローラと連動回転する接触輪によって薬液吐出が続行される場合があり、その間ずっと薬液が大気中に飛散する。これに対し、ロール吊設構造によると、フィルムロールだけを上昇させてからフィルム切断作業を行うことができ、その間、鎮圧ローラは接地したままであり、前記薬液飛散を確実に防止することができる。
請求項5により、作業機が所定距離移動した時点で電動モータを駆動し、作業装置の単位作業、例えば、作業機がマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機の場合は、間欠駆動ポンプの1往復分の薬液を吐出させることができ、従来のように、距離センサからの各移動距離信号間の時間、つまり移動速度に応じて電動モータの駆動軸の回転速度が連続的に変化し、安定した吐出が難しい場合と比べ、移動速度による吐出量の変動を抑えることができ、散布精度の向上が図れる。更に、駆動信号送信に必要な移動距離信号の信号数を変更するだけで、散布ピッチを容易に変更することができ、電動モータの変速機構等が不要となり、装置コストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係わるマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機をトラクタの後部に装着した状態の側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】薬液ポンプの側面一部断面図である。
【図4】移動距離検知装置の側面図である。
【図5】ポンプ制御機構を示すブロック図である。
【図6】ポンプ制御機構の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】マルチユニットの平面図である。
【図8】同じく側面図である。
【図9】同じく斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図1の矢印Fで示す方向をマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前進方向を基準とするものである。
【0009】
まず、本発明に関わる作業機であるマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の全体構成について、図1、図2により説明する。
該マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1は、走行車両であるトラクタ4の後部に、左右一対のロワリンク5・5とトップリンク6とを有する昇降機構7を介して昇降可能に連設される。
【0010】
そして、該マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1は、前記昇降機構7に装着させるための装着部2A、薬液を土壌中に注入するための薬液注入部2B、及び薬液散布後の土壌を均平し鎮圧するための土壌鎮圧部2Cより成るメインユニット2と、後で詳述するようにして、鎮圧した圃場面(以下、「鎮圧面」とする)の上にマルチフィルム8を敷設するマルチユニット3とから構成される。なお、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1が連設されるのは、本実施例に示すトラクタ4に限るものではなく、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1を移動させながら圃場での薬液の散布作業を行うことができるものであればよい。
【0011】
前記メインユニット2の装着部2Aにおいては、左右一対の側板9・9が互いに平行に対向配置され、該側板9・9の上端部間は、連結フレーム10によって連結され、該連結フレーム10の左右略中央部から前斜め上方に向かっては、トップリンクマスト11が立設されている。
【0012】
更に、前記側板9・9の前端部には、それぞれ連結ピン12・12が左右外方に向かって突設され、該連結ピン12・12に、前記ロワリンク5・5の後端部がそれぞれ連結されると共に、前記トップリンクマスト11の上端部には、連結ピン13が横架され、該連結ピン13に、前記トップリンク6の後端が連結されている。このようにして、前記トラクタ4の昇降機構7に設けた3本のリンク5・5・6により、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1を、昇降可能に支持しながら確実に移動できるようにしている。
【0013】
また、前記薬液注入部2Bにおいては、平面視で横長の矩形状に形成された機枠15が水平に配置され、該機枠15は、対向配設された左右一対の板状のメインフレーム15L・15Rと、該メインフレーム15L・15Rの前端部間・後端部間をそれぞれ連結支持する角パイプ状の前後の支持フレーム15F・15Bと、該支持フレーム15F・15B間を左右途中部で連結する左右の補強フレーム15C・15Cとにより構成される。
【0014】
該前支持フレーム15Fの前面には、2枚の前取付板18L・18Rが前方に突設され、該前取付板18L・18Rに、前記側板9・9が外側に重ねられてボルト19・19で締結される一方、前記後支持フレーム15Bの左右略中央の上面には、後取付板25が立設され、該後取付板25の上端部は、連結ステー26を介して前記トップリンクマスト11の上下途中部に連結されている。これにより、機枠15を前記装着部2Aに強固に連結支持することができる。
【0015】
更に、前支持フレーム15Fの前面で前取付板18L・18Rより左右両外方には、サブソイラ14L・14Rが固設され、該サブソイラ14L・14Rは、前記トラクタ4の図示せぬタイヤの通過位置を通るように配置されている。
【0016】
加えて、前支持フレーム15Fの上面でサブソイラ14L・14Rの左右両側には、4枚のステー27が立設され、左二つのステー27・27上に、上端が前斜め下方に傾斜した傾斜板28を介して、左の薬液タンク載置台20Lが固定され、右二つのステー27・27上にも、該傾斜板28を介して、右の薬液タンク載置台20Rが固定されている。更に、このようにして前斜め下方に保持した薬液タンク載置台20L・20R上には、それぞれ2個の薬液タンク21・21が載置される。
