説明

保守情報収集システム

【課題】医用画像診断装置は、その本来の機能達成のために、各種の保守管理を必要とする。こうした保守管理は、装置の使用態様の増加に伴い、装置の設置後においても後発的に管理項目を追加することが必要となる。本発明は保守管理項目を装置の設置環境の影響を受けずに可能とする。
【解決手段】本発明の医用画像診断装置は、後発的な保守管理を行う事例を含む、保守管理を、インターネット系などの遠隔通信により実現可能とする。装置の設置現場に、電力線通信モデム(6、7、50)を設け、これに、装置の各種の保守管理用のモニタ15、16、17をハブ5を介して接続させた。インターネット系10には、メンテナンス側がつながっており、上記モデム(6、7、50)を介して通信を行い、モニタ検出信号の取り組みを行い、それを監視することで、保守管理を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断装置の通信、振動、温度等の保守情報収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像診断装置、例えばX線CT装置は、病院によって種々の場所に設置され、その使用環境も種々異なる。従って、X線CT装置を保守管理する側にとっても、こうした種々の状況に沿って保守情報を適格、迅速に収集する必要がある。
従来のX線CT装置の保守管理に関する公知文献には、特許文献1、2がある。
【特許文献1】特開2003−16212号公報
【特許文献2】特開2006−75387号公報
【0003】
特許文献1、2は、共にX線CT装置を設置する病院と保守管理する側(例えばサービスセンタ)とが異なる場所にあってのリモートサービスを前提にした文献である。文献1は、病院側とサービスセンタとの間で、保守情報や対策情報を双方向に交信可能として、保守管理を行う例である。文献2は、X線CT装置を構成する機器(X線管、コリメータ、高電圧発生手段、X線検出器、回転盤、寝台、データ収集回路、画像処理手段、それらを制御する制御装置)の、起動時の各種メンテナンスデータを収集し記憶させ、併せてそれらのデータをリモートサービス側に送信させるようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線CT装置の保守情報は、上記機器をモニタリングすることによって取得するが、モニタリング用のセンサを含む保守情報収集システムは、機器納入時に備え付けられている例、機器設置後に後発的に設置される例、がある。前者では機器に予め備え付けられるため、モニタリング精度に問題は少ない。後者では、新しい保守情報の取得のため既設の機器又はその近くにモニタリングシステムを設置させるため、モニタリングシステムの設置環境が問題となる。
【0005】
この設置環境には、X線源や各種制御のための高圧電源の存在、X線管球の周囲温度の変化、湿度の変化、粉塵の存在、回転体(ガントリ)の振動等がある。
保守情報は種々の設置環境の中で、確実、正確、迅速に取得され、そして取得された保守情報は、確実、正確、迅速にメンテナンス側に伝えられる必要がある。
一方、X線CT装置の使用態様が増し、従来と比較し、より多くの個所の保守管理情報が求められるようになってきたが、既設のモニタリングシステムだけではこの要求に答えられず、新しいモニタリングシステムを後発的に設置する必要性が高くなっている。
このような必要性が高まっている事情はX線CT装置を除くモダリティにおいても同様である。
【0006】
本発明の目的は、医用画像診断装置の設置環境に強く、保守情報の収集及び送信を、確実、正確、迅速に実現可能な保守情報収集装置を提供することにある。
更に本発明の目的は、装置の設置環境が悪くても、保守情報取得のために、後発的にその環境の中に設置した場合でも、保守情報の収集及び送信を、確実、正確、迅速に実現可能な保守情報収集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、医用画像診断装置の保守情報収集装置において、前記医用画像診断装置の複数部位に取り付けた保守情報検出用の複数のモニタリング用センサと、入力側に前記画像診断装置の交流電力線とこの交流電力線に上記複数のセンサ出力線がつながり、出力側に、交流電力線出力と上記複数のセンサ出力線のセンサ出力とを分離し交流電力線出力を配電用電力として出力し、センサ出力を通信信号として出力する電力線通信モデムと、この電力線通信モデムの出力する通信信号を、メンテナンス側につながる通信回線へ送出する送信手段と、を備える医用画像診断装置の保守情報収集装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、医用画像診断装置の保守情報を得るためのモニタからの保守情報の送信を、電力線通信モデムを介して行わせることとしたため、劣悪な周囲環境にあっても、確実、正確、迅速に情報収集及びその送信が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、医用画像診断装置の1つのモダリティであるX線CT装置の保守情報収集システムを示す。X線CT装置100は、本体200と再構成等処理部(図示せず)とより成る。本体200は、ガントリ、被検体搭載用ベッド、ガントリの回転体に取りつけた互いに対向関係にあるX線管とX線検出器、並びにX線検出器で検出した被検体透過X線を電気信号として取り出し、AD変換しデータとする信号処理部を有する。再構成等処理部は、この信号処理部からのデータから断層像の再構成を行う再構成部、並びこの断層像を表示する表示部、データ記憶部、更に各種の操作を行う操作部、等より成る。
