説明

作業車両

【課題】施錠時にキャップカバーの開放を阻止し、燃料タンクの給油部に対する悪戯等を防止することができる作業車両を提供する。
【解決手段】燃料タンク11の給油部14を覆うキャップカバー17をヒンジ19を介して開閉自在になすと共に、キャップカバー17の開放を阻止する施錠機構20を設けた作業車両であって、前記施錠機構20は、キャップカバー17に装着したキーシリンダ21と、キーシリンダ21に設けたロックピン25と、ロックピン25が係合する燃料タンク11側に設けたフック30と、キャップカバー17に設けたガイドプレート32とによって構成し、上記ロックピン25が回動されてフック30に係合する施錠時に、ガイドプレート32はロックピン25と共にフック30を左右から挟み込んで、キャップカバー17の開放を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの給油部をキャップカバーで覆うと共に、キャップカバーの開放を施錠機構を用いて阻止する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに設置される燃料タンクの燃料給油口に燃料キャプを設け、この給油部をキャップカバーによって施錠可能に覆うことにより、給油部に対する泥土等による汚損を防止すると共に、悪戯等によるキャップカバーの開放を阻止するようにした作業車両は既に公知である(例えば特許文献1。)。
上記トラクタは、図11,図12に示すようにキャップカバー17を燃料タンク11の側面を覆う側面カバー16にヒンジ19を介して開閉自在に設け、キャップカバーを閉じた状態においてキー操作により、キーシリンダのロックピンを側面カバーに設けたフックプレートに係合させて施錠するようにしている。
そして、この場合にフックプレート27は、ロックピン25を係合するフック30を備え、またフック30の先端はロックピン25がフック30から不測に抜け出さないように突起30bを設けている。
またキャップカバー17の裏面には、ブロック状のスポンジ(押圧部材)28が設けてあり、スポンジ28は燃料キャプ13の上面に接当して、キャップカバー17を閉じたときに、その弾性力によってキャップカバー17が機体振動によってガタ付くことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−307983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される施錠機構20は、施錠する際にキャップカバー17をスポンジ28の弾性力に抗して押し下げた状態でキー操作を行い、そして、ロックピン25を突起30bを越えて回動することにより、キャップカバー17を施錠することができる。
然しながら、上記施錠機構20は、ヒンジ19のガタ等によってキャップカバー17を悪戯によって強く押し引きした際に、ロックピン25が突起30bを越えてフック30から離脱してしまうことがあり、施錠機構20が有効に機能しない虞れがあった。
また上記施錠機構20は施錠及び解錠を行う際に、キャップカバー17をスポンジ28の弾性力に抗して押し下げて、ロックピン25を突起30bを乗り越えるように回動しなければならないので、キャップカバー17の押し下げを行なわずにキーを回動させたり、フック30に錆を生じていたような場合には、キー操作が重くなり、無理にキー操作を行おうとするとキー自体を折損する等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は係る課題を解決するために、第1に、燃料タンク11の給油部14を覆うキャップカバー17をヒンジ19を介して開閉自在になすと共に、キャップカバー17の開放を阻止する施錠機構20を設けた作業車両1において、前記施錠機構20は、キャップカバー17に装着したキーシリンダ21と、キーシリンダ21に設けたロックピン25と、ロックピン25が係合する燃料タンク11側に設けたフック30と、キャップカバー17に設けたガイドプレート32とによって構成し、上記ロックピン25が回動されてフック30に係合する施錠時に、ガイドプレート32はロックピン25と共にフック30を左右
から挟み込んで、キャップカバー17の開放を阻止することを特徴としている。
