説明

作業車両

【課題】本発明は、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油が過度に高温になることを抑制可能な作業車両を提供することを目的とする。
【解決手段】作業車両は、走行用油圧アクチュエータ17と、走行用油圧アクチュエータ17を駆動するための走行用油圧ポンプ4と、走行用油圧ポンプ4により走行用油圧アクチュエータ17を駆動させるための走行用油圧回路の作動油が戻される第1貯留部T1と、作業用油圧アクチュエータ6と、作業用油圧アクチュエータ6を駆動するための作業用油圧ポンプ3と、第1貯留部T1とは別に形成され、作業用油圧ポンプ3に供給される作動油が貯留される第2貯留部T2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用油圧アクチュエータ及び作業用油圧アクチュエータを備える作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行用油圧アクチュエータ及び作業用油圧アクチュエータを備える作業車両として、特許文献1に記載のものが知られている。
特許文献1に記載の上部旋回式油圧走行車両は、作業用油圧ポンプを油圧源として作業用油圧アクチュエータを駆動する作業用油圧回路と、走行用油圧モータと走行用油圧ポンプとをスイベルジョイントを介して接続した閉回路の走行回路と、油タンクとを備える。作業用油圧回路及び走行回路には前記油タンクの油が吸い上げられる。また、作業用油圧回路のアクチュエータから出た戻り油及び走行回路からの余剰油は当該油タンクに戻る。
この構成によれば、一の油タンクの油により、走行用油圧アクチュエータ及び作業用油圧アクチュエータの駆動が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−347083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、一の油タンクの油を走行用油圧アクチュエータと作業用油圧アクチュエータとの両方に供給するとともに、当該両方のアクチュエータからのリターン油が当該一の油タンクに排出される構成を、例えば、油圧シリンダにより伸縮される伸縮ブームを搭載した油圧走行式のクレーン等に適用すると、次の問題が生じる。
【0005】
伸縮ブームを搭載した油圧走行式のクレーンにおいては、走行後に油圧シリンダを駆動させて伸縮ブームを伸ばす場合、走行用油圧アクチュエータの駆動により高温になった作動油が、油圧シリンダに供給されることになる。この場合、時間の経過により作動油の温度が低下するにつれて、当該作動油が熱収縮しようとする。
ここで、通常、伸縮ブームは複数の単位ブームが入れ子状に配置されて構成され、当該複数の単位ブームは互いにスライディングパッドを介して接触している。そのため、作動油の温度が低下してもスライディングパッドの静摩擦力により、すぐに伸縮ブームが縮むことはなく、その結果、油圧シリンダ内に負圧が発生することになる。そして、油圧シリンダ内の負圧による収縮力が単位ブーム間の静摩擦力を超えると、一気に油圧シリンダが縮んでしまう。これにより、大きな衝撃音が発生するとともに、伸縮機構のみならずブーム自体の破損を招く虞がある。
【0006】
また、ブームの伸縮用の油圧シリンダに限らず、例えば、ブームを起伏するための起伏シリンダにおいても、作動油の温度低下に伴う内部作動油の収縮により、シリンダが縮少して徐々にブームの起伏角度が変化してしまうという問題がある。
【0007】
このように、特許文献1の構成によれば、走行後に作業用油圧アクチュエータを駆動させる場合、走行用油圧アクチュエータの駆動により高温になった作動油が、作業用油圧アクチュエータに供給されてしまう。そして、時間の経過により作動油の油温が低下したときに、作動油が収縮するため、作業用油圧アクチュエータの駆動に支障をきたす虞がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油が過度に高温になることを抑制可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、走行用油圧アクチュエータ及び作業用油圧アクチュエータを備える作業車両に関する。そして、本発明に係る作業車両は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の作業車両は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る作業車両における第1の特徴は、走行用油圧アクチュエータと、前記走行用油圧アクチュエータを駆動するための走行用油圧ポンプと、前記走行用油圧ポンプにより前記走行用油圧アクチュエータを駆動させるための走行用油圧回路の作動油が戻される第1貯留部と、作業用油圧アクチュエータと、前記作業用油圧アクチュエータを駆動するための作業用油圧ポンプと、前記作業用油圧ポンプに供給される作動油が貯留される第2貯留部と、を備え、前記第1貯留部と前記第2貯留部とが分離されていることである。
【0011】
この構成によると、走行時に走行用油圧回路から高温の作動油が戻される第1貯留部と、作業用油圧ポンプに供給する作動油が貯留される第2貯留部とが分離されているので、少なくとも作動油の対流による第1貯留部から第2貯留部への熱伝達が抑制され、作業用油圧ポンプを介して作業用油圧アクチュエータに供給される作動油が過度に高温になることを抑制可能である。
