説明

便器設備

【課題】洗浄時の静音性に優れた便器設備を提供する。必要なときだけ便蓋を通して便鉢内を視認することができる便器設備を提供する。
【解決手段】フラッシュスイッチ11が操作されると、人体が便座3に着座しているか判断し、着座している場合には洗浄弁装置7を所定時間だけ開として鉢洗浄を行う。着座が検知されない場合には、便蓋4が閉じているときには調光体13の透明化及び鉢洗浄を行い、その後調光体13を不透明化する。便蓋4が開いているときには、便蓋4を閉じてから、調光体13の透明化及び鉢洗浄を行い、その後調光体13を不透明化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器本体及び便蓋を備えた便器設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
I.人体検知センサーによってトイレルームへの入室、退室を検知し、これに応じて便蓋を自動的に開閉させるようにした便器設備は、既に広く用いられている。
【0003】
特許第3632525号には、人体検知センサによって人体が便器から離れたことが検知されると自動的に便蓋を閉じたり便器洗浄することが記載されている(同号公報0016段落)。
【0004】
II.特開2001−212027号には、便蓋の少なくとも一部を透明とし、鉢内の洗浄状況を視認できるようにすることが記載されている。
【特許文献1】特許第3632525号
【特許文献2】特開2001−212027号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
I.便器洗浄するときに便蓋が開いていると、大きな洗浄音が便器周囲に広がることになる。本発明は、洗浄時の静音性に優れた便器設備を提供することを第1の目的とする。
【0006】
II.便蓋が常に透明であると、便鉢内が常に見えることになり、美観が損なわれることがある。
【0007】
本発明は、必要なときだけ便蓋を通して便鉢内を視認することができる便器設備を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の便器設備は、便鉢を有した便器本体と、該便器本体に開閉可能に設置された便蓋及び便座と、該便蓋を開閉駆動する駆動装置と、該便座への着座の有無を検知する着座検知手段と、該便鉢に洗浄水を供給する洗浄装置と、前記駆動装置及び該洗浄装置を制御する制御手段とを有する便器設備において、該制御手段は、前記着座検知手段が着座不検知の場合に洗浄装置を洗浄動作させるときには、それに先行して便蓋を閉とするように前記駆動装置を動作させるものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の便器設備は、請求項1において、前記制御手段は、前記着座検知手段が着座不検知となってから所定時間が経過すると、前記駆動装置を便蓋閉動作させ、次いで前記洗浄装置を洗浄動作させるものであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の便器設備は、請求項1において、前記便器設備は、便器洗浄を開始させるための洗浄スイッチを備えており、前記制御手段は、該洗浄スイッチが操作されたときに、前記着座検知手段が着座不検知であり且つ前記便蓋が開となっている場合に、前記駆動装置を便蓋閉動作させ、次いで前記洗浄装置を洗浄動作させるものであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の便器設備は、便鉢を有した便器本体と、該便器本体に開閉可能に設置された便蓋及び便座と、該便蓋を開閉駆動する駆動装置と、該便器本体近傍の人体を検知する人体検知手段と、該便鉢に洗浄水を供給する洗浄装置と、前記駆動装置及び該洗浄装置を制御する制御手段とを有する便器設備において、該制御手段は、前記人体検知手段が人体不検知となったときに、便蓋が開であり、且つ該人体検知手段が人体検知となってから人体不検知となる間に該洗浄装置が洗浄動作していない場合には、便蓋を閉とし、次いで該洗浄装置を洗浄動作させるものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の便器設備は、便鉢を有した便器本体と、該便器本体に開閉可能に設置された便蓋及び便座と、該便蓋を開閉駆動する駆動装置と、該便器本体近傍の人体を検知する人体検知手段と、該便鉢に洗浄水を供給する洗浄装置と、前記駆動装置及び該洗浄装置を制御する制御手段とを有する便器設備において、該制御手段は、前記人体検知手段が人体不検知となったときに、便蓋が開であり、且つ該人体検知手段が人体不検知となる直前の所定時間の間に該洗浄装置が洗浄動作していない場合には、便蓋を閉とし、次いで該洗浄装置を洗浄動作させるものであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の便器設備は、請求項1ないし5のいずれか1項において、便蓋の少なくとも便鉢に臨む箇所を透明としたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項7の便器設備は、請求項1ないし5のいずれか1項において、便蓋の少なくとも便鉢に臨む箇所を、透明と不透明とが切り替え可能な調光体にて構成し、この調光体の透明と不透明とを切り替える手段を設けたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項8の便器設備は、請求項1ないし5のいずれか1項において、便蓋の少なくとも便鉢に臨む箇所が、前記制御手段によって透明と不透明とが切り替えられる調光体にて構成されており、前記制御手段は、少なくとも前記洗浄装置の洗浄動作中は該調光体を透明とするものであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項9の便器設備は、便鉢を備えた便器本体と、該便器本体に設けられた便蓋とを有する便器設備において、該便蓋の該便鉢に臨む箇所の少なくとも一部を、透明と不透明とが切り替え可能な調光体にて構成し、該調光体の透明と不透明とを切り替える手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜7の便器設備にあっては、便器洗浄するのに先行して便蓋を閉じるので、洗浄時の騒音が便鉢内に閉じ込められるようになり、洗浄時の静音性が向上する。
【0018】
請求項2の便器設備にあっては、便器使用者が立ち去ると、自動的に便蓋が閉まり、次いで便器洗浄が行われる。
【0019】
請求項3の便器設備にあっては、便座に着座していない状態で洗浄スイッチを操作した場合、自動的に便蓋が閉まり、次いで便器洗浄が行われる。
【0020】
請求項4の便器設備にあっては、便器使用者が立ち去った場合において、便蓋が開いており且つ便器洗浄が使用者存在期間を通して行われていないときには、自動的に便蓋が閉まり、次いで便器洗浄が行われる。
【0021】
請求項5の便器設備にあっては、便器使用者が立ち去った場合において、便蓋が開いており且つ便器洗浄が立ち去り直前に行われていないときには、自動的に便蓋が閉まり、次いで便器洗浄が行われる。
【0022】
請求項6〜9の便器設備にあっては、便蓋を通して便鉢の洗浄状況を視認することができる。
【0023】
請求項7,9の便器設備にあっては、洗浄状況を視認することを望まない使用者の場合、調光体を不透明としておくことができる。これにより、美観向上を図ることができる。
【0024】
請求項8の便器設備にあっては、洗浄動作以外のときに調光体を不透明としておくことにより、美観向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る便器設備の斜視図、第2図はその制御ブロック図、第3図はその制御フローチャートである。
【0026】
便鉢1aを有した便器本体1の後部上面に便座ボックス2が設置されている。この便座ボックス2には、便器本体1の側方へ張り出す張出部2aが設けられている。便座ボックス2に便座3と便蓋4が起倒回動可能に取り付けられている。便座ボックス2内には、この便座3及び便蓋4を起立及び倒伏回動させるためのモータ及びギヤよりなる開閉駆動装置5が設けられている。また便座ボックス2には、便座3への着座を検知するための着座センサ6が設けられている。この着座センサ6としては、静電容量センサや便座支軸の上下を検知するリミットスイッチなど各種のものを用いることができる。便座ボックス2内には、便鉢1aに洗浄水を供給して鉢洗浄するための洗浄弁装置7(第2図)が設けられている。
【0027】
便座ボックス張出部2aには、便器本体1近傍の人体を検知するための人体検知センサ10が設けられると共に、洗浄弁装置7を作動させるためのフラッシュスイッチ11のほか、制御回路12を搭載した回路基板が設けられている。第2図の通り、上記センサ6,10、フラッシュスイッチ11の信号が制御回路12に入力され、この制御回路12によって開閉駆動装置5、洗浄弁装置7、調光体13が制御される。
【0028】
図示は省略するが、この便器設備には、人体臀部の温水洗浄装置や温風ファン、便座ヒータなどが設けられている。
【0029】
便蓋4のうち、便座3の内周よりも内側領域に重なる部分に調光体13が設けられている。この調光体13は、液晶層を透明電極で挟んだ液晶装置を透明樹脂板に積層した構造を有する。この電極間に電圧を印加すると調光体13は透明となり、電圧印加を解除すると不透明となる。
