例文表示制御装置及びプログラム
【課題】例文表示でユーザが一方の言語の例文中の任意の単語をマーキングした際に、他方の言語の例文の該当する単語を自動的にマーキングする。
【解決手段】ユーザが入力部13を通じて第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列を指定すると、CPU11は、その指定された文字列を識別表示(マーキング)する。その際、CPU11は、当該指定文字列から辞書検索のための単語を抽出し、この抽出した単語の対訳を辞書データベース23から検索することにより、第2言語の例文中の該当する文字列に対して同じ表示形態で識別表示を行う。
【解決手段】ユーザが入力部13を通じて第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列を指定すると、CPU11は、その指定された文字列を識別表示(マーキング)する。その際、CPU11は、当該指定文字列から辞書検索のための単語を抽出し、この抽出した単語の対訳を辞書データベース23から検索することにより、第2言語の例文中の該当する文字列に対して同じ表示形態で識別表示を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例文とマーキングを利用した語学学習支援機能を備えた電子辞書等の例文表示制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子辞書の語学学習支援機能の1つとして、例文表示機能がある。これは、第1言語の例文と、その対訳である第2言語の例文を表示する機能である。例えば、英和の例文表示機能であれば、ユーザが指定した英語の例文と、その例文を英訳した日本語の例文が並べて表示される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その際、表示された例文中の任意の文字列をマーキングすることもできる。これは、マーキング機能と呼ばれるもので、ユーザがペン等を用いて指定した文字列に色を付けるなどしてマーキングする機能である。
【0004】
さらに、電子辞書に備えられたジャンプ検索機能を利用すれば、例文に含まれる単語に対応した語義を表示することもできる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−108857号公報
【特許文献2】特開2006−155655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のマーキング機能では、ユーザが指定した文字列にしかマーキングされない。このため、例文中の単語をマーキングしながら学習する場合に、ユーザ自身が対訳の単語を判断しなければならず、例文中に知らない単語が含まれていると、正しくマーキングすることができない不便さがある。
【0007】
なお、前記特許文献2では、例文に含まれる単語に対応する語義をジャンプ検索により表示することができる。しかし、その都度、単語単位でジャンプ検索して調べる必要があるため、例文の単語にマーキングしながら学習する場合には不向きである。
【0008】
本発明は前記のような点に鑑みなされたもので、例文表示でユーザが一方の言語の例文中の任意の単語をマーキングした際に、他方の言語の例文の該当する単語を自動的にマーキングすることのできる例文表示制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る例文表示制御装置は、第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文が複数組記憶された例文記憶手段と、第1言語の単語と第2言語の単語とを対応付けた辞書が記憶された辞書記憶手段と、前記例文記憶手段の中で選択された第1言語と第2言語の例文を読み出して表示する例文表示手段と、この例文表示手段によって表示された第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列が指定された際に、その指定された文字列を識別表示する第1の識別表示手段と、前記指定文字列から辞書検索のための単語を抽出し、この抽出した単語の対訳を前記辞書記憶手段に記憶された辞書から検索する辞書検索手段と、この辞書検索手段によって検索された対訳の単語に基づいて、前記第2言語の例文中の該当する文字列に対して前記第1言語の例文中の文字例と同じ表示形態で識別表示を行う第2の識別表示手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2は、前記請求項1記載の例文表示制御装置において、前記第1の識別表示手段は、前記文字列指定手段によって複数の文字列が指定された場合にそれぞれに異なる表示形態で識別表示し、前記第2の識別表示手段は、前記第1の識別表示手段と同じ表示形態で前記第2言語の例文中の該当する文字列を識別表示することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3は、前記請求項1記載の例文表示制御装置において、前記辞書検索手段によって前記指定文字列の先頭から辞書検索のための単語を抽出し、その単語の対訳が前記辞書記憶手段に記憶された辞書に存在しなかった場合に、前記例文中の文字列の指定が間違っている旨を通知する通知手段を具備したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4は、前記請求項1記載の例文表示制御装置において、前記辞書検索手段によって検索された単語が変化形であるか否かを判断し、変化形の場合には、その変化形の情報を表示する変化形表示手段を具備したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5は、前記請求項1記載の例文表示制御装置において、前記第1言語と第2言語の例文を識別表示の情報と共に登録する例文登録手段と、この例文登録手段によって登録された例文を再表示する際に、前記識別表示の情報に基づいて登録前と同じ文字列に識別表示を行う例文再表示手段とを具備したことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6に係るプログラムは、第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文が複数組記憶された第1のメモリと、第1言語の単語と第2言語の単語とを対応付けた辞書が記憶された第2のメモリとを備えたコンピュータによって実行される例文表示制御のためのプログラムであって、前記コンピュータに、前記第1のメモリの中で選択された第1言語と第2言語の例文を読み出して表示する機能と、第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列が指定された際に、その指定された文字列を識別表示する機能と、前記指定文字列から辞書検索のための単語を抽出し、この抽出した単語の対訳を前記第2のメモリに記憶された辞書から検索する機能と、前記辞書から検索された対訳の単語に基づいて、前記第2言語の例文中の該当する文字列に対して前記第1言語の例文中の文字例と同じ表示形態で識別表示を行う機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1言語と第2言語の例文を表示した際に、一方の例文中の文字列を指定すると、その指定文字列と他方の例文中の該当する文字列が自動的にマーキングされる。したがって、例文中に知らない単語が含まれていた場合でも、その単語をマーキングすることで、対訳を確認しながら学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る例文表示制御装置として電子辞書を例にした場合の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は同実施形態における電子辞書に備えられたCPUの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は同実施形態における電子辞書の例示表示処理の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は同実施形態における電子辞書のマーキング機能処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】図5は同実施形態における電子辞書の例文表示画面の一例を示す図である。
