説明

作業車の変速装置

【課題】本発明では、PTO軸回転を一定回転させるためのミッションケースと、PTO軸回転を車速対応型にするミッションケースの内部ギヤ伝動構成を共通化して、両ミッションケースの製作コストを低下することを課題とする。
【解決手段】PTO軸11の回転を正転及び逆転を含めて複数段に変速するPTO変速機構Gと、PTO軸11を逆転させるための逆転ギヤ101をカウンタ軸97で軸支して第1ミッションケース3A内に構成し、前記逆転ギヤ101を逆転仕様として使用しない場合には、車速を変更可能な変速軸14からの回転を前記逆転ギヤ101で受ける構成として、前記PTO軸11を正転及び正転回転で車速に対応して変速可能にする第2ミッションケース3Bを構成したことを特徴とする作業車の変速装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の変速装置に関する。特に、トラクタ等の作業車におけるエンジンから走行装置への動力伝動及び作業機への動力伝動を行う変速装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の変速装置は、特開2008−207647号公報に記載の如く、エンジンの動力を所望の走行速度で走行するために変速して走行装置へ伝動し、エンジンの出力を分岐して作業機への動力出力軸であるPTO軸へ変速して伝動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−207647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PTO軸の回転速度は、作業機の種類によって変速するが、全ての変速形態に一つのミッションケースでは対応できないためにそれぞれの作業機の要求回転速度に応じたPTO出力変速を持つミッションケースを用意している。
【0005】
例えば、走行車体の走行速度に拘わらず、一定の回転数でPTO軸を回転するPTO軸回転一定のミッションケースと、走行車体の走行速度に応じてPTO軸の回転数も変動するPTO軸回転車速対応型ミッションケースは、内部のギヤ伝動機構が異なっている。
【0006】
そこで、本発明では、PTO軸回転一定ミッションケースとPTO軸回転車速対応型ミッションケースの内部ギヤ伝動構成を共通化して、両ミッションケースの製作コストを低下することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、PTO軸(11)の回転を正転及び逆転を含めて複数段に変速するPTO変速機構(G)と、PTO軸(11)を逆転させるための逆転ギヤ(101)をカウンタ軸(97)で軸支して第1ミッションケース(3A)内に構成し、前記逆転ギヤ(101)を逆転仕様として使用しない場合には、車速を変更可能な変速軸(14)からの回転を前記逆転ギヤ(101)で受ける構成として、前記PTO軸(11)を正転及び正転回転で車速に対応して変速可能にする第2ミッションケース(3B)を構成したことを特徴とする作業車の変速装置とした。
【0008】
第1ミッションケース(3A)においては、PTO軸(11)の回転は、PTO変速機構(G)により正転及び逆転を含めて複数段に変速する。PTO軸(11)の回転を逆転するときは、カウンタ軸(97)に軸支している逆転ギヤ(101)を使用する。
【0009】
第2ミッションケース(3B)においては、PTO軸(11)の回転は、PTO変速機構(G)により正転及び正転回転で車速に対応して変速可能にする。この場合、第1ミッションケース(3A)内に配置している逆転ギヤ(101)を利用して、正転回転で車速に対応して変速可能にする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記カウンタ軸(97)を枢支した軸支持ケース片(100)を構成し、前記第1ミッションケース(3A)及び第2ミッションケース(3B)に対して、軸支持ケース片(100)を着脱可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車の変速装置とした。
【0011】
カウンタ軸(97)を枢支した軸支持ケース片(100)を、第1ミッションケース(3A)及び第2ミッションケース(3B)に対して着脱可能にしているので、第1ミッションケース(3A)の仕様にしたり、第2ミッションケース(3B)の仕様にしたりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の構成で、第1ミッションケース3Aと第2ミッションケース3Bの違いは、第1ミッションケース3AにPTO軸11の逆転構成が有り、第2ミッションケース3BにPTO軸11の車速対応回転が有る点である。両ミッションケース3A,3Bの構成が殆ど同一で、カウンタ軸97も共用化することで、部品の共通性が向上し、両ミッションケース3A,3Bの製造コストが低減する。
