説明

作業車の操向角検出装置

【課題】前輪の操向角を検出する検出作動を長期間にわたり良好に行うことが可能な作業車の操向角検出装置を提供する。
【解決手段】前輪4の操向角を検出する操向角検出センサ35及び検出用操作体37の外方側を囲うセンサ保護カバー38が、前車軸ケース14の上部に取り付けられ、センサ保護カバー38が、周壁部と、その周壁部の上部を閉塞する上壁部と、下向き開口部とを備え、且つ、周壁部に、連係部材39が挿通するとともに前輪支持ケース16の回動操作に伴って連係部材39が移動操作することを許容する孔部44が形成され、操向角検出センサ35が、センサ保護カバー38の内部における孔部44よりも上方側の箇所に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前車軸ケースに前輪の操向角を検出する操向角検出センサが支持され、前記前車軸ケースに操向用軸芯周りで回動可能に支持された前輪支持ケースと前記操向角検出センサの検出用操作体とが連係部材を介して連動連係されている作業車の操向角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車の操向角検出装置において、従来では、例えば特許文献1に記載される構成のものがあった。
すなわち、前車軸ケースから上方に向けて脚部が固定延出され、操向角検出センサとしてのポテンショメータを外囲する矩形状の支持具が脚部により支持される状態で設けられ、ポテンショメータの検出用操作体が矩形状の支持具の下方側外方に露出しており、前輪支持ケースとしてのハブケースと前記検出用操作体との間を連係部材としての連係ロッドを介して連動連結するように構成されたものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−130428号公報(段落〔0041〕、図6、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、操向角検出センサを矩形状の支持具にて外囲するので、例えば前輪にて跳ね上げられた泥水等が操向角検出センサに対して直接降りかかることを回避することは可能であるが、検出用操作体と連係部材との連結箇所は支持具の下方側外方に露出しているので、例えば、跳ね上げられた泥水等がこの検出用操作体と連係部材との連結箇所に飛散して付着することがあり、このように連結箇所に付着した泥水が固まり、前輪の操向角を検出するための検出作動が良好に行えなくなる等のおそれがあった。
【0005】
又、前記支持具は、操向角検出センサの修理点検等のメンテナンス作業のために、一部が開放された状態となるか又は一部を取り外し可能に構成されるものであり、開放された箇所や取り外し可能な部位と固定部との間の隙間から跳ね上げられた泥水が侵入するおそれがあり、操向角検出センサへの泥水等の付着を防止することは難しいものとなっていた。
【0006】
つまり、上記従来構成では、操向角検出センサ及び検出用操作体と連係部材との連結箇所に泥水等が付着すること等に起因して、短期間の使用により、前輪の操向角を検出する検出作動が良好に行えなくなるおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、前輪の操向角を検出する検出作動を長期間にわたり良好に行うことが可能な作業車の操向角検出装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車の操向角検出装置は、前車軸ケースに前輪の操向角を検出する操向角検出センサが支持され、前記前車軸ケースに操向用軸芯周りで回動可能に支持された前輪支持ケースと前記操向角検出センサの検出用操作体とが連係部材を介して連動連係されているものであって、その第1特徴構成は、
前記操向角検出センサ及び前記検出用操作体の外方側を囲うセンサ保護カバーが、前記前車軸ケースの上部に取り付けられ、
このセンサ保護カバーが、周壁部と、その周壁部の上部を閉塞する上壁部と、下向き開口部とを備えて構成され、且つ、前記周壁部に、前記連係部材が挿通するとともに前記前輪支持ケースの回動操作に伴って前記連係部材が移動操作することを許容する孔部が形成され、
前記操向角検出センサが、前記センサ保護カバーの内部における前記孔部よりも上方側の箇所に取り付けられている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、前輪支持ケースと操向角検出センサの検出用操作体とが、センサ保護カバーの周壁部に形成された孔部を通して挿通する連係部材を介して連動連係され、前輪を操向するために前輪支持ケースが操向用軸芯周りで回動すると、それに伴って連係部材が回動して、操向角検出センサにて前輪の操向角が検出される。
【0010】
