説明

作業車両の走行伝動装置

【課題】本発明では、エンジンの回転を走行装置に伝動する走行伝動装置に、従来よりも多段の変速装置を設けることで、走行速度の調整を細かく行って種々の作業に対応出来るようにすることを課題とする。
【解決手段】エンジン10の回転を走行装置8,9に伝動するトランスミッション1内において、前後進切換クラッチ18とメイン変速クラッチ2とサブ変速クラッチ5を直列に配置する構成とし、さらに、該メイン変速クラッチ2とサブ変速クラッチ5との間には、高低二段変速の第一高低変速クラッチ3と高低二段変速の第二高低変速クラッチ4を配置したことを特徴とする作業車両の走行伝動装置の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタや乗用管理機等の作業車両におけるエンジンから走行装置への走行伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の作業車両においては、駆動源としてディーゼルエンジンが使用されるが、このディーゼルエンジンは実用回転域が狭いので、エンジン回転を走行車輪や走行クローラの走行出力軸に伝動する伝動径路で回転を多段階に変速して減速及び増速するようにして、作業条件に応じた走行速度で走行できるようにしている。
【0003】
例えば、特開平8−338525号公報には、エンジンの直後に主クラッチを設け、続いて4段の主変速装置と2段の第一副変速装置と同じく2段の第二副変速装置を設けて、結局、4段×2段×2段=16段で変速してエンジン回転を走行出力軸に伝動している。
【特許文献1】特開平8−338525号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、エンジンの回転を走行装置に伝動する駆動力伝動装置に従来よりも多段の変速装置を設けることで、走行速度の調整を細かく行って種々の作業に対応出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1に記載の発明では、エンジン(10)の回転を走行装置(8),(9)に伝動するトランスミッション(1)内において、前後進切換クラッチ(18)とメイン変速クラッチ(2)とサブ変速クラッチ(5)を直列に配置する構成とし、さらに、該メイン変速クラッチ(2)とサブ変速クラッチ(5)との間には、高低二段変速の第一高低変速クラッチ(3)と高低二段変速の第二高低変速クラッチ(4)を配置したことを特徴とする作業車両の走行伝動装置としたものである。
【0006】
この構成では、高低変速クラッチは、高低二段変速の第一高低変速クラッチ(3)と高低二段変速の第二高低変速クラッチ(4)の2個が配置されているので、変速段数が二倍となる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、前記メイン変速クラッチ(2)と第一高低変速クラッチ(3)との組み合わせで複数段の変速段数(M)を確保し、該複数の変速段数(M)と第二高低変速クラッチ(4)の低側との組み合わせで第一変速レンジ(N1)を構成し、複数の変速段数(M)と第二高低変速クラッチ(4)の高側との組み合わせで第二変速レンジ(N2)を構成し、該第一変速レンジ(N1)と第二変速レンジ(N2)の一部の変速領域を重ならせるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の走行伝動装置としたものである。
【0008】
この構成では、メイン変速クラッチ(2)と第一高低変速クラッチ(3)との組み合わせで複数段の変速段数(M)を確保し、この複数の変速段数(M)と第二高低変速クラッチ(4)の低側との組み合わせによる第一変速レンジ(N1)と、複数の変速段数(M)と第二高低変速クラッチ(4)の高側との組み合わせによる第二変速レンジ(N2)においては、一部の変速領域が重なっている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成では、高低変速クラッチは、高低二段変速の第一高低変速クラッチ(3)と高低二段変速の第二高低変速クラッチ(4)の2個が配置されているので、変速段数が二倍となる。これにより、エンジン10の高出力回転数を使って超低速走行から高速走行まで行え、比較的小さなエンジンで効率良く作業が行える効果がある。