【0013】
請求項2に記載の構成で、第1ミッションケース3Aを第2ミッションケース3Bに変更したり、逆に第2ミッションケース3Bを第1ミッションケース3Aに変更したりすることが、軸支持ケース片100を取り外して一部のギヤを着脱変更することで可能となり、PTO軸回転の異なる作業車が容易に構成出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】第1ミッションケース内の伝動線図である。
【図3】第2ミッションケース内の伝動線図である。
【図4】第2ミッションケースの一部断面図である。
【図5】第1ミッションケース3Aの一部断面図である。
【図6】別構成の第2ミッションケースの一部断面図である。
【図7】別構成の第1ミッションケースの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明でいう作業車の一例として示すトラクタの全体側面図である。機体前部のボンネット1内に搭載したエンジン2の動力を第1ミッションケース3A或いは第2ミッションケース3B内で適宜に変速して前輪軸4と後輪軸5に伝動して前輪6と後輪7の両方或は後輪7のみを駆動する構成としている。第1ミッションケース3Aは副変速4段仕様となっている。ミッションケース3A内の伝動詳細構造は後述するが、PTO軸11からの出力回転数を複数段に変速して、一定回転で駆動するPTO変速機構G(正転3段、逆転1段)を備えている。
【0016】
また、第2ミッションケース3Bも副変速4段仕様となっているが、PTO軸11の回転については、トラクタの車速に応じてPTO軸11の回転を追従して変速する車速対応型PTO変速機構Hを備えている。
【0017】
このような変速装置を備えた機体上にキャビン26を載置し、このキャビン26内に設ける座席10に座った作業者が中央に立設するステアリングハンドル8を操作して前輪6を操向しながら走行する。機体の後方へ突出する昇降リンク9には、ロータリ耕うん機などの作業機を装着し、ミッションケース3から後方へ向かって突出するPTO軸11で昇降リンク9に装着する作業機を駆動する構成としている。
【0018】
図2は、PTO軸11からの出力回転数を複数段に変速して、一定回転で駆動するPTO変速機構G(正転3段、逆転1段)を備えている第1ミッションケース3A内の動力伝動線図である。
【0019】
エンジン2の回転出力は、エンジン2の出力軸に継手105で連結しているメイン入力軸13に入力される。このメイン入力軸13においては、第1メインギヤ106と、第2メインギヤ108、及び第3メインギヤ20が固着している。第1メインギヤ106が油圧前後進クラッチAの正転ギヤ107と噛み合い、第2メインギヤ108が第1カウンタギヤ18を介して油圧前後進クラッチAの逆転ギヤ19と噛み合っている。第3メインギヤ20がPTOクラッチFのPTO入力ギヤ21と噛み合って動力伝動する構成としている。
【0020】
従って、油圧前後進クラッチAの前進クラッチA1を入れると油圧前後進クラッチAを装着した第1メイン軸23が正転し、後進クラッチA2を入れると第1メイン軸23が逆転し、PTOクラッチFを入れるとPTOクラッチ軸103が回転する。
【0021】
第1メイン軸23の回転は、油圧4段に変速する変速クラッチ装置Bと、高低2段に変速する高低油圧切換クラッチCと、機械式に4段変速する4段変速装置D(副変速装置)を通過して変速され、走行最終変速軸であるベベルギヤ軸14に伝動される構成である。従って、変速段が4段変速(変速クラッチ装置B),2段変速(高低油圧切換クラッチC),4段変速(副変速装置D)の構成であるので、4×2×4=32の合計32段で変速される構成である。
【0022】
ベベルギヤ軸14から伝動される前輪6の回転は、増速クラッチEで後輪7よりも早く回転可能である。前記副変速装置Dは、1速(低速),2速(中速),3速(高速),4速(超高速)に変速可能であるが、2速(中速),3速(高速),4速(超高速)間の変速についてはシンクロ機構が入っているので、停車することなく変速可能である。また、前記副変速装置Dにおいては、3段仕様にすることもある。3段仕様については、機種に応じて1速(低速),2速(中速),3速(高速)仕様や、2速(中速),3速(高速),4速(超高速)仕様などがあり、副変速装置Dの部分の構成のみを変更することで、容易に仕様変更が可能な構成としている。
