説明

併存する早漏及び勃起障害の治療

本発明は、早漏及び勃起障害の併存状態を治療する方法を提供する。特に、同方法は有効量のトラマドール材料と有効量のホスホジエステラーゼ阻害剤とを投与することを含む。本発明はまた、製薬的に許容される担体と、トラマドール材料と、ホスホジエステラーゼ阻害剤と、からなる製薬組成物を提供する。本発明は更に、トラマドール材料とホスホジエステラーゼ阻害剤からなるキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト男性における早漏及び勃起障害の併存状態を治療する方法に関する。本発明は、男性に、トラマドール材料とホスホジエステラーゼ阻害剤の両方を投与することを含む。本発明はまた、トラマドール材料とホスホジエステラーゼ阻害剤からなる製薬組成物に関する。本発明は更に、トラマドール材料とホスホジエステラーゼ阻害剤からなるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2007年2月12日に出願された米国仮特許出願第60/889369号を相互参照する。この先の出願の開示内容の全体が、引き続く出願の開示の一部であると考慮され、かつ本明細書においては参照により援用される。
【0003】
早漏は男性の性的機能不全のもっとも一般的な形態であり、推定22乃至38%の男性が悩んでいると考えられる。それは衰弱性の性的機能障害であり、恋愛関係を結ぶ、或いは継続させることを不可能にするものでもあり、当該疾患に苦しむ人に心理的なダメージを与えるものでもある。早漏はまた、妊娠の成功を低下させるものである。
【0004】
勃起障害もまた男性の性的機能不全のもっとも一般的な形態であり、推定5乃至15%の男性が悩んでいると考えられる。勃起障害の患者数は年齢とともに増加し、そして、心臓病、高血圧及び糖尿病といったある種の病状を伴うことによっても増加する。
【0005】
男性は多くの場合、早漏と勃起障害の両方に苦しむことがある。約25乃至約45%の男性が早漏と勃起障害の両方に悩んでいるという報告もあり(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)、男性の半数以上が早漏と勃起障害の両方に悩んでいるという報告もある(非特許文献2)。早漏及び勃起障害の両方に苦しむ男性は、早漏及び勃起障害の一方のみに苦しむ男性と比較して、クオリティ・オブ・ライフ及び性的な享楽に対するスコアが低い。前述。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ファソロ(Fasolo)他、J.Sex.Med.,2:376−382(2005)
【非特許文献2】シャブサイ(Shabsigh)及びペレルマン(Perelman)、J.Sex.Res.,第43巻,第1号(2006年2月)
【非特許文献3】ポルスト(Porst)他、European Urology,51(3):816−824(2007年3月;オンラインにより2006年7月公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヒト男性における早漏及び勃起障害の併存状態を治療する方法を提供する。特に、性的行為の前の効果的な時間に、有効量のトラマドール材料と有効量のホスホジエステラーゼ阻害剤とを男性に投与することを含む。
【0009】
本発明はまた製薬組成物を提供する。同組成物は、製薬的に許容される担体と、トラマドール材料と、ホスホジエステラーゼ阻害剤と、からなる。
本発明は更に、トラマドール材料とホスホジエステラーゼ阻害剤からなるキットを提供する。キットは一つ以上の容器を含み、同容器の各々が、トラマドール材料とホスホジエステラーゼ阻害剤とを含有する。代替的に、キットは、トラマドール材料を保有する容器と、ホスホジエステラーゼ阻害剤を保有する異なる容器と、からなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】トラマドールの立体異性体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において使用されるように、「早漏」なる用語は、男性がパートナー及び/又は自分自身を満足させるのに十分な程度に射精工程を制御できない性的機能不全を意味する。早漏は最小限の刺激による持続的な射精若しくは繰り返し起こる射精を指し、及び/又は性交時において挿入前若しくは挿入直後に、所望の時期よりも早く射精が起こることであり、パートナーの一方若しくは双方に対して苦悩を与えるものである。モンタギュー(Montague)他、J.Urol.,172:290−294(2004);「精神性疾患の診断及び統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders),第4版」(American Psychiatric Association,Washington,D.C.(2000))を参照されたい。当該用語は、「先天的な」、「生涯にわたる」、「原発性の」及び「後天的な」早漏を含む。
【0012】
早漏を診断するための種々の特異的な基準が提唱されてきたが、いかなる基準、又は一群の基準も全世界的には受け入れられていない。提唱されている特異的な基準は:(i)挿入前、又は挿入後10乃至20ストローク内における射精;(ii)1乃至2分未満における射精;及び(iii)女性がオルガスム障害ではない場合に女性がオルガスムに達する時間の50%も早い時間に射精すること、を含む。例えば、米国特許第6037360号明細書、米国特許第5151448号明細書、「男性の不妊及び性的機能不全(Male Infertility and Sexual Dysfunction)」,第356頁(Springer−Verlag,1997年)、「精神性疾患の診断及び統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」(American Psychiatric Association,1994年)を参照されたい。より最近では、ストップウォッチにて測定された2分未満の膣内射精待ち時間(「IELT」又は「IVELT」)と苦悩又は対人関係の問題との組み合わせを、臨床研究における早漏の診断に使用する。プライアー(Pryor)他、Lancet,368(9539):929−927(2006年9月9日)を参照されたい。一つの報告では、1分未満のIELTを伴う男性は「明らかな」早漏であり、1乃至1.5分のIELTを伴う男性は「可能性が高い」早漏であり得る一方、早漏の重篤度(例えば、「症状なし」、「軽度(mild)」、「中度(moderate)」及び「重度(severe)」)は関連する心理的な問題の観点から定義されるべきであると提案している。ヴァルディンゲル(Waldinger)他、J.Sex.Med.,2(4):498−507(2005)。