説明

例えばEXAFS(広帯域X線吸収微細構造)測定での蛍光収率(FY)と全電子収率(TEY)との分離を可能にする電離粒子分析器

1つの電離粒子分析器は、1つの電離1次粒子源と、1つの荷電粒子検出器と、且つ、電離可能なガスを前記粒子源と前記検出器の間に有している。前記分析器は、更に、前記粒子源と前記検出器の間に位置する荷電粒子妨害装置を具えている。該荷電粒子妨害装置は、第1の構成において、荷電粒子の通過を妨げ、且つ非荷電粒子を通す様な電位に維持される様に準備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電離可能なガスを用いた電離粒子の分析器及び分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子収率の測定は、X線の如き高エネルギーの光子のビームとの相互作用に対する材料表面の応答の研究に用いられる技術として知られている。材料の表面を様々なエネルギーのX線に曝し、表面から放出される電子の数とエネルギーを測定することによって、表面の化学的な特性を詳しく分析することが出来る。
放出電子の全電子収率(TEY)には、光電子効果により放出された電子と、オージェ効果により放出された電子との両方を含んでいる。放出されたオージェ電子のエネルギーは、原子エネルギーレベルに固有なものであり、表面の成分と特性の測定方法を提供している。しかしながら、オージェ電子の放出の代わりに、エネルギーがX線として材料から失われる場合がある。この蛍光収率(FY)は、オージェ電子よりも光子を優先して放出する特有の励起原子の確率である。
【0003】
物質の表層の研究において、放出EXAFS(広帯域X線吸収微細構造)は、確立された技術であり、シンクロトロンX線光源と併せて、世界中で広く活用されている。該技術は、X線によって物質の表面近くの原子を励起し、試料材料の原子構造に関する情報が得られるX線と電子の放出を測定することが出来る。
【0004】
ヨーロッパ特許出願98903130.7では、基本的な表面EXAFS技術の拡張が記載されている。荷電粒子検出器は、少なくとも一対の電極(例えば、1つの陽極と1つの陰極)を具えている。該出願は、荷電粒子源である試料材料と間隙を介する荷電粒子検出器を具え、試料と検出器の両方が電離可能なガス中に浸されている荷電粒子分析器を記載している。1次粒子は、粒子源(例えば試料材料)から放出された粒子である。検出器を試料に対して陽電位に維持することによって、試料から放出された高速の1次電子によって生じた2次電子は、検出器に向けて押し流される。材料から放出されたX線も、ガスを電離し2次電子を生成する。ガスが電離されて現われた2次電子の集団は、検出器に向けて電界中を押し流され、増幅された信号が検出器の陽極に集められる。この増幅された信号には、試料から放出されたX線と電子の両方に関する情報が含まれ得る。
検出器からの波高の分布(例えばスペクトル)を分析することによって、表層から制御深さまでの分析を行なうことが出来る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の1つの目的は、ここに言及されたものと他のものを含めて、従来技術の1以上の課題に実質的に対応する粒子分析器を提供することである。
本発明の実施形態の1つの目的は特に、試料の構造について、好ましくは表面下の様々な深さにおいて、更なる情報を得ることが出来る粒子分析器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本発明は、1つの電離1次粒子源と、1つの荷電粒子検出器と、前記粒子源と前記検出器の間に存在する電離可能なガスとを有する電離粒子分析器であって、該分析器は、更に、前記粒子源と前記検出器の間に位置すると共に、第1の構成では、荷電1次粒子が前記ガスを電離して生成した2次電子の通過を妨害すると共に非荷電粒子を通す様な電位に維持される様に構成されている1つの荷電粒子妨害装置を具えている。
【0007】
この様な構成を有する粒子分析器の提供によって、粒子源からの非荷電(例えば、電気的中性)電離粒子は、荷電粒子妨害装置を通過することが出来る。この様な非荷電粒子(例えば光子)は、次にガスを電離し、その結果生じた2次電子が荷電粒子検出器により検出される。従って、試料構造の詳しい情報が得られることとなる非荷電粒子からの信号を、荷電粒子とは切り離して測定することが出来る。
【0008】
試料により放出された前記荷電粒子に電子が含まれていてもよく、且つ前記非荷電粒子に光子が含まれていてもよい。