【0017】
前記後支持フレーム15Bの前面からは、側面視L字状の支持板49が、機体左右方向に略等間隔で複数列、本実施例では6列突設され、該支持板49の前部側面には、薬液注入爪16が上下ボルト51・51によって締結固定されている。
【0018】
更に、後支持フレーム15Bの後面の左右略中央部には、平面視で前方に開いたコ字状の支持部材31が前端で固設され、該支持部材31の左右両側部の前後途中部から、左右一対の支持ステー33L・33Rが立設され、該支持ステー33L・33R上にポンプ支持フレーム34が横設固定されている。そして、該ポンプ支持フレーム34上に、前記薬液注入爪16と同数の薬液ポンプ、本実施例では左右一対の第一薬液ポンプ24L・第二薬液ポンプ24Rが3組で計6つ、機体左右方向に並設されている。
【0019】
該ポンプ装置35の前斜め上方には、前記薬液ポンプ24L・24Rと同数の薬液流確認計23を機体左右方向に並設固定した側面視コ字状の取付プレート36が配置される。該取付プレート36は、ポール22の上端部に固設され、該ポール22の下端部は、前記後支持フレーム15Bで後取付板25の後部に連結されている。そして、前記薬液タンク21と薬液ポンプ24L・24Rとの間は、吸入ホース38によって接続され、薬液ポンプ24L・24Rと薬液流確認計23との間は吐出ホース39によって接続され、薬液流確認計23と薬液注入爪16との間は注入ホース40によって接続されている。
【0020】
このような構成において、後で詳述するようにして薬液ポンプ24L・24Rが駆動されると、薬液は、該薬液ポンプ24L・24Rによって吸引され、薬液タンク21、吸入ホース38、薬液ポンプ24L・24R、吐出ホース39、薬液流確認計23、及び注入ホース40を介して、薬液注入爪16まで圧送される。
【0021】
また、前記土壌鎮圧部2Cは、後で詳述する移動距離検知装置80を備えると共に、前記後支持フレーム15Bの後面から後方に、左右一対の均平板支持ステー44L・44Rが突設され、該均平板支持ステー44L・44Rの後端部には、スライドバー29がボルト45によって所定高さで締結固定可能に設けられて、該スライドバー29の下端に、均平板43が前後揺動可能に支持される。
【0022】
更に、前記スライドバー29の上下途中部から後方には上ステー29aが突設され、該上ステー29aの後部に、ガイドピン30の上部が上下動可能に挿通される一方、該ガイドピン30の下部は、前記均平板43より立設された下ステー43aと前後揺動可能に連結されている。そして、該下ステー43aと前記上ステー29aとの間のガイドピン30には、クッションばね17が圧縮状態で巻回されている。
【0023】
これにより、該クッションばね17の弾性力によって均平板43下部の屈曲縁43bを圃場面に向かって押圧し、圃場面の均平性を高めるようにしている。
【0024】
前記後支持フレーム15Bに固設した支持部材31の内側には、横フレーム32が横架され、該横フレーム32と支持部材31の後フレーム31aとの間には、揺動支持部材41が介設され、該揺動支持部材41の正面視略中央部は、機体前後方向に延設した揺動ピン42によって上下揺動可能に軸支されている。このような揺動支持部材41の下端からは、板状の前後の支持部41a・41bが垂設され、該支持部41a・41bの下部間に、ローラフレーム47におけるパイプ状の支持軸47aの左右略中央部が固設されている。
【0025】
該ローラフレーム47では、前記支持軸47aの左右両端部から後斜め下方に向けて、左右一対の支持ステー47L・47Rが突設され、該支持ステー47L・47Rの突出端の間に、鎮圧ローラ46の車軸46aが機体前後方向に回動可能に支持されており、鎮圧ローラ46が、前記揺動ピン42を中心として上下揺動しながら圃場を転動できるようにしている。
【0026】
これにより、土壌表面の傾斜や凹凸等の形状に沿って、鎮圧ローラ46を容易に追従させることができ、均一な鎮圧を可能とする。従って、前記薬液注入爪16により薬液が注入された薬液注入位置の上方の土壌表面は、その凹凸が前記均平板43によって均された上、前記鎮圧ローラ46によって均一に鎮圧されて固められるため、薬液を土壌内に一様に滞留させることができ、消毒効果のばらつきを軽減することができる。
【0027】
なお、前記支持ステー47L・47Rの後斜め下方への突出端の間には、スクレーパ48も支持されている。該スクレーパ48には、側面視L字状の土落とし部48aが形成され、該土落とし部48aは前記鎮圧ローラ46の外周面に近接するようにして配置されており、土壌の含水比が高くて土が付着しやすい場合等に、該土落とし部48aによって鎮圧ローラ46の表面に付着した土を除去することができ、鎮圧作業の効率が低下しないようにしている。
【0028】
以上のような構成から成るメインユニット2において、その機枠15を形成する後支持フレーム15Bで、均平板支持ステー44L・44Rの左右外側には、側面視上下逆L字状のマルチ取付アーム37L・37Rの前端が、ボルト50によって締結固定され、該マルチ取付アーム37L・37Rの後部に、前記マルチユニット3が、後述するようにして着脱自在に連結される。
【0029】
次に、前記薬液ポンプ24L・24Rについて、図1乃至図3により説明する。
該薬液ポンプ24L・24Rは、単一のポンプケース52内に収容されて一個のポンプ装置35を形成し、該ポンプ装置35は、左右に3列並設されている。そして、このうちの薬液ポンプ24Lにおいては、前記ポンプケース52前部の内側に駆動部53が設けられ、該駆動部53は、ポンプケース52後部の上面に設けられた圧送部54と連結連動される。なお、両薬液ポンプ24L・24Rとも略同じ構成であるため、以下では、薬液ポンプ24Lについてのみ説明し、薬液ポンプ24Rの説明は省略する。
【0030】
前記圧送部54においては、ダイヤフラム55が弁取付部材56とダイヤフラム取付部材57とによって上下から挟持して固定され、このうちの弁取付部材56からは、ダイヤフラム55に連通する吸入ポート58と吐出ポート59とが上方に突設され、該吸入ポート58と吐出ポート59とは、それぞれ前記吸入ホース38と吐出ホース39とに接続されている。一方、前記ダイヤフラム55の中央下部からは連結ピン60がポンプケース52内に垂下され、該連結ピン60には、往復移動体である連結ロッド61が連結される。