【0023】
メイン入力軸13から第3メインギヤ20とPTO入力ギヤ21で伝動されるPTOクラッチ軸103の回転は、PTOクラッチFから第1PTO軸22に伝動され、PTO変速機構Gで正転3段と逆転1段に変速される。
【0024】
以下、動力伝動機構を詳細に説明する。
油圧前後進クラッチA(前進クラッチA1と後進クラッチA2)で伝動された第1メイン軸23の回転は、軸端に固着した第1ギヤ15から第1変速軸24の第1変速ギヤ16を介して第1変速軸24に伝達される。この第1変速軸24には、油圧4段変速の変速クラッチ装置Bの1速・3速用変速クラッチB1が装着されている。また、前記第1ギヤ15から第2変速軸25の第2変速ギヤ17を介して第2変速軸25に伝達される。この第2変速軸25には、油圧4段変速の変速クラッチ装置Bの2速・4速用変速クラッチB2が装着されている。
【0025】
第1変速軸24と第2変速軸25の回転を第2メイン軸42に伝達する構成について説明する。
1速クラッチB11を繋ぐと、第7ギヤ40から第2メイン軸42にスプライン嵌合した第6ギヤ39に伝動されて第2メイン軸42を回転する。2速クラッチB22を繋ぐと、第9ギヤ38から第2メイン軸42にスプライン嵌合した第8ギヤ37に伝動して第2メイン軸42を回転する。
【0026】
3速クラッチB13を繋ぐと、第11ギヤ31から第2メイン軸42にスプライン嵌合した第10ギヤ30に伝動して第2メイン軸42を回転する。4速クラッチB24を繋ぐと、第13ギヤ36から第2メイン軸42にスプライン嵌合した第12ギヤ41に伝動して第2メイン軸42を回転する構成としている。
【0027】
第2メイン軸42の回転は、第1継手43で高低切換軸44に伝動される。高低切換軸44には、高低油圧切換クラッチCが設けられている。この高低油圧切換クラッチCの高速クラッチC1を繋ぐと、高速クラッチギヤ45から第1カウンタ軸47の第14ギヤ46に伝動され、高低油圧切換クラッチCの低速クラッチC2を繋ぐと、低速クラッチギヤ48からカウンタ軸47の第16ギヤ49に伝動される。
【0028】
第1カウンタ軸47の回転は、第2継手50で第2カウンタ軸51に伝動され、4段変速装置D(副変速装置)で変速される。この4段変速装置Dの第1変速クラッチD1を第18ギヤ53側へ切り換えると、第17ギヤ52から第18ギヤ53に伝動されてベベルギヤ軸14が超高速で駆動される。
【0029】
また、4段変速装置D(副変速装置)の第1変速クラッチD1を第20ギヤ55側へ切り換えると、第19ギヤ54から第20ギヤ55に伝動されてベベルギヤ軸14が高速で駆動される。
【0030】
4段変速装置D(副変速装置)の第2変速クラッチD2を第22ギヤ57側へ切り換えると、第19ギヤ54から第20ギヤ55に伝動され、続いて第25ギヤ60から第26ギヤ61に伝動され、第27ギヤ62から第28ギヤ63に伝動されてベベルギヤ軸14が中速で駆動される。
【0031】
また、第2変速クラッチD2を第24ギヤ59側へ切り換えると、第19ギヤ54から第20ギヤ55に伝動され、第25ギヤ60から第26ギヤ61に伝動され、第27ギヤ62から第28ギヤ63に伝動され、第22ギヤ57から第21ギヤ56に伝動され、第23ギヤ58から第24ギヤ59に伝動されてベベルギヤ軸14が低速で駆動される。
【0032】
ベベルギヤ軸14の回転は、このベベルギヤ軸14と一体に形成した第1ベベルギヤ64が後輪駆動軸65の第2ベベルギヤ66と噛み合っており、後ベベルギヤ組83(差動装置)と後輪駆動軸65と後遊星ギヤ組84を介して後輪7を装着する後輪軸5を駆動する構成である。
【0033】
また、ベベルギヤ軸14の端部にスプライン嵌合する第29ギヤ67は、第30ギヤ68と第31ギヤ69を介して第1前輪駆動軸71に固着(スプライン嵌合)の第32ギヤ70に噛み合っており、第1前輪駆動軸71を駆動する構成としている。
【0034】
第1前輪駆動軸71の前軸端に前輪変速クラッチEを装着しており、前輪変速クラッチEの等速クラッチE2を繋ぐと、第1前輪駆動軸71の回転がそのままで第2前輪駆動軸79に伝動される。前輪変速クラッチEの増速クラッチE1を繋ぐと、第33ギヤ75と第34ギヤ76と第35ギヤ78と第36ギヤ77を介して、第1前輪駆動軸71の回転が増速して第2前輪駆動軸79に伝動される構成としている。
【0035】
第2前輪駆動軸79の先は、従来と同様に、前ベベルギヤ組80(差動装置)と前縦駆動軸81と前遊星ギヤ組82を介して前輪6を装着する前輪軸4を駆動する。