患者報告アウトカム(patient−reported outcomes)とも称される種々の自己申告結果問診票が早漏を診断するために開発されている。アルソフ(Althof)他、Urol.Clin.Noth Am.,34(4):581−589(2007年11月)を参照されたい。早漏診断ツール(PEDT)はそのような問診票の一つである。それは最近認証され、9及び10のスコアが「可能性が高い」早漏、11以上のスコアが早漏との診断であると示している。サイモンズ(Symonds)他、Eur.Urol.,52:565−573(2007)及びサイモンズ他、Int.J.Impot.Res.,19:521−5(2007)(問診票の写しを含む)を参照されたい。この問診票は、制御不能、早漏の頻度、最小性的刺激、苦悩及び対人関係の問題を評価する。現在のところ、本願の発明者らは、早漏を診断する最適な基準は、短いIELTに加えて9以上であるPEDTのスコアと考えている。短いIELTの正確な定義は地理的地域及び/又は文化的な相違に依存して変更するものであると考えられ、経験的に決定され得る。アメリカ合衆国では、本願の発明者らは、短いIELTの最良の定義は、ストップウォッチを使用して測定された場合、性行為時の50%超においてIELTの時間が2分未満であると現在のところ考えている。
【0013】
本明細書において使用されるように、「勃起障害」なる用語は、満足の行く性交又は性行為を可能にするのに十分に陰茎勃起を達成及び/又は維持することが、常に不可能或いは反復不可能であることを意味する。「勃起障害」はまた、本明細書においては、陰茎勃起の、部分的、一時的或いは一過性の欠如を意味するために使用される。
【0014】
国際勃起障害指標(IIEF)の勃起機能(EF)分野が改善され、患者ベースの問診票として評価されてきており、同問診票は現在では勃起障害の診断において広く使用されている。IIEFのEF分野は高度な感受性と特異性とを備えた試験信頼度及び有効性を示した。特に、25以下のスコアである男性はEDであると分類され、25を超えるスコアの男性はEDではないとして分類される(感受性=0.97;特異性=0.88)。更に、IIEF勃起機能の問診に対する回答は、勃起障害を5つの診断カテゴリーに分類した:即ち、勃起障害ではない(26−30のスコア);「軽度」の勃起障害(22−25のスコア);「軽度から中度」の勃起障害(17−21のスコア);「中度」の勃起障害(11−16のスコア)及び「重度」の勃起障害(6−10のスコア)。ローゼン(Rosen)他、Int.J.Impot.Res.,14(4):226−244(2002年8月)及びローゼン他、Urology,49:822−830(1997)(IIEFの問診票の写し及びEF問診の証明書を含む)を参照されたい。Sexual Health Inventory for Men(SHIM)と称されるIIEFの別のサブセットもまた開発され、診断ツールとして認証され、勃起障害の診断に対して現在では広く使用されている。21以下のスコアである男性がEDであるとして分類され、21を超えるスコアである男性はEDではないと分類される(感受性=0.98;特異性=0.88)。更に、SHIMの質問に対する回答は勃起障害を5つの診断カテゴリーに分類した:即ち、勃起障害ではない(22−25のスコア);「軽度」の勃起障害(17−21のスコア);「軽度から中度」の勃起障害(12−16のスコア);「中度」の勃起障害(8−11のスコア)及び「重度」の勃起障害(5−7のスコア)。ローゼン(Rosen)他、Int.J.Impot.Res.,14(4):226−244(2002年8月)(SHIM問診を特定する)及びローゼン他、Urology,49:822−830(1997)(IIEFの問診票の写しを含む)を参照されたい。従って、勃起障害は、EFスコア及び/又はSHIMスコアを使用して診断され得、勃起障害の重篤度はまたこれらのスコアを使用して評価され得る。
【0015】
本明細書において使用されるように、「併存(comorbid)」なる用語は二つの疾患が共存しており、同一の患者において認められることを意味する。「早漏及び勃起障害の併存状態」とは、早漏と勃起障害とが共存しており、同一のヒト男性において認められることを意味する。即ち、一人の人男性が、早漏と勃起障害の両方を経験する、経験する傾向にある、或いは経験したことがあることを意味する。
【0016】
「トラマドール材料」なる用語は、本明細書においては、2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサノール(「トラマドール」)並びにトラマドールの全ての製薬的に許容される形態及びトラマドールの誘導体を参照するものとして使用される。特に、当該用語は、N−オキシド誘導体(「トラマドールN−オキシド」及びO−デスメチル誘導体(「O−デスメチルトラマドール」)を含む。当該用語はまた、トラマドール及びその誘導体の溶媒和物、多形体及び製薬的に許容される酸付加塩を含む。当該用語は更に、上記のうちの任意の立体異性体の全てを含み、個々の立体異性体(個々の光学異性体を含む)及び立体異性体の混合物(ラセミ体を含む)を含む。
【0017】
トラマドールの立体異性体は図1に示される。トラマドールの個々の立体異性体の命名に関する文献においていくらかの矛盾があるように思われる。本願の目的のために、トラマドールの「シス」及び「トランス」立体異性体の表示は、トラマドール分子内のシクロヘキサン環のジメチルアミノ置換基とヒドロキシル置換基との相対的な位置を参照してなされる。図1に示されるように、R,R及びS,S光学異性体は本明細書においては「シス」異性体として参照される一方、R,S及びS,R異性体は本明細書においては「トランス」異性体として参照されるであろう。また図1に示されるように、トラマドールのR,R異性体は本明細書において「+」シス異性体として参照され、S,S異性体は「−」シス異性体として参照される。R,S及びS,R異性体は光学的に活性ではないものとして現在のところ理解されている。
【0018】
現在好ましいものはトラマドール及びその酸付加塩であり、特に塩酸塩である。より好ましいものは、(±)シス−トラマドール及びその酸付加塩、特に塩酸塩、並びに個々の光学異性体である。
【0019】
トラマドール、トラマドールN−オキシド及びO−デスメチルトラマドールを製造する方法は周知である。例えば、米国特許第3652589号明細書、米国特許第3830934号明細書、米国特許第5223541号明細書、米国特許第5336691号明細書、米国特許第5723668号明細書、米国特許第5728885号明細書及び米国特許第5874620号明細書を参照されたい。これら特許文献の完全な開示内容は、本明細書において参照により援用される。トラマドールはまた、ドイツ国、アッシェンに所在のグリュネンタール(Gruenenthal)GmbHを含む複数の供給元より市販されている。
【0020】
