説明

作業車両

【課題】PTO変速レバーの中立位置検出を利用したエンジン始動規制機能と、PTO変速レバーによる変速切換操作の規制機構との両方を有して、製造コストも低く抑えることが可能な作業車両を提供する。
【解決手段】PTO軸への動力の変速切換を揺動操作によって行うPTO変速レバー44が中立位置に揺動されることによりPTO軸に動力が伝動されないニュートラルに切換えられた状態を検出する検出スイッチ53を設け、ニュートラル状態が検出されない場合にはエンジンを始動しないエンジン始動規制手段を有する作業車両であって、PTO変速レバー44の中立位置から一方側への変速切換操作を許容し、且つ他方側への変速切換操作を規制することが可能な規制体66を設け、検出スイッチ53を、規制体66のPTO変速レバー44の変速切換操作を規制する側に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PTO軸への動力の変速切換を揺動操作によって行うPTO変速レバーを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
PTO軸への動力の変速切換を揺動操作によって行うPTO変速レバーを備えた作業車両が従来公知であり、このような作業車両では、PTO変速レバーを中立位置に揺動させ、PTO軸に動力が伝動されないニュートラルに切換えた後に、エンジンを始動するのが一般的である。
【0003】
この作業車両をさらに改良したものとして、該PTO変速レバーが中立位置に揺動されることによりPTO軸に動力が伝動されないニュートラルに切換えられた状態を検出する検出スイッチを設け、該検出スイッチによって上記ニュートラル状態が検出されない場合にはエンジンを始動しないエンジン始動規制手段を備え、該エンジン始動規制手段によって、不測にPTO軸が回転駆動されることを防止する特許文献1に示す作業車両が公知になっている。
【0004】
一方、PTO変速レバーの中立位置から一方側への変速切換操作を許容するとともに他方側への変速切換操作を規制する規制体を設け、状況に応じてPTO変速レバーによるPTO軸の変速切換操作を規制することが可能な特許文献2に示す作業車両が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−22930号公報(第1−2図)
【特許文献2】実公平3−9474号公報(第3−4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のようなエンジン始動規制機能と、特許文献2のようなPTO変速レバーによる変速切換操作の規制機能との両方を有するようにするためには、検出スイッチ及び規制体の他に、通常、検出スイッチを支持するブラケット等の支持部材も必要になり、部品点数が増加して製造コストを低く抑えることが困難になる。
本発明は、PTO軸への動力の変速切換を揺動操作によって行うPTO変速レバーを備えた作業車両において、PTO変速レバーの中立位置検出を利用したエンジン始動規制機能と、PTO変速レバーによる変速切換操作の規制機構との両方を有して、製造コストも低く抑えることが可能な作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は第1に、PTO軸9への動力の変速切換を揺動操作によって行うPTO変速レバー44を備え、該PTO変速レバー44が中立位置に揺動されることによりPTO軸9に動力が伝動されないニュートラルに切換えられた状態を検出する検出スイッチ53を設け、該検出スイッチ53によって上記ニュートラル状態が検出されない場合にはエンジンを始動しないエンジン始動規制手段を有する作業車両であって、PTO変速レバー44の中立位置から一方側への変速切換操作を許容し、且つ他方側への変速切換操作を規制することが可能な規制体66を設け、前記検出スイッチ53を、規制体66のPTO変速レバー44の変速切換操作を規制する側に設置して、PTO変速レバー44が中立位置に揺動された際にPTO軸9に動力が伝動されないニュートラルに切換えられた状態を検出するように構成してあることを特徴としている。
【0008】
