説明

使用済みウェーハソーイングスラリーからの珪素及び炭化珪素の回収のための方法及び装置

【課題】ウェーハ切削工程時に生成されるスラリーから高純度珪素、炭化珪素、及びPEGを回収するための方法、システム、及び装置を提供すること。
【解決手段】ウェーハ切削工程時に生成されるスラリーから高純度珪素、炭化珪素、及びPEGを回収するための方法、システム、及び装置が本明細書に開示される。珪素含有物質は、珪素が豊富な組成物の生成のために処理することができる。珪素含有物質から回収された炭化珪素及びPEGを使用してウェーハソー切削流体を形成することができる。珪素が豊富な組成物は、高純度の堆積珪素を形成するために精製及び/又は使用することができるヨウ素含有組成物と反応させることができる。生成された珪素は、太陽光発電産業又は半導体産業で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
[0001] 本出願は、それぞれ参照により全体を本明細書に組み込むものとする、2008年4月11日出願の米国仮出願第61/044,342号及び2009年1月28日出願の米国仮出願第61/148,033号の利益を主張する。
【0002】
[0002] 本発明は、マイクロエレクトロニクス(ME)及び太陽光発電(PV)産業において、ウェーハの切削又はソーイング操作時に生成される使用済みスラリーから珪素及び珪素含有化合物を回収するための方法及びシステムに関する。本発明は、高純度又は純度の増加した細粒珪素生成物を含む様々な有用生成物を製造できる方法及びシステムに関する。高純度又は純度の増加した細粒珪素生成物などの生成物は、PV用途における多結晶インゴット鋳造又は単結晶生成のための電子グレードの珪素(EG−Si)の代替物、及び/又は高性能単結晶太陽電池に好適である。他の生成物には、微粉炭化珪素研磨剤及び関連するウェーハソーイング工程で再使用するための液体キャリアが含まれる。
【背景技術】
【0003】
[0003] 太陽光発電(PV)電池の形の太陽エネルギー収集システムに対する市場需要は、石油価格の高騰及び地球温暖化などの環境問題に対処する政府の政策を含む諸要因により世界中で毎年25%を上回る成長を続けている。PVのための主要な基材は珪素であり、現時点では設置される市販ユニットの約90%を占めている。しかしながら、珪素系PVの価値連鎖における重大な欠点は、ウェーハ切削工程中に約40〜50%の珪素が失われることである。この状況は、相互接続されたマイクロエレクトロニクス(ME)珪素価値連鎖にも存在する。
【0004】
[0004] PV電池を開発するための現在の工程は、塩基性珪素を発電デバイスに変換する付加価値動作の多段階連鎖である。各段階で、珪素は、太陽電池内に配置できるように精製及び成形される。しかしながらこの価値連鎖は、非効率性を伴わないわけではない。珪素インゴットが薄いウェーハにソーイングされる重要な段階で、元のインゴットの約40%が、最終的には、最も普及しているポリエチレングリコール(PEG200)中のSiC粉末を使用する鋼ワイヤソー技術の結果として生じる使用済み(又は不用な)カーフスラリーとなる。
【0005】
[0005] ウェーハ切削工程からの使用済みスラリー生成物は、一般に、液相内の超細粒固体粒子からなる。固体粒子は不規則な形状であり、ほとんどが有効径15〜20マイクロメートルの炭化珪素からなる。残りの粒子は、鋼ワイヤソー及びシリコンウェーハからのものである。鋼粒子は、炭化珪素粒子に関連付けることができ、一般には有効径2〜4マイクロメートルである。珪素粒子には一般に炭化珪素が含まれず、粒径は1〜2マイクロメートルの範囲である。炭化珪素の出発原料は、ワイヤソーイング動作時にわずかに摩耗され、5〜10マイクロメートルの範囲のより小さな粒子が経時的に形成される。
【0006】
[0006] したがって、現在PV産業では、電子グレード珪素(EG−Si)レベルに価格を押し上げている原料の珪素不足が存在する一方で、ME及びPV産業向けに生成されるすべての珪素の約半分は埋め立て処理されている。
【0007】
[0007] この段階で失われる珪素粒子は元のインゴットと同じ純度であるが、この珪素を回収及び再使用するための商業的に実現可能な技術は存在しない。この現状の主な理由は、使用済みスラリーが、0.1から30μmの範囲内の極微細な粒子の非常に複雑なコロイド混合物である可能性があり、珪素部分は有効径約2〜5μm未満(バクテリアに匹敵するサイズ)であることである。これらの珪素粒子を混合物から物理的に分けるための努力は、元のインゴット純度への到達を阻むワイヤソー粒子の不純物(大部分は鉄、銅、及び亜鉛)によって大幅に妨げられる。たとえ、物理的な手段によってスラリーからワイヤソー粒子を完全に除去することができるとしても、残りの超微粒珪素粉末は、(潜在的な粉塵爆発により)取り扱いが危険であり、従来の加熱炉技術を使用して融解させるのが非常に困難でもある。
【0008】
[0008] PV産業の全体経済に与えるこの市場ニーズの効果は著しい。太陽光産業が、2005年以来、大幅な珪素原料不足に悩まされてきたことは十分に裏付けがある。この過去4年間に、この期間に生成された100,000トンを超える珪素のうちの40%以上が、多結晶珪素が再利用できないために廃棄された。重大なPV電池構成要素のこうした非効率的な利用の結果、2005〜2008年の期間にわたって、太陽光産業に対する少なくとも20億ドルの累積的経済損失が生じた。(2005〜2008年の期間中は、PV向けの平均多結晶珪素生産は25Kトン/年であり、平均取引価格は50ドル/kgであった。)さらに、珪素原料のコストにはPV電池全体のコストのほぼ20%が含まれることを考えると、その原料の約40%を廃棄することは、PV電池のグリッドパリティ及びより広範囲にわたる導入を妨げる経済への重要な一因となっている。
【0009】
[0009] したがって、シリコンウェーハ系PV産業において再使用するのに好適な形及び純度で珪素を回収することが求められている。参照により全体を本明細書に組み込むものとする、2008年4月11日出願の米国仮特許出願第61/044,342号に、使用済みウェーハソーイング動作から珪素粒を回収するためのマルチステッププロセスが記載されている。この文書に記載されているプロセスは、粒状の珪素生成物を生成するために、800〜1300℃の温度で動作することができる2段階ヨウ素触媒反応シーケンスを含むことができる。回収される珪素の純度は、ある一定の動作条件下で、99.9999重量%(すなわち6N)及びおそらくはそれ以上のレベルに達することができる。
【0010】
[0010] しかしながら、現在使用されている最高効率のPV電池では、より純度の高い珪素を使用することが好ましい場合がある。例えば、純度8N(すなわち、99.999999重量%)の珪素を入手することが望ましい場合がある。
【0011】
[0011] したがって当分野では、スラリー混合物の残余から珪素粒子を効率的に分離できる商用運転が依然として求められている。さらに、これらの珪素粒子を、太陽光電池などの半導体デバイスの商業生産において適用するために使用可能な形に変換する方法も求められている。また、当分野では、PV及びME産業で生成された使用済みウェーハソーイングスラリーなどの様々なソースからの、珪素の回収及び/又は高純度(例えば8N)まで精製することができる商用運転も依然として求められている。
