説明

作業車両

【課題】オペレータが作業中に昇降制御や姿勢制御が確実に行われていることを確認できるようにすると共に、昇降制御や姿勢制御における感度調節のための参考情報を容易に得られるようにする。
【解決手段】昇降制御、或いは姿勢制御を行うアクチュエータ24,32に対して伸張指令が出されているか、縮小指令が出されているか、又は制御不能な状態にあるか否か等を、座席に座ったオペレータが目視可能なセンターピラー9bに設ける表示ユニット57を介してオペレータに表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ、コンバイン、田植機のように機体に連結する作業機(ロータリ耕耘装置、刈取部、植付部)を油圧シリンダ等で構成するアクチュエータを介して昇降制御、或いは姿勢制御する作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機体に連結する作業機の高さや作業機の耕深等を表示器に表示して、作業機の位置をオペレータに報知することが知られている。また、油圧ソレノイドバルブの作動状態を表示ユニットに表示して、油圧ソレノイドバルブの異常の有無を確認できるようにすることが知られている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−125410号公報
【特許文献2】実開昭63−82644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、作業高さ等を表示する特許文献1に記載されたものでは、現在の作業機の位置をオペレータが知ることができるものの、この位置情報を元にして作業機を昇降させる制御装置の出力状態を知ることができないので、オペレータとしては確実に昇降制御が行われているのか不安があると共に、係る位置情報をもって昇降制御における感度調節等を行う場合の参考情報にすることができないという問題がある。
また、油圧ソレノイドバルブの作動状態を表示する特許文献2に記載されたものでは、表示ユニットを座席フレームカバー内に設置するため、走行を停止した状態で制御装置の出力状態を確認して異常の有無を確認することができたとしても、オペレータが座席に座って作業を行っている状態では表示ユニットを見ることができないため、上述した特許文献1に記載されたものと同様に、オペレータとしては作業中に昇降制御が確実に行われているのか分からず、依然として不安を解消することができないという問題がある。
そこで、本発明は、係る問題点に鑑みて、制御装置が昇降制御や姿勢制御を行う際にアクチュエータに対して出力した内容を同時に表示できるようになし、オペレータに作業中、昇降制御や姿勢制御が確実に行われていることを報知してオペレータの不安を解消すると共に、その出力状態の表示から昇降制御における感度調節等のための参考情報を容易に得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、機体に連結する作業機をアクチュエータを介して昇降制御、或いは姿勢制御する制御装置を備える作業車両において、前記制御装置は昇降制御、或いは姿勢制御を行うアクチュエータに対して指令する出力内容、乃至は制御状態を、座席に座ったオペレータが目視可能な位置に設ける表示ユニットを介して表示することを特徴とする。
そして、請求項2に記載の発明は、表示ユニットをキャビンのセンターピラーに取り付けて、座席に座ったオペレータが側方を向いた際に目視可能に設けることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、アクチュエータに対して指令する出力内容を、表示ユニットに設けた表示素子の光度を変更して表示することを特徴とする。
さらに、請求項4に記載の発明は、前照灯、又は作業灯の点灯の有無によって表示ユニットに設けた表示素子の光度を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の作業車両によれば、制御装置が昇降制御、或いは姿勢制御を行うアクチュエータに対して指令する出力内容、乃至は制御状態を、座席に座ったオペレータが目視可能な位置に設ける表示ユニットを介して表示するから、オペレータは作業中に表示ユニットの表示内容を確認することによって、昇降制御が確実に行われているか否かを確認することができ、オペレータは制御装置に対する不安を解消して運転作業に専念することができる。
また、表示ユニットをキャビンのセンターピラーに取り付けて、座席に座ったオペレータが側方を向いた際に目視可能に設けることによって、表示ユニットと共に機体後部に連結する作業機を同時に視野に入れながら、或いは僅かに視線を移動させることによって実際の作業機の昇降状態と制御装置の出力内容の異同、或いは昇降状態と出力内容の対応関係を確認することができ、これに基づいて作業機の深さ設定、或いは感度調節等を行う場合の参考情報として活用することができる。しかも、オペレータが前方を向いて機体の操向操作を行う場合は、表示ユニットが視界から外れることによって、表示に惑わされることなく操向操作に専念することができる。