そして、操向角検出センサ及び検出用操作体の外方側がセンサ保護カバーにより囲われるので、例えば跳ね上げられた泥水等が操向角検出センサ及び検出用操作体に付着することを回避することができる。
【0011】
センサ保護カバーの周壁部に孔部が形成され、連係部材がこの孔部を挿通して前輪支持ケースの回動操作に伴って連係部材が移動操作することを許容するので、前輪の操向角を良好に検出することができるものでありながら、センサ保護カバーの内部に位置する検出用操作体と連係部材との連結箇所が、周壁部の壁面により覆われて外方に露出しない状態となり、検出用操作体と連係部材との連結箇所に泥水等が付着することを防止できる。
【0012】
センサ保護カバーは下向き開口部を備えており下端側が開口しているので、センサ保護カバーの内部に取り付けられた操向角検出センサの修理点検等のメンテナンス作業が必要なときは、センサ保護カバーの下向き開口部を通して操向角検出センサのメンテナンス作業を行うことが可能となる。
【0013】
孔部を通してセンサ保護カバーの内部に泥水等が侵入することがあっても、操向角検出センサが、センサ保護カバーの内部における孔部よりも上方側の箇所に取り付けられており、センサ保護カバーの内部に侵入した泥水等は、操向角検出センサに向けて飛散することなく、センサ保護カバーの内部において孔部よりも下方側に落下していくことになる。
【0014】
従って、第1特徴構成によれば、操向角検出センサ及び検出用操作体と連係部材との連結箇所に泥水等が付着することを回避して、前輪の操向角を検出する検出作動を長期間にわたり良好に行うことが可能な作業車の操向角検出装置を提供できるに至った。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記センサ保護カバーにおける前記下向き開口部の端縁と前記前車軸ケースの外面との間に隙間が形成されている点にある。
【0016】
第2特徴構成によれば、孔部を通してセンサ保護カバーの内部に泥水等が侵入した場合であっても、その侵入した泥水等を下向き開口部の端縁と前車軸ケースの外面との間に形成された隙間を通して速やかに外部に排出させることができ、泥水等が操向角検出センサや検出用操作体と連係部材との連結箇所に付着することを防止できる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記センサ保護カバーの周壁部に前記操向角検出センサの信号伝送用配線を挿通させる挿通孔が形成され、前記挿通孔を通して前記センサ保護カバーから外方に延びる信号伝送用配線の上方を覆う配線保護カバーが、前記前車軸ケースに取り付けられている点にある。
【0018】
第3特徴構成によれば、操向角検出センサの信号伝送用配線は作業車の車体側に備えられた制御装置に接続される。つまり、この信号伝送用配線は、操向角検出センサからセンサ保護カバーに形成された挿通孔を通して外方に出て、前車軸ケースの上方を通り制御装置に至るまで延設されることになるが、前車軸ケースに取り付けられた配線保護カバーにより信号伝送用配線の上方を覆うことになる。
【0019】
このように配線保護カバーにより信号伝送用配線の上方を覆うようにしたので、泥水等が飛散することがあっても、配線保護カバーにより信号伝送用配線に泥水等が付着することを防止することができ、前輪の操向角の検出情報に基づく各種の制御を長期にわたり良好に行うことが可能となる。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記検出用操作体の操作用回動軸芯と前記操向用軸芯とが同一軸芯上に位置する形態で、前記操向角検出センサが前記センサ保護カバーに取り付けられている点にある。
【0021】
第4特徴構成によれば、検出用操作体の操作用回動軸芯と前輪支持ケースが回動する操向用軸芯とが同一軸芯上に位置するので、例えば、連係部材と検出用操作体との間を枢支連結する中継リンクを設ける等の構成の複雑化を招くことなく、連係部材と検出用操作体とを直接に連動連係させる等の簡単な連係構造によって連動連係させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】ミッションケース内の伝動構成を示す概略側面図である。
【図3】前車軸ケース周りの構成を示す斜視図である。
【図4】前車軸ケース周りの構成を示す横断平面図である。
【図5】前輪支持ケース周りの構成を示す縦断背面図である。
【図6】前車軸ケース周りの構成を示す縦断側面図である。
【図7】前輪支持ケース周りの構成を示す斜視図である。
【図8】前輪支持ケース周りの構成を示す分解斜視図である。
【図9】前輪支持ケース周りの構成を示す平面図である。
【図10】センサ保護カバーの斜視図である。
