説明

侵襲性歯周炎の早期診断のための診断マーカーおよび侵襲性歯周炎の治療遺伝子

【課題】有効な早期診断法が存在しない侵襲性歯周炎に対して、早期診断を可能にする効果的な診断マーカーおよびその診断マーカーを使用する早期診断法、ならびに侵襲性歯周炎を処置するための核酸、抗体または組成物を提供する。
【解決手段】好中球の機能低下を伴う侵襲性歯周炎患者の好中球において高発現を示す、カルデスモン、ラクトフェリン、熱ショック70KDa蛋白質をコードする遺伝子マーカー、およびそれを利用する診断方法と診断用組成物。さらに、該遺伝子の発現量を調節する事による、該疾患の処置方法とそのための組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵襲性歯周炎の早期診断のための診断マーカーおよび侵襲性歯周炎の治療遺伝子に関する。本発明はまた、好中球の機能低下の診断マーカーおよび好中球の機能低下の治療遺伝子にも関する。
【背景技術】
【0002】
全ての疾患において、その発症には遺伝性素因もしくは環境因子、あるいはその両方が関係していると考えられている。例えば、血友病などの1因子性遺伝性疾患の発症の原因は遺伝性素因が全てを占める。それに対して、外傷の原因は,外力などの環境因子が大部分である。糖尿病または動脈硬化などの生活習慣病の発症には、遺伝性素因および環境因子の両者が関与している。感染症は、遺伝性素因である宿主防御と環境因子である細菌との相互作用の結果である。歯周炎は、細菌が感染することによって発症する感染症である。歯周炎は、大きく慢性歯周炎および侵襲性歯周炎に分類される(非特許文献1)。慢性歯周炎の発症の原因は、環境因子である細菌が主体であると考えられている。一方、侵襲性歯周炎では慢性歯周炎に比べて、遺伝性素因がその発症に深く関わっていると考えられている。
【0003】
侵襲性歯周炎は10代あるいは20代の若年者に発症し、プラークの残存および歯肉の炎症は比較的軽度であるにもかかわらず、急速に著しい歯周組織破壊を惹起する歯周炎である。侵襲性歯周炎は、歯周組織破壊が前歯あるいは第一大臼歯部に限局している限局性のものと、歯周組織破壊が全顎におよぶ広範性のものとに分類される。以前、若年性歯周炎、あるいは急速進行性歯周炎と分類されていた歯周炎は、現在は侵襲性歯周炎に含まれる。侵襲性歯周炎に関する報告は数多く存在するが、分子あるいは遺伝子レベルでの発症の原因の解明は十分になされていないのが現状である。侵襲性歯周炎患者の中には、好中球の機能異常を示す患者が存在すること、また家族性に発症するグループが存在することが知られており、侵襲性歯周炎の診断のひとつとして用いられている。
【0004】
これまで、侵襲性歯周炎患者の好中球機能異常については、走化能低下、スーパーオキシド産生能の亢進、Actinobacillus actinomycetemcomitansに対する貪食・殺菌力の減少、走化性因子に対するレセプターの発現減少、ロイコトリエンB4の合成低下、あるいは細胞内情報伝達系の異常などが報告されている。特に、好中球の情報伝達系の異常に関しては、イノシトール3リン酸代謝経路またはカルシウムイオンの関与する情報伝達経路に関して、多くの研究がされており、DAGキナーゼの減少、カルシウム流入因子の減少、細胞内カルシウムイオン濃度の異常、あるいはプロテインキナーゼCの減少などが報告されている。しかし、侵襲性歯周炎の原因因子は多様性があると考えられていることから、これらの報告は侵襲性歯周炎の原因因子のごく一部であると考えられる。
【0005】
上述のように、侵襲性歯周炎は、早期に発症し、急速な歯周組織破壊を伴う歯周炎である。侵襲性歯周炎では、初期には炎症症状がなく、臨床的所見がほとんどないにもかかわらず歯槽骨の吸収が起こる。これにしたがって炎症が生じて進行し、急速に組織破壊が起こり、骨縁下ポケットを伴う深い歯周ポケットを形成する。侵襲性歯周炎の発症および進行には宿主の防御機能の異常が関与すると考えられているが、その原因には患者個々に多様性が存在する。家族内集積が認められ、遺伝性素因が大きく関与している可能性がある。進行が急速であるため、成人前に総義歯となることすらある。また、侵襲性歯周炎は、一般的な慢性歯周炎の治療では、治療が困難であることが知られている。そのため、侵襲性歯周炎の診断を早期に行い、歯周炎の予知と予防が必要とされている。
【0006】
侵襲性歯周炎は早期に発症し、急速に歯周組織の破壊を認める疾患である。患者が歯の動揺や歯肉の腫脹に気付いて歯科医院を受診した時に、歯周組織の破壊程度が大きければ、抜歯に至るケースも存在する。抜歯にいたらない場合でも、歯を保存するための歯周治療によって歯肉が下がり、審美障害をおこすケースが多く存在する。10代から30代の侵襲性歯周炎患者にとって満足のいく歯科治療が存在するとは言いがたいのが現状である。よって侵襲性歯周炎が発症する前に、その発症を予知し、発症を予防することが患者にとって最高の治療である。
【0007】
侵襲性歯周炎患者の中には、好中球の機能低下を認める患者が存在することが知られ、侵襲性歯周炎の診断の指標の1つとして用いられている。好中球とは、生体に侵入する病原体(細菌、真菌、原虫など)に対する宿主防御において中心的な役割を果たす顆粒球である。好中球は、走化性、貪食能、粘着能、活性酸素産生能、脱顆粒などの種々の機能を有する。好中球の機能低下は、侵襲性歯周炎のみならず、種々の疾患(例えば、先天性顆粒球減少症や白血球粘着異常症(LAD)等)の指標となり、これを早期に診断する方法が必要とされている。
【0008】
このように侵襲性歯周炎および好中球の機能低下に対して、早期診断を可能にする効果的な方法が必要とされているにもかかわらず、現在のところ実現には到っていない。
【0009】

【非特許文献1】1999 International Workshop for a Classification of Periodontal Diseases and Conditions.Papers.Oak Brook,Illinois,1999年10月30日−11月2日.Ann Periodontol 1999;4:1−6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の問題点を考慮し、本発明は、現在有効な早期診断法が存在しない侵襲性歯周炎に対して、早期診断を可能にする効果的な診断マーカーおよびその診断マーカーを使用する早期診断法を提供することを課題とする。本発明はまた、侵襲性歯周炎を処置するための核酸、抗体または組成物を提供することを課題とする。
【0011】
本発明はさらに、好中球の機能低下の早期診断を可能にする診断マーカーおよびその診断マーカーを使用する早期診断法を提供することを課題とする。本発明はまた、好中球の機能低下を阻害および/または抑制するための核酸、抗体または組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、好中球の機能低下を伴う侵襲性歯周炎患者の好中球において高発現を示す遺伝子を新規に同定することによって、本発明を完成させた。これらの遺伝子は、侵襲性歯周炎および好中球機能低下の早期診断を可能にするマーカーである。したがって、本発明は、従来存在しなかった侵襲性歯周炎および好中球機能低下の早期診断を提供するという課題を解決するという、顕著な効果を奏する。
【0013】
従って、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
侵襲性歯周炎の存在および/または可能性を評価するための診断マーカーであって、以下:
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号1に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号1に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号3に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号3に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号3に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号5に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号5に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号7に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号7に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される核酸または抗体を含む、侵襲性歯周炎診断マーカー。
(項目2)
項目1に記載の診断マーカーであって、以下、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸、
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸、
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸、および
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸、
からなる群より選択される核酸を含む、診断マーカー。
(項目3)
項目1に記載の診断マーカーであって、配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸を含む、診断マーカー。
(項目4)
項目1に記載の診断マーカーであって、以下、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、および
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される抗体を含む、診断マーカー。
(項目5)
項目1に記載の診断マーカーであって、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体を含む、診断マーカー。
(項目6)
被験体において侵襲性歯周炎の存在および/または可能性を評価するための方法であって、
(a)(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群より選択される核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
の発現量を、その被験体由来の生物学的サンプルにおいて測定する工程、ならびに
(b)その発現量を指標として、その被験体におけるその予後および/または悪性度を評価する工程、
を包含する、方法。
(項目7)
被験体において侵襲性歯周炎の存在および/または可能性を評価するための方法であって、
(a)(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
の発現量を、その被験体由来の生物学的サンプルにおいて測定する工程、ならびに
(b)その発現量を指標として、その被験体におけるその予後および/または悪性度を評価する工程、
を包含する、方法。
(項目8)
好中球の機能低下を評価するための診断マーカーであって、以下:
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号1に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号1に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号3に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号3に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号3に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号5に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号5に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号7に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号7に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される核酸または抗体を含む、好中球機能低下診断マーカー。
(項目9)
項目8に記載の診断マーカーであって、以下、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸、
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸、
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸、および
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸、
からなる群より選択される核酸を含む、診断マーカー。
(項目10)
項目8に記載の診断マーカーであって、配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸を含む、診断マーカー。
(項目11)
項目8に記載の診断マーカーであって、以下、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、および
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される抗体を含む、診断マーカー。
(項目12)
項目8に記載の診断マーカーであって、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体を含む、診断マーカー。
(項目13)
被験体において好中球の機能低下を評価するための方法であって、
(a)(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群より選択される核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
の発現量を、その被験体由来の生物学的サンプルにおいて測定する工程、ならびに
(b)その発現量を指標として、その被験体におけるその好中球の機能低下を評価する工程、
を包含する、方法。
(項目14)
被験体において好中球の機能低下を評価するための方法であって、
(a)(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
の発現量を、その被験体由来の生物学的サンプルにおいて測定する工程、ならびに
(b)その発現量を指標として、その被験体におけるその好中球の機能低下を評価する工程、
を包含する、方法。
(項目15)
侵襲性歯周炎を処置する組成物であって、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、および
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される、抗体
を含む、組成物。
(項目16)
侵襲性歯周炎を処置する組成物であって、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
を含む、組成物。
(項目17)
さらに抗炎症剤を含む、項目15または16に記載の組成物。
(項目18)
上記抗炎症剤が、ミノサイクリン(ペリオクリン(登録商標))である、項目17に記載の組成物。
(項目19)
好中球の機能低下を阻害および/または抑制する組成物であって、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、および
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される、抗体
を含む、組成物。
(項目20)
好中球の機能低下を阻害および/または抑制する組成物であって、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
を含む、組成物。
(項目21)
さらに好中球の機能低下阻害剤を含む、項目19または20に記載の組成物。
(項目22)
侵襲性歯周炎を処置する組成物であって、その組成物は、
配列番号1に記載の核酸配列、
配列番号3に記載の核酸配列、
配列番号5に記載の核酸配列、および
配列番号7に記載の核酸配列、
からなる群より選択される核酸配列を含む遺伝子の発現量を低下させる核酸を含む、
組成物。
(項目23)
項目22に記載の組成物であって、
配列番号1に記載の核酸配列を含む遺伝子の発現量を低下させる核酸を含む、
組成物。
(項目24)
上記核酸が、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、
配列番号3に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、および
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
からなる群より選択される、項目22に記載の組成物。
(項目25)
上記核酸が、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである核酸、
である、項目24に記載の組成物。
(項目26)
さらに抗炎症剤を含む、項目22〜25に記載の組成物。
(項目27)
上記抗炎症剤が、ミノサイクリン(ペリオクリン(登録商標))である、項目26に記載の組成物。
(項目28)
好中球の機能低下を阻害および/または抑制する組成物であって、その組成物は、
配列番号1に記載の核酸配列、
配列番号3に記載の核酸配列、
配列番号5に記載の核酸配列、および
配列番号7に記載の核酸配列、
からなる群より選択される核酸配列を含む遺伝子の発現量を低下させる核酸を含む、
組成物。
(項目29)
項目28に記載の組成物であって、
配列番号1に記載の核酸配列を含む遺伝子の発現量を低下させる核酸を含む、
組成物。
(項目30)
上記核酸が、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、
配列番号3に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、および
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
からなる群より選択される、項目28に記載の組成物。
(項目31)
上記核酸が、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、項目29に記載の組成物。
(項目32)
さらに好中球の機能低下阻害剤を含む、項目28〜31に記載の組成物。
(項目33)
抗炎症剤のスクリーニング方法であって、その方法は、
(a)(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群より選択される核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)その細胞におけるその核酸の発現量を測定する工程;および
(c)その測定された発現量を指標として、その候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
(項目34)
抗炎症剤のスクリーニング方法であって、その方法は、
(a)(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)その細胞におけるそのポリペプチドの発現量を測定する工程;および
(c)その測定された発現量を指標として、その候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
(項目35)
抗炎症剤のスクリーニング方法であって、その方法は、
(a)(i)配列番号1の核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)その細胞におけるその核酸の発現量を測定する工程;および
(c)その測定された発現量を指標として、その候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
(項目36)
抗炎症剤のスクリーニング方法であって、その方法は、
(a)(i)配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2のアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)その細胞におけるそのポリペプチドの発現量を測定する工程;および
(c)その測定された発現量を指標として、その候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
(項目37)
好中球の機能低下阻害剤のスクリーニング方法であって、その方法は、
(a)(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群より選択される核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)その細胞におけるその核酸の発現量を測定する工程;および
(c)その測定された発現量を指標として、その候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
(項目38)
好中球の機能低下阻害剤のスクリーニング方法であって、その方法は、
(a)(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)その細胞におけるそのポリペプチドの発現量を測定する工程;および
(c)その測定された発現量を指標として、その候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
(項目39)
好中球の機能低下阻害剤のスクリーニング方法であって、その方法は、
(a)(i)配列番号1の核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)その細胞におけるその核酸の発現量を測定する工程;および
(c)その測定された発現量を指標として、その候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
(項目40)
好中球の機能低下阻害剤のスクリーニング方法であって、その方法は、
(a)(i)配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2のアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)その細胞におけるそのポリペプチドの発現量を測定する工程;および