【0012】
また、本発明に係る作業車両における第2の特徴は、第1の特徴を備える作業車両において、前記第1貯留部と前記第2貯留部との間に連通油路を設けたことである。
【0013】
この構成によると、第1貯留部の作動油を第2貯留部に導くことができる。これにより、第2貯留部の作動油不足や、第1貯留部に容量を超えて作動油が供給されることを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明に係る作業車両における第3の特徴は、第2の特徴を備える作業車両において、前記連通油路を、前記第1貯留部の油面の高さよりも低い位置、かつ、前記第2貯留部の油面の高さよりも低い位置に設けたことである。
【0015】
この構成によると、気泡による異音とショックの問題が生じない。すなわち、第1貯留部または第2貯留部の油面の高さよりも高い位置に連通油路を設けた場合、第1貯留部および第2貯留部のうち一方の貯留部から他方の貯留部に導かれた作動油は、他方の貯留部の油面へ落下する。この落下流によって空気粒の巻き込みが作動油中で発生して気泡(油中泡)となる。この気泡がポンプへ吸い込まれると、ポンプ内で気泡がつぶされ、異音とショックが発生する。一方で本発明では連通油路を油面の高さよりも低い位置に設けているので、上記の気泡が発生せず、上記の異音とショックが生じない。
【0016】
また、本発明に係る作業車両における第4の特徴は、第3の特徴を備える作業車両において、前記連通油路が、前記第1貯留部から前記第2貯留部へのみ作動油を流す逆止弁を備えたことである。
【0017】
この構成によると、第2貯留部の作動油は連通油路を通って第1貯留部へ流れ込むことがない。よって、この流れ込みによる第1貯留部の油面上昇がない。したがって、第1貯留部の高温の作動油が連通油路を通って第2貯留部へ過度に流入することが抑制され、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油が過度に高温になることを抑制できる。
【0018】
また、本発明に係る作業車両における第5の特徴は、第4の特徴を備える作業車両において、前記逆止弁が、一定以上の圧力で開くことである。
【0019】
この構成によると、一定以上の圧力が逆止弁にかからなければ、第1貯留部から第2貯留部へ作動油が流れない。よって、第1貯留部の高温の作動油が連通油路を通って第2貯留部へ過度に流入することがより抑制される。
【0020】
また、本発明に係る作業車両における第6の特徴は、第1〜第5のいずれか1つの特徴を備える作業車両において、前記第1貯留部は、前記走行用油圧回路に供給される作動油が貯留される貯留部であって、当該第1貯留部の容量が、前記第2貯留部の容量よりも小さいことである。
【0021】
この構成によると、走行時に使用される作動油の温度を適温まで迅速に上げることができる。これにより、配管圧損を低減でき、走行燃費をよくすることが可能になる。
【0022】
また、本発明に係る作業車両における第7の特徴は、第2〜第6の特徴を備える作業車両において、前記作業用油圧ポンプにより前記作業用油圧アクチュエータを駆動させるための作業用油圧回路の作動油及び前記走行用油圧回路の作動油を前記第1貯留部に戻すための第1リターン油路と、前記作業用油圧回路の作動油を前記第2貯留部に戻すための第2リターン油路と、を備え、前記第1リターン油路及び前記第2リターン油路のうち前記第1リターン油路にのみ作業油を冷却する冷却手段を設けたことである。
【0023】
この構成によると、作業用油圧回路及び走行用油圧回路の作動油を、第1リターン油路に設けられた冷却手段により冷却して第1貯留部に戻すことができる。これにより、複数の冷却手段を作業用油圧回路及び走行用油圧回路から貯留部へ戻る油路に設けなくとも、当該作業用油圧回路及び走行用油圧回路から貯留部に戻る作動油を冷却することができる。結果として、冷却手段の設置スペース及び設置コストの削減が可能になる。
【0024】
また、本発明に係る作業車両における第8の特徴は、第1〜第7の特徴を備える作業車両において、前記第1貯留部と前記第2貯留部との間には空間が形成されていることである。
【0025】
この構成によると、第1貯留部と第2貯留部との間に空間がない場合に比べ、第1貯留部と第2貯留部との間がより断熱される。よって、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油が過度に高温になることをより確実に防止できる。
【0026】
また、本発明に係る作業車両における第9の特徴は、第2〜第7の特徴を備える作業車両において、前記第1貯留部及び前記第2貯留部は、一のタンクの内部の貯留空間を断熱構造を有する仕切り板により区画して形成され、前記連通油路は、前記仕切り板に形成された貫通孔であることである。
【0027】