【発明の概要】
【0012】
[0012] 本発明は、使用済みシリコンウェーハワイヤソーイングスラリーから1つ又は複数の珪素含有生成物を生成及び/又は回収するための方法、システム、及び装置を提供する。高純度又はより高い純度(すなわち、7Nから10N及びそれ以上)の珪素の様々なグレードは、本明細書で開示されたプロセス及び装置により、高処理能力及び低価格又は競争価格で生成することができる。本明細書で説明する本発明の様々な態様は、以下に記載する特定の用途、又は任意の他のタイプの珪素精製用途のいずれにも適用することができる。本発明は、スタンドアローン型システム又は方法として、あるいは、集積型珪素生成物製造工程の一部として適用することができる。本発明の様々な態様は、別個に、集合的に、又は相互の組合せとして理解できることを理解されたい。
【0013】
[0013] 本明細書では、様々な供給源からの多結晶珪素粒の生成及び炭化珪素粒子の回収のための方法及び装置が開示されている。様々な供給源として、マイクロエレクトロニクス(ME)及び太陽光発電(PV)産業で使用されるワイヤソーイング工程時に生成されるような使用済みスラリーが挙げられる。
【0014】
[0014] 本発明の幾つかの実施形態は、(1)1つ又は複数のシリーズの物理分離デバイス(例えば磁石又は電磁石)を使用してスラリーからワイヤソー鋼粒子を分離すること、(2)炭化珪素及び珪素の湿潤微細粉末混合物を生成するために、スラリー生成物を回収すること、及びその後、液相部分(グリコール−水又は油のいずれか)を除去すること、(3)珪素及び炭化珪素の乾燥混合物を形成することができる粉末混合物の液体−気体相分離を使用して残留水分又は油分を完全に除去すること、(4)二ヨウ化珪素含有蒸気を生成するために、珪素及び炭化珪素の乾燥混合物を純粋な四ヨウ化珪素を含む高温反応炉にかけること、(5)こうして生成された蒸気流から、重力又はフィルタデバイスによって炭化珪素を分離すること、(6)好ましくは大幅に温度の低い流動層である第2の容器へ蒸気相を誘導し、上記反応炉内の細粒上に純粋な珪素を堆積させること、及び(7)不純物があれば除去するために、蒸留塔又は他のデバイス内で四ヨウ化珪素を再利用及び精製すること、のうちの1つ又は複数を実行することができる精製システム及び方法を提供する。これらの方法及びプロセスは、ウェーハソーイング工程から珪素、炭化珪素、及びPEGを回収及び生成するための本明細書に記載する任意の他の方法又はプロセスと組み合わせるか、交換するか、又は修正することができる。珪素、炭化珪素、及びPEGを回収するための方法及びプロセスは、任意の順序で実施することができる。
【0015】
[0015] 本発明の他の実施形態は、高純度珪素を生成するために使用することができ、(1)大きな炭化珪素粒子(例えば、有効径5マイクロメートルより大きい粒子)を、異なる大きさの遠心力を用いるか又は用いない重力分離方法(例えば、沈降槽、清澄機、ハイドロサイクロン、遠心分離器、フィルタ、及び分離を実行するために追加の対流を使用する水力分級器)によって分離すること、(2)1つ又は複数シリーズの磁気分離デバイス(例えば、磁石又は電磁石)を使用してスラリーからワイヤソー鋼粒子を除去すること、(3)例えば、鋼の含有量をさらに低減するために、鋼が減損したスラリーを酸性溶液と反応させることによって浸出を実行すること、(4)ごくわずかな量の鋼及び粒径が小さい(例えば有効径5マイクロメートル未満)炭化珪素粒子を用いて濃縮珪素の湿潤微細粉末混合物(例えば5パーセント液)を生成するために、液相部分(例えばPEG)を除去すること、(5)液体のほぼ完全な除去を実行するために残留固形物を乾燥させること、(6)大部分の四ヨウ化珪素及び非常に少量の不純物ヨウ化物を含む蒸気を生成するために、濃縮珪素の上記乾燥混合物を、約600〜800℃の純粋なヨウ素蒸気を含む加熱反応炉にかけること、(7)この蒸気相を冷却し、四ヨウ化珪素中の不純物を除去するために、好ましくは蒸留塔である精製ユニットにかけること、(8)精製された四ヨウ化珪素を収集した後、これを、四ヨウ化珪素が純粋な珪素及びヨウ化物蒸気に分解される真空下で動作する流動層内で約800〜1300℃の範囲内の温度下に置くこと、及び(9)このヨウ化物蒸気を工程へと再循環させること、のうちの1つ又は複数を実行することができる精製システム及び方法を提供する。これらの方法及びプロセスは、ウェーハソーイング工程から珪素、炭化珪素、及びPEGを回収及び生成するための本明細書に記載する任意の他の方法又はプロセスと組み合わせるか、交換するか、又は修正することができる。珪素、炭化珪素、及びPEGを回収するための方法及びプロセスは、任意の順序で実施することができる。
【0016】
[0016] 本発明の他の目的及び利点は、以下の説明及び添付の図面と共に考慮すれば、よりよく認識でき、また理解されよう。以下の説明は、本発明の特定の実施形態を説明する特定の詳細を含む可能性があるが、これは、本発明の範囲に限定されるものとしてみなされるべきでなく、むしろ好ましい実施形態の例示としてみなされるべきである。本発明の各態様について、本明細書で提案するような当業者に周知の多くの変形形態が可能である。本発明の精神を逸脱することなく、本発明の範囲内で様々な変更及び修正を行うことができる。
【0017】
[0017] 本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載される。本発明の原理を利用する例示的実施形態について記載する以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって、本発明の特徴及び利点をより良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】[0018]珪素の商業生産、及び使用済みウェーハ切削スラリーからの炭化珪素の回収のための材料の流れを示す装置の概略図である。
【図2】[0019]図1に示す工程中の別個のステップでどのようにして大きな炭化珪素粒子を回収することができるかを示す装置の概略図である。
【図3】[0020]使用済みウェーハ切削スラリーからの珪素、炭化珪素、及びPEG(ポリエチレングリコール)の回収及び高純度又はより純度の高い珪素の生産のための材料の流れを示す、本発明による例示的装置の概略図である。
【0019】
[0021] 本明細書に記載するすべての公報及び特許出願は、参照により組み込むものとする各個別の公報又は特許出願が具体的及び別個に示されたのと同じ範囲まで、参照により本明細書に組み込むものとする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0022] 本発明は、様々な工業的プロセスで生成される使用済みスラリーから高純度の珪素を生成するために、珪素、炭化珪素、及び切削流体を回収するための方法及びシステムを提供する。具体的には、本発明は、マイクロエレクトロニクス及び太陽光発電産業におけるウェーハ切削操作からの使用済みスラリーに適用することができる。