なお、X線CT装置以外のモダリティも、被検体へX線、電磁波、超音波等のエネルギー媒体を照射し、被検体から発せられる信号を検出して、信号処理を行って、診断用画像を得るものであり、X線CT装置と似た構成となっている。
【0010】
X線CT装置100の本体200の保守対象を図1では信号処理部11、X線管球12、ガントリ13をそれぞれ分図しているが、これは機能的にみたためであり、構造を意味していない。本実施形態においては、それぞれに近接してモニタリング用センサを設けたので、以下説明する。
【0011】
信号処理部11…ガントリの回転体から、X線検出器で検出されたX線対応の信号がアナログ又はディジタル形式で、静止体側へ送られる。この送り方は光信号であり、回転体は光送信ユニットを持ち、静止体はそれを受信する光受信ユニットを持つ。かかる、光送信ユニットと光受信ユニット間の光通信の監視は保守情報の中で極めて重要である。上記光通信は、計測結果の送出であり、伝送誤りは絶対に避けたいこと、光通信の故にチリや埃の影響を受けやすくその影響をチェックしたいこと、等による。
図1で、信号処理部11の近くにある光通信路の監視のために設けたのが光モニタ(センサ)15である。
【0012】
X線管球12…高電圧(例えば200V)印加で電流が流れ、発熱する。この発熱によりX線管球12の特性が変わる。そこで保守情報として管球温度を検出する手段が、X線管球12の近くに設けた温度モニタ16である。また管球は陽極回転系の振動もモニタリング対象となる。
【0013】
ガントリ13…回転体の回転振動、静止体側のその回転振動による影響も保守管理の重要な要素である。そこでガントリ13の回転体の近くに振動検出モニタ17を設けて振動を監視する。
【0014】
それ以外の事例…湿度、寝台の位置、X線検出器の感度等がある。
このX線CT装置本体200に電源を供給しているのが、図1の電力供給源1、AC電力線2、20、電源トランス3、AC−DC電源ユニット4、DC電力線14である。電源トランス3では電力供給源1から供給されたAC電圧に対して所定の変圧を行い、この出力をAC−DC電源ユニット4へ送る。AC−DC電源ユニット4は、いわゆるコンバータであって、電源トランス3の出力を入力して1又は複数の直流出力を得る。これらの直流出力を供給するのがDC電力線14であり、各装置11、12、13へとDC電源が供給される。
【0015】
図1で、各モニタ15、16、17の検出信号(データ)を取り込むために新しく設けられたものが、ハブ(HUB)5、電力線通信モデム子機6、電力線通信モデム親機7である。電力線通信モデムとは、電力線、特にAC電力線に通信信号(データ)を乗せて通信するときのモデムを云う。本発明では、新しく通信回線を設ける手間をはぶくと共に、X線CT装置に必ず設置されている電力線を利用すべく、電力線通信モデムを使用する点を特徴としている。
【0016】
電力線通信モデム子機6及び親機7は、電源トランス3の出力側の電力線20に設けられる。電源トランス3は、その周波数特性により電力線通信モデムにおいて電力線に電磁結合された通信信号が、電力供給源1に影響を与えないためのフィルタの役割を持つ。これにより、電力線通信系は、電力供給源1から分離され、装置内で閉じた通信回路が構成される。
【0017】
電力線通信モデム子機6は、モニタ15、16、17の検出信号(データ)をAC電力線に重畳させた状態で入力させるものである。これにより、AC電力(電圧、電流)に重畳した状態にて出力が行われ、親機7へと送られる。
【0018】
電力線通信モデム親機7は、センサ検出信号(データ)を含む電力をAC電力線20から入力し、モニタ検出信号(データ)と本来のAC電力とを分離して出力する。分離出力されるAC電力は、他の機器、例えばパソコン等の電源として使われる。分離出力されるセンサ検出信号(データ)は、ハブ(HUB)8を介してインターネット系10へと送られる。インターネット系10にはメンテナンス側があり、メンテナンス側は、このモニタ検出信号(データ)を、どのセンサのものか、何時の時点のものか等の付加情報と共に受け取り、メンテナンス情報として保存し、且つ緊急性のある事例にあっては直ちに点検や修理の担当者へ送る。また、X線CT装置現場にいる担当者による点検や修理が可能であれば、そのための必要な指示や必要な点検・修理情報を作成してインターネット系10を介してCT装置現場の担当者へ送る。更に、センサ15、16、17からメンテナンス側へ検出信号を送る事例の他に、メンテナンス側から時期や検出方法について指示を出すことを必要とする如きセンサ仕組みであれば、インターネット系10→ハブ8→モデム7、6→ハブ(HUB)5→モニタという経由で双方向通信を行う。