この構成によると、2つの貯留部間の仕切り板を断熱構造とすることで、一の貯留部から他の貯留部への伝熱を低減することができ、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油が過度に高温になることをより確実に防止できる。また、連通油路を、仕切り板に形成した貫通孔として構成することで、連通油路を簡易に形成できる。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明に述べたように、特に、走行用油圧回路の作動油が戻される第1貯留部と、作業用油圧ポンプに供給される作動油が貯留される第2貯留部とが分離されている構成により、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油が過度に高温になることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るラフテレーンクレーンの油圧回路構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るラフテレーンクレーンの油圧回路構成図である。
【図3】タンクT1,T2を連結する連通油路の構成を模式的に示す図である。
【図4】変形例1の図3相当図である。
【図5】変形例2の連通油路周辺を示す油圧回路構成図である。
【図6】変形例2の図3相当図である。
【図7】変形例3の図5相当図である。
【図8】変形例3の図3相当図である。
【図9】変形例4の図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
以下の実施形態においては、伸縮ブームを備えるラフテレーンクレーン(作業車両)に本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るラフテレーンクレーンの油圧回路構成図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るラフテレーンクレーンは、原動機1を備えている。そして、この原動機1により動力分配機2を介して作業用油圧ポンプ3及び走行用油圧ポンプ4が駆動される。
【0032】
また、このラフテレーンクレーンは、作動油を貯留する二つのタンクT1,T2を備えている。タンクT1(第1貯留部)は、走行時に使用する作動油を貯留するタンクであり、タンクT2(第2貯留部)は、クレーン作業時に使用する作動油を貯留するタンクである。当該二つのタンクT1,T2は、両タンク間で断熱された状態となるように配置されている。尚、本実施形態においては、タンクT1の容量は約150Lであり、タンクT2の容量は約350Lである。
【0033】
<作業用油圧回路>
作業用油圧ポンプ3は、作業ポンプ用レギュレータ5によって傾転角が制御される可変容量型ポンプとして構成される。当該作業用油圧ポンプ3がサクション油路30を介してタンクT2から吸い上げた作動油により、ブーム伸縮用の油圧シリンダ6(作業用油圧アクチュエータ)が駆動される。
【0034】
作業ポンプ用レギュレータ5は、コントローラ7によって制御される電磁切換弁8を介してパイロット圧源9に接続される。そして、コントローラ7には、走行速度を測定する速度センサ10によって検出される走行速度情報が送信されるように構成される。コントローラ7は、当該速度センサ10からの走行速度情報に基づいて電磁切換弁8を切り換えて、パイロット圧源9と作業ポンプ用レギュレータ5とを連通又は遮断する。これにより作業ポンプ用レギュレータ5の作動ストロークが変化してポンプ傾転角の大小が制御される。具体的には、コントローラ7は、速度センサ10からの走行速度情報に基づいて、走行速度が10km/hを超えると、パイロット圧源9と作業ポンプ用レギュレータ5とを連通させるように電磁切換弁8を切り換える。これにより、車両走行時にはポンプ傾転角が小さくなるように、作業用油圧ポンプ3の傾転角が制御される。
尚、作業スイッチのON/OFFやクレーンの操作レバーのリモコン圧などによって、電磁切換弁8を切り換えてもよい。
【0035】
この作業用油圧ポンプ3を油圧源として油圧シリンダ6を駆動するための作業用油圧回路には、切換弁11と、カウンターバランス弁12と、リリーフ弁13とが設けられている。
【0036】
切換弁11は、作業用油圧ポンプ3と油圧シリンダ6との間に配置された、3位置6ポートの切換弁である。
切換弁11における作業用油圧ポンプ3側の3つのポートには、作業用油圧ポンプ3に連通する油路31と、当該油路31から分岐する油路32と、リターン油路34に連通する油路33とがそれぞれ接続されている。尚、リターン油路34は、タンクT2に連通する油路である。
【0037】
また、切換弁11における油圧シリンダ6側の3つのポートには、リターン油路34に連通する油路35と、カウンターバランス弁12を介して油圧シリンダ6のボトム室6aに連通する油路36と、カウンターバランス弁12を介して油圧シリンダ6のロッド室6bに連通する油路37とがそれぞれ接続されている。
【0038】
カウンターバランス弁12は、油路36に介設されたチェック弁12aと、当該チェック弁12aを迂回する油路に設けられたリリーフ弁12bと、リリーフ弁12bに油路37からのパイロット圧を作用させるパイロット油路12cと、を有して構成される。この、リリーフ弁12bは、パイロット油路12cを介して作用するパイロット圧が所定の圧力を超えるとチェック弁12aを迂回する油路を開くように切り換わる。
【0039】
切換弁11は、作業者によるシフトレバーの操作に基づいて、第1位置11a、第2位置11b、第3位置11cのいずれかに切り換えることができる。
第1位置11aにおいては、油路32と油路36とが連通され、油路33と油路37とが連通され、油路31及び油路35が接続されるポートは遮断される。
第2位置11bにおいては、油路31と油路35とが連通され、油路33と油路37とが連通され、油路32及び油路36が接続されるポートは遮断される。