【0009】
前記荷電粒子妨害装置は、前記1次粒子によって前記ガス中に生成された前記荷電2次電子を斥ける様な電位が維持されていてもよい。
【0010】
前記荷電粒子妨害装置は、試料の1つの表面に実質的に平行な1つの平面に位置する少なくとも1つの棒状片を具えていてもよい。
【0011】
前記荷電粒子妨害装置は、複数の実質的に平行な棒状片を具える格子を具えていてもよい。
【0012】
前記荷電粒子妨害装置は、更に、荷電粒子と非荷電粒子の両方の十分にスムーズな通過を許容する第2の構成に維持される様に構成されていてもよい。
【0013】
前記荷電粒子妨害装置は、前記電離可能なガス中に位置していてもよく、且つ前記粒子源から放出された荷電粒子の実質的に全部が、前記荷電粒子妨害装置上に入射する前に電離ガス電子に変わる様に、前記粒子源から離れている。
【0014】
前記粒子源は1つの試料であってもよく、且つ輻射のビームに前記試料を露出させるための手段が設けられていてもよく、該ビームのエネルギーは、前記試料から電離粒子が放出されることを引き起こすために十分である。
【0015】
前記露出手段は、X線源を具えていてもよい。
【0016】
前記試料は実質的に平面状の表面を有していてもよく、且つ、前記ビームは、前記試料表面の法線に対して傾いた方向で前記試料に向けられていてもよい。
【0017】
前記ビームは、試料表面に対して視射角で向けられていてもよい。
【0018】
前記ビームは、前記粒子源と前記荷電粒子妨害装置の間を通過する様に配置されていてもよく、前記ビームが前記装置により塞がれない様になっている。
【0019】
前記ビームは、前記荷電粒子妨害装置を通り抜ける様に配置されていてもよく、前記分析器は更に、前記荷電粒子妨害装置と前記荷電粒子検出器の間に位置する1つの保護電極を具え、該保護電極は、少なくとも前記ビームが前記荷電粒子妨害装置を通り抜ける領域を覆っている。
【0020】
前記検出器は、少なくとも一対の電極を具えていてもよく、該一対の電極は、前記粒子源と前記検出器の間の間隔よりも十分に狭い距離の間隙を介して配置されており、該一対の電極が異なる電位に維持されていると共に、前記粒子源は、何れの電極の電位とも異なる電位に維持されており、これらの電位は、検出器近傍の2次荷電粒子がガスを電離するために十分なエネルギーまで加速される様に、前記粒子源によって放出された荷電粒子が、前記粒子源から前記一対の電極のそれぞれに向けて引きつけられる様に選択されている。
【0021】
第2態様において、本発明は粒子源により放出された電離1次粒子の分析方法を提供し、該方法は、前記粒子源と1つの荷電粒子検出器の間に電離可能なガスが存在すると共に、前記粒子源と前記検出器の間に荷電粒子妨害装置が位置しており、荷電1次粒子が前記ガスを電離して生成された2次電子の通過を妨害すると共に非荷電1次粒子を通過させる様な電位に荷電粒子妨害装置を維持することと、荷電粒子検出器において、少なくとも前記非荷電1次粒子による前記ガスの電離によって生成された荷電粒子を検出することを含んでいる。
【0022】
前記荷電粒子妨害装置が異なる電位域に維持されている状態で、荷電粒子を検出するステップが繰り返されてもよい。
【0023】
前記方法は、更に、荷電粒子と非荷電粒子の両方の十分にスムーズな通過を許容する電位に荷電粒子妨害装置を維持するステップと、前記荷電電離粒子と前記非荷電電離粒子の両方による前記ガスの電離によって生成された荷電粒子を荷電粒子検出器において検出するステップとを具えていてもよい。
【0024】
本発明の実施形態は、単に一例として、添付図面を参照して記載される。
【発明の効果】
【0025】
本発明者は、非荷電電離粒子の相対的にスムーズな通過が許容されている間、
電離源からの荷電粒子の通過を妨害するために配置された装置を加えることによって、改善された電離粒子分析器を実現している。例えば、放出EXAFSでは、この様な装置の実装によって、信号の蛍光収率(FY)成分と全電子収率(TEY)成分との分離が可能になり、FY成分を単独で測定可能になる。該FY信号は、オージェ電子の代わりにX線を放出した源に起因した信号である。低エネルギーX線のために低Z(原子番号)試料に関しては、FY信号が特に小さくなり、通常、FY信号はTEY信号に埋もれてしまう。
【0026】
FY信号成分では、試料材料の数μm深さでの構造に関する情報が得られる。これに対して、TEY成分では、材料の表面近く(例えば、数10nmの単位)での構造に関する情報しか得られない。
