説明

作業車

【課題】作業車に設けられる座席の高さ調整構造であって、アーム部材や支点越え弾機を用いて構成される高さ調整機構に比べ、大幅なコストダウンを図る。
【解決手段】座席取付面4上に座席1を備える作業車において、座席取付面4と座席1の下面との間に介設されるクッションゴム6を、取付方向に応じて高さが変化する多面体とし、その取付方向を変えることにより、座席1の高さを調整する。例えば、クッションゴム6を、取付方向に応じて高さが変化する6面体とし、その取付方向を変えることにより、座席1の高さを3段階に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの作業車に関し、詳しくは、作業車に設けられる座席の高さ調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オペレータが座る座席を備えると共に、該座席の高さを調整可能にした作業車が知られている。例えば、特許文献1に記載される作業車では、座席の前端側下面部を、揺動リンクを介して前後位置調整自在に支持する一方、座席の後端側下面部を、後支持アームを介して高さ調整自在に支持している。後支持アームは、座席の後端側を低位置で受け止め支持する倒伏姿勢と、座席の後端側を高位置で受け止め支持する起立姿勢とに姿勢切換えが可能であり、支点越え弾機によって各姿勢が維持されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−59747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載される座席の高さ調整構造は、部品点数が多く、構造が複雑であるため、コスト高を招来するという問題がある。また、後支持アームによる高さ調整は、2段階に過ぎず、3段階以上の調整が困難であるため、オペレータの体格や好みに適応できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、座席取付面上に座席を備える作業車において、前記座席取付面と前記座席の下面との間に介設されるクッションゴムを、取付方向に応じて高さが変化する多面体とし、その取付方向を変えることにより、前記座席の高さを調整することを特徴とする。このようにすると、クッションゴムの取付方向を変更可能にする程度の極めて簡易な構造により、座席の高さ調整が可能になるので、アーム部材や支点越え弾機を用いて構成される高さ調整機構に比べ、大幅なコストダウンが図れる。
また、前記クッションゴムを、取付方向に応じて高さが変化する6面体とし、その取付方向を変えることにより、前記座席の高さを3段階に調整することを特徴とする。このようにすると、安定性の高い6面体(直方体)からなるクッションゴムにより、座席を安定良く支持できるだけでなく、3段階の高さ調整を可能にして、オペレータの体格や好みに対する適応性を向上させることができる。
また、前記座席を、一端側を支点として上下回動自在に支持すると共に、他端側の下面と前記座席取付面との間に介設した前記クッションゴムの取付方向に基づいて高さを調整し、さらに、前記クッションゴムの取付位置を、前記支点に対して遠近方向に変更可能にしたことを特徴とする。このようにすると、クッションゴムの取付位置を変えることにより、座席の高さ調整範囲を広げることができるので、オペレータの体格や好みに対する適応性をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図3において、1はコンバイン(作業車)2の操作部3に設けられる側面視L字状の座席であって、該座席1は、操作部3の座席取付面4上に取り付けられており、座席1の前端側下面と座席取付面4との間には、前後位置調整機構5が介設され、座席1の後端側下面と座席取付面4との間には、高さ調整手段及び角度調整手段を兼ねるクッションゴム6が介設されている。
【0006】
前後位置調整機構5は、前端側を支点として座席1を上下回動自在に支持すると共に、座席1に対する支点位置を前後方向に変更することにより、座席1の前後位置調整を可能にしている。具体的に説明すると、本実施形態の前後位置調整機構5は、座席取付面4に設けられる正面視凵字状の座席取付フレーム7と、座席1の前端側下面に突設される左右一対の座席支持プレート8と、座席取付フレーム7及び座席支持プレート8の挿通孔7a、8aに挿通され、座席1の回動支点となる支軸9と、支軸9の左右両端部に着脱自在に取付けられ、支軸9を抜止めする抜止めピン10とを備えている。座席支持プレート8には、前後方向に所定の間隔を存して3つの挿通孔8aが形成されており、これらの挿通孔8aに対する支軸9の選択的な挿し換えによって、座席1の前後位置を3段階に調整することが可能になる。
【0007】
座席1の後端側下面には、左右一対のボルト軸11が突設されており、クッションゴム6に形成される貫通孔6aをボルト軸11に螺込むことによって、クッションゴム6が座席1の後端側下面に取付けられるようになっている。ここで、本発明のクッションゴム6は、取付方向に応じて高さが変化する多面体としてあり、その取付方向を変えることにより、座席1の高さを調整可能にしている。このようにすると、クッションゴム6の取付方向を変更可能にする程度の極めて簡易な構造により、座席1の高さ調整が可能になるので、アーム部材や支点越え弾機を用いて構成される高さ調整機構に比べ、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0008】
本実施形態では、クッションゴム6を、取付方向に応じて高さが変化する6面体(直方体)とし、その取付方向を変えることにより、座席1の高さを3段階に調整するようにしている。このようにすると、安定性の高い6面体(直方体)からなるクッションゴム6により、座席1を安定良く支持できるだけでなく、3段階の高さ調整を可能にして、オペレータの体格や好みに対する適応性を向上させることができる。