第2に、前記ガイドプレート32はフック30の上面に接当する押え部33を備え、上記ロックピン25が回動されてフック30に係合する施錠時に、押え部33はロックピン25と共にフック30を上下から挟み込んで、キャップカバー17の上下動を阻止することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、キャップカバーを閉じキーシリンダのロックピンを回動して燃料タンク側のフックに係合させる施錠時に、ガイドプレートがロックピンと共にフックを左右から挟み込んで施錠するようにしたことにより、キャップカバーの左右移動を規制することができるので、キャップカバーの開放を阻止して施錠機構を有効に機能させることができる。またフックにロックピンの抜け出しを阻止する突起を設ける必要がなくなるので、キー操作を軽く行えるようになり、キーの折損を防止することができる。
請求項2の発明によれば、ガイドプレートに押え部を備えたことにより、ロックピンをフックに係合させた施錠時に、押え部がロックピンと共にフックを上下から挟み込むので、キャップカバーの上下動を阻止することができ、スポンジを設けなくてもキャップカバーのガタ付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】トラクタの斜視図である。
【図2】第1実施形態に関わるキャップカバーの施錠状態を示す平面図である。
【図3】キャップカバーを一部破断して示す平面図である。
【図4】キャップカバーを一部破断して示す側面図である。
【図5】キャップカバーを一部破断して示す正面図である。
【図6】キャップカバーの開放状態を示す後面図である。
【図7】第2実施形態に関わるキャップカバーの施錠状態を示す平面図である。
【図8】キャップカバーを一部破断して示す側面図である。
【図9】キャップカバーを一部破断して示す正面図である。
【図10】キャップカバーの開放状態を示す後面図である。
【図11】従来のキャップカバーを一部破断して示す平面図である。
【図12】キャップカバーを一部破断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。符号1は農業用のトラクタ(作業車両)を示し、このトラクタ1は前輪2と後輪2aとを前後左右に有する走行機体3に、前側からエンジン4を配設してボンネット5で覆い、その後方にハンドル及び座席等からなる操縦部6をキャビン7で覆い、機体後部に耕耘装置等の作業機を装着する連結部を備えている。
【0009】
操縦部6のフロア9の前部でフロアフレーム10の下方には、エンジン4に燃料を供給する燃料タンク11が左右に分割して配置されており、各燃料タンク11は機体中央に位置するトランスミッションケースの両側に取付部材を介して取付けられている。
そして、図1〜図6で示すように左側の燃料タンク11の前側の上面には、燃料給油口12が設けてあり、該燃料給油口12には燃料キャプ13が着脱自在に設けられ給油部14を構成している。また給油部14と燃料タンク11の側面とを燃料タンクカバー15で覆っている。
【0010】
この燃料タンクカバー15は、平面視でL字状をなして燃料タンク11の前面と側面を覆う側面カバー16と、燃料タンク11の給油部14を覆うキャップカバー17によって構成している。
側面カバー16は、燃料タンク11の前側面と左側面に沿って所定間隙を有し、カバー上縁を燃料タンク11の上面と略同じ高さとなしてこれを覆っている。
【0011】
キャップカバー17は、平面視で略三角形の下向き椀型形状をなし、カバー下縁の前部と側部を前記側面カバー16のカバー上縁に対向させた形状にしている。
またキャップカバー17は、ヒンジ19を介して燃料タンク11の前部側で側面カバー16に連結し、且つ外側寄りの後部を施錠機構20によって側面カバー16に施錠するようにしている。これによりキャップカバー17は、図1〜図5で示す閉鎖状態から施錠機構20を解錠することにより、図6で示すようにヒンジ19を支点に上向き回動させて、給油部14を大きく露出させた開放状態にすることができ、燃料キャプ13を外して燃料給油口12から給油をすることができる。
【0012】
次に、本発明の第1実施形態に関わる施錠機構20を図1〜図6を参照し詳述する。
この施錠機構20はキャップカバー17の左側寄りの後部にキーシリンダ21を設置しており、該キーシリンダ21はロータケース22にキー(図示せず)を差込み操作するロータ22aを回動自在に軸支しており、ロータケース22をキャップカバー17に穿設した取付孔に挿入した状態で、裏側からナット23をロータケース22のネジ部に螺装することにより、キャップカバー17を挟んだ状態で締着固定している。
【0013】
そして、キーシリンダ21は、ロータ22aの下端に側面視で逆L字状をなす取付片26を固設し、その縦片部にロックピン25を横向に突設している。これによりキー操作に基づくロータ22aの回動によりロックピン25を、側面カバー16の内側から上向きに突設されるフックプレート27に係脱自在に係合させるようにしている。