本構成は医用画像診断装置に一般的に採用可能である。
【0019】
図2は、X線CT装置の対向関係にあるX線管とX線検出器とを搭載して回転する回転系30とその周囲に設けた静止系40との間での光通信を行うときの適用例を示す。回転系30は、X線検出器の検出信号を送るための手段として送信ユニット31と送信プリズム32とを持ち、静止系40は、受信プリズム43と受信ユニット41、画像又は光モニタ42とを持つ。AC−DC電源ユニット4は、AC−DCへの電力変換を行うもので、その出力が送信ユニット31と受信ユニット41との電源となる。
本構成は静止部と回転部とを有し、それらの間で信号のやり取りを行うモダリティに採用可能である。
【0020】
電力線通信モデム50は、図1のモデム6、7に相当し、モニタ42の電源51とLAN通信信号52との分離及び併合を行う。LAN通信信号52とは、モニタ検出信号(データ)であり、双方向通信であればモニタ42への指示信号を含む。
図2で、送信プリズム32と受信プリズム43との間は、光信号54による通信がなされ、これは空気中に露出した状態で行う。それ故に、空気中のチリや埃53が通信に悪影響を及ぼす。そこで、モニタ42で通信状態やチリや埃の様子をモニタすることにした。
【0021】
図3は、ガントリの回転盤60へのモニタ取り付け例を示す図である。回転盤60の外周には遮蔽板金部61が形成され、内周には、送信部63が形成されている。この送信部63は、X線検出器(図示せず)からの検出データを取り込み、送信回路64から遮蔽板金部61に設けられている受信部65へ送出する。この検出データの送信部64から受信部65への伝送が光通信による。受信部65で受信した光信号は電気信号に変換されて、受信回路66へと送られる。
【0022】
ここで、送信回路63からの送信にあっては、図2で述べた送信プリズムを介して、受信部65にあっては、図2で述べた受信プリズムを介して行う。
遮蔽板金部61には、更に、画像・光モニタ62を設けて、受信部65のモニタリングを行う。画像・光モニタ62は、受信部の埃の蓄積具合を画像としてモニタリングし、且つ受信部の光信号レベル(振幅)をモニタリングする。これは1つのモニタで検知可能であるが、2つのモニタによって実現することもある。
【0023】
図4は、X線管球67のモニタ例を示す図である。X線管球67の固定具68の側面に、温度、異常音モニタ70を取り付けて、管球の温度上昇、及び管球内の回転子の異常音や振動の発生や状況をモニタリングする。これは2つの別々のモニタによる。
本構成はX線CT装置以外に、X線透視撮影装置等のX線管を用いる装置へ採用可能である。また温度上昇の問題に限定すれば、MRI装置のコイル部のモニタリングに採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のCT装置での保守情報収集装置の実施例図である。
【図2】本発明のCT装置での回転系と静止系との間での保守情報収集装置例を示す図である。
【図3】本発明のガントリでの信号送受信モニタ例図である。
【図4】本発明のX線管球でのモニタ例図である。
【符号の説明】
【0025】
1 電力供給源
3 電源トランス
4 AC−DC電源ユニット
6 電力線通信モデム子機
7 電力線通信モデム親機
15、16、17 モニタ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像診断装置の保守情報収集装置において、前記医用画像診断装置の複数部位に取り付けた保守情報検出用の複数のモニタリング用センサと、入力側に前記医用画像診断装置の交流電力線とこの交流電力線に上記複数のセンサ出力線がつながり、出力側に、交流電力線出力と上記複数のセンサ出力線のセンサ出力とを分離し交流電力線出力を配電用電力として出力し、センサ出力を通信信号として出力する電力線通信モデムと、この電力線通信モデムの出力する通信信号を、メンテナンス側につながる通信回線へ送出する送信手段と、を備える医用画像診断装置の保守情報収集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−11586(P2009−11586A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177186(P2007−177186)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】