【0010】
請求項2の構成では、請求項1の効果に加え、メイン変速クラッチ(2)と第一高低変速クラッチ(3)との組み合わせで複数段の変速段数(M)を確保し、この複数の変速段数(M)と第二高低変速クラッチ(4)の低側との組み合わせによる第一変速レンジ(N1)と、複数の変速段数(M)と第二高低変速クラッチ(4)の高側との組み合わせによる第二変速レンジ(N2)においては、一部の変速領域が重なっている。
【0011】
これにより、第一変速レンジ(N1)で作業走行しているときに、第二変速レンジ(N2)の作業速度の一部が必要になっても、わざわざ第二変速レンジ(N2)に切り替える必要がない。また、第二変速レンジ(N2)で作業走行しているときに、第一変速レンジ(N1)の作業速度の一部が必要になっても、わざわざ第一変速レンジ(N1)に切り替える必要がない。したがって、能率の良い操作と作業走行が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、この発明の実施形態を説明する。
図1は、駆動力の伝動機構を内装するトラスミッション1の断面展開図で、エンジン10から前輪8と後輪9からなる走行装置とPTO駆動軸7及び油圧ポンプ6への動力伝動構成を示している。
【0013】
エンジン10の出力軸に直結した入力軸11には、2個のギア12,13を固着し、一方のギア12を前後進切換クラッチ18の前進ギア16と噛み合わせ、他方のギア13をポンプ軸14のギア15を介して前後進切換クラッチ18の後進ギア17と噛み合わせている。前後進切換クラッチ18を正転側或いは逆転側に入れるとメインクラッチ軸19が回転する。
【0014】
メインクラッチ軸19の回転は、メインクラッチ軸19にスプライン嵌合するギア20が一・三速クラッチ軸34にスプライン嵌合のギア21と二・四速クラッチ軸35にスプライン嵌合のギア22に噛み合い、一・三速クラッチ軸34と二・四速クラッチ軸35に伝動される。ギア21とギア22に歯数を同じにして、一・三速クラッチ軸34と二・四速クラッチ軸35の回転速度が同じになるようにすると、一・三速クラッチ24と二・四速クラッチ23を同一のものでよい。また、一・三速クラッチ軸34と二・四速クラッチ軸35をメインクラッチ軸19の両方或いはどちらか一方を上側に配置することで、一・三速クラッチ24と二・四速クラッチ23の作動構成をトランスミッション1の上側に設けられ、組立が容易になる。このトランスミッション1の上側は油圧バルブを取り付けるメタルブロックでケースを覆う。
【0015】
一・三速クラッチ軸34に装着の一・三速クラッチ24を一速側に入れるとギア25がメイン軸27にスプライン嵌合のギア26に伝動してメイン軸27を回転し、一・三速クラッチ24を三速側に入れるとギア30がメイン軸27にスプライン嵌合のギア31に伝動してメイン軸27を回転する。
【0016】
また、二・四速クラッチ軸35に装着の二・四速クラッチ23を二速側に入れるとギア28がメイン軸27にスプライン嵌合のギア29に伝動してメイン軸27を回転し、二・四速クラッチ23を三速側に入れるとギア32がメイン軸27にスプライン嵌合のギア33に伝動してメイン軸27を回転する。
【0017】
一・三速クラッチ24と二・四速クラッチ23が本発明のメイン変速クラッチ2に相当する。
メイン軸27にスリーブ43で第一高・低クラッチ軸36を連結している。この第一高・低クラッチ軸36には第一高・低クラッチ3を装着し、第一高・低クラッチ3を高速側に入れるとギア38が第一伝動軸40のギア39に少し減速して伝動し、第一高・低クラッチ3を低速側に入れるとギア41が第一伝動軸40のギア42に大きく減速して伝動する。
【0018】
