説明

保安器

【課題】劣化表示用の表示器の構造を簡単にし、表示器の表示部分を大きくして外部からの劣化表示の目視を容易にする。
【解決手段】保安器1は、線路に接続されるジャック盤10と、このジャック盤10に対して着脱可能に接続されるSPDプラグ40とにより構成されている。SPDプラグ40内には、線路から侵入する異常電圧等を抑制する保護素子と、劣化によってその保護素子が発熱する異常時にその保護素子を回路から切り離す切り離し部62と、連結部材51と、保護素子の劣化状態を表示する表示器70と、表示窓44等とが設けられている。切り離し部62の動作と連動して、ばね69の付勢力により連結部材51が上昇し、表示用テープ75が、案内突起72−1,72−2間に押し込まれる。これにより、テープ75で覆われていた着色面73が露出し、この表示面73の個所が表示窓44から目視できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄道等で使用される交流380V電源回路に誘起される雷、サージ等の異常電圧や異常電流から、電源機器等の被保護機器を保護するためのサージ防護デバイス(Surge Protective Device、以下「SPD」という。)である電源用等の保安器に係り、特に、SPDプラグ内に設けられる保護素子の劣化表示機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電源用の保安器は、例えば、下記の特許文献1、2に記載されているように、電源線及び接地線に接続される端子等を有するジャック盤と、バリスタ(varistor)等の保護素子が収納されたSPDプラグとを備え、そのSPDプラグがジャック盤に対して挿入及び離脱可能な構成になっている。電源線から保安器へ異常電圧や異常電流が侵入すると、保護素子によってその異常電圧や異常電流が接地線側へ放電され、電源線に接続された電源機器が保護される。
【0003】
SPDプラグに収納された保護素子は、異常電流(即ち、インパルス電流)による動作回数の増加等に伴って特性が劣化すると、発熱して焼損することがある。そのため、保安器内に切り離し部が設けられている。切り離し部は、保護素子が劣化等によって発熱して焼損する前に、その保護素子を回路から切り離して発煙発火を防止するために設けられている。更に、SPDプラグ内には、保護素子の劣化状態を表示するための表示器が設けられている。表示器は、切り離し部の動作と連動して動作し、保護素子が回路から切り離されると、摺動(slide)機構又は揺動(to swing)機構により着色部材が移動して着色個所の色が変化し、この色変化を表示窓から露出させる構造になっている。
【0004】
作業者は、その色の変化を表示窓を通して外部から目視できるので、劣化したSPDプラグをジャック盤から抜き取り、新しいSPDプラグをジャック盤に挿入することにより、メンテナンス等を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−59888号公報
【特許文献2】特開2008−283065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の保安器では、次のような課題があった。
保安器内に設けられる表示器は、切り離し部の動作と連動して、摺動機構又は揺動機構により着色部材を移動し、着色個所の色を変化させることにより、保護素子の劣化状態を表示する構造になっている。ところが、摺動機構又は揺動機構は、これを構成するための部品点数が多いので、構造が複雑であり、更に、大きな可動範囲が必要になるので、保安器の小型化が難しいという課題があった。又、保安器の小型化を図ろうとすると、表示器の表示部分を大きくできないので、着色個所の色の変化を外部から目視しづらいという課題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決し、切り離し部の動作と連動して動作する表示器の構造を簡単にして、保安器を小型化でき、しかも、表示器の表示部分を大きくして外部からの目視を容易にできる保安器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保安器は、線路に接続されるジャック盤と、前記ジャック盤に対して着脱(attach and detach)可能に接続され、前記線路に伝播する異常電圧及び異常電流を抑制するプラグと、を備えている。
【0009】
ここで、前記プラグは、前記ジャック盤から侵入する前記異常電圧及び前記異常電流を抑制する保護素子と、前記保護素子に接続され、正常時には前記保護素子を回路に接続し、前記保護素子が発熱する異常時には前記保護素子を前記回路から切り離す切り離し部と、先端部を有し、前記切り離し部に連動して、前記正常時には前記先端部が第1の場所に位置し、前記異常時には前記先端部がばね力によって、前記第1の場所から離れた第2の場所へ直線状に移動する連結部材と、前記連結部材の前記先端部が前記第1の場所に位置する時には第1の色を表示し、前記連結部材の前記先端部が前記第2の場所に移動した時には前記第1の色とは異なる第2の色を表示する表示器と、前記第1及び第2の色の変化を外部から目視可能な表示窓とを有している。
【0010】
前記表示器は、前記連結部材の前記先端部が挿入及び離脱可能に挿入される挿入領域と、前記挿入領域の両端に対向して配置されて前記挿入領域を形成する第1及び第2の案内突起と、前記第2の案内突起の外側に形成された前記第2の色の着色面と、前記第1の案内突起、前記挿入領域、前記第2の案内突起、及び前記着色面を覆うように掛け渡され、前記挿入領域に前記先端部が挿入されると前記挿入領域内に押し込まれて、前記着色面を露出させる前記第1の色の表示用テープと、を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保安器によれば、切り離し部の動作に連動して、ばね力により連結部材の先端部が直線状に移動し、第1及び第2の案内突起により形成される挿入領域内に、表示用テープを押し込む構成になっている。そのため、切り離し部の動作と連動して動作する表示器の構造が簡単であり、保安器を小型化できる。しかも、連結部材の先端部における移動距離に対して、表示用テープが例えば2倍の距離だけ移動し、この表示用テープにより覆われていた着色面が露出する構成になっている。そのため、連結部材の先端部における小さな移動距離に対して、着色面を覆っている表示用テープを大きく移動させることができるので、表示器の表示部分を大きくすることが可能になり、外部からの目視を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の実施例1における保安器の全体の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は図1の保安器1においてジャック盤10とSPDプラグ40との分離状態を示す斜視図である。