【0021】
[0023] ある実施形態では、さらに本発明は、商業生産量(例えば、年間50〜5,000又は500〜5,000トン)まで拡大可能な、太陽光発電産業で使用するのに好適な珪素を生成するためのプロセスを提供する。
【0022】
[0024] 本発明のある態様では、ストリングリボン又は球状電池を使用する有力なPV製造業者の連続工程における適用に有用な、純粋な珪素粒を堆積させる経済的で高処理能力の方法が提供される。
【0023】
[0025] ある態様では、純粋な粒状珪素原料及び炭化珪素粉末を生成する装置が開示される。ある実施形態では、装置は、ウェーハ切削工程で再使用するためのスラリー液媒体を回収するためのシステムを備える。
【0024】
[0026] 他の態様では、本発明のシステム、方法、又は装置は、インゴット切削工程からの珪素切削スラリー又は不用スラリーに含まれる珪素のうちの少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は99%を回収することができる。ある実施形態では、珪素の90%以上が回収される。珪素は、少なくとも、又は少なくとも約99.9999%、99.99999%、99.999999%、99.9999999%、99.99999999%、又は99.999999999%の純度を有することができる。言い換えれば、珪素は、6N、7N、8N、9N、10N、又は11Nまで、又はそれ以上の純度を有することができる。
【0025】
[0027] 図1に示すように、本発明のシステム、方法、及び装置は、珪素含有投入材料(流れ1)から珪素が豊富な流れ(流れ7)まで処理するように構成された1つ又は複数の分離ステップ(流れ1から7の間)を含むことができる。これらの分離ステップは、磁気、固体/液体、固体/気体、気体/液体、濃度、沈降速度、乾燥、又は浸出といった分離のうちのいずれかを含むことができる。図1に示すように、これらの分離ステップを使用して、例えば流れ2、4、及び6などの様々な出力流において、金属、炭化珪素、液体、例えばPEG、水、又は油を珪素含有投入材料から回収又は除去することができる。これらの流れは、金属が豊富な流れ(図1の流れ2)及び炭化珪素が豊富な流れ(図2の流れ3a及び7a)とすることができる。
【0026】
[0028] 珪素が豊富な流れは、本明細書で説明されるシステム、方法、又は装置のいずれかを使用して処理することができる。本発明の幾つかの実施形態では、第1の反応炉(図1の珪素反応炉1)内で珪素が豊富な流れを四ヨウ化珪素と反応させ、二ヨウ化珪素が豊富な流れを生成することができる。次に、二ヨウ化珪素が豊富な流れを使用して、第2の反応炉(図1の珪素反応炉2)内で堆積珪素を形成することができる。
【0027】
[0029] 本発明の他の実施形態では、第1の反応炉(図3の反応炉1)内で珪素が豊富な流れをヨウ素と反応させ、四ヨウ化珪素が豊富な流れを生成することができる。四ヨウ化珪素が豊富な流れを精製して、高純度の四ヨウ化珪素が豊富な流れを形成することができる。例えば、四ヨウ化珪素が豊富な流れを、蒸留工程を使用して精製することができる(図3の蒸留)。高純度の四ヨウ化珪素が豊富な流れを使用して、第2の反応炉(図3の反応炉2)内で二ヨウ化珪素を形成するために精製されたものを反応させることにより、堆積珪素を形成することができる。
【0028】
[0030]高純度珪素の回収
[0031] 本発明の幾つかの態様では、使用済みスラリーを、ウェーハ切削工程から、スラリーからの鋼粒子が物理分離器によってスラリーから実質的に除去される第1のユニットへと連続して送ることによって、純粋な粒状珪素原料を生成する方法を提供する。ある実施形態では、物理分離器は磁気分離器である。物理分離器は、鉄含有物質(例えば鋼)と他のスラリー成分との間の物理的特性の相違を有効に使用する任意のシステムとすることができる。鉄含有粒子は、鋼を実質的に回収するためのリサイクル設備に送ることができる。鉄を含まないスラリーは、ウェーハ切削工程で再使用するために液相部分(グリコール−水又は油のいずれか)を除去する液固分離ステップにかけることができる。鉄を含まないスラリーとは、鉄含有粒子を除去するために物理分離器にかけられたスラリーをいう。鉄を含まないスラリーとは、また、鉄含有粒子を完全に、実質的に、大部分、又は幾分含まないスラリーと言うこともできる。
【0029】
[0032] 本明細書で説明する方法からの湿潤粉末生成物を乾燥させ、残留液体(例えばグリコール、水、又は油)のすべてを除去することができる。乾燥ステップは、粘性液体の所望な除去を実行するために、一般に、材料の適度な加熱及び/又は減圧を利用する。幾つかの実施形態では、乾燥粉末生成物は、約1から20マイクロメートルの径の珪素及び炭化珪素粒子を含む。
【0030】
[0033] 本発明の一実施形態では、粉末混合物は、約1250℃の温度及びある程度の四ヨウ化珪素蒸気を含む気体相下に置かれる。粉末混合物は、約1000から約1500℃の範囲の温度下に置くことができ、ここで珪素部分は固体又は液体のいずれであってもよい。滞留時間が十分(例えば約1分)であれば、珪素粉末はヨウ化物蒸気と反応し、蒸気相内に十分な量の二ヨウ化珪素を生成する。例えば、滞留時間は約5秒から約10分としてもよい。工程が、サイクロン又は多孔質セラミックフィルタを含む一連の反応炉内で実行される実施形態では、炭化珪素粒子は通常、この工程から除去される。他の実施形態では、二ヨウ化珪素蒸気は、約700〜1000℃の温度で保持されている他の反応炉へと移送される。この容器、例えば参照により全体を本明細書に組み込むものとする本願の所有者が所有する米国特許出願第11/893,980号に開示された容器などの珪素シード粒子を含む流動層、では、二ヨウ化珪素は、ウェーハ切削工程で使用された元の珪素インゴットの純度と同様又はほぼ一致する純度の珪素にまで実質的に戻すことができる。したがって、残りの四ヨウ化珪素蒸気があれば、工程中を再循環させることができる。四ヨウ化珪素蒸気は、蒸留及び/又は溶媒を含む他の方法によって、任意の不純物を定期的に取り除くこともできる。本発明の幾つかの実施形態では、四ヨウ化珪素蒸気は、堆積珪素の純度を6N、7N、8N、9N、10N、又は11Nまで、あるいはそれ以上まで上げるために、蒸留工程又は他の分離工程を使用して継続的に精製される。
【0031】
[0034]高純度ヨウ化珪素
[0035] 本発明の幾つかの実施形態では、使用済みスラリーからの珪素及び他の材料は、四ヨウ化珪素及び他のヨウ化物を形成するためにヨウ素と反応させる。四ヨウ化珪素等のヨウ化物は、蒸留、膜分離、クロマトグラフィ、及び当業者に周知の他の方法などの様々な分離工程によって、他のヨウ化物から分離することができる。本発明の幾つかの実施形態では、四ヨウ化珪素は、蒸留ベース、温度ベース、又は相ベース(例えば、固体/液体、液体/気体、固体/液体/気体、及び/又は固体/気体)の低圧又は真空での分離工程を含む1つ又は複数の分離工程を使用して他の成分から分離することができる。結晶化、析出、及び当業者に周知の他の方法を使用して四ヨウ化珪素を分離するか、又はその純度を上げることができる。分離工程の速度、圧力、及び温度は、四ヨウ化珪素の純度を上げるように、及び/又は分離工程を実行するための装置の腐食又は劣化を低減するように最適化することができる。1つ又は複数の分離工程後に回収される四ヨウ化珪素の純度は、少なくとも、又は少なくとも約70、80、90、95、97、99、99.9%、99.99%、99.999%、99.9999%、99.99999%、99.999999%、99.9999999%、又は99.99999999%とすることができる。1つ又は複数の分離工程を実行するために本明細書に提供された装置、例えば、四ヨウ化珪素の分離に使用される蒸留塔又は任意の他の蒸留デバイスなどの耐用期間は、数十年又はそれ以上延長することができる。これは、1つ又は複数の分離工程を最適化することによって実行することができる。
