説明

作業管理システム

【課題】システム全体を小型化および簡略化することができる作業管理システムを提供することを課題とする。
【解決手段】作業管理システム1であって、ボルトB1〜B4を締め付けるとともに、ボルトB1〜B4を加工したことを示す加工情報を出力する工具10と、各ボルトB1〜B4に配置された工具10を検出し、工具10の位置情報を出力する検出センサ20と、検出センサ20から入力された位置情報と、位置情報が入力されているときに工具10から入力された加工情報とを対応させて表示する表示部32を有する管理装置30と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを加工するときの作業管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のボルトの締め付け作業を管理する作業管理システムとしては、トルクレンチに送信機を設けるとともに、送信機から発信された信号を受信する複数の受信機を作業領域の周囲に配置しているものがある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
この構成では、送信機と受信機との間で送受信される信号を解析して、トルクレンチの位置を算出することで、締め付け作業が行われたボルトを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−267740号公報
【特許文献2】特許第4351891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の作業管理システムでは、作業領域に複数の受信機を配置する必要があるため、システム全体が大きくなるという問題がある。また、送信機と受信機との間で送受信される信号が、他の機器で使用される信号に干渉するのを防ぐ必要があるため、システムの設定が煩雑になるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、システム全体を小型化および簡略化することができる作業管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、作業管理システムであって、ワークに設定された複数の加工部位を加工するとともに、前記加工部位を加工したことを示す加工情報を出力する工具と、前記各加工部位に配置された前記工具を検出し、前記工具の位置情報を出力する検出センサと、前記検出センサから入力された前記位置情報と、前記位置情報が入力されているときに前記工具から入力された前記加工情報とを対応させて表示する表示部を有する管理装置と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
この構成では、工具の位置情報と加工部位の加工情報とが対応して表示部に表示され、作業者が加工部位の加工状態を把握し易くなっているため、加工部位を確実に加工するとともに、同じ加工部位が重複して加工されるのを防ぐことができる。
また、前記した構成では、検出センサによって工具の位置を検出しているため、システム全体を小型化および簡略化することができる。したがって、本発明の作業管理システムを既存の作業ラインに簡単に設置することができるとともに、製造コストを低減することができる。
【0008】
本発明の作業管理システムは、例えば、ワークに仮止めされたボルト(加工部位)をナットランナーコントローラなどの工具によって締め付ける作業に適用可能であり、工具の位置情報およびボルトを締め付けたことを示す加工情報を表示部に表示することで、ボルトを締め忘れたり、同じボルトを重複して締め付けたりするのを防ぐことができる。
なお、ボルトを締め付けたことを示す加工情報とは、ボルトに嵌合する回転軸の回転状態や、ボルトに嵌合する回転軸の回転トルクなどの工具の駆動状態、或いは、ボルトをねじ穴に対して斜めに締め付けた場合のボルトの固着状態などを示したものである。例えば、工具の回転軸が予め設定された回転トルクに達したことを示す加工情報は、回転軸によってボルトが予め設定された締め付けトルクで締め付けられたことを示している。
また、検出センサとしては、例えば、光線を照射し、その光線上に配置された部材を検出する光センサを用いることができる。
【0009】
前記した作業管理システムにおいて、前記各加工部位に配置された前記工具を、一台の前記検出センサによって検出させることで、システム全体を小型化および簡略化することが好ましい。
【0010】