【0031】
また、前記駆動部53においては、このような圧送部54の連結ロッド61の下端が、揺動クランク62の一端上部に、枢支軸63を介して枢支され、留め具64によって抜け止めがなされている。この揺動クランク62には、圧送部54側に長孔62aが開口され、圧送部54の反対側には、楕円状孔62bが開口されており、このうちの長孔62a内には、揺動支点である円盤状の支点カム65が挿入され、前記楕円状孔62bには偏心カム66が挿入されている。
【0032】
前記支点カム65は、側面視略中央に調量軸67が貫通されて、該調量軸67に回転自在に枢支されると共に、該調量軸67は、調量レバー68の先部に締結固定されている。更に、支点カム65の左側部は、前記ポンプケース52の左側面に長穴状に穿設された側面ガイド孔52aに、前後摺動可能に挿入されている。
【0033】
そして、前記調量レバー68は、前記調量軸67に締結固定される連結バー68dと、該連結バー68dの後部に外嵌固定される目盛りパイプ68cと、該目盛りパイプ68cの後部に前後動可能に螺挿される抜き差しバー68bと、該抜き差しバー68bの後端に連結された調量ノブ68aとから一体に形成されると共に、いずれも同軸上にあって、揺動クランク62の長手方向と略平行に配置されている。
【0034】
このうちの目盛りパイプ68cは、その外周上部に、上広がり円錐状の複数の凹部68eが前後方向に等間隔で列設されると共に、前記ポンプケース52の後面に付設したレバーガイド69内によって枢支される。そして、該レバーガイド69には、固定ノブ70の螺挿部70bが上から下方に向かって螺挿されている。
【0035】
これにより、該固定ノブ70の把持部70aを回転すると、上半部に付勢ばね72を巻回した螺挿部70bの先端が、目盛りパイプ68c側に向かって進んで凹部68eと係合し、調量レバー68を特定位置に固定したり、逆に、螺挿部70bの先端を凹部68eから離間させ、調量レバー68を揺動クランク62の長手方向に自由にスライド操作できるようにしている。
【0036】
前記偏心カム66は、その軸心部に、駆動軸73がキー75により相対回転不能に連結されると共に、カラー74を介して、前記楕円状孔62b内に摺動自在に支持される。そして、該カラー74の両側面には、ドーナツ状の固定部材76・76が嵌合されており、前記偏心カム66とカラー74とが、揺動クランク62から抜け出ないように固定されている。
【0037】
該偏心カム66を貫通した前記駆動軸73は、3列のポンプ装置35における共通の駆動軸として機能し、該駆動軸73の一端は、最右端のポンプ装置35の右側面に固設されたモータケース77内の電動モータ78の図示せぬ出力軸に連結される一方、駆動軸73の他端は、最左端のポンプ装置35の左側面に固設された電動モータ回転センサ79の図示せぬセンサ軸に連結されている。
【0038】
このような構成において、前記固定ノブ70の把持部70aを持って螺挿部70bを回転操作し、該螺挿部70bの先端を前記調量レバー68の側面の凹部68eから僅かに離間させた上で、調量ノブ68aを持って調量レバー68を揺動クランク62の長手方向に押し引きしてスライド操作すると、該調量レバー68の先部に固定された調量軸67が、前記側面ガイド孔52aにガイドされながら揺動クランク62の長手方向に素早く摺動し、同時に、調量軸67に支持された前記支点カム65も短時間で移動される。
【0039】
該支点カム65を所定位置に固定した後、前記電動モータ78を駆動させると、図示せぬ出力軸を介して駆動軸73が回転駆動されて偏心カム66が回転する。すると、該偏心カム66に摺接された揺動クランク62の一端が上下に往復動し、揺動クランク62の他端も前記支点カム65を支点として上下に往復動し、これに伴って、揺動クランク62の他端に連結ロッド61を介して連結されたダイヤフラム55も上下に往復動する。これにより、吸入ポート58と吐出ポート59内に設けた弁が開閉され、薬液の吸入動作と吐出動作が繰り返される。
【0040】
更に、調量レバー68を押し引きしてスライド操作すると、支点カム65が長孔62a内を摺動し、揺動クランク62の揺動支点の位置は変更されるのに対し、偏心カム66は、移動できないために偏心カム66側の上下往復幅は一定となっている。従って、揺動支点となる支点カム65を偏心カム66側に向かって移動させると、揺動クランク62の反対側、すなわち枢支軸63側の上下往復幅が長くなり、ダイヤフラム55内に吸入される薬液の量が増加し、薬液吐出量も増加する。逆に、支点カム65を偏心カム66から離間させると、枢支軸63側の上下往復幅が短くなり、ダイヤフラム55内に吸入される薬液の量が減少し、薬液吐出量も減少するようにしている。
【0041】
なお、前記目盛りパイプ68cの後端より後方の抜き差しバー68b上には、固定用の蝶ナット71が螺嵌されており、調量ノブ68aと一緒に抜き差しバー68bを回転して、目盛りパイプ68cからの抜き差しバー68bの突出量を変更した後、該蝶ナット71を回転して抜き差しバー68bを目盛りパイプ68cに締結することにより、調量レバー68の全長を調整できるようにしている。これにより、操作しない場合には、調量レバー68をコンパクトに収容し、散布作業中の周囲への干渉を防止することができる。
【0042】
次に、このような薬液ポンプ24L・24Rのポンプ制御機構90と、それによる制御手順について、図2乃至図6により説明する。
図2、図3、図5に示すように、該ポンプ制御機構90は、前記駆動軸73・電動モータ78・電動モータ回転センサ79から成る散布駆動部92、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1が所定高さまで降下するとスイッチが入って作動するリミットスイッチ91、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の移動距離を検知する前記移動距離検知装置80、及び該移動距離検知装置80からの移動距離信号等に基づいて薬液ポンプ24L・24Rから薬液を土壌中に吐出する距離間隔(以下、「注入ピッチ」とする)等を調節する制御部94等から構成されている。