【0009】
次に、クッションゴム6の具体的な形状及び寸法について、図4を参照しつつ説明する。この図に示すように、本実施形態のクッションゴム6は、互いに平行な3組の面を有する6面体(直方体)であり、図4の(B)に示す面を正面とすると、左右幅が50mm、前後幅が40mm、高さが60mmに設定されている。貫通孔6aは、互いに平行な3組の面を直角方向に貫通するように3本形成されており、6つの面のいずれからでもボルト軸11をねじ込むことができるようになっている。そして、図4の(B)に示す面が上面又は下面となるように、クッションゴム6をボルト軸11に取付けると、その実質高さは40mmとなり、座席1の高さは3段階の高さのうち最も低い高さに調整される。また、図4の(C)に示す面が上面又は下面となるように、クッションゴム6をボルト軸11に取付けると、その実質高さは50mmとなり、座席1の高さは3段階の高さのうち中間の高さに調整される。また、図4の(A)に示す面が上面又は下面となるように、クッションゴム6をボルト軸11に取付けると、その実質高さは60mmとなり、座席1の高さは3段階の高さのうち最も高い高さに調整される。尚、本実施形態では、座席1の前端側を上下回動自在に支持しているので、後端側の高さ調整に併せて座席1の前後角度も調整することが可能になる。例えば、本実施形態の寸法設定によれば、6.25°の範囲で座席1の前後角度を調整することができる。
【0010】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、座席取付面4上に座席1を備える作業車において、座席取付面4と座席1の下面との間に介設されるクッションゴム6を、取付方向に応じて高さが変化する多面体とし、その取付方向を変えることにより、座席1の高さを調整するので、クッションゴム6の取付方向を変更可能にする程度の極めて簡易な構造により、座席1の高さ調整が可能になり、その結果、アーム部材や支点越え弾機を用いて構成される高さ調整機構に比べ、大幅なコストダウンが図れる。
【0011】
また、本実施形態では、クッションゴム6を、取付方向に応じて高さが変化する6面体とし、その取付方向を変えることにより、座席1の高さを3段階に調整するので、安定性の高い6面体(直方体)からなるクッションゴム6により、座席1を安定良く支持できるだけでなく、3段階の高さ調整を可能にして、オペレータの体格や好みに対する適応性を向上させることができる。
【0012】
次に、本発明の第二実施形態について、図5を参照しつつ説明する。但し、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同じ符号を付け、前記実施形態の説明を援用する。図5に示すように、第二実施形態は、第一実施形態と同様に、座席取付面4と座席1の下面との間に介設されるクッションゴム6を、取付方向に応じて高さが変化する多面体とし、その取付方向を変えることにより、座席1の高さを調整するものであるが、クッションゴム6の取付位置を、座席1の回動支点(支軸9)に対して遠近方向に変更可能にした点が第一実施形態と相違している。具体的には、第一実施形態のボルト軸11に加え、その前方50mmの位置にボルト軸11を追加し、当該ボルト軸11に対するクッションゴム6の選択的な取り付けを可能にしている。このようにすると、クッションゴム6の取付位置を変えることにより、座席1の高さ調整範囲や前後角度調整範囲(8.75°)を広げることができるので、オペレータの体格や好みに対する適応性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの操作部を示す側面図である。
【図2】第一実施形態を示す座席の側面図である。
【図3】第一実施形態を示す座席の正面図である。
【図4】(A)はクッションゴムの平面図、(B)はクッションゴムの正面図、(C)はクッションゴムの側面図である。
【図5】第二実施形態を示す座席の側面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 座席
4 座席取付面
5 前後位置調整機構
6 クッションゴム
6a 貫通孔
7 座席取付フレーム
7a 挿通孔
8 座席支持プレート
8a 挿通孔
9 支軸
11 ボルト軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席取付面上に座席を備える作業車において、前記座席取付面と前記座席の下面との間に介設されるクッションゴムを、取付方向に応じて高さが変化する多面体とし、その取付方向を変えることにより、前記座席の高さを調整することを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記クッションゴムを、取付方向に応じて高さが変化する6面体とし、その取付方向を変えることにより、前記座席の高さを3段階に調整することを特徴とする請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記座席を、一端側を支点として上下回動自在に支持すると共に、他端側の下面と前記座席取付面との間に介設した前記クッションゴムの取付方向に基づいて高さを調整し、さらに、前記クッションゴムの取付位置を、前記支点に対して遠近方向に変更可能にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−37197(P2008−37197A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212059(P2006−212059)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】