【図3】図3は図2中のSPDプラグ40を底面から見た斜視図である。
【図4A】図4Aは図1の保安器1の正面図である。
【図4B】図4Bは図1の保安器1の平面図である。
【図4C】図4Cは図1の保安器1の左側面図である。
【図4D】図4Dは図1の保安器1の右側面図である。
【図4E】図4Eは図1の保安器1の底面図である。
【図5A】図5Aは図4Aの保安器1の縦断面図である。
【図5B】図5Bは図4Bの保安器1の横断面図である。
【図5C】図5Cは図4Dの保安器1の縦断面図である。
【図5D】図5Dは図4Aの保安器1の背面から見た縦断面図である。
【図6A】図6Aは図2中のジャック盤10の正面図である。
【図6B】図6Bは図2中のジャック盤10の平面図である。
【図6C】図6Cは図2中のジャック盤10の左側面図である。
【図6D】図6Dは図2中のジャック盤10の右側面図である。
【図6E】図6Eは図2中のジャック盤10の底面図である。
【図7A】図7Aは図2中のSPDプラグ40の正面図である。
【図7B】図7Bは図2中のSPDプラグ40の平面図である。
【図7C】図7Cは図2中のSPDプラグ40の左側面図である。
【図7D】図7Dは図2中のSPDプラグ40の右側面図である。
【図7E】図7Eは図2中のSPDプラグ40の底面図である。
【図8A】図8Aは図7AのSPDプラグにおける正常時の内部構造の一部を省略した斜視図である。
【図8B】図8Bは図7AのSPDプラグにおける異常時の内部構造の一部を省略した斜視図である。
【図9A】図9Aは図8AのSPDプラグにおける正常時の内部構造の一部を省略及び切断した斜視図である。
【図9B】図9Bは図8BのSPDプラグにおける異常時の内部構造の一部を省略及び切断した斜視図である。
【図10】図10は図9A中の切り離し部を示す斜視図である。
【図11A】図11Aは図9A中の表示器における正常時の内部構造を示す斜視図である。
【図11B】図11Bは図9B中の表示器における異常時の内部構造を示す斜視図である。
【図12】図12は図1の保安器1の回路図である。
【図13】図13は図12の保安器1の使用例を示す概略の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0014】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における保安器の全体の外観を示す斜視図である。更に、図2は、図1の保安器1においてジャック盤10とSPDプラグ40との分離状態を示す斜視図である。
【0015】
この保安器1は、線路(例えば、電源線)に侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流を抑制して電源機器等の被保護機器を保護するための電源用保安器であり、ジャック盤10と、プラグ(例えば、SPDプラグ)40とを備え、図2中の矢印で示すように、そのSPDプラグ40がジャック盤10に対して挿入及び離脱可能に挿着される構造になっている。
【0016】
図3は、図2中のSPDプラグ40を底面から見た斜視図である。図4A〜図4Eは、図1に示す保安器1の5面図である。図4A〜図4Eの5面図の内、図4Aは保安器1の正面図、図4Bは保安器1の平面図、図4Cは保安器1の左側面図、図4Dは保安器1の右側面図、及び、図4Eは保安器1の底面図である。
【0017】
図5A〜図5Dは、図4A〜図4Eの保安器1の断面を示す4面図である。図5A〜図5Dの4面図の内、図5Aは図4Aの保安器1の縦断面図、図5Bは図4Bの保安器1の横断面図、図5Cは図4Dの保安器1の縦断面図、及び、図5Dは図4Aの保安器1の背面から見た縦断面図である。
【0018】
図6A〜図6Eは、図2中に示すジャック盤10の5面図である。図6A〜図6Eの5面図の内、図6Aはジャック盤10の正面図、図6Bはジャック盤10の平面図、図6Cはジャック盤10の左側面図、図6Dはジャック盤10の右側面図、及び、図6Eはジャック盤10の底面図である。
【0019】
更に、図7A〜図7Eは、図2中のSPDプラグ40の5面図である。図7A〜図7Eの5面図の内、図7AはSPDプラグ40の正面図、図7BはSPDプラグ40の平面図、図7CはSPDプラグ40の左側面図、図7DはSPDプラグ40の右側面図、及び、図7EはSPDプラグ40の底面図である。
【0020】
図2、図4A〜図4E、及び図6A〜図6Eに示すように、ジャック盤10は、SPDプラグ40を挿入及び離脱可能に収容するためのプラグ収容部20aを有するジャックケース20を有している。ジャックケース20は、略箱形の基台部21と、この基台部21の両側面から上方向に延設された一対の側壁部22−1,22−2とにより構成されている。これらの基台部21及び側壁部22−1,22−2により囲まれた領域により、プラグ収容部20aが形成されている。図6A及び図6Eに示すように、基台部21の底面には、固定爪23とレールストッパである移動爪24とが一定距離離れて対向して設けられている。移動爪24は、図示しないばねにより、固定爪23の方向へ付勢(to be spring biased)されている。これらの固定爪23と移動爪24とにより、例えば、図示しないDINレールを挟持し、そのDINレールに対してジャック盤10を取り外し可能に固定する構造になっている。DINレールとは、DIN規格で定められた例えば35mm幅の機器取り付け金具である。
【0021】
図6Cに示すように、一方の側壁部22−1の外側面には、例えば4つのケーブル導入孔25−11〜25−14が設けられている。図6Bに示すように、一方の側壁部22−1の上面には、2つの螺子用開口孔26−11,26−12が形成されている。各螺子用開口孔26−11,26−12内には、端子螺子27−11,27−12がそれぞれ取り付けられている。ケーブル導入孔25−11又は25−12に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−11により固定されるようになっている。同様に、ケーブル導入孔25−13又は25−14に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−12により固定されるようになっている。