【図6】図6は同実施形態における電子辞書の例文表示画面で第1言語の例文にマーキングした状態を示す図である。
【図7】図7は同実施形態における電子辞書の例文表示画面で第1言語と第2の言語の例文にマーキングすると共に変化形情報を表示した状態を示す図である。
【図8】図8は同実施形態における電子辞書の例文表示画面でエラーメッセージを表示した状態を示す図である。
【図9】図9は同実施形態における電子辞書の例文表示画面で複数の文字列にマーキングした状態を示す図である。
【図10】図10は同実施形態における電子辞書の例文表示画面の他の例を示す図であり、文字列の範囲指定を誤った状態を示す図である。
【図11】図11は同実施形態における電子辞書の例文表示画面の他の例を示す図であり、文字列の範囲指定を正しく行った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る例文表示制御装置として電子辞書を例にした場合の構成を示すブロック図である。
【0019】
本実施形態における電子辞書10は、主制御装置であるCPU11と、このCPU11にシステムバス12を介して接続される入力部13、表示部14、タッチパネル15、メモリ16、通信部17、記録媒体読取部18を備える。
【0020】
CPU11は、入力指示に従ったプログラムの起動で各種処理を実行する。本実施形態において、このCPU11は、メモリ16に記憶された例示表示プログラム21を読み込むことにより、その例示表示プログラム21に記述された手順に従って例示表示に関する処理を実行する。
【0021】
入力部13は、電源キー、文字キー、カーソルーキー、決定キー、辞書切替えキーなどを含む各種操作キーからなり、これらのキーの操作によりデータの入力や指示を行う。
【0022】
表示部14は、バックライト付きのカラーLCD(Liquid Crystal Display)からなり、各種データの表示を行う。この表示部14の表示画面上に透明のタッチパネル15が配設されている。このタッチパネル15は、ユーザがペン15aなどを用いて触れたパネル上の位置を検出することにより、表示部14に表示された内容に応じた操作を可能とする。
【0023】
メモリ16は、ROMやRAM、フラッシュメモリなどからなり、CPU11の処理動作に必要な各種データを記憶している。本実施形態において、このメモリ16には、CPU11が実行する例示表示プログラム21の他、対訳例文データベース22、辞書データベース23、例文帳24、ワークエリア25が設けられている
対訳例文データベース22には、第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文とを対応付けた例文データが例文番号と共に複数組み記憶されている。なお、第1言語と第2言語とは、例えば日本語と英語、日本語と中国語などであるが、本発明はその言語の組み合わせについて特に限定されるものではない。
【0024】
辞書データベース23は、第1言語の単語と第2の言語の単語とを対応付けた語学学習用の各種辞書の情報を記憶している。なお、語学学習用の各種辞書としては、例えば「英和辞典」,「和英辞典」,「中日辞典」,「韓日辞典」などがある。また、各言語の会話集もこの辞書データベース23に含まれているものとする。
【0025】
例文帳24には、ユーザが例文登録によって指定した例文データがマーカ情報付きで記憶される。具体的には、登録対象となる例文に対応した辞書あるいは会話集名と、その例文に付された番号と、さらに、色や第1言語の文字列、第2言語の文字列、変化形情報などを含むマーカ情報が記憶される。
【0026】
ワークエリア25には、ユーザが例文表示で範囲指定した文字列がその文字列に付したマーキング色と共にマーカ情報として一時的に記憶される。
【0027】
通信部17は、ネットワークを介して外部の装置との間でデータの送受信を行う。ネットワークとしては、LAN(Local Area Network),WAN(Wide Area Network)あるいはインターネットなどが含まれる。なお、ネットワークを介さずに直接外部装置と無線あるいは有線で接続する構成としてもよい。
【0028】
また、記録媒体読取部18は、記録媒体19に記録されたプログラムを含む各種データを読み取るための装置である。記録媒体19としては、例えば磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD−ROM等)、半導体メモリなどがある。
【0029】
図2はCPU11の機能構成を示すブロック図である。
【0030】
主制御装置であるCPU11には、例文表示に関わる機能構成として、例文表示部11a、第1の識別表示部11b、辞書検索部11c、第2の識別表示部11d、通知部11e、変化形表示部11f、例文登録部11g、例文表示部11hが備えられている。
【0031】
例文表示部11aは、所定の操作により対訳例文データベース22の中で選択された第1言語と第2言語の例文を読み出して表示する処理を行う。
【0032】
第1の識別表示部11bは、例文表示部11aによって表示された第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列が指定された際に、その指定された文字列を識別表示する処理を行う。識別表示は、具体的には指定文字列を色付きでマーキングすることやアンダーライン付にすること、指定文字列を斜体や太字にしたり、色つき文字で表示する等が含まれる。
【0033】
辞書検索部11cは、ユーザが指定した文字列から辞書検索のための単語を抽出し、その抽出した単語の対訳を辞書データベース23に記憶された辞書から検索する処理を行う。
【0034】
第2の識別表示部11dは、辞書検索部11dによって検索された対訳の単語に基づいて、第2言語の例文中の該当する文字列に対して第1言語の例文中の文字例と同じ表示形態で識別表示を行う。
【0035】
通知部11eは、辞書検索部11dによって前記指定文字列の先頭から辞書検索のための単語を抽出し、その単語の対訳が辞書データベース23に記憶された辞書に存在しなかった場合に、例文中の文字列の指定が間違っている旨を通知する処理を行う。
【0036】
変化形表示部11fは、辞書検索部11dによって検索された単語の対訳が変化形であるか否かを判断し、変化形の場合には、その変化形の情報を表示する処理を行う。
【0037】
例文登録部11gは、第1言語と第2言語の例文を識別表示の情報と共に登録する処理を行う。
【0038】
例文表示部11hは、例文登録部11gによって登録された例文を再表示する際に、前記識別表示の情報に基づいて登録前と同じ文字列に識別表示を行う。
【0039】
次に、同実施形態の動作を説明する。
図3は同実施形態における電子辞書10の例示表示処理の動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、CPU11によって読み取り可能なプログラムの形態で記録媒体19に記録されて記録媒体読取部18を通じてインストールされるか、あるいは、メモリ16に予め記憶されている。
