説明

作業車の表示装置

【課題】エンジン回転数及び累積稼動時間を使用者が識別し易い状態で表示することが可能でありながらも、低コスト化を図ることが可能な作業車の表示装置を提供する。
【解決手段】エンジン回転数及び累積稼動時間を表示する数値表示部27が複数桁の数字と小数点とを表示可能に構成され、数値表示部27の作動を制御する制御手段が、エンジン回転数を表示する回転数表示状態と累積稼動時間を表示する稼動時間表示状態とに切り換える形態で、且つ、稼動時間表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示し、回転数表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示しない形態で、数値表示部27を作動させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン回転数及び累積稼動時間を表示する表示手段と、前記表示手段の作動を制御する制御手段とを備えた作業車の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車の表示装置において、従来では、作業車の一例であるコンバインに適用したものとして、次のように構成されたものがあった。
すなわち、車体の操縦部に、表示手段として、ドットマトリクス式の液晶表示器を用いた表示装置が備えられ、この表示画面にてエンジン回転数を表示する状態と、表示画面にて累積稼動時間としてのアワーメータを表示する状態とに切り換えるように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このようにドットマトリクス式の液晶表示器を用いるものでは、数字情報だけでなく、例えばエンジン回転数をバーグラフ形式で表示したり、又、エンジン回転数やアワーメータ以外の他の情報を文字で表示する等、種々の形態の情報を表示できるので、視覚的に理解し易く使用者が識別し易い状態でエンジン回転数及び累積稼動時間(アワーメータ)を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−75625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の表示装置では、表示手段をドットマトリクス式の液晶表示器を用いるものであるから、表示手段の構成が複雑となり、そのような表示手段の作動を制御するための制御手段の構成も複雑となって、コスト高になる不利がある。
【0006】
本発明の目的は、エンジン回転数及び累積稼動時間を使用者が識別し易い状態で表示することが可能でありながらも、低コスト化を図ることが可能な作業車の表示装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車の表示装置は、エンジン回転数及び累積稼動時間を表示する表示手段と、前記表示手段の作動を制御する制御手段とを備えたものであって、前記表示手段が複数桁の数字と小数点とを表示可能に構成され、前記制御手段が、前記エンジン回転数を表示する回転数表示状態と前記累積稼動時間を表示する稼動時間表示状態とに切り換える形態で、且つ、前記稼動時間表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示し、前記回転数表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示しない形態で、前記表示手段を作動させるように構成されている点にある。
【0008】
第1特徴構成によれば、表示手段は、複数桁の数字と小数点とを表示可能であればよく、又、エンジン回転数を表示する回転数表示状態と累積稼動時間を表示する稼動時間表示状態とに切り換えて表示するものであればよいので、ドットマトリクス式の液晶表示器を用いるものに比べて構成を簡素化することができ、しかも、複数桁の数字及び小数点を表示するにあたり、エンジン回転数と累積稼動時間とを同時に並べて表示するものに比べて構成を簡素なものにできるのであり、又、表示手段の作動を制御するための制御手段の構成も簡素化することができるから、全体として構成を簡素にでき低コスト化を図ることができる。
【0009】
そして、制御手段は、稼動時間表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示し、回転数表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示しない形態で、表示手段を作動させるので、表示手段にて表示されているものがエンジン回転数及び累積稼動時間のうちいずれであるかを使用者が認識し易いものとなる。
