説明

使いすてカイロ用包装材料と該包装材料を用いた使いすてカイロ

【課題】手で揉んでも通気孔がきっかけとなって簡単にフィルムが破れたりすることにない使いすてカイロ用包装材料と該包装材料を用いた使いすてカイロを提供すること。
【解決手段】大気中の酸素と反応して発熱するシート状の発熱体が収納される使いすてカイロ用包装材料において、発熱のための通気孔が貫通しているフィルムタイプの使いすて用の包装材料(10)であって、基材(11)、インキ層(12)、隠蔽層(13)、シーラント層(14)が順次積層された包装材料からなり、該包装材料の未延伸フィルムの構成比率を厚み比で75%以上とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使いすてカイロ用包装材料に関するものであり、特には、フィルムタイプで、かつ、発熱させるため通気孔が開けてある包装材料で、手で揉んだりしても簡単に通気孔をきっかけにして破れたりすることのない使いすてカイロ用包装材料と該包装材料を用いた使いすてカイロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄粉、水、活性炭、木粉、バーミキュライト、食塩等からなる発熱体(2)をシート状にして内袋(3)に封入したカイロ本体(4)を、該カイロ本体を外気から遮断して発熱を防ぐための外装袋(5)に包装して携帯用の使いすてカイロ(1)としたものが流通している(図3参照)。
【0003】
使用時には、外装袋を破りカイロ本体を取り出し、手で持って揉むなどしてからシャツや肌着の上から、あるいは内袋から剥離紙を剥がして揉むなどして衣類の上に貼って使用するものである。
【0004】
この場合の内袋の材質構成は、例えば、図4に示すような、ナイロンフィルム(15μm)(101)/インキ層(102)/無機化合物蒸着プラスチックフィルム(12μm)(103)/ポリエチレン(104)(30μm)のような層構成が代表的なもので、通気のための孔開け加工(105)が施されている。
【0005】
ナイロンフィルム(101)は印刷基材であって、強度に寄与する役割を担っている。また、無機化合物蒸着プラスチックフィルム(103)は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化アルミニウムの蒸着薄膜を40nm程度の厚さに設けたものが一般的で、発熱体の黒色が見えないようにアルミニウムの蒸着層で隠蔽している。また、見た目のアルミニウム蒸着層の銀色が見えているため白色のインキ層(102)が必要となってくる。ポリエチレン(104)は、袋にするためのシーラント層で低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等が使用されている。
【0006】
このように使いすてカイロは簡単な操作で使用出来るが、内袋のナイロンフィルム(101)や無機化合物蒸着プラスチックフィルム(103)はともに、なにかきっかけがあると簡単に切れる延伸フィルムで、その厚みに対する構成比率は47%と、延伸フィルムの構成比が高くなっている。そのためフィルムを強く揉むと、通気孔(ミシン目加工で貫通加工)がきっかけになって簡単に破れて中身が出てしまうという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、使いすてカイロの内袋で、フィルムタイプで、かつ、発熱のための通気孔が貫通してある包装材料に関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、手で揉んだりしても通気孔がきっかけとなって簡単にフィルムが破れたたりすることのない使いすてカイロ用包装材料と該包装材料を用いた使いすてカイロを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1の発明は、大気中の酸素と反応して発熱する発熱体が収納されている使いすてカイロ用包装材料において、発熱のための通気孔が貫通しているフィルムタイプの使いすてカイロ用の包装材料であって、基材、インキ層、隠蔽層、遮光層、シーラント層が順次積層された包装材料からなり、該包装材料の未延伸フィルムの構成比率を厚み比
で75%以上としたことを特徴とする、使いすてカイロ用包装材料である。
【0009】
このように請求項1記載の発明によれば、大気中の酸素と反応して発熱する発熱体が収納されている使いすてカイロ用包装材料において、発熱のための通気孔が貫通しているフィルムタイプの使いすてカイロ用の包装材料であって、基材、インキ層、隠蔽層、遮光層、シーラント層が順次積層された包装材料からなり、該包装材料の未延伸フィルムの構成比率を厚み比で75%以上としたので、この包装材料でシート状の発熱体を包装したあと発熱体を揉んでも、通気孔がきっかけとなって包装材料が破れ発熱体が飛び出すことがない。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の使いすてカイロ用包装材料を用いて作製された使いすてカイロである。