第3位置11cにおいては、油路32と油路37とが連通され、油路33と油路36とが連通され、油路31及び油路35が接続されるポートは遮断される。
【0040】
このような切換弁11の構成により、切換弁11を第1位置11aに切り換えることで、作業用油圧ポンプ3からの圧油がチェック弁12aを介して油圧シリンダ6のボトム室6aに供給されるとともに、ロッド室6bの作動油がリターン油路34に排出される。これにより、油圧シリンダ6を伸長させ、伸縮ブームを伸長させることができる。
一方、切換弁11を第3位置11cに切り換えることで、油路37及びパイロット油路12cにパイロット圧が発生して、リリーフ弁12bが開放される。これにより、作業用油圧ポンプ3からの圧油が油圧シリンダ6のロッド室6bに供給されるとともに、油圧シリンダ6のボトム室6aの作動油がリリーフ弁12bを介してリターン油路34に排出される。これにより、油圧シリンダ6を収縮させ、伸縮ブームを収縮させることができる。
尚、切換弁11が第2位置11bにある場合は、作業用油圧ポンプ3からの作動油は油路31及び油路35を介してリターン油路34に流され、油圧シリンダ6には作動油が供給されない。また、油圧シリンダ6のボトム室6aの作動油の排出経路は遮断されている。そのため、油圧シリンダ6が収縮することはなく、伸縮ブームは所定の長さで保持される。
【0041】
作業用油圧回路のリターン油路34には、オイルクーラー14が設けられる。作業用油圧回路の油圧シリンダ6から排出される作動油や、油路35やリリーフ弁13を介して排出される作動油がこのオイルクーラー14により冷却されてタンクT2に戻る。また、リターン油路34における当該オイルクーラー14よりもタンクT2側には、作動油に混入した不純物を取り除くためのフィルタ15が設けられている。
【0042】
リリーフ弁13は、油路31から分岐する油路38とリターン油路34との間に設けられている。当該リリーフ弁13は、作業用油圧ポンプ3の吐出側の回路の油圧が所定の圧力を超えると、リターン油路34に作動油を開放するように構成される。
【0043】
<走行用油圧回路>
走行用油圧ポンプ4は、双方向型の可変容量型ポンプとして構成されている。尚、当該走行用油圧ポンプ4の傾転角は、図示しない走行用ポンプレギュレータ及び電磁切換弁等を介して、コントローラ7により制御される。そして、当該走行用油圧ポンプ4により、走行用油圧モータ17(走行用油圧アクチュエータ)が駆動される。尚、走行用油圧モータ17には当該走行用油圧モータ17の回転力を減速して走行駆動輪に伝える走行減速機(図示せず)が接続されている。
【0044】
この走行用油圧ポンプ4を油圧源として走行用油圧モータ17を駆動するためのHST(Hydro Static Transmission)システムを構成する走行用油圧回路には、サクション油路40を介してタンクT1から当該走行用油圧回路に油を吸い上げる固定容量型の油補給ポンプ18と、リリーフ弁19と、走行用油圧ポンプ4と走行用油圧モータ17との間の回路41,42の圧力の最大値を規制するオーバーロードリリーフ弁20,20と、油補給ポンプ18からの油の一部を回路41,42に補充するためのチェック弁21,21と、余剰油を回路外に排出するフラッシングバルブ22とが設けられている。
【0045】
また、走行用油圧回路には、走行用油圧ポンプ4からの洩れ油、リリーフ弁19からのリリーフ油、走行用油圧モータ17からの洩れ油及びフラッシングバルブ22からの排出油が流入するリターン油路43が設けられる。このリターン油路43は、合流リターン油路45を介してタンクT1に接続されている。
【0046】
尚、この合流リターン油路45は、リターン油路43と後述する他の走行系油圧システム50からのリターン油路44とからの作動油が合流してタンクT1まで流れる油路である。当該合流リターン油路45には、オイルクーラー23が設けられており、タンクT1に戻る作動油を冷却することができる。また、合流リターン油路45における当該オイルクーラー23よりもタンクT1側には、作動油に混入した不純物を取り除くためのフィルタ24が設けられている。
【0047】
また、ステアリング用油圧アクチュエータ等の他の走行系油圧システム50へもタンクT1から作動油が供給される。当該他の走行系油圧システム50からのリターン油路44は、合流リターン油路45に接続される。尚、図1において、符号50及び符号50’は同一の走行系油圧システムを示している。
【0048】
上記構成において、図示しないシフトレバーが操作されると、その操作信号に基づくコントローラ7からの信号によって走行用油圧ポンプ4の傾転角が増加する。これにより、走行用油圧ポンプ4から吐出された作動油が走行用油圧モータ17に送られて当該走行用油圧モータ17が回転し、車両が走行する。尚、走行時においては、通常、ブームの伸縮動作は行われないため、作業用油圧回路の切換弁11は、第2位置11bで保持される。
【0049】
この走行中、走行用油圧ポンプ4及び走行用油圧モータ17から洩れ出た作動油、リリーフ弁19及びフラッシングバルブ22を介して排出された作動油は、リターン油路43及び合流リターン油路45を介してタンクT1に戻される。また、他の走行系油圧システム50からの作動油もリターン油路44及び合流リターン油路45を介してタンクT1に戻される。
【0050】