【0032】
[0036] 四ヨウ化珪素の純度を上げるために使用される蒸留工程の例は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする米国特許第6,712,908号に記載されている。簡単に言うと、蒸留工程を使用して他のヨウ化物からSiIを分離することができる。他のヨウ化物としては、BI、PI、CI、FeI、及びAlIが挙げられる。FeI及びAlIは、FeI及びAlIは、蒸気圧が相対的に低いので、気化ステップにおいて、BI、PI、CI及びSiIから分離してもよい。いったん気化されるとSiIは、BI及びPIより高温で、またCIより低温で、凝縮することができる。
【0033】
[0037]SiCの回収
[0038] 本発明の他の実施形態では、スラリー中の炭化珪素粒子は2つの部分に分離され、その一方は大部分が大きい粒子(例えば約10〜20マイクロメートル粒子)を含み、他方はワイヤ切削時に生成されるより小さな粒径(例えば約1〜10マイクロメートル)を有する炭化珪素粒子の部分を含む。例えば分離ステップは、ハイドロサイクロンを使用して、物理分離ステップ(例えば磁石を使用する)の後に又は乾燥ステップ後の適切な配列のエアサイクロンにおいて実施することができる。どちらのタイプのサイクロンも、大きい粒径の炭化珪素粒子のほとんどを効果的に分離することができる。高温反応ステップの前に大きな炭化珪素粒子を除去することの利点は、工程全体に必要な温度がより低くてよいことにある。
【0034】
[0039] 別の実施形態では、もし上記工程に入る使用済みスラリーがすでに乾燥状態にあり、ほとんど液相部分を含まない場合であれば、酸素濃度の低い液体及び機械的な撹拌デバイスを使用して、上記方法によって処理されるスラリーを生成することができる。
【0035】
[0040]代替投入
[0041] さらに他の実施形態では、投入原料は、スラリー回収工程からの廃棄物であってもよく、ここで組成物には大きな炭化珪素粒子がほとんどない。この材料は、大量の鋼及び珪素、並びに少量の径の小さな炭化珪素粒子及びグリコール、水、又は油を含むことができる。この原料は、本明細書で説明する方法によって処理されるが、ほとんどの場合、大きな炭化珪素粒子部分の除去は不要である。
【0036】
[0042]珪素及びウェーハソー切削流体の回収のための方法及びシステム
[0043] 図1は、珪素の商業生産、及び使用済みウェーハ切削スラリーからの炭化珪素の回収のための材料の流れを示す装置の概略図である。図1に示すいずれの1つ又は複数の工程も、それらの任意の順序及び組合せで実施することができることを理解されたい。全体として図1の例示的方法、装置、及びシステムを参照すると、ウェーハ切削操作からの使用済みスラリー1は撹拌タンクに添加され、ここで、水を含む溶液が加えられて、その後の処理に適切な粘性が得られる。撹拌及び/又は振動を通じた力学的エネルギーを使用して、撹拌タンク内で粒子が適度に分散される。分散されたスラリーは、次に、鋼粒子の物理特性の実質的な相違を活用する高勾配磁気分離器又は類似のデバイスへと移送され、ここで鉄含有粒子が効果的に除去され、廃棄物リサイクル流2へと導かれる。次に、鉄を含まないスラリー3は、液固分離器へとポンプで送られる。このユニットは、1〜20マイクロメートルの粒径のものに対して操作することができるフィルタプレス、遠心分離器、ハイドロサイクロン、又は他の固液分離デバイスからなるものとすることができる。
【0037】
[0044] 図1の例示的実施形態で示すように、液固分離器を通過する液流4は収集され、その後、大きな炭化珪素粒子と再混合されて、ウェーハ切削操作のために新しいワイヤソー切削流体が形成される。液固分離器から得られる鉄を含まない固体粒子流5は、スクリューフィーダ又は類似のデバイスを介して搬送され、このユニット内の温度上昇及び/又は減圧によって乾燥され、これにより残留液相部分が揮発される。収集済み液流6は収集容器へと移送され、その後、大きな炭化珪素粒子と再混合されて、ウェーハ切削操作のために新しいワイヤソースラリーが形成される。珪素及び炭化珪素を含む乾燥済み粒子流7は、その後、圧力密封弁を通じて珪素反応炉1内の気体蒸気流へと注入される。気体蒸気流は、通常、様々な容積比のキャリアガス及び四ヨウ化珪素からなる。ユニット内の粒子及び蒸気の滞留時間は通常1分未満、温度は約1100℃より上、好ましくは1250〜1500℃の間に維持される。
【0038】
[0045] また図1の例では、珪素反応炉1内で珪素粒子が完全に反応し、気体蒸気相で二ヨウ化珪素を形成する。このシステムの一部としてサイクロン又は類似の固気分離器を追加し、流れ8で炭化珪素粒子を捕獲及び除去することができる。気体蒸気は、流れ9を介して、流動層又は類似の接触デバイスからなる珪素反応炉2の入口へと移送される。反応炉1に共に入る炭化珪素粒子は、一般に、四ヨウ化珪素とは反応しない。流れ9への炭化珪素粒子のキャリーオーバを避けるために、セラミックフィルタをインラインに追加して、この固形物を最終的に除去することもできる。
【0039】
[0046] 一例として、気体蒸気流9は、図1に示すように、流動層(珪素反応炉2)の濃密相又は上記流動層の分配板への入口のいずれかへ注入される。反応炉2は、その容積全体を通じて、700〜1000℃の範囲内の一定温度で維持される。この例では、二ヨウ化珪素蒸気は、好ましくは珪素シード材料からなる流動層の粒子相上に堆積する。珪素の層粒子が約0.5〜10ミリメートル(例えば5mm)の粒状に成長すると、それらは適切な機械的手段によって層から除去され、流れ11に入る。次に、珪素粒は室温まで冷却され、販売可能な生成物を形成する。流動層を出た気体蒸気相10は、珪素反応炉1へと戻され再利用することができる。このタイプの多くの操作サイクルを経た後、気体蒸気相内に不純物が蓄積する傾向があるため、リサイクル流10の一部を、四ヨウ化珪素内の不純物の蒸留及び/又は溶媒抽出を実行する精製ユニットに送ることができる。
【0040】
[0047]熱需要の少ない方法及びシステム
[0048] 図2に示すような本発明の他の例示的実施形態は、上記工程のような工程から大きな炭化珪素粒子を回収するための材料の流れを示す。図2は、熱要件を改善又は減少させるように設計された工程の例示的な変形形態を示す。炭化珪素粒子が図1に示された珪素反応炉1内に添加される場合、これらの粒子を1100〜1500℃の操作温度まで引き上げる際に大量の熱が必要となる可能性がある。さらに、炭化珪素は、四ヨウ化珪素蒸気とはほとんど反応しないため、このユニット内では「死荷重」として効果的に働く。流れ3a及び7aで示される図1への修正を使用して、必要であれば、工程にかかる熱需要を効果的に減少させることができる。