(c)その測定された発現量を指標として、その候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
(項目41)
侵襲性歯周炎の可能性を評価するためのキットであって、そのキットは、
項目1〜5のいずれか1項に記載の組成物、および
その歯周炎の可能性を評価するための指示書、
を備える、キット。
(項目42)
好中球の機能低下の可能性を評価するためのキットであって、そのキットは、
項目8〜12のいずれか1項に記載の組成物、および
その好中球の機能低下の可能性を測定するための指示書、
を備える、キット。
【0014】
本発明のこれらおよび他の利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読みかつ理解すれば、当業者には明白になることが理解される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、侵襲性歯周炎の早期診断を可能にする効果的な診断マーカーおよびその診断マーカーを使用する早期診断法が提供される。侵襲性歯周炎を処置するための核酸、抗体または組成物もまた、本発明によって提供される。
【0016】
さらに本発明によって、好中球の機能低下の早期診断を可能にする診断マーカーおよびその診断マーカーを使用する早期診断法が提供される。好中球の機能低下を阻害および/または抑制するための核酸、抗体または組成物もまた、本発明によって提供される。
【0017】
したがって、本発明は、従来存在しなかった侵襲性歯周炎および好中球機能低下の早期診断を提供するという課題を解決するという、顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により記載する。本発明を以下に説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0019】
以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきではない。本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは、当業者に明らかである。
【0020】
本発明者らは、好中球の機能低下を伴う侵襲性歯周炎患者の好中球において高発現を示す遺伝子を新規に同定することによって、本発明を完成させた。これらの遺伝子は、侵襲性歯周炎および好中球機能低下の早期診断を可能にするマーカーである。したがって、本発明は、従来存在しなかった侵襲性歯周炎および好中球機能低下の早期診断を提供するという課題を解決するという、顕著な効果を奏する。
【0021】
具体的には、本発明者らは、好中球機能低下を伴う侵襲性歯周炎患者から好中球を分離し、プロテオーム解析によってタンパク質レベルで高い発現を示している遺伝子を同定することによって、本発明を完成させた。本発明においてマーカーとして同定された遺伝子は、Caldesmon(配列番号1に核酸配列を、配列番号2にアミノ酸配列をそれぞれ示す)、Lactoferrin(配列番号3に核酸配列を、配列番号4にアミノ酸配列をそれぞれ示す)、Heat shock 70kDaタンパク質(配列番号5に核酸配列を、配列番号6にアミノ酸配列をそれぞれ示す)、およびStac(配列番号7に核酸配列を、配列番号8にアミノ酸配列をそれぞれ示す)の4つであった。
【0022】
Caldesmonはカルモジュリン結合タンパク質であり、細胞内情報伝達に関与する一方、分泌または細胞小器官の運動においても重要な役割を担っていることがわかっている。
【0023】
Lactoferrinは、抗菌、抗真菌、好ウイルス、抗癌、抗炎症、免疫調節活性などを示すタンパク質である。Lactoferrinについては、健常者と侵襲性歯周炎患者間で異なる遺伝子型を示している例が報告されている。また、限局型侵襲性歯周炎(前歯および大臼歯(奥歯)(特に前歯および第一大臼歯のみに症状が現れる歯周炎))の患者の唾液中におけるLactoferrin量が健常者と比較して高いこと、および限局型侵襲性歯周炎患者のLactoferrinの鉄結合能が健常者よりも高いことなどが報告されている。
【0024】
Heat shock 70kDaタンパク質は、生体の維持に必要とされ、生体防御反応の結果産生されるタンパク質である。Heat shock 60kDa、65kDaタンパク質については、歯周病のプロセスに関与することが報告されている。
【0025】
Stacについては、現在のところ機能はほとんど知られていないが、神経細胞で細胞内情報伝達に関わっている可能性が示唆されている。
【0026】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0027】
「歯周炎」とは、歯周組織に現れる病変のうち、歯根膜組織または歯槽骨に病変が波及している炎症性疾患をいう。歯周炎は、一般的に、慢性歯周炎および侵襲性歯周炎の2種類に大別される。本発明における「歯周炎」は、特に、侵襲性歯周炎をいうが、これに限定されず、本発明は慢性歯周炎にも適用可能である。
【0028】
「歯周炎の存在」とは、患者または被験体が歯周炎に罹患していることをいう。患者または被験体において「歯周炎が存在する」場合、その患者または被験体は歯周炎に罹患しており、逆に患者または被験体において「歯周炎が存在しない」場合、その患者または被験体は歯周炎に罹患していない。本明細書中において、「歯周炎の存在」は、歯周組織検査、X線撮影による検査、血清抗体価検査、唾液および歯肉溝滲出液を用いた歯周病原性細菌検査、好中球機能検査の各種検査によって、決定される。
【0029】
「歯周炎の可能性」とは、患者または被験体における歯周炎の起こりやすさ、リスク、または発症のしやすさをいう。
【0030】
本明細書中で「歯周炎の存在および/または可能性を評価する」とは、患者または被験体が歯周炎に罹患しているか否か、および患者または被験体が歯周炎を発症する可能性が高いか否かを評価することをいう。本発明では一般的に、被験体由来の生物学的サンプルにおいてマーカー遺伝子の発現量が、コントロールと比較して高い(例えば、コントロールの発現量の20倍、15倍、10倍、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍、2倍、1.9倍、1.8倍、1.7倍、1.6倍、1.5倍)場合に、その被験体は「歯周炎が存在している、または歯周炎を発症する可能性が高い」と評価され、コントロールと比較して同程度(例えば、コントロールの発現量の1倍、0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6または0.5倍〜2倍、1.9倍、1.8倍、1.7倍、1.6倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍、または1.1倍)の場合に、その被験体は「歯周炎が存在していない、または歯周炎を発症する可能性は高くない」と評価され、そしてコントロールと比較して低い(例えば、コントロールの発現量の1.5倍未満、1.4倍未満、1.3倍未満、1.2倍未満、1.1倍未満、または1倍未満)場合に、その被験体は「歯周炎が存在している、または歯周炎を発症する可能性が低い」と評価される。本発明において使用するコントロールとしては、などが挙げられるが、これらに限定されない。コントロールとは、例えば、健常者由来の生物学的サンプルにおける、ハウスキーピング遺伝子の発現量によって正規化した後の、マーカー遺伝子の発現量である。
【0031】
「マーカー」とは、生物学的因子を明確に同定する、生物学的因子の高分子的、微視的、または分子的特徴をいう。本発明では、「マーカー」は、Caldesmon遺伝子、Lactoferrin遺伝子、Heat shock 70kDaタンパク質遺伝子、およびStac遺伝子である。
【0032】
マーカー遺伝子の「発現量」とは、マーカー遺伝子から発現された核酸またはポリペプチドの量をいう。核酸またはポリペプチドの量を測定する方法は、当該分野で周知である。
【0033】
歯周炎を「処置する」とは、歯周炎を治療すること、歯周炎の重篤度を軽減すること、歯周炎の発症を予防すること、または歯周炎の再発を防止することなどをいう。
【0034】
本明細書中における「好中球」の定義は、一般的に当該分野における定義と同じである。好中球は、走化能、貪食能、粘着能、活性酸素産生能、脱顆粒などの種々の強力な機能を有し、生体に侵入してくる病原体に対する宿主防御における最も重要な顆粒球である。侵襲性歯周炎においては、この病原体は、特にActinobacillus actinomycetemcomitansである。このA.actinomycetemcomitansは、leukotoxinと呼ばれる白血球毒素を作り出し、好中球またはその他免疫細胞の機能を低下させるといわれている。
【0035】
「好中球の機能低下」とは、好中球の有する機能(例えば、走化能、貪食能、粘着能、活性酸素産生能、脱顆粒など)が、健常な好中球と比較して低下することをいう。「好中球の機能低下を評価する」とは、健常な好中球と比較して、対象とする好中球の機能の低下の有無または程度について決定することをいう。本発明の一局面において、好中球の機能低下とは、特に走化能の低下をいう。好中球の走化能は、例えば、実施例の一般的手法において示される方法によってアッセイされる。
【0036】
本明細書中で「好中球の機能低下を評価する」とは、患者または被験体において好中球の機能低下が起こっているか否かを決定することをいう。本発明の一局面において、この好中球の機能は、走化能である。本発明では一般的に、被験体由来の生物学的サンプルにおいてマーカー遺伝子の発現量がコントロールと比較して高い(例えば、コントロールの発現量の20倍、15倍、10倍、9倍、8倍、7倍、6倍、5倍、4倍、3倍、2倍、1.9倍、1.8倍、1.7倍、1.6倍、1.5倍)場合に、その被験体において「好中球の機能が低下している」と評価され、コントロールと比較して同程度(例えば、コントロールの発現量の1倍、0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6または0.5倍〜2倍、1.9倍、1.8倍、1.7倍、1.6倍、1.5倍、1.4倍、1.3倍、1.2倍、または1.1倍)の場合に、その被験体において「好中球の機能は低下していない」と評価される。コントロールとは、例えば、健常者由来の生物学的サンプルにおける、ハウスキーピング遺伝子の発現量によって正規化した後の、マーカー遺伝子の発現量である。
【0037】
「好中球の機能低下を阻害および/または抑制する」とは、好中球の機能低下を防ぐこと、好中球の機能低下を予防すること、または機能低下した好中球の機能を回復させることをいう。本発明では、機能低下した好中球の機能が、健常な好中球と比較して、50%まで、60%まで、70%まで、80%まで、85%まで、90%まで、95%まで、そして好ましくは100%まで、なお好ましくは100%以上まで回復させた場合、好中球の機能低下を阻害および/または抑制したという。
【0038】
本明細書中で使用する場合、「生理活性」は、任意の生理作用または薬理作用を起こす活性をいう。本発明の一実施形態において、生理活性は、好中球の機能低下活性である。本発明の一実施形態において、生理活性は、好中球の走化能低下活性である。