第2に、前記規制体66の設置位置および向きを、上記中立位置を挟んでPTO変速レバー44の揺動方向反対側に変更可能なように、該規制体66及び規制体66を支持する支持部材64を構成することにより、前記規制体66によってPTO変速レバー44の中立位置から上記他方側への変速切換操作を許容し、且つ上記一方側への変速切換操作を規制することが可能に構成してあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、PTO変速レバーの中立位置から一方側への変速切換操作を許容し、且つ他方側への変速切換操作を規制する規制体を設けるとともに、規制体のPTO変速レバーの変速切換操作を規制する側に設置された検出スイッチによって、PTO変速レバーが中立位置に揺動された際にPTO軸に動力が伝動されないニュートラルに切換えられた状態を検出するため、検出スイッチを支持するブラケット等の支持部材を別途設ける必要が無く、製造コストを低く抑えることが可能になる。
【0010】
また、前記規制体の設置位置および向きを、上記中立位置を挟んでPTO変速レバーの揺動方向反対側に変更可能なように、該規制体及び規制体を支持する支持部材を構成することにより、前記規制体によってPTO変速レバーの中立位置から上記他方側への変速切換操作を許容し、且つ上記一方側への変速切換操作を規制することが可能なため、PTO変速レバーの中立位置から一方側への変速切換操作を規制する状態と、PTO変速レバーの中立位置から他方側への変速切換操作を規制する状態とを状況に応じて選択可能になり、汎用性や利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した農業用トラクタの全体側面図である。
【図2】動力伝動装置の構成を示すミッションケースの側断面図である。
【図3】操縦部の左側操作パネルの構成を示す斜視図である。
【図4】(A)は支持ブラケットの斜視図であり、(B)は規制体の斜視図である。
【図5】PTO変速レバーの高速側への揺動操作が許容された状態時における左側操作パネルの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明を適用した農業用トラクタの全体側面図である。作業車両の一種であるトラクタは、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2によって前後方向の車台3を支持し、該車台3上の前側半部にエンジンを開閉自在に覆うボンネット4を設ける一方で、車台3上におけるボンネット4後方に操縦部6を設置することにより走行機体7を構成し、該走行機体7の後部にリンク機構8を介して昇降自在に図示しないロータリ耕耘装置(作業機)を連結している。
【0013】
ロータリ耕耘装置は、圃場において耕耘作業を行うように構成され、走行機体7の後端部には、このロータリ耕耘装置に駆動力を出力する前後方向のPTO軸9が設置されている。ロータリ耕耘装置がリンク機構8によって走行機体7に連結されると、後方突出するPTO軸9がロータリ耕耘装置側に挿入されてスプライン結合され、エンジン動力を走行機体7側からロータリ耕耘装置に伝動可能な状態になる。
【0014】
このPTO軸9と、後輪2および前輪1とにエンジン動力を伝動する動力伝動装置11(図2参照)が、走行機体7のフレームの一部を構成するように前後方向に延びたミッションケース12内に設置されている。
【0015】
図2は、動力伝動装置の構成を示すミッションケースの側断面図である。動力伝動装置11は、主に、エンジン動力が主クラッチ(図示しない)を介して断続伝動される前後方向の入力軸13と、走行側伝動機構14と、作業側伝動機構16とから構成されている。
【0016】
上記走行側伝動機構14は、入力軸13の動力を前後進切換軸17に伝動する前後進切換部18と、前後進切換軸17の動力を主変速軸19に伝動する主変速部21と、主変速軸19の動力を図示しない走行伝動軸に伝動する副変速部22とを備えている。走行伝動軸の動力は、常時後輪2,2に伝動されるとともに、前輪駆動部23を介して前輪1,1にも伝動させることが可能である。ちなみに、前輪1へのエンジン動力の伝動の断続は、前輪駆動部23によって行う。
【0017】
前後進切換部18は、単一の前後進側シフタ24によって、前後進切換軸17に前進動力を伝動する前進状態と、前後輪切換軸17に後進動力を伝動する後進状態と、前後輪切換軸17に動力を伝動しないニュートラル状態との何れかに切換可能に構成されている。
【0018】
主変速部21は、一対のシフタ26,27によって、低速側である1速から高速側である4速までの間で、4段の走行変速切換を行うことが可能なように構成されている。具体的には、低速側シフタ26によって1速と2速の切換を行う一方で、高速側シフタ27によって3速と4速の切換を行う他、この一対のシフタ26,27は両方又は一方が必ずニュートラル状態になるように構成されている。このため、主変速部21は、全体として、ニュートラル、1速、2速、3速または4速の何れかに切換えられ、その変速段に応じた回転速度の動力が主変速軸19に伝動される。