【0041】
[0049] 流れ3aでは、大きな炭化珪素粒子の大部分はハイドロサイクロンで除去されるが、流れ7aではこれらの粒子はエアサイクロンで除去される。いずれのサイクロンシステムも効果的であるが、非常に小さい粒子の除去では、流体と粒子との密度の差が大きいことから、エアサイクロンの方が効率的である。
【0042】
[0050]実施例1
[0051] ベンチスケールプロセスシステムで、2つの反復実験が実施された。試験S1−31−08−11−14及びS1−31−08−12−05に関して図1及び図2の装置(反応炉1及び反応炉2)で使用された条件が、以下の表1に列挙されている。
【表1】

【0043】
[0052] 産業用供給源からのカーフ原料が、磁気分離、浸出、固液分離、及び乾燥を含む一連のステップにかけられた。表2は、GDMS分析を使用した、図1の流れ1と7の間の組成の違いの比較を示す。珪素生成物のホウ素及びリン組成を表3に示す。最後に、試験S1−31−08−12−05の珪素粒の形状及び粒径の代表的なサンプルを、図3に示す。
【表2】


【表3】

【0044】
[0053]高純度珪素の回収のための方法及びシステム
[0054] 図3は、使用済みウェーハ切削スラリーからの珪素、炭化珪素、及び/又はポリエチレングリコール(PEG)の回収、並びに高純度珪素の生成のための材料の流れを示す概略図を示す。図3に示されたステップは、固液分離、磁気分離、ろ過、浸出、乾燥、反応炉1(ヨウ素との反応が可能)、蒸留、及び反応炉2(堆積可能)を含む。ステップのうちの1つ又は複数を、分離工程で使用することができる。分離工程の順序は、必ずしも図3に示された順序でなくともよい。分離工程は、任意の順序とすることができる。例えば、磁気分離ステップは、固液分離ステップの前又は後とすることができる。分離工程は、当業者に周知の追加の工程によって補足することができる、及び/又は分離工程のうちの1つ又は複数は省略することができる。
【0045】
[0055] 全体として図3を参照すると、ウェーハ切削操作からの使用済みスラリー1を、1つ又は一連の固液分離器に添加することができる。添加される液体又は分離剤2は、PEG、投入スラリーの液体と同じ液体又は任意の他の液体とすることができ、又は、投入スラリーの固形物の割合を最適化、増加、又は減少させるためにスラリーを添加してもよい。使用済みスラリーの固形物の割合を上げるか又は下げることによって、固液分離器の分離速度又は効率、あるいは他の分離ステップに影響を与えることができる。このプロセス段階に入る投入使用済みカーフスラリー1は、約40%のPEG、約50%のSiC細粒(約5〜30μm)、約5%の鋼細粒(約0.1〜5μm)、及び約5%の珪素細粒(約0.1〜5μm)の組成を有することができる。固形物は、約80%のSiC(約10μmの体積算術平均及び約5μmの標準偏差を有する、準ガウス粒径分布(psd))、約5〜10%の黄銅被覆鋼粒子(不規則なpsd、有効径約0.1〜2μm)、及び約10〜15%の珪素粒子(不規則なpsd、有効径約0.1〜2μm)を含むことができる。
【0046】
[0056] このプロセス段階の目的、すなわち固液分離は、Siの量をほとんど失うことなく、できる限り多くのSiC粒子を除去することである。この目的は、(a)主として重力(拡張分類機、濃縮器)又は遠心力(ハイドロサイクロン、遠心分離器)を使用する沈降技術、及び(b)フィルタ(スクリーン又はクロスフローユニットを伴わない)を使用するろ過という少なくとも2つのタイプの技術を使用して達成するか又はこれに近づくことができる。沈降及びろ過ステップを相前後して使用することで、分離目的を達成することができる。ターゲットとされる生産物は、約20重量%SiC(psd、直径約<7μm)、20〜30重量%鋼(psd、直径約0.1〜2μm)、及び50〜60重量%珪素(psd、直径約0.1〜2μm)の固体組成を有する固形物を約10〜20重量%含むスラリーとすることができる。
【0047】
[0057] 当業者に周知の方法を使用してSiCを分離するために、遠心分離器を使用することができる。一般に、Siの任意のエントレインメントを気にすることなく、できる限り多くのSiCを回収するための方法が開発されている。最終的に生成物に含まれる任意のSiや鋼は、SiCのリサイクル流内のこれらの「混入物質」を除去するために、酸及び/又は塩基で浸出することができる。したがって、SiC及びSiの両方の回収を最適化するための一致した努力は行われてはいない。しかしながら、SiCを分離するための遠心分離ステップは、SiC及びSiの両方の回収を提供することができるプロセスに組み込むことができる。本発明の方法及び装置は、SiC及びSiの両方の回収を提供するものである。
【0048】
[0058] 沈降法に関連して、ストークスの法則は、流体中の粒子の終端速度がd2及び1/μに比例することを示し、ここでdは有効粒径であり、μは液体の粘性である。これは、≧10μmのSiC粒子(全体の50%)が、鋼及びSi粒子の50〜400倍以上の終端速度を有する可能性があることを意味する。この利点は、PEG溶液の粘性が水の約50倍であるという事実によって、いくらか減退する。したがって、たとえ非常に良好な粒子分離が得られる場合であっても、商用には処理時間が遅すぎる可能性がある。本発明の幾つかの実施形態では、超音波の周波数を使用するか、又はこれを分離器に印加して沈降時間を減少させることができる。他の追加の振動エネルギーを使用して、他の粒子からSiC粒子を分離するのを容易にすることができる。例えば、SiC及びPEGを含む溶液を加熱して溶液の粘性を低減させ、それによって沈降時間を減少させるか、又は沈降粒子の終端速度を上げることができる。
【0049】
[0059] 図3を参照すると、このプロセス段階、すなわち固液分離からの生成物は、SiCが豊富なスラリー3及びSiCの少ないスラリー4である。SiCの豊富なスラリーの用途については、以下でより詳細に説明する。次に、SiCの少ないスラリー4は、鋼粒子の磁化率又は磁気特性の実質的な相違を活用できる磁気分離器又は類似のデバイスへと移送することができ、ここで鉄含有粒子を効果的に又は実質的に除去し、廃棄物リサイクル流6へと導くことができる。SiCの少ないスラリーは、約5〜10%(総固体塊ベース)のSiCを含むことができる。
【0050】
[0060] この段階、すなわち磁気分離、での固形分は、許容可能な鋼の分離(すなわち、>90%)が達成できるように、PEG又はスラリー液と一致する液体を追加すること5によって調整してもよい。次に、流れ6を水中での希釈によって制御酸化させ、水素ガスを生成することができる。このガスは、工場へのエネルギー生成のために貯蔵、燃焼、又は焼却することができる。あるいは、水素ガスを燃料電池に供給し、電気を生成することができる。この電気は、工場により使用、貯蔵、又は移送することができる。流れ6に取り込まれた任意の珪素粒子は、有機酸及び/又は無機酸を伴う水溶液中で残留鋼を浸出することによって回収することができる。この粒子が利用されるかどうかは、経済的考察によって決定することができる。