【0011】
このように請求項1記載の使いすてカイロ用包装材料を用いて作製した使いすてカイロは、上述の通り、包装材料の中の未延伸フィルムの構成比率を厚み比で75%以上に高めてあるので、使いすてカイロを発熱させるべくもんでも通気孔がきっかけとなって包装材料が破れてしまうようなことはない。
【発明の効果】
【0012】
このように本発明の使いすてカイロ用包装材料を用いることにより、手で揉んだりしても通気孔をきっかけにして破れることがない.また、融点の低いフィルムを使用することにより孔開け加工時の生産速度が上がる.包装材料生産時に金属探知機が使用できる.等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
本発明の使いすてカイロ用包装材料は、例えば、図1に示すように、基材(11)、インキ層(12)、隠蔽層(13)、遮光層(14)、シーラント層(15)が順次積層された包装材料からなり、該包装材料の未延伸フィルムの構成比率を厚み比で75%以上としたことを特徴としている。
【0014】
基材(11)は、加飾のための印刷を施すための基材で、製品に腰を付与する。通常はグラビア印刷ができる素材で、かつ、引っ張り強度を有すルフィルムが望ましい。具体的な素材名としてはポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、合成紙などが挙げられる。プラスチックフィルムの場合、厚みとしては6〜50μm程度が望ましい。
【0015】
フィルムの厚さが6μm未満の場合は、カイロ使用時に揉んでいるうちにフィルムが破れ易かったり、印刷がしにくかったりして良くない。また、50μmを超えるとカイロ自身のコシが硬くなったり手触りが悪くなったり、コストがかかったりして望ましくない。
【0016】
インキ層(12)は、加飾のため必要で、通常のインキで問題なく、特に限定はしない。通常は、基材(11)の内側にグラビア印刷法により設けられる。基材が合成紙のような不透明フィルムの場合には基材の外側に設けられる。
【0017】
隠蔽層(13)は、後記する遮光層(14)に添加される黒色顔料が外側に見えてしまうのを隠蔽するための層で、白色顔料が添加されている。ベ−スとなる樹脂は低密度ポリエチレン樹脂、直鎖低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が使用できる。
【0018】
隠蔽層(13)の厚みは、5〜50μm程度が好ましく、5μm未満であると十分な隠蔽性が保たれず、中の黒色と白色が合わさり表から見ると灰色に見えてしまい隠蔽効果がでない。逆に50μmを超える場合は白色顔料が高価なためコストアップになってしまう。白色顔料としては一般的な酸化チタンなどが好ましく使用される。
【0019】
遮光層(14)は、遮光のための層で黒色顔料を樹脂に添加することにより遮光性を持たせる。厚みは5〜50μm程度が好ましい。5μm未満であると遮光性が低くなり中身が見えてしまう。50μmを超えるとコストアップにつながる。黒色顔料としてはカーボンブラックが好ましく使用できる。べースとなる樹脂は隠蔽層と同様の低密度ポリエチレン樹脂、直鎖低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が使用できる。
【0020】
シーラント層(15)は、熱シールするための層で、熱可塑性樹脂であれば特に限定しないが、コスト・汎用性からポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂が使用可能である。
【0021】
隠蔽層(13)、遮光層(14)、シーラント層(15)については、1層で全ての機能をもたせるためにブレンドしても構わないし、同種の樹脂を使用した共押し出しでも可能である。
【0022】
隠蔽層(13)、遮光層(14)、シーラント層(15)を別素材で作製する場合は層間に、接着性ポリオレフィン樹脂であるアドマー(三井化学株式会社製)やポリオレフィン系高接着性樹脂であるモディック−AP(三菱化学株式会社製)などを用いて共押し出ししても構わない。
【0023】
また、各層を別々のフィルムとして製膜することも可能である。この場合は各層を既知の製膜方法により製膜し、次工程でドライラミネーション、エキストルーダーラミネーション等の公知の方法でラミネートすることができる。また、各層を別々のフィルムとして押し出し加工して行き、積層することも可能である。上記2種の方法を組み合わせて作製することも可能である。