【0043】
このうちのリミットスイッチ91は、その一端が、最左端のポンプ装置35のポンプケース52の前面に、側面視L字状の取付具95を介して連結される一方、リミットスイッチ91の他端は、前記トラクタ4の図示せぬ取付部に、ばね96・チェーン97等を介して連結されており、前記昇降機構7によってマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1を所定高さまで上昇させると、ばね96・チェーン97等の張りが緩み、リミットスイッチ91が切れて作動しないようにしている。
【0044】
図2、図4に示すように、前記移動距離検知装置80においては、前記鎮圧ローラ46の支持軸47aから、一対の取付フレーム81・81が立設され、該取付フレーム81・81の上端部間を左右貫通するようにして、支持ピン83が装着される。
【0045】
該支持ピン83には、接触輪アーム82の前端部が上下揺動自在に連結され、該接触輪アーム82で幅広の後半部の右側面に、支持プレート84が複数のボルト85により締結され、該支持プレート84に、接触輪軸86が前後回動自在に軸支されている。
【0046】
そして、該接触輪軸86の左半部に、接触輪87がボルト88によって締結固設されると共に、該接地輪軸87の右端には、前記支持プレート84に取り付けられた接触輪回転センサ89の図示せぬ検出部が連動連結されており、該接触輪回転センサ89によって、前記接触輪87の回転に対応する移動距離、後で詳述するパルス数を出力できるようにしている。
【0047】
この際、該接触輪87は、前記鎮圧ローラ46の上方に配置されると共に、接触輪87の外周は、鎮圧ローラ46のローラ表面46bに自重で接触状態に保持されている。なお、該接触状況については、ばね等の弾性力によって接触輪87を鎮圧ローラ46に向かって押圧するようにしてもよく、接触輪87が鎮圧ローラ46と一緒に円滑に連動回転できるのであれば、特には限定されない。
【0048】
また、図2、図5に示すように、前記制御部94においては、トラクタ4の運転席等の近傍に、前記散布駆動部92の電動モータ78の制御を行う制御ボックス98が配置され、該制御ボックス98には、コントローラ99等が収容されている。
【0049】
該コントローラ99には、エアー抜きのために電動モータ78を直接駆動可能なエアー抜きスイッチ93、前記散布駆動部92における電動モータ78・電動モータ回転センサ79、前記リミットスイッチ91、及び前記移動距離検知装置80における接触輪回転センサ89が接続されている。
【0050】
更に、コントローラ99には、制御プログラム等を記憶するためのメモリ99aが備えられており、該制御プログラムによって、自動注入モードまたは手動注入モードによる間欠的な散布が可能となる。
【0051】
このうちの自動注入モードにおいては、接触輪87の回転に伴って、その回転角を前記接触輪回転センサ89が検知してパルス信号としてコントローラ99に送信する。そして、該パルス信号が所定数(以下、「注入パルス数」とする)に達すると、前記電動モータ78の駆動軸73が1回転するように設定されており、前述の如く、揺動クランク62を介してダイヤフラム55が1回上下に往復動し、薬液の吸入動作・吐出動作が行われて、薬液が薬液注入爪16から土壌中に1回分注入される。
【0052】
例えば、接触輪87の1回転を24等分に分割し、接触輪87が1回転すると接触輪回転センサ89が24パルスのパルス信号を送信するように設定すると共に、このうちの6パルスのパルス信号がコントローラ99に読み込まれると、電動モータ78の駆動軸73が1回転するように設定した場合には、注入ピッチは接触輪87の外周の4分の1の長さとなる。この際に読み込まれる6パルスが前記注入パルス数に相当する。該注入パルス数が8パルスの場合には、注入ピッチは接触輪87の外周の3分の1の長さとなる。つまり、接触輪87の外周とその分割数が一定の条件下では、前記注入パルス数を変更することによって、注入ピッチを自在に設定することができる。
【0053】
そして、このような自動注入モードでは、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1が降下していても、該マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1がトラクタ4と一緒に移動を開始して接触輪87が回転しない限り、薬液吐出が開始されることがなく、移動前の薬液飛散が自動的に防止される。
【0054】
一方、手動注入モードにおいては、接触輪回転センサ89からのパルス信号に関係なく、所定の時間(以下、「停止時間」とする)が経過すると、前記電動モータ78の駆動軸73が1回転し、薬液が薬液注入爪16から土壌中に1回分注入されるようにしている。
【0055】
例えば、停止時間を1秒に設定した場合には、電動モータ78の駆動軸73が1回転して薬液が土壌中に1回分注入された後、電動モータ78は1秒間停止し、その後、再び電動モータ78の駆動軸73が1回転して薬液が土壌中に1回分注入され、このプロセスが繰り返される。なお、このような手動注入モードでは、手動で電源スイッチ103を「切」側に設定することにより、移動前の薬液飛散を防止するようにしている。
【0056】
いずれの注入モードにおいても、電動モータ78の駆動軸73は、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の移動速度に関係なく、安定吐出に適した所定の速度で回転させることができる。これに対し、従来の如く、接触輪回転センサ89からの各パルス信号間の時間に応じて、電動モータ78の駆動軸73の回転速度を制御する場合は、該回転速度が連続的に変化することとなり、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の移動速度によっては吐出量が大きく変動し、散布精度が悪い。
【0057】
更に、前記制御ボックス98には、調整ダイヤル101と、後述する自動注入モードと手動注入モードを切り替えるモードスイッチ102と、バッテリ100からの駆動電力によるポンプ制御機構90の各動作の入切を行う電源スイッチ103とが配置され、いずれも前記コントローラ99に接続されている。