【0051】
[0061] 磁気分離ステップでも、珪素の豊富なスラリーを産出することができる。珪素の豊富なスラリー7はろ過段階へ移送され、ここで、PEGの85〜90%をほとんどSiを損失することなく流れ9中に除去することができる。孔径<1μmのケーキフィルタを使用することができる。回転式ドラムフィルタ及び/又は圧力フィルタなどの当分野で周知であるか、又は後に開発される他のタイプのフィルタを使用することができる。フィルタを通過するPEGは流れ9を形成することができる。洗浄流体8を追加して、分離効率を上げるようにケーキ特性を調整することができる。洗浄流体の具体例としては、脱イオン蒸留水及び/又は有機液体、例えばイソプロピルアルコールを挙げることができる。ろ過ステップからの生成ストリーム10は、Siを多く含み、実質的に鋼が少なくなっているものとすることができる。
【0052】
[0062] 図3の例示的実施形態に示すように、SiCを豊富にすることができる液固分離器を通過する液流3を収集した後、ウェーハ切削動作用のワイヤソー切削スラリーを形成するために、ろ液9(PEG溶液であってもよい)と再混合させることができる。また、SiCの純度を上げるために液流3をさらに精製できる、及び/又は、混合に先立ってPEG溶液の純度を上げるためにろ液をさらに精製できる。混合されたPEG溶液及びSiC粒子は、ウェーハ切削デバイスへとリサイクルすることができる。
【0053】
[0063] 図3を参照すると、流れ11によって運ばれる適切な濃度の無機酸及び/又は有機酸を使用して、内部の固形物を酸浸出させることによって、流れ10での鋼のさらなる除去を達成することができる。使用することができる酸の例としては、塩化カルシウム触媒を伴うHCl、HNO、HSO、及びシュウ酸が挙げられる。可溶性の鋼混入物質を含む溶液流12を廃棄し、固形物の豊富な流れ13を乾燥段階へポンプで送ることができる。あるいは、溶液流中の酸を中和するか又は反応させて、有用な生成物を形成することができる。固形物を溶液流12から析出させ、集め、金属くずとして鋼の小規模工場へと販売することができる。この段階、すなわち乾燥段階では、スラリーは第1にフィルタにかけられ、次に、温度を上昇させ、ガス、例えばアルゴン又は水素などの不活性ガスの、ブランケット流れ14を用いて、真空乾燥される。乾燥段階は、約400℃まで、約400℃以上、少なくとも約200℃、又は少なくとも約300℃の温度で維持することができる。乾燥されたスラリーは乾燥粒子となり、流れ16を通じて乾燥機へと出ていくことができる。排気ガス15は、スラリーからの水分を含むことができる。
【0054】
[0064] ほとんどは珪素であり、少量の炭化珪素及び鋼を含んでもよい乾燥済み粒子流16は、次に、反応炉1内への圧力密封弁を介して気体蒸気流へと注入することができる。本発明の幾つかの実施形態では、固形炭化珪素又は他の固形物を除去するために、流れ16を乾式サイクロンによって処理することができる。
【0055】
[0065] 別の方法としては、反応炉1に入る流れ16は冶金グレード珪素とすることができる。例えば、珪素及び上記ステップを経た、又は経ていない他の成分を流れ16に提供することができる。例えば、不純物を含む任意の珪素を反応炉1に提供することができる。冶金グレード珪素を粒子サイズまで微粉化又はすりつぶして、反応炉1内で反応させるために有効表面積を増加させることができる。
【0056】
[0066] 全体として図3を参照すると、乾燥済み粒子流又は冶金グレード珪素16は、反応炉1内で気体蒸気流17と反応させることができる。気体蒸気流17は、キャリアガス及びヨウ素を様々な体積比で含むことができる。反応炉1は、好ましくは例えば高速流動層(FFBR)などの任意のタイプの希薄相反応炉とすることができる。FFBRは、固形物の混合物−特定粒径の不活性粒子と注入粒子流16、を含むことができる。気体蒸気17の速度は、不活性粒子が垂直の管部分を上に流れ、取り付けられたサイクロンを通過し、FFBRの分配板へと戻る際に、不活性粒子が確実に循環するように調整することができる。粒子流16の滞留時間は、サイクロンの効率によって決定することができ、一部の小さな粒子(例えば、約<1μm)はサイクロンを通過して移送されることが一般に知られている。これらの非常に小さな粒子は、電気集塵器、又は平均孔径が約1μm未満の多孔質固体気体セラミックフィルタのいずれかからなるフィルタ内で捕えることができる。反応炉1の温度は、一般に、600〜900℃の間で維持することができる。あるいは、反応炉は、より高温で維持するか、又は高温を通じて循環させることができる。
【0057】
[0067] このようにして、ほとんどのヨウ素を珪素と反応させ、四ヨウ化珪素(SiI)又は二ヨウ化珪素(SiI)を生成することができる。本発明の幾つかの実施形態では、反応条件を、大多数のヨウ化珪素が四ヨウ化珪素の形であるようにすることができる。本発明の幾つかの実施形態では、反応炉1内の反応条件を、生成流内のヨウ化珪素の約10、30、50、70、90、95、又は99%、それ以下、あるいはそれ以上が、四ヨウ化珪素の形であるようにすることができる。図3を参照すると、流れ16内に不純物があれば、それらに対応する珪素のヨウ化物蒸気又は例えば珪化鉄などの珪素化合物に変換することができる。珪化物及び他の珪素化合物をFFBR内に保持して大きく成長させることができ、流れ18で示すように、都合の良い時に取り出す必要が生じる場合がある。珪化物及び他の珪素化合物は、継続的又は定期的に取り出すことができる。対応するヨウ化物蒸気は、SiIと共に、流れ19を介して次の処理段階へと移送される。処理流れ19は、未反応ヨウ化物蒸気、SiI、不純ヨウ化物蒸気、及び何らかの不活性ガスを含むことができる。
【0058】
[0068] 処理流れ19の純度を上げるために蒸留ステップを提供してもよい。蒸留ステップは、ヨウ化珪素を含む流れから堆積珪素を形成するための堆積ステップに先立つものとすることができる。例えば、処理流れ混合物19は、塔の還流終端でヨウ化物及び低沸点不純ヨウ化物(BIなど)、及び再沸器で高沸点ヨウ化物(AlIなど)を除去するために、十分な理論段数を備える塔内で連続して蒸留することができる。SiIは、これらの塔の2つのレベル間で回収することができる。塔は、SiIの精製のために任意数のレベル、ステージ、又は段を有することができる。塔は、分離工程の効率を上げるために、1つ又は複数のリサイクル流を有することができる。SiIをさらに精製するために、追加の蒸留塔、及び/又は例えば当分野で周知の蒸気圧縮蒸留デバイスなどの任意の他の蒸留デバイスも使用することができる。流れ20及び/又は塔は、好ましくは真空又は低圧モードで操作することができ、これにより全体の温度及び熱要件を低減させるため、塔内部の腐食を低減することにつながる。流れ20は、塔内での混合に役立つ不活性ガスを搬送することができる。蒸留塔内の圧力は、約101.3kPa(1atm)、75kPa、50kPa、25kPa、又は5kPa未満とすることができる。蒸留塔は、棚段蒸留塔、充填蒸留塔、蒸気圧縮蒸留塔、又は当業者に周知の任意の他のタイプの蒸留塔とすることができる。