【図11】センサ保護カバーの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明に係る作業車の操向角検出装置をトラクタに適用した場合について説明する。
図1には作業車の一例としてのトラクタの全体側面が示されており、このトラクタは、機体の前部に配備されたエンジン1、エンジン1の後部に連結されたフレーム兼用のミッションケース2、エンジン1に前方に向けて延出する状態に連結された機体フレーム3、機体フレーム3の左右に配備された前輪4、ミッションケース2の後部左右に配備された後輪5、前輪4に連係されたステアリングホイール6、及び、ステアリングホイール6の後方に配設された運転座席7等を備えて構成されている。
【0024】
図2に示すように、ミッションケース2には、エンジン1からの動力の伝達を断続する主クラッチ8、主クラッチ8を介して伝達されたエンジン1からの動力を無段階に変速する静油圧式無段変速装置9、静油圧式無段変速装置9からの変速後の動力を3段階に変速する副変速装置10、左右の後輪5の差動を許容する状態で副変速装置10からの変速後の動力を左右の後輪5に向けて分配伝動する後輪用の差動装置11、副変速装置10から左右の前輪4への伝動を断続する前輪用断続クラッチ12、及び、前輪用断続クラッチ12を介して伝達された副変速装置10からの変速後の動力を2段階に変速する油圧式の前輪増速装置13が内装されている。
【0025】
図1に示すように、機体フレーム3には、前車軸ケース14が機体フレーム3の下方において前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されており、図5に示すように、前車軸ケース14に、その左右両端にキングピン15の軸芯P2周りに回動可能に支持された前車輪支持ケース16を介して、前輪4が所定のキャンバー角を有する状態で、操向用軸芯としての軸芯P2周りに操向可能に連結されている。従って、前車軸ケース14に操向用軸芯(P2)周りで回動可能に前輪支持ケース16が支持される構成となっている。
【0026】
又、前車軸ケース14には、前後軸芯P1上に配設された伝動軸17を介して伝達される前輪増速装置13からの変速後の動力を左右の前輪4の差動を許容する状態で左右の前輪4に向けて分配伝動する前輪用の差動装置18が内装されている。
【0027】
図3及び図4に示すように、前車軸ケース14は、略円筒状に形成された筒状本体部14A、筒状本体部14Aの長手方向の両端部に連結されて前車輪支持ケース16を回動可能に支持する操向支持部14B、筒状本体部14Aの後部に形成された後部ボス部14C、筒状本体部14Aの前部に形成された左右一対のシリンダ取付部14D、及び、筒状本体部14Aの前部に形成された前部側支持部14Eの夫々を一体的に備えて構成されている。
【0028】
筒状本体部14Aと左右両側の操向支持部14Bとはフランジ部14Af,14Bf同士を合せてボルト連結することにより一体的に固定されており、図5に示すように、筒状本体部14A内に回動自在に備えられた車軸19と前輪支持ケース16に内装された従動ギア20とを、キングピン15及びベベルギア機構21,22を介して連動連結してあり、操向支持部14Bに対して前輪支持ケース16がキングピン15の軸芯P2周りで回動自在に支持されている。
【0029】
図3及び図4に示すように、前車軸ケース14の前部側には、左右一対のシリンダ取付部14Dにて支持される状態で油圧式の操向シリンダ23が備えられている。この操向シリンダ23は、複動型で両ロッド式のものが採用されており、シリンダチューブ23Aに形成された左右一対の給排口24が、ステアリングホイール6の操作に応じて操向シリンダ23に対する作動油の流動状態を制御する制御弁25に油圧ホース26を介して接続されるとともに、左右のピストンロッド23Bが、前輪支持ケース16に一体形成されたナックルアーム27に、自在継手28、ボールジョイント29及び伸縮調節自在な連結具30を介して連動連結されている。
【0030】
図4及び図6に示すように、前部側支持部14Eは、側面視での形状が略コの字状に形成され、操向シリンダ23のシリンダチューブ23Aを前方から外囲するようになっており、操向シリンダ23のシリンダチューブ23Aに対する他物の接触を抑制できるように構成されている。
【0031】
図6に示すように、前車軸ケース14の長手方向中央部の前部側に形成された前部ボス14F及び前車軸ケース14の長手方向中央部の後部側に形成された後部ボス14Gの夫々が、軸受け部材31,32を介して機体フレーム3に相対回動自在に支持されることで、前車軸ケース14が機体フレーム3に前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されるようになっている。