一方、このとき走行用油圧ポンプ4とともに作業用油圧ポンプ3が駆動され、当該作業用油圧ポンプ3から吐出された油は、切換弁11の第2位置11bを介して、リターン油路34に流れ、オイルクーラー14で冷却されてタンクT2、さらに作業用油圧ポンプ3へと循環する。ここで、車両の走行時は作業用油圧ポンプ3のポンプ傾転角が小さくなるように制御されるため、作業用油圧ポンプ3とタンクT2との間で循環する作動油の流量は低減される。
【0051】
(本実施形態に係る作業車両の特徴)
以上説明したように、第1実施形態に係るラフテレーンクレーンは、走行用油圧モータ17と、走行用油圧モータ17を駆動するための走行用油圧ポンプ4と、走行用油圧ポンプ4により走行用油圧モータ17を駆動させるための走行用油圧回路の作動油が戻されるタンクT1と、油圧シリンダ6と、油圧シリンダ6を駆動するための作業用油圧ポンプ3と、作業用油圧ポンプ3に供給される作動油が貯留されるタンクT2と、を備えている。そして、タンクT1とタンクT2とは、分離して配置されている。
【0052】
この構成によると、走行時に走行用油圧回路から高温の作動油が戻されるタンクT1と、作業用油圧ポンプ3に供給する作動油が貯留されるタンクT2とが分離されているので、対流による第1貯留部から第2貯留部への熱伝達を抑制することができるとともに、断熱された状態となるように分離されているので、当該熱伝達を更に抑制することができる。これにより、作業用油圧ポンプ3を介して油圧シリンダ6に供給される作動油が過度に高温になることを抑制可能である。
即ち、走行後にクレーン作業を行う際には、温度上昇を抑えられた低温の作動油をタンクT2からブーム伸縮用の油圧シリンダ6に供給することができる。これにより、油圧シリンダ6のボトム室6aの作動油が冷却されボトム室6aに負圧が生じることによる伸縮ブームの縮み量を抑えることが可能になる。
【0053】
また、タンクT1には、走行用油圧回路に供給される作動油が貯留されており、このタンクT1の容量は、タンクT2の容量よりも小さい。
【0054】
この構成によると、走行時に使用されるHSTシステムを構成する走行用油圧回路や、他の走行系油圧システム50には、タンクT1から作動油が供給される。ここで、作動油の温度がある程度高い方が、配管圧損等の動力損失を少なくすることができる。第1実施形態の構成によれば、タンクT1の容量が小さいため、走行時においてタンクT1内の作動油の温度を迅速に上げることができる。これにより、配管圧損を低減でき、走行燃費をよくすることが可能になる。
【0055】
また、作業用油圧ポンプ3は可変容量型の油圧ポンプであって、走行時の傾転角が、非走行時よりも小さくなるようにポンプの傾転角が制御される。尚、当該作業用油圧ポンプ3の傾転角の制御は、作業ポンプ用レギュレータ5、コントローラ7、電磁切換弁8、パイロット圧源9及び速度センサ10を有して構成されるポンプ制御手段によりなされる。
【0056】
この構成によると、走行時において、作業用油圧ポンプ3からの吐出容量が、非走行時よりも小さくなる。したがって、走行時において、走行用油圧ポンプ4とともに作業用油圧ポンプ3が駆動されても、作業用油圧回路とタンクT2とを循環する作動油の流量を減少させることができる。これにより、作業用油圧回路及びタンクT2における作動油の温度が上昇することを抑制可能である。
【0057】
また、本実施形態に係るラフテレーンクレーンは、起伏自在に設けられた伸縮ブームと、作業用油圧アクチュエータとしての当該伸縮ブームを伸縮させるための油圧シリンダ6とを備える伸縮ブーム付き油圧走行作業車両である。
【0058】
ブーム伸縮用の油圧シリンダ6に供給される作動油の温度が高い場合、時間経過により当該作動油の温度が低下することで、当該作動油が収縮し、その結果、油圧シリンダ6による保持位置が変化する虞がある。特に、伸縮ブーム付き油圧走行作業車両においては、ブーム伸縮用の油圧シリンダ内の油温が低下することにより、互いに入れ子状に配置された単位ブーム間の、静摩擦力による釣り合いが破れ、一気に油圧シリンダが縮み、大きな衝撃音が発生するとともに、伸縮機構のみならずブーム自体の破損を招く虞がある。
この点、本実施形態に係る伸縮ブーム付き油圧走行作業車両においては、作業用油圧ポンプ3を介して油圧シリンダ6に供給される作動油が過度に高温になることを抑制可能である。これにより、油温低下による作動油の収縮を抑制することができ、油圧シリンダ6の保持位置が変化することを防止できる。結果として、油圧シリンダの収縮による衝撃音の発生を抑制できるとともに、収縮時の衝撃による伸縮機構の破損及びブーム自体の破損を防ぐことができる。
【0059】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係るラフテレーンクレーンの油圧回路構成図である。
第2実施形態に係るラフテレーンクレーンは、(1)作業用油圧回路の作動油をタンクT1に戻す第1リターン油路61を備える点、(2)作業用油圧回路の作動油をタンクT2に戻す第2リターン油路62にオイルクーラーが設けられていない点、(3)タンクT1とタンクT2とを連通する連通油路63が設けられている点が、第1実施形態と異なる。他の構成については第1実施形態と同様であり、図2において第1実施形態と同一部材には同一符号を付し説明を省略する。
【0060】
