説明

作業車両

【課題】エンジンの冷却効率の低下を抑えることができる作業車両を提供する。
【解決手段】本発明に係る作業車両1は、エンジンと、ラジエータ15と、送風装置16と、車両本体2と、案内部材33とを備える。ラジエータ15は、エンジンの後方に配置され、エンジンを冷却するためのものである。送風装置16は、ラジエータ15を通る空気の流れを生成する装置である。車両本体2は、ラジエータ15と送風装置16とが収納される第2収納空間S3を内部に有し、外部から第2収納空間S3に取り込まれる空気が通る吸込口23が背面に設けられており、ラジエータ15を通り第2収納空間S3から外部へ吹き出される空気が通る第1側部吹出口21、第2側部吹出口22が側面に設けられている。そして、案内部材33は、第1側部吹出口21、第2側部吹出口22から斜め上方へ向けて吹出されるように空気を案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールローダーなどの作業車両は、エンジンを冷却するためのラジエータと、送風装置とを備えている。ラジエータは、作業車両の車両本体内に設けられた収納空間に収納されている。また、車両本体の背面には、空気を収納空間に取り入れるための吸込口が設けられており、車両本体の側面には、空気を収納空間から外部へ排出するための吹出口が設けられている。そして、送風装置の作用により、吸込口から外部の空気が収納空間内に吸い込まれ、ラジエータを通り、車両本体の側面に設けられた吹出口から外部へ吹出される。
【特許文献1】特開平8−276755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような作業車両では、吹出口から吹出された高温の空気が吸込口から再び収納空間に吸込まれる恐れがある。特に、作業車両の前進走行時には、吹出口から吹出された空気は、車両本体の後方へ向けて流れるため、車両本体の背面に設けられた吸込口から吸い込まれ易い。吹出口から吹出された高温の空気が吸込口から吸い込まれると、エンジンの冷却効率が低下してしまう。
【0004】
本発明の課題は、エンジンの冷却効率の低下を抑えることができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係る作業車両は、エンジンと、ラジエータと、送風装置と、車両本体と、案内部材とを備える。ラジエータは、エンジンの後方に配置され、エンジンを冷却するためのものである。送風装置は、ラジエータを通る空気の流れを生成する装置である。車両本体は、ラジエータと送風装置とが収納される収納空間を内部に有し、外部から収納空間に取り込まれる空気が通る吸込口が背面に設けられており、ラジエータを通り収納空間から外部へ吹き出される空気が通る吹出口が側面に設けられている。そして、案内部材は、吹出口から斜め上方へ向けて吹出されるように空気を案内する。
【0006】
この作業車両では、空気が吹出口から斜め上方へ向けて吹き出される。このため、空気が吹出口から水平に吹き出される場合と比べて、吹出口から吹き出された後に吸込口に吸い込まれる高温の空気を低減させることができる。これにより、エンジンの冷却効率の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、空気が吹出口から水平に吹き出される場合と比べて、吹出口から吹き出された後に吸込口に吸い込まれる高温の空気を低減させることができる。これにより、エンジンの冷却効率の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態に係る作業車両1を図1および図2に示す。この作業車両1は、ホイールローダーであり、タイヤ4a,4bが回転駆動されることにより自走可能であると共に作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。なお、図1は、作業車両1を斜め後方から見た外観斜視図であり、図2は、作業車両1の後部の内部構造を示す図である。
【0009】
〔外観構成〕
この作業車両1は、車両本体2、作業機3、タイヤ4a,4bを備えている。
【0010】
車両本体2の前部には、作業機3および一対のフロントタイヤ4aが取り付けられている。作業機3は、油圧ポンプ(図示せず)からの圧油によって駆動される装置であり、車両本体2の前部に装着されたリフトアーム6と、リフトアーム6の先端に取り付けられたバケット7と、これらを駆動する作業機シリンダ8とを有する。
【0011】
車両本体2の中央には運転室5が載置されている。運転室5の内部には、オペレータが着座するシートや各種の操作装置が設けられている。
【0012】
車両本体2の後部は、タンク10、エンジンフード11、背面グリル12、車体フレーム13(図2参照)などによって構成されており、後述するエンジン14、ラジエータ15、送風装置16などを収納する収納空間S1(図2参照)が内部に設けられている。