前記した作業管理システムにおいて、前記表示部に前記工具の前記位置情報を示すマークを表示させ、前記加工情報を前記マーク上に表示させるように構成した場合には、加工部位の加工状態を的確に把握することができる。なお、マークの明暗を反転表示させたり、マークを点滅させたりすることで、加工情報をマーク上に表示することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の作業管理システムでは、作業者が加工部位の加工状態を把握し易くなるため、加工部位を確実に加工するとともに、同じ加工部位が重複して加工されるのを防ぐことができる。また、既存の作業ラインに簡単に設置することができるとともに、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の作業管理システムを示した斜視図である。
【図2】本実施形態の作業管理システムを示した全体構成図である。
【図3】本実施形態の検出センサの照射方向を示した説明図で、(a)は検出範囲C1〜C4を示した図、(b)は検出範囲C5を設定した場合の図である。
【図4】本実施形態の管理装置の表示部を示した図で、(a)はボルトの締め付け作業前の状態、(b)は第一のボルトの締め付け作業が完了した状態、(c)は全てのボルトの締め付け作業が完了した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、エンジンおよびモータを駆動源として走行するハイブリッドシステムを備えた自動車の組み立てラインにおいて、各種配線が電気的に接続される端子台であるジャンクションボードを、バッテリユニットの側面に取り付ける工程に、本発明の作業管理システムを適用した場合を例として説明する。
【0014】
バッテリユニットW1(特許請求の範囲における「ワーク」)の側面にジャンクションボードW2を取り付ける工程(以下、「本工程」という)は、図1に示すように、前工程においてバッテリユニットW1およびジャンクションボードW2に仮止めされた四本のボルトB1〜B4(特許請求の範囲における「加工部位」)を工具10によって締め付ける作業を行う工程である。
バッテリユニットW1は、組み立てラインに設けられたベルトコンベア2上に載置されており、ベルトコンベア2のベルト2aを駆動させることで、各工程の作業位置に搬送される。
【0015】
本実施形態の作業管理システム1は、図1に示すように、四本のボルトB1〜B4を締め付けるとともに、各ボルトB1〜B4を締め付けたことを示す加工情報を出力する工具10と、各ボルトB1〜B4の頭部に嵌合された工具10を検出し、工具10の位置情報を出力する検出センサ20と、検出センサ20から入力された位置情報と、位置情報が入力されているときに工具10から入力された加工情報とを対応させて表示する表示部32を有する管理装置30と、を備えている。
【0016】
工具10は、回転軸11と、回転軸11を回転させる駆動装置が収容された本体部12と、を備えたナットランナーコントローラである。
この工具10は、作業者が本体部12を保持し、回転軸11の先端部をボルトB1〜B4の頭部に嵌合させた状態で、回転軸11を回転させることによって、ボルトB1〜B4を締め付けることができる。
また、工具10では、回転軸11が回転し、回転軸11の回転トルクが予め設定された回転トルクに達して、回転軸11の回転が停止すると、加工情報を管理装置30の制御部31に出力する。この加工情報は、ボルトB1〜B4が予め設定された締め付けトルク(回転トルク)で締め付けられたことを示している。
【0017】
検出センサ20は、本工程の作業位置に対応させてベルトコンベア2の側部に配置された光センサであり、ベルトコンベア2上に載置されたバッテリユニットW1の側面に仮組みされたジャンクションボードW2の側方に向けて光線を照射し、その光線上に配置された部材を検出することができる。
また、検出センサ20では、照射された光線がバッテリユニットW1に仮止めされた各ボルトB1〜B4の頭部の側方を通過しており、各ボルトB1〜B4に対応させて検出範囲C1〜C4が設定されている(図3(a)参照)。
【0018】
そして、各ボルトB1〜B4の頭部に工具10の回転軸11の先端部が嵌合されたときには、検出センサ20の各検出範囲C1〜C4(図3(a)参照)内に工具10の回転軸11が配置されることになり、検出センサ20によって工具10が検出される。さらに、検出センサ20では、工具10を検出した検出範囲C1〜C4を工具10の位置情報として後記する管理装置30の制御部31に出力する。
具体的には、検出センサ20が検出範囲C1(図3(a)参照)において工具10を検出した場合には、工具10が第一のボルトB1に配置されたことを示す位置情報が、検出センサ20から制御部31(図2参照)に出力される。
なお、検出センサ20の構成としては、光線の照射方向を検出範囲C1〜C4ごとに切り替えるように構成してもよい。この場合には、検出センサ20の照射方向を工具10の位置情報とすることができる。
また、図1に示す工具10の駆動スイッチ13が押されて工具10が駆動したときに検出センサ20から光線が照射されるように、工具10と検出センサ20とを連動させてもよい。
