説明

作業車の原動部構造

【課題】ラジエータ通過後の冷却風がエンジンに当たって拡散することがないように導風板にて一定方向に案内排出することによって、エンジンルーム内、運転席周辺での温度上昇を防ぎ、オペレータの作業環境の改善を図る。
【解決手段】エンジン(7)を備えたエンジンルーム(8)を覆うエンジンカバー(6)を設け、該エンジンカバー(6)の上部に運転席(4)を設置し、エンジンルーム(8)内にはエンジン(7)の上部を覆い冷却ファン(11)によるエンジン(7)冷却後の排風を斜め下方に向けて誘導して外部へ排出案内する導風板(12)を設ける。また、導風板(12)で誘導される排風をエンジン(7)のエキゾーストマニホールド(17)に向けて案内する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等の作業車の原動部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、冷却ファンの駆動により、エンジンカバーに形成した空気取入口から外気をエンジンルーム内に導入し、エンジンルーム内を流れる吸引風によってエンジンを冷却する所謂吸込み型冷却装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−295650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の吸込み型冷却装置では、エンジンルーム内に熱がこもり易く、オペレータが暑い環境にさらされるという課題があり、また、一方、吐出し型冷却装置では、冷却風を一定方向に誘導案内する導風板がないため、冷却ファンから吹出される冷却風がエンジンに当たってエンジンルーム内で拡散され、あちこちに吹き流されてエンジンルーム内の温度が上昇し、この温度上昇により熱気が運転席周辺にまで及び、オペレータは暑い環境のもとに作業しなければならず居住性の悪化を招いていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(7)を備えたエンジンルーム(8)を覆うエンジンカバー(6)を設け、該エンジンカバー(6)の上部に運転席(4)を設置し、前記エンジンルーム(8)内にはエンジン(7)の上部を覆い冷却ファン(11)によるエンジン(7)冷却後の排風を斜め下方に向けて誘導して外部へ排出案内する導風板(12)を設けたことを特徴とする作業車の原動部構造とする。
【0005】
これにより、冷却ファン(11)の駆動によりラジエータ(10)を通過した冷却風は、エンジン(7)の周囲を吹き抜けて該エンジン(7)を冷却すると共に、導風板(12)によって斜め下方に向けて誘導されて外部へ排出案内される。
【0006】
また、請求項2記載の発明は、前記導風板(12)で誘導される排風をエンジン(7)のエキゾーストマニホールド(17)に向けて案内する構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車の原動部構造とする。
【0007】
これにより、導風板(12)で誘導される排風がエキゾーストマニホールド(17)に当たってこのエキゾーストマニホールド(17)が冷却される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によると、ラジエータ(10)通過後の冷却風は、導風板(12)によって、エンジン(7)に当たっても大きく拡散することなく一定方向に案内されるので、エンジンルーム内の温度上昇を防止でき、熱気が浮上して運転席(4)の周辺に及ぶことがなく、オペレータの作業環境の改善を図ることができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、高温となるエキゾーストマニホールド(17)の冷却効果を高めてエンジンルーム内の温度上昇をより効果的に抑え、オペレータの作業環境を一層改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、作業車の一例としてコンバインを示すもので、下部に走行クローラを備えた走行車体1上には、後部に脱穀部(脱穀装置)3を搭載し、その前方部に刈取部2を設置し,刈取部2の横側部には運転席4や操作ボックス5等からなる運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
【0011】
運転席4下方の機台上にはエンジン7が搭載されており、エンジンカバー6によって囲繞構成されたエンジンルーム8内に収容されている。運転席4は、エンジンカバー6の上面に設置されている。
【0012】
エンジンルーム8室内の外側(右側)一側にメッシュ付き吸気カバー9が附設されており、そして、この吸気カバー9の内側にはラジエータ10と冷却ファン11が配設されている。すなわち、冷却ファン11の回転駆動により、外気が吸気カバー9を通じてエンジンルーム8内に導入されるようになっており、そして、ラジエータ10を通過後の冷却風は、冷却ファン11によってエンジンルーム8内を外側一側から内側(左側の刈取部側)他側に向けて吹き流されるようになっている。
【0013】
エンジンルーム8内には、エンジン7頭部の上面及び前面を覆い冷却ファン11からの冷却風を誘導案内する導風板12が設けられている。この導風板12は、エンジン頭部の上面の一部又は全部を覆う導風板の上壁面部12uと、エンジン頭部の前側面を覆う導風板の前壁面部12fと、風を斜め下方に向けて流下案内する傾斜案内面部12sとからなり、ラジエータ通過後の冷却風を矢示Aの如くエンジンルーム内右側から左側に向けて案内し、且つ、斜め下方に向けて誘導案内するよう構成されている。また、矢示Aのように斜め下方に向けて案内される冷却風は、導風板12から吹き出された後、脱穀部3前側の入口漏斗15の下側で、且つ、この脱穀部3と前側の刈取部2との間の空間部を横切ってコンバイン左側部の未刈地側へ通り抜けるようになっている。また、この左側に抜けた風は、脱穀ベルトカバー13にて案内し、唐箕14の左側吸気口14aより脱穀部内部へ吸引できるように構成している。脱穀部の選別室内には熱風を吸引することができるので選別が良好に行える。なお、上記導風板12は、右側より左側に向かって下り傾斜に構成することにより、その上面部でのホコリ等のごみの堆積がなくなる効果も有している。