【0022】
図6Dに示すように、他方の側壁部22−2の外側面には、例えば4つのケーブル導入孔25−21〜25−24が設けられている。図6Bに示すように、他方の側壁部22−2の上面には、2つの螺子用開口孔26−21,26−22が形成されている。各螺子用開口孔26−21,26−22内には、端子螺子27−21,27−22がそれぞれ取り付けられている。ケーブル導入孔25−21又は25−22に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−22により固定されるようになっている。同様に、ケーブル導入孔25−23又は25−24に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−21により固定されるようになっている。
【0023】
図6A、図6B、図6D、図6Eに示すように、他方の側壁部22−2の外側面において、ケーブル導入孔25−24の下方向の位置には、交換識別用端子28が突設されている。
【0024】
図2及び図6Bに示すように、プラグ収容部20aの一方の側面(即ち、一方の側壁部22−1の内側面)において、中央の上部の位置には、第1の係合部(例えば、係合凸部)29−1が突設されている。係合凸部29−1の両側には、縦方向に延びる断面凸状の案内レール30−11,30−12が突設されている。同様に、プラグ収容部20aの他方の側面(即ち、他方の側壁部22−2の内側面)において、中央の上部の位置には、第1の係合部(例えば、係合凸部)29−2が突設されている。係合凸部29−2の一方の側には、縦方向に延びる断面凸状の案内レール30−21が突設されている。
【0025】
プラグ収容部20aの底面(即ち、基台部21の上面)には、2つの円形のジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2が一定距離離れて対向して形成されている。各挿入孔31−1,31−2内には、ジャックコンタクト34−1,34−2がそれぞれ取り付けられている。各ジャックコンタクト34−1,34−2は、ばね性を有する図示しない円筒部を有し、ジャックケース20内の金具に固定されている。各ジャックコンタクト34−1,34−2の円筒部には、長手方向に沿って図示しない複数の割溝が形成され、この割溝により、その円筒部の口径方向に対する弾力性を持たせてばね性を発揮させている。
【0026】
基台部21の上面の中央には、方形の切り離し連結部材用挿入孔32が形成されている。更に、ジャックコンタクト用挿入孔31−1及び切り離し部材用挿入孔32の近傍には、方形の誤挿入防止用挿入孔33が形成されている。
【0027】
図2、図3、及び図7A〜図7Eに示すように、SPDプラグ40は、略立方体状のプラグケース41を有している。プラグケース41の上面及び4側面は閉塞され、底面に開口部41aが設けられている。プラグケース41の側面の下部には、複数の嵌合孔42が形成されている。開口部41aは、略方形の基板43により閉じられている。基板43の側面には、図示しない複数の突起部が形成され、その突起部が嵌合孔42に嵌入することにより、基板43が開口部41aに対して取り外し可能に固定されている。
【0028】
プラグケース41の上面には、内部回路の劣化状態を表示するための表示窓44が形成されている。
【0029】
図7Cに示すように、プラグケース41の左側面は、ジャックケース20における一方の側壁部22−1の内側面に対応している。このプラグケース41の左側面の上半部において、略U字形状の切り欠き溝45−1が形成され、この切り欠き溝45−1により、側面に対して略垂直方向に移動可能な弾力性を有する可動部46−1が形成されている。可動部46−1の下部には、第2の係合部(例えば、係合凹部)47−1が設けられている。係合凹部47−1は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿着時において、ジャックケース20側の係合凸部29−1を受け入れ、その係合凸部29−1に対して嵌合及び離脱可能に係合するものである。
【0030】
プラグケース41の左側面の下半部において、中央の縦方向には案内溝48−1が形成されている。案内溝48−1は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の係合凸部29−1を受け入れて案内するものである。案内溝48−1の両側には、一対の案内溝48−11,48−12が縦方向に形成されている。案内溝48−11,48−12は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の案内レール30−11,30−12を受け入れて案内するものである。
【0031】
図7Dに示すように、プラグケース41の右側面は、ジャックケース20における他方の側壁部22−2の内側面に対応している。このプラグケース41の右側面の上半部において、略U字形状の切り欠き溝45−2が形成され、この切り欠き溝45−2により、側面に対して略垂直方向に移動可能な弾力性を有する可動部46−2が形成されている。可動部46−2の下部には、第2の係合部(例えば、係合凹部)47−2が設けられている。係合凹部47−2は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿着時において、ジャックケース20側の係合凸部29−2を受け入れ、その係合凸部29−2に対して嵌合及び離脱可能に係合するものである。
【0032】
プラグケース41の右側面の下半部において、中央の縦方向には案内溝48−2が形成されている。案内溝48−2は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の係合凸部29−2を受け入れて案内するものである。案内溝48−2の片側には、案内溝48−21が縦方向に形成されている。案内溝48−21は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の案内レール30−21を受け入れて案内するものである。
【0033】
図3及び図7Eに示すように、プラグケース41の底面の基板43は、ジャックケース20における基台部21の上面に対応している。基板43には、2つのプラグ端子49−1,49−2が一定距離離れて対向して突設されている。各プラグ端子49−1,49−2は、ジャックケース20側の各ジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2を通して各ジャックコンタクト34−1,34−2に挿入されるものである。