【0058】
以上のような構成から成るポンプ制御機構90の制御手順について説明する。
図5、図6に示すように、前記エアー抜きスイッチ93が「エアー抜き」側に設定されている場合は(ステップS1:NO)、電動モータ78がトラクタ4のバッテリ100に直結されて駆動され、エアー抜き作業が行われる(ステップS9)。
【0059】
前記エアー抜きスイッチ93が「作業」側に設定されている場合(ステップS1:YES)、前記調整ダイヤル101を所定の目盛りに調整した後、電源スイッチ103を入れると(ステップS2)、リミットスイッチ91からの昇降信号、モードスイッチ102からのモード信号、接触輪回転センサ89からのパルス信号、及び電動モータ回転センサ79からのモータ回転信号が、前記コントローラ99に読み込まれる(ステップS3)。
【0060】
そして、このうちの昇降信号に基づいて、リミットスイッチ91が作動中か否かが判断される(ステップS4)。リミットスイッチ91が作動中でない場合は(ステップS4:NO)、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1が所定高さまで上昇しているために、散布作業は不可と判断し、電動モータ78の駆動を停止する(ステップS10)。
【0061】
リミットスイッチ91が作動中の場合は(ステップS4:YES)、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1による散布作業が可能と判断し、前記モード信号に基づいて、自動注入モードか否かが判断される(ステップS5)。
【0062】
モードスイッチ102が「手動」側に傾倒されて手動注入モードに設定されている場合は(ステップS5:NO)、調整ダイヤル101で選択した目盛り、本実施例では、前記停止時間がゼロの0から最長の10までの11段より選択した目盛りに対応する停止時間信号が読み込まれ、前記モータ回転信号に基づいて、電動モータ78駆動による薬液注入と停止とが、所定の停止時間の時間間隔で交互に繰り返され、散布作業が行われる(ステップS7)。
【0063】
モードスイッチ102が「自動」側に傾倒されて自動注入モードに設定されている場合は(ステップS5:YES)、調整ダイヤル101で選択した目盛り、本実施例では、前記注入パルス数がゼロの0から最長の10までの11段より選択した目盛りに対応する注入パルス数信号が読み込まれ、前記パルス信号・モータ回転信号に基づいて、電動モータ78駆動による薬液注入と停止とが、所定の注入パルス数に対応する注入ピッチの距離間隔で交互に繰り返され、散布作業が行われる(ステップS6)。
【0064】
散布作業の後、電源スイッチ103が切られていない場合は(ステップS8:NO)、再び、各種信号がコントローラ99に読み込まれて(ステップS3)、ステップS4以下のプロセスが繰り返されるのである。
【0065】
すなわち、以上のように、走行車両であるトラクタ4に装着されて圃場に作業を施す作業機であるマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1に設けた作業装置である薬液注入部2Bと、該薬液注入部2Bを作動する電動モータ78と、前記マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の移動距離を検知する移動距離検知装置80と、該移動距離検知装置80の距離センサである接触輪回転センサ89からの移動距離信号であるパルス信号に基づいて前記電動モータ78に駆動信号を送信するコントローラ99と、前記薬液注入部2Bによる散布作業を施した後に左右幅略全幅で鎮圧を行う鎮圧ローラ46とを備えたマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1において、前記移動距離検知装置80は車輪式の接触輪87を備え、該接触輪87は、前記鎮圧ローラ46の上方に配置すると共に、前記鎮圧ローラ46のローラ表面46bに接触して連動回転し、前記接触輪回転センサ89を作動させるので、前記接触輪87が圃場面に直接接触しないようにすることができ、圃場面の凹凸による接触輪87のバウンド、土の付着、石・藁等の絡み込み等を防止し、移動距離に対応するパルス数の検知精度を向上させることができる。更に、鎮圧ローラ46の上方に接触輪87を配置するので、鎮圧ローラ46の左右または前後に接触輪87を配置してマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の左右幅や前後長が増加するのを、防止することができ、ハウス内や畦際での作業性や旋回性能の向上が図れる。
【0066】
更に、前記移動距離信号であるパルス信号は、前記接触輪87の所定の回転角度ごとにコントローラ99に送信し、該コントローラ99に前記パルス信号が所定数読み込まれると、該コントローラ99から前記電動モータ78に対して、作業装置の単位作業である薬液ポンプ24L・24Rの1往復に相当する駆動信号を送信するモータ制御機構であるポンプ制御機構90を備えるので、作業機であるマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1が所定距離移動した時点で電動モータ78を駆動し、薬液ポンプ24L・24Rの1往復分の薬液を吐出させることができ、従来のように、接触輪回転センサ89からの各パルス信号間の時間、つまり移動速度に応じて電動モータ78の駆動軸73の回転速度が連続的に変化し、安定した吐出が難しい場合と比べ、移動速度による吐出量の変動を抑えることができ、散布精度の向上が図れる。更に、駆動信号送信に必要なパルス信号の信号数を変更するだけで、散布ピッチである注入ピッチを容易に変更することができ、電動モータ78の変速機構等が不要となり、装置コストの低減が図れる。なお、作業機が他の種類、例えば、播種機の場合は、前記作業装置の単位作業には、ロール式ではロール1回転、目皿式では目皿1回転が対応する。
【0067】
次に、前記マルチユニット3について、図1、図2、図7乃至図9により説明する。