【0010】
ところで、累積稼動時間は、定期点検等を実行するための目安として利用するものであるから、正確な時間の情報が必要とされるものであるが、上述したように稼動時間表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示することができるから、正確な時間の情報を表示することができる。一方、エンジン回転数は、エンジンに掛かる負荷が変動すること等に起因して変動するものであり、小さい位の値を正確に表示しても無意味であるから小数点以下の小さい数値は表示しないようにして、複数桁の数字にて適切に表示させることができる。
【0011】
従って、エンジン回転数及び累積稼動時間を使用者が識別し易い状態で表示することが可能でありながらも、表示手段並びに制御手段の構成を簡素化して低コスト化を図ることが可能な作業車の表示装置を提供できるに至った。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記稼動時間表示状態では前記小数点を点滅表示させる形態で前記表示手段を作動させるように構成されている点にある。
【0013】
第2特徴構成によれば、前記稼動時間表示状態では表示手段にて小数点を点滅させる状態で表示するので、使用者は、小数点の点滅により時間をカウントしている状態であることが目視で判別し易いものとなって、稼動時間表示状態であることを認識し易いものになる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記回転数表示状態では、前記複数桁の数字表示のうちの一の位に零を表示させる形態で前記表示手段を作動させるように構成されている点にある。
【0015】
エンジン回転数はエンジンに掛かる負荷が変動すること等に起因して変動するものであり、特に、一の位の数字は頻繁に変動して表示状態が不安定になり易いものである。
【0016】
そこで、第3特徴構成では、制御手段が、回転数表示状態では複数桁の数字表示のうちの一の位に零を表示するように表示手段を作動させるように構成されるので、エンジンが作動している状態において、数字が頻繁に変動して表示状態が不安定になることを回避して、安定した表示状態でエンジン回転数を表示することができる。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のうちのいずれか1項に加えて、前記制御手段が、電源供給が開始されると前記稼動時間表示状態にて前記表示手段を作動させ、且つ、エンジン始動判別条件が成立すると前記回転数表示状態にて前記表示手段を作動させるように構成されている点にある。
【0018】
第4特徴構成によれば、作業を開始するに先立って電源供給が開始されると、表示手段にて累積稼動時間が表示されるので、操作者は累積稼動時間を確認することによって、メンテナンスが必要であるか否か等の判断をすることができる。そして、その後、操作者がエンジン始動操作を実行してエンジン始動判別条件が成立すると、表示手段にてエンジン回転数が表示されるので、操作者は、エンジンが始動したのちに、エンジン回転数が作業に適した回転数となっているか否かを表示手段の表示内容から判別することができ、例えば、作業に適したエンジン回転数でなければエンジンの出力を調節する作業を行ったり、エンジン負荷が過大になっているか否かを判断したりすること等が可能となる。
【0019】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成に加えて、前記エンジン始動判別条件が、前記エンジン回転数がアイドリング回転数よりも低速に設定されている設定回転数以上になることである点にある。
【0020】
第5特徴構成によれば、操作者がエンジンを始動する処理を実行していても、エンジン回転数が設定回転数未満の低速回転状態であるときは、エンジン始動判別条件が成立していないので、表示手段にエンジン回転数が表示されることがない。
【0021】
つまり、前記低速回転状態では停止状態からエンジンを始動させるためにエンジン回転数が急激に変化している状態であり、そのような急激に変化しているエンジン回転数を表示手段にて表示させるようにしても数字が頻繁に変動して表示状態が不安定になるから、エンジン回転数が設定回転数未満であれば累積稼動時間を表示させるのである。