【0034】
各プラグ端子49−1,49−2は、円柱部を有し、基板43の内側に設けられた図示しない金具に固定されている。各プラグ端子49−1,49−2の円柱部は、各ジャックコンタクト34−1,34−2の図示しない円筒部内に挿入及び離脱可能に嵌入される。
【0035】

基板43の中央には、方形の貫通孔50が形成されている。貫通孔50には、SPDプラグ40内に取り付けられた切り離し用連結部材51における方形の棒状をなす下端部51bが突出及び後退可能に挿入されている。連結部材51の下端部51bは、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の切り離し連結部材用挿入孔32に挿入されるものである。
【0036】
プラグ端子49−1及び貫通孔50の近傍には、誤挿入防止片52が突設されている。誤挿入防止片52は、ジャック盤10に適合するSPDプラグ40の型式毎に、異なる形状や異なる色に着色されており、ジャック盤10への適合した型式のSPDプラグ40の挿入時において、ジャック盤10側の誤挿入防止用挿入孔33に嵌入されるものである。誤挿入防止片52が挿入孔33に挿入されて、その誤挿入防止片52と挿入孔33とが嵌合すれば、ジャック盤10の型式とSPDプラグ40の型式とが適合する。これにより、型式の異なるジャック盤10とSPDプラグ40との誤装着を防止できる構造になっている。
【0037】
貫通孔50の近傍には、測定用端子53が取り付けられている。測定用端子53は、内部回路の良否等を測定するために使用する端子である。
【0038】
図5A〜図5Dに示すように、ジャック盤10におけるジャックケース20の基台部21内には、マイクロスイッチ等の切り替えスイッチ35が設けられている。切り替えスイッチ35は、SPDプラグ40内に取り付けられた連結部材51の下端部51bにより押下されて、接点が切り替えられるスイッチである。この切り替えスイッチ35は、交換識別用端子28に接続されている。交換識別用端子28は、切り替えスイッチ35の接点における接続状態の電気信号を、外部へ送信するための端子である。
【0039】
ジャックケース20における一方の側壁部22−1内には、各端子螺子27−11,27−12をねじ込むための端子金具36−1及び締め付け金具37−1がそれぞれ取り付けられている。同様に、ジャックケース20における他方の側壁部22−2内には、各端子螺子27−21,27−22をねじ込むための端子金具36−2及び締め付け金具37−2がそれぞれ取り付けられている。
【0040】
図8Aは、図7AのSPDプラグ40における正常時の内部構造の一部を省略した斜視図である。図8Bは、図7AのSPDプラグ40における異常時の内部構造の一部を省略した斜視図である。図9Aは、図8AのSPDプラグ40における正常時の内部構造の一部を省略及び切断した斜視図である。図9Bは、図8BのSPDプラグ40における異常時の内部構造の一部を省略及び切断した斜視図である。
【0041】
図10は、図9A中の切り離し部を示す斜視図である。図11Aは、図9A中の表示器における正常時の内部構造を示す斜視図である。更に、図11Bは、図9B中の表示器における異常時の内部構造を示す斜視図である。
【0042】
図5A〜図5D、図8A、図8B、図9A及び図9Bに示すように、SPDプラグ40におけるプラグケース41内には、線路(例えば、電源線)側からプラグ端子49−1を介して侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流を抑制あるいは吸収するための保護素子が設けられている。保護素子としては、例えば、避雷管である略円板状のアレスタ60と、このアレスタ60に対して直列に接続された略方形板状のバリスタ部61とを有している。アレスタ60は、プラグ端子49−1から侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流によって放電するものである。バリスタ部61は、異常電圧や異常電流が入力されると、入出力間の抵抗値が小さくなってその入出力間が短絡状態になり、異常電圧や異常電流の消滅後は、入出力間の抵抗値が大きくなってその入出力間が絶縁状態になる素子である。アレスタ60とバリスタ部61との間には、切り離し部62が接続されている。切り離し部62は、バリスタ部61が、劣化等によって発熱して焼損する前に、そのバリスタ部61を回路から切り離して発煙発火を防止するために設けられている。
【0043】
アレスタ60の一方の電極は、接続金具63−1を介して電源線(L/N)側のプラグ端子49−1に接続されている。アレスタ60の他方の電極は、接続金具63−2を介して測定用端子53に接続されている。バリスタ部61の一方の電極は、スペーサ64上に固定された端子金具65−1を介して、切り離し部62に接続されている。バリスタ部61の他方の電極は、端子金具65−2を介して接地(PE)側のプラグ端子49−2に接続されている。
【0044】
図5D、図8A、図8B、図9A、図9B及び図10に示すように、切り離し部62は、金属製の雌形の切り離しジャック62−1と、図10中の矢印で示すように、その切り離しジャック62−1に対して挿入及び離脱可能に嵌入される金属製の雄形の切り離しプラグ62−2とにより構成されている。切り離しジャック62−1は、端子金具65−1を介してバリスタ部61に接続されている。切り離しプラグ62−2は、図8B及び図9B中の矢印で示す方向に付勢された板ばね状の切り離し金具66と、固定螺子67−1とを介して、接続金具63−2に接続されている。
【0045】
切り離し部62における切り離しジャック62−1は、ばね性を有する円筒部62−1aと、この円筒部62−1aの上部側に形成された複数の割溝62−1bと、その円筒部62−1aの下部側の内部に形成された雌ねじ62−1cとにより構成されている。円筒部62−1aの上部側における開口個所の内側には、テーパ62−1dが形成されている。複数の割溝62−1bは、円筒部62−1aの上部側の開口個所から下部側方向へ延びる細長い溝である。この複数の割溝62−1bにより、円筒部62−1aの上部側における口径方向に対する弾力性を持たせてばね性を発揮させている。円筒部62−1aの下部側は、雌ねじ62−1cに螺入された固定螺子67−2により、端子金具65−1に固定されている。