該マルチユニット3は、左右一対のユニット体3L・3Rから成り、それぞれ、鎮圧面上に前記マルチフィルム8を順次繰り出すフィルム繰出部3La・3Raと、繰り出したマルチフィルム8の左右側縁を踏圧して土をかけるフィルム敷設部3Lb・3Rbとから構成される。なお、前記ユニット体3L・3Rは互いに左右対称に形成されているため、以下の説明では、左側のユニット体3Lを中心に説明し、右側のユニット体3Rについての説明は省略する。
【0068】
前記フィルム繰出部3Laにおいては、マルチフィルム8の左右側縁を入れ込む溝を鎮圧面に形成する溝切りディスク104と、ロール芯110に前記マルチフィルム8を巻いた状態のフィルムロール105とが、前から順に前マルチフレーム108によって支持されている。
【0069】
該前マルチフレーム108は、平面視前後逆L字状であって、前記マルチ取付アーム37Lの後部に連結される連結フレーム111と、該連結フレーム111から外方に突出するガイド体111aに左右摺動可能に外嵌されるスライドフレーム112と、該スライドフレーム112の外端から直角後方に突出されるロールフレーム113とから構成されており、前記スライドフレーム112に溝切りディスク104が取り付けられ、前記ロールフレーム113にフィルムロール105が取り付けられている。
【0070】
そして、このうちの連結フレーム111、ガイド体111a、及びスライドフレーム112は、同一軸心上に配置されており、スライドフレーム112上面から螺挿してガイド体111aを押止しているボルト114・114を一旦緩めてから、ガイド体111a沿いにスライドフレーム112を左右摺動させた後、ボルト114・114を締め直すことにより、連結フレーム111とスライドフレーム112間の間隔を変更することができる。
【0071】
これにより、図7に示す、連結フレーム111からスライドフレーム112にかけての左右幅115を変更し、左右のロールフレーム113・113間の間隔を容易に調整することができ、様々な幅のフィルムロール105への対応を可能としている。
【0072】
ここで、前記マルチ取付アーム37Lは、前記後支持フレーム15Bに前端が締結されて後方に延設された本体アーム37aと、該本体アーム37a後端を上下から挟むようにして水平配置された上下一対の取付プレート37b・37bと、該取付プレート37b・37bの左側面間と右側面間をそれぞれ連結する左右のストッパ37c・37dとから構成されている。
【0073】
そして、このうちの上下の取付プレート37b・37bの間に、前記連結フレーム111の内端部が挿入され、該連結フレーム111の内端部には、内側から順に、上下方向に軸孔を有するボス部111bと、上下方向に貫通する調整ピン孔111cが形成される。一方、前記取付プレート37b・37bには、上下方向に貫通する複数のピン孔116a乃至116eが穿孔されており、このうちのピン孔116aは、前記取付プレート37b・37bで平面視略中央に穿孔され、ピン孔116b・116c・116d・116eは、前記ピン孔116aを中心とした同一半円周上に、左から反時計回りに約60度ピッチで穿孔されている。
【0074】
これにより、ボス部111bとピン孔116aを重ねた上で係止ピン117のピン本体117aを上方から挿通させると共に、調整ピン孔111cとピン孔116bを重ねた上で係止ピン118のピン本体118aを上方から挿通させることにより、連結フレーム111を取付プレート37b・37bに2点で支持して、前マルチフレーム108をマルチ取付アーム37Lに対し、着脱自在に連結することができる。
【0075】
更に、図7に示すように、前記係止ピン117はそのままで、係止ピン118を調整ピン孔111cとピン孔116bから一旦抜脱してから、係止ピン117を中心にして前マルチフレーム108を位置119から位置120まで水平回動し、調整ピン孔111cとピン孔116dを重ねた後、係止ピン118を再び挿通することにより、前マルチフレーム108を機体内方に容易に折り畳み可能としており、これにより、マルチユニット3の収納性や運搬性を向上させることができる。
【0076】
なお、前記マルチ取付アーム37L・37Rの本体アーム37a・37aの後部上面からは、左右一対の予備マルチ台149・149が立設され、該予備マルチ台149・149の上部は前後に分岐して二股状の台部149a・149aが形成され、左右の台部149a・149a間に前記フィルムロール105を載置し収容できるようにしている。
【0077】
前記溝切りディスク104は、その側面視略中央が支持バー121の下端に固設される一方、該支持バー121の上部は支持パイプ122に挿通されており、該支持パイプ122は、前記スライドフレーム112の前面に、軸心を上下方向に向けて固設されている。そして、前記支持パイプ122には、ボルト123が前方から螺挿され、支持バー121が支持パイプ122に締結固定されている。
【0078】
これにより、ボルト123を一旦緩めて支持バー121を昇降させた後、ボルト123を締め直すことにより、溝切りディスク104の高さを変更することができ、溝の深さを容易に調整できるようにしている。
【0079】
前記フィルムロール105は、ロール吊設構造124を介して、前記スライドフレーム112の後部に取り付けられている。
該ロール吊設構造124においては、前記ロールフレーム113の後端部から垂設フレーム125が垂下され、該垂設フレーム125の下部には、左右方向に軸心を有する筒状のガイド部125aが形成され、該ガイド部125a内には、スライドフレーム126のスライド部126aが左右摺動可能に挿入されている。そして、前記ガイド部125aには、L字形状のレバー129のねじ部が上方から螺挿され、スライド部126aがガイド部125aに締結固定されている。
【0080】
該スライド部126aの外端からは、前斜め下方に連結部126bが延設され、該連結部126bの下部には、ロールフレーム127の前部がピン130によって前後回動可能に連結されると共に、前記連結部126bの下端には、内側に屈曲して成る規制部126cが形成されている。これにより、ロールフレーム127の後部が前記ピン130を中心に下方に回動しようとしても、ロールフレーム127の前部下面が前記規制部126cに当接し、それより下方には回動できないようにしている。