【0013】
タンク10は、運転室5の後方に配置されており、作業機3を駆動するための作動油を内部に貯留する。
【0014】
エンジンフード11は、タンク10の後方に配置されており、収納空間S1の上方および両側方を覆う部材である。なお、図2に示すように、収納空間S1は隔壁29によって前後に仕切られており、第1収納空間S2と第2収納空間S3とに分けられている。エンジンフード11の上面からは、エアクリーナー17や排気管18が上方へ突出している。エンジンフード11の上面には、第2収納空間S3と連通する上部吹出口19が設けられている。上部吹出口19は、格子状の部材によって複数のスリット状に区切られている。また、エンジンフード11の両側面には、第2収納空間S3と連通する側部吹出口21,22が設けられている。図3に示すように、車両本体2の右側面に設けられる側部吹出口21を以下、「第1側部吹出口21」と呼ぶ。また、車両本体2の左側面に設けられる側部吹出口22を以下、「第2側部吹出口22」と呼ぶ。第1側部吹出口21は、水平方向に延びる複数のスリット状に区切られている。第2側部吹出口22も第1側部吹出口21と同様の構造である。なお、図3は、図2におけるIII−III断面図である。
【0015】
背面グリル12は、エンジンフード11の後方に設けられており、第2収納空間S3の後方を覆う部材である。背面グリル12には、第2収納空間S3に連通する吸込口23が設けられている。なお、吸込口23は、格子状の部材によって複数のスリット状に区切られている。また、背面グリル12は、上端部を中心に回動可能に設けられており、第2収納空間S3を開閉することができる。
【0016】
車体フレーム13は、タンク10、エンジンフード11、背面グリル12などを支持しており、収納空間S1の下方を覆っている。車体フレーム13の後端部にはバンパー24が設けられており、バンパー24の上面は、上述した背面グリル12の下端部と概ね同じ高さに位置している。なお、車体フレーム13の両側方には、リアタイヤ4bがそれぞれ設けられている。
【0017】
〔内部構成〕
図2に示すように、作業車両1の収納空間S1には、エンジン14、ラジエータ15、送風装置16が収納されている。
【0018】
エンジン14は、前側に位置する第1収納空間S2に収納されている。
【0019】
ラジエータ15は、冷却液を循環させることにより、エンジン14を冷却する装置である。ラジエータ15は、エンジン14の後方に配置されており、第2収納空間S3に収納されている。
【0020】
また、背面グリル12と対向するラジエータ15の後方にはアフタークーラ41やオイルクーラ42などの冷却用機器が配置されている。アフタークーラ41は、エンジン14の性能を向上させるために、エンジン14に対して供給された圧縮空気を冷却する。オイルクーラ42は、油圧機器に供給される作動油を冷却する。
【0021】
送風装置16は、図示しないモータと、冷却ファン27とを有している。冷却ファン27は、モータによって回転駆動される。送風装置16は、冷却ファン27を回転駆動することにより、ラジエータ15を通る空気の流れを生成する。送風装置16は、ラジエータ15とエンジン14との間に配置されている。
【0022】
上述した第1側部吹出口21は、ラジエータ15よりも前方であり且つ隔壁29よりも後方に位置しており、冷却ファン27の側方において冷却ファン27と対向する位置に配置されている。第1側部吹出口21は、第1吹出口31と第2吹出口32とを有する。第1吹出口31と第2吹出口32とは上下に並んで配置されており、第1吹出口31が上側に配置され、第2吹出口32が下側に配置されている。第1吹出口31の上端部は、吸込口23の上端部と概ね同じ高さに位置している。また、第2吹出口32の下端部は、吸込口23の下端部およびバンパー24の上面より僅かに上方に位置している。
【0023】
また、図3に示すように、第1側部吹出口21および第2側部吹出口22の内側には、複数の案内部材33が設けられている。案内部材33は、空気が第1側部吹出口21および第2側部吹出口22から斜め上方へ向けて吹出されるように空気を案内する部材である。案内部材33は、それぞれ板状の部材であり、上下方向に距離を隔てて互いに平行に配置されている。案内部材33は、内側端部が外側端部よりも下方に位置するように傾斜して配置されており、これにより、斜め上方へ向けて空気を案内することができる。案内部材33は、例えば、水平方向に対して45度の角度で傾斜している。なお、図3においては、一部の案内部材33にのみ符号を付して他は省略している。
【0024】
〔特徴〕
この作業車両1では、送風装置16が駆動されると、車両本体2の背面に設けられた吸込口23から第2収納空間S3へ空気が取り込まれる。第2収納空間S3に取り込まれた空気は、ラジエータ15を後方から前方へと通過する。これにより、ラジエータ15の冷却液が冷却される。ラジエータ15を通過した空気は、上方と両側方とに別れ、上部吹出口19および第1側部吹出口21、第2側部吹出口22から外部へ吹き出される。