そして、例えば昇降速度の遅速等のアクチュエータに対して指令する出力内容を表示ユニットに設けた表示素子の光度を変更して表示することによって、オペレータは昇降速度等を表示素子の明暗からアナログ的に把握することができるようになり、表示素子の数を徒に増大させて情報取得の困難性を招くことなく、精緻な情報を表示素子の数を必要最低限に押さえて提供することができる。
さらに、前照灯、又は作業灯の点灯の有無によって表示ユニットに設けた表示素子の光度を変更することによって、昼間の作業であれば表示素子の光度を増やして周囲の明るさに負けないように明るくし、また、夜間作業に及んで前照灯を点灯すれば表示素子の光度を減らして眩しく感じさせないように暗くして、昼夜間を問わず常に適切な光度の元に出力状態をオペレータに見易く表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】トラクタの斜視図である。
【図2】操縦部の平面図である。
【図3】メーターパネルの正面図である。
【図4】表示ユニットの取付け状態を示す正面図である。
【図5】油圧回路図である。
【図6】制御装置のブロック図である。
【図7】LED表示のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように作業車両としてのトラクタ1は、機体フレーム2の前部にエンジンを搭載して、これをボンネット3で覆っている。また、トラクタ1は機体フレーム2の下方に左右の走行レーム4を備え、走行フレーム4に軸支される駆動スプロケット5、アイドラ6、及び転輪7にはクローラ8が巻き掛けられている。そして、機体フレーム2の中央部にはキャビン9が搭載されており、キャビン9のルーフには作業灯10が、また、ボンネット3のフロントグリルには前照灯11が設けてある。
【0009】
また、キャビン9内には図2に示すように座席12、メーターパネル13、ステアリングハンドル14の他に、PTO変速レバー15、緊急停止ブレーキペダル16、エンジンコントロールレバー17、主変速レバー18、ポジションコントロールレバー19等のペダル・レバー類が設けてある。さらに、座席12の右側のサイドパネル20には、後述する制御装置の各種設定スイッチやダイヤルが設けてある。
【0010】
そして、図3に示すようにメーターパネル13には、燃料計、エンジン回転計、各種の警告灯の他に、ライティングスイッチ21や液晶パネル22が組み込まれており、制御装置の細部の設定はこの液晶パネル22に設定項目が表示されると共に、下方に設けた決定スイッチ等23の選択手段によって行うことができる。
【0011】
一方、トラクタ1は機体フレーム2の後部に図示しないトップリンク、ロワーリンク等からなる周知の3点リンク機構が設けてあり、3点リンク機構にはロータリ耕耘装置やハロー等の作業機が連結され、トラクタ1はこれらの作業機を用いて耕耘・代掻き作業等を行うことができる。また、3点リンク機構は機体フレーム2の後部に設けた図示しない左右のリフトアームにリフトロッドを介して連結され、リフトアームの回動によって3点リンク機構は昇降して作業機の高さが制御される。
【0012】
図5は、リフトアームを回動させるアクチュエータとしてのリフトシリンダ24に対する油圧回路図を示す。リフトシリンダ24は、エンジンの動力によって駆動される油圧ポンプ25からプライオリティバルブ26を介して作動油が供給され、回路中には上昇バルブ27、下降バルブ28、降下防止バルブ29が介挿されている。ここで、上昇バルブ27と下降バルブ28は電磁比例上昇バルブ30と電磁比例下降バルブ31から供給されるパイロット圧によってバルブ開度がコントロールされ、リフトシリンダ24の伸縮時の作動速度をこのバルブ開度によって変更することができる。また、降下防止バルブ29はリフトシリンダ24の伸縮作動を阻止するシャット弁の役割を果たし、非作業時における作業機の自然落下を防止する。
【0013】
一方、プライオリティバルブ26から同じく作動油が供給されるリフトロッドシリンダ32は、3位置切換バルブ33を備えており、左右のリフトアームの一方に連結するリフトロッドをこのリフトロッドシリンダ32によって構成することにより、3点リンク機構に連結する作業機を左右方向に傾斜させることができ、従って、リフトロッドシリンダ32は姿勢制御用のアクチュエータとしての役割を果たす。なお、34はリリーフバルブ、35はチェックバルブである。
【0014】