製薬的に許容される酸付加塩は、製薬的に許容され、実質的に無毒である有機及び無機酸を使用して当該技術分野における周知の方法により調製される。そのような酸は塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、ニコチン酸等を含む。好ましいものは塩酸であり、トラマドール塩酸塩が本発明を実施するためには最も好ましい化合物である。
【0021】
ホスホジエステラーゼ(PDE)は第二のメッセンジャーヌクレオチドであるcAMP及びcGMPの代謝に関与するあるクラスの細胞内酵素である。PDEは今ではI型からXI型までの11の主要なファミリーに分類されている。ファミリーの構成要員はその組織、細胞分布及び細胞内分布において、並びに、cAMP経路及びcGMP経路へのそれらの結合において、変化する。例えば、PDEタイプIII(PDE3)、PDEタイプIV(PDE4)及びPDEタイプV(PDE5)は海綿体において見出されており、PDE5が最も豊富にある。
【0022】
「ホスホジエステラーゼ阻害剤」は、PDEの活性を、選択的又は非選択的に阻害又は低減することが可能な薬剤である。本発明において使用するための適切なPDE阻害剤は米国特許第5250534号明細書、米国特許第5859006号明細書、米国特許第6140329号明細書、米国特許第6362178号明細書、米国特許第6403597号明細書、米国特許第6469012号明細書、米国特許第6821975号明細書、米国特許第6943166号明細書及び米国特許第6943171号明細書に記載のものを含む。これら特許文献の完全な開示内容は、本明細書において参照により援用される。PDE阻害剤を製造する方法は周知である。例えば、米国特許第5250534号明細書、米国特許第5859006号明細書、米国特許第6140329号明細書、米国特許第6362178号明細書、米国特許第6403597号明細書、米国特許第6469012号明細書、米国特許第6821975号明細書、米国特許第6943166号明細書及び米国特許第6943171号明細書を参照されたい。本発明において使用されるPDE阻害剤は好ましくは、PDE3、PDE4及び/又はPDE5の阻害剤である。より好ましくは、PDE阻害剤はPDE5の選択的な阻害剤である。さらにより好ましくは、阻害剤は、シルデナフィル、バルデナフィル及び/又はタダラフィル、並びにその製薬的に許容される形態(例えば、塩、溶媒和物、立体異性体(個々の異性体及び異性体の混合物)等)である。最も好ましくは、阻害剤はクエン酸シルデナフィル(例えば、ファイザー(Pfizer)社のクエン酸シルデナフィル、Viagra(登録商標))、バルデナフィル塩酸塩(シェリング−プラウ社のバルデナフィル塩酸塩,Levitra(登録商標))及び/又はタダラフィル(リリー(Lilly)ICOS社のCialis(登録商標))である。
【0023】
早漏及び勃起障害の併存状態を治療するために、有効量のトラマドール材料及び有効量のホスホジエステラーゼ阻害剤が、性的行為の前の効果的な時間に男性に投与される。二つの薬物は同時に投与されるか、或いは任意の順序にて順次投与される。それらは同一の又は異なる投与形態にて別々に投与されるか、或いはそれらは単一の投与経路にて、単一の剤形にて組み合わせて投与され得る。性的行為の前に、経口投与にて、各薬物が一回投与されるのが好ましい。「有効量」なる用語は、無毒であるが、射精を遅らせるとともに勃起障害の発生又は重篤度を低減するのに効果的な二つの薬物の各々の用量を意味する。「効果的な時間」なる用語は、性的行為の前の時間の範囲であって、その時間の間に二つの薬物の各々が射精を遅らせるとともに勃起障害の発生を低減するのに効果的であるように投与される、時間の範囲を意味する。(±)シス−トラマドールHClの有効量は、約1mg乃至約250mgであり、好ましくは約10mg乃至約200mgであり、より好ましくは、約25mg乃至約150mgであり、性的行為の前の約30分乃至約24時間の間に経口にて投与される。Viagra(登録商標)クエン酸シルデナフィルの有効量は、約5mg乃至約500mgであり、好ましくは約25mg乃至約100mgであり、性的行為の前の約30分乃至約4時間の間に経口にて投与される。Levitra(登録商標)バルデナフィル塩酸塩の有効量は、約1mg乃至約100mgであり、好ましくは約5mg乃至約20mgであり、性的行為の前の約30分乃至約2時間の間に経口にて投与される。Cialis(登録商標)タダラフィルの有効量は、約1mg乃至約100mgであり、好ましくは約5mg乃至約20mgであり、性的行為の前の約30分乃至約36時間の間に経口にて投与される。しかしながら、投与量は、使用されるトラマドールの特定の形態、使用される特定のホスホジエステラーゼ阻害剤、投与経路、投与時期、任意のその他の薬物が投与されるという事実、早漏及び勃起障害の症状の重篤度、患者の年齢、体格及び状態、医療の分野において周知の要因等によって変更されることは当業者によって理解される。一般的に、適切な用量は、毒性を有することなく、射精を遅らせるとともに勃起障害の発生又は重篤度を低減するのに有効な最小投与量である化合物の量である。しかしながら、用量、投与経路等は、正確な医療的判断の範囲内にて主治医によって決定されるであろう。効果的な剤形、投与形態及び投与時間並びに投与量は経験的に決定され得る。
【0024】
本明細書にて使用されるように、「射精を遅らせる」とは、治療を受けた男性が、治療を受けていない男性によって通常経験されるよりも長い時間の間、射精を阻止するべく、同射精の過程を制御することができることを意味する。男性は、自分のパートナーをより良く、又は完全に満足させるのに効果的な程度にまで射精の過程を制御できることが期待される。「射精を遅らせる」とは、射精を完全に阻止することを意味してはいない。
【0025】
本明細書にて使用されるように、「勃起障害の発生を低減する」とは、本発明に従う治療を受ける男性の勃起障害が阻止されること、或いは勃起障害が発生する数が低減されることを意味する。本明細書にて使用されるように、「勃起障害の重篤度を低減する」とは、EF及び/又はSHIMスコアにて測定されるような勃起障害の重篤度が低減されることを意味する(即ち、EF又はSHIMのスコアが上昇すること)。
【0026】
トラマドール材料及びホスホジエステラーゼ阻害剤は任意の適切な投与経路にて投与され、当該投与経路には、経口投与、経鼻投与、直腸投与、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、若しくは筋肉内)、局所投与(皮膚又は粘膜への送達)、経皮投与(即ち、皮膚を介する薬物の経路による血流への送達)、経粘膜投与(即ち、粘膜組織を介する薬物の経路による血流への送達)、海綿体内投与(即ち、陰茎の海綿体組織の一方又は両方の海綿体への注入)及び尿道内投与(即ち、尿道への送達)が含まれる。大いに好ましいのは経口投与である。