【0030】
次に、この便器設備の便蓋回動動作及びフラッシュ(便鉢洗浄)動作について第3図を参照して説明する。
【0031】
フラッシュスイッチ11が操作されると、ステップ21からステップ22に進み、人体が便座3に着座しているか判断し、着座している場合にはステップ28に進み、洗浄弁装置7を所定時間だけ開として鉢洗浄を行う。鉢洗浄終了後、ステップ21に戻る。
【0032】
前記ステップ22において、着座が検知されない場合には、ステップ23に進み、便蓋4が閉じているときにはステップ25,26に進み、調光体13の透明化及び鉢洗浄を行い、その後ステップ27にて調光体13を不透明化してステップ21に戻る。
【0033】
ステップ23において便蓋4が開いてるときには、ステップ24〜27に進み、便蓋4を閉じてから、前記と同様に調光体13の透明化及び鉢洗浄を行い、その後調光体13を不透明化してステップ21に戻る。
【0034】
このように、この実施の形態では、人体が着座していないときにフラッシュスイッチ11を操作すると、便蓋4を閉じてから鉢洗浄を行うので、洗浄騒音が周囲に広がらない。
【0035】
また、鉢洗浄中に調光体13を透明化するので、洗浄状況を視認することができる。また、鉢洗浄時以外では調光体13を不透明化しているので、鉢内が見えず、美観が良い。
【0036】
なお、調光体13の透明、不透明を切り替えるためのスイッチを設け、使用者が希望するときだけ調光体13を透明化させることができるよう構成してもよい。
【0037】
調光体13の代わりに透明板を用い、常時便鉢1a内を視認できるようにしてもよい。調光体13や透明板は省略されてもよい。
【0038】
なお、便蓋4を閉めるときに、便座3が開いている場合には、便座3も併せて倒伏回動させる。
【0039】
第4図を参照して別の洗浄制御例について説明する。
【0040】
ステップ31において着座が検知されると、ステップ32に進み、着座不検知となるまで待機する。着座不検知となったときには、ステップ33に進み、着座時間が所定時間tよりも短いときには便器不使用とみなしてステップ31へ戻る。着座時間がt以上であるときには、便器使用ありとみなし、ステップ34に進み、しばらく待機する(ステップ34,35)。
【0041】
この間にフラッシュスイッチ11が操作されたときには、ステップ35からステップ36に進み、便蓋4が開いているときには便蓋4を閉じてから(ステップ37)、また便蓋4が閉じているときには直ちに鉢洗浄を行う(ステップ38)。その後、ステップ31に戻る。このように便蓋4を閉めた状態で鉢洗浄を行うので、静音性が良い。
【0042】
第4図では調光体の制御を省略しているが、前記実施の形態と同様に行ってもよく、また調光体を省略したり、透明板を設けたりしてもよい。
【0043】
第4図では着座センサ6の検知信号に基づいて制御を行っているが、人体検知センサ10の検知信号に基づいて制御を行ってもよい。その制御例を第5図に示す。第5図では、人体検知センサ10が人体を検知した場合、ステップ31aからステップ32aに進み、その後人体が検知されなくなると、ステップ32aからステップ33aに進み、検知時間が所定時間t以上か否か判定する。検知時間がtよりも短いときには、便器不使用とみなし、ステップ31aに戻る。検知時間がt以上であるときには、便器使用ありとみなし、ステップ34aに進み、所定時間待機する。
【0044】
所定時間経過後、ステップ35aに進み、人体が検知されなくなったとき(立ち去り時)の直前、例えば立ち去り前1分以内好ましくは立ち去り前30秒以内にフラッシュスイッチ11が操作されたか否かチェックし、この間に操作されていれば、便器洗浄済みとみなし、ステップ31aに戻る。フラッシュスイッチ11が操作されてないときには、ステップ36に進み、便蓋4が開いているときには便蓋4を閉じてから(ステップ37)、また便蓋4が閉じているときには直ちに鉢洗浄を行う(ステップ38)。その後、ステップ31aに戻る。
【0045】
なお、この第5図において、立ち去り前にフラッシュスイッチ11が操作されたときには、第5図のステップ31〜34,36の動作を実行し、便蓋4の閉状態での鉢洗浄を行うようにしてもよい。
【0046】
この第5図では、立去直前時にフラッシュスイッチ11が操作されていれば自動洗浄は行わないようにしているが、人体検知から人体不検知となる間にフラッシュスイッチ11が操作されていれば、自動洗浄を行わないようにしてもよい。
【0047】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態をもとりうる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態に係る便器設備の斜視図である。
