説明

作業車

【課題】操作性を維持しながら作業車の製作コストを下げ易くする。
【解決手段】手動モード入力スイッチ26が、機体フレームの左右のいずれかが上昇又は下降するように、左右のトラックフレームのうちのいずれかを上昇又は下降させるローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能なローリング用手動モード入力スイッチ26aと、左右のトラックフレームを同時昇降させる昇降用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な昇降用手動モード入力スイッチ26bとを各別に備え、ローリング用手動モード入力スイッチ26aが、横長でかつ機体前後方向の軸芯Ya周りに揺動操作自在なシーソースイッチで構成され、昇降用手動モード入力スイッチ26bが、縦長でかつ機体左右方向の軸芯Yb周りに揺動操作自在なシーソースイッチで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動スプロケットが支持された機体フレームと、誘導輪と接地転輪とが支持された左右一対のトラックフレームと、前記駆動スプロケットと前記誘導輪と前記接地転輪とに亘って巻回されたクローラベルトと、前記トラックフレームの前記機体フレームに対する姿勢を上下方向に各別に変更可能な姿勢変更機構と、前記姿勢変更機構の作動を制御する制御装置と、前記姿勢変更機構を手動モードで作動させる制御指令を前記制御装置に入力可能な手動モード入力スイッチを備えている作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の上記作業車では、手動モード入力スイッチが、四つの操作を択一的に選択できるように四方向のいずれかに操作できる十字レバーを備えたスイッチを設けて構成されている。
この十字レバーを備えた手動モード入力スイッチでは、十字レバーを機体の左右方向のいずれか一方に操作することにより、その操作方向の側に走行機体が傾斜するように姿勢変更機構を作動させる制御指令と、十字レバーを機体の前方側に操作することにより、走行機体が下降するように姿勢変更機構を作動させる制御指令と、十字レバーを機体の後方側に操作することにより、走行機体が上昇するように姿勢変更機構を作動させる制御指令とを、制御装置に入力可能に設けてある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−284322号公報(段落[0014],図1,図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
十字レバーを備えたスイッチは、二つの操作のみを択一的に選択できるスイッチに比べて構造が複雑で高価であるために、作業車の製作コストを下げると言う面で改善の余地がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、操作性を維持しながら作業車の製作コストを下げ易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、駆動スプロケットが支持された機体フレームと、誘導輪と接地転輪とが支持された左右一対のトラックフレームと、前記駆動スプロケットと前記誘導輪と前記接地転輪とに亘って巻回されたクローラベルトと、前記トラックフレームの前記機体フレームに対する姿勢を上下方向に各別に変更可能な姿勢変更機構と、前記姿勢変更機構の作動を制御する制御装置と、前記姿勢変更機構を手動モードで作動させる制御指令を前記制御装置に入力可能な手動モード入力スイッチを備えている作業車であって、
前記手動モード入力スイッチが、前記機体フレームの左側又は右側のいずれかが上昇又は下降するように、前記左右一対のトラックフレームのうちのいずれかを択一的に上昇又は下降させるローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能なローリング用手動モード入力スイッチと、前記左右一対のトラックフレームを同時に昇降させる昇降用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な昇降用手動モード入力スイッチとを各別に備え、前記ローリング用手動モード入力スイッチが、機体左右方向に沿った横長で、かつ、機体前後方向の軸芯周りに揺動操作自在なシーソースイッチで構成され、前記昇降用手動モード入力スイッチが、機体前後方向に沿った縦長で、かつ、機体左右方向の軸芯周りに揺動操作自在なシーソースイッチで構成されている点にある。
【0006】
本構成の作業車は、機体フレームの左側又は右側のいずれかが上昇又は下降するように、左右一対のトラックフレームのうちのいずれかを択一的に上昇又は下降させるローリング用手動モードで作動させる制御指令を制御装置に入力可能なローリング用手動モード入力スイッチと、左右一対のトラックフレームを同時に昇降させる昇降用手動モードで作動させる制御指令を制御装置に入力可能な昇降用手動モード入力スイッチとを各別に備えている。