【0040】
今、ユーザが入力部13に設けられた所定のキー操作により、語学学習に用いる辞書あるいは会話集を指定すると共に(ステップA11)、その辞書あるいは会話集に関連した例文を指定したとする(ステップA12)。なお、「会話集」とは、各種言語に関し、日常的に使う会話の例を集めたものである。また、例文の指定方法としては、例えばジャンルから選択あるいは例文検索から選択する方法などがある。
【0041】
ユーザによる例文の指定に伴い、CPU11は、まず、第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文をメモリ16の対訳例文データベース22から読み出すことにより(ステップA13)、この2つの例文を対応付けた例文表示画面31を作成して表示部14に表示する(ステップA14)。
【0042】
図5に例文表示画面31の一例を示す。
図5の例では、日本語とロシア語の対訳において、日本語の例文「私は店で働きました」と、その訳文であるロシア語の例文が上下に並べて表示されている。
【0043】
このような例文表示画面31が表示された状態で、ユーザが所定の操作によりマーキングを選択すると(ステップA15のYes)、CPU11によってマーキング機能処理が実行される(ステップA16)。なお、マーキングの選択操作は、例えば例文表示画面31上に表示される図示せぬマーキングボタンをペン15aで押下するなどで行う。
【0044】
マーキング機能処理について、図4を参照して詳しく説明する。
図4は同実施形態における電子辞書10のマーキング機能処理の動作を示すフローチャートである。
【0045】
まず、CPU11は、初期設定として、最初に使うマーキング色(例えば赤色)を設定しておく(ステップB11)。そして、ユーザが例文表示画面31に表示された第1言語あるいは第2言語の例文中の任意の文字列をペン15aで範囲指定すると、CPU11は、その範囲指定された文字列を前記設定したマーキング色で識別表示する(ステップB14)。
【0046】
この状態が図6である。
ユーザが日本語の例文「私は店で働きました」の中の「働きました」といった文字列をペン15aで範囲指定したことにより、その文字列「働きました」が例えば赤色でマーキングされる。
【0047】
ここで、CPU11は、例文中で範囲指定された文字列をその文字列に付したマーキング色に対応付けてメモリ16のワークエリア25にマーカ情報として一時記憶する(ステップB14)。
【0048】
次に、CPU11は、マーキング範囲(指定文字列)の先頭から辞書検索のための単語を抽出し(ステップB15)、その抽出した単語を辞書データベース23内の対応する辞書の情報と照合する(ステップB16)。照合の結果、該当する訳が存在すれば(ステップB17のYes)、CPU11は、その訳が他方の例文と一致するか否かを判断する(ステップB18)。一致する場合には(ステップB18のYes)、CPU11は、その一致箇所の文字列を一方の例文の文字列と同じマーキング色で識別表示する(ステップB19)。
【0049】
この状態が図7である。
日本語の例文「私は店で働きました」の中でマーキングされた「働きました」に対し、ロシア語の例文中の該当する文字列が同じ色(赤色)でマーキングされる。これにより、語学知識がなくとも、対訳の例文の中でどの部分に該当するのかを一目で把握することができる。
【0050】
このようにして、他方の例文中の一致した文字列を同色でマーキングすると、CPU11は、その一致した文字列をそこに付したマーキング色に対応付けてメモリ16のワークエリア25にマーカ情報として一時記憶する(ステップB20)。
【0051】
また、CPU11は、前記辞書データベース23内の辞書の情報を参照して、対訳の単語が変化形であるか否かを判断する(ステップB21)。なお、変化形には、単数形/複数形,過去形/現在形/未来形,男性系/女性系などがある。
【0052】
このような変化形を有する単語であった場合には(ステップB21のYes)、CPU11は、その変化形の情報を前記辞書データベース23内の対応辞書から読み出し、これをポップアップや画面分割などで例文表示画面31上に表示する(ステップB22)。
【0053】
図7の例では、「単数形,過去形,男性系」を示す変化形情報32がポップアップ表示されている。これにより、変化形を有する単語であった場合に、特にジャンプ検索などの特殊な操作を行って調べなくても、同じ例文表示画面31内でその語形変化を確認することができる。
【0054】
このような変化形を表示した場合には、CPU11は、その変化形の情報も当該例文のマーカ情報に加えてメモリ16のワークエリア25に一時記憶しておく(ステップB23)。
【0055】
一方、ユーザが指定した範囲の文字列に対応する訳が辞書に存在しない場合(ステップB17のNo)、あるいは、訳が存在しても、他方の例文の文字列と一致しない場合には(ステップB18のNo)、CPU11は、図8に示すように、訳が存在しない旨のエラーメッセージ33を例文表示画面31上に表示する(ステップB24)。
【0056】
図8の例では、ユーザが日本語の例文「私は店で働きました」の中の「で働」を範囲指定したことにより、ロシア語の例文の中に該当する訳が存在しない旨のエラーメッセージ33が表示される。これにより、ユーザは文法的に間違った部分を範囲指定したことを把握できる。
【0057】
また、続けてマーキングする場合には(ステップB25のYes)、次のマーキング色(例えば青色)が設定されて(ステップB26)、前記ステップB12からの処理が繰り返される。
【0058】
図9に続けてマーキングした場合の例を示す。
ここでは、ユーザが日本語の例文「私は店で働きました」の中の「働きました」に続いて、「私は」を範囲指定した場合の例が示されている。
【0059】
ユーザが「私は」を範囲指定したことにより、その部分がマーキングされると共に、対訳であるロシア語の例文の中の該当する文字列がマーキングされる。その際、「働きました」のマーキング色とは異なる色でマーキングされるので、対応関係を間違えることはない。さらに続けて文字列を範囲指定した場合も同様であり、その都度、マーキング色が変更されるので、第1言語と第2言語の言語との対応関係を間違えることなく、正しく学習することができる。
【0060】
図3のフローチャートに戻って、例文表示画面31が表示された状態で、ユーザが所定の操作により例文登録を選択すると(ステップA17のYes)、CPU11は、現在表示されている例文に対応した辞書あるいは会話集名と例文番号をメモリ16の例文帳24に登録する(ステップA18)。なお、例文登録の選択操作は、例えば例文表示画面31上に表示される図示せぬ例文登録ボタンをペン15aで押下するなどで行う。
【0061】
ここで、メモリ16のワークエリア25にマーカ情報が記憶されている場合には(ステップA19のYes)、CPU11は、そのマーカ情報を例文番号に対応付けて例文帳24に登録する(ステップA20)。前記マーカ情報には、例文表示でユーザが範囲指定した第1言語の文字列とその対訳である第2言語の文字例、これらの文字列にマーキングした色、さらに変化形情報などが含まれる。
【0062】
また、ユーザが登録例文の表示を選択すると(ステップA21のYes)、以下のような処理が実行される。なお、登録例文の表示操作は、例えば図示せぬメインメニュー画面に設けられたる図示せぬ登録例文表示ボタンをペン15aで押下するなどで行う。
【0063】
登録例文の表示が選択されると、CPU11は、まず、メモリ16の例文帳24に登録された例文の一覧を作成して表示部14に表示する(ステップA22)。この例文一覧では、第1言語の例文がそれぞれ一行表示される。