【0019】
副変速部22は、副変速側シフタ(図示しない)によって、走行伝動軸に低速動力を伝動する低速状態と、走行伝動軸に高速動力を伝動する高速状態と、走行伝動軸に動力を伝動しないニュートラル状態との何れかに切換可能に構成されている。
【0020】
上記作業側伝動機構16は、入力軸13と同一軸心となり且つ入力軸13の後方に軸回りに回転自在に支持された作業側伝動軸28と、入力軸13から作業側伝動軸28への動力伝動を断続する油圧クラッチである作業クラッチ29と、作業側伝動軸28の動力をPTO軸9に変速伝動する作業側変速部31とを備えている。ちなみに、PTO軸9は、前部及び中途部がミッションケース12内に収容され、自身の軸回りに回転自在に片持ち支持されている。
【0021】
作業クラッチ29は、電磁弁による圧油の供給・排出によって断続制御され、これによって、エンジン動力の作業側伝動軸28への伝動を有無の切換を行う。
【0022】
作業側変速部31は、作業側伝動軸28と一体回転する大径の高速側入力ギヤ32Aおよび小径の低速側入力ギヤ32Bと、PTO軸9に軸回りに遊転状態で支持された小径の高速側出力ギヤ33Aおよび大径の低速側出力ギヤ33Bと、PTO軸9上において上記2つの出力ギヤ33A、33Bの間に配置された作業側シフタ34とを備えている。高速側入力ギヤ32Aと高速側出力ギヤ33Aとは常時噛合うとともに、低速側入力ギヤ32Bと低速側出力ギヤ33Bとは常時噛合い、作業側シフタ34は、PTO軸9と一体回転し且つPTO軸9の軸方向に往復移動可能に支持されている。
【0023】
作業側変速部31では、上記作業側シフタ34を高速側出力ギヤ33A側に変位させることにより、該高速側出力ギヤ33Aが作業側シフタ34とともにPTO軸9と一体で高速回転して、該PTO軸9が高速で回転駆動される高速状態になる一方で、上記作業側シフタ34を低速側出力ギヤ33B側に変位させることにより、該低速側出力ギヤ33Bが作業側シフタ34とともにPTO軸9と一体で低速回転して、該PTO軸9が低速で回動駆動される低速状態になる他、上記作業側シフタ34を両出力ギヤ33A,33Bの間の中立位置に変位させることにより、PTO軸9に動力を伝動しないニュートラル状態になる。
【0024】
図3は、操縦部の左側操作パネルの構成を示す斜視図である。図1及び3に示すように、操縦部6は、左右の後輪2をそれぞれカバーする一対のフェンダ36,36の間に設置された座席37と、座席37の前方に配置されたステアリングハンドル38と、ステアリングハンドル38の側方に前後揺動操作可能に支持された前後後進切換レバー39と、座席37の左右のフェンダ36,36に沿うようにそれぞれ形成された一対の操作パネル41,41とを備えている。この一対の操作パネル41,41の一方側(図示する例では左側)には、主変速レバー42と、副変速レバー43と、PTO変速レバー44とが、それぞれ揺動操作可能に支持されている。具体的には、主変速レバー42の後方にPTO変速レバー44が配置され、主変速レバー42及びPTO変速レバー44の左右内側に副変速レバー43が配置されている。
【0025】
上記前後進切換レバー39は、上述した前後進側シフタ24に、前後進側連係機構(図示しない)を介して機械的に連結されており、この前後進切換レバー37の前後揺動操作によって、上述した前後進切換部18を、前進状態、後進状態またはニュートラル状態の何れかに切換えて車体の前後進切換を行う。
【0026】
上記主変速レバー42は、レバーガイド46のガイド孔46aに挿通された状態で支持され、上記主変速レバー42と上述の一対のシフタ26,27との間には、主変速レバー42の揺動操作に伴って一対のシフタ26,27を作動させる主変速側連動機構47が設けられており、主変速レバー42の揺動操作によって、主変速部21を1〜4速又はニュートラルの何れかの状態に切換え、車体の走行変速を行う。
【0027】
上記副変速レバー43は、レバーガイド48のガイド孔48aに挿通された状態で支持され、上述した副変速側シフタに、副変速側連係機構49を介して機械的に連結されており、副変速レバー43の前後揺動操作によって、副変速部22を、低速状態または高速状態の何れかに切換えて車体の走行変速を行う。
【0028】
上記PTO変速レバー44は、レバーガイド51のガイド孔51aに挿通された状態で支持され、上述した作業側シフタ34に、作業側連係機構52を介して機械的に連結されており、このPTO変速レバー44の前後揺動操作によって、作業側変速部31を、高速状態、低速状態またはニュートラル状態の何れかに切換え、PTO軸9の駆動速度(ロータリ耕耘装置の駆動速度)を変更する。
【0029】
本トラクタには、マイコン等からなる制御部(図示しない)が搭載されている。この制御部は、エンジン始動規制手段を、プログラムとして備えている。エンジン始動規制手段は、キー操作等によるエンジン始動操作を行っても、所定条件を満たしていない場合には、エンジンが始動しないようにエンジン始動を規制するように構成されている。具体的には、上記主クラッチが切断されて入力軸13にエンジン動力が伝動されない状態であって、且つ、上記作業クラッチ29が切断されて作業側伝動軸28にエンジン動力が伝動されない状態であって、且つ、作業側変速部31がニュートラル状態である場合にのみ、エンジンの始動を許容するように上記エンジン始動規制手段を構成している。
【0030】
なお、操縦部6には、作業クラッチ29の断続操作を入切によって行うPTOスイッチ(図示しない)が設置されており、制御部は、このPTOスイッチの入切検出によって、作業クラッチ29の断続状態の検出を行う。また、作業側変速部31のニュートラル状態の検出は、制御部の入力側に接続された後述の検出スイッチ53によって行う。
【0031】
該構成のエンジン始動規制手段によって、エンジン始動時に、PTO軸9が不測に回転駆動される事態や、車体が不測に走行駆動される事態等が防止される。
【0032】
次に、図3〜図5に基づき、PTO変速レバー44の構成を詳述する。
図4(A)は支持ブラケットの斜視図であり、(B)は規制体の斜視図である。PTO変速レバー44は、上下方向のレバー部54と、オペレータが把持する把持部56とから構成されている。
【0033】
上記レバー部54は、上部及び中途部側のレバー杆57と、下部側の支持杆58とから構成されている。支持杆58は、上下方向に延びる板状部材の上側半部を下側半部に対して左右外側に屈曲形成することにより構成されている。この支持杆58の屈曲形成された部分は取付座部58aとなるとともに、支持杆58の下端部には左右方向の支持軸59が設置され、この支持軸59によって支持杆58が支持軸59の軸回りに前後回動可能に支持されている。一方、レバー杆57は、ガイド孔51aから上方側に突出するように上下方向に形成された上端部に対して、中途部が正面視左右内側に向かって下降する階段状に屈曲形成され、下端部が上記階段状の中途部に対して左右内側に屈曲されて取付部57aを構成している。この取付部57aと上記取付座部58aとを重ね合せてボルト等により締着固定することにより、レバー杆57と支持杆58とを連結固定し、レバー部54を構成する。
【0034】
上記把持部56は、レバーガイド51のガイド孔51aから上方側に突出するように、レバー杆57の上端部に形成されている。
【0035】
このようにしてなるPTO変速レバー44は、把持部56を把持して支持軸59の軸回りに前後揺動させることにより、作業側変速部31の変速切換操作を行う。具体的には、作業側連結機構52が、支持軸59から後方側に突出形成されて上記支持杆58と一体で上下揺動する連結アーム61と、連結アーム61の後端部に回動自在に連結された上下方向の連結ロッド62等とから構成されている。
【0036】
そして、上記PTO変速レバー44を、揺動方向である前後方向の中立位置に揺動させることにより、作業側連結機構52を介して、作業側シフタ34が一対の出力ギヤ33A,33Bの間の中立位置に変位し、作業側変速部31がニュートラル状態になる。
【0037】
また、上記PTO変速レバー44を、上記中立位置から前方側(低速側)の低速位置に揺動させることにより、作業側連結機構52を介して、作業側シフタ34が低速側出力ギヤ33B側に変位し、作業側変速部31が低速状態になる。
【0038】
さらに、上記PTO変速レバー44を、上記中立位置から後方側(高速側)の高速位置に揺動させることにより、作業側連結機構52を介して、作業側シフタ34が高速側出力ギヤ33A側に変位し、作業側変速部31が高速状態になる。
【0039】
本トラクタでは、このPTO変速レバー44の揺動範囲を一部に規制する規制機構63が設置され、該規制機構63には、PTO変速レバー44が上記中立位置に揺動操作されたことを検知することにより作業側変速部31のニュートラル状態を検出する上述の検出スイッチ52が設けられている。
【0040】