つまり、ローリング用手動モード入力スイッチと昇降用手動モード入力スイッチとの夫々を、十字レバーを備えたスイッチに比べて構造が簡単で安価な二つの操作のみを択一的に選択できるスイッチで構成してあるので、作業車の製作コストを下げ易い。
また、ローリング用手動モード入力スイッチが、機体左右方向に沿った横長で、かつ、機体前後方向の軸芯周りに揺動操作自在なシーソースイッチで構成され、昇降用手動モード入力スイッチが、機体前後方向に沿った縦長で、かつ、機体左右方向の軸芯周りに揺動操作自在なシーソースイッチで構成されているので、機体フレームの左側又は右側のいずれかを上昇又は下降させるときは、機体左右方向に沿った横長のシーソースイッチを操作することができ、機体フレームを昇降させるときは、機体前後方向に沿った縦長のシーソースイッチを操作することができる。
したがって、手動モード入力スイッチを操作する動作と、その操作により実現される機体フレームの動きとの組合せを、運転者の運転感覚に違和感を与え難い組合せに設定することができ、運転者による手動モード入力スイッチの操作間違いの少ない操作性の良い構成が得られる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記ローリング用手動モード入力スイッチが、前記機体フレームの左側が上昇又は下降するように、左右いずれかのトラックフレームを上昇又は下降させる左側ローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な左側ローリング用操作部を左側に備え、前記機体フレームの右側が上昇又は下降するように、左右いずれかのトラックフレームを上昇又は下降させる右側ローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な右側ローリング用操作部を右側に備えたシーソースイッチで構成され、前記昇降用手動モード入力スイッチが、前記左右一対のトラックフレームを同時に上昇させる上昇用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な上昇用操作部と、前記左右一対のトラックフレームを同時に下降させる下降用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な下降用操作部とを、前記機体左右方向の軸芯を挟んで前後に備えたシーソースイッチで構成されている点にある。
【0008】
本構成であれば、ローリング用手動モード入力スイッチにおいて、機体フレームの左側を上昇又は下降させる左側ローリング用操作部を左側に備え、機体フレームの右側を上昇又は下降させる右側ローリング用操作部を走行機体に対して右側に備え、昇降用手動モード入力スイッチにおいて、左右一対のトラックフレームを同時に上昇させる上昇用操作部と、左右一対のトラックフレームを同時に下降させる下降用操作部とを前後に備えているので、ローリング用及び昇降用手動モード入力スイッチを操作する動作と、その操作により実現される機体フレームの動きとの組合せを、運転者の運転感覚に違和感を一層与え難い組合せに設定することができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、運転用表示部と機体の進行方向を設定するための操向操作具とを備え、かつ、走行機体の前方側ほど高くなるように傾斜している運転パネルが、運転座席の前方に設けられ、前記手動モード入力スイッチが、前記運転パネルに前記運転用表示部を挟んで前記操向操作具の左側に配設されている点にある。
【0010】
本構成であれば、手動モード入力スイッチが、運転パネルに運転用表示部を挟んで操向操作具の左側に配設されているので、大多数の運転者の利き手である右手で操向操作具を操作しながら、左手で手動モード入力スイッチを操作することができ、運転者の運転感覚を損ない難い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】機体フレームを下降させた(トラックフレームを上昇させた)クローラ走行装置の側面図である。
【図4】機体フレームを上昇させた(トラックフレームを下降させた)クローラ走行装置の側面図である。
【図5】クローラ走行装置の要部平面図である。
【図6】運転パネルを示す平面図である。
【図7】自動モード入力スイッチと手動モード入力スイッチを示す斜視図である。
【図8】制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,図2は、本発明による作業車の一例としての稲,麦などの穀粒を収穫するためのコンバインを示し、図1は側面図であり、図2は平面図である。
【0013】
コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2に、運転座席3aと運転パネル3bとが配設された運転部3、刈取前処理部4、脱穀装置5、グレンタンク6、穀粒排出用オーガ装置7などを備えている。
なお、以下の説明において、「左」とは運転座席3aに着座した運転者の左側を意味し、「右」とは運転座席3aに着座した運転者の右側を意味している。
【0014】