【0032】
前部側支持部14Eの左右両側には、操向シリンダ23の左右の各ピストンロッド23Bを外囲するように屈曲形成された板金製のシリンダカバー33が、複数のネジ孔式のカバー取付部34に連結用のボルト57により連結して取り付けられおり、シリンダカバー33を取り付けることによって、左右のピストンロッド23Bに対する他物の接触を抑制することができる。
【0033】
そして、このトラクタでは、前輪4の操向角を検出する操向角検出センサ35が設けられ、この操向角検出センサ35の検出情報に基づいて制御装置36が前輪増速装置13の作動状態を切り換え制御するように構成されている。
【0034】
次に、操向角検出センサ35の取り付け構造について説明する。
図7及び図8に示すように、操向角検出センサ35及びその検出用操作体37の外方側を囲うセンサ保護カバー38が、前車軸ケース14の上部、具体的には、前車軸ケース14における左側の操向支持部14Bの上部(操向支持部14Bにおけるベベルギア収容ケース部分の上部(一対のベベルギアの直上方箇所のケース上面))に取り付けられ、このセンサ保護カバー38の内部に操向角検出センサ35が取り付けられている。又、前輪支持ケース16と操向角検出センサ35の検出用操作体37とが連係部材39を介して連動連係されている。
【0035】
センサ保護カバー38は、周壁部38Aと、その周壁部38Aの上部を閉塞する上壁部38Bと、下向き開口部38Cとを備えて構成されている。
説明を加えると、図8、図10及び図11に示すように、センサ保護カバー38は、アルミダイカストによる一体成形にて作製されており、略円筒形状の周壁部38Aの上部にドーム状に形成された上壁部38Bが一体に連なり、且つ、周壁部38Aの下部が開口して下向き開口部38Cが形成される構成となっている。
【0036】
センサ保護カバー38の上壁部38Bの内面側には、図11に示すように、2個のネジ孔40付きの取り付け座41が形成され、図8に示すように、この取り付け座41に操向角検出センサ35の取り付け部42がネジ43で締め付け固定されている。
又、操向角検出センサ35は、取り付け座41に固定された状態で、検出用操作体37の操作用回動軸芯P3がキングピン15の軸芯P2と同一軸芯上に位置するように取り付けられている。
【0037】
図7及び図8に示すように、センサ保護カバー38には、周壁部38Aの上下中間位置において、周壁部38Aの約半周分の領域にわたり周方向に長尺状でかつ上下方向の幅を狭くする形態の挿通孔である孔部44が形成されている。この孔部44は、連係部材39が挿通するとともに前輪支持ケース16の回動操作に伴って連係部材39が移動操作することを許容するように構成されている。
【0038】
操向角検出センサ35は上述したように、センサ保護カバー38の上壁部38Bの内面側に形成された取り付け座41にネジ43で締め付け固定されているから、操向角検出センサ35は、センサ保護カバー38の内部における孔部44よりも上方側の箇所に取り付けられることになる(図5参照)。
【0039】
一方、前輪支持ケース16には、図3,4,7,8に示すように、2つ割り構造の前輪支持ケース16のフランジ連結部45同士を連結する複数の組み付けボルト46のうち、周方向に隣り合う2箇所の組み付け用ボルト46により共締め固定される形態で、平面視で略三角形状の揺動操作部材47が取り付けられ、この揺動操作部材47に帯板状の背面視で逆V字状に屈曲した連係部材39がボルト連結されている。
【0040】
揺動操作部材47は、フランジ連結部45に連結される縦平板状の連結部分と、この連結部分の上部から斜め内方上方に延出された内方延出部分とを備えて、背面視で逆L字状に形成されている。
【0041】
従って、連係部材39は、前輪4が操向操作されると、前輪支持ケース16の揺動に伴って前輪支持ケース16と一体的にキングピン15の軸芯P2周りで揺動するように構成されている。尚、この実施形態では、連係部材39と揺動操作部材47を別部材で構成しているが、連係部材39と揺動操作部材47を単一の部材で一体的に構成してもよい。
【0042】
図7,8,9に示すように、連係部材39は、孔部44を通過して、平面視でキングピン15の軸芯P2を通過する状態でセンサ保護カバー38の内部に入り込む状態で設けられ、連係部材39の先端部に長手方向に沿って凹入する形態で凹溝48が形成されている。
操向角検出センサ35における検出用操作体37は操向角検出用の回動軸49に取り付けられ、この検出用操作体37の揺動端部には凹溝48に係合する係合ピン50が設けられている。そして、連係部材39が軸芯P2周りで揺動するに伴って、凹溝48と係合ピン50との係合により、連係部材39と検出用操作体37とが連動連係される構成となっている。
【0043】