規制機構63は、前後方向に延びる支持ブラケット(支持部材)64と、支持ブラケット64に着脱自在に取付固定される規制体66と、PTO変速レバー44側の作動部67とを備え、上述の検出スイッチ53は規制体66に配置されている。
【0041】
上記支持ブラケット64は、操作パネル41内の空間を上下で隔てるように設置された本体プレート68と、本体プレート68に溶接等で固着された設置プレート69とから構成されている。本体プレート68は、前端部および後端部がそれぞれ走行機体7のフレーム側にボルト固定され、その左右内側箇所には、PTO変速レバー44のレバー部54が揺動可能に挿通される挿通部68aが切欠き形成される。挿通部68aは、PTO変速レバー44の揺動方向である前後方向に形成され、その開放側を塞ぐようにして、平面視でPTO変速レバー44の揺動方向である前後方向に延びる上記設置プレート69が架設固定されている。すなわち、PTO変速レバー44のレバー部54中途側は、本体プレート68及び設置プレート69によって前後左右が囲繞されている。
【0042】
この状態では、PTO変速レバー44のレバー部54が、各揺動位置において、常時、設置プレート69に近接した状態になる。この他、設置プレート69は、側面視下方に窪んだ楔状に屈曲形成されることにより、その中途部および後部の上面が、PTO変速レバー44(さらに具体的には、支持杆58)の揺動方向に沿う設置面71を構成している。
【0043】
上記規制体66は、PTO変速レバー44の揺動方向である前後方向に形成された取付部72と、取付部72の長手方向一方側端部から上方側に一体的に突出形成されて表裏面が前後を向いた板状の起立部73とから構成されており、全体として側面視L字状に成形されている。
【0044】
上記作動部67は、レバー部54の支持杆58から左右方向設置プレート69側に突出形成され且つ表裏面が前後を向いた板状部材である。PTO変速レバー44を低速位置に揺動させると、作動部67が設置面71の低速側端部(前側端部)Lの真上側に位置し、PTO変速レバー44を高速位置に揺動させると、作動部67が設置面71の高速側端部(後側端部)Hの真上側に位置し、PTO変速レバー44を中立位置に揺動させると、作動部67が設置面71の前後方向中央(中立箇所)Nの真上側に位置した状態になる。
【0045】
上述した規制体66は、取付部72の起立部73と反対側の端部(非規制側端部)を、設置面71の低速側(前側)に向けるとともに、取付部72の起立部73側端部(規制側端部)を、設置面71の高速側(後側)に向けた高速側規制姿勢で、設置面71の低速側寄り箇所に着脱自在にボルト固定することが可能である一方で、規制体66は、取付部72の非規制側端部を設置面71の高速側に向けるとともに、規制側端部を設置面71の低速側に向けた低速側規制姿勢で、設置面71の高速側寄り箇所に着脱自在にボルト固定可能である。
【0046】
さらに詳しく説明すると、この2つの取付状態のうち、一方の取付状態時の規制体66と、他方の取付状態時の規制体66とは、設置面71の上記中立箇所Nに対して、PTO変速レバー44の揺動方向である前後に対称になる。このため、設置プレート69の上記中立箇所Nを挟んだ前後対称位置には、それぞれ複数のボルト孔69aが穿設され、これに対応して、規制体66の取付部72にも、中立位置Nを挟んだ一方側のボルト孔71aと同数且つ同間隔のボルト孔72aが穿設されており、これらのボルト孔69a,72aと、該ボルト孔69a,72aに挿入されるボルト74とによって、規制体66が設置プレート69に着脱自在に取付固定される。
【0047】
換言すると、規制体66の設置位置および向きが、PTO変速レバー44の中立位置(設置面71の中立箇所N)を挟んで、PTO変速レバー44の揺動方向反対側に変更可能なように、支持ブラケット64および規制体66が構成されている。
【0048】
上記検出スイッチ53は、本体部53aと、該本体部53aから先端側に向かって進退自在に突出した検出部53bとからなる。この検出部53bは切作動側である進出側に常時付勢されており、この付勢力に抗して、本体部53aの内部側である退避側に検出部53bが押込まれることにより、検出スイッチ53が入作動する。
【0049】
この検出スイッチ53を、規制体66におけるPTO変速レバー44の揺動操作を規制する側である前記規制側に、設置するにあたり、検出部53bが、起立部73の設置孔73aに挿通されて非規制側(図3に示す例では前側)に突出するようにして、本体部53aが該起立部73の該突出側と反対面側にネジ等で取付固定される。
【0050】