【0027】
トラマドール材料及びホスホジエステラーゼ阻害剤は単独にて投与することも可能であるが、製剤(組成物)としてそれらが(単独にて、又は組み合わせにて)投与されることが好ましい。製薬組成物は一つ以上の製薬的に許容される担体、及び選択的に一つ以上のその他の化合物、薬物若しくはその他の材料との混合物中に、トラマドール材料、ホスホジエステラーゼ阻害剤、又はその両方を有効成分として含む。各担体は、製剤のその他の成分と適合するとともに、同組成物を摂取する男性に対して有害ではないという意味において、「許容可能である」必要がある。製薬的に許容される担体は当該技術分野において周知である。選択される投与経路に関わらず、活性成分は、当該技術分野の当業者に周知の従来の方法によって製薬的に許容可能な剤形に処方化される。例えば、「Remingon‘s Pharmaceutical Sciences」を参照されたい。
【0028】
トラマドール材料を含有する製薬組成物及び同製薬組成物の製造方法は既に記載されている。例えば、米国特許第3652589号明細書、米国特許第3830934号明細書、米国特許第5223541号明細書、米国特許第5591452号明細書、米国特許第5601842号明細書、米国特許第5728885号明細書、米国特許第6017963号明細書、米国特許第6090856号明細書及び米国特許第6156342号明細書を参照されたい。これら特許文献の完全な開示内容は、本明細書において参照により援用される。更に、トラマドール及びその製薬的に許容される塩を含む製薬組成物は世界中にて製造され、かつ販売されている。米国において、経口投与用の(±)シス−2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサノール塩酸塩が、ニュージャージー州08869ラリタン(Raritan)に所在のオルソ−マックナイル・ファーマシューティカル社(Ortho−McNeil Pharmaceutical,Inc.)より、ULTRAM錠として市販されている。各ULTRAM錠は、50mgの(±)シス−2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサノール塩酸塩および複数の不活性成分(コーンスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロール、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80、デンプングリコール酸ナトリウム、二酸化チタン及びロウ)を含有する。ULTRAM(登録商標)の商品名にて市販されているトラマドールの市販製品は、トラマドール塩酸塩のR,R及びS,S異性体の混合物から構成されていることは理解されている。
【0029】
ホスホジエステラーゼ阻害剤を含有する製薬組成物及び同製薬組成物の製造方法はすでに記載されている。例えば、米国特許第5250534号明細書、米国特許第5859006号明細書、米国特許第6140329号明細書、米国特許第6362178号明細書、米国特許第6403597号明細書、米国特許第6469012号明細書、米国特許第6821975号明細書、米国特許第6943166号明細書及び米国特許第6943171号明細書を参照されたい。これらの完全な開示は本明細書において参照により援用される。適切なホスホジエステラーゼ阻害剤はまた、例えば、ファイザー(Pfizer)社(Viagra(登録商標),クエン酸シルデナフィル)、シェリング−プラウ社(Levitra(登録商標),バルデナフィル塩酸塩)及び/又はリリーICOS社(Cialis(登録商標),タダラフィル)からも市販されている。
【0030】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル、カシェ剤(cachet)、丸剤、錠剤、散剤、顆粒剤の形態、或いは、水性若しくは非水性の液体中又は水中油型若しくは油中水型乳剤の溶液若しくは懸濁剤として、エリキシル若しくはシロップとして、或いはトローチ(ゼラチン及びグリセリン、又はショ糖及びアカシアゴムのような不活性の基材を使用する)等としての形態であり得、各々が所定量の活性成分を含有している。好ましい経口投与剤形は錠剤及びカプセル剤である。
【0031】
経口投与用の本発明の固体製剤(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤等)において、活性成分は、一つ以上の製薬的に許容される担体と混合され、当該担体としては、クエン酸ナトリウム又は第二リン酸カルシウム、及び/又は以下のうちの任意のもの:(1)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マニトール及び/又はケイ酸のような賦形剤若しくは増量剤);(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖及び/又はアカシアゴムのような結合剤;(3)グリセロールのような保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯デンプン若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(5)パラフィンのような溶液遅延剤;(6)第4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(7)例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアレートのような湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイト粘土のような吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物のような潤滑剤;及び(10)着色剤、である。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、製薬組成物はまた緩衝剤を含み得る。類似したタイプの固体組成物は、乳糖(lactose)又は乳糖(milk sugars)並びに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を使用して、ゼラチン軟カプセル及びゼラチン硬カプセル中の賦形剤として使用され得る。
【0032】
錠剤は、選択的に一つ以上の補助成分とともに圧縮又は成形することによって形成され得る。圧縮された錠剤は結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性な希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム或いは架橋されているカルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を使用して調製され得る。成形された錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末状の化合物の混合物を適切な機械にて成形することにより製造される。