【0046】
切り離し部62における切り離しプラグ62−2は、円柱部62−2aと、この円柱部62−2aから延設されたフランジ62−2b及び雄螺子62−2cとにより構成されている。円柱部62−2aは、円筒部62−1aの内径と略同一の外径を有し、その円筒部62−1a内に挿入及び離脱可能に嵌入される部材である。雄螺子62−2cは、フランジ62−2bから延設された部材であり、切り離し金具66の一端部に形成された貫通孔に挿入され、ナット68によってその切り離し金具66の一端部に固定されている。切り離し金具66の他端部は、固定螺子67−1により、接続金具63−2に固定されている。
【0047】
切り離し部62における切り離しジャック62−1と切り離しプラグ62−2との接合個所は、加熱によって溶融する接合材(例えば、半田材)により固定されている。
【0048】
切り離しプラグ62−2は、切り離し金具66を介して、切り離し用連結部材51に連結されている。連結部材51は、略細長い板状をなし、方形の板状をなす先端部(例えば、上端部)51aと、方形の棒状をなす下端部51bと、その上端部51aと下端部51bとの間に形成された開口部51cとを有している。下端部51bは、ジャック盤10側の挿入孔32に挿入されている。開口部51cには、切り離し金具66が貫通している。
【0049】
この連結部材51は、垂直方向に上下動可能に配置され、コイルばね69によって上方向に付勢されている。劣化等によってバリスタ部61が発熱すると、この熱が端子金具65−1を介して、切り離しジャック62−1と切り離しプラグ62−2との接合個所へ伝わり、その接合個所の半田材が溶融する。半田材が溶融すると、図8B及び図9B中の矢印で示すように、コイルばね69によって連結部材51が押し上げられ、切り離しプラグ62−2が切り離しジャック62−1から抜け出す。これにより、アレスタ60とバリスタ部61との間が電気的に遮断され、バリスタ部61が回路から切り離される。
【0050】
バリスタ部61において劣化等の異常が発生すると、連結部材51の下端部51bが上昇するので、切り替えスイッチ35の接続状態が切り替わり、その接続状態の電気信号が、交換識別用端子28から外部へ送信される。
【0051】
図5C、図5D、図8A、図8B、図9A、図9B、図11A及び図11Bに示すように、連結部材51における上端部51aの真上には、表示器70が設けられている。表示器70は、連結部材51の上端部51aが上昇すると、これに連動して表示用テープ75が移動して着色個所の色が変化し、この色変化を表示窓44から露出させる構造になっている。
【0052】
即ち、表示器70は、連結部材51の上端部51aが挿入及び離脱可能に挿入される挿入領域71と、この挿入領域71の両端に対向して配置されてその挿入領域71を形成する第1及び第2の案内突起72−1,72−2と、を有している。第1及び第2の案内突起72−1,72−2は、それぞれ方形の板状をなし、その第2の案内突起72−2の外側に、第2の色(例えば、赤色)の着色面73が形成されている。着色面73は、プラグケース41の上面に形成された表示窓44から目視可能な位置に設けられている。第1の案内突起72−1の外側には、テープ引っ掛け用の鉤形の係止部74−1が設けられている。更に、着色面73の外側にも、テープ引っ掛け用の鉤形の係止部74−2が設けられている。
【0053】
第1の案内突起72−1、挿入領域71、第2の案内突起72−2、及び着色面73には、これらを覆うように第1の色(例えば、緑色)の表示用テープ75が掛け渡されている。テープ75の一端は、係止部74−1に引っ掛けられ、そのテープ75の他端も、係止部74−2に引っ掛けられている。そのため、テープ75は、振動では外れない。
【0054】
第1及び第2の案内突起72−1,72−2間におけるテープ75の真下の第1の場所には、連結部材51の上端部51aが位置している。図11B中の矢印で示すように、連結部材51の上端部51aが、挿入領域71内の第2の場所へ上昇すると、テープ75がその挿入領域71内へ押し上げられる。すると、テープ75の他端が係止部74−2から外れて、図11B中の矢印方向へ移動し、そのテープ75が挿入領域71内に押し込まれる。これにより、テープ75の他端側に覆われていた着色面73が露出し、その着色面73を表示窓44から目視可能になる。
【0055】
図12は、図1に示す保安器1の回路図である。
ジャックケース20の基台部21内には、切り替えスイッチ35が設けられている。切り替えスイッチ35は、切り離し連結部材用挿入孔32の真下に配置され、常時閉路端子35aと、常時開路端子35bと、共通端子35cと、可動ばね片35dとにより構成されている。可動ばね片35dは、一端が共通端子35cに接続され、他端に接点が設けられている。可動ばね片35dは、連結部材51の下端部51bにより押し下げられると、他端側の接点が常時開路端子35b側の接点に接触し、連結部材51が上昇すると、図12中の矢印で示すように、その他端側の接点がばね力により上昇して常時閉路端子35a側の接点に接触する構造になっている。この切り替えスイッチ35は、交換識別用端子28に接続されている。
【0056】
交換識別用端子28は、3つの端子28−1〜28−3を有し、この端子28−1が常時開路端子35bに接続され、端子28−2が共通端子35cに接続され、端子28−3が常時閉路端子35aに接続されている。そのため、切り替えスイッチ35における接続状態の電気信号を、端子28−1〜28−3から外部へ送信することが可能になっている。
【0057】
プラグケース41内には、電源線に接続されたケーブルから、ライン(L/N)側の端子螺子27−11,27−12、ジャックコンタクト34−1、及びプラグ端子49−1を介して侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流を抑制あるいは吸収するためのアレスタ(Ar)60とバリスタ部61とが設けられている。アレスタ60及びバリスタ部61は、ライン(L/N)側プラグ端子49−1と接地(PE)側プラグ端子49−2との間に直列に接続されている。バリスタ部61は、例えば、2つのバリスタ(Va)61−1,61−2を有し、これらのバリスタ61−1,61−2が並列に接続されている。
【0058】
ライン(L/N)側プラグ端子49−1は、ジャックコンタクト34−1及びライン(L/N)側の端子螺子27−11,27−12を介して、電源線側に接続される。接地(PE)側プラグ端子49−2は、ジャックコンタクト34−2及び接地(PE)側の端子螺子27−21,27−22を介して、グランドGND側に接続される。