【0064】
ここで、ユーザが所望の例文をペン15aで選択すると(ステップA23)、CPU11は、その選択された例文の対訳表示を行う(ステップA24)、その際、当該例文にマーカ情報があれば(ステップA25のYes)、CPU11は、そのマーカ情報に基づいて対訳である第2言語の例文中の該当部分に同じ色のマーキングを行って表示する(ステップA26)。さらに、マーキングされた文字列に変化系情報があれば、CPU11は、その変化形情報をポップアップや画面分割などで表示する(ステップA27)。
【0065】
例えば、図7の対訳例文を例文帳24に登録したとすると、登録例文の表示指示により、図7と同様に対訳例文がマーカ付きで表示されることになる。したがって、ユーザは前回の例文表示の際にマーキングしておいた文字列を反復学習することができる。さらに、マーキングされた文字列が変化型情報を有している単語であった場合には、再び、その変化情報も表示されるので、変化型情報を含めて反復学習することができる。
【0066】
このように、第1言語と第2言語の例文を表示した際に、一方の例文中の文字列を指定すると、その指定文字列と他方の例文中の該当する文字列が自動的にマーキングされる。したがって、例文中に知らない単語が含まれていた場合に、ジャンプ検索などにより別途調べる必要がなく、その単語の対訳を確認しながら学習することができる。
【0067】
また、複数の文字列を指定すると、その指定の度に異なる色でマーキングされるので、例文中に知らない単語が複数存在した場合でも、これらの単語の対訳を視覚的に識別することができ、対応関係を誤ることなく学習することができる。
【0068】
なお、前記実施形態では、マーキングする文字列を色にて識別表示したが、識別表示の形態は色に限らず、例えば数字や記号、マークなどを文字列に付して識別表示することでもよい。
【0069】
また、前記実施形態では、日本語とロシア語の対訳を例にして説明したが、本発明は他の言語であっても同様に適用可能である。
【0070】
図10および図11に日本語と中国語の対訳の例を示す。
【0071】
この例では、日本語の例文「市の中心にあるホテルを紹介してください」とその対訳である中国の例文が表示されている状態が示されている。
【0072】
いま、ユーザがペン15aを用いて中国の例文中の文字列を範囲指定したとする。そのとき、文字列の指定範囲を誤ると、図10のようにエラーメッセージ33が表示される。一方、文字列の範囲指定を正しく行った場合には、図11のように、その指定された文字列と日本語の例文中の該当する文字列が同じ色でマーキングされる。
【0073】
このように、本発明は他の言語であっても同様に適用可能であり、特に中国のように、文字と文字の間隔が同じ文章形態を有する言語の場合には、文法的な単語の切れ目が判断しづらいため、本発明のマーキング機能を利用することで、その単語の切れ目を正確に把握できて便利である。
【0074】
また、本発明は電子辞書に限らず、例えばPDA(Personal Digital Assistants)などの携帯端末や翻訳装置など、翻訳機能を備えた電子機器であれば、その全てに適用可能である。
【0075】
要するに、本発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0076】
さらに、上述した実施形態において記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、例えば磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリなどの記録媒体に書き込んで各種装置に適用したり、通信媒体により伝送して各種装置に適用することも可能である。本装置を実現するコンピュータは、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、このプログラムによって動作が制御されることにより、上述した処理を実行する。
【符号の説明】
【0077】
10…電子辞書、11…CPU、11a…例文表示部、11b…第1の識別表示部、11c…辞書検索部、11d…第2の識別表示部、11e…通知部、11f…変化形表示部、11g…例文登録部、11h…例文表示部、12…システムバス、13…入力部、14…表示部、15…タッチパネル、15a…ペン、16…メモリ、17…通信部、18…記録媒体読取部、19…記録媒体、21…例示表示プログラム、22…対訳例文データベース、23…辞書データベース、24…例文帳、25…ワークエリア、31…例文表示画面、32…変化形情報、33…エラーメッセージ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例文とマーキングを利用した語学学習支援機能を備えた電子辞書等の例文表示制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子辞書の語学学習支援機能の1つとして、例文表示機能がある。これは、第1言語の例文と、その対訳である第2言語の例文を表示する機能である。例えば、英和の例文表示機能であれば、ユーザが指定した英語の例文と、その例文を英訳した日本語の例文が並べて表示される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その際、表示された例文中の任意の文字列をマーキングすることもできる。これは、マーキング機能と呼ばれるもので、ユーザがペン等を用いて指定した文字列に色を付けるなどしてマーキングする機能である。
【0004】
さらに、電子辞書に備えられたジャンプ検索機能を利用すれば、例文に含まれる単語に対応した語義を表示することもできる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−108857号公報
【特許文献2】特開2006−155655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のマーキング機能では、ユーザが指定した文字列にしかマーキングされない。このため、例文中の単語をマーキングしながら学習する場合に、ユーザ自身が対訳の単語を判断しなければならず、例文中に知らない単語が含まれていると、正しくマーキングすることができない不便さがある。
【0007】
なお、前記特許文献2では、例文に含まれる単語に対応する語義をジャンプ検索により表示することができる。しかし、その都度、単語単位でジャンプ検索して調べる必要があるため、例文の単語にマーキングしながら学習する場合には不向きである。
【0008】