【0033】
錠剤、及び糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤のような本発明の製薬組成物のその他の固体剤形は、選択的に分割錠とされ得るか、或いは腸溶性コーティング及び製剤の技術分野にて周知のその他のコーティングのようなコーティング及びシェルを伴って調製され得る。それらはまた、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロール、その他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はマイクロスフェアを使用して、その内部の活性成分の遅延された放出又は制御された放出を提供するべく、更に、所望の放出プロファイルを提供すべくその割合を変更させて提供すべく製剤化され得る。それらは、例えば細菌保持フィルタを介するろ過により滅菌され得る。これらの組成物はまた選択的に乳白剤を含み得、かつ消化管の特定の部分においてのみ、又は当該部分において優先的に、選択的には遅延された様式にて、活性成分を放出する組成物であり得る。これらの組成物は、(複数の)活性成分を所定の順序においてのみ、又は所定の順序にて優先的に放出する(例えば、一方が他方の前に放出、一方はすぐに、そして他方は時間をかけて放出、両方とも時間をかけて放出されるが異なる放出プロファイルにて放出、など)組成物であり得る。使用されるべき包埋組成物の例はポリマー物質及びロウを含む。活性成分はまたマイクロカプセルの形態であり得る。
【0034】
本発明の化合物の経口投与用の液剤は、製薬的に許容される乳剤、マイクロエマルション、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤を含む。活性成分に加え、液体の剤形は、例えば水のような当該技術分野にて一般的に使用される不活性の希釈剤、或いは、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、杯種油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル並びにそれらの混合物のような、その他の溶媒、溶解補助剤、及び乳剤のような当該技術分野にて一般的に使用される不活性の希釈剤を含み得る。
【0035】
不活性希釈剤のほかに、経口用組成物はまた湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味料、香味料、着色料、香料、増粘剤及び保存剤のような補助剤を含み得る。
懸濁剤は、活性成分に加えて、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント並びにそれらの混合物のような懸濁化剤を含み得る。
【0036】
直腸投与用の本発明の製薬組成物製剤は座剤として提示され、当該座剤は活性成分を、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、座剤用ロウ又は座剤用サリチル酸塩を含む一つ以上の適切な刺激の少ない賦形剤又は担体とを混合することにより調製され、当該座剤は室温では固体であるが体温では液体となり、よって、直腸にて溶解し、活性成分を放出するであろう。
【0037】
活性成分の局所投与、経皮投与、又は経粘膜投与のための剤形は、散剤、噴霧剤、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤、滴下剤及び吸入剤を含む。活性成分は、滅菌条件下において、製薬的に許容される担体、及び任意の緩衝剤或いは必要とされる場合は推進剤とともに混合され得る。
【0038】
軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤及びゲル剤は、活性成分に加えて、動物性脂肪、植物性脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、或いはそれらの混合物のような賦形剤を含み得る。
【0039】
散剤及び噴霧剤は、活性成分に加えて、乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミド粉末又はこれらの物質の混合物のような賦形剤を含み得る。噴霧剤は、クロロフルオロ炭化水素並びにブタン及びプロパンのような揮発性かつ非置換炭化水素のような通常の推進剤を付随的に含み得る。
【0040】
活性成分は、例えば経皮パッチのような従来の経皮薬物送達系を使用して皮膚を介しても送達され得、当該送達系においては、活性成分は典型的には、皮膚に貼付されるべき薬物送達装置として提供される層状構造体の内部に含有されている。そのような構造体において、活性成分は典型的には上部基材層(backing layer)の下側にある層或いは「リザーバ」内に含有される。層状の装置は単一のリザーバを含み得るか、或いは複数のリザーバを含み得る。一実施形態において、リザーバは、薬物送達時に系を皮膚に貼付するために提供される製薬的に許容される接触接着材料のポリマーマトリックスを含む。適切な皮膚接触接着材料の例としては、それらに限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン等を含む。代替的に、薬物含有リザーバ及び皮膚接触接着剤は、独立した別個の層としても存在しており、この場合、リザーバの下側にある接着剤は、既に述べたようなポリマーマトリックスであり得るか、或いは液体又はハイドロゲルのリザーバであり得るか、或いはその他の形態であり得る。
【0041】
装置の上面として提供される、これらの層状物の基材層は、層状構造体の第一の構造要素として機能するとともに、装置に多くの柔軟性を提供する。基材材料として選択される材料は、存在する活性成分及び任意のその他の材料に対して実質的に不透過性であるものが選択される。基材層は、薬物の送達時に皮膚が水和されることが望まれているか否かに応じて、閉塞的である得るか、または非閉塞的であり得る。基材は、好ましくは可撓性のエラストマー材料であるシート又はフィルムから製造される。基材に適したポリマーの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等を含む。
【0042】
保存時及び使用前に、層状構造体は放出ライナを含む。使用直前にこの層が装置から除去され、薬物リザーバ又は独立した接触接着層のいずれかである、基底層が露出され、系が皮膚に貼付される。放出ライナは、薬物/担体不透過性材料から形成されるべきである。
【0043】