【0019】
管理装置30は、図2に示すように、検出センサ20および工具10から位置情報および加工情報が入力される制御部31と、位置情報と加工情報とを対応させて表示する表示部32と、位置情報と加工情報と対応させて記憶する記憶部33と、を備えている。
本実施形態の管理装置30は、各種機械の動作を制御するPLC(Programmable Logic Controller)を用いて構成されている。管理装置30における各処理は、記憶部33に記憶されているプログラムが、CPU(Central Processing Unit)である制御部31によって実行されることで具現化される。
また、検出センサ20および工具10は、有線または無線によって制御部31にデータや信号を伝達させることができる。
【0020】
制御部31では、検出センサ20から工具10の位置情報が入力され、さらに、位置情報が入力されているときに、工具10から加工情報が入力されると、対応関係にある一対の加工情報および位置情報を一つのデータとして表示部32および記憶部33に出力する。
【0021】
表示部32は、制御部31から出力された各種情報を表示するモニタである。表示部32には、図4(a)に示すように、バッテリユニットW1の側面外形図が表示され、この側面外形図内には、各ボルトB1〜B4(図1参照)の締め付け位置が白抜き円形のマークP1〜P4として示されている。なお、バッテリユニットW1の側面外形図および各ボルトB1〜B4の締め付け位置のデータは、記憶部33に予め記憶されており、制御部31を介して表示部32に出力される。
【0022】
表示部32では、制御部31から位置情報および加工情報が入力されると、図4(c)に示すように、位置情報に対応するマークP1〜P4が黒塗りの円形に反転表示され、マークP1〜P4上にボルトB1〜B4の加工情報が表示される。
【0023】
次に、本実施形態の作業管理システム1によるボルトB1〜B4の締め付け作業の管理方法について説明する。
まず、図2に示すように、前工程において四本のボルトB1〜B4が仮止めされたバッテリユニットW1がベルトコンベア2によって本工程の作業位置に搬送されると、バッテリユニットW1の搬送方向の前方にストッパ3が配置され、バッテリユニットW1が作業位置に位置決めされる。
【0024】
ストッパ3が作動すると、図3(a)に示すように、検出センサ20からジャンクションボードW2の側方に向けて光線が照射される。このとき、制御部31(図2参照)では、各ボルトB1〜B4に対応する各検出範囲C1〜C4が作業対象の範囲として設定される。
【0025】
そして、作業者が図1に示す工具10の回転軸11の先端部を、第一のボルトB1の頭部に嵌合させると、工具10の回転軸11が検出範囲C1に配置され、検出センサ20によって工具10が検出される。検出センサ20では、検出範囲C1において工具10を検出すると、制御部31に工具10の位置情報を出力する。このときの位置情報は、工具10が第一のボルトB1に配置されていることを示している。
また、作業者が工具10を操作して、第一のボルトB1の締め付け作業が完了すると、工具10から制御部31に加工情報が出力される。
【0026】
位置情報および加工情報が入力された制御部31では、位置情報および加工情報を対応させて表示部32および記憶部33に出力する。
表示部32では、位置情報および加工情報が入力されると、図4(b)に示すように、位置情報に対応するマークP1が黒塗りの円形に表示される。
【0027】
同様にして、作業者が各ボルトB2〜B4の締め付け作業を順次に行い、図3(a)に示す各検出範囲C2〜C4において工具10が検出されると、図4(c)に示すように、表示部32に表示されたマークP1〜P4全てが黒塗りの円形に表示され、四本のボルトB1〜B4の締め付け作業が完了したことが示される。
【0028】
なお、図3(b)に示すように、作業対象の範囲に設定された検出範囲C1〜C4以外の検出範囲C5に配置された第五のボルトB5に工具10が配置された場合には、表示部32(図2参照)において、第五のボルトB5の締め付け位置を示しているマークを赤色で表示することで、作業者に対して第五のボルトB5が締め付け対象ではないことを示すように構成することができる。
【0029】
作業者は、全てのボルトB1〜B4の締め付け作業が完了したことを表示部32で確認した後に、図2に示すストッパ3の解除スイッチ(図示せず)を操作して、ストッパ3を移動させると、検出センサ20から光線の照射が停止する。さらに、作業者はベルトコンベア2のベルト2aを駆動させて、バッテリユニットW1を次工程に搬送し、次のバッテリユニットW1の搬入を待つことになる。
【0030】