本発明は前記のような点に鑑みなされたもので、例文表示でユーザが一方の言語の例文中の任意の単語をマーキングした際に、他方の言語の例文の該当する単語を自動的にマーキングすることのできる例文表示制御装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る例文表示制御装置は、第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文が複数組記憶された例文記憶手段と、第1言語の単語と第2言語の単語とを対応付けた辞書が記憶された辞書記憶手段と、前記例文記憶手段の中で選択された第1言語と第2言語の例文を読み出して表示する例文表示手段と、この例文表示手段によって表示された第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列が指定された際に、その指定された文字列を識別表示する第1の識別表示手段と、前記指定文字列から辞書検索のための単語を抽出し、この抽出した単語の対訳を前記辞書記憶手段に記憶された辞書から検索する辞書検索手段と、この辞書検索手段によって検索された対訳の単語に基づいて、前記第2言語の例文中の該当する文字列に対して前記第1言語の例文中の文字例と同じ表示形態で識別表示を行う第2の識別表示手段とを具備したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2は、前記請求項1記載の例文表示制御装置において、前記第1の識別表示手段は、前記文字列指定手段によって複数の文字列が指定された場合にそれぞれに異なる表示形態で識別表示し、前記第2の識別表示手段は、前記第1の識別表示手段と同じ表示形態で前記第2言語の例文中の該当する文字列を識別表示することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3は、前記請求項1記載の例文表示制御装置において、前記辞書検索手段によって前記指定文字列の先頭から辞書検索のための単語を抽出し、その単語の対訳が前記辞書記憶手段に記憶された辞書に存在しなかった場合に、前記例文中の文字列の指定が間違っている旨を通知する通知手段を具備したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4は、前記請求項1記載の例文表示制御装置において、前記辞書検索手段によって検索された単語が変化形であるか否かを判断し、変化形の場合には、その変化形の情報を表示する変化形表示手段を具備したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5は、前記請求項1記載の例文表示制御装置において、前記第1言語と第2言語の例文を識別表示の情報と共に登録する例文登録手段と、この例文登録手段によって登録された例文を再表示する際に、前記識別表示の情報に基づいて登録前と同じ文字列に識別表示を行う例文再表示手段とを具備したことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6に係るプログラムは、第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文が複数組記憶された第1のメモリと、第1言語の単語と第2言語の単語とを対応付けた辞書が記憶された第2のメモリとを備えたコンピュータによって実行される例文表示制御のためのプログラムであって、前記コンピュータに、前記第1のメモリの中で選択された第1言語と第2言語の例文を読み出して表示する機能と、第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列が指定された際に、その指定された文字列を識別表示する機能と、前記指定文字列から辞書検索のための単語を抽出し、この抽出した単語の対訳を前記第2のメモリに記憶された辞書から検索する機能と、前記辞書から検索された対訳の単語に基づいて、前記第2言語の例文中の該当する文字列に対して前記第1言語の例文中の文字例と同じ表示形態で識別表示を行う機能とを実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1言語と第2言語の例文を表示した際に、一方の例文中の文字列を指定すると、その指定文字列と他方の例文中の該当する文字列が自動的にマーキングされる。したがって、例文中に知らない単語が含まれていた場合でも、その単語をマーキングすることで、対訳を確認しながら学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る例文表示制御装置として電子辞書を例にした場合の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は同実施形態における電子辞書に備えられたCPUの機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は同実施形態における電子辞書の例示表示処理の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は同実施形態における電子辞書のマーキング機能処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】図5は同実施形態における電子辞書の例文表示画面の一例を示す図である。
【図6】図6は同実施形態における電子辞書の例文表示画面で第1言語の例文にマーキングした状態を示す図である。
【図7】図7は同実施形態における電子辞書の例文表示画面で第1言語と第2の言語の例文にマーキングすると共に変化形情報を表示した状態を示す図である。
【図8】図8は同実施形態における電子辞書の例文表示画面でエラーメッセージを表示した状態を示す図である。
【図9】図9は同実施形態における電子辞書の例文表示画面で複数の文字列にマーキングした状態を示す図である。
【図10】図10は同実施形態における電子辞書の例文表示画面の他の例を示す図であり、文字列の範囲指定を誤った状態を示す図である。
【図11】図11は同実施形態における電子辞書の例文表示画面の他の例を示す図であり、文字列の範囲指定を正しく行った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る例文表示制御装置として電子辞書を例にした場合の構成を示すブロック図である。
【0019】
本実施形態における電子辞書10は、主制御装置であるCPU11と、このCPU11にシステムバス12を介して接続される入力部13、表示部14、タッチパネル15、メモリ16、通信部17、記録媒体読取部18を備える。
【0020】
CPU11は、入力指示に従ったプログラムの起動で各種処理を実行する。本実施形態において、このCPU11は、メモリ16に記憶された例示表示プログラム21を読み込むことにより、その例示表示プログラム21に記述された手順に従って例示表示に関する処理を実行する。
【0021】
入力部13は、電源キー、文字キー、カーソルーキー、決定キー、辞書切替えキーなどを含む各種操作キーからなり、これらのキーの操作によりデータの入力や指示を行う。
【0022】
表示部14は、バックライト付きのカラーLCD(Liquid Crystal Display)からなり、各種データの表示を行う。この表示部14の表示画面上に透明のタッチパネル15が配設されている。このタッチパネル15は、ユーザがペン15aなどを用いて触れたパネル上の位置を検出することにより、表示部14に表示された内容に応じた操作を可能とする。
【0023】
メモリ16は、ROMやRAM、フラッシュメモリなどからなり、CPU11の処理動作に必要な各種データを記憶している。本実施形態において、このメモリ16には、CPU11が実行する例示表示プログラム21の他、対訳例文データベース22、辞書データベース23、例文帳24、ワークエリア25が設けられている
対訳例文データベース22には、第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文とを対応付けた例文データが例文番号と共に複数組み記憶されている。なお、第1言語と第2言語とは、例えば日本語と英語、日本語と中国語などであるが、本発明はその言語の組み合わせについて特に限定されるものではない。
【0024】
辞書データベース23は、第1言語の単語と第2の言語の単語とを対応付けた語学学習用の各種辞書の情報を記憶している。なお、語学学習用の各種辞書としては、例えば「英和辞典」,「和英辞典」,「中日辞典」,「韓日辞典」などがある。また、各言語の会話集もこの辞書データベース23に含まれているものとする。
【0025】