第1リターン油路61は、リリーフ弁13とタンクT1との間を延びる油路である。当該第1リターン油路61には、油圧シリンダ6内の作動油を排出するための油路33、走行用油圧回路からのリターン油路43及び他の走行系油圧システム50からのリターン油路44が接続されている。第1リターン油路61における、油路33、リターン油路43及びリターン油路44との接続部よりもタンクT1側には、タンクT1に戻る作動油を冷却するためのオイルクーラー23及び作動油に混入した不純物を取り除くためのフィルタ24が介設されている。
【0061】
第2リターン油路62は、切換弁11とタンクT2との間に設けられた油路であり、切換弁11が第2位置11bに切り換えられたときに油路31と連通する。当該第2リターン油路62には、作動油に混入した不純物を取り除くためのフィルタ15が介設されているが、オイルクーラは設けられていない。
【0062】
連通油路63は、タンクT1とタンクT2との間に設けられた油路である。図3に模式的に示すように、当該連通油路63は、タンクT1の側壁に設けられた開口縁部とタンクT2の側壁に設けられた開口縁部とに両端を連結された配管を有して構成される。配管は、タンクT1側の端部の位置がタンクT2側の端部の位置と略同じ高さとなるように配置されている。尚、タンクT1,T2にそれぞれ所定量(150L,350L)の作動油が貯留されたときの油面の高さよりも高い位置に、タンク側壁の開口及び配管端部が設けられる。これにより、タンクT1内の作動油の油面の高さが上昇して、配管端部の高さを超えた場合は、当該配管を介してタンクT1内の作動油がタンクT2内に導かれる。
また、タンクT1とタンクT2との間には空間Sが形成されている。これにより、タンクT1とタンクT2との間が断熱される。
【0063】
(本実施形態に係る作業車両の特徴)
以上説明したように、第2実施形態に係るラフテレーンクレーンは、タンクT1とタンクT2との間に連通油路が設けられている。
【0064】
この構成によると、タンクT1の作動油をタンクT2に導くことができる。これにより、タンクT2の作動油不足や、タンクT1に容量を超えて作動油が供給されることを防ぐことができる。
【0065】
また、作業用油圧回路及び走行用油圧回路の作動油をタンクT1に戻す第1リターン油路61と、作業用油圧回路の作動油をタンクT2に戻すための第2リターン油路62と、第1リターン油路61及び第2リターン油路62のうち第1リターン油路61にのみ作業油を冷却するオイルクーラー23が設けられている。
【0066】
この構成によると、作業用油圧回路及び走行用油圧回路の作動油を、第1リターン油路61に設けられたオイルクーラー23により冷却してタンクT1に戻すことができる。これにより、複数のオイルクーラーを作業用油圧回路及び走行用油圧回路からタンクへのリターン油路に設けなくとも、当該作業用油圧回路及び走行用油圧回路からタンクに戻る作動油を冷却することができる。結果として、オイルクーラーの設置スペース及び設置コストの削減が可能になる。
【0067】
また、タンクT1とタンクT2との間には空間Sが形成されている。
【0068】
この構成によると、タンクT1とタンクT2との間に空間Sがない場合に比べ、第1貯留部と第2貯留部との間がより断熱される。よって、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油が過度に高温になることをより確実に防止できる。
【0069】
尚、第2実施形態においては、切換弁11が第2位置11bに切り換えられている場合(非作業時)は、作業用油圧ポンプ3から供給される作動油は、第2リターン油路62を介してタンクT2に戻る。一方、切換弁11が第1位置11a又は第3位置11cに切り換えられている場合(作業時)は、第1リターン油路61を介してタンクT1に戻る。
これにより、非作業時においては、作業用油圧ポンプ3から供給される作動油は、オイルクーラーが設置されないことにより圧損の少ない油路を通ってタンクT2に戻るため、作業油を循環させる動力を低減可能である。一方、作業時においては、動力として使用されて温度が上昇した作動油はオイルクーラー23を通過してタンクT1に戻るため、作動油の温度上昇を抑えることができる。
【0070】
(変形例1)
図4に、第2実施形態の変形例1に係る、タンクT1,T2を連結する連通油路63の構成を模式的に示す。図3に示す連通油路63は、タンクT1,T2の油面の高さよりも高い位置に設けた。この連通油路63を、図4に示すように、タンクT1の油面の高さよりも低い位置、かつ、タンクT2の油面の高さよりも低い位置に設けることもできる。なお、サクション油路30,40よりも低い位置に連通油路63を設ければ、タンクT1,T2の油面よりも常に低い位置に連通油路63を位置させることができる。
【0071】
次に、走行時および作業時における、タンクT1,T2の油面の昇降および作動油の流出入について説明する。
【0072】
走行時は、タンクT1の油量増減はなく、タンクT1の油面の昇降が生じない。これは、走行用油圧アクチュエータ(図2に示す走行用油圧モータ17、および、他の走行系油圧システム50の図示しない走行用油圧アクチュエータ)は、IN側とOUT側の受圧面積が等しく、すなわちIN側の流量とOUT側の作動油の流量が等しいからである。また、走行時には作業用油圧回路は作動させないため、タンクT2の油面の昇降も生じない。よって、タンクT1とタンクT2とで油面の高さの差が生じない。したがって、タンクT1の高温の作動油が連通油路63を通ってタンクT2へ流入することはほとんどなく、タンクT2の作動油が過度に高温になることはない。
【0073】