第一伝動軸40にはスリーブ44で第二高・低クラッチ軸45を連結している。この第二高・低クラッチ軸45に装着した第二高・低クラッチ4は、ミッションケースにボルト47で固定した固定筒48と回動筒50がクラッチ板で接離する構成で、回動筒50にギアケース51をボルト52で固定し、このギアケース51に枢支した遊星ギア54を第二高・低クラッチ軸45にスプライン嵌合した太陽ギア53と噛み合わせ、さらに遊星ギア54と一体のギア55を出力ギア56に噛み合わせている。出力ギア56は、第二高・低クラッチ軸45と第二伝動軸57をスプライン嵌合で連結している。
【0019】
従って、第二高・低クラッチ4の回動筒50を固定筒48に一体化するクラッチ入にすると、太陽ギア53の回転が遊星ギア54とギア55を介して出力ギア56に伝動され第二伝動軸57が減速されて回転する。また、第二高・低クラッチ4の回動筒50を太陽ギア53に一体化するクラッチ入にすると、太陽ギア53と遊星ギア54、ギア55、出力ギア56が一体となって、第二高・低クラッチ軸45の回転をそのままで第二伝動軸57に高速で伝動される。
【0020】
第二伝動軸57には大小ギア58,59を形成し、大小ギア61,62を形成したギア筒60を回転可能に嵌合している。この第二伝動軸57と平行に設けるベベルギア軸63には、前記大小ギア58,59と噛み合うギア64,66を回転可能に嵌合し、前記大小ギア61,62と噛み合うギア67,69を回転可能に嵌合している。ギア66とギア67は一体に形成している。そして、ギア64とギア66の間に設ける第一シンクロクラッチ65でギア64,66の回転をベベルギア軸63に伝動する。ギア66の回転は、ギア67からギア61に伝動され、さらにギア61とギア筒60で一体に形成したギア62からギア69に伝動される。そして、ギア67とギア69の間に設ける第二シンクロクラッチ68でギア66,69の回転をベベルギア軸63に伝動する。
【0021】
従って、第一シンクロクラッチ65をギア64側にシフトするとギア64の回転が直接ベベルギア軸63に伝動し、第一シンクロクラッチ65をギア66側にシフトするとギア67とギア69が回転する状態になり、そこで第二シンクロクラッチ68をギア67側にシフトするとギア67の回転がベベルギア軸63に伝動し、第二シンクロクラッチ68をギア69側にシフトするとギア69の回転をベベルギア軸63に伝動する。
【0022】
このように、第一シンクロクラッチ65と第二シンクロクラッチ68で構成したサブ変速クラッチ5で三段に変速出来ることになる。
ベベルギア軸63の回転がベベルギア70で後輪9の駆動軸に繋がるベベルギア71に伝動される。
【0023】
以上の説明を要約すると、エンジン10で駆動される入力軸11の回転はまず前後進切換クラッチ18で正転或いは逆転に切り替えられ、二・四速クラッチ23と一・三速クラッチ24からなるメイン変速クラッチ2で4段に変速され、第一高・低クラッチ3で2段に変速され、さらに第二高・低クラッチ4で2段に変速され、最終的に第一シンクロクラッチ65と第二シンクロクラッチ68からなるサブ変速クラッチ5でサブ3段に変速されて、ベベルギア軸63に伝動される。すなわち、入力軸11の回転が4×2×2×3=48段に変速されてベベルギア軸63へ伝動されるのである。
【0024】
非常に多い変速段であるが、この変速段の選択は、自動制御され、メイン変速クラッチ2のメイン四段変速に対して第一高・低クラッチ3の二段変速或いは第二高・低クラッチ4の二段変速を組み合わせて八段変速にしたり、メイン四段変速に対して第一高・低クラッチ3の二段変速と第二高・低クラッチ4の二段変速を組み合わせて十六段変速にしたりする。十六段変速が多すぎて煩雑になる場合には、例えば八段の変速段のみに変速出来るように自動制御する。第一高・低クラッチ3は、遊星ギア54を用いた第二高・低クラッチ4よりも変速比が大きいので、自動制御の変速には第二高・低クラッチ4を使い、第一高・低クラッチ3は手動で変速するようにする。第二高・低クラッチ4の切り換えはメイン四段変速に対応しているが、サブ3段に対応して切り換えるようにしても良い。
【0025】
このように、高低変速クラッチは、高低二段変速の第一高低変速クラッチ3と高低二段変速の第二高低変速クラッチ4の2個が配置されているので、変速段数が二倍となることで、エンジン10の高出力回転数を使って超低速走行から高速走行まで行え、比較的小さなエンジンで効率良く作業が行える効果がある。