従って、半独立のFYとTEYの測定が可能な技術の提供は、表面下様々な深さでの試料の構造に関するより一層の情報を引き出す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の望ましい実施の形態につき、添付図面を参照しながら記述する。
図1に示す様に、試料1は、平板状のベース2上に位置している。検出器3は、試料1とベース2の真上に具えられている。検出器3は平板状であり、試料1とベース2の平面と平行な平面に置かれている。
【0028】
図2に更に詳しく示す様に、検出器3は、半導体ガラス基板5上に被着した平行電極4の系を具えている。マイクロストリップ上の互いに隣り合う電極4Aと電極4Bは、電圧に関して陽と陰に維持され、陽極と陰極のパターンを与えている。
陽極4Aは、互いに同じ幅であり、電極4を5μm程度の幅に作製するためには、リソグラフィー技術を用いることが出来る。それぞれの電極は、電極4Aからの電気信号を観測する検出回路6に接続されている。
【0029】
検出器3の全ての電極4が、ベース2と試料1に比べて陽電位となる様に、図1に示すベース2と試料1は、検出器3の陰極4の電位よりも陰電位である一定の電位に維持されている。
【0030】
この実施例において、荷電粒子妨害装置は、格子9の形態をとっている。格子9は、平板状であり、試料1とベース2の平面に略平行な平面に置かれている。一般的には、格子9は、試料1から、約0.5mm〜1mm離されることとなる。格子9は、平行な縦方向に伸びる棒状片或いはワイヤーが連続した形態をとっている。通常、棒状片、或いはワイヤー間の間隔は、各棒状片、或いはワイヤーの幅よりも大きい。例えば、ワイヤー径が100μm、各ワイヤーの間隔又は中心間距離が1mmであれば、ワイヤー格子のマーク-スペース比は10:1となる。該格子は、通常、銅の如き導電性金属より形成されており、ベース1と試料2に対して、又、検出器3の電極4に対して所定の電位に格子9を維持することができる。
【0031】
試料1、検出器3及び格子9は、ガス12で満たされたチャンバー(図示省略)内に保持されており、ガス12は、主に、研究対象の試料に合わせて選ばれた希ガスである。ガス12は、イソブタンの如き消滅ガスを含んでいてもよく、通常、約10%のレベルで、雰囲気中での電気的破壊の連続を止める役割を果たす。
【0032】
使用においては、シンクロトロン或いは他の手段(図示省略)を用いてX線が生成され、所望のエネルギーのX線がシンクロトロンから選ばれて、ビーム7として試料1の表面上に向けられる。X線は、検出器3上の電極4の方向とは垂直の方向から試料1に接近する。X線ビーム7と試料1表面との間に形成される角度は小さいので、X線が視射角で試料1の表面上に作用する。X線が作用する試料1の表面上の領域は、X線と試料1との間の角度の変化によって変化する。
【0033】
好ましくは、ビーム7が格子9に入射することなく格子9とベース2の平行な表面の間を通過して、試料1の表面上に作用する様に、格子9を試料から十分に離して設置し、及び/又は、X線ビーム7の視射角を十分に浅くする。
【0034】
ビーム7が格子9に衝突する(ビーム7が格子9によって部分的に塞がれる)様に配置されているのであれば、ビーム7に曝される格子の表面領域を最小化するために、格子9の縦方向に伸びる棒状片或いはワイヤーが、ビーム7方向と実質的に平行に伸びる様にすることが好ましい。
好ましくは、図5に示す様に、ビーム7が格子9に衝突する様に配置されているのであれば、不要な粒子の検出から検出器を遮蔽するために、少なくとも1つの保護電極13を、格子9と検出器3の間に配置する。保護電極13は、導電性材料製の硬いシートの形態をとっている。保護電極13は、通常、格子9と同じ電位に保持されている。保護電極13は、少なくともビームが格子9を通り抜ける部分を覆って配置される。好ましくは、ビーム進路と実質的に平行に電極13を配置する。電極13を、格子9と検出器3間のビームの全部を覆う様に配置することも可能である。
ビームは、ガスを電離するか、或いは、格子9に衝突した場合には粒子の放出を引き起こすこととなる。保護電極13は、通常、粒子、或いはその様な粒子によって生じる2次電子の何れか一方を阻止することによって、その様な粒子が検出器3に検出されることを防止することが出来る。
必要であれば、図5に示す様に、試料1上のビームフットプリントから放出された粒子のみが検出器3に至ることが許容される様に、保護電極13を配置することが出来、例えば、反射されたビームが格子/ガスを通過して検出器に至ることによる不要な信号を防ぐ様に、電極13を配置することも出来る。