【0059】
保護素子としてアレスタ60及びバリスタ61−1,61−2を組み合わせて使用している理由は、次の通りである。
【0060】
即ち、電源回路にアレスタ60のみを使用した場合、異常電流(即ち、インパルス電流)でアレスタ60が放電した後、そのインパルス電流消滅後も交流電流により放電が継続する続流現象が起こり、アレスタ60の寿命が短縮したり、あるいは焼損に至ることもある。このような続流の遮断のために、アレスタ60とバリスタ61−1,61−2とを直列に組み合わせている。又、バリスタ61−1,61−2のみを電源回路に使用した場合には、インパルス電流による動作回数の増加に伴って特性が劣化すると、漏れ電流が増加し、遂には、焼損に至ることも考えられるので、漏れ電流遮断のために、アレスタ60をバリスタ61−1,61−2と直列に接続している。バリスタ61−1,61−2の数は、インパルス電流の大きさに応じて設定される。
【0061】
アレスタ60とバリスタ部61との間には、測定用端子53及び切り離し部62が接続されている。切り離し部62は、バリスタ部61が劣化等によって発熱して焼損する前に、図12中の矢印で示すように、そのバリスタ部61を回路から切り離して発煙発火を防止するために設けられている。切り離し部62は、バリスタ部61に接続された切り離しジャック62−1と、アレスタ60に接続された切り離しプラグ62−2とにより構成されている。切り離しジャック62−1と切り離しプラグ62−2との接合個所は、加熱によって溶融する半田材により固定されている。
【0062】
切り離しプラグ62−2は、切り離し用連結部材51に連結されている。連結部材51は、垂直方向に上下動可能に配置され、図12中の矢印で示すように、コイルばね69によって上方向に付勢されている。劣化等によってバリスタ部61が発熱すると、この熱が端子金具65−1を介して、切り離しジャック62−1と切り離しプラグ62−2との接合個所へ伝わり、その接合個所の半田材が溶融する。半田材が溶融すると、コイルばね69によって連結部材51が押し上げられ、切り離しプラグ62−2が切り離しジャック62−1から抜け出す。これにより、アレスタ60とバリスタ部61との間が電気的に遮断され、バリスタ部61が回路から切り離される。
【0063】
バリスタ部61において劣化等の異常が発生すると、連結部材51の下端部51bが上昇するので、切り替えスイッチ35の接続状態が切り替わり、その接続状態の電気信号が、交換識別用端子28から外部へ送信される。連結部材51の上端部51aの真上には、表示器70が設けられている。
【0064】
図13は、図12の保安器1の使用例を示す概略の回路図である。
例えば、接地相無しの三相3線式の交流400V用の電源線80−1〜80−3に、電源機器等の被保護機器81が接続されている。雷、サージ等の異常電圧や異常電流から被保護機器81を保護するために、図12に示す保安器1が3台使用されている。3台の保安器1−1〜1−3は、図示しないDINレールに取り付けられている。保安器1−1では、ライン(L/N)側の端子螺子27−11個所が、ケーブルを用いて電源線80−3に接続され、接地(PE)側の端子螺子27−22個所が、ケーブルを用いてグランドGNDに接続されている。同様に、他の保安器1−2,1−3も、電源線80−2,80−1とグランドGNDとの間に、それぞれ接続されている。
【0065】
(保安器の取り付け方法)
本実施例1の保安器1を図示しないDINレールに取り付ける方法を説明する。
【0066】
図6A及び図6Eに示すように、ジャック盤10の底面の移動爪24を、図示しないばねの付勢力に抗して、手で右方向へ移動させ、固定爪23と移動爪24との間に、DINレールの上部を挿入する。移動爪24から手を離せば、図示しないばねの付勢力により、移動爪24が左方向へ移動する。これにより、固定爪23と移動爪24とにより、DINレールの上部が挟持され、ジャック盤10がDINレール上に固定される。
【0067】
図5A、図5D、図6C、図6D及び図13に示すように、ジャック盤10において、例えば、電源線80−3に接続した図示しないケーブルの端末部を、ライン(L/N)側のケーブル導入孔25−12に挿入し、端子螺子27−11を締め付け金具37−1に締め付けてそのケーブルを接続する。更に、グランドGNDに接続した図示しないケーブルの端末部を、接地(PE)側のケーブル導入孔25−22に挿入し、端子螺子27−22を締め付け金具37−2に締め付けてそのケーブルを接続する。
【0068】
SPDプラグ40をジャック盤10に挿着する方法を説明する。
図2、図6A、図6B、及び図7A〜図7Eに示すように、SPDプラグ40において、両側面の可動部46−1,46−2付近を手で把持し、ジャック盤10側の案内レール30−11,30−12,30−21を、SPDプラグ40側の案内溝48−11,48−12,48−21内に挿入し、SPDプラグ40を押し下げる。すると、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2が、SPDプラグ40側の案内溝48−1,48−2内を滑り、SPDプラグ40が降下していく。SPDプラグ40の底面が、ジャック盤10側の基台部21の上面まで降下すると、SPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2内に、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2が嵌入される。
【0069】
同時に、SPDプラグ40の底面から突出しているプラグ端子49−1,49−2、連結部材51の下端部51b、及び誤挿入防止片52が、ジャック盤10側のジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2、切り離し連結部材用挿入孔32、及び誤挿入防止用挿入孔33にそれぞれ挿入される。
【0070】
プラグ端子49−1,49−2がジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2に挿入されると、プラグ端子49−1,49−2の円柱部が、挿入孔31−1,31−2内に取り付けられたジャックコンタクト34−1,34−2の円筒部内に嵌入される。これにより、プラグ端子49−1,49−2と、挿入孔31−1,31−2内に取り付けられたジャックコンタクト34−1,34−2とが、電気的に接続される。