【0026】
また、図4に示すように、メイン変速クラッチ2と第一高低変速クラッチ3との組み合わせで複数段の変速段数Mを確保し、この複数の変速段数Mと第二高低変速クラッチ4の低側との組み合わせによる第一変速レンジN1と、複数の変速段数Mと第二高低変速クラッチ4の高側との組み合わせによる第二変速レンジN2においては、一部の変速領域が重なっている。前述のごとく、変速段数が多いので、重なっていても問題はない。
【0027】
これにより、第一変速レンジN1で作業走行しているときに、第二変速レンジN2の作業速度の一部が必要になっても、わざわざ第二変速レンジN2に切り替える必要がない。また、第二変速レンジN2で作業走行しているときに、第一変速レンジN1の作業速度の一部が必要になっても、わざわざ第一変速レンジN1に切り替える必要がない。したがって、能率の良い操作と作業走行が可能となる。
【0028】
前輪8への伝動は、次のようになされる。ベベルギア軸63には、前輪駆動用ギア85がスプライン嵌合され、このギア85が第三PTO駆動軸72に遊嵌したギア73に噛み合い、ギア73と一体にしたギア74が前輪クラッチ75を装着する前輪クラッチ軸76に遊嵌したギア77と噛み合っている。
【0029】
ギア77と一体のギア78が前輪クラッチ軸76に併設したカウンタギア軸79のギア80と噛み合い、カウンタギア軸79の別のギア81が前輪クラッチ軸76に遊嵌したギア82に噛み合っている。
【0030】
前輪クラッチ75は、ギア78とギア82の間で接離して後輪駆動、前輪駆動、前輪増速駆動にしたりする。
前輪クラッチ軸76はスリーブ83で前輪駆動軸84に連結している。
【0031】
次にPTO駆動軸7の動力伝動を説明する。
前記入力軸10に固着のギア86をカウンタ軸88のギア87に噛み合わせ、カウンタ軸88の別のギア89をPTOクラッチ軸90に遊嵌したギア筒91のギア92と噛み合わせている。PTOクラッチ軸90に装着したPTOクラッチ93で動力の断続を行う。PTOクラッチ軸90は、スリーブ94と第一PTO駆動軸95とスリーブ96でPTOギア軸97に連結している。
【0032】
PTOギア軸97には歯数の異なる3つのギア98,99,100を形成し、それぞれクラッチ軸106に遊嵌したギア101,103,105と噛み合わせ、クラッチ102,104で伝動ギアを変更して変速する。クラッチ軸106はスリーブ107でギア軸108を連結している。
【0033】
ギア軸108に端部を遊嵌してクラッチ軸117を設け、このクラッチ軸117に遊嵌したギア115へ前記ギア軸108のギア109からカウンタギア112、110,116で伝動し、ギア108とギア115の間に設ける正逆クラッチ111でギア軸108の回転をクラッチ軸117に伝動する。
【0034】
クラッチ軸117の端部に第三PTO駆動軸72に遊嵌するクラッチギア123をスプライン嵌合し、このクラッチギア123と前記ギア74との間に設けるクラッチ118で第三PTO駆動軸72への伝動を断続する。
【0035】
第三PTO駆動軸72の他端にはスリーブ119でギア121のギア軸120を連結し、ギア121をPTO駆動軸7のギア122に噛み合わせている。
上記トラスミッション1を備えたトラクタは、図2に示すように、車体前部のボンネット130内部にエンジン10を搭載し、このエンジン10の回転動力をトラスミッション1内の伝動機構に伝え、適宜減速された回転動力を左右前輪8、8及び左右後輪9、9へ伝える構成とし、車体の中央にオペレータが搭乗するキャビン131を備えている。車体の後部には、ロアリンク132とトップリンク133で構成した三点リンク機構を設けて、この三点リンク機構に各種作業機を連結できる構成となっている。
【0036】
図3に示すごとく、キャビン7の内部には、操縦席135の前側にはステアリングハンドル134を立設するハンドルコラム138を設け、そのハンドルコラム138の左側下部に前後進レバー136を設けている。操縦席135の左側には駐車ブレーキレバー139と作業機への動力を出力するPTO駆動軸7の変速を行う第一PTO変速レバー140と第二PTO変速レバー141とを立設配置している。