【0025】
ここで、作業車両1における空気の吹出しを模式的に示した図を図4に示す。この図4では、所定速度で前進している作業車両1において、上部吹出口19、第1側部吹出口21、第2側部吹出口22から吹き出される空気の流れを2点鎖線で示している。また、比較例として、空気が第1側部吹出口21、第2側部吹出口22から水平方向に吹き出される場合の空気の吹出しを模式的に示した図を図5に示す。この比較例に係る作業車両100では、案内部材33が設けられていないことを除いて図4の作業車両1と同じ条件が用いられている。
【0026】
図4および図5から分かるように、本実施形態に係る作業車両1では、第1側部吹出口21、第2側部吹出口22から吹き出された空気は、車両本体2の後方へ流れるが、バンパー24の下方までは回りこまない。これによって、吸込口23の下部近傍において高温の空気が流れない空間が確保されている。これに対して、比較例に係る作業車両100では、第1側部吹出口21、第2側部吹出口22から吹き出された高温の空気は、バンパー24の下方まで回りこんでいる。また、吸込口23の上下方向の全体が高温の空気によって覆われている。
【0027】
以上のように、この作業車両1では、第1側部吹出口21、第2側部吹出口22から吹き出された後に吸込口23に吸い込まれる高温の空気を低減させることができる。これにより、エンジン14の冷却効率の低下を抑えることができる。
【0028】
〔他の実施形態)
(a)
上記の実施形態においては、第1側部吹出口21に20枚の案内部材33が設けられ、第2側部吹出口22にも20枚の案内部材33が設けられており、合計で40枚の案内部材33が設けられているが、案内部材33の数はこれに限られるものではない。
【0029】
また、案内部材33の傾斜角度も上記のものに限られない。
【0030】
(b)
上記の実施形態では、第1側部吹出口21が第1吹出口31と第2吹出口32とに分けられているが、第1側部吹出口21の形状はこれに限られない。例えば、第1側部吹出口21が一体的に構成されてもよい。第2側部吹出口22についても同様である。
【0031】
また、上記の実施形態では、第1側部吹出口21および第2側部吹出口22は、水平方向に延びる複数のスリット状に仕切られているが、第1側部吹出口21および第2側部吹出口22の形状はこれに限られない。例えば、第1側部吹出口21および第2側部吹出口22が格子状に仕切られてもよい。
【0032】
(c)
上記の実施形態では、案内部材33が水平方向に対して45度の角度で傾斜しているが、案内部材33の傾斜角度はこれに限られず、上記と異なる角度で配置されてもよい。
【0033】
(d)
上記の実施形態では、作業車両1としてホイールローダーが例示されているが、他の作業車両に対しても本発明の適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、エンジンの冷却効率の低下を抑えることができる効果を有し、作業車両として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】作業車両の外観斜視図。
【図2】作業車両の内部構成を示す側面図。
【図3】作業車両の内部構成を示す図2におけるIII−III断面図。
【図4】本実施形態に係る作業車両における吹き出し空気の流れを模式的に示す図。
【図5】比較例に係る作業車両における吹き出し空気の流れを模式的に示す図。
【符号の説明】
【0036】
1 作業車両
2 車両本体
14 エンジン
15 ラジエータ
16 送風装置
21 第1側部吹出口(吹出口)
22 第2側部吹出口(吹出口)
23 吸込口
33 案内部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの後方に配置され前記エンジンを冷却するためのラジエータと、
前記ラジエータを通る空気の流れを生成する送風装置と、
前記ラジエータと前記送風装置とが収納される収納空間を内部に有し、外部から前記収納空間に取り込まれる空気が通る吸込口が背面に設けられており、前記ラジエータを通り前記収納空間から外部へ吹き出される空気が通る吹出口が側面に設けられた車両本体と、
前記吹出口から斜め上方へ向けて吹出されるように空気を案内する案内部材と、
を備える作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−113744(P2009−113744A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291622(P2007−291622)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】