【0071】
次に、ジャック盤10に挿着したSPDプラグ40が劣化して、新品のSPDプラグ40に取り替える場合を説明する。
【0072】
図2、図4A、図6A、図6B、及び図7A〜図7Eに示すように、ジャック盤10に挿着されたSPDプラグ40において、両側面の可動部46−1,46−2を手で内側に押さえ、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2から、SPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2を離脱させる。そして、SPDプラグ40を上方へ引き抜くと、SPDプラグ40側の案内溝48−1,48−2,48−11,48−12,48−21が、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2、及び案内レール30−11,30−12,30−21に沿って上方に移動し、SPDプラグ40側の底面のプラグ端子49−1,49−2、連結部材51の下端部51b、及び誤挿入防止片52が、ジャック盤10側の挿入孔31−1,31−2,32,33からそれぞれ抜け出し、SPDプラグ40がジャック盤10から離脱する。
【0073】
その後、新品のSPDプラグ40をジャック盤10へ挿入する。
【0074】
(保安器の動作)
図13において、例えば、電源線80−3に雷、サージ等の異常電圧や異常電流が印加された場合、保安器1−1が動作してその異常電圧や異常電流が吸収され、被保護機器81が異常電圧や異常電流から保護される。この保護動作を図1〜図12に示す保安器1を参照しつつ説明する。
【0075】
図13の電源線80−3に雷、サージ等の異常電圧や異常電流が印加されると、図12に示す保安器1において、端子螺子27−11側からジャックコンタクト34−1及びプラグ端子49−1へ、その異常電圧や異常電流が侵入する。
【0076】
図6B、7A及び図7Eに示すように、雄側であるプラグ端子49−1、49−2の円柱部と、雌側であるばね性を有するジャックコンタクト34−1,34−2の円筒部とは、同心円上に位置し、嵌合によって電気的に接続されているので、侵入する異常電流(即ち、インパルス電流)がスムーズに流れる。
【0077】
ジャックコンタクト34−1及びプラグ端子49−1を流れるインパルス電流により、接続金具63−1を介して、アレスタ60が放電する。更に、接続金具63−2、切り離し金具66、切り離し部62、及び端子金具65−1を介して、バリスタ部61内のバリスタ61−1,61−2が導通する。そのため、そのインパルス電流が、端子金具65−2、プラグ端子49−2、ジャックコンタクト34−2及び端子螺子27−22を経由して、グランドGND側へ流れる。これにより、電源線80−1〜80−3に接続された被保護機器81が保護される。
【0078】
バリスタ部61が、劣化や過大なインパルス電流等によって発熱すると、この熱が、端子金具65−1を介して、切り離し部62における切り離しジャック62−1と切り離しプラグ62−2との接合個所へ伝わり、その接合個所の半田材が溶融する。半田材が溶融すると、コイルばね69によって連結部材51の上端部51a、開口部51c及び下端部51bが上昇する。開口部51cが上昇すると、この開口部51cを貫通している切り離し金具66の先端部が上昇し、この先端部にナット68で固定された切り離しプラグ62−2が、切り離しジャック62−1から抜け出す。これにより、アレスタ60とバリスタ部61との間が電気的に遮断されて、バリスタ部61が回路から切り離され、発煙発火が防止される。
【0079】
連結部材51の上端部51a及び下端部51bが上昇すると、この連結部材51の下端部51bに連動して、切り替えスイッチ35の接続状態が切り替わり、この接続状態の電気信号が、交換識別用端子28から外部へ送信される。
【0080】
更に、図9A、図9B、図11A及び図11Bに示すように、連結部材51の上端部51aが、低位置の第1の場所から高位置の第2の場所へ直線状に上昇すると、表示器70内の緑色の表示用テープ75が、第1及び第2の案内突起72−1,72−2間の挿入領域71内に押し込まれる。テープ75が挿入領域71内に押し込まれると、そのテープ75の他端が係止部74−2から外れて、左横方向(即ち、図中の矢印方向)へ移動する。この際、テープ75の他端は、連結部材51の上端部51aにおける上昇移動距離に対して、2倍の距離だけ左横方向へ移動する。テープ75の他端が左横方向へ移動すると、このテープ75により覆われていた赤色の着色面73が露出する。そのため、着色面73の個所が、正常時の緑色から劣化等の異常時の赤色に変化するので、この色の変化を表示窓44を通して目視でき、SPDプラグ40の交換時期を知ることができる。
【0081】
(実施例1の効果)
本実施例1の保安器1によれば、次の(1)、(2)のような効果がある。
【0082】
(1) 保安器1が正常状態の時には、切り離し部62において、切り離しプラグ62−2の円柱部62−2aが切り離しジャック62−1の円筒部62−1a内に嵌入しているので、その円筒部62−1aの内壁面方向に対する力に対して強く、切り離しジャック62−1と切り離しプラグ62−2とが、適度な強度で嵌合している。そのため、円筒部62−1aと円柱部62−2aとの接合個所を固定している半田材は、少量で足りる。劣化等によってバリスタ部61が発熱する異常時には、その発熱によって少量の半田材が容易に溶融するので、その発熱の検出感度が大きい。従って、劣化等によってバリスタ部61が発熱した時には、コイルばね69のばね力により、切り離しジャック62−1と切り離しプラグ62−2とを容易に分離でき、アレスタ60とバリスタ部61との間を遮断して、そのバリスタ部61を回路から的確に切り離すことができる。
【0083】
(2) 切り離しジャック62−1と切り離しプラグ62−2との分離に連動して、切り離し用連結部材51の上端部51aが直線状に上昇し、表示器70内の表示用テープ75を、第1及び第2の案内突起72−1,72−2間の挿入領域71に押し込む構成になっている。そのため、切り離し部62の動作と連動して動作する表示器70の構造が簡単であり、保安器1を小型化できる。
【0084】
しかも、連結部材51の上端部51aにおける上昇移動距離に対して、テープ75が2倍の距離だけ左横方向へ移動し、このテープ75により覆われていた赤色の着色面73が露出する。これにより、連結部材51の上端部51aにおける小さな上昇移動距離に対して、着色面73を覆っているテープ75を横方向へ大きく移動させることができるので、表示器70の表示部分を大きくすることが可能になり、外部からの目視を容易にできる。