次に、前述のリフトシリンダ24並びにリフトロッドシリンダ32を伸縮制御する制御装置について図6に示すブロック図に基づいて説明する。制御装置は、マイクロコンピュータから構成するメインコントロールユニット36とフロントコントロールユニット37とエンジンコントロールユニット38がシリアル通信、或いはコントロールエリアネットワークによって接続されると共に、フロントコントロールユニット37とメーターユニット39、並びに液晶コントロールユニット40がそれぞれコントロールエリアネットワークによって接続されている。また、前述した液晶パネル22が液晶コントロールユニット40に接続され、液晶コントロールユニット40によって液晶表示がコントロールされる。
【0015】
そして、エンジンコントロールユニット38は、エンジンコントロールレバー17に付設したアクセルセンサ41の指令信号に基づいてエンジンの燃料噴射量を制御してエンジン回転を制御すると共に、エンジン回転の変化割合や出力特性を切替信号(ドループ切替、エコモード)に基づいて変更する他、冷却水温やエンジン回転数をメータユニット39に出力する。
【0016】
フロントコントロールユニット37は、液晶コントロールユニット40によつてコントロールされる液晶パネル22にエンジン回転数、車速、燃料の残量等を表示指令する他、エンジンの出力特性の変更(ドループ切替、エコモード)、及び昇降制御や姿勢制御の細部にわたる設定(深さ感度切替、傾き感度切替、LED表示切替)を決定スイッチ等23の指令信号に基づいて変更する。
【0017】
メインコントロールユニット36は、主に前述した作業機の昇降制御や姿勢制御を行うものであり、エンジンコントロールユニット38に接続されるアクセルセンサ41が配線を分岐して接続される他、リフトアームの回動角度を検出するリフトアーム角センサ42、ロータリ耕耘装置のリヤカバーの回動角度を検出する深さセンサ43、耕深を設定する深さ設定ボリューム44、PTOクラッチを入り切りするPTOスイッチ45、ポジションコントロールレバー19の回動位置を検出するポジションセンサ46、深さ自動制御を入り切りする深さ自動スイッチ47、作業機をワンタッチ操作で設定した上昇位置と下降位置に昇降指令するクイックアップスイッチ48、作業機の傾斜自動制御を入り切りする傾斜自動スイッチ49、機体の左右傾斜角度を検出する傾斜センサ50等がその入力側に接続されている。
【0018】
メインコントロールユニット36の出力側には、電磁比例上昇バルブ30と電磁比例下降バルブ31を制御する油圧上昇比例ソレノイド51及び油圧下降比例ソレノイド52、PTOクラッチを入り切り制御するPTO比例ソレノイド53、3位置切換バルブ33を切り換える傾斜ソレノイド(伸)54及び傾斜ソレノイド(縮)55、降下防止バルブ29を切り換える降下防止ソレノイド56が接続されていると共に、複数個の発光ダイオードを整列配置して全体としてV状に発光させるLED(V)、同じく−状に発光させるLED(−)、及びΛ状に発光させるLED(Λ)が接続されている。
【0019】
上記発光ダイオード群からなるLED(V),LED(−),及びLED(Λ)は、図4に示すように表示ユニット57の基盤に一体的に組み込まれており、図2にも示すようにこの表示ユニット57は、キャビン9のルーフを支える右側のセンターピラー(中間支柱)9bの機体内側に内装材と共に固定され、座席12に座ったオペレータが側方を向いた際に目視することができる位置に取り付けてある。なお、図2に示す符号9a、9cはフロントピラー(前部支柱)及びリヤピラー(後部支柱)である。
【0020】
次に、メインコントロールユニット36が実行する昇降制御の概要について説明すると、メインコントロールユニット36は、その入力側に接続されたスイッチ、センサ、及びボリューム等の入力信号に基づいてポジションコントロール制御や深さ自動制御等を行う。
【0021】
この内、ポジションコントロール制御は、ポジションコントロールレバー19の操作でリフトアームを上昇、下降させて任意の高さに作業機を位置させることができるものであり、そのポジションセンサ46の値とリフトアーム角センサ42の値をメインコントロールユニット36が比較して、両者の値が一致するまで油圧上昇比例ソレノイド51と油圧下降比例ソレノイド52に出力する。またクイックアップスイッチ48を操作すると、メインコントロールユニット36は同じく油圧上昇比例ソレノイド51又は油圧下降比例ソレノイド52に出力して、作業機を設定された上限位置、或いはボジションコントロールレバー19で設定された下降位置に昇降させる。
【0022】
一方、深さ自動制御は、深さ自動スイッチ47が入りとなっている場合に、深さ設定ボリューム44によって設定した耕深を作業機(ロータリ耕耘装置)が保つようにリフトアームを上昇、下降させるものであり、作業機側に設けた深さセンサ43の値と深さ設定ボリューム44によって設定された耕深値とを比較し、両者の値が一致するように油圧上昇比例ソレノイド51と油圧下降比例ソレノイド52に出力する。また、深さ自動制御中にエンジン回転数がアクセルセンサ41で設定される設定値より下がった時には、作業機を一旦上昇させてエンストを防止する負荷制御機能も追加することができる。