このように構成される規制機構63において、検出スイッチ53が設置され且つ高速側規制姿勢に切換えられた規制体66を、設置プレート69の設置面71の上記低速側寄り箇所に取付固定した場合、PTO変速レバー44を低速位置から中立位置に揺動操作すると、作動部67が検出部53bと当接し、該検出部53bが退避側に押込まれ、検出スイッチ53を入状態になるとともに、PTO変速レバー44がそれ以上高速側に揺動されない状態になる。すなわち、規制体66の規制側に配された検出スイッチ53によって、PTO変速レバー44の中立位置への揺動操作が検出されるとともに、PTO変速レバー44の中立位置から高速位置への揺動が規制される一方で、PTO変速レバー44の中立位置から低速位置への揺動が許容される。
【0051】
図5は、PTO変速レバーの高速側への揺動操作が許容された状態時における左側操作パネルの要部斜視図である。一方、検出スイッチ53が設置され且つ低速側規制姿勢に切換えられた規制体66を、設置プレート69の設置面71の上記高速側寄り箇所に取付固定した場合、PTO変速レバー44を高速位置から中立位置に揺動操作すると、作動部67が検出部53bと当接し、該検出部53bが退避側に押込まれ、検出スイッチ53を入状態になるとともに、PTO変速レバー44がそれ以上低速側に揺動されない状態になる。すなわち、規制体66と、該規制体66の規制側に配された検出スイッチ53によって、PTO変速レバー44の中立位置への揺動操作が検出されるとともに、PTO変速レバー44の中立位置から低速位置への揺動が規制される一方で、PTO変速レバー44の中立位置から高速位置への揺動が許容される。
【0052】
以上のように構成される本トラクタによれば、作業側変速部31の高速状態への変速切換操作を規制する部材と、作業側変速部31の低速状態への変速切換操作を規制する部材とを、単一の規制体66の着脱によって兼用できるとともに、作業側変速部31のニュートラル状態を検出する検出スイッチ53を支持する部材も規制体66によって兼用されるため、部品点数を少なくして、コストを低減させることが可能になる。これに加え、規制体66による規制により、作業側変速部31が高速状態から低速状態、又は、低速状態から高速状態に直接、変速切換えされることが防止される。
【0053】
また、本体プレート68によって、作パネル41内の空間が上下で隔てられるため、支持ブラケット64の下方側に配置された部材の上方側が、該本体プレート68によってカバーされ、保護される。
【符号の説明】
【0054】
9 PTO軸
44 PTO変速レバー
53 検出スイッチ
64 支持ブラケット(支持部材)
66 規制体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTO軸(9)への動力の変速切換を揺動操作によって行うPTO変速レバー(44)を備え、該PTO変速レバー(44)が中立位置に揺動されることによりPTO軸(9)に動力が伝動されないニュートラルに切換えられた状態を検出する検出スイッチ(53)を設け、該検出スイッチ(53)によって上記ニュートラル状態が検出されない場合にはエンジンを始動しないエンジン始動規制手段を有する作業車両であって、PTO変速レバー(44)の中立位置から一方側への変速切換操作を許容し、且つ他方側への変速切換操作を規制することが可能な規制体(66)を設け、前記検出スイッチ(53)を、規制体(66)のPTO変速レバー(44)の変速切換操作を規制する側に設置して、PTO変速レバー(44)が中立位置に揺動された際にPTO軸(9)に動力が伝動されないニュートラルに切換えられた状態を検出するように構成してある作業車両。
【請求項2】
前記規制体(66)の設置位置および向きを、上記中立位置を挟んでPTO変速レバー(44)の揺動方向反対側に変更可能なように、該規制体(66)及び規制体(66)を支持する支持部材(64)を構成することにより、前記規制体(66)によってPTO変速レバー(44)の中立位置から上記他方側への変速切換操作を許容し、且つ上記一方側への変速切換操作を規制することが可能に構成してある請求項1に記載の作業車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−25264(P2012−25264A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165315(P2010−165315)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】