例文帳24には、ユーザが例文登録によって指定した例文データがマーカ情報付きで記憶される。具体的には、登録対象となる例文に対応した辞書あるいは会話集名と、その例文に付された番号と、さらに、色や第1言語の文字列、第2言語の文字列、変化形情報などを含むマーカ情報が記憶される。
【0026】
ワークエリア25には、ユーザが例文表示で範囲指定した文字列がその文字列に付したマーキング色と共にマーカ情報として一時的に記憶される。
【0027】
通信部17は、ネットワークを介して外部の装置との間でデータの送受信を行う。ネットワークとしては、LAN(Local Area Network),WAN(Wide Area Network)あるいはインターネットなどが含まれる。なお、ネットワークを介さずに直接外部装置と無線あるいは有線で接続する構成としてもよい。
【0028】
また、記録媒体読取部18は、記録媒体19に記録されたプログラムを含む各種データを読み取るための装置である。記録媒体19としては、例えば磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD−ROM等)、半導体メモリなどがある。
【0029】
図2はCPU11の機能構成を示すブロック図である。
【0030】
主制御装置であるCPU11には、例文表示に関わる機能構成として、例文表示部11a、第1の識別表示部11b、辞書検索部11c、第2の識別表示部11d、通知部11e、変化形表示部11f、例文登録部11g、例文表示部11hが備えられている。
【0031】
例文表示部11aは、所定の操作により対訳例文データベース22の中で選択された第1言語と第2言語の例文を読み出して表示する処理を行う。
【0032】
第1の識別表示部11bは、例文表示部11aによって表示された第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列が指定された際に、その指定された文字列を識別表示する処理を行う。識別表示は、具体的には指定文字列を色付きでマーキングすることやアンダーライン付にすること、指定文字列を斜体や太字にしたり、色つき文字で表示する等が含まれる。
【0033】
辞書検索部11cは、ユーザが指定した文字列から辞書検索のための単語を抽出し、その抽出した単語の対訳を辞書データベース23に記憶された辞書から検索する処理を行う。
【0034】
第2の識別表示部11dは、辞書検索部11dによって検索された対訳の単語に基づいて、第2言語の例文中の該当する文字列に対して第1言語の例文中の文字例と同じ表示形態で識別表示を行う。
【0035】
通知部11eは、辞書検索部11dによって前記指定文字列の先頭から辞書検索のための単語を抽出し、その単語の対訳が辞書データベース23に記憶された辞書に存在しなかった場合に、例文中の文字列の指定が間違っている旨を通知する処理を行う。
【0036】
変化形表示部11fは、辞書検索部11dによって検索された単語の対訳が変化形であるか否かを判断し、変化形の場合には、その変化形の情報を表示する処理を行う。
【0037】
例文登録部11gは、第1言語と第2言語の例文を識別表示の情報と共に登録する処理を行う。
【0038】
例文表示部11hは、例文登録部11gによって登録された例文を再表示する際に、前記識別表示の情報に基づいて登録前と同じ文字列に識別表示を行う。
【0039】
次に、同実施形態の動作を説明する。
図3は同実施形態における電子辞書10の例示表示処理の動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、CPU11によって読み取り可能なプログラムの形態で記録媒体19に記録されて記録媒体読取部18を通じてインストールされるか、あるいは、メモリ16に予め記憶されている。
【0040】
今、ユーザが入力部13に設けられた所定のキー操作により、語学学習に用いる辞書あるいは会話集を指定すると共に(ステップA11)、その辞書あるいは会話集に関連した例文を指定したとする(ステップA12)。なお、「会話集」とは、各種言語に関し、日常的に使う会話の例を集めたものである。また、例文の指定方法としては、例えばジャンルから選択あるいは例文検索から選択する方法などがある。
【0041】
ユーザによる例文の指定に伴い、CPU11は、まず、第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文をメモリ16の対訳例文データベース22から読み出すことにより(ステップA13)、この2つの例文を対応付けた例文表示画面31を作成して表示部14に表示する(ステップA14)。
【0042】
図5に例文表示画面31の一例を示す。
図5の例では、日本語とロシア語の対訳において、日本語の例文「私は店で働きました」と、その訳文であるロシア語の例文が上下に並べて表示されている。
【0043】
このような例文表示画面31が表示された状態で、ユーザが所定の操作によりマーキングを選択すると(ステップA15のYes)、CPU11によってマーキング機能処理が実行される(ステップA16)。なお、マーキングの選択操作は、例えば例文表示画面31上に表示される図示せぬマーキングボタンをペン15aで押下するなどで行う。
【0044】
マーキング機能処理について、図4を参照して詳しく説明する。
図4は同実施形態における電子辞書10のマーキング機能処理の動作を示すフローチャートである。
【0045】
まず、CPU11は、初期設定として、最初に使うマーキング色(例えば赤色)を設定しておく(ステップB11)。そして、ユーザが例文表示画面31に表示された第1言語あるいは第2言語の例文中の任意の文字列をペン15aで範囲指定すると、CPU11は、その範囲指定された文字列を前記設定したマーキング色で識別表示する(ステップB14)。
【0046】
この状態が図6である。
ユーザが日本語の例文「私は店で働きました」の中の「働きました」といった文字列をペン15aで範囲指定したことにより、その文字列「働きました」が例えば赤色でマーキングされる。
【0047】
ここで、CPU11は、例文中で範囲指定された文字列をその文字列に付したマーキング色に対応付けてメモリ16のワークエリア25にマーカ情報として一時記憶する(ステップB14)。
【0048】
次に、CPU11は、マーキング範囲(指定文字列)の先頭から辞書検索のための単語を抽出し(ステップB15)、その抽出した単語を辞書データベース23内の対応する辞書の情報と照合する(ステップB16)。照合の結果、該当する訳が存在すれば(ステップB17のYes)、CPU11は、その訳が他方の例文と一致するか否かを判断する(ステップB18)。一致する場合には(ステップB18のYes)、CPU11は、その一致箇所の文字列を一方の例文の文字列と同じマーキング色で識別表示する(ステップB19)。
【0049】
この状態が図7である。
日本語の例文「私は店で働きました」の中でマーキングされた「働きました」に対し、ロシア語の例文中の該当する文字列が同じ色(赤色)でマーキングされる。これにより、語学知識がなくとも、対訳の例文の中でどの部分に該当するのかを一目で把握することができる。
【0050】
このようにして、他方の例文中の一致した文字列を同色でマーキングすると、CPU11は、その一致した文字列をそこに付したマーキング色に対応付けてメモリ16のワークエリア25にマーカ情報として一時記憶する(ステップB20)。
【0051】
また、CPU11は、前記辞書データベース23内の辞書の情報を参照して、対訳の単語が変化形であるか否かを判断する(ステップB21)。なお、変化形には、単数形/複数形,過去形/現在形/未来形,男性系/女性系などがある。
【0052】