そして、エンジン回転数が設定回転数以上になれば、エンジン始動判別条件が成立したものとして、回転数表示状態にて表示手段を作動させ、エンジン回転数を表示することになる。
【0022】
その結果、表示される数字が頻繁に変動して表示状態が不安定になることを回避して、安定した表示状態でエンジン回転数を表示することができる。
【0023】
本発明の第6特徴構成は、第4特徴構成に加えて、前記エンジン始動判別条件が、電源供給が開始されたときから設定時間が経過すること、又は、エンジン始動用スイッチが始動位置に操作されたときから設定時間が経過することである点にある。
【0024】
第6特徴構成によれば、電源供給が開始されたときから設定時間が経過するまでの間、又は、エンジン始動用スイッチが始動位置に操作されたときから設定時間が経過するまでの間は、エンジン始動判別条件が成立していないので、表示手段にエンジン回転数が表示されることがない。
【0025】
作業車においては、制御手段や表示手段に対する電源供給が開始されると、その後すぐにエンジン始動用スイッチが始動位置に操作されてエンジンが始動されて、作業を開始するのが一般的な使用形態であると考えられる。
【0026】
そこで、電源供給が開始されたときから設定時間が経過すると、エンジン始動判別条件が成立したものとして、回転数表示状態にて表示手段を作動させる、又は、エンジン始動用スイッチが始動位置に操作されたときから設定時間が経過すると、エンジン始動判別条件が成立したものとして、回転数表示状態にて表示手段を作動させる。
【0027】
つまり、電源供給が開始されたときから設定時間が経過するまでの間、又は、エンジン始動用スイッチが始動位置に操作されたときから設定時間が経過するまでの間は、停止状態からエンジンを始動させるためにエンジン回転数が急激に変化している状態であり、そのような急激に変化しているエンジン回転数を表示手段にて表示させるようにしても数字が頻繁に変動して表示状態が不安定になるから、エンジン回転数が設定回転数未満であれば累積稼動時間を表示させるのである。そして、設定時間が経過してエンジン始動判別条件が成立すると、回転数表示状態にて表示手段を作動させ、エンジン回転数を表示することになる。
【0028】
その結果、表示される数字が頻繁に変動して表示状態が不安定になることを回避して、安定した表示状態でエンジン回転数を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】伝動系統図である。
【図3】制御ブロック図である。
【図4】操縦部の平面図である。
【図5】表示装置を示す正面図である。
【図6】制御動作のフローチャートである。
【図7】情報表示部の表示例を示す図である。
【図8】別実施形態の制御動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、作業車の一例としてのコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1、及び、運転座席2を備える操縦部Aを装備した走行機体の前部に昇降操作自在に刈取処理装置4が連結され、機体フレーム3の後部側箇所に機体横幅方向に並べる状態で脱穀装置5と穀粒タンク6とを備えて、圃場を走行しながら、稲、麦などの穀稈を刈取り、その刈取り穀稈を脱穀処理するように構成されている。
【0031】
説明を加えると、刈取処理装置4は、刈取り部フレーム4aが昇降用の油圧シリンダ7によって機体フレーム3に対して上下に揺動操作されることにより、刈取処理装置4の前端部に位置する複数の分草具4bが地面付近に下降した下降作業状態と、分草具4bが地面から上昇した上昇非作業状態とに昇降するように構成されている。そして、刈取処理装置4を下降作業状態にして走行機体を走行させると、刈取処理装置4が、刈り取り対象の複数の植付け条に位置する植立穀稈を対応する分草具4bによって隣接する植付け条の植立穀稈と分草し、各分草具4bからの植立穀稈を対応した引起し装置4cによって引起し処理するとともに一つのバリカン形の刈取り装置4dによって刈取り処理し、刈取り装置4dからの刈取り穀稈を搬送装置4eによって後方に搬送して脱穀装置5の脱穀フィードチェーン5aの始端部に供給するように構成されている。
【0032】