【0035】
試料表面の電子11は、X線のビーム7からエネルギーを得て、試料から放出される。同じ様に、光子10は、X線のビーム7からエネルギーを得て、試料から放出される。
【0036】
第1の構成では、格子9は試料1に対して陰電位に維持されている。
【0037】
ガスの有効断面積(粒子がガス粒子と衝突してイオン化する見込み)は、ガスの圧力とガスを構成する物質に依存している。もし、ガスの有効断面積が十分に大きいのであれば、表面から放出された全ての電子11が、試料1の表面付近のガスを電離し、電子の集団8を形成する。例えば、図3Aに示す様な場合では、格子9は、TEY電子によって電離された2次電子を斥けて試料1の方に戻す十分な電位に維持されている。
【0038】
何れの場合にも、試料の表面は、通常、斥けられた電子の電荷の蓄積を防ぐ様に伝導する。更に、何れの場合にも、試料1から放出された光子10は、格子9を相対的にスムーズに通り抜ける。光子10は、後に、ガスを電離し、電子の集団8を生成する。この電子の集団は、後に、荷電粒子検出器に検出され、TEY成分を除いた蛍光収率成分の測定をすることが出来る。
【0039】
好ましくは、他の電離の源(試料1から放出された荷電粒子)が、格子9によって抑制されている間に、試料から放出された非荷電粒子(例えば光子10)が、格子9と検出器3との間のガスを電離する様に、ガスの圧力と混合を注意深く選ぶ。X線によって電離ガスから引き出された2次電子8は、荷電粒子検出器によって検出されて、FY成分のみを示す信号を得ることが出来る。
【0040】
第2の、代替構成では、図3Bに示す様に、格子9は、荷電粒子の通過を妨害しない電位に維持されており、例えば、格子9は、試料1に比べて僅かに陽電位に保たれている(但し、検出器3よりも低い電位である)。結果として、表面から放出された光子10と電子11はガスを電離し、電子の集団8を形成することとなる。電子の集団は、荷電粒子検出器によって順に検出される。従って、荷電粒子検出器からの信号は、FYとTEY成分の両方を示している。
【0041】
一例として、図4のグラフは、格子9の電圧が異なる場合の検出器3からのデータを示している。該データは、チタン試料に入射する8keVのX線ビームを用いた実験により得られる。使用したガスは、75%のヘリウム(He)と25%のイソブタン(IB)の混合である。検出器の電極4Bでの電位が−719Vに保持された間、試料1は−1500Vの電位に保持されており(全ての電圧は、電極4Aの電位に比較している)、2000のガスアバランシェゲインを与え、そのようにして何れの現象も検出されることが許容されている。図4は、2つの場合に、電極4Aから波高スペクトルが観測されることを示している。
(i)格子9が−1410Vに設定され、そしてTEYとFYの両方の検出が許容されたとき(円と左側の縦軸)。
(ii)格子9が−1550Vに設定され、TEYが略全体的に抑制され、且つ、従来は隠れていたチタンのFYピークが明瞭に観測されたとき(四角と右側の縦軸)。
スペクトルは、300秒間の、チャンネル毎の計数を示している。図4のチャンネル番号は、図中でヒストグラム化された1次粒子のそれぞれのエネルギーに比例している。縦軸の目盛の違いに注意するべきである。
【0042】
概して、ガスの密度、電子進路での電圧勾配、及び電子の初期運動エネルギーによって、粒子とガスの初期相互作用が、試料1の表面付近で起こるのか、或いは、検出器3に向けて電子が移行するにつれてガス中に分散するのかが決定される。ガスの密度と検出器3が維持される電圧は、試料1から放出された荷電電離粒子、或いは非荷電電離粒子の両方についての測定位置、或いはエネルギー分解能に対して最適化されている。
【0043】
検出器3に対する試料1及びベース2の陰電位は、各電子集団8を検出器3の方に向けて押し流す(図中には、押し流される電子を8として示している)。試料1から電子が放出された位置に関する情報は、電子集団8が押し流される間、保持されている。これは、押し流される方向が試料1の表面に垂直であり、又、電子は、放出された位置の真上から大きく外れるだけの十分な運動エネルギーを有していないためである。
【0044】