またキャップカバー17は、その裏面にブロック状のスポンジ等からなる弾力性を有する押圧部材28を設けており、この押圧部材28はキャップカバー17を閉じたときに、燃料キャップ13の上面と接当し、機体振動に伴うキャップカバー17のガタ付きを防止している。
【0014】
前記フックプレート27は、帯板状の基部を側面カバー16の内面に固設しており、側面カバー16の上端から突出する部位に、ロックピン25を嵌挿させる係合溝29を右方から横向きU字状に穿設しフック30を構成している。またフック30の先端は突起を設けることなくフラットにしている。
これによりキャップカバー17を、押圧部材28の弾性力に抗してヒンジ19を支点に下向きに押圧して閉じ、ロータ22aに差込んだキーを施錠方向に操作すると、ロックピン25が回動し係合溝29に嵌まり、キャップカバー17が施錠される。
【0015】
そして、施錠操作後に手を離し押圧を解除すると、押圧部材28がキャップカバー17を持ち上げようとするが、その場合、フック30の係合面30aにロックピン25が接当するので、キャップカバー17の上動が阻止され、キャップカバー17は機体振動によるガタ付きが阻止される。
また解錠する際には、キャップカバー17を押圧部材28の弾性力に抗して下向きに押圧し、フック30の係合面30aに対するロックピン25の押接を解除した状態で、差込んだキーを解錠方向に操作する。これによりキーに無理な力を掛けることなくロータ22aを回動させて、係合溝29からロックピン25を離脱させて解錠することができる。
【0016】
上記キャップカバー17は、ロックピン25が位置する近傍の側壁内面に、施錠状態においてフックプレート27の左側端面に接当させる接当片31を有するガイドプレート32を固設している。この接当片31は、キャップカバー17の内面に固設した板状のガイドプレート32の一端を内側に向けてL字状に屈曲させることにより、縦向きのストッパとなるようにしている。これによりキャップカバー17を図6で示す開放状態からヒンジ
19を支点に閉鎖方向に回動するとき、接当片31はフックプレート27の左側端面に近接しながら接当するので、キャップカバー17の開閉時のガイドになると共に、キャップカバー17の右側への移動を規制するストッパになる。
【0017】
またロックピン25は、施錠操作によって係合溝29内に挿入されて、その溝奥でフック30に接当し、キャップカバー17の左側への移動を規制する。従って、施錠機構20は施錠時にガイドプレート32がロックピン25と共にフック30を左右から挟み込むことになるので、キャップカバー17がヒンジ19にガタを有していても、キャップカバー17の左右移動を規制しフック30からロックピン25の離脱を防止し、キャップカバー17の開放を阻止することができる。
尚、フックプレート27は、フック30の先端部にアール面状の面取り部を形成して、ロックピン25を係合溝29内にスムーズに挿入させるようにしており、且つ前側上部のコーナー部をアール面状に形成することにより、接当片31を適正接当姿勢にスムーズに案内させるようにしている。
【0018】
以上のように構成したトラクタ1は、燃料タンク11を側面カバー16で覆うと共に、給油部14をキャップカバー17によって覆い、またキャップカバー17を閉鎖状態で施錠することができるので、給油部14に対する悪戯を防止することができる。また側面カバー16にヒンジ19を支点として開閉されるキャップカバー17は、泥などが乗ったとしてもキャップカバー17を開ける動作によって泥を機外前部に落すことができるので、燃料キャプ13を外して行なう給油時に、泥が燃料給油口12を介してタンク内に侵入する等の不都合を回避することができる。
【0019】
またキャップカバー17を閉じキーシリンダ21に差込んだキーを操作し、ロックピン25を燃料タンク11側のフック30に係合させる施錠時において、キャップカバー17に設けたガイドプレート32がフック30の左側に接当する状態で、ロックピン25が係合溝29に挿入されてフック30の右側に接当するので、ガイドプレート32とロックピン25によってフック30を左右から挟み込んで施錠することができる。
【0020】
従って、上記のように施錠された状態のキャップカバー17は、悪戯により無理やりキャップカバー17を左方又は右方に移動させようとしても、キャップカバー17は、ガイドプレート32がロックピン25と共にフック30を左右から挟み込んでいることにより移動させることができず、従って、施錠を解くことができないのでキャップカバー17の開放を確実に阻止することができる。
【0021】