このような変化形を有する単語であった場合には(ステップB21のYes)、CPU11は、その変化形の情報を前記辞書データベース23内の対応辞書から読み出し、これをポップアップや画面分割などで例文表示画面31上に表示する(ステップB22)。
【0053】
図7の例では、「単数形,過去形,男性系」を示す変化形情報32がポップアップ表示されている。これにより、変化形を有する単語であった場合に、特にジャンプ検索などの特殊な操作を行って調べなくても、同じ例文表示画面31内でその語形変化を確認することができる。
【0054】
このような変化形を表示した場合には、CPU11は、その変化形の情報も当該例文のマーカ情報に加えてメモリ16のワークエリア25に一時記憶しておく(ステップB23)。
【0055】
一方、ユーザが指定した範囲の文字列に対応する訳が辞書に存在しない場合(ステップB17のNo)、あるいは、訳が存在しても、他方の例文の文字列と一致しない場合には(ステップB18のNo)、CPU11は、図8に示すように、訳が存在しない旨のエラーメッセージ33を例文表示画面31上に表示する(ステップB24)。
【0056】
図8の例では、ユーザが日本語の例文「私は店で働きました」の中の「で働」を範囲指定したことにより、ロシア語の例文の中に該当する訳が存在しない旨のエラーメッセージ33が表示される。これにより、ユーザは文法的に間違った部分を範囲指定したことを把握できる。
【0057】
また、続けてマーキングする場合には(ステップB25のYes)、次のマーキング色(例えば青色)が設定されて(ステップB26)、前記ステップB12からの処理が繰り返される。
【0058】
図9に続けてマーキングした場合の例を示す。
ここでは、ユーザが日本語の例文「私は店で働きました」の中の「働きました」に続いて、「私は」を範囲指定した場合の例が示されている。
【0059】
ユーザが「私は」を範囲指定したことにより、その部分がマーキングされると共に、対訳であるロシア語の例文の中の該当する文字列がマーキングされる。その際、「働きました」のマーキング色とは異なる色でマーキングされるので、対応関係を間違えることはない。さらに続けて文字列を範囲指定した場合も同様であり、その都度、マーキング色が変更されるので、第1言語と第2言語の言語との対応関係を間違えることなく、正しく学習することができる。
【0060】
図3のフローチャートに戻って、例文表示画面31が表示された状態で、ユーザが所定の操作により例文登録を選択すると(ステップA17のYes)、CPU11は、現在表示されている例文に対応した辞書あるいは会話集名と例文番号をメモリ16の例文帳24に登録する(ステップA18)。なお、例文登録の選択操作は、例えば例文表示画面31上に表示される図示せぬ例文登録ボタンをペン15aで押下するなどで行う。
【0061】
ここで、メモリ16のワークエリア25にマーカ情報が記憶されている場合には(ステップA19のYes)、CPU11は、そのマーカ情報を例文番号に対応付けて例文帳24に登録する(ステップA20)。前記マーカ情報には、例文表示でユーザが範囲指定した第1言語の文字列とその対訳である第2言語の文字例、これらの文字列にマーキングした色、さらに変化形情報などが含まれる。
【0062】
また、ユーザが登録例文の表示を選択すると(ステップA21のYes)、以下のような処理が実行される。なお、登録例文の表示操作は、例えば図示せぬメインメニュー画面に設けられたる図示せぬ登録例文表示ボタンをペン15aで押下するなどで行う。
【0063】
登録例文の表示が選択されると、CPU11は、まず、メモリ16の例文帳24に登録された例文の一覧を作成して表示部14に表示する(ステップA22)。この例文一覧では、第1言語の例文がそれぞれ一行表示される。
【0064】
ここで、ユーザが所望の例文をペン15aで選択すると(ステップA23)、CPU11は、その選択された例文の対訳表示を行う(ステップA24)、その際、当該例文にマーカ情報があれば(ステップA25のYes)、CPU11は、そのマーカ情報に基づいて対訳である第2言語の例文中の該当部分に同じ色のマーキングを行って表示する(ステップA26)。さらに、マーキングされた文字列に変化系情報があれば、CPU11は、その変化形情報をポップアップや画面分割などで表示する(ステップA27)。
【0065】
例えば、図7の対訳例文を例文帳24に登録したとすると、登録例文の表示指示により、図7と同様に対訳例文がマーカ付きで表示されることになる。したがって、ユーザは前回の例文表示の際にマーキングしておいた文字列を反復学習することができる。さらに、マーキングされた文字列が変化型情報を有している単語であった場合には、再び、その変化情報も表示されるので、変化型情報を含めて反復学習することができる。
【0066】
このように、第1言語と第2言語の例文を表示した際に、一方の例文中の文字列を指定すると、その指定文字列と他方の例文中の該当する文字列が自動的にマーキングされる。したがって、例文中に知らない単語が含まれていた場合に、ジャンプ検索などにより別途調べる必要がなく、その単語の対訳を確認しながら学習することができる。
【0067】
また、複数の文字列を指定すると、その指定の度に異なる色でマーキングされるので、例文中に知らない単語が複数存在した場合でも、これらの単語の対訳を視覚的に識別することができ、対応関係を誤ることなく学習することができる。
【0068】
なお、前記実施形態では、マーキングする文字列を色にて識別表示したが、識別表示の形態は色に限らず、例えば数字や記号、マークなどを文字列に付して識別表示することでもよい。
【0069】
また、前記実施形態では、日本語とロシア語の対訳を例にして説明したが、本発明は他の言語であっても同様に適用可能である。
【0070】
図10および図11に日本語と中国語の対訳の例を示す。
【0071】
この例では、日本語の例文「市の中心にあるホテルを紹介してください」とその対訳である中国の例文が表示されている状態が示されている。
【0072】
いま、ユーザがペン15aを用いて中国の例文中の文字列を範囲指定したとする。そのとき、文字列の指定範囲を誤ると、図10のようにエラーメッセージ33が表示される。一方、文字列の範囲指定を正しく行った場合には、図11のように、その指定された文字列と日本語の例文中の該当する文字列が同じ色でマーキングされる。
【0073】
このように、本発明は他の言語であっても同様に適用可能であり、特に中国のように、文字と文字の間隔が同じ文章形態を有する言語の場合には、文法的な単語の切れ目が判断しづらいため、本発明のマーキング機能を利用することで、その単語の切れ目を正確に把握できて便利である。
【0074】
また、本発明は電子辞書に限らず、例えばPDA(Personal Digital Assistants)などの携帯端末や翻訳装置など、翻訳機能を備えた電子機器であれば、その全てに適用可能である。
【0075】
要するに、本発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0076】
さらに、上述した実施形態において記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、例えば磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリなどの記録媒体に書き込んで各種装置に適用したり、通信媒体により伝送して各種装置に適用することも可能である。本装置を実現するコンピュータは、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、このプログラムによって動作が制御されることにより、上述した処理を実行する。
【符号の説明】
【0077】