【0037】
ステアリングハンドル134の下側床面には、左右の前後輪8,9をそれぞれ制動する左右ブレーキペダル142,143と四輪全てを一斉に制動する全ブレーキペダル144を設け、その後右側にエンジンの回転を制御するアクセルペダル145を設けている。このアクセルペダル145は走行速度を調整するために使用する。
【0038】
なお、左右ブレーキペダル142,143を同時に踏込むと、ブレーキ制動すると共に主変速を変速段を低速側へ変速してエンジンブレーキも作用させる。また、左右ブレーキペダル142,143を所定限界踏込み量以上に踏込むと、エンジン回転数を低下させると共に前後進切換クラッチ18や第一高・低クラッチ軸36或いは第二高・低クラッチ4を中立にして前後輪8,9への動力伝動とPTO駆動軸7への動力伝動を断つようにしても良い。この際に、左右ブレーキペダル142,143を戻す方向に操作すれば、エンジン回転を復帰させ、前後輪8,9への動力伝動とPTO出力軸7への動力伝動を復帰させた後にブレーキを解除するようにする。
【0039】
ステアリングハンドル134の前側には、走行速度を表示するメータパネルや作業機の使用状況等を表示する操作パネルを配置したフロントパネル146を設けている。
操縦席135の右側には、スロットルレバー147を立設し、最手前のアイドリング位置から前側に倒すとエンジンの回転が上昇する。このスロットルレバー147は作業時のエンジン回転数を設定する際に使用する。148はシーソー式の第一エンジン回転記憶スイッチで、上側に倒すと第一の記憶回転数になり下側に倒すと第二の記憶回転数になり、指を離すと中立位置に戻る。149はシーソー式の第二エンジン回転記憶スイッチで、上側に倒すと回転数が上昇し下側に倒すと回転数が低下し、スイッチを放した時点の回転数が記憶される。回転数の設定は、第一エンジン回転記憶スイッチ148を上側或いは下側に倒して第二エンジン回転記憶スイッチ149で上側或いは下側へ倒して回転数を上昇或いは降下させて両スイッチ148,149を放すとそのときの回転数が記憶される。
【0040】
スロットルレバー147の隣に副変速レバー150を立設している。この副変速レバー150の変速は、低速、中速、高速の三段と路上走行の変速位置が有り、低速、中速、高速の三段でトラスミッション1内の第一シンクロクラッチ65と第二シンクロクラッチ68を低速・中速・高速に変速する。
【0041】
主変速は二・四速クラッチ23と一・三速クラッチ24の油圧制御による四段変速と同じく油圧制御による第一高・低クラッチ3と第二高・低クラッチ4のそれぞれ高・低二段変速の組み合わせで計十六段の変速段数を有し、その変速段による平均車速は、前記副変速レバー150の低速・中速・高速と組み合わせて、合計四十八段の変速段となる。主変速の変速段の変更は、別に設ける走行変速昇降スイッチで行う。
【0042】
153と154は、外部油圧取出用のサブコントロールレバーで、作業機の油圧シリンダ等へ油圧オイルを供給する場合に使用する。155と156は、予備のサブコントロールレバー取付用溝である。157は、ドラフト比調整ダイアルで、左に回すとポジション側となって、負荷に対する作業機の昇降変化量が少なくなり耕耘深さを浅くし、逆に右に回すとドラフト側となって、負荷に対する作業機の昇降変化量が大きくなり耕耘深さを深くする。
【0043】
158は、上げ調整ダイアルで、左に回すと三点リンクの上昇高さが低くなる。作業機によっては最も高く上げるとトラクタ本体に当たる場合やあまり高く上げない方が作業効率が良い場合に、この上げ調整ダイアル158で調整する。159は、傾き調整ダイアルで、左に回すと作業機が右上がりになり、逆に右に回すと作業機が右下がりになる。
【0044】