【0023】
なお、メインコントロールユニット36は油圧上昇比例ソレノイド51及び油圧下降比例ソレノイド52に対してパルス幅を変調した間欠的な出力指令を出すことによって、上昇バルブ27と下降バルブ28のバルブ開度をコントロールしてリフトシリンダ24の伸縮時の作動速度を制御する。そして、この場合のデューティ比は制御目標に対する偏差の大小等によって決定され、偏差が大きければリフトシリンダ24はその速度が速くなる。
【0024】
また、メインコントロールユニット36は、前述の昇降制御の他に姿勢制御を行い、姿勢制御は作業機の左右方向の傾きをリフトロッドシリンダ32の伸縮によって制御するものである。そして、姿勢制御の内の一つである傾斜自動制御は、傾斜自動スイッチ49が入りとなっている場合に機体の傾きに関係なく作業機の傾きを設定した傾斜角度に保つ制御を行い、機体の傾きを検出する傾斜センサ50の値と作業機の設定角度の値とを比較し、両者の値が一致するように傾斜ソレノイド(伸)54と傾斜ソレノイド(縮)55に出力する。
【0025】
さらに、メインコントロールユニット36は、前述した昇降制御を行う際に自らがコントロールするアクチュエータ、即ちリフトシリンダ24に対して指令する出力内容、乃至は制御状態を表示ユニット57を介して表示するLED表示機能(プログラム)を備える。
【0026】
LED表示機能は、図7に示すフローチャートのように液晶画面において切替可能になされたLED表示切替の入切に基づいて、LED表示を切りにした場合には、発光ダイオード群からなるLED(V),LED(−),及びLED(Λ)に対する全ての出力を停止して、これらを消灯させる。また、LED表示を入りにした場合には、先ず油圧リフト異常の有無を判断し、例えば深さ自動制御に必要な深さセンサ43がメインコントロールユニット36に接続されておらず、その入力信号がメインコントロールユニット36に入ってこない場合や、油圧上昇比例ソレノイド51が焼損していて、リフトシリンダ24を伸長させることができないといった場合は、異常と判定してLED(V)及びLED(Λ)に対して間欠的に出力し、これを点滅させる。また、LED(−)に対しては出力を停止して消灯させる。
【0027】
次に、リフトシリンダ24を縮小側(作業機下降側)に比較的速く作動させているか否かを、メインコントロールユニット36が油圧下降比例ソレノイド52に対してデューティ比を高くして出力指令を出しているか否かで判断し、これに該当する場合はLED(V)に対して出力して、これを点灯させる。また、LED(Λ)及びLED(−)に対しては出力を停止して消灯させる。そして、リフトシリンダ24を縮小側(作業機下降側)にゆっくりと作動させているか否かを、油圧下降比例ソレノイド52に対してデューティ比を低くして出力指令を出しているか否かで判断し、これに該当する場合はLED(V)に対して間欠的に出力して点滅させる。
【0028】
同様に、リフトシリンダ24を伸長側(作業機上昇側)に比較的速く作動させているか否かを、メインコントロールユニット36が油圧上昇比例ソレノイド51に対してデューティ比を高くして出力指令を出しているか否かで判断し、これに該当する場合はLED(Λ)に対して出力して、これを点灯させる。また、LED(V)及びLED(−)に対しては出力を停止して消灯させる。そして、リフトシリンダ24を伸長側(作業機上昇側)にゆっくりと作動させているか否かを、油圧上昇比例ソレノイド51に対してデューティ比を低くして出力指令を出しているか否かで判断し、これに該当する場合はLED(Λ)に対して間欠的に出力して点滅させる。
さらに、リフトシリンダ24を伸縮作動させていない時(作業機停止)には、LED(−)に対して間欠的に出力して点滅させる。また、LED(V)及びLED(Λ)に対しては出力を停止して消灯させる。
【0029】
以上のようにLED表示は、制御装置がリフトシリンダ24に対して作動指令を出す自らの信号に基づいて、その出力内容をリフトシリンダ24の作動方向(上昇側/下降側/停止)と作動速度(遅速)に仕分け整理して、表示ユニット57に対して出力指令を出す。また、表示ユニット57は3つの発光ダイオード群LED(V),LED(Λ),LED(−)によってリフトシリンダ24に対する制御装置の出力内容を直感的に分かる方向指示形態で表示する。そして、制御装置はリフトシリンダ24を昇降制御するうえで障害となる異常の有無を検出又は判断して、制御不能な制御状態であればこれを表示ユニット57において表示する。
【0030】
従って、オペレータは深さ自動制御を選択して、例えば耕耘作業を行っている際に、側方に設けた表示ユニット57に視線を移動させるだけで自動制御の出力状態を発光ダイオード群LED(V),LED(Λ),LED(−)の点灯状態によって逐一確認することができる。また、制御不能な状態であればLED(V)とLED(Λ)が同時に点滅して異常状態であることが表示されるので、その場合は作業を中断して異常個所の点検に回ることができる。