【0024】
最後に、この包装材料への孔開け加工を行う。孔開け加工は、内容物より小さい孔を、微小な針等で物理的に開けたり、放電加工、レーザー加工等で焼いて開けたりする方法が使用できる。
【0025】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
基材(11)として厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムを準備し、その延伸ナイロンフィルムの裏面にグラビア印刷法により裏刷り印刷を行い印刷層(12)を設けた。
【0027】
別に同一の低密度ポリエチレン樹脂をベース樹脂として、隠蔽層(13)となる酸化チタンを10%添加した酸化チタン練り込み低密度ポリエチレン樹脂層(厚さ15μm)、遮光層(14)となるカーボンブラックを5%添加したカーボンブラック練り込み低密度ポリエチレン樹脂層(厚さ15μm)、シーラント層(15)となる顔料無添加の低密度ポリエチレン樹脂層(厚さ15μm)をインフレーション法により共押し出し加工して製膜し、3層構成の未延伸ポリエチレンフィルムを作製した。各層間は3層とも同一樹脂のため接着層等は使用しなかった。
【0028】
つぎに、基材(11)であるナイロンフィルムの印刷層(12)を施した面と、3層構成の未延伸ポリエチレンの隠蔽層(13)面を対向させ、二液反応型のポリウレタン樹脂系接着剤を介してドライラミネート法により貼りあわせて、延伸ナイロンフィルム(15μm)(11)/印刷層(12)/酸化チタン練り込み低密度ポリエチレン樹脂層(15μm)(13)/カーボンブラック練り込み低密度ポリエチレン樹脂層(15μm)(14)/顔料無添加低密度ポリエチレン樹脂層(15μm)(15)の層構成からなる、実施例1の複合フィルムを作製した。複合フィルムの未延伸フィルムの構成比率は、厚み比で、(15+15+15)/(15+15+15+15)×100=75%となる。
【0029】
この複合フィルムを、針径;0.6mm、ピッチ;5mm間隔の針穴で孔開け加工(16)を行い、実施例1の使いすてカイロ用包装材料とした(図1参照)。
なお、孔開け加工条件は、加工速度;40m/min.、針温度;70°Cである。
【実施例2】
【0030】
低密度ポリエチレンの代わりの直鎖低密度ポリエチレンを用いた以外は実施例1と同じ材料、条件で複合フィルムを作製し、実施例2の複合フィルムとした。すなわち、延伸ナイロンフィルム(15μm)(11)/印刷層(12)/酸化チタン練り込み直鎖低密度ポリエチレン樹脂層(15μm)(13)/カーボンブラック練り込み直鎖低密度ポリエチレン樹脂層(15μm)(14)/顔料無添加直鎖低密度ポリエチレン樹脂層(15μm)(15)の層構成からなる、実施例2の複合フィルムである。
複合フィルムの未延伸フィルムの構成比率は、厚み比で実施例1と同じ75%となる。
【0031】
この複合フィルムを実施例1と同じ条件、方法で孔開け加工(16)を行い、実施例2の使いすてカイロ用包装材料とした(図1参照)。
【実施例3】
【0032】
基材(11)として厚さ12μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備し、その延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面にグラビア印刷法により裏刷り印刷を行い印刷層(12)を設けた。
【0033】
別に低密度ポリエチレン樹脂に白色顔料である酸化チタンを10%添加した、厚さ30μmの酸化チタン練り込み低密度ポリエチレンフィルムをインフレーション法により作製し、隠蔽層(23)とした。
【0034】
さらに、低密度ポリエチレン樹脂に黒色顔料であるカーボンブラックを5%添加した、厚さ30μmのカーボンブラック練り込み低密度ポリエチレンフィルムをインフレーション法により作製し、遮光層兼シーラント層(24)とした。
【0035】
つぎに、基材(11)である延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの印刷層(12)を施した面に、二液反応型のポリウレタン樹脂系接着剤を介してドライラミネート法により隠蔽層(23)である酸化チタン練り込み低密度ポリエチレンフィルム、遮光層兼シーラント層(24)であるカーボンブラック練り込み低密度ポリエチレンフィルムを順次貼り合わせ、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)(11)/印刷層(12)/酸化チタン練り込み低密度ポリエチレンフィルム(30μm)(23)/カーボンブラック練り込み低密度ポリエチレンフィルム(30μm)(24)の層構成からなる、実施例3の複合フィルムを作製した。複合フィルムの未延伸フィルムの構成比率は、厚み比で、(30+30)/(12+30+30)×100=83%となる。