10…電子辞書、11…CPU、11a…例文表示部、11b…第1の識別表示部、11c…辞書検索部、11d…第2の識別表示部、11e…通知部、11f…変化形表示部、11g…例文登録部、11h…例文表示部、12…システムバス、13…入力部、14…表示部、15…タッチパネル、15a…ペン、16…メモリ、17…通信部、18…記録媒体読取部、19…記録媒体、21…例示表示プログラム、22…対訳例文データベース、23…辞書データベース、24…例文帳、25…ワークエリア、31…例文表示画面、32…変化形情報、33…エラーメッセージ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文が複数組記憶された例文記憶手段と、
第1言語の単語と第2言語の単語とを対応付けた辞書が記憶された辞書記憶手段と、
前記例文記憶手段の中で選択された第1言語と第2言語の例文を読み出して表示する例文表示手段と、
この例文表示手段によって表示された第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列が指定された際に、その指定された文字列を識別表示する第1の識別表示手段と、
前記指定文字列から辞書検索のための単語を抽出し、その抽出した単語の対訳を前記辞書記憶手段に記憶された辞書から検索する辞書検索手段と、
この辞書検索手段によって検索された対訳の単語に基づいて、前記第2言語の例文中の該当する文字列に対して前記第1言語の例文中の文字例と同じ表示形態で識別表示を行う第2の識別表示手段と
を具備したことを特徴とする例文表示制御装置。
【請求項2】
前記第1の識別表示手段は、前記文字列指定手段によって複数の文字列が指定された場合にそれぞれに異なる表示形態で識別表示し、
前記第2の識別表示手段は、前記第1の識別表示手段と同じ表示形態で前記第2言語の例文中の該当する文字列を識別表示することを特徴とする請求項1記載の例文表示制御装置。
【請求項3】
前記辞書検索手段によって前記指定文字列の先頭から辞書検索のための単語を抽出し、その単語の対訳が前記辞書記憶手段に記憶された辞書に存在しなかった場合に、前記例文中の文字列の指定が間違っている旨を通知する通知手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の例文表示制御装置。
【請求項4】
前記辞書検索手段によって検索された単語が変化形であるか否かを判断し、変化形の場合には、その変化形の情報を表示する変化形表示手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の例文表示制御装置。
【請求項5】
前記第1言語と第2言語の例文を識別表示の情報と共に登録する例文登録手段と、
この例文登録手段によって登録された例文を再表示する際に、前記識別表示の情報に基づいて登録前と同じ文字列に識別表示を行う例文再表示手段と
を具備したことを特徴とする請求項1記載の例文表示制御装置。
【請求項6】
第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文が複数組記憶された第1のメモリと、第1言語の単語と第2言語の単語とを対応付けた辞書が記憶された第2のメモリとを備えたコンピュータによって実行される例文表示制御のためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記第1のメモリの中で選択された第1言語と第2言語の例文を読み出して表示する機能と、
第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列が指定された際に、その指定された文字列を識別表示する機能と、
前記指定文字列から辞書検索のための単語を抽出し、この抽出した単語の対訳を前記第2のメモリに記憶された辞書から検索する機能と、
前記辞書から検索された対訳の単語に基づいて、前記第2言語の例文中の該当する文字列に対して前記第1言語の例文中の文字例と同じ表示形態で識別表示を行う機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文が複数組記憶された例文記憶手段と、
第1言語の単語と第2言語の単語とを対応付けた辞書が記憶された辞書記憶手段と、
前記例文記憶手段の中で選択された第1言語と第2言語の例文を読み出して表示する例文表示手段と、
この例文表示手段によって表示された第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列が指定された際に、その指定された文字列を識別表示する第1の識別表示手段と、
前記指定文字列から辞書検索のための単語を抽出し、その抽出した単語の対訳を前記辞書記憶手段に記憶された辞書から検索する辞書検索手段と、
この辞書検索手段によって検索された対訳の単語に基づいて、前記第2言語の例文中の該当する文字列に対して前記第1言語の例文中の文字例と同じ表示形態で識別表示を行う第2の識別表示手段と
を具備したことを特徴とする例文表示制御装置。
【請求項2】
前記第1の識別表示手段は、前記文字列指定手段によって複数の文字列が指定された場合にそれぞれに異なる表示形態で識別表示し、
前記第2の識別表示手段は、前記第1の識別表示手段と同じ表示形態で前記第2言語の例文中の該当する文字列を識別表示することを特徴とする請求項1記載の例文表示制御装置。
【請求項3】
前記辞書検索手段によって前記指定文字列の先頭から辞書検索のための単語を抽出し、その単語の対訳が前記辞書記憶手段に記憶された辞書に存在しなかった場合に、前記例文中の文字列の指定が間違っている旨を通知する通知手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の例文表示制御装置。
【請求項4】
前記辞書検索手段によって検索された単語が変化形であるか否かを判断し、変化形の場合には、その変化形の情報を表示する変化形表示手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の例文表示制御装置。
【請求項5】
前記第1言語と第2言語の例文を識別表示の情報と共に登録する例文登録手段と、
この例文登録手段によって登録された例文を再表示する際に、前記識別表示の情報に基づいて登録前と同じ文字列に識別表示を行う例文再表示手段と
を具備したことを特徴とする請求項1記載の例文表示制御装置。
【請求項6】
第1言語の例文とその対訳である第2言語の例文が複数組記憶された第1のメモリと、第1言語の単語と第2言語の単語とを対応付けた辞書が記憶された第2のメモリとを備えたコンピュータによって実行される例文表示制御のためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記第1のメモリの中で選択された第1言語と第2言語の例文を読み出して表示する機能と、
第1言語と第2言語の一方の言語の例文中の文字列が指定された際に、その指定された文字列を識別表示する機能と、
前記指定文字列から辞書検索のための単語を抽出し、この抽出した単語の対訳を前記第2のメモリに記憶された辞書から検索する機能と、
前記辞書から検索された対訳の単語に基づいて、前記第2言語の例文中の該当する文字列に対して前記第1言語の例文中の文字例と同じ表示形態で識別表示を行う機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−76413(P2011−76413A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227824(P2009−227824)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]