【0039】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」は、一本鎖形態、二本鎖形態、または他の形態である、リン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオチド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、もしくはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオチド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、もしくはデオキシシチジン(DNA分子」)、またはそれらの任意のホスホエステルアナログ(例えば、ホスホロチオエートおよびチオエステル)を指し得る。
【0040】
「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)中の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオシド」とも呼ばれる)であり、2つの以上のヌクレオチドの任意の鎖またはその相補鎖を意味する。本発明の好ましい核酸は、配列番号1、3、5または7のいずれかに示される核酸、ならびにその相補鎖、改変体およびフラグメントを包含する。
【0041】
「相補鎖」とは、ある核酸配列に対して塩基対を形成し得るようなヌクレオチドの鎖を意味する。例えば、二本鎖DNAの各々の鎖は互いに相補的な塩基配列を有し、一方の鎖から見て他方の鎖は相補鎖である。
【0042】
「コード配列」または発現生成物(例えば、RNA、ポリペプチド、タンパク質、もしくは酵素)を「コードする」配列は、発現された場合にその生成物の生成をもたらすヌクレオチド配列である。
【0043】
「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の連続列を含む。本発明の好ましいペプチドは、配列番号2、4、6または8のいずれかに示されるペプチド、ならびにその改変体およびフラグメントを包含する。
【0044】
「タンパク質配列」、「ペプチド配列」、または「ポリペプチド配列」または「アミノ酸配列」は、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチド中にある一連の2つ以上のアミノ酸を指す。
【0045】
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。
【0046】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて算出される。
【0047】
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能が保持されているかどうかによって決定され得る。
【0048】
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
【0049】
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
【0050】
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
【0051】
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0052】
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M 塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrooket al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(ColdSpring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization:a Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSOまたはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、NucleicAcid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
【0053】
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
(℃)=81.5+16.6(log[Na])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
【0054】
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015
M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015Mナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
【0055】
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015Mナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
【0056】
約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1MNaClにおける融解温度の適切な概算は、Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
【0057】
配列番号2、4、6または8のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントなどのタンパク質をコードする天然の核酸は、例えば、それぞれ配列番号1、3、5または7の核酸配列の一部またはその改変体を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。配列番号2、4、6または8のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);1mM EDTA;42℃の温度で 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mM クエン酸ナトリウム);50℃の0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA; 7% SDS を含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mM クエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mM リン酸ナトリウム(NaPO);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mM クエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号1に示す配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
【0058】
本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、 Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。
【0059】
(1) BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較;
(2) BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較;
(3) BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較;
(4) TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較;
(5) TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。
【0060】
BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington: National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268参照のこと)。
【0061】
本明細書における「プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。
【0062】
通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、16の連続するヌクレオチド長の、17の連続するヌクレオチド長の、18の連続するヌクレオチド長の、19の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プライマーとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、最も好ましくは95%相同な核酸配列が含まれる。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE,PrimerSelect,DNAStar)を用いて行ってもよい。
【0063】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0064】
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associat ES and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0065】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0066】
本明細書において核酸の存在を確認するには、放射能法、蛍光法、ノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価され得る。
【0067】
本明細書中で、「生物学的サンプル」とは、例えば、血液、血清、尿、および/または生検組織をいうが、これらに限定されない。本発明における好ましい生物学的サンプルは、血液(特に、末梢血)であるが、これらに限定されない。本発明における別の好ましい生物学的サンプルは、好中球である。
【0068】
「抗体」は、抗体およびそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を包含するが、これらに限定されない。この用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab抗体フラグメント、F(ab)抗体フラグメント、Fv抗体フラグメント(例えば、VまたはV)、単鎖Fv抗体フラグメント、およびdsFv抗体フラグメントを包含する。さらに、本発明の抗体分子は、完全ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ニワトリ抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であり得る。本発明の抗体は、配列番号2、配列番号4、配列番号6または配列番号8のアミノ酸配列からなるポリペプチドに、特異的に反応する。