刈取前処理部4は、植立穀稈を引き起こす引き起こし装置4a、引き起こされた穀稈を刈り取るバリカン型の刈取装置4bなどを備え、走行機体2の前部に横軸芯Xcの周りで上下に駆動揺動自在に支持してある。
【0015】
図3,図4はクローラ走行装置1の側面図であり、図5はクローラ走行装置1の平面図である。
クローラ走行装置1の夫々は、機体前方側の駆動スプロケット8、機体後方側のクローラ緊張輪(誘導輪の一例)9、これらの間に配備された複数の接地転輪10、クローラベルト11を内周側から支持するキャリアローラ12、クローラベルト11の外れ止め用のガイド13などを備え、クローラベルト11は、駆動スプロケット8とキャリアローラ12とクローラ緊張輪9と接地転輪10とに亘って巻回張設されている。
【0016】
駆動スプロケット8とキャリアローラ12は機体フレーム14の側に支持され、クローラ緊張輪9と接地転輪10はトラックフレーム15に支持されている。
機体フレーム14は、走行機体2の下部の略全幅に亘るデッキ状に構成されている。
【0017】
機体フレーム14とトラックフレーム15とに亘って、トラックフレーム15の機体フレーム14に対する姿勢を上下方向に各別に変更可能な姿勢変更機構16を設けてある。
姿勢変更機構16は、機体前方側の前部揺動機構16aと機体後方側の後部揺動機構16bとを、機体フレーム14とトラックフレーム15とに亘って設けて構成してある。
【0018】
前部揺動機構16aと後部揺動機構16bの夫々は、機体フレーム14に機体横外方に向けた横向きに軸芯Xa,Xb周りで回転自在に支持してある揺動支軸17a,17bと、揺動アーム18a,18bと、操作アーム19a,19bとを備え、揺動支軸17a,17bの夫々はクローラベルト11の内周側に入り込ませてトラックフレーム15よりも高い位置に配置してある。
【0019】
揺動アーム18a,18bは、揺動支軸17a,17bの機体外方側への突出端側に一体に固定され、操作アーム19a,19bは、揺動支軸17a,17bの機体内方側への突出端側に一体に固定されている。
【0020】
前部揺動機構16aにおける揺動アーム18aの揺動端側は、トラックフレーム15の上面側に一体固定してある連結支持部20にピン20aで上下揺動自在に連結してある。
後部揺動機構16bにおける揺動アーム18bの揺動端側は、トラックフレーム15にピン21aで揺動自在に連結された揺動リンク21に、ピン21bで上下揺動自在に連結してある。
【0021】
前部揺動機構16aと後部揺動機構16bの操作アーム19a,19bどうしを連結ロッド22で連結して四連リンクを構成してあり、後部揺動機構16bの操作アーム19bと機体フレーム14とを油圧シリンダ23で連結してある。
【0022】
後部揺動機構16bにおける揺動アーム18bの揺動支点間の長さは、前部揺動機構16aにおける揺動アーム18aの揺動支点間の長さよりも長く設定してある。
【0023】
したがって、姿勢変更機構16は、油圧シリンダ23の収縮作動で各揺動アーム18a,18bを軸芯Xa,Xb周りで上向きに駆動揺動させると、トラックフレーム15が機体フレーム14の側に上昇し、図3に示すように機体フレーム14の地上高が低くなる。 尚、図3は、機体フレーム14の地上高が最も低い状態を示している。
【0024】
逆に、油圧シリンダ23の伸長作動で各揺動アーム18a,18bを軸芯Xa,Xb周りで下向きに駆動揺動させると、トラックフレーム15が機体フレーム14の側から離間するように下降し、図4に示すように機体フレーム14の地上高が高くなる。
【0025】
後部揺動機構16bにおける揺動アーム18bの揺動支点間の長さが、前部揺動機構16aにおける揺動アーム18aの揺動支点間の長さよりも長いので、機体フレーム14の地上高が高くなるほど、機体フレーム14が前下がりに傾斜する。
尚、図4は、機体フレーム14の地上高が最も高く、機体フレーム14が最も大きく前下がりに傾斜している状態を示している。
【0026】
よって、左右のクローラ走行装置1における姿勢変更機構16の夫々に備えた油圧シリンダ23を操作することで、機体フレーム14の左右における地上高を変更調節して、軟弱地や傾斜地においても機体フレーム14の左右方向の姿勢を略水平に保持することができる。
【0027】
図8に示すように、姿勢変更機構16の作動を制御する制御装置24と、姿勢変更機構16を自動モードで作動させる制御指令を制御装置24に入力可能な自動モード入力スイッチ25と、姿勢変更機構16を手動モードで作動させる制御指令を制御装置24に入力可能な手動モード入力スイッチ26を備えている。
【0028】
図6,図7にも示すように、手動モード入力スイッチ26として、機体フレーム14の左側又は右側のいずれかが下降するように、左右のトラックフレーム15のうちのいずれかを択一的に下降させるローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能なローリング用手動モード入力スイッチ26aと、左右一対のトラックフレーム15を同時に昇降させる昇降用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な昇降用手動モード入力スイッチ26bとを各別に備えている。