検出器3上の陽極と陰極4との平行なパターンは、電子集団が検出器3に直接隣接するまでは、電子集団の流れに影響を及ぼさない。なぜならば、検出器3上の陽極と陰極4とが極めて接近した結果として形成された電界は、極めて局在しているからである。電子は、検出器3に接近するにしたがって、検出器3近傍で急速に強度が増大する局在電界により陽極に向けて加速される。電子の加速によって、該電子は、チャンバー内のガスを電離する十分なエネルギーを得ることになり、生成された他の電子は、自らも更なる電離を引き起こす。この様にして、試料1から放出された電子は、検出器3近傍のガスから電子なだれを生成する。電子なだれの生成は、検出器3で発生する電気信号を正確に測定されるレベルにまで増大させるので有用である。電子なだれによって生成される信号の増幅は、検出された電子の最終の個数が、試料1から放出された電子の最初の個数に比例する様に制御されている。
【0045】
検出器3に直接隣接する範囲での電子なだれの局在は、ガスの電離により生成された電子が局在したままであり、又、試料1から放出された電子に関する空間的情報が保たれているので、有利である。言及された空間的情報とは、単に、試料1の前端と後端に関して、試料から放出された電子の位置である。
【0046】
試料1の前後端は、それぞれX線ビーム7源から近い方と遠い方の試料1の端部として規定される。検出器3上のそれぞれの電極4Aから受信した信号の相対的な強度は、X線ビーム7と試料1の表面とが相互作用した位置を識別するために有用である。
【0047】
検出器3近傍の電界強度は、検出器3の陽極と陰極4A、4Bに印加される電位、及びこれらの間の距離によっても決定される。陽極と陰極間の間隔の減少によって、検出器3近傍の電界勾配が増大し、又、これに応じて、電子を所望加速度にするために必要な印加電位が減少する。検出器3上の電極4密度の増加は、検出器3の空間的分解能を増大させることにもなる。
【0048】
上記実施の形態は、電子の検出のみについて言及したが、本発明は、他の正荷電粒子、或いは負荷電粒子の検出にも利用されると理解されなければならない。
【0049】
同様に、上記装置は、放出EXAFS実験装置と併せて記載されているが、この様な電離粒子分析器は、ガスを電離可能な荷電粒子と非荷電粒子を両方放出する任意の電離粒子源と併せて使用出来る。例えば、本発明の実施形態は、X線、特に低エネルギーのX線の蛍光分析に使用可能である。
更に、実施形態は、任意のガス電離検出器(例えば、ワイヤーコンバータ)と併せても使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態における電離粒子分析器の斜視図である。
【図2】図1の分析器に組み込まれた荷電粒子検出器の概略図である。
【図3A】図1に示された実施形態の異なる動作モードを説明する断面図である。
【図3B】図1に示された実施形態の異なる動作モードを説明する断面図である。
【図4】荷電粒子妨害装置に異なる電圧を印加した荷電粒子検出器からの出力スペクトルを示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態における電離粒子分析器の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
(1) 試料
(3) 検出器
(4) 電極
(8) 電子の集団
(7) ビーム
(9) 格子
(10) 光子
(11) 電子
(13) 保護電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの電離1次粒子源と、
1つの荷電粒子検出器と、
前記粒子源と前記検出器の間に存在する電離可能なガス
とを有する電離粒子分析器であって、
該分析器は、更に、前記粒子源と前記検出器の間に位置すると共に、第1の構成では、荷電1次粒子が前記ガスを電離して生成した2次電子の通過を妨害すると共に非荷電粒子を通す様な電位に維持される様に構成されている1つの荷電粒子妨害装置を具えている電離粒子分析器。
【請求項2】
前記荷電粒子が電子を含むと共に、前記非荷電粒子は光子を含む請求項1に記載の電離粒子分析器。
【請求項3】
前記荷電粒子妨害装置は、前記1次粒子によって前記ガス中に生成された前記荷電2次電子を斥ける様な電位が維持されている請求項1又は請求項2に記載の電離粒子分析器。
【請求項4】
前記荷電粒子妨害装置は、試料の1つの表面に実質的に平行な1つの平面に位置する少なくとも1つの棒状片を具えている上記請求項の何れかに記載の電離粒子分析器。
【請求項5】
前記荷電粒子妨害装置は、複数の実質的に平行な棒状片を具える格子を具えている上記請求項の何れかに記載の電離粒子分析器。
【請求項6】
前記荷電粒子妨害装置は、更に、荷電粒子と非荷電粒子の両方の十分にスムーズな通過を許容する第2の構成に維持される様に構成されている上記請求項の何れかに記載の電離粒子分析器。