【図2】実施の形態に係る便器設備の制御ブロック図である。
【図3】実施の形態に係る便器設備の制御フローチャートである。
【図4】別の洗浄例を示すフローチャートである。
【図5】さらに別の洗浄例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 便器本体
2 便座ボックス
3 便座
4 便蓋
5 開閉駆動装置
6 着座センサ
10 人体検知センサ
11 フラッシュスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢を有した便器本体と、
該便器本体に開閉可能に設置された便蓋及び便座と、
該便蓋を開閉駆動する駆動装置と、
該便座への着座の有無を検知する着座検知手段と、
該便鉢に洗浄水を供給する洗浄装置と、
前記駆動装置及び該洗浄装置を制御する制御手段と
を有する便器設備において、
該制御手段は、前記着座検知手段が着座不検知の場合に洗浄装置を洗浄動作させるときには、それに先行して便蓋を閉とするように前記駆動装置を動作させるものであることを特徴とする便器設備。
【請求項2】
請求項1において、前記制御手段は、前記着座検知手段が着座不検知となってから所定時間が経過すると、前記駆動装置を便蓋閉動作させ、次いで前記洗浄装置を洗浄動作させるものであることを特徴とする便器設備。
【請求項3】
請求項1において、前記便器設備は、便器洗浄を開始させるための洗浄スイッチを備えており、
前記制御手段は、該洗浄スイッチが操作されたときに、前記着座検知手段が着座不検知であり且つ前記便蓋が開となっている場合に、前記駆動装置を便蓋閉動作させ、次いで前記洗浄装置を洗浄動作させるものであることを特徴とする便器設備。
【請求項4】
便鉢を有した便器本体と、
該便器本体に開閉可能に設置された便蓋及び便座と、
該便蓋を開閉駆動する駆動装置と、
該便器本体近傍の人体を検知する人体検知手段と、
該便鉢に洗浄水を供給する洗浄装置と、
前記駆動装置及び該洗浄装置を制御する制御手段と
を有する便器設備において、
該制御手段は、前記人体検知手段が人体不検知となったときに、便蓋が開であり、且つ該人体検知手段が人体検知となってから人体不検知となる間に該洗浄装置が洗浄動作していない場合には、便蓋を閉とし、次いで該洗浄装置を洗浄動作させるものであることを特徴とする便器設備。
【請求項5】
便鉢を有した便器本体と、
該便器本体に開閉可能に設置された便蓋及び便座と、
該便蓋を開閉駆動する駆動装置と、
該便器本体近傍の人体を検知する人体検知手段と、
該便鉢に洗浄水を供給する洗浄装置と、
前記駆動装置及び該洗浄装置を制御する制御手段と
を有する便器設備において、
該制御手段は、前記人体検知手段が人体不検知となったときに、便蓋が開であり、且つ該人体検知手段が人体不検知となる直前の所定時間の間に該洗浄装置が洗浄動作していない場合には、便蓋を閉とし、次いで該洗浄装置を洗浄動作させるものであることを特徴とする便器設備。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、便蓋の少なくとも便鉢に臨む箇所を透明としたことを特徴とする便器設備。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項において、便蓋の少なくとも便鉢に臨む箇所を、透明と不透明とが切り替え可能な調光体にて構成し、この調光体の透明と不透明とを切り替える手段を設けたことを特徴とする便器設備。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項において、便蓋の少なくとも便鉢に臨む箇所が、前記制御手段によって透明と不透明とが切り替えられる調光体にて構成されており、
前記制御手段は、少なくとも前記洗浄装置の洗浄動作中は該調光体を透明とするものであることを特徴とする便器設備。
【請求項9】
便鉢を備えた便器本体と、該便器本体に設けられた便蓋とを有する便器設備において、
該便蓋の該便鉢に臨む箇所の少なくとも一部を、透明と不透明とが切り替え可能な調光体にて構成し、
該調光体の透明と不透明とを切り替える手段を設けたことを特徴とする便器設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−200198(P2008−200198A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38088(P2007−38088)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】