【0029】
自動モード入力スイッチ25とローリング用手動モード入力スイッチ26aと昇降用手動モード入力スイッチ26bは、運転座席3aの前方に設けられている運転パネル3bに配設されている。
【0030】
運転パネル3bは、運転座席3aの前方側、かつ、刈取前処理部4の背面側に立設された運転台27の上部に、走行機体2の前方側ほど高くなるように傾斜させて設けてあり、エンジン(図示せず)の運転状態を示す計器盤などの運転用表示部28と、操向操作レバーなどの機体の進行方向を設定するための操向操作具29と、運転パネル3bの前側を覆う日除け32とを備えている。
【0031】
操向操作具29を中立位置に操作していると機体は直進し、操向操作具29を中立位置から右(左)に操作するほど、機体は右(左)に小さな旋回半径で進行方向を変える(旋回する)。操向操作具29を中立位置に操作していると、刈取前処理部4の昇降が停止し、操向操作具29を中立位置から後方(前方)に操作すると、刈取前処理部4が上昇(下降)する。
【0032】
図1に示すように、運転台27の機体前方側の正面27aは、刈取前処理部4の上下方向の揺動軌跡に沿った湾曲面(円弧面)に形成され、運転台27の機体後方側の背面27bは、上方側ほど機体後方側に位置する傾斜面に形成されている。運転パネル3bの前側を覆う日除け32は、運転台27の正面27aに連続した状態で、刈取前処理部4の上下方向の揺動軌跡に沿った形状に形成されている。
したがって、運転台27の機体前後方向の寸法を確保しながら、かつ、運転台27と刈取前処理部4との干渉を避けながら、運転台27の位置を前進させ、フロア3cへの取り付け用の前後長さを短くして、運転部3の前後長さを長くしてある(居住性を向上させてある)。
【0033】
操向操作具29は、運転パネル3bの左右中央側に配設された運転用表示部28の右側に配設され、ローリング用手動モード入力スイッチ26aと昇降用手動モード入力スイッチ26bは、運転用表示部28の左側(運転パネル3bの左側部分における運転用表示部28寄りの位置)に配設されている。ローリング用手動モード入力スイッチ26aを昇降用手動モード入力スイッチ26bよりも機体前方側に位置させて、ローリング用手動モード入力スイッチ26aと昇降用手動モード入力スイッチ26bとがT字状に近接して配設されている。昇降用手動モード入力スイッチ26bの左横隣の近接した位置(昇降用手動モード入力スイッチ26bよりも運転座席3aから遠い位置)に自動モード入力スイッチ25が配設されている。
【0034】
制御装置24は、ローリング用手動モード入力スイッチ26a又は昇降用手動モード入力スイッチ26bが操作されると、その操作に応じた手動モードで姿勢変更機構16の作動を制御する。
【0035】
ローリング用手動モード入力スイッチ26aは、機体左右方向に沿った横長で、機体前後方向の軸芯Ya周りに揺動操作自在で、かつ、中立位置に復帰付勢されたシーソースイッチで構成され、機体フレーム14の左側が下降するように、右側のトラックフレーム15を下降させる左側ローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な左側ローリング用操作部30aを左側に備え、機体フレーム14の右側が下降するように、左側のトラックフレーム15を下降させる右側ローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な右側ローリング用操作部30bを右側に備えている。
【0036】
昇降用手動モード入力スイッチ26bは、機体前後方向に沿った縦長で、機体左右方向の軸芯Yb周りに揺動操作自在で、かつ、中立位置に復帰付勢されたシーソースイッチで構成され、左右一対のトラックフレーム15を同時に上昇させて機体フレーム14を下降させる下降用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な下降用操作部31aと、左右一対のトラックフレーム15を同時に下降させて機体フレーム14を上昇させる上昇用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な上昇用操作部31bとを、下降用操作部31aを機体前方側に位置させて、機体左右方向の軸芯Ybを挟んで前後に備えている。
【0037】
ローリング用手動モード入力スイッチ26a及び昇降用手動モード入力スイッチ26bを構成しているシーソースイッチの夫々は、いずれか一方の操作部を押し下げ操作している間は、その操作部に対応する手動モードで姿勢変更機構16を作動させる制御指令が制御装置24に入力され、操作部の押し下げ操作を解除すると、いずれの操作部も押し下げられていない中立位置に復帰して、手動モードで姿勢変更機構16を作動させる制御指令の制御装置24への入力が停止される。
【0038】
制御装置24による姿勢変更機構16を自動モードで作動させる制御動作を説明する。