またフック30は従来のもののようにロックピン25の抜け出しを阻止する突起を設ける必要がなくなるため、ロックピン25を係合溝29に嵌挿及び離脱させるとき、ロックピン25はフック30の平坦な係合面30aに沿ってスムーズに回動するので、係合面30aに錆を生じたり泥土等が付着していたとしても、キー操作を軽く行えるようになりキーの折損を防止することができる。
【0022】
次に、図7〜図10を参照し施錠機構20の第2実施形態について説明する。尚、前記実施形態と同様な構成及び作用については説明を省略する。この施錠機構20はキャップカバー17に取付けられる前記接当片31を有するガイドプレート32に、フック30の上面に接当しキャップカバー17の施錠位置を位置決めする押え部33を、接当片31に隣接して直交する横方向から内側に向けてL字状に屈曲させて設けている。
これによりキャップカバー17を閉じるとき、押え部33はフック30の上面に接当してキャップカバー17を施錠位置に位置決めするストッパになり、この位置でロックピン25は係合溝29に対し嵌挿及び離脱をさせることができる。
【0023】
即ち、この施錠機構20によれば、キャップカバー17を図10で示す開放状態からヒンジ19を支点に閉鎖するとき、ガイドプレート32の接当片31がフック30の左側端面に接当し、且つ押え部33がフック30の上面に接当するので、ロックピン25を係合溝29に嵌挿させる施錠位置に簡単に位置決めすることができる。従って、この位置でキー操作を行うことにより、ロックピン25はスムーズ回動して係合溝29内に確実に嵌挿する。
【0024】
そして、この施錠状態において接当片31とロックピン25はフック30を左右から挟み込むので、キャップカバー17の左右移動を阻止し、且つ押え部33がロックピン25と共にフック30を上下から挟み込むためキャップカバー17の上下動を阻止することができる。
従って、キャップカバー17はヒンジ19にガタを有していたとしても、左右及び上下方向のガタ付きや機体振動に伴う騒音の発生等を防止することができる。
【0025】
また接当片31と押え部33が上方からフック30の側部と上部に同時に接当して、キャップカバー17を施錠位置に位置決めするので、押圧部材28の設置を省略することができ、この場合でもキャップカバー17のガタ付きを防止することができる。
また解錠操作時に、キー操作の負荷を軽減しロックピン25を係合溝29から容易に離脱させることができるので、キーの折損を防止することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 トラクタ(作業車両)
11 燃料タンク
14 給油部
16 側面カバー
17 キャップカバー
19 ヒンジ
20 施錠機構
21 キーシリンダ
25 ロックピン
27 フックプレート
29 係合溝
30 フック
30a 係合面
31 接当片
32 ガイドプレート
33 押え部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(11)の給油部(14)を覆うキャップカバー(17)をヒンジ(19)を介して開閉自在になすと共に、キャップカバー(17)の開放を阻止する施錠機構(20)を設けた作業車両(1)において、前記施錠機構(20)は、キャップカバー(17)に装着したキーシリンダ(21)と、キーシリンダ(21)に設けたロックピン(25)と、ロックピン(25)が係合する燃料タンク(11)側に設けたフック(30)と、キャップカバー(17)に設けたガイドプレート(32)とによって構成し、上記ロックピン(25)が回動されてフック(30)に係合する施錠時に、ガイドプレート(32)はロックピン(25)と共にフック(30)を左右から挟み込んで、キャップカバー(17)の開放を阻止することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ガイドプレート(32)はフック(30)の上面に接当する押え部(33)を備え、上記ロックピン(25)が回動されてフック(30)に係合する施錠時に、押え部(33)はロックピン(25)と共にフック(30)を上下から挟み込んで、キャップカバー(17)の上下動を阻止することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−157005(P2011−157005A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21351(P2010−21351)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】