【0085】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(f)のようなものがある。
【0086】
(a) 切り離し部62における切り離しジャック62−1及び切り離しプラグ62−2は、図示以外の他の形状、構造に変更してもよい。切り離しジャック62−1と切り離しプラグ62−2との接合個所を固定する接合材は、半田材に代えて、加熱によって溶融する樹脂材等を使用してもよい。
【0087】
(b) 切り離し部62に連動して動作する切り離し用連結部材51を図示以外の形状、構造に変更してもよい。連結部材51を付勢するコイルばね69は、これに代えて、板ばね等の他のばねを使用してもよい。又、コイルばね69あるいは他のばねは、これを省略して、切り離し金具66のばね力を利用して連結部材51を付勢する構造に変更してもよい。
【0088】
(c) 表示器70は、図示以外の形状、構造に変更してもよい。
【0089】
(d) ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2と、これと係合するSPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2とは、他の形状や構造に変更してもよい。例えば、ジャック盤10側に係合凹部47−1,47−2を設け、SPDプラグ40側に係合凸部29−1,29−を設けてもよい。
【0090】
(e) ジャック盤10及びSPDプラグ40は、図示以外の他の形状、構造、回路構成等に変更してもよい。例えば、図12に示す保安器1の回路において、アレスタ60をバリスタ部61の位置に接続し、バリスタ部61をアレスタ60の位置に接続してもよい。この際、プラグ端子49−1とバリスタ部61との間に、切り離し部62を接続してもよい。これにより、実施例1と同様の作用、効果を奏することができる。
【0091】
(f) 実施例では、電源用の保安器1について説明したが、本発明の保安器は、通信線等の他の線路に接続された通信機器等の他の被保護機器を保護する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0092】
1,1−1〜1−3 保安器
10 ジャック盤
20 ジャックケース
34−1,34−2 ジャックコンタクト
35 切り替えスイッチ
40 SPDプラグ
41 プラグケース
44 表示窓
49−1,49−2 プラグ端子
51 連結部材
60 アレスタ
61 バリスタ部
61−1,61−2 バリスタ
62 切り離し部
62−1 切り離しジャック
62−2 切り離しプラグ
69 コイルばね
70 表示器
71 挿入領域
72−1,72−2 案内突起
73 着色面
74−1,74−2 係止部
75 テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路に接続されるジャック盤と、
前記ジャック盤に対して着脱可能に接続され、前記線路に伝播する異常電圧及び異常電流を抑制するプラグと、
を備えた保安器において、
前記プラグは、
前記ジャック盤から侵入する前記異常電圧及び前記異常電流を抑制する保護素子と、
前記保護素子に接続され、正常時には前記保護素子を回路に接続し、前記保護素子が発熱する異常時には前記保護素子を前記回路から切り離す切り離し部と、
先端部を有し、前記切り離し部に連動して、前記正常時には前記先端部が第1の場所に位置し、前記異常時には前記先端部がばね力によって、前記第1の場所から離れた第2の場所へ直線状に移動する連結部材と、
前記連結部材の前記先端部が前記第1の場所に位置する時には第1の色を表示し、前記連結部材の前記先端部が前記第2の場所に移動した時には前記第1の色とは異なる第2の色を表示する表示器と、
前記第1及び第2の色の変化を外部から目視可能な表示窓とを有し、
前記表示器は、
前記連結部材の前記先端部が挿入及び離脱可能に挿入される挿入領域と、
前記挿入領域の両端に対向して配置されて前記挿入領域を形成する第1及び第2の案内突起と、
前記第2の案内突起の外側に形成された前記第2の色の着色面と、
前記第1の案内突起、前記挿入領域、前記第2の案内突起、及び前記着色面を覆うように掛け渡され、前記挿入領域に前記先端部が挿入されると前記挿入領域内に押し込まれて、前記着色面を露出させる前記第1の色の表示用テープと、
を有することを特徴とする保安器。
【請求項2】
前記切り離し部は、
前記ジャック盤の接地端子側に接続された円筒部を有する切り離しジャックと、
前記保護素子側に接続され、前記円筒部内に挿入及び離脱可能に嵌入される円柱部を有する切り離しプラグと、
前記円筒部と前記円柱部との接合個所を固定し、加熱によって溶融する接合材と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項3】
前記連結部材の前記先端部は、方形の板状をなし、
前記第1及び第2の案内突起は、それぞれ方形の板状をなすことを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項4】
前記線路は、電源線又は通信線であり、
前記保護素子は、単数又は複数のアレスタと、単数又は複数のバリスタと、アレスタ及びバリスタの組み合わせと、のいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項5】
前記プラグは、
前記保護素子、前記切り離し部、前記連結部材、及び前記表示器を収容するプラグケースを有し、
前記プラグケースの一部には、前記表示窓が設けられ、
前記ジャック盤は、
前記プラグケースを挿入及び離脱可能に装着するためのジャックケースを有し、
前記ジャックケース内には、前記ジャック盤の回路部品が収容されていることを特徴とする請求項1記載の保安器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−84320(P2012−84320A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228576(P2010−228576)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000130835)株式会社サンコーシヤ (64)
【Fターム(参考)】