以上のような作業管理システム1によれば、図2に示すように、工具10の位置情報と、ボルトB1〜B4を締め付けたことを示す加工情報とが対応して表示部32に表示され、作業者がボルトB1〜B4の締め付け状態を把握し易くなっているため、ボルトB1〜B4を確実に締め付けるとともに、同じボルトB1〜B4が重複して締め付けられるのを防ぐことができる。
【0031】
また、一台の検出センサ20によって、各ボルトB1〜B4に配置された工具10を検出しているため、システム全体を小型化および簡略化することができる。したがって、作業管理システム1を既存の作業ラインに簡単に設置することができるとともに、製造コストを低減することができる。
【0032】
また、図4(a)〜(c)に示すように、管理装置30の表示部32では、マークP1〜P4の明暗を反転表示させることで、マークP1〜P4上に、ボルトB1〜B4の加工情報が示されるため、各ボルトB1〜B4の締め付け状態を的確に把握することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、図2に示す制御部31において、ボルトB1〜B4の締め付け順序を管理するように構成してもよい。具体的には、第一のボルトB1から第二のボルトB2の順序で締め付け作業が行われるように設定した場合に、第二のボルトB2の締め付け作業が完了する前に第三のボルトB3に工具10が配置されたときには、第二のボルトB2の締め付け位置を示しているマークP2(図4(a)参照)を赤色で表示することで、作業者に作業順序を認識させることができる。
【0034】
また、本実施形態では、図4(a)〜(c)に示すように、マークP1〜P4の明暗を変更することで、マークP1〜P4上にボルトB1〜B4の加工情報を表示しているが、マークP1〜P4を点滅させることで、マークP1〜P4上に加工情報を表示することもできる。なお、マークP1〜P4とは別の位置に各ボルトB1〜B4の加工情報を表示してもよい。
【0035】
また、本実施形態では、図2に示すように、一台の検出センサ20によって各ボルトB1〜B4に配置された工具10を検出しているが、複数の検出センサ20を設けてもよく、例えば、ボルトB1〜B4ごとに検出センサ20を設けてもよい。
また、本実施形態では、検出センサ20として非接触型の光センサを用いているが、検出センサの構成は限定されるものではなく、例えば、工具10の回転軸11に接触することで、工具10を検出する接触型のセンサを用いることもできる。
【0036】
また、本実施形態では、図1に示すように、前工程においてバッテリユニットW1に各ボルトB1〜B4が仮止めされているが、本工程において各ボルトB1〜B4の仮止めおよび本締め付けを行ってもよい。
【0037】
また、本実施形態では、ボルトB1〜B4を締め付ける作業を例として説明しているが、本発明の作業管理システムは、溶接作業や切削作業など各種の加工作業に適用可能である。すなわち、本発明の作業管理システムでは、加工部位(溶接部位、切削部位)に配置された工具(溶接装置、切削装置)を検出センサによって検出し、工具の位置情報と加工部位の加工情報とを対応させて表示部に表示することで、各種の加工を確実に行うことができる。なお、加工部位を加工したことを示す加工情報は、溶接作業である場合には、電極に流れる電流値を示しており、切削作業である場合には、切削刃の回転状態を示している。
【符号の説明】
【0038】
1 作業管理システム
2 ベルトコンベア
3 ストッパ
10 工具
20 検出センサ
30 管理装置
31 制御部
32 表示部
33 記憶部
B1〜B4 ボルト
C1〜C5 検出範囲
P1〜P4 マーク
W1 バッテリユニット
W2 ジャンクションボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに設定された複数の加工部位を加工するとともに、前記加工部位を加工したことを示す加工情報を出力する工具と、
前記各加工部位に配置された前記工具を検出し、前記工具の位置情報を出力する検出センサと、
前記検出センサから入力された前記位置情報と、前記位置情報が入力されているときに前記工具から入力された前記加工情報とを対応させて表示する表示部を有する管理装置と、を備えていることを特徴とする作業管理システム。
【請求項2】
前記各加工部位に配置された前記工具を、一台の前記検出センサによって検出することを特徴とする請求項1に記載の作業管理システム。
【請求項3】
前記表示部には、前記工具の位置情報を示すマークが表示されており、
前記加工情報は前記マーク上に表示されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−150510(P2011−150510A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10830(P2010−10830)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】