160は、四WD切替スイッチで、走行ローダとスーパーフルターン及び二WDターンの位置があり、走行ローダでは通常は二WDでぬかるみや急な坂道或いは凹凸道になると自動的に四WDに切り換わり、又ブレーキを掛けたり運転中に停止しても四WDの状態になる。二WDは後輪の二輪駆動で、四WDは前後四輪の駆動である。スーパーフルターンは四WDの時の旋回で前輪の速度が増速されてクイックな旋回が可能になり、二WDターンでは四WDの時の旋回で前輪の駆動が抜かれて後輪の片ブレーキ旋回となり、固い圃場でクイックでスムースな旋回が出来る。
【0045】
161は水平シリンダの昇降スイッチで、三点リンクの水平シリンダを動かすことが出来て作業機の着脱に使用する。162はPTOスイッチで、押して右に回すとPTOクラッチが入り、入った状態で押すと自動で左に回りPTOクラッチが切れる。163はPTO自動スイッチで、左に回すと手動になりクラッチを入れていると常時回転し、右に回すと自動になり走行クラッチを踏んだり三点リンクを上げると回転が止まる。このPTO自動スイッチ163は、主に水田作業時に利用する。
【0046】
164はデフロックスイッチで、外側へ一度押すとデフロックになりもう一度外へ押すとデフロック解除になる。内側には押せなく、外側へ押す度に切り換わる。
165は作業機昇降レバーで、前側が下降で後側が上昇になる。166は作業機昇降スイッチで、後側を1回押すことで前記上げ調整ダイアル158で設定した最上位置に上昇し、前側を1回押すことで作業機昇降レバー165で設定した位置まで下降する。
【0047】
167と168は始動変速段を設定する走行変速昇降スイッチで、走行変速上昇スイッチ167を1回押す毎に始動変速段をシフトアップし、走行変速降下スイッチ168を1回押す毎に始動変速段をシフトダウンする。この走行変速昇降スイッチ167,168は、前記副変速レバー150を路上走行にした場合にも同様に副変速が高速で主変速が3速を基準にして始動変速段を上に変更する。
【0048】
169はスイッチボックスで、蓋を開けると、各種調整スイッチを配置している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】トラスミッション内の展開図である。
【図2】トラクタの全体側面図である。
【図3】トラクタの一部拡大平面図である。
【図4】第一変速レンジと第二変速レンジを示す模式図
【符号の説明】
【0050】
1 トランスミッション
2 メイン変速クラッチ
3 第一高低変速クラッチ
4 第二高低変速クラッチ
5 サブ変速クラッチ
8 走行装置
9 走行装置
10 エンジン
18 前後進切換スイッチ
M 複数段の変速段数
N1 第一変速レンジ
N2 第二変速レンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(10)の回転を走行装置(8),(9)に伝動するトランスミッション(1)内において、前後進切換クラッチ(18)とメイン変速クラッチ(2)とサブ変速クラッチ(5)を直列に配置する構成とし、さらに、該メイン変速クラッチ(2)とサブ変速クラッチ(5)との間には、高低二段変速の第一高低変速クラッチ(3)と高低二段変速の第二高低変速クラッチ(4)を配置したことを特徴とする作業車両の走行伝動装置。
【請求項2】
前記メイン変速クラッチ(2)と第一高低変速クラッチ(3)との組み合わせで複数段の変速段数(M)を確保し、該複数の変速段数(M)と第二高低変速クラッチ(4)の低側との組み合わせで第一変速レンジ(N1)を構成し、複数の変速段数(M)と第二高低変速クラッチ(4)の高側との組み合わせで第二変速レンジ(N2)を構成し、該第一変速レンジ(N1)と第二変速レンジ(N2)の一部の変速領域を重ならせるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の走行伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−287716(P2009−287716A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142416(P2008−142416)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】