【請求項7】
前記荷電粒子妨害装置は、前記電離可能なガス中に位置すると共に、前記粒子源から放出された荷電粒子の実質的に全部が、前記荷電粒子妨害装置上に入射する前に電離ガス電子に変わる様に、前記粒子源から離れている上記請求項の何れかに記載の電離粒子分析器。
【請求項8】
前記粒子源は1つの試料であり、輻射のビームに前記試料を露出させるための手段が設けられ、該ビームのエネルギーは、前記試料から電離粒子が放出されることを引き起こすために十分である上記請求項の何れかに記載の電離粒子分析器。
【請求項9】
前記露出手段は、X線源を具えている請求項8に記載の電離粒子分析器。
【請求項10】
前記試料は実質的に平面状の表面を有し、前記ビームは、前記試料表面の法線に対して傾いた方向で前記試料に向けられる請求項8又は請求項9に記載の電離粒子分析器。
【請求項11】
前記ビームは、試料表面に対する視射角で向けられる請求項10に記載の電離粒子分析器。
【請求項12】
前記ビームは、前記粒子源と前記荷電粒子妨害装置の間を通過する様に配置されて、前記ビームが前記装置により塞がれない様になっている請求項8乃至請求項11の何れかに記載の電離粒子分析器。
【請求項13】
前記ビームは、前記荷電粒子妨害装置を通り抜ける様に配置され、前記分析器は更に、前記荷電粒子妨害装置と前記荷電粒子検出器の間に位置する1つの保護電極を具え、該保護電極は、少なくとも前記ビームが前記荷電粒子妨害装置を通り抜ける領域を覆っている請求項8乃至請求項11の何れかに記載の電離粒子分析器。
【請求項14】
前記検出器は、少なくとも一対の電極を具え、該一対の電極は、前記粒子源と前記検出器の間の間隔よりも十分に狭い距離の間隙を介して配置されており、該一対の電極が異なる電位に維持されていると共に、前記粒子源は、何れの電極の電位とも異なる電位に維持されており、これらの電位は、検出器近傍の2次荷電粒子がガスを電離するために十分なエネルギーまで加速される様に、前記粒子源によって放出された荷電粒子が、前記粒子源から前記一対の電極のそれぞれに向けて引きつけられる様に選択されている上記請求項の何れかに記載の電離粒子分析器。
【請求項15】
粒子源により放出された電離1次粒子を分析する方法であり、前記粒子源と1つの荷電粒子検出器の間に電離可能なガスが存在すると共に、前記粒子源と前記検出器の間に荷電粒子妨害装置が位置しており、
荷電1次粒子が前記ガスを電離して生成された2次電子の通過を妨害すると共に非荷電1次粒子を通過させる様な電位に荷電粒子妨害装置を維持することと、
荷電粒子検出器において、少なくとも前記非荷電1次粒子による前記ガスの電離によって生成された荷電粒子を検出すること
とを含む方法。
【請求項16】
前記荷電粒子妨害装置が異なる電位域に維持されている状態で、荷電粒子を検出するステップが繰り返される請求項15に記載の電離1次粒子分析方法。
【請求項17】
更に、荷電粒子と非荷電粒子の両方の十分にスムーズな通過を許容する電位に荷電粒子妨害装置を維持するステップと、
前記荷電電離粒子と前記非荷電電離粒子の両方による前記ガスの電離によって生成された荷電粒子を荷電粒子検出器において検出するステップ
とを具えている請求項15又は請求項16に記載の電離1次粒子分析方法。
【請求項18】
添付図面を参照して実質的に以上に詳述した様な電離粒子分析器。
【請求項19】
添付図面を参照して実質的に以上に詳述した様な電離粒子分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−505308(P2007−505308A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525873(P2006−525873)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003680
【国際公開番号】WO2005/024405
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(399128437)カウンシル・フォー・ザ・セントラル・ラボラトリー・オブ・ザ・リサーチ・カウンシルズ (4)
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL FOR THE CENTRAL LABORATORY OF THE RESEARCH COUNCILS
【Fターム(参考)】