【0069】
「中和」は、生物学的活性を有する物質が、それに対する抗体に結合することにより、活性を失う現象をいう。本明細書中では、この生物学的活性は特に、好中球の機能低下である。本発明の一局面において、好中球のこの機能は、走化能である。
【0070】
「中和抗体」は、生物学的活性を中和する抗体をいう。本明細書中における「中和抗体」は、特に、好中球の機能低下を中和する抗体をいう。本発明の一局面において、この好中球の機能は、走化能である。
【0071】
本発明の核酸または抗体は、抗炎症剤と組み合わせて使用され得る。この抗炎症剤としては、当該分野で公知の任意の抗炎症剤が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物と組み合わされて使用される、特に有用な抗炎症剤は、ミノサイクリン(ペリオクリン(登録商標))である。
【0072】
本明細書中において、「好中球の機能低下阻害剤」とは、好中球の機能低下を阻害および/または抑制することができる任意の因子をいう。
【0073】
本発明の遺伝子は、siRNAを用いてその発現をノックダウン(抑制)することが可能である。所定の遺伝子からsiRNAを調製する方法は周知であり、例えば、実施例に記載されるような方法で調製できる。さらに、(1)GまたはCが連続して4つ以上存在しない、(2)AまたはTが連続して4つ以上存在しない、(3)GあるいはCが9塩基以上存在しない、などの条件を加えてもよい。本発明のsiRNAは、19塩基長、20塩基長、21塩基長、22塩基長、23塩基長、24塩基長、25塩基長、26塩基長、27塩基長、28塩基長、29塩基長、または30塩基長である。本発明のsiRNAは、好ましくは、19塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは20塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは21塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは22塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは23塩基長である。本発明のsiRNAはまた、好ましくは24塩基長である。siRNAの調製法については、実施例の一般的手法の項を参照のこと。
【0074】
用語「発現する」および「発現」は、遺伝子、RNA配列もしくはDNA配列中の情報が明らかになるのを可能にすることまたはそれを引き起こすこと(例えば、対応する遺伝子の転写および翻訳に関与する細胞機能を活性化することによって、タンパク質を生成すること)を意味する。DNA配列は、細胞中でかまたは細胞によって、「発現生成物」(例えば、RNA(例えば、mRNA)またはタンパク質)を形成するように発現される。その発現生成物自体はまた、その細胞によって「発現される」と言われ得る。
【0075】
用語「形質転換」とは、核酸を細胞中に導入することを意味する。導入される遺伝子または配列は、「クローン」と呼ばれ得る。その導入されるDNAまたはRNAを受ける宿主細胞は、「形質転換」されており、これは、「形質転換体」または「クローン」である。宿主細胞に導入されるDNAまたはRNAは、任意の供給源由来であり得、宿主細胞と同じ属または種の細胞由来であっても、異なる属または種の細胞由来であってもよい。
【0076】
用語「ベクター」は、宿主を形質転換し、必要に応じて導入された配列の発現および/または複製を促進するように、DNA配列またはRNA配列が宿主細胞中に導入され得る媒体(例えば、プラスミド)を包含する。
【0077】
本発明において使用され得るベクターとしては、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNAフラグメント、および宿主ゲノム中への核酸の導入を促進し得る他の媒体が挙げられる。プラスミドは、最も一般的に使用される形態のベクターであるが、同様の機能を提供しかつ当該分野で公知であるかまたは公知となる他のすべての形態のベクターが、本明細書中で野使用のために適切である。例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual,1985 and Supplements,Elsevier,N.Y.およびRodriguezら、(編),Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses 1988,Buttersworth,Boston,MAを参照のこと。
【0078】
用語「発現系」とは、適切な条件下で、そのベクターにより保有されて宿主細胞中に導入されるタンパク質または核酸を発現し得る、宿主細胞および適合性ベクターを意味する。一般的な発現系としては、E.coli宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞およびベクターが挙げられる。
【0079】
本発明の配列番号2、4、6または8に記載のポリペプチドをコードする核酸の発現は、原核生物細胞または真核生物細胞のいずれかにおいて従来の方法によって実行され得る。E.coli宿主細胞は、原核生物系において最も頻繁に使用されるが、他の多くの細菌(例えば、種々のPseudomonasおよびBacillusの株)が、当該分野で公知であり、そしてこれらも同様に、使用され得る。配列番号2、4、6または8に記載のポリペプチドをコードする核酸を発現するために適切な宿主細胞としては、原核生物および高等真核生物が挙げられる。原核生物は、グラム陰性生物およびグラム陽性生物(例えば、E.coliおよびB.subtilis)の両方を包含する。高等真核生物は、動物細胞(非哺乳動物起源(例えば、昆虫細胞)および哺乳動物起源(例えば、ヒト、霊長類、および齧歯類)の両方の動物細胞)由来の樹立された組織培養細胞株を包含する。
【0080】
原核生物宿主−ベクター系は、多くの異なる種のための広範な種類のベクターを包含する。DNAを増幅するための代表的なベクターは、pBR322またはその誘導体の多く(例えば、pUC18もしくはpUC19)である。配列番号2、4、6または8に記載のポリペプチドを発現するために使用され得るベクターとしては、lacプロモーターを含むベクター(pUCシリーズ);trpプロモーターを含むベクター(pBR322−trp);Ippプロモーターを含むベクター(pINシリーズ);λ−pPプロモーターもしくはλ−pRプロモーターを含むベクター(pOTS);またはハイブリッドプロモーター(例えば、ptac)を含むベクター(pDR540)が挙げられるが、これらに限定されない。Brosiusら、「Expression Vectors Employing Lambda−,trp−,lac−,and Ipp−derived Promoters」,Rodriguez and Denhardt(編)Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,1988,Buttersworth,Boston,pp.205〜236を参照のこと。多くのポリペプチドは、米国特許第4,952,496号、同第5,693,489号および同第5,869,320号、ならびにDavanloo,P.ら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:2035〜2039;Studier,F.W.ら、(1986)J.Mol.Biol.189:113−130;Rosenberg,A.H.ら、(1987)Gene 56:125−135;およびDunn,J.J.ら、(1988)Gene 68:259に開示されるように、E.coli/T7発現系において、高レベルで発現され得る。
【0081】
高等真核生物組織培養細胞もまた、本発明の配列番号2、4、6または8に記載のポリペプチドの組換え生成のために使用され得る。任意の高等真核生物組織培養細胞株(昆虫バキュロウイルス発現系が挙げられる)が使用され得るが、哺乳動物細胞が、好ましい。このような細胞の形質転換、トランスフェクションおよび増殖は、慣用的手順となっている。有用な細胞株の例としては、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、J774細胞、Caco2細胞、ラット乳児腎臓(BRK)細胞株、昆虫細胞株、鳥類細胞株、およびサル(COS)細胞株が挙げられる。そのような細胞株のための発現ベクターは、通常は、複製起点、プロモーター、翻訳開始部位、RNAスプライス部位(ゲノムDNAが使用される場合)、ポリアデニル化部位、および転写終結部位を含む。これらのベクターはまた、通常は、選択遺伝子または増幅遺伝子を含む。適切な発現ベクターは、例えば、アデノウイルス、SV40、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、またはサイトメガロウイルスのような供給源に由来するプロモーターを保有する、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスであり得る。発現ベクターの例としては、pCR(登録商標)3.1、pCDNA1、pCD(Okayamaら、(1985)Mol.Cell Biol.5:1136)、pMC1neo Poly−A(Thomasら、(1987)Cell 51:503)、pREP8、pSVSPORTおよびそれらの誘導体、ならびにバキュロウイルスベクター(例えば、pAC373またはpAC610)が挙げられる。
【0082】
本発明はまた、本発明の配列番号2、4、6または8に記載のポリペプチドおよび配列番号1、3、5または7に記載のポリヌクレオチドと、第2ポリペプチド部分もしくは第2ポリヌクレオチド部分(「タグ」と呼ばれ得る)とを含む、融合物を包含する。本発明の融合ポリペプチドは、例えば、本発明のポリヌクレオチドまたはそのフラグメントを、発現ベクター中に挿入することによって、簡便に構築され得る。本発明の融合物は、精製または検出を容易するタグを含み得る。そのようなタグとしては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヘキサヒスチジン(His6)タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)タグ、赤血球凝集素(HA)タグ、セルロース結合タンパク質(CBP)タグ、およびmycタグが挙げられる。検出可能なタグ(例えば、32P、35S、H、99mTc、123I、111In、68Ga、18F、125I、131I、113mIn、76Br、67Ga、99mTc、123I、111Inおよび68Ga)もまた、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを標識するために使用され得る。このような融合物を構築および使用するための方法は、当該分野で周知である。
【0083】
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
【0084】
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
【0085】
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
【0086】
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または薬学的アジュバント。