図8,10,11に示すように、センサ保護カバー38には、下向き開口部38Cの端縁部において周方向に間隔をあけて複数箇所(図に示す例では3箇所)にネジ孔51を備えた取り付け部52が形成されている。又、図7,8,9に示すように、前車軸ケース14における左側の操向支持部14Bの上部には、センサ保護カバー38の複数の取り付け部52がネジ締結にて連結固定される複数(図に示す例では3個)の取り付け座53が形成されている。
【0044】
図8に示すように、左側の操向支持部14Bの上部面は、側面視において、中央部が高く左右両側が低くなる略山形状に形成されており、複数の取り付け座53は、山形状の上部面の両側の低い位置に上方に突出するように形成されているが、取り付け座53は、上部面の上端位置に近い位置まで上方に突出する形態で形成されている。
【0045】
又、センサ保護カバー38の下向き開口部38Cの端縁は全周にわたり略同一面上に平坦な形状となるように形成されており、前記複数の取り付け部52の端縁も下向き開口部38Cの端縁と略同一面上に位置する状態で形成されている。
【0046】
従って、図7に示すように、センサ保護カバー38の複数の取り付け部52の夫々が左側の操向支持部14Bの複数の取り付け座53に接続固定されると、センサ保護カバー38の下向き開口部38Cの端縁部と左側の操向支持部14Bの上部側外面との間に隙間Sが形成されることになる。
【0047】
そして、図5及び図10に示すように、センサ保護カバー38の周壁部38Aに操向角検出センサ35の信号伝送用配線54を挿通させる挿通孔55が形成され、この挿通孔55を通してセンサ保護カバー38から外方に延びる信号伝送用配線54の上方を覆う配線保護カバー56が、前車軸ケース14に取り付けられている。
【0048】
すなわち、図4,7,8に示すように、前車軸ケース14にシリンダカバー33を連結するための連結用のボルト57により共締め固定される状態で、前車軸ケース14の上部において左右方向に沿って機体フレーム3に近接する位置まで延びる状態で第1カバー部56Aが取り付けられている。
図8に示すように、第1カバー部56Aは帯板を断面形状がコの字形になるように成形して構成され、連結用のボルト57により共締め固定するためのボルト挿通用の取り付け部58が一定形成されている。
【0049】
又、この第1カバー部56Aに溶接固定される状態で、この第1カバー部56Aからセンサ保護カバー38に至るまでの間の信号伝送用配線56の上方を覆う第2カバー部56Bが設けられている。この第2カバー部56Bは、第1カバー部56Aから水平方向に連なり左側斜め後方側に延びる接続部分56B1と、この接続部分56B1からセンサ保護カバー38の上部側箇所にまで左側斜め上方に延びる斜め傾斜部分56B2とからなり、斜め傾斜部分56B2には前後両側に縦壁部分56B3が形成され、泥水等の外物が信号伝送用配線54に飛散しないように、信号伝送用配線54を覆うようになっている。
つまり、第1カバー部56Aと第2カバー部56Bとにより配線保護カバー56が構成されている。
【0050】
ちなみに、前記第2カバー部56Bの上端部には、上下方向に貫通する貫通孔59が形成され、センサ保護カバー38に形成された突起60がこの貫通孔59に差込み挿入される構成となっている。
【0051】
図5に示すように、操向角検出センサ35の検出値が信号伝送用配線54を介して機体に搭載された制御装置36に入力されるようになっており、制御装置36は、操向角検出センサ35の検出値に基づいて、前輪4が直進状態から所定角以上に操向操作されたことを検知している場合には、前輪増速装置13に対する作動油の流動状態を切り換える電磁切換弁61の作動を制御して、前輪4を後輪5の約2倍の速度で駆動する増速駆動状態を現出し、又、操向角検出センサ35からの検出に基づいて前輪4が直進状態から所定角以上に操向操作されていないことを検知している場合には、電磁切換弁61の作動を制御して、前輪4を後輪5と略同じ速度で駆動する等速駆動状態を現出するといった前輪増速制御を行うように構成されている。このような前輪増速制御を実行することにより、例えば、圃場において畦際で急旋回したような場合に、増速駆動状態に切り換えることで旋回走行を圃場を荒らすことなく円滑に行えるものとなる。
【0052】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、センサ保護カバー38の周壁部38Aにおける上下中間位置に周方向に沿って延びる長孔状の挿通孔である孔部44を形成するものを示したが、この孔部44としては、このような構成に限らず、例えば、センサ保護カバー38の周壁部38Aにおける下端縁の一部を上方側に向けて凹入状に切り欠いて形成する構成等、種々の形態で設けることができる。
【0053】