作業時は、上述したように作業用油圧回路の作動油が第1リターン油路61(図2参照)を通ってタンクT1に戻される。これによりタンクT1の油面が上昇し、タンクT1の作動油は図4に示す連通油路63を通ってタンクT2へ流入する。ここで連通油路63は、タンクT1の油面の高さよりも低い位置、かつ、タンクT2の油面の高さよりも低い位置に設けられているので、上記の作動油の流入によりタンクT2内で気泡が発生することはない。
【0074】
(本変形例に係る作業車両の特徴)
以上説明したように、第2実施形態の変形例1に係るラフテレーンクレーンは、連通油路63を、タンクT1の油面の高さよりも低い位置、かつ、タンクT2の油面の高さよりも低い位置に設けている。
【0075】
この構成によると、気泡による異音とショックの問題が生じない。すなわち、図3に示すように、タンクT1及びタンクT2の油面の高さよりも高い位置に連通油路63を設けた場合、タンクT1からタンクT2に導かれた作動油は、タンクT2の油面へ落下する。この落下流によってタンクT2の作動油中で空気粒の巻き込みが発生して気泡(油中泡)となる。この気泡が上昇して油面から大気へ放出されれば問題は生じない。しかしながら、この気泡が作業用油圧ポンプ3へ吸い込まれると、ポンプ内で気泡がつぶされ、異音とショックが発生する。
一方で本変形例では、図4に示すように、連通油路63を油面の高さよりも低い位置に設けている。したがって、上記の気泡が発生せず、上記の異音とショックが生じない。
【0076】
(変形例2)
図5に、第2実施形態の変形例2に係る、連通油路63周辺の油圧回路構成を示す。図6に、変形例2に係る連通油路63の構成を模式的に示す。図4に示す連通油路63には、図5,6に示すように、タンクT1からタンクT2へのみ作動油を流す逆止弁64を設置できる。
【0077】
(本変形例に係る作業車両の特徴)
以上説明したように、第2実施形態の変形例2に係るラフテレーンクレーンは、連通油路63が、タンクT1からタンクT2へのみ作動油を流す逆止弁64を備えている。
【0078】
この構成によると、タンクT2からタンクT1へ作動油が流れ込むことによるタンクT2への作動油の逆流が生じない。さらに詳しく説明すると、ラフテレーンクレーンの加減速による慣性力やタンクT2の傾き等により、タンクT2の作動油が連通油路63を通って第1貯留部に流れ込もうとする場合がある。ここで、図4に示すように、連通油路63が逆止弁64を備えない場合、タンクT2の低温の作動油はタンクT1に流れ込む。この流れ込みにより、タンクT1内で高温油と低温油とが混ざり合うとともに、タンクT1の油面が上昇する(瞬間的に上昇する)。この油面の上昇により、タンクT1の作動油が連通油路63を通って第2貯留部へ混ざり込む。すなわち、タンクT2からタンクT1へ作動油が流れ込んだことによりタンクT2へ作動油が逆流する。これにより、第2貯留部の作動油の温度が上昇する。
一方で本変形例では、図5,6に示すように、連通油路63は逆止弁64を備えているので、タンクT2の作動油は連通油路63を通ってタンクT1へ流れ込むことがない。よって、この流れ込みによるタンクT1の油面上昇がない。したがって、タンクT1の高温の作動油が連通油路63を通ってタンクT2へ過度に流入するのが抑制され、作業用油圧アクチュエータに供給される作動油が過度に高温になることを抑制できる。
【0079】
(変形例3)
図7に、第2実施形態の変形例3に係る連通油路周辺の油圧回路構成を示す。図8に、変形例3に係る連通油路の構成を模式的に示す。図5,6に示す逆止弁64は、図7,8に示すようにバネ付き逆止弁65とすることができる。
【0080】
バネ付き逆止弁65は、一定以上の圧力で開く逆止弁である(イニシャルカット機能を備える逆止弁である)。さらに詳しくは、タンクT1からタンクT2へ向かう向きの圧力が一定以上の場合にのみ、タンクT1からタンクT2へ作動油を流す逆止弁である。なお、このバネ付き逆止弁65を、バネ以外の力(例えば電磁力や油圧による力)で弁体を付勢する逆止弁とすることもできる。
【0081】
(本変形例に係る作業車両の特徴)
以上説明したように、第2実施形態の変形例3に係るラフテレーンクレーンは、連通油路63に備えられるとともにタンクT1からタンクT2へのみ作動油を流す逆止弁が、一定以上の圧力で開くバネ付き逆止弁65である。
【0082】
この構成によると、一定以上の圧力がバネ付き逆止弁65にかからない限り、タンクT1からタンクT2へ作動油が流れない。具体的には、例えば外乱や傾き等によりタンクT1の油面が上昇し、タンクT1とタンクT2の油面の高さに差が生じる場合がある。この場合でも、バネ付き逆止弁65による抵抗のため、油面の高さの差が一定以上でなければバネ付き逆止弁65は開かない。よって、タンクT1の高温の作動油が連通油路63を通ってタンクT2へ混ざり込むことがより抑制される。
【0083】
(変形例4)
図9に、第2実施形態の変形例4に係るタンク及び連通油路の構成を模式的に示す。図8に示すような、タンクT1とタンクT2との間に空間Sを形成した構成を、図9に示すように、一のタンクTを仕切り板66により区画した構成に変形できる。
【0084】
仕切り板66は、一のタンクTの内部の貯留空間を区画する板(隔壁)であり、断熱構造を有する。この仕切り板66には貫通孔が形成される。この貫通孔に、タンクT1とタンクT2とを連通する連通油路63を通す。または、この貫通孔自体を連通油路63とする(すなわち貫通孔を形成するのみで、貫通孔に管を通さない)こともできる。
【0085】