【0087】
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、被験体の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0088】
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
【0089】
「被験体」または「患者」は、ヒト、またはイヌ、ネコ、マーモセット、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ゾウ、キリン、ニワトリ、ライオン、サル、フクロウ、ラット、リス、ホソロリス、およびマウスなどを含む脊椎動物を意味する。本明細書中では、「被験体」または「患者」は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0090】
(薬学的組成物)
本発明のポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、侵襲性歯周炎の処置および好中球機能低下の阻害のための薬学的組成物の成分として使用することが可能である。
【0091】
本明細書において薬剤の「有効量」とは、その薬剤が目的とする薬効が発揮することができる量をいう。本明細書において、そのような有効量のうち、最小の濃度を最小有効量ということがある。そのような最小有効量は、当該分野において周知であり、通常、薬剤の最小有効量は当業者によって決定されているか、または当業者は適宜決定することができる。そのような有効量の決定には、実際の投与のほか、動物モデルなどを用いることも可能である。本発明はまた、このような有効量を決定する際に有用である。
【0092】
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバント。
【0093】
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0094】
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
【0095】
本発明では、いったん類似の種類(例えば、ヒトに対するマウスなど)の生物、培養細胞、組織などに関し、本願発明の遺伝子の発現レベルと、侵襲性歯周炎の存在および/または可能性、ならびに好中球機能低下とが相関付けられた場合、対応する遺伝子発現量の分析結果と、侵襲性歯周炎の存在および/または可能性、ならびに好中球機能低下とが相関付けることができることは、当業者は容易に理解する。
【0096】
本明細書において使用される場合、「キット」とは、複数の容器、および製造業者の指示書を含み、そして各々の容器が、本発明の薬学的組成物、その他の薬剤、およびキャリアを含む製品をいう。
【0097】
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0098】
(一般的手法)
(好中球の走化能の測定)
被験者の上腕正中静脈からヘパリン加真空採血管を用いて末梢血を6ml採血後、カバーガラス上に120μl滴下し、37℃,5%CO気相条件下で、45分間インキュベートした。インキュベート後、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS,pH7.5 日水製薬,東京)で3回洗浄後、カバーガラス上に付着した好中球を用いた。
【0099】
走化能はZigmondチャンバー法によって測定した。Zigmond chamber法とは、Zigmondチャンバーを使用し、各チャンバーに走化性因子および培養液を入れ、走化性因子側に向かって遊走する好中球をカウントして測定する方法である。走化性因子として10−8M N−formyl−methionyl−leucyl−phenylalanine(fMLP,SIGMA,MO.USA)、対照としてHank’s balanced salt solution(HBSS,pH7.5 日水製薬,東京)および10% geratin溶液を混和し、1M NaHCOでpH7.2に調整した培養液を用いた。fMLP刺激は、37℃,5%CO気相条件下で、20分間行った。その後、位相差顕微鏡を用いてfMLP刺激した好中球の形態を観察し、紡錘形に形態変化した好中球を遊走した好中球、形態変化しなかった好中球を遊走しなかった好中球とした。走化能は全観察好中球数に対する、紡錘型に変化した好中球数の100分率として示す。
【0100】
(好中球の分離)
上腕正中静脈から末梢血80mlをヘパリン加真空採血管に採取した。15mlのディスポーザブルの遠沈管(CORNING,USA)にHystopaque1119(SIGMA)を3.5ml、その上にHystopaque1077(SIGMA)を1.5ml重層した。その上に血液4−6mlを重層し、450×g、20分間遠心分離した。好中球層を回収し、50mlになるようPBSを添加した。さらに90×g、10分間遠心によって洗浄し、好中球を沈査として回収した。lysing buffer(NHCl,KHCO,NaEDTA,pH7.4,4℃)を10ml添加し懸濁後、6−10分間静置した。静置後、最終容量が50mlになるようPBSを添加し、90×g,10分間遠心した。上清を除去後、再度同様の方法で低張液処理を施し混在する赤血球を除去した。得られた沈査にPBS 50mlを添加し、血球算定板によって細胞数を計測した。
【0101】
(プロテオーム解析)
分離した好中球5×10個に480μlのRPMI1640−HEPES(SIGMA,USA)で好中球を懸濁し、37℃、5% CO気相条件下で、5分間プレインキュベートした。次に、4×10−8M fMLPを添加し、さらに、37℃、5% CO気相条件下で、20分間インキュベートした。
【0102】
fMLP刺激した好中球を、cell wash buffer(10mM TrisCl,5mM Magnesium acetate)に懸濁し、4℃,3,000×gで4分間遠心した。遠心によって3回細胞を洗浄後、沈査をcell lysis buffer(30mM Tris Cl,2M Thiourea,7M Urea,4% CHAPS)に懸濁した。懸濁液を氷上で超音波処理後、4℃,12,000×g,10分間遠心し、不溶性の分画を除去した。pH INDICATOR PAPER pH 4.5−10(Whatman,Germany)を用いて調製したタンパク質がpH8.0−9.0であることを確認した。
【0103】
Immobiline Drystrip(pH3−10 NL,24cm,Amersham Bioscience)を膨潤液(8M Urea,4% CHAPS,1%Pharmalytes 3−10 for IEF,13mM Dithiothreitol,Bromoophenol blue)とCy2,Cy3,Cy5で標識したタンパク質試料を混和した溶液(450μl)で20℃,12時間膨潤した。ストリップスを膨潤した後、61kV−hで等電点電気泳動を行った。同時にタンパク質切り出し用のゲルとして、Immobiline Drystripを膨潤液と無標識の500μgタンパク質試料を混和した溶液450μlで膨潤後、等電点電気泳動を行った。なお、膨潤、および等電点電気泳動には、IPGphor(Amersham Bioscience)を用いた。
【0104】
次に、等電点電気泳動後のImmobiline DrystripをSDS buffer系に変換するため、平衡化を行った。平衡化溶液(50mM Tris Cl,6M Urea,30% Glycerol,2% SDS,Bromophenol Blue)に0.5% Dithiothreitolを添加した溶液にストリップスゲルを10分間浸漬して平衡化した。さらに平衡化溶液に4.5% Iodoacetamideを添加した溶液に、ストリップスゲルを10分間浸漬して平衡化した。平衡化後、ゲル表面を滑沢にする目的でSDS泳動バッファー(25mM Tris,192mM Glycine,0.2% SDS)に軽くくぐらせた。
【0105】
平衡化した各解析用、切り出し用のストリップスゲルを25.5×20.5cm,12.5%アクリルアミドゲル上に置き、71V,168mA,12W,30分間,239V,399mA,95W,5時間の条件でSDS−PAGEを行った。タンパク質切り出し用のアクリルアミドゲルは、ゲルをガラス板に固定する目的でゲル作製前に、ガラス板の片面にBind−Silane処理を行った。なお、SDS−PAGEはEttan Daltsix(Amersham Bioscience)を用いて行った。本項の操作は、全て遮光下で行った。
【0106】
タンパク質切り出し用ゲルをDeep Purple Total Protein Stain(Amersham Bioscience)を用いて染色し、ゲルをTyphoon9400(Amersham Bioscience)を用いてスキャニングし、自動画像解析ソフトウエアであるDeCyder(Amersham Bioscience)を用いてスキャニング画像データの検出、数値化、スポットのマッチング、およびタンパク質発現解析を行った。
【0107】
(MALDI−TOF−MSによるタンパク質の同定)
質量分析を、biflex IV(BRUKER DALTONICS,USA)を用いて、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI−TOF−MS)法で行った。試料溶液とマトリックス(α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)の混和液を、ターゲットプレート(MTP 384 massive target gold plated T(BRUKER DALTONICS,USA))上に滴下、自然乾燥にて乾固し、混晶をつくった。ターゲットプレートをイオン源に装着し、真空下でレーザー光を当て、スペクトルを検出した。また、Peptide calibration standard(BRUKER DALTONICS)を標準として用いた。データーベース検索を、Mascot Searchを用いて行った。
【0108】
(総RNAの精製)
fMLPで刺激した好中球から、ISOGEN(ニッポンジーン,東京)を用いてacidphenol法によって総RNAを抽出し、精製した。
【0109】
(リアルタイムPCR)
総RNA1.0μgをもとに、1st strand cDNAの合成を行った。逆転写反応は、Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit(Roche, Germany)を用いた。得られたcDNA1.0μgを使用して、ABI PRISM 7700 system(Applied Biosystems)を用いてリアルタイムでモニタリングし、mRNA発現の定量的解析を行った。
【0110】
(siRNAの調製)
当該分野で公知のsiRNA提供業者(例えば、株式会社 ニッポンイージーティー、富山、日本)により、アニーリングしている2本鎖の合成siRNAを入手する。その合成siRNAをRNAseフリーの溶液に溶解し、最終濃度が20μMになるように調整し、その後細胞へ導入する。
【0111】
(実施例1 マーカー遺伝子としての、Caldesmon遺伝子、Lactoferrin遺伝子、Heat shock 70kDaタンパク質遺伝子、およびStac遺伝子の同定)
侵襲性歯周炎患者群のタンパク質スポットの発現の平均値と健常者の平均値の比のlog値(Average Ratio)1.5を境界として、侵襲性歯周炎患者と健常者で発現量に差のあるタンパク質を同定した。