自動モード入力スイッチ25がON操作されると、姿勢変更機構16を自動モードで作動させる制御指令が制御装置24に入力され、制御装置24は、機体の左右方向の傾斜を検出する傾斜センサ(図示せず)の検出結果に基づいて、機体フレーム14の左右方向の姿勢が略水平に保持されるように姿勢変更機構16の作動を制御する左右傾斜制御を実行する。
【0039】
左右傾斜制御では、図3に示した機体フレーム14の地上高が最も低い姿勢、つまり、左右のクローラ走行装置1におけるトラックフレーム15のいずれもが機体フレーム14に最も近接している姿勢を基準姿勢として姿勢変更機構16の作動を制御し、自動モード入力スイッチ25がOFF操作されると、基準姿勢に復帰するように姿勢変更機構16を作動させて左右傾斜制御を終了する。
【0040】
つまり、基準姿勢に対して機体フレーム14が左右いずれかに傾斜すると、低くなっている側のクローラ走行装置1のトラックフレーム15が下降するように姿勢変更機構16の作動を制御して、機体フレーム14の左右方向の姿勢を略水平に保持する。
【0041】
なお、機体フレーム14が左右いずれかに傾斜したときに、高くなっている側のクローラ走行装置1のトラックフレーム15が既に下降しているときは、その高くなっている側のクローラ走行装置1のトラックフレーム15が上昇するように姿勢変更機構16の作動を制御して、機体フレーム14の左右方向の姿勢を略水平に保持する。
【0042】
左右傾斜制御の実行中にローリング用手動モード入力スイッチ26a又は昇降用手動モード入力スイッチ26bが操作されると、左右傾斜制御の実行を中断して、ローリング用手動モード入力スイッチ26a又は昇降用手動モード入力スイッチ26bの操作に応じた手動モードで姿勢変更機構16を作動させる。
【0043】
ローリング用手動モード入力スイッチ26a又は昇降用手動モード入力スイッチ26bの操作が解除されると、その操作に応じた手動モードでの姿勢変更機構16の作動が設定時間だけ継続され、その設定時間が経過すると左右傾斜制御の実行が自動的に再開される。
【0044】
〔第2実施形態〕
図示しないが、ローリング用手動モード入力スイッチ26aは、機体フレーム14の左側が上昇するように、左側のトラックフレーム15を下降させる左側ローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な左側ローリング用操作部30aを左側に備え、機体フレーム14の右側が上昇するように、右側のトラックフレーム15を下降させる右側ローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な右側ローリング用操作部30bを右側に備えていてもよい。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0045】
〔第3実施形態〕
図示しないが、昇降用手動モード入力スイッチ26bは、上昇用操作部31aと下降用操作部31bとを、下降用操作部31bを機体前方側に位置させ、上昇用操作部31aを機体後方側に位置させて、機体左右方向の軸芯Ybを挟んで前後に備えていてもよい。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0046】
〔第4実施形態〕
図示しないが、ローリング用手動モード入力スイッチ26aと昇降用手動モード入力スイッチ26bとを異なる位置関係で配設してもよい。
具体的には、例えば昇降用手動モード入力スイッチ26bをローリング用手動モード入力スイッチ26aの前側に配設して(第1実施形態とは前後を逆に配設して)、ローリング用手動モード入力スイッチ26aと昇降用手動モード入力スイッチ26bとが逆T字状に配設されるように構成してもよい。
また、例えば昇降用手動モード入力スイッチ26bの右側又は左側にローリング用手動モード入力スイッチ26aを近接して配設して、ローリング用手動モード入力スイッチ26aと昇降用手動モード入力スイッチ26bとを左右に並べて配設してもよい。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0047】
〔第5実施形態〕
図示しないが、自動モード入力スイッチ25、ローリング用手動モード入力スイッチ26a及び昇降用手動モード入力スイッチ26bを、運転パネル3bの異なる位置、例えば運転パネル3bの右側部分や、運転パネル3bの左側部分の左右中央部又は左側部に設けてもよい。
また、自動モード入力スイッチ25、ローリング用手動モード入力スイッチ26a及び昇降用手動モード入力スイッチ26bを、運転部3の異なる箇所、例えば変速レバー等が装備されかつ運転座席3bの横内側に配備された側部操縦塔の上面等に設けてもよい。この場合、側部操縦塔の前部、前後中間部、後部のいずれの箇所に設けてもよい。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0048】
〔第6実施形態〕