(本変形例に係る作業車両の特徴)
以上説明したように、第2実施形態の変形例4に係るラフテレーンクレーンは、タンクT1及びタンクT2が、一のタンクTの内部の貯留空間を断熱構造を有する仕切り板66により区画して形成される。また、連通油路63は、仕切り板66に形成された貫通孔とすることができる。
【0086】
この構成によると、2つの貯留部間の仕切り板66を断熱構造とすることで、タンクT1からタンクT2への伝熱を低減することができ、油圧シリンダ6に供給される作動油が過度に高温になることをより確実に防止できる。また、連通油路63を、仕切り板66に形成した貫通孔として構成した場合は、連通油路63を簡易な構成で実現できる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態やその変形例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、以下のように変形して実施することもできる。
【0088】
(1)本発明は、ホイールクレーンの一種であるラフテレーンクレーンに限らず、他の作業車両に対しても適用することが可能である。例えば、油圧で駆動される走行体としてのクローラ及び油圧シリンダにより伸縮される伸縮ブームを有するクローラクレーンにも適用することができる。
【0089】
(2)上記実施形態においては、作業用油圧アクチュエータとして、起伏自在に設けられた伸縮ブームを伸縮させるための油圧シリンダ6を備える構成を例示したが、作業用油圧ポンプ3からの圧油により、ブームを起伏するための油圧シリンダ等が駆動される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
3 作業用油圧ポンプ
4 走行用油圧ポンプ
5 作業ポンプ用レギュレータ(ポンプ制御手段)
6 油圧シリンダ(作業用油圧アクチュエータ)
7 コントローラ(ポンプ制御手段)
8 電磁切換弁(ポンプ制御手段)
9 パイロット圧源(ポンプ制御手段)
10 速度センサ(ポンプ制御手段)
17 走行用油圧モータ(走行用油圧アクチュエータ)
23 オイルクーラー(冷却手段)
61 第1リターン油路
62 第2リターン油路
63 連通油路
S 空間
T タンク
T1 タンク(第1貯留部)
T2 タンク(第2貯留部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用油圧アクチュエータと、
前記走行用油圧アクチュエータを駆動するための走行用油圧ポンプと、
前記走行用油圧ポンプにより前記走行用油圧アクチュエータを駆動させるための走行用油圧回路の作動油が戻される第1貯留部と、
作業用油圧アクチュエータと、
前記作業用油圧アクチュエータを駆動するための作業用油圧ポンプと、
前記第1貯留部とは別に形成され、前記作業用油圧ポンプに供給される作動油が貯留される第2貯留部と、
を備えた作業車両。
【請求項2】
前記第1貯留部と前記第2貯留部との間に連通油路を設けた請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記連通油路は、前記第1貯留部の油面の高さよりも低い位置、かつ、前記第2貯留部の油面の高さよりも低い位置に設けた請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記連通油路は、前記第1貯留部から前記第2貯留部へのみ作動油を流す逆止弁を備えた請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記逆止弁は、一定以上の圧力で開く請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記第1貯留部は、前記走行用油圧回路に供給される作動油が貯留される貯留部であって、当該第1貯留部の容量が、前記第2貯留部の容量よりも小さい請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項7】
前記作業用油圧ポンプにより前記作業用油圧アクチュエータを駆動させるための作業用油圧回路の作動油及び前記走行用油圧回路の作動油を前記第1貯留部に戻すための第1リターン油路と、
前記作業用油圧回路の作動油を前記第2貯留部に戻すための第2リターン油路と、を備え、
前記第1リターン油路及び前記第2リターン油路のうち前記第1リターン油路にのみ作業油を冷却する冷却手段を設けた請求項2〜6のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項8】
前記第1貯留部と前記第2貯留部との間には空間が形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項9】
前記第1貯留部及び前記第2貯留部は、一のタンクの内部の貯留空間を断熱構造を有する仕切り板により区画して形成され、
前記連通油路は、前記仕切り板に形成された貫通孔である請求項2〜7のいずれか1項に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−121779(P2011−121779A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283261(P2009−283261)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】