脱穀装置5は、脱穀フィードチェーン5aによって刈取り穀稈の株元側を挟持して後方に搬送しながら穂先側を扱室(図示せず)に供給し、刈取り穀稈を回動する扱胴(図示せず)によって脱穀処理するように構成されている。又、脱穀装置5から搬送された脱穀粒を穀粒タンク6にて回収して貯留するように構成され、穀粒タンク6にて貯留する脱穀粒はスクリューコンベア式の穀粒排出装置8により外部に排出するように構成されている。又、脱穀処理されたあとの排ワラはフィードチェーン5a及び排ワラ搬送装置9により機体後方に搬送されて排ワラ処理装置10にて細断処理される。
【0033】
図2に示すように、運転座席2の下方に設けたエンジンEの出力が、脱穀クラッチ14を介して脱穀装置5に伝達され、また、エンジンEの出力が、ベルトテンション式の伝動装置11を介してミッションケース12の入力軸13に伝達され、入力軸13の動力が刈取用出力軸16及び刈取クラッチ17を介して刈取処理装置4に伝達される。
【0034】
ミッションケース12には静油圧式の無段変速装置Mが設けられ、この無段変速装置Mの変速出力は、左右の多板摩擦式のクラッチブレーキ18R,18Lを介して左右のクローラ式走行装置1に伝達されるように構成されている。無段変速装置Mは、前進走行速度及び後進走行速度を無段階に変速する走行変速装置として機能するものであり、中立位置から前進操作域及び後進操作域の夫々に操作自在な変速操作レバー19(図1参照)にて操作されるように構成されている。
【0035】
前記左右のクラッチブレーキ18R,18Lは夫々油圧ピストン20R,20Lにて操作され、左右のクローラ式走行装置1に対して各別に動力を断続し且つ動力遮断状態でブレーキとして機能するように構成されている。
【0036】
図4に示すように、操縦部Aにおける運転座席2の前方に位置する前方パネル部22Aには、前後方向並びに左右方向に揺動操作自在な操縦レバー21が備えられ、運転座席2の左横側に位置する横側パネル部22Bの前部側箇所に種々の情報を表示するための表示装置Fが備えられ、横側パネル部22Bの後部側箇所には変速操作レバー19が備えられている。
【0037】
横側パネル部22Bの前部は、その外縁部22Baが湾曲した形状に形成されている。又、横側パネル部22Bの前部には、斜め前方上方に傾斜した傾斜面22Bbが形成されており、この傾斜面22Bbに横長台形又は長方形状の表示装置Fが運転座席2から見易いように斜め前方外方向きに取り付けられている。
【0038】
図5に示すように、前記表示装置Fは、液晶表示式の情報表示部23と、各種の異常状態を報知する報知表示部24とを備えて構成されている。
前記情報表示部23は、左側に燃料タンク(図示せず)内の燃料貯留量を表示する燃料表示部25が備えられ、右側にエンジンEの冷却水の温度を表示する水温表示部26が備えられ、左右中央部に,エンジン回転数Nx及びエンジンEの稼動時間を累積した累積稼動時間を表示する表示手段としての数値表示部27が備えられている。又、数値表示部27の上側には、数値表示部27にて表示しているのが累積稼動時間であることを模様で示す時間表示識別部28と、数値表示部27にて表示しているのがエンジン回転数Nxであることを模様で示す回転数表示識別部29とを備えて構成されている。
数値表示部27は、4桁の数字を表示する4つの数字表示部27Aと小数点を表示する1つの小数点表示部27Bとを備えて構成されている。
【0039】
前記報知表示部24には、エンジンEの負荷異常を表示する負荷異常ランプ30、穀粒タンク6の穀粒の貯留量が満杯になっていることを表示する貯留量満杯ランプ31、排ワラ搬送経路中にて排ワラ詰まりが発生していることを表示する排ワラ異常ランプ32、脱穀装置5内の2番回収部にて搬送詰まりが発生していることを表示する2番回収部異常ランプ33、エンジンEの潤滑用に供給されるオイルの圧力が低下している状態であることを表示する油圧異常ランプ34、バッテリーV(図3参照)の充電量が少ない状態であることを表示するバッテリー異常ランプ35、前照灯(図示せず)の点灯が指令されていることを表示する前照灯表示ランプ36、図示しない方向指示器にて左右いずれかの方向指示ランプの点灯が指令されていることを表示する方向指示表示ランプ37が備えられている。
【0040】
図3に示すように、油圧シリンダ7、左右の油圧ピストン20R,20L、表示装置F、及び、スターター45の作動を制御するための制御手段としての制御部Hが備えられ、この制御部Hには、各種センサ類の検出情報が入力され、その情報に基づいて油圧シリンダ7、左右の油圧ピストン20R,20L、表示装置F、及び、スターター45の作動を制御するように構成されている。
【0041】