【0059】
[0069] 不純ヨウ化物は流れ21を通じて除去し、当分野で周知であるか又は後に開発される任意の方法で処理することができる。例えば、不純ヨウ化物は、それぞれ参照により全体を本明細書に組み込むものとする、米国仮特許出願第61/044,342号及び米国特許公報第20080044337号に記載の方法、デバイス、及びシステムによって処理することができる。
【0060】
[0070] SiIを搬送する流れ19は、蒸留に加えて、蒸気除去及び/又は結晶化を使用して精製することができる。蒸気除去は、不活性ガスと液体SiIを混合することによって実行することができるため、結果としてヨウ化ホウ素などの軽質ヨウ化物が不活性ガス流れによって除去することができる。結晶化は、液体SiIと有機液体を混合することによって実行することができるため、結果として、SiIは結晶の形で析出する。シード結晶を使用することができる。例えば蒸気除去及び/又は結晶化などの追加の工程は、蒸留工程の前又は後に実行することができる。
【0061】
[0071] 蒸留及び/又は他の工程は、精製済みSiIを含む気体蒸気流れ22を産出することができる。精製済みSiIは、少なくとも7N、8N、9N、10N、11N又はそれ以上の純度を有することができる。気体蒸気流れ22中の精製済みSiIは、図3に示すように、流動層(反応炉2)の濃密相内、又は上記流動層の分配板への入口へと注入することができる。反応炉2は、その容積全体を通じて、約900〜1300℃の範囲内の温度、及び実質的に大気圧より低く維持することができる。流動層反応炉の例には、参照により全体を本明細書に組み込むものとする、米国特許第4,444,811号に記載されたものが含まれる。珪素堆積のための流動層反応炉は、気泡型又は噴流層型の流動層反応炉とすることができる。
【0062】
[0072] 反応炉2では、精製済みSiIを反応させてSiI(二ヨウ化珪素)を形成し、次にこれを固体珪素原子とヨウ素蒸気分子(I)に分解することができる。この例では、固体珪素は、好ましくは珪素シード材料からなる場合のある流動層の粒子相上に堆積される。珪素の層粒子が、例えば約0.5〜10ミリメートル又は約2mmなどの望ましいサイズの粒状に成長すると、それらは適切な機械的手段によって層から除去され、流れ24に入ることができる。次に、珪素粒は室温まで冷却され、販売可能な生成物を形成する。気体蒸気相23は流動層を出ることができ、ほとんどヨウ素、未反応SiI、及び不活性ガスからなるものとすることができる。好適な調整を行った後、ヨウ素は反応炉1へと戻され再利用することができ、SiIは、蒸留工程、又は反応炉2へと戻され再利用することができる。リサイクル後のSiIは、反応炉2内で堆積することができる珪素の量を増大することができる。
【0063】
[0073] 本発明が提供するサイクロン及び流動層容器を含む反応炉又は容器は、通常、構造強度を与える外部金属合金シェルと、その内部に含まれる含ハロゲン蒸気による高温腐食に耐性のある層粒子にさらされている内部セラミックシェルとから構成される構造材料でできていることを理解されたい。
【0064】
[0074] 本明細書で説明される方法、システム、及び装置は、連続、半連続、バッチ、又は半回分(fed-batch)モードのいずれかの方法で使用することができる。本発明の幾つかの実施形態では、幾つかの工程はバッチ方法であり、その他は連続モードである。例えば、珪素の豊富な流れの生成に使用される分離ステップはバッチ式で実行することができ、珪素の豊富な流れから堆積珪素を生成するためのステップは、半連続方法で実行することができる。
【0065】
[0075] 上記内容は、本発明の原理を単に例示的に示したものとみなされる。本明細書の本発明の概念は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする、現在米国特許公報第20080044337号として公開された、係属中の米国特許出願第11/893,980号(Fallavollita)、Moates他への米国特許第3,006,737号、Herrickへの米国特許第3,020,129号、Kapur他への米国特許第4,388,080号、Kapur他への米国特許第4,388,286号、Jainへの米国特許第4,910,163号、Yorita他への米国特許第5,772,900号、Costantini他への米国特許第6,113,473号、Zavattari他への米国特許第6,231,628号、Wang他への米国特許第6,281,098号、Katsumata他への米国特許第6,322,710号、Zavattari他へのWO00−01519号、HenriksenへのWO2002−040407号、Horioへの米国特許第6,615,817号、Billiet他への米国特許第6,780,665号、Kajimotoへの米国特許第6,929,537号、Billiet他への米国特許第6,838,047号、Frangiacomoへの国際公開第2006−137098号、及びZavattari他への米国特許第7,223,344号のうちのいずれかを含むが、これらに限定されない、周知の珪素処理又は回収システムに適用することができることを理解されたい。さらに、当業者は多数の修正及び変更を行うことになるため、本発明を図示及び説明された精密な構造及び動作に限定することは望ましくなく、したがって、すべての好適な修正及び等価物を、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に入るように用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの物理分離デバイスを使用して切削スラリーから鉄含有粒子を分離し、それによってスラリー生成物を生成するステップと、
b)前記スラリー生成物から液体を除去し、それによって炭化珪素及び珪素の粉末混合物を生成するステップと、
c)前記粉末混合物を四ヨウ化珪素を含む第1の容器に提供し、それによって二ヨウ化珪素を含む蒸気を生成するステップと、
d)前記二ヨウ化珪素を含む蒸気を第2の容器に提供するステップであって、前記堆積珪素が前記二ヨウ化珪素から形成されるステップと、
を含む珪素を回収するためのプロセス。
【請求項2】
前記第2の容器から残留四ヨウ化珪素を精製及び再利用するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップa)から前記鉄含有粒子を回収するステップe)をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
蒸気気体混合物の流量を調整するために、ステップd)において前記第1の容器にキャリアガスを追加するステップf)をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第1の容器から炭化珪素粒子を回収するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記スラリー生成物からグリコール、油、又は水のうちの少なくとも1つを回収するステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