経皮薬物送達装置は、当該技術分野にて周知の従来の技術、例えば、接着剤、薬物及び担体の流体混合物を基材層に一体成型し、次いで放出ライナを積層することにより、製造され得る。同様に、接着剤混合物は放出ライナ上に一体成型され、次いで基材層が積層される。代替的に、薬物リザーバは薬物又は賦形剤の非存在下にて調製され、次いで薬物/担体混合物中に「浸漬(soaking)」される。
【0044】
層状の経皮薬物送達系は、皮膚浸透促進剤も含み得る。即ち、いくらかの薬物は皮膚の透過性が生来的に低すぎて無傷の皮膚の適切にサイズ化された領域を治療量の薬物が透過できないので、そのような薬物とともに皮膚浸透促進剤を投与することが必要である。適切な促進剤は当該技術分野において周知である。
【0045】
本発明の製薬組成物はまた、点鼻用のエアロゾル又は吸入により投与され得る。そのような組成物は、製剤の技術分野において周知の技術に基づいて調製され、かつベンジルアルコール又はその他適切な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン又は窒素のような推進剤、及び/又はその他従来の可溶化剤又は分散剤を使用して、生理食塩水の液剤として調製され得る。
【0046】
局所薬物送達に好ましい製剤は軟膏剤又はクリーム剤であり得る。軟膏剤は、典型的には石油又はその他の石油誘導体をベースにした半固形製剤である。選択された活性成分を含むクリーム剤は、当該技術分野において周知であるように、粘性の液体又は半固形の乳剤であり、水中油型又は油中水型である。クリーム剤のベースは、水洗可能であり、かつ油相、乳化剤及び水相を含む。油相は時として「内側」相と称され、石油及びセチルアルコール又はステアリルアルコールのような脂肪アルコールからなり、水相は通常、必ずしも必要というものではないが、油相よりも体積が大きく、保湿剤を含んでいる。クリーム剤中の乳化剤は一般的には非イオン系、アニオン系、カチオン系又は両性の界面活性剤である。使用されるべき特定の軟膏剤又はクリーム剤のベースは、当業者によって理解されているように、最適な薬物送達を提供するものである。その他の担体又は賦形剤と同じように、軟膏基材は、不活性の、安定な、刺激の少ない、そして非感作性のものであるべきである。
【0047】
口腔投与用の製剤は、錠剤、トローチ剤、ゲル剤等を含む。代替的に、口腔投与は、当該技術分野にて周知である経粘膜送達系を使用して実施され得る。
非経口投与に適した製薬組成物は、活性成分と組み合わせて、一つ以上の製薬的に許容される滅菌された等張の、水性溶液又は非水性溶液、分散剤、懸濁剤、乳剤、又は、使用直前に滅菌された注射可能な溶液又は分散剤に再構成される滅菌された散剤、若しくはその他の固形剤を含み、抗酸化剤、緩衝剤、同製剤を意図されたレシピエントの血液と等張とする溶質、又は懸濁化剤又は増粘剤を含み得る。
【0048】
製薬組成物中にて使用され得る適切な水性又は非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びそれらの適切な混合物、オリーブ油のような植物油、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルを含む。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティング材料を使用することによって、分散剤の場合には必要とされる粒子径を維持することによって、そして界面活性剤を使用することによって、維持され得る。
【0049】
これらの組成物はまた、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のような補助剤を含み得る。また、組成物中に、糖、塩化ナトリウム等のような等張化剤を含むことが望ましい。加えて、注射可能な製剤の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅らせる薬剤を含むことによって起こり得る。
【0050】
いくらかの場合において、活性成分の効果を延長させるために、皮下注射又は筋肉内注射からの活性成分の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水に対する溶解性に乏しい結晶材料又は非晶質材料の液体懸濁剤を使用することによって達成され得る。次に、活性成分の吸収速度は溶解速度に依存し、同溶解速度は結晶のサイズ及び結晶形に依存し得る。代替的に、非経口投与される活性成分の吸収の遅延は、薬物を油脂担体に溶解又は懸濁させることによって達成され得る。
【0051】
注射可能なデポ製剤は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生体分解性ポリマー中に活性成分のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより製造される。活性成分のポリマーへの比率に応じて、そして使用される特定のポリマーの性質に応じて、活性成分の放出速度が制御され得る。その他の生体分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)を含む。注射可能なデポ製剤はまた、生体組織と親和性であるリポソーム又はマイクロエマルジョンに活性成分を取り込むことによっても調製される。注射可能な材料は、例えば、細菌保持フィルタを介するろ過によって滅菌され得る。
【0052】
海綿体内注射は、シリンジ又はその他任意の適切な装置を使用して実施され得る。本明細書において有用な皮下注射用シリンジであって、両方の海綿体(both corpora)に同時に注射するために使用され得るシリンジは、米国特許第4127118号明細書に記載されている。注射は、陰茎の背に、各背部静脈の側部に針を配置し、両海綿体内に深く挿入することにより実施される。
【0053】
活性成分は、経尿道薬物送達に適した製剤にて投与され得る。製剤は、水、シリコン、ロウ、ワセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、マニトール及び乳糖のような糖、及び/又は種々のその他の材料のような一つ以上の選択された担体又は賦形剤を含み、ポリエチレングリコール及びその誘導体が特に好ましい。尿道用の剤形に経尿道浸透促進剤を組み込むことが望ましい。適切な経尿道浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、デシルメチルスルホキシド、ポリエチレングリコールモノラウレート、グリセロールモノラウレート、レシチン、1−置換アザシクロヘプタン−2−オンを含み、特に、1−n−ドデシルシクロアザシクロヘプタン−2−オン(カリフォルニア州、アーバイン所在の、ネルソン・リサーチ・アンド・ディベロップメント コーポレイション(Nelson Research & Development Co.)から入手できる商標名Azone(登録商標)にて市販されている)、SEPA(登録商標)(マサチューセッツ州レキシントンに所在のマクロケム コーポレイション(Macrochem Co.)から市販されている)、アルコール(例えば、エタノール)、洗浄剤(例えば、Tergitol(登録商標)、Nonoxynol−9(登録商標)及びTWEEN−80(登録商標))等を含む。経尿道製剤は、尿道内に存在し得る薬物分解酵素を阻害するのに効果的な一つ以上の酵素阻害剤を付随的に含み得る。付随的かつ選択的な成分は、薬物の製剤及び送達の技術分野における当業者に理解されるように、賦形剤、保存剤(例えば、抗酸化剤)、キレート化剤、可溶化剤(例えば、界面活性剤)等を含む。