(2)上記実施形態では、操向角検出センサ35における検出用操作体37の操作用回動軸芯P3がキングピン15の軸芯(操向用軸芯)P2と同一軸芯上に位置する構成を示したが、検出用操作体37の操作用回動軸芯P3をキングピン15の軸芯P2とは異なる位置の軸芯にて構成するものでもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、信号伝送用配線54の上方を覆う配線保護カバー56が前車軸ケース14に取り付けられる構成を示したが、このような配線保護カバー56を備えない構成としてもよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、センサ保護カバー38における下向き開口部38Cの端縁と前車軸ケース14の外面との間に隙間Sが形成されるものを示したが、センサ保護カバー38と前車軸ケース14との間に隙間が無い状態で構成されるものでもよい。
【0056】
(5)上記実施形態では、センサ保護カバー38が、略円筒形状の周壁部38Aの上部にドーム状に形成された上壁部38Bが一体に連なる状態で構成されるものを示したが、このような構成に限らず、センサ保護カバー38としては、上壁部38Bが平坦な面で形成されるもの、周壁部38Aが角形の形状で形成されるもの、あるいは、上壁部38Bを周壁部38Aに対して着脱できる分割式のもの等、種々の形態で実施することができる。
【0057】
(6)上記実施形態では、操向角検出センサ35及びセンサ保護カバー38を、前車軸ケース14における左側箇所に設ける構成としたが、前車軸ケース14における右側箇所に設ける構成としてもよく、前車軸ケース14における左右両側箇所に設ける構成としてもよい。
【0058】
(7)上記実施形態では、作業車としてトラクタを示したが、トラクタに限らず乗用田植機やその他の作業車であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、前輪が操向自在に設けられ、その前輪の操向角を検出するための操向角検出センサを備えた作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
4 前輪
14 前車軸ケース
16 前輪支持ケース
35 操向角検出センサ
37 検出用操作体
38 センサ保護カバー
38A 周壁部
38B 上壁部
38C 下向き開口部
39 連係部材
44 孔部
54 信号伝送用配線
55 挿通孔
56 配線保護カバー
P2 操向用軸芯
P3 操作用回動軸芯
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前車軸ケースに前輪の操向角を検出する操向角検出センサが支持され、前記前車軸ケースに操向用軸芯周りで回動可能に支持された前輪支持ケースと前記操向角検出センサの検出用操作体とが連係部材を介して連動連係されている作業車の操向角検出装置であって、
前記操向角検出センサ及び前記検出用操作体の外方側を囲うセンサ保護カバーが、前記前車軸ケースの上部に取り付けられ、
このセンサ保護カバーが、周壁部と、その周壁部の上部を閉塞する上壁部と、下向き開口部とを備えて構成され、且つ、前記周壁部に、前記連係部材が挿通するとともに前記前輪支持ケースの回動操作に伴って前記連係部材が移動操作することを許容する孔部が形成され、
前記操向角検出センサが、前記センサ保護カバーの内部における前記孔部よりも上方側の箇所に取り付けられている作業車の操向角検出装置。
【請求項2】
前記センサ保護カバーにおける前記下向き開口部の端縁と前記前車軸ケースの外面との間に隙間が形成されている請求項1記載の作業車の操向角検出装置。
【請求項3】
前記センサ保護カバーの周壁部に前記操向角検出センサの信号伝送用配線を挿通させる挿通孔が形成され、
前記挿通孔を通して前記センサ保護カバーから外方に延びる信号伝送用配線の上方を覆う配線保護カバーが、前記前車軸ケースに取り付けられている請求項1又は2記載の作業車の操向角検出装置。
【請求項4】
前記検出用操作体の操作用回動軸芯と前記操向用軸芯とが同一軸芯上に位置する形態で、前記操向角検出センサが前記センサ保護カバーに取り付けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車の操向角検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−35656(P2012−35656A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174605(P2010−174605)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】