a)珪素及び炭化珪素が豊富な流れ(stream)を生成するために切削スラリーから鉄含有粒子を除去する物理分離デバイスと、
b)前記珪素及び炭化珪素が豊富な流れから珪素が豊富な流れを生成するためのサイクロン分離器と、
c)前記珪素が豊富な流れから堆積珪素を生成するための容器であって、純粋な珪素粒子でシーディングされた流動層を含む容器と、
を含む珪素を回収するための装置。
【請求項8】
前記サイクロン分離器が、蒸気気体相内の炭化珪素及び珪素の混合物から炭化珪素を分離し、珪素と四ヨウ化珪素との間での反応を可能にする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
固体−液体スラリーから10から20マイクロメートルの間の炭化珪素粒子を分離するように構成されているハイドロサイクロンをさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
1から10マイクロメートルの間の炭化珪素粒子が、二ヨウ化珪素ガス蒸気と共に前記容器内に取り込まれるのを防ぐように構成されている高温フィルタをさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
a)鉄含有粒子を珪素含有生成物から分離するための磁場を生成する物理分離デバイスと、
b)直径約10マイクロメートルを超える炭化珪素粒子を前記珪素含有生成物から分離するためのハイドロサイクロン又はエアサイクロンである分離器と、
c)前記珪素含有生成物を乾燥するための乾燥デバイスと、
d)前記珪素含有生成物を収容するように構成されている第1の容器であって、少なくとも1000℃の温度に保たれている第1の容器と、
e)前記珪素含有生成物を収容するように構成されている第2の容器であって、純粋な珪素粒子でシーディングされた流動層を含む第2の容器と、
を含む珪素を回収するためのシステム。
【請求項12】
a)珪素含有物質及びヨウ素を第1の容器に提供するステップであって、それによって四ヨウ化珪素を含む四ヨウ化珪素が豊富な組成物を生成するステップと、
b)より純度の高い四ヨウ化珪素が豊富な組成物を形成するために、前記四ヨウ化珪素が豊富な組成物を蒸留工程に提供するステップと、
c)前記より純度の高い四ヨウ化珪素が豊富な組成物を第2の容器に提供するステップであって、該四ヨウ化珪素から堆積珪素が形成されるステップと、
を含む珪素を回収するためのプロセス。
【請求項13】
前記四ヨウ化珪素が豊富な組成物がヨウ化珪素を含み、該ヨウ化珪素の約70%以上が四ヨウ化珪素の形である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記珪素含有物質が、固液分離ステップ、磁気分離ステップ、ろ過ステップ、浸出ステップ、及び乾燥ステップのうちの1つ又は複数によって調製される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記珪素含有物質が冶金グレード珪素を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
前記より純度の高い四ヨウ化珪素が豊富な組成物が、少なくとも99.99999〜99.99999999%(7〜10N)の純度を有する、請求項12に記載のプロセス。
【請求項17】
前記堆積珪素が、少なくとも99.999999%の純度を有する、請求項12に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第1の容器が約600℃から900℃の間の温度で操作され、前記第2の容器が約900℃から1300℃の間の温度で操作され、前記蒸留工程が約101.3kPa未満の圧力で操作される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項19】
a)炭化珪素が豊富な組成物及び炭化珪素の少ない組成物を形成するために、炭化珪素及びPEGを含む混合物を固液分離にかけるステップと、
b)PEGが豊富な組成物を形成するために、前記炭化珪素の少ない溶液をろ過分離にかけるステップと、
c)ワイヤソー切削スラリーを形成するために、前記炭化珪素の豊富な組成物及び前記PEGが豊富な組成物を混合するステップと、
を含むワイヤソー切削スラリーを回収するためのプロセス。
【請求項20】
前記ろ過分離により珪素が豊富な組成物を形成し、
四ヨウ化珪素が豊富な組成物を形成するために、前記珪素が豊富な溶液をヨウ素と反応させ、
より純度の高い四ヨウ化珪素が豊富な組成物を形成するために、前記四ヨウ化珪素が豊富な組成物が蒸留工程を使用して分離され、
前記より純度の高い四ヨウ化珪素が豊富な組成物を使用して堆積珪素を形成する、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記堆積珪素が、少なくとも99.999999%の純度を有する、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
a)四ヨウ化珪素を含むヨウ化物混合物を形成するために、珪素含有物質をヨウ化物と反応させるように構成されている第1の容器と、
b)前記ヨウ化物混合物を収容し、高純度の四ヨウ化珪素が豊富な組成物を生成するように構成されている蒸留塔と、
c)前記四ヨウ化珪素が豊富な組成物から堆積珪素を形成するように構成されている第2の容器と、
を含む珪素を回収するための装置。
【請求項23】
前記第1の容器が高速流動層反応炉であり、前記第2の容器が流動層反応炉である、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
サイクロンが前記第1の容器に取り付けられている、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記第2の容器、前記蒸留塔、及び/又は前記第2の容器が、内部セラミックシェルを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
切削スラリーから珪素を分離するための装置を含み、年間約50から約5,000トンのPVグレード珪素を回収する珪素回収のためのシステム。
【請求項27】
切削スラリーから珪素を分離するための装置を含み、前記スラリーから前記珪素の約90%を回収する珪素回収のためのシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−516290(P2011−516290A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504217(P2011−504217)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/040261
【国際公開番号】WO2009/126922
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(509047410)イオシル エナジー コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】