そして、オペレータは視線をさらに後方に移動してロータリ耕耘装置の耕耘状態(仕上がり状態)を確認し、例えば圃場の凹凸によって耕深を深くした方が仕上がりが奇麗になると判断すれば、深さ設定ボリューム44によって深耕に調節する。また、作業機の昇降制御が頻繁に行われていることを発光ダイオード群の点灯状態から確認し、さらに仕上がりが悪くて均平性に問題があれば、深さ感度切替を行って昇降制御におけるデューティ比を低く設定しなおして昇降速度を遅くした適正な制御状態に調節することができる。
【0031】
ところで、以上説明した実施例は、昇降制御を行うリフトシリンダ24に対する出力内容、乃至は制御状態を表示ユニット57に表示することを主体とするものであるが、昇降制御に拘らず姿勢制御を行うリフトロッドシリンダ32に対する出力内容、乃至は制御状態を表示ユニット57に表示してもよく、その場合、表示切替によって両者を選択して表示できるようにしてもよいことは勿論である。
【0032】
また、発光ダイオード群LED(V),LED(Λ),LED(−)に対する出力信号は、点灯と点滅によって作動速度の遅速を判別できるようにしたが、発光ダイオードに流す電流を変更することによって光度(明るさ)を変更し、その明暗によって作動速度の遅速を判別できるようにしてもよい。そして、光度の変更手段として、発光ダイオードの点滅を人が認識できない短い周期で繰り返す事(デューティー比を変える事)により、見かけ上の光度を変更することができる。
そして、これによって昇降速度をより多段階に区分けしたうえで表示素子の明暗もこれに対応させて多種なものに変更すれば、昇降速度をアナログ的に把握することができるようになり、より精緻な情報を提供することができる。
【0033】
さらに、制御装置は前照灯11や作業灯10の点灯の有無によって表示ユニット57に設けた発光ダイオード群LED(V),LED(Λ),LED(−)の光度を一括して変更することもできる。その場合は、メインコントロールユニット36の入力側に、例えば前照灯11を入り切りするライティングスイッチ21を接続し、制御装置は前照灯11が点灯されていない時には昼間の作業と判断して、表示素子の光度を増やして周囲の明るさに負けないように明るくし、また、夜間作業に及んで前照灯11が点灯されれば、表示素子の光度を減らして眩しく感じさせないように暗くし、昼夜間を問わず常に適切な光度の元に出力状態をオペレータに見易く表示することができる。
【0034】
なお、特許文献1に記載されているように、レーザー光を受光する受光器を作業機に備え、これに基づいて作業機の高さ制御を行おうとする場合には、レーザー光の受光状態を発光ダイオード群LED(V),LED(Λ),LED(−)を用いて簡単に表示させることができ、この場合には表示ユニット57の利用範囲を拡大させて、相対的に表示装置に係るコストを押さえることができる。
【符号の説明】
【0035】
24 リフトシリンダ(アクチュエータ)
32 リフトロッドシリンダ(アクチュエータ)
36 メインコントロールユニット(制御装置)
57 表示ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に連結する作業機をアクチュエータを介して昇降制御、或いは姿勢制御する制御装置を備える作業車両において、前記制御装置は昇降制御、或いは姿勢制御を行うアクチュエータに対して指令する出力内容、乃至は制御状態を、座席に座ったオペレータが目視可能な位置に設ける表示ユニットを介して表示することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記表示ユニットをキャビンのセンターピラーに取り付けて、座席に座ったオペレータが側方を向いた際に目視可能に設けることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置はアクチュエータに対して指令する出力内容を、表示ユニットに設けた表示素子の光度を変更して表示することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記制御装置は前照灯、又は作業灯の点灯の有無によって表示ユニットに設けた表示素子の光度を変更することを特徴とする請求項1、乃至は請求項3に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−155928(P2011−155928A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21210(P2010−21210)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】