【0036】
この複合フィルムを実施例1と同じ条件、方法で孔開け加工(16)を行い、実施例3の使いすてカイロ用包装材料とした(図2参照)。
【実施例4】
【0037】
この実施例4は、従来使用されている包装材料を用いた比較例である。すなわち、基材として厚さ15μmの延伸ナイロンフィルム(101)を準備し、その延伸ナイロンフィルムの裏面にグラビア印刷法により裏刷り印刷を行いインキ層(102)を設けた。
【0038】
このインキ層面に厚さ12μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをベースにした無機化合物蒸着プラスチックフィルム(103)をドライラミネート法により貼り合わせ、さらに、その内面にアンカーコート剤を施しながらエキストルーダー法により厚さ30μmの低密度ポリエチレン(104)を押し出し貼り合わせ、延伸ナイロンフィルム(15μm)(101)/インキ層(102)/無機化合物蒸着プラスチックフィルム(12μm)(103)/ポリエチレン(30μm)(104)の層構成からなる、実施例4の複合フィルムを作製した。複合フィルムの未延伸フィルムの構成比率は、厚み比で、30/(15+12+30)×100=53%となる。
【0039】
この複合フィルムを実施例1と同じ条件、方法で孔開け加工(105)を行い、実施例4の使いすてカイロ用包装材料とした(図4参照)。
【0040】
このようにして作製した実施例1〜実施例4の使いすてカイロ用包装材料の孔開け部強度、内容物隠蔽性、孔開け部破れ性を下記の方法で測定、観察した。その結果を表1に示す。
【0041】
孔開け部強度 ‥ 孔開け加工を施した部分を幅方向に30mm幅でカットし、引っ張り試験機にて破断強度を測定した(引っ張り速度は30cm/min.)。
【0042】
内容物隠蔽性 ‥ 100mm×100mmの袋状に製袋し、そこに発熱体を充填し、中身が透けて見えないか目視確認。
【0043】
孔開け部破れ性‥ 内容物隠蔽性確認と同様の袋を作製し、手で揉んで破れが発生するか目視確認(n=100)。
【0044】
【表1】

表1に示されているように、実施例1〜3の使いすてカイロ用包装材料は、孔開け部の強度があり、内容物隠蔽性も有ることがわかる。比較例である実施例4の使いすてカイロ用包装材料は孔開け部強度、孔開け部破れ性とも本発明品に劣る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の使いすてカイロ用包装材料の一実施例を示す、断面説明図である。
【図2】本発明の使いすてカイロ用包装材料の別の実施例を示す、断面説明図である。
【図3】使いすてカイロの一実施例を示す、(a)は斜視説明図であり、(b)は(a)のA−A’線断面説明図である。
【図4】従来の使いすてカイロ用包装材料の一実施例を示す、断面説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1‥‥使いすてカイロ
2‥‥発熱体
3‥‥内袋
4‥‥カイロ本体
5‥‥外装袋
10‥‥使いすてカイロ用包装材料
11‥‥基材
12‥‥インキ層
13‥‥隠蔽層
14‥‥遮光層
15‥‥シーラント層
16‥‥孔開け加工
23‥‥隠蔽層
24‥‥遮光層兼シーラント層
101‥‥ポリアミドフィルム
102‥‥インキ層
103‥‥無機化合物蒸着プラスチックフィルム
104‥‥ポリエチレン
105‥‥孔開け加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中の酸素と反応して発熱する発熱体が収納される使いすてカイロ用包装材料において、
発熱のための通気孔が貫通しているフィルムタイプの使いすてカイロ用の包装材料であって、
基材、インキ層、隠蔽層、遮光層、シーラント層が順次積層された包装材料からなり、該包装材料の未延伸フィルムの構成比率を厚み比で75%以上としたことを特徴とする、使いすてカイロ用包装材料。
【請求項2】
請求項1記載の使いすてカイロ用包装材料を用いて作製された使いすてカイロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−83552(P2007−83552A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275249(P2005−275249)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】