【0081】
更に、ロールフレーム127の後部には、複数の支軸取付孔127aが左右方向に穿孔され、該支軸取付孔127aには、ロール枢支部材128が前後回転可能に軸支され、該ロール枢支部材128は、前記フィルムロール105の左右端で軸心上に形成された図示せぬ凹部と係合可能に形成される。
【0082】
このような構成において、前記レバー129を一旦緩めてスライド部126aを左右摺動させた後、レバー129を締め直すことにより、ロール枢支部材128の左右位置を変更することができ、前述したスライドフレーム112による幅広効果と併せて、様々な幅のフィルムロール105への対応を可能としている。
【0083】
更に、前記ロール枢支部材128・128を介して、前記ロールフレーム127・127間にフィルムロール105を装着すると、該フィルムロール105は、下限高さが規制された状態で自重により圃場面に接地されているだけであり、周囲の部材と関係なく、フィルムロール105だけを把持して上昇させることができ、フィルムロール105を上げた状態で行う前記フィルム切断作業が容易となる。
【0084】
すなわち、前記作業機はマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1であって、薬液を間欠的に吸入し吐出する複数の間欠駆動ポンプである薬液ポンプ24L・24Rと、該薬液ポンプ24L・24Rからの薬液を圃場に注入する薬液注入爪16と、該薬液注入爪16より後方に配置する前記鎮圧ローラ46とを備えるメインユニット2に対し、マルチフィルム8をフィルムロール105から繰り出して前記鎮圧ローラ46による鎮圧面上に敷設するマルチユニット3を、着脱自在に設けるので、薬液散布後の圃場面を鎮圧ローラ46で鎮圧した後にマルチフィルム8を敷設して高い薬液封入効果が得られるマルチング作業と、鎮圧ローラ46の圃場面への鎮圧のみにより、ある程度の薬液封入効果が得られる鎮圧作業との両作業に、1台のマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1だけで対応することができ、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の汎用性を高めて消毒コストの低減が図れる。更に、薬液注入爪16の後方に鎮圧ローラ46を配置するので、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の重量を該鎮圧ローラ46の幅方向に分散させることができ、左右端に小さな尾輪を配置して作業機を支持する場合に比べて、圃場面におけるマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の沈み量の変動を小さくし、薬液の注入深さを一定にして散布精度の向上を図ることができる。
【0085】
更に、前記マルチユニット3は、前記メインユニット2から後方へ突出するアームであるマルチ取付けアーム37L・37Rに対し、係止ピン117・118によって着脱自在に連結するので、マルチユニット3を簡単な構成で着脱することができ、構造の簡素化によるメンテナンス性の向上、部品コストの低減を図ることができる。
【0086】
加えて、前記マルチユニット3は、前記フィルムロール105のみを単独上昇可能なロール吊設構造124を備えるので、例えば、マルチング作業後にフィルムロール105を上昇させてからフィルム切断作業を行う際、従来の如く、作業機であるマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1と一緒にしかフィルムロール105を上昇できない構成では、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1の上昇高さが小さくて前記リミットスイッチ91が作動中のまま、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1と一緒に上昇した鎮圧ローラ46が惰性で回転し、該鎮圧ローラ46と連動回転する接触輪87によって薬液吐出が続行される場合があり、その間ずっと薬液が大気中に飛散する。これに対し、前記ロール吊設構造124によると、フィルムロール105だけを上昇させてからフィルム切断作業を行うことができ、その間、鎮圧ローラ46は接地したままであり、前記薬液飛散を確実に防止することができる。
【0087】
また、フィルム敷設部3Lbにおいては、前記溝切りディスク104により形成した溝にマルチフィルム8の左右側縁を踏圧するフィルム踏圧輪106と、踏圧済みのマルチフィルム8の左右側縁に土を掛ける覆土ディスク107とが、前から順に後マルチフレーム109によって支持されている。
【0088】
該後マルチフレーム109は、前部が上方に屈曲した側面視L字状であって、その前部は、前記前マルチフレーム108の後部に、ピン131によって前後回動可能に連結される。そして、前マルチフレーム108の後部で、その上面には上ストッパ135が立設され、下面には下ストッパ136が垂設されると共に、前マルチフレーム108のロールフレーム113の前後途中部と、後マルチフレーム109の屈曲部109aとの間には、引張りばね134が介設されている。
【0089】
これにより、図8に示すように、マルチング作業中は、ピン131を中心にして後マルチフレーム109を位置137に配置して、屈曲部109aより後部を略水平に保持し、収納時や別圃場への移送時には、ピン131を中心にして後マルチフレーム109を位置137から位置138まで前方回動し、引張りばね134によって支点越えさせて、後マルチフレーム109を機体上方に容易に折り畳み可能としている。
【0090】
前記フィルム踏圧輪106は、その側面視略中央がフレーム139の後部に回動自在に支持され、該フレーム139の前部には、支持バー140の下端が、フィルム踏圧輪106を下方に付勢可能に連結される。一方、支持バー140の上部は、支持パイプ141に挿通され、該支持パイプ141は、前記屈曲部109aの近傍に、軸心を上下方向に向けて固設されている。そして、この支持パイプ141には、L字形状のレバー142のねじ部が螺挿され、支持バー140が支持パイプ141に締結固定されている。
【0091】