【0112】
その結果、caldesmon(P=0.26, Average.Ratio=1.99)、lactoferrin(P=0.033,Average.Ratio=1.92)、heat shock 70kDa protein(P=0.04,Average.Ratio=1.50)、およびstac(P=0.17, Average.Ratio=1.50)を、健常者の好中球と比較して、好中球走化能低下を示す侵襲性歯周炎患者の好中球において有意に発現が高いタンパク質として、同定した。
【0113】
(実施例2 マーカー遺伝子の遺伝子レベルでの発現解析)
実施例1で同定した4つのマーカー遺伝子のうち、Caldesmonに着目し、好中球におけるCaldesmonの発現動態をmRNAレベルで解析した。好中球走化能低下を示す侵襲性歯周炎患者群、好中球走化能低下を示さない侵襲性歯周炎患者群、慢性歯周炎患者群、および健常者群を、被験体とした。
【0114】
この4つの群の被験体由来の好中球において、以下に示すプライマーおよびプローブを使用して、リアルタイムPCRによるmRNA発現の定量的解析を行った。
Caldesmonフォワードプライマー;
GGTGAATGCCCAGAACAGTGT(配列番号9)
Caldesmonリバースプライマー;
GCGTTTTTGGCGTCTTTCC(配列番号10)
Taqmanプローブ;
AGGCCAAGACAACCACCACAAACACT(配列番号11)。
【0115】
図1に結果を示す。図1から明らかなように、好中球走化能低下を示す侵襲性歯周炎患者群は、好中球走化能低下を示さない侵襲性歯周炎患者群、慢性歯周炎患者群および健常者群と比較して、明らかにCaldesmonのmRNA発現が高かった。
【0116】
(実施例3 Caldesmonの過剰発現による好中球走化能低下の促進)
Caldesmon発現プラスミドおよびベクターのみを、健常者由来の好中球に導入し、上述の方法によって好中球の走化能を評価する。走化能は全観察好中球数に対する、紡錘型に変化した好中球数の100分率として示す。Caldesmon過剰発現好中球では、ベクターのみを導入した好中球と比較して、走化能が有意に低下する。この結果から、Caldesmonが、好中球の走化能低下を誘導すること、そしてCaldesmonが好中球の機能低下および侵襲性歯周炎のマーカーであることが明らかになる。
【0117】
(実施例4 siRNAによるCaldesmon遺伝子のノックダウン)
上述のように調製したCaldesmonのsiRNAを、好中球走化能低下を示す侵襲性歯周炎患者由来の好中球に導入し、その走化能について観察する。siRNAを導入していない好中球と比較して、Caldesmonをノックダウンした好中球では、走化能の低下の有意な抑制および/または阻害が観察される。この結果から、Caldesmonが、侵襲性歯周炎および好中球機能低下の治療のための標的であり得ることが明らかになる。
【0118】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、好中球走化能低下を示す侵襲性歯周炎患者群、好中球走化能低下を示さない侵襲性歯周炎患者群、慢性歯周炎患者群、および健常者群における、好中球のCaldesmon mRNA発現量の比較を示す。バーは、平均値+SDを示す。
【配列表フリーテキスト】
【0120】
配列番号1=Caldesmonの核酸配列
配列番号2=Caldesmonのアミノ酸配列
配列番号3=Lactoferrinの核酸配列
配列番号4=Lactoferrinのアミノ酸配列
配列番号5=Heat shock 70kDa proteinの核酸配列
配列番号6=Heat shock 70kDa proteinのアミノ酸配列
配列番号7=Stacの核酸配列
配列番号8=Stacのアミノ酸配列
配列番号9=Caldesmon用リアルタイムPCRフォワードプライマー
配列番号10=Caldesmon用リアルタイムPCRリバースプライマー
配列番号11=Taqmanプローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵襲性歯周炎の存在および/または可能性を評価するための診断マーカーであって、以下:
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号1に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号1に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号3に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号3に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号3に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号5に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号5に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号7に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号7に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される核酸または抗体を含む、侵襲性歯周炎診断マーカー。
【請求項2】
請求項1に記載の診断マーカーであって、以下、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸、
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸、
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸、および
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸、
からなる群より選択される核酸を含む、診断マーカー。
【請求項3】
請求項1に記載の診断マーカーであって、配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸を含む、診断マーカー。
【請求項4】
請求項1に記載の診断マーカーであって、以下、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、および
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される抗体を含む、診断マーカー。
【請求項5】
請求項1に記載の診断マーカーであって、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体を含む、診断マーカー。
【請求項6】
被験体において侵襲性歯周炎の存在および/または可能性を評価するための方法であって、
(a)(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群より選択される核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
の発現量を、該被験体由来の生物学的サンプルにおいて測定する工程、ならびに
(b)該発現量を指標として、該被験体における該予後および/または悪性度を評価する工程、
を包含する、方法。
【請求項7】
被験体において侵襲性歯周炎の存在および/または可能性を評価するための方法であって、
(a)(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
の発現量を、該被験体由来の生物学的サンプルにおいて測定する工程、ならびに
(b)該発現量を指標として、該被験体における該予後および/または悪性度を評価する工程、
を包含する、方法。
【請求項8】
好中球の機能低下を評価するための診断マーカーであって、以下:
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号1に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号1に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号3に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号3に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号3に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号5に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号5に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
配列番号7に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸、
配列番号7に記載の核酸配列のフラグメントを含む核酸の対であって、少なくとも10塩基の長さであって、PCRプライマーとして配列番号1に記載の核酸配列の少なくとも一部を増幅できる核酸の対、
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される核酸または抗体を含む、好中球機能低下診断マーカー。
【請求項9】
請求項8に記載の診断マーカーであって、以下、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸、
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸、
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸、および
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸、
からなる群より選択される核酸を含む、診断マーカー。
【請求項10】
請求項8に記載の診断マーカーであって、配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸を含む、診断マーカー。
【請求項11】
請求項8に記載の診断マーカーであって、以下、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、および
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される抗体を含む、診断マーカー。
【請求項12】
請求項8に記載の診断マーカーであって、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体を含む、診断マーカー。
【請求項13】
被験体において好中球の機能低下を評価するための方法であって、
(a)(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群より選択される核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
の発現量を、該被験体由来の生物学的サンプルにおいて測定する工程、ならびに