図示しないが、ローリング用手動モード入力スイッチ26a及び昇降用手動モード入力スイッチ26bを、中立位置に復帰付勢されていない3位置切換式のシーソースイッチで構成してもよい。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0049】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による作業車は、コンバインやトラクタなどの農作業車に限定されず、バックホーなどの建設作業車であってもよい。
2.本発明による作業車は、〔第2実施形態〕に記載されたローリング用手動モード入力スイッチ26aの構成と、〔第3実施形態〕に記載された昇降用手動モード入力スイッチ26bの構成との両方を備えて構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、コンバインやトラクタなどの農作業車や、バックホーなどの建設作業車において好適に実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
2 走行機体
3a 運転座席
3b 運転パネル
8 駆動スプロケット
9 誘導輪
10 接地転輪
11 クローラベルト
14 機体フレーム
15 トラックフレーム
16 姿勢変更機構
24 制御装置
26 手動モード入力スイッチ
26a ローリング用手動モード入力スイッチ
26b 昇降用手動モード入力スイッチ
28 運転用表示部
29 操向操作具
30a 左側ローリング用操作部
30b 右側ローリング用操作部
31a 上昇用操作部
31b 下降用操作部
Ya 機体前後方向の軸芯
Yb 機体左右方向の軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動スプロケットが支持された機体フレームと、誘導輪と接地転輪とが支持された左右一対のトラックフレームと、前記駆動スプロケットと前記誘導輪と前記接地転輪とに亘って巻回されたクローラベルトと、前記トラックフレームの前記機体フレームに対する姿勢を上下方向に各別に変更可能な姿勢変更機構と、前記姿勢変更機構の作動を制御する制御装置と、前記姿勢変更機構を手動モードで作動させる制御指令を前記制御装置に入力可能な手動モード入力スイッチを備えている作業車であって、
前記手動モード入力スイッチが、
前記機体フレームの左側又は右側のいずれかが上昇又は下降するように、前記左右一対のトラックフレームのうちのいずれかを択一的に上昇又は下降させるローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能なローリング用手動モード入力スイッチと、
前記左右一対のトラックフレームを同時に昇降させる昇降用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な昇降用手動モード入力スイッチとを各別に備え、
前記ローリング用手動モード入力スイッチが、機体左右方向に沿った横長で、かつ、機体前後方向の軸芯周りに揺動操作自在なシーソースイッチで構成され、
前記昇降用手動モード入力スイッチが、機体前後方向に沿った縦長で、かつ、機体左右方向の軸芯周りに揺動操作自在なシーソースイッチで構成されている作業車。
【請求項2】
前記ローリング用手動モード入力スイッチが、
前記機体フレームの左側が上昇又は下降するように、左右いずれかのトラックフレームを上昇又は下降させる左側ローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な左側ローリング用操作部を左側に備え、前記機体フレームの右側が上昇又は下降するように、左右いずれかのトラックフレームを上昇又は下降させる右側ローリング用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な右側ローリング用操作部を右側に備えたシーソースイッチで構成され、
前記昇降用手動モード入力スイッチが、
前記左右一対のトラックフレームを同時に上昇させる上昇用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な上昇用操作部と、前記左右一対のトラックフレームを同時に下降させる下降用手動モードで作動させる制御指令を入力可能な下降用操作部とを、前記機体左右方向の軸芯を挟んで前後に備えたシーソースイッチで構成されている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
運転用表示部と機体の進行方向を設定するための操向操作具とを備え、かつ、走行機体の前方側ほど高くなるように傾斜している運転パネルが、運転座席の前方に設けられ、
前記手動モード入力スイッチが、前記運転パネルに前記運転用表示部を挟んで前記操向操作具の左側に配設されている請求項1又は2記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−87532(P2011−87532A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244744(P2009−244744)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】