【0054】
国際特許出願第WO91/16021号パンフレットにて説明されているように、経尿道薬物送達は、種々の尿道用剤形を使用して、種々の異なる方法にて実施され得る。例えば、薬物は可撓性のチューブ、スクイーズボトル、ポンプ又はエアゾール・スプレーから尿道に導入され得る。薬物はまた、尿道内にて吸収され、溶解され、或いは生体浸食される、コーティング、ペレット又は座剤中に含有され得る。ある実施形態において、薬物は、陰茎挿入物の外面のコーティング中に含まれる。薬物を経尿道的に投与する薬物送達装置は、米国特許第6037360号明細書及び国際特許出願第WO91/16021号パンフレットに記載されている。
【0055】
ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール誘導体を含有する尿道座剤は、尿道用製剤として使用され、例えば、圧縮成形、加熱成形等のような当業者に理解されるとともに関連する文献及び薬学の教科書に記載されているような従来の技術を使用して従来のように製剤化され得る。例えば、尿道座剤の形態である製薬組成物を調製する典型的な方法を開示している、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第19刊、(ペンシルバニア州イーストン所在:Mack Publishing Co.、1995年)を参照されたい。尿道座剤は、ポリエチレングリコール又はその他の経尿道担体中における活性成分の溶解性を増大させるのに効果的な一つ以上の可溶化剤(例えば、非イオン系、アニオン系、カチオン系又は両性の界面活性剤)を含むことが好ましい。
【0056】
活性剤の制御された又は持続された放出を提供する尿道用製剤中にて活性成分を送達することが望ましい。そのような場合、剤形は典型的には、生体適合性かつ生体分解性材料、典型的には生体分解性ポリマーを含む。そのようなポリマーの例は、ポリエステル、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリオルトエステル、ポリ無水物、アルブミン、ゼラチン及びデンプンを含む。国際特許出願第WO96/40054号パンフレットに説明されているように、これらのポリマー及びその他のポリマーは生体分解性のマイクロ粒子を提供するために使用され、当該マイクロ粒子は制御された薬物放出及び持続された薬物放出を可能にし、必要とされる投与頻度を最小限にする。
【0057】
尿道内投与の方法は、イオントフォレシス、エレクトロポレーション又はフォトフォレシスのような「アクティブ」送達機構を含み得る。この方法において薬物を送達する装置及び方法は当該技術分野において周知である。イオントフォレシスにて支援される薬物送達は例えば、国際特許出願第WO96/40054号パンフレットに記載されている。簡潔に述べると、活性成分は、外部電極から、尿道プローブ内に含有されているか又は尿道プローブに取り付けられた第二の電極までを流れる電流によって尿道壁を介して移動される。
【0058】
製剤は、例えばアンプル、バイアル及びブリスターパックのような、単位用量用又は複数回投与用のシールされた容器中に入れられ、かつ使用直前に、注射用に用いるために、例えば水のような滅菌された液体の担体を加えることのみを必要とする凍結乾燥された状態にて保存され得る。用時調製の注射用液剤及び懸濁剤は、上記したタイプの滅菌された散剤、顆粒剤及び錠剤から調製され得る。
【0059】
本発明はまた、トラマドール材料とホスホジエステラーゼ阻害剤とからなるキットを提供する。キットは一つ以上の容器を含み、同容器の各々はトラマドール材料とホスホジエステラーゼ阻害剤とを含有する。そのような場合、トラマドール材料及びホスホジエステラーゼ阻害剤は好ましくは同一の製薬組成物中に含有される。代替的に、キットはトラマドール材料を保持する容器と、ホスホジエステラーゼ阻害剤を含有する異なる容器とを含む。適切な容器は、管、バイアル、ボトル、ホイルパケット、トレーのウェル及びブリスターパックの成形されたくぼみを含む。キットはまた、早漏と勃起障害の併存状態を治療するために、トラマドール材料とホスホジエステラーゼ阻害剤とを投与するための指示書を含む。容器は好ましくは箱のようなパッケージ中に含有されるであろう。指示書は、容器の一つに貼り付けられるか、若しくは容器の一つに印刷されるか、パッケージの内側に別の一枚の紙に印刷されるか、或いはパッケージに貼り付けられるか、若しくはパッケージに印刷される。
【0060】
一つの構成要素(“a” or “an” entity)は、その構成要素が一つ以上であることを参照することを明記すべきである。例えば、一つの容器(“a container”)は一つ以上の容器を参照する。
【実施例】
【0061】
実施例1
51歳の異性愛者の男性であって、長期間にわたり早漏及び勃起障害の病歴のある男性について泌尿器科医が診察し、同男性の早漏は「重度」(立証されたストップウォッチによる1分未満の膣内射精待ち時間及びスコア15の早漏診断ツール(PEDT))であり、かつ「軽度」から「中度」の勃起障害(スコア21の国際勃起障害指標(IIEF)の勃起機能(EF))を併存していると診断された。
【0062】
患者は最初に選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を投薬することにより治療された。しかしながら、SSRIは早漏の治療において部分的にのみ有効であり、勃起障害に対する改善は認められなかった。効能が低いこと及び耐え難い副作用により、患者は全てのSSRI薬物の服用を中止した。性的行為の前に50mgのクエン酸シルデナフィル(Viagra(登録商標))を投与することにより勃起障害は幾分改善されたが、重度の早漏は改善されず、患者及びその性的パートナーにとっては重篤な精神的苦痛を与え続けることとなった。
【0063】