(b)該発現量を指標として、該被験体における該好中球の機能低下を評価する工程、
を包含する、方法。
【請求項14】
被験体において好中球の機能低下を評価するための方法であって、
(a)(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
の発現量を、該被験体由来の生物学的サンプルにおいて測定する工程、ならびに
(b)該発現量を指標として、該被験体における該好中球の機能低下を評価する工程、
を包含する、方法。
【請求項15】
侵襲性歯周炎を処置する組成物であって、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、および
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される、抗体
を含む、組成物。
【請求項16】
侵襲性歯周炎を処置する組成物であって、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
を含む、組成物。
【請求項17】
さらに抗炎症剤を含む、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗炎症剤が、ミノサイクリン(ペリオクリン(登録商標))である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
好中球の機能低下を阻害および/または抑制する組成物であって、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、および
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
からなる群より選択される、抗体
を含む、組成物。
【請求項20】
好中球の機能低下を阻害および/または抑制する組成物であって、
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに反応する抗体、
を含む、組成物。
【請求項21】
さらに好中球の機能低下阻害剤を含む、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
侵襲性歯周炎を処置する組成物であって、該組成物は、
配列番号1に記載の核酸配列、
配列番号3に記載の核酸配列、
配列番号5に記載の核酸配列、および
配列番号7に記載の核酸配列、
からなる群より選択される核酸配列を含む遺伝子の発現量を低下させる核酸を含む、
組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の組成物であって、
配列番号1に記載の核酸配列を含む遺伝子の発現量を低下させる核酸を含む、
組成物。
【請求項24】
前記核酸が、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、
配列番号3に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、および
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
からなる群より選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記核酸が、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである核酸、
である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
さらに抗炎症剤を含む、請求項22〜25に記載の組成物。
【請求項27】
前記抗炎症剤が、ミノサイクリン(ペリオクリン(登録商標))である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
好中球の機能低下を阻害および/または抑制する組成物であって、該組成物は、
配列番号1に記載の核酸配列、
配列番号3に記載の核酸配列、
配列番号5に記載の核酸配列、および
配列番号7に記載の核酸配列、
からなる群より選択される核酸配列を含む遺伝子の発現量を低下させる核酸を含む、
組成物。
【請求項29】
請求項28に記載の組成物であって、
配列番号1に記載の核酸配列を含む遺伝子の発現量を低下させる核酸を含む、
組成物。
【請求項30】
前記核酸が、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号3に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、
配列番号3に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号5に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、
配列番号7に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸、および
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも80%相同な配列を含む核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、核酸
からなる群より選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記核酸が、
配列番号1に記載の核酸配列を含む核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であり、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸のフラグメントである、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
さらに好中球の機能低下阻害剤を含む、請求項28〜31に記載の組成物。
【請求項33】
抗炎症剤のスクリーニング方法であって、該方法は、
(a)(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群より選択される核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)該細胞における該核酸の発現量を測定する工程;および
(c)該測定された発現量を指標として、該候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
【請求項34】
抗炎症剤のスクリーニング方法であって、該方法は、
(a)(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)該細胞における該ポリペプチドの発現量を測定する工程;および
(c)該測定された発現量を指標として、該候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
【請求項35】
抗炎症剤のスクリーニング方法であって、該方法は、
(a)(i)配列番号1の核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)該細胞における該核酸の発現量を測定する工程;および
(c)該測定された発現量を指標として、該候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
【請求項36】
抗炎症剤のスクリーニング方法であって、該方法は、
(a)(i)配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2のアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)該細胞における該ポリペプチドの発現量を測定する工程;および
(c)該測定された発現量を指標として、該候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
【請求項37】
好中球の機能低下阻害剤のスクリーニング方法であって、該方法は、
(a)(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群より選択される核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)該細胞における該核酸の発現量を測定する工程;および
(c)該測定された発現量を指標として、該候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
【請求項38】
好中球の機能低下阻害剤のスクリーニング方法であって、該方法は、
(a)(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)該細胞における該ポリペプチドの発現量を測定する工程;および
(c)該測定された発現量を指標として、該候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
【請求項39】
好中球の機能低下阻害剤のスクリーニング方法であって、該方法は、
(a)(i)配列番号1の核酸配列を含む核酸、または
(ii)(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸であって、生理活性を有するポリペプチドをコードする核酸、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)該細胞における該核酸の発現量を測定する工程;および
(c)該測定された発現量を指標として、該候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
【請求項40】
好中球の機能低下阻害剤のスクリーニング方法であって、該方法は、
(a)(i)配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチド、または
(ii)配列番号2のアミノ酸配列において1または数個の変異、置換、挿入または欠失を含むアミノ酸配列を有し、かつ生理活性を有する、ポリペプチド、
を発現する細胞と、候補化合物とを接触させる工程;
(b)該細胞における該ポリペプチドの発現量を測定する工程;および
(c)該測定された発現量を指標として、該候補化合物から抗炎症活性を有する化合物を選択する、工程;
を包含する、方法。
【請求項41】
侵襲性歯周炎の可能性を評価するためのキットであって、該キットは、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物、および
該歯周炎の可能性を評価するための指示書、
を備える、キット。
【請求項42】
好中球の機能低下の可能性を評価するためのキットであって、該キットは、
請求項8〜12のいずれか1項に記載の組成物、および
該好中球の機能低下の可能性を測定するための指示書、
を備える、キット。

【図1】
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【公開番号】特開2008−206483(P2008−206483A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48186(P2007−48186)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】