前記PTO入力ギヤ21の回転は、PTOクラッチFを入れることでPTOクラッチ軸103から第3継手85と第1PTO軸22と第4継手86を介して、第2PTO軸73を回転する構成である。
【0036】
第2PTO軸73に並設するPTOクラッチ軸104には、PTO変速機構Gを構成していて、第1PTO変速クラッチG1と第2PTO変速クラッチG2を設けている。
第1PTO変速クラッチG1を第38ギヤ88側に入れると、第2PTO軸73の回転が第37ギヤ87と第38ギヤ88を介してPTOクラッチ軸104に低速で伝動される。第1PTO変速クラッチG1を第40ギヤ91側に入れると、第2PTO軸73の回転が第39ギヤ90と第40ギヤ91を介してPTOクラッチ軸104に中速で伝動される。
【0037】
第2PTO変速クラッチG2を第42ギヤ93側に入れると、第2PTO軸73の回転が第41ギヤ92と第42ギヤ93を介してPTOクラッチ軸104に高速で伝動される。第2PTO変速クラッチG2を第44ギヤ96側に入れると、第2PTO軸73の回転が第43ギヤ95と第45ギヤ101と第44ギヤ96を介してPTOクラッチ軸104が逆回転で伝動される。前記第45ギヤ101は、カウンタ軸97に支持されている。
【0038】
前記PTOクラッチ軸104に伝達された動力は、PTO継手74aとPTO接続軸74を介してPTO11を回転駆動する構成としている。
図3は、前述した第2ミッションケース3B内の動力伝達構成を示している。この第2ミッションケース3B内の構成は、第1ミッションケース3Aの構成におけるPTO変速機構Gの一部を変更して構成する。第2ミッションケース3Bも副変速4段仕様となっているが、PTO軸11の回転については、トラクタの車速に応じてPTO軸11の回転を追従して変速する車速対応型PTO変速機構Hを備えている。
【0039】
図2に示しているカウンタ軸97に支持している第45ギヤ101に噛み合う第2PTO軸73の第43ギヤ95を無くする構成とする。そして、図3に示しているように、第45ギヤ101を固着(スプライン嵌合)しているカウンタ軸97に第46ギヤ98を設ける構成とする。この第46ギヤ98は、第30ギヤ68と噛み合っている。
【0040】
これにより、副変速装置Dを通過後の回転動力は、ベベルギヤ軸14の第29ギヤ67から第30ギヤ68を介して第46ギヤ98に伝達される構成である。また、前述したように、第30ギヤ68に伝達された動力は、第31ギヤ69と第32ギヤ70を介して第1前輪駆動軸71にも動力伝達されている。
【0041】
第2PTO変速クラッチG2を第44ギヤ96側に切り替えると、第29ギヤ67から第30ギヤ68、第46ギヤ98、第45ギヤ101、及び第44ギヤ96を介してPTOクラッチ軸104伝動されて行く。これにより、ベベルギヤ軸14の回転変動に応じてPTOクラッチ軸104、つまりはPTO軸11が回転変動して変速する走行速度対応のPTO回転(グランドPTO)となる。
【0042】
前記第29ギヤ67から回転を受ける第30ギヤ68と、第32ギヤ70に回転伝達する第31ギヤ69は一体構成としており、さらに、第30ギヤ68利用して第46ギヤ98に噛み合わせることで、PTO軸11の回転を走行速度対応型のPTO回転を得る構成としているので、第1ミッションケース3Aと第2ミッションケース3Bの共通化が図れる構成としている。
【0043】
また、一体構成としている第30ギヤ68と第31ギヤ69とを、PTOクラッチ軸104に遊嵌することで、構成を単純化出来ている。
図4の如く、第2ミッションケース3Bでは、カウンタ軸97を軸受109,110で軸支する別の軸支持ケース片100を構成しているが、第44ギヤ96と噛み合う第45ギヤ101と、第30ギヤ68と噛み合う第46ギヤ98は、カウンタ軸97にスプライン嵌合している。
【0044】
そして、前述した図2に示している第1ミッションケース3Aの構成から、図3に示している第2ミッションケース3Bの構成に変更する場合において、図2の第2PTO軸73に設けている第43ギヤ95は不要となるので、この第43ギヤ95を取り付けない構成(図4)とするか、又は第45ギヤ101と噛み合わない位置にスライドして固定する構成とする。また、仮に第43ギヤ95を残しておいても、第2PTO軸73は空転するのみなので、問題はない。なお、第44ギヤ96と第45ギヤ101のそれぞれの歯数を変更することで、変速のバリエーションを得ることが可能となる。
【0045】