本発明の発明者の一人の守秘義務を保持した提案にて、泌尿器科医は引き続いてトラマドール塩酸塩を処方し、性行為の約3時間前にトラマドール塩酸塩100mgとクエン酸シルデナフィル50mgとの組み合わせを自己管理にて投与するといった指示書を与えた。結果は「奇跡的」として記載され、被験者の唯一の不満は射精が過度に遅延され(「10分をはるかに超える」)、かつ偶発的に無オルガスム症となることのみであった。射精が過度に遅延されること及び無オルガスム症といったこれら中程度の有害事象は常在するものではなく、トラマドール塩酸塩の用量を50mgに低減した後では報告されなかった。現在のところ、被験者はこの組み合わせが飛躍的な改善を伴って効果を示し、自分の早漏及び勃起障害の併存状態は性行為の前にトラマドール塩酸塩50mg及びクエン酸シルデナフィル50mgの組み合わせを用いることによって成功裏に治療されると報告している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト男性における早漏と勃起障害との併存状態を治療する方法であって、性的行為の前の効果的な時間に、有効量のトラマドール材料と有効量のホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤とを前記男性に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記トラマドール材料は、トラマドール又はその製薬的に許容される形態であり、PDE阻害剤は、PDE3、PDE4又はPDE5阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PDE阻害剤は、PDE5阻害剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記トラマドール材料は(±)シス−トラマドール又はその製薬的に許容される形態であり、前記PDE5阻害剤はシルデナフィル又はその製薬的に許容される形態、バルデナフィル又はその製薬的に許容される形態、タダラフィル又はその製薬的に許容される形態、或いは前記PDE5阻害剤の二つ以上の組み合わせである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記トラマドール材料は(±)シス−トラマドール塩酸塩であり、かつ前記PDE5阻害剤はクエン酸シルデナフィル、バルデナフィル塩酸塩、タダラフィル、或いは前記PDE5阻害剤の二つ以上の組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記PDE5阻害剤はクエン酸シルデナフィルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
製薬的に許容される担体と、トラマドール材料と、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤と、からなる製薬組成物。
【請求項8】
前記トラマドール材料は、トラマドール又はその製薬的に許容される形態であり、PDE阻害剤は、PDE3、PDE4又はPDE5阻害剤である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記PDE阻害剤は、PDE5阻害剤である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記トラマドール材料は(±)シス−トラマドール又はその製薬的に許容される形態であり、前記PDE5阻害剤はシルデナフィル又はその製薬的に許容される形態、バルデナフィル又はその製薬的に許容される形態、タダラフィル又はその製薬的に許容される形態、或いは前記PDE5阻害剤の二つ以上の組み合わせである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記トラマドール材料は(±)シス−トラマドール塩酸塩であり、かつ前記PDE5阻害剤はクエン酸シルデナフィル、バルデナフィル塩酸塩、タダラフィル、或いは前記PDE5阻害剤の二つ以上の組み合わせである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記PDE5阻害剤はクエン酸シルデナフィルである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
(a)トラマドール材料と、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤と、を保持する容器、或いは
(b)トラマドール材料を保持する第一の容器と、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤を保持する第二の容器と、
からなる、キット。
【請求項14】
前記トラマドール材料はトラマドール又はその製薬的に許容される形態であり、PDE阻害剤は、PDE3、PDE4又はPDE5阻害剤である、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記PDE阻害剤はPDE5阻害剤である、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記トラマドール材料は(±)シス−トラマドール又はその製薬的に許容される形態であり、かつ、前記PDE5阻害剤はシルデナフィル又はその製薬的に許容される形態、バルデナフィル又はその製薬的に許容される形態、タダラフィル又はその製薬的に許容される形態、或いは前記PDE5阻害剤の二つ以上の組み合わせである、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記トラマドール材料は(±)シス−トラマドール塩酸塩であり、かつ前記PDE5阻害剤はクエン酸シルデナフィル、バルデナフィル塩酸塩、タダラフィル、或いは前記PDE5阻害剤の二つ以上の組み合わせである、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記PDE5阻害剤はクエン酸シルデナフィルである、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
請求項13に記載のキットは、男性における早漏と勃起障害との併存状態を治療するためにトラマドール材料とPDE阻害剤とを使用するための指示書を更に含む、キット。

【図1】
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【公表番号】特表2010−518167(P2010−518167A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549684(P2009−549684)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/053710
【国際公開番号】WO2008/100926
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(502113644)ディーエムアイ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】DMI BIOSCIENCES,INC.
【Fターム(参考)】