操縦レバー21の前後方向での操作位置を検出する刈取昇降指令用センサ38と、操縦レバー21の左右方向での操作位置を検出する操向指令用センサ39とが設けられ、これらの検出情報は制御部Hに入力されるようになっている。
【0042】
制御部Hは、操縦レバー21が中立操作位置nから前方に揺動されたことが刈取昇降指令用センサ38にて検出されると下降指令が指令されたものと判別し、操縦レバー21が中立操作位置nから後方に揺動されたことが刈取昇降指令用センサ38にて検出されると上昇指令が指令されたものと判別する。そして、上昇指令及び下降指令に基づいて油圧シリンダ7の制御弁40を操作して油圧シリンダ7を作動させることにより、刈取処理装置4を昇降させる。
【0043】
又、制御部Hは、操縦レバー21が中立操作位置nから左方に揺動されたことが操向指令用センサ39にて検出されると左旋回指令が指令されたものと判別し、操縦レバー21が中立操作位置nから右方に揺動されたことが操向指令用センサ39にて検出されると右旋回指令が指令されたものと判別する。そして、左旋回指令及び右旋回指令に基づいて制御弁41R,41Lを操作して油圧ピストン20R,20Lを作動させることによりクラッチブレーキ18R,18Lを作動させて、走行機体を旋回走行させる。
ちなみに、操縦レバー21の左右方向での中立操作位置nからの倒し角が設定値以下であれば、クラッチブレーキ18R,18Lをクラッチ切り状態に切り換え、前記倒し角が設定値以上に大きくなると、クラッチブレーキ18R,18Lをブレーキ作動状態に切り換えるように油圧ピストン20R,20Lを作動させることになる。
【0044】
図3に示すように、エンジン回転数Nxを検出するエンジン回転数センサS1、穀粒タンク6の貯留量が設定量以上になったことを検出する穀粒量センサS2、排ワラの搬送経路に排ワラの搬送詰まりが発生したことを検出する排ワラ詰まりセンサS3、脱穀装置5内に備えられている2番物回収用スクリューコンベア(図示せず)の回転数を検出する2番回転センサS4が備えられ、各センサS1〜S4の検出情報が制御部Hに入力されている。制御部Hは、上記したセンサ類の検出結果に基づいて、上記したような種々の異常が検出されると、報知表示部24における異常内容に対応したランプを点灯表示させる。
【0045】
また、制御部Hには、操縦部Aに装備された駐車ブレーキペダル42がブレーキ作動状態に踏み込まれたことを検出するブレーキ検出センサS5が接続されており、後述するメインスイッチ43が始動位置(ST)に操作されたときに、ブレーキ検出センサS5にてブレーキ作動状態であることが検出されている場合にはエンジンEを始動し、且つ、ブレーキ検出センサS5にてブレーキ作動状態であることが検出されない場合には、エンジンEを始動しないように構成されている。
【0046】
そして、情報表示部23における数値表示部27は複数桁(具体的には4桁)の数字と小数点とを表示可能に構成され、制御部Hは、エンジン回転数Nxを表示する回転数表示状態と累積稼動時間を表示する稼動時間表示状態としてのアワーメータ表示状態に切り換える形態で、且つ、アワーメータ表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示し、回転数表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示しない形態で、情報表示部23を作動させるように構成されている。
【0047】
又、制御部Hは、アワーメータ表示状態では小数点を点滅表示させる形態で情報表示部23を作動させるように構成され、さらに、回転数表示状態では、複数桁の数字表示のうちの一の位に零を表示させる形態で情報表示部23を作動させるように構成されている。
【0048】
そして、制御部Hは、電源供給が開始されるとアワーメータ表示状態にて情報表示部23を作動させ、且つ、エンジン回転数Nxがアイドリング回転数よりも低速に設定されている設定回転数Ns以上になると、エンジン始動判別条件が成立したものとして、回転数表示状態にて情報表示部23を作動させるように構成されている。
【0049】
次に、制御部Hによる情報表示部23の表示制御について、図6のフローチャートを用いて具体的に説明する。
制御部Hは、キーKにて操作されるエンジン始動用スイッチとしてのメインスイッチ43が電源入り位置(ON)に操作されると、バッテリーVの電源が投入されて起動され、メインスイッチ43が電源切り位置(OFF)に操作されると、電源の供給が停止されるようになっている。また、メインスイッチ43が始動位置(ST)に操作されたときには、スターター起動用スイッチ(以下、起動スイッチという)44を入り操作してスターター45を作動させることになる。