また、図5に示すように、第1ミッションケース3Aにおいても、前記第2ミッションケース3Bで用いた別の軸支持ケース片100を共用使用する構成とする。即ち、軸受109,軸受110で軸支するカウンタ軸97には、第44ギヤ96と噛み合う第45ギヤ101のみがスプライン嵌合している。そして、カウンタ軸97には第46ギヤ98を取り付けない構成である。
【0046】
なお、カウンタ軸97の第45ギヤ101は取り外すことがないので、生産数が多い場合は鍛造等で一体構成にしてもよいが、生産数が少量の場合はスプライン嵌合で一体化する方がコストダウンで製造できる。
【0047】
また、第1ミッションケース3A内におけるPTO回転の低速・中速・高速・逆転の変速ギヤ位置と、第2ミッションケース3B内におけるPTO回転の低速・中速・高速・車速対応変速の変速ギヤ位置が同じために、PTO変速レバーが一本で構成出来て廉価な構成となり、両方の変速操作を同一操作にすることが可能となる。
【0048】
軸支持ケース片100は、第1ミッションケース3Aと第2ミッションケース3Bに対してボルト111で着脱可能な構成としているので、この軸支持ケース片100を取り外しての仕様変更を容易に行うことが可能となる。また、軸支持ケース片100のボス部に貫通する軸受109の固定は止め輪113で行っている構成である。
【0049】
図6は、第45ギヤ101と第46ギヤ98を一体構成とした場合の例で、まず、軸受110を一方のボス部114に挿入して止め輪113で固定する。次に、第45ギヤ101と第46ギヤ98の一体ギヤ体を両ボス部114,115間に位置させて、他方のボス部115側からカウンタ軸97の差し込みを行う(スプライン嵌合)。そして、軸受109を他方のボス部115に挿入し、止め輪113で軸受109を固定して組み付ける。そして、この別の軸支持ケース片100を、第2ミッションケース3Bに対して組み付ける構成とする。前記カウンタ軸97のスプライン嵌合については、分解する必要性がない場合には、スプライン嵌合ではなくて通常の嵌め合い構成でもよい。
【0050】
なお、第45ギヤ101のみを使用する場合(PTO逆転仕様)には、第45ギヤ101とカウンタ軸97を一体構成として、両ボス部114,115間に位置させた一体構成のカウンタ軸97に対して軸受109,110を、ボス部114,115の外側から嵌合して軸支することも出来る。
【0051】
図7は、カウンタ軸97の第45ギヤ101、又はカウンタ軸97と第45ギヤ101の両方を取り除き、さらに、第2PTO軸73に第44ギヤ96に噛み合う大径の第46ギヤ112を組み付ける構成である。この構成で、第2PTO変速クラッチG2を第44ギヤ96側へ切り換えると、前述した高速よりも速い速度(超高速)でPTOクラッチ軸104が駆動可能となる。また、第44ギヤ96と第46ギヤ112の歯数を変更することで、回転数を任意に変更可能となる。
【0052】
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの説明順序・表現等によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0053】
G PTO変速機構
3A 第1ミッションケース
3B 第2ミッションケース
11 PTO軸
14 変速軸(ベベルギヤ軸)
97 カウンタ軸
100 軸支持ケース片
101 逆転ギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTO軸(11)の回転を正転及び逆転を含めて複数段に変速するPTO変速機構(G)と、PTO軸(11)を逆転させるための逆転ギヤ(101)をカウンタ軸(97)で軸支して第1ミッションケース(3A)内に構成し、前記逆転ギヤ(101)を逆転仕様として使用しない場合には、車速を変更可能な変速軸(14)からの回転を前記逆転ギヤ(101)で受ける構成として、前記PTO軸(11)を正転及び正転回転で車速に対応して変速可能にする第2ミッションケース(3B)を構成したことを特徴とする作業車の変速装置。
【請求項2】
前記カウンタ軸(97)を枢支した軸支持ケース片(100)を構成し、前記第1ミッションケース(3A)及び第2ミッションケース(3B)に対して、軸支持ケース片(100)を着脱可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車の変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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