【0014】
前記導風板12により囲まれた内側には、ラジエータホース16やエキゾーストマニホールド17等の高温になる部分を配置することにより、高温部で熱せられた排風がエンジンルーム内で拡がることなく、機体左側に排出されることになり、運転席近くの温度上昇を防止することができる。また、導風板にて案内される冷却風をエキゾース排気管部18に集中して当てることにより、排気菅部にて熱せられた空気を冷却ファンの強い風にて吹き飛ばすことができ、エンジンルーム内の温度上昇を抑制することができる。
【0015】
更に、導風板12は、エンジンカバー6に対して容易に着脱できる構成とすることにより、エンジンのメンテナンスが簡単にできる。エンジンカバー12の一部を固定してこの固定カバーに対しヒンジ等を介して揺動開閉可能な開閉カバーとからなる構成とすることにより、メンテナンスの容易化を図るようにしているが、この開閉カバー側に前記導風板を取り付けることもでき、エンジンカバーの開閉によって同時に開閉することができる。
【0016】
導風板12と冷却ファン11シュラウドとの間に導風空間部Kを設けることにより、冷却風が導風板を通過する時にエジェクタ効果により外側の外気も取り込んで通過することになり、エンジンカバー下部の空間部の空気が流動するので、空間部の温度上昇を防ぐことができる。
【0017】
なお、図6中、19はエアクリーナ、20はHSTを示す。
次に図7〜図9に示す実施例について説明すると、操作ボックス5上にはアーチ状の固定ハンドル?21が突設され、この固定ハンドル?21は、中空断面の樹脂材で構成すると共に、右側を上方に高くした高位ハンドル部21aと左側を下方に低くした低位ハンドル部21bとからなるように構成されている。操作ボックス5の右側には、前記高位ハンドル部21aの前側において左右方向の操作で機体の進行方向を操向制御し、前後方向の操作で刈取部2を昇降制御するパワステレバー22が設置されている。パワステレバー22は前記高位ハンドル部21a上に手首を載せた状態で左右又は前後に操作する。
【0018】
高位ハンドル部21aの手首を載せる部分(手載せ部H)は、平面部の前後幅D1を他の部分D2よりも広くすることによってパワステレバー22による操作性の向上を図るようにしている。固定ハンドル?を鉄パイプで構成するものでは、断面形状は一定であるため、上記のような幅広の手載せ部Hを設ける場合には別部品として装着する必要があるが、樹脂で一体に構成できるので、安価に実施でき、断面形状も任意に設定することができる。
【0019】
図10に示す実施例は、走行クローラ23前位の駆動ホイル24駆動軸25と第1転輪26軸27との間の前方部位に、刈取部2の刈取ギヤケース28が位置するように配置した構成としている。刈取ギヤケース28は、バリカン式刈取装置29や掻込ベルト30、掻込スターホイル31等の掻込装置を駆動する伝動機構が内装され、昇降可能な刈取縦伝動ケース32の前端部に装着されている。従って、この刈取ギヤケースがなんらかの原因で後方に押された場合でも、クローラの履帯部分で弾性的に受け止めることができ、駆動ホイルや第1転輪との直接の干渉がなく、不慮の破損を招くことがない。
【0020】
また、刈取作業時において、掻込ベルト30及び掻込スターホイル31の掻込終端位置が走行クローラ23の始端部より低くくなるよう配置することによって掻込装置で掻き込んだわら屑が掻込部からクローラ前部に落下し、クローラでわら屑を敷き込むことになり、コンバインの沈下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】コンバインの平面図
【図2】同上要部の平面図
【図3】コンバイン要部の正面図
【図4】同上要部の正面図
【図5】コンバイン要部の側面図
【図6】同上要部の側面図
【図7】コンバイン要部の側面図
【図8】同上要部の正面図
【図9】同上一部の平面図
【図10】コンバイン要部の側面図
【符号の説明】
【0022】
4 運転席
6 エンジンカバー
7 エンジン
8 エンジンルーム
10 ラジエータ
11 冷却ファン
12 導風板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(7)を備えたエンジンルーム(8)を覆うエンジンカバー(6)を設け、該エンジンカバー(6)の上部に運転席(4)を設置し、前記エンジンルーム(8)内にはエンジン(7)の上部を覆い冷却ファン(11)によるエンジン(7)冷却後の排風を斜め下方に向けて誘導して外部へ排出案内する導風板(12)を設けたことを特徴とする作業車の原動部構造。
【請求項2】
前記導風板(12)で誘導される排風をエンジン(7)のエキゾーストマニホールド(17)に向けて案内する構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車の原動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−105463(P2010−105463A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277655(P2008−277655)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】