【0050】
メインスイッチ43が電源入り位置(ON)に操作されて電源が投入されて起動されると、アワーメータ表示状態にて数値表示部27を作動させ(ステップ1)、メインスイッチ43が始動位置(ST)に操作されるか又はメインスイッチ43が電源切り位置(OFF)に操作されるまで、このアワーメータ表示状態を維持する(ステップ2、3)。
【0051】
ちなみに、燃料表示部25及び水温表示部26は、メインスイッチ43が電源入り位置(ON)に操作されて起動したのち、メインスイッチ43が電源切り位置(OFF)に操作されるまでの間は、常に表示されることになる。
【0052】
アワーメータ表示状態では、例えば、図7(a),(b)に示すように、4桁の数字表示並びに小数点の夫々を用いて、エンジンEが稼動している時間の累積時間である累積稼動時間を表示する。そして、このアワーメータ表示状態では、小数点を示す少数点表示部27Bを点滅表示させる。又、時間表示識別部28を表示状態にし、回転数表示識別部29を非表示状態にする。
【0053】
具体例で説明を加えると、図7(a)は累積稼動時間が「50.5時間(50時間30分)」の場合を示し、図7(b)は累積稼動時間が「850.5時間(850時間30分)」の場合を示している。このとき、小数点を示す少数点表示部27Bを点滅させる状態で表示することになる。尚、累積稼動時間が1000時間を越える場合には、少数点表示部27Bを非表示にして小数点以上の4桁の数字で累積稼動時間を表示する形態に切り換えるようになっている。
【0054】
メインスイッチ43が始動位置(ST)に操作されると、ブレーキ検出センサS5にて駐車ブレーキペダル42がブレーキ作動状態に踏み込まれていることが検出されている場合に、制御部Hが起動スイッチ44を入り操作させる(ステップ2,4,5)。その結果、エンジンEが始動することになる。
【0055】
エンジンEが始動されて、エンジン回転数センサS1にて検出されるエンジン回転数Nxが設定回転数Ns以上になったことが検出されると、回転数表示状態にて情報表示部23を作動させる(ステップ6,7)。
【0056】
回転数表示状態では、図7(c),(d)に示すように、数値表示部27における4桁の数字表示のみを用いてエンジン回転数Nxを表示するように情報表示部23を作動させる。つまり、回転数表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示しないのであり、小数点は消灯させた状態を維持して一の位〜千の位の数字のうち対応する数字を表示することになる。
【0057】
この回転数表示状態では、4桁の数字表示のうちの一の位には常に零を表示させる形態でエンジン回転数Nxを表示させる。又、時間表示識別部28を非表示状態にし、回転数表示識別部29を表示状態にする。
【0058】
エンジン回転数Nxが設定回転数Ns未満にまで低下するか、又は、メインスイッチ43が電源切り位置(OFF)に操作されるまで、回転数表示状態を維持することになる(ステップ8)。そして、メインスイッチ43が電源切り位置(OFF)に操作されると、情報表示部23の全ての表示を非表示状態に切り換えて(ステップ9)処理を終了する。
【0059】
上述したように、情報表示部23には、識別用の指示部である時間表示識別部28と回転数表示識別部29とを備えているが、アワーメータ表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示し、回転数表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示しない形態で数値表示部27にて表示させてあり、しかも、小数点は点滅表示するようにしているので、操作者は、数値表示部27に表示されている数値を目視するだけで直感的に違いが判り、すぐに累積稼動時間であるかエンジン回転数であるかを見分けることができる。
【0060】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、アワーメータ表示状態において、小数点を示す少数点表示部27Bを点滅表示させるようにしたが、このような構成に代えて、アワーメータ表示状態において、少数点表示部27Bを連続点灯状態で表示させるようにしてもよい。
【0061】