これにより、レバー142を一旦緩めて支持バー140を昇降させた後、レバー142を締め直すことにより、フィルム踏圧輪106の高さを変更することができ、踏圧の程度を容易に調整できるようにしている。
【0092】
前記覆土ディスク107は、その側面視略中央が支持バー143の下端に固設される一方、該支持バー143の上部は支持パイプ144に挿通され、該支持パイプ144は、スライド部材146の左端の支点部146aに、蝶ねじ145によって水平回動可能に締結される。該スライド部材146の本体部146bは、前記後マルチフレーム109後端に固設した支持パイプ部109bに左右摺動可能に挿通される。そして、該支持パイプ部109bと前記支持パイプ144には、それぞれL字形状のレバー147・レバー148のねじ部が螺挿され、スライド部材146が支持パイプ部109bに連結されると共に、支持バー143が支持パイプ144に連結されている。
【0093】
これにより、蝶ねじ145・レバー147・レバー148を抜脱することにより、それぞれ、覆土ディスク107の水平回動角度、左右方向位置、上下方向位置を自在に調整できるようにしている。
【0094】
以上述べたような構成において、マルチング作業を行う場合、作業開始前に、予め、マルチフィルム8をフィルムロール105から引き出してフィルム踏圧輪106の下に敷いておき、作業開始時には、マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機1が前進するにつれて該フィルム踏圧輪106に引っ張られるようにしてマルチフィルム8が繰り出されるようにしている。このため、たとえマルチフィルム8上に本発明に係わる接触輪87を配置しても、繰り出されたマルチフィルム8が、前記フィルム踏圧輪106と覆土ディスク107により、しっかりと張設された状態で圃場面に敷設されるまでの間は、接触輪87がスリップして未散布区間が発生する。
【0095】
これに対し、前述の如く、接触輪87を鎮圧ローラ46のローラ表面46bに接触して連動回転するので、接触輪87をマルチフィルム8上面に接触させて移動距離を検知するような場合と異なり、鎮圧ローラ46の接地と同時に接触輪87が回転して移動距離の検知を開始し、マルチフィルム8が繰り出されて確実に敷設し始めるまでの間も検知を続けることができ、未散布区間の発生を抑制すると共に、該未散布区間に手動で薬液を散布して散布精度が低下したり作業負荷が大きくなるのを確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、走行車両に装着されて圃場に作業を施す作業機に設けた作業装置と、該作業装置を作動する電動モータと、前記作業機の移動距離を検知する移動距離検知装置と、該移動距離検知装置の距離センサからの移動距離信号に基づいて前記電動モータに駆動信号を送信するコントローラと、前記作業装置による作業を施した後に左右幅略全幅で鎮圧を行う鎮圧ローラとを備えた、全ての作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 マルチ同時全面鎮圧土壌消毒機(作業機)
2 メインユニット
2B 薬液注入部(作業装置)
3 マルチユニット
4 トラクタ(走行車両)
8 マルチフィルム
16 薬液注入爪
24L・24R 薬液ポンプ(間欠駆動ポンプ)
37L・37R マルチ取付けアーム(アーム)
46 鎮圧ローラ
46b ローラ表面
78 電動モータ
80 移動距離検知装置
87 接触輪
89 接触輪回転センサ(距離センサ)
90 ポンプ制御機構(モータ制御機構)
99 コントローラ
105 フィルムロール
117・118 係止ピン
124 ロール吊設構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両に装着されて圃場に作業を施す作業機に設けた作業装置と、該作業装置を作動する電動モータと、前記作業機の移動距離を検知する移動距離検知装置と、該移動距離検知装置の距離センサからの移動距離信号に基づいて前記電動モータに駆動信号を送信するコントローラと、前記作業装置による作業を施した後に左右幅略全幅で鎮圧を行う鎮圧ローラとを備えた作業機において、前記移動距離検知装置は車輪式の接触輪を備え、該接触輪は、前記鎮圧ローラの上方に配置すると共に、前記鎮圧ローラのローラ表面に接触して連動回転し、前記距離センサを作動させることを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記作業機はマルチ同時全面鎮圧土壌消毒機であって、薬液を間欠的に吸入し吐出する複数の間欠駆動ポンプと、該間欠駆動ポンプからの薬液を圃場に注入する薬液注入爪と、該薬液注入爪より後方に配置する前記鎮圧ローラとを備えるメインユニットに対し、マルチフィルムをフィルムロールから繰り出して前記鎮圧ローラによる鎮圧面上に敷設するマルチユニットを、着脱自在に設けることを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記マルチユニットは、前記メインユニットから後方へ突出するアームに対し、係止ピンによって着脱自在に連結することを特徴とする請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記マルチユニットは、前記フィルムロールのみを単独上昇可能なロール吊設構造を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記移動距離信号は、前記接触輪の所定の回転角度ごとにコントローラに送信し、該コントローラに前記移動距離信号が所定数読み込まれると、該コントローラから前記電動モータに対して作業装置の単位作業に相当する駆動信号を送信するモータ制御機構を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−34433(P2013−34433A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173369(P2011−173369)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】