(2)上記実施形態では、回転数表示状態において、4桁の数字表示のうちの一の位に零を表示させるようにしたが、このような構成に代えて、一の位に零以外の数字を表示させるようにしてもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、数字表示部27にて4桁の数字表示を行うようにしたが、数字表示部27の表示桁数は、複数桁であればよく4桁に限定されるものではない。
【0063】
(4)上記実施形態では、制御部Hが、エンジン回転数Nxがアイドリング回転数よりも低速に設定されている設定回転数Ns以上になると、エンジン始動判別条件が成立したものとして、回転数表示状態にて情報表示部23を作動させるようにしたが、このような構成に代えて、図8に示すように、メインスイッチ43が始動位置(ST)に操作されたときから設定時間が経過すると、エンジン始動判別条件が成立したものとして(ステップ6)、回転数表示状態にて情報表示部23を作動させるように構成してもよい。尚、図8におけるステップ6以外の処理は図6と同じであるから説明は省略する。
【0064】
又、図示はしないが、上記構成に代えて、メインスイッチ43がオンして電源供給が開始されたときから設定時間が経過すると、エンジン始動判別条件が成立したものとして、回転数表示状態にて情報表示部23を作動させるように構成してもよい。
【0065】
(5)上記実施形態では、作業車としてコンバインに備えられる表示装置を示したが、本発明は、コンバインに限らず、水田作業車、トラクター、あるいは、建設用の作業車等の種々の作業車にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、搭載されているエンジンのエンジン回転数及び累積稼動時間を表示装置にて表示するようにした作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0067】
27 表示手段
43 エンジン始動用スイッチ
H 制御手段
Nx エンジン回転数
Ns 設定回転数
ST 始動位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン回転数及び累積稼動時間を表示する表示手段と、前記表示手段の作動を制御する制御手段とを備えた作業車の表示装置であって、
前記表示手段が複数桁の数字と小数点とを表示可能に構成され、
前記制御手段が、前記エンジン回転数を表示する回転数表示状態と前記累積稼動時間を表示する稼動時間表示状態とに切り換える形態で、且つ、前記稼動時間表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示し、前記回転数表示状態では小数点並びに小数点以下の数字を表示しない形態で、前記表示手段を作動させるように構成されている作業車の表示装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記稼動時間表示状態では前記小数点を点滅表示させる形態で前記表示手段を作動させるように構成されている請求項1記載の作業車の表示装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記回転数表示状態では、前記複数桁の数字表示のうちの一の位に零を表示させる形態で前記表示手段を作動させるように構成されている請求項1又は2記載の作業車の表示装置。
【請求項4】
前記制御手段が、電源供給が開始されると前記稼動時間表示状態にて前記表示手段を作動させ、且つ、エンジン始動判別条件が成立すると前記回転数表示状態にて前記表示手段を作動させるように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車の表示装置。
【請求項5】
前記エンジン始動判別条件が、前記エンジン回転数がアイドリング回転数よりも低速に設定されている設定回転数以上になることである請求項4記載の作業車の表示装置。
【請求項6】
前記エンジン始動判別条件が、電源供給が開始されたときから設定時間が経過すること、又は、エンジン始動用スイッチが始動位置に操作されたときから設定時間が経過することである請求項4記載の作業車の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−217691(P2011−217691A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92105(P2010−92105)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】