説明

保持治具の製造方法及び成形金型

【課題】補強部材を変形させることなく成形金型から離型して補強部材の平坦性を維持した保持治具を製造することのできる保持治具の製造方法、及び、補強部材を変形させることなく容易に離型できる成形金型を提供すること。
【解決手段】支持孔11を有する補強部材5と保持孔15を有する弾性部材6とを備えて成る保持治具1を成形ピン33が複数立設された成形金型30で一体成形して製造する方法であって、成形ピン33を同一方向にn段階(nは2以上の整数)で順次抜脱して一体成形体を成形金型30から離型する離型工程を有する製造方法、及び、保持治具1を成形する成形金型30であって、補強部材5の配置空間35を形成する第1金型31及び第2金型32を備え、第1金型31は配置空間35に縦立する成形ピン33が立設されたn個(nは2以上の整数)の分割型41及び51を有して成る成形金型30。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保持治具の製造方法及び成形金型に関し、さらに詳しくは、補強部材を変形させることなく成形金型から離型して補強部材の平坦性を維持した保持治具を製造することのできる保持治具の製造方法、及び、補強部材を変形させることなく容易に離型できる成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、電話機、ゲーム機、自動車電装機器等の電子機器に用いられる集積回路等には、例えば、積層セラミックチップコンデンサ(単に、チップコンデンサと称することがある。)等の小型部品が搭載されている。このような小型部品を製造する際等には、通常、小型部品を製造可能な小型部品用部材等を保持する保持孔が形成された保持治具が用いられる。このような保持治具として、例えば、特許文献1には、「(a)多数の並列状貫通通路を有するプレート体を備えること。(b)前記通路は弾性壁を有して電気用小型パーツが該通路内に位置可能となっており、かつ該通路の寸法は対応するパーツの寸法よりも小さく、パーツが前記通路内位置で弾発的に把持されること。以上(a)および(b)の構成から成るを特徴とする多数の電気用小型パーツ端部のコーティング用装置」が記載されている。
【0003】
これらの保持治具等は、例えば、保持孔を形成するための成形ピンが立設された成形金型を用いて製造される。具体的には、特許文献2には、「複数個のチップ部品を弾性的に保持するためのチップ部品の保持プレートの製造方法であって、・・・硬質基板に流し込まれた弾性材が硬化した後、ピンを取り除く工程、を含んでなることを特徴とするチップ部品の保持プレートの製造方法。」が記載されている(請求項1)。この製造方法においては、「ピン27は上金型25に立設され、・・弾性材15がピンに密着して離型しにくくなるので、ブッシュピン31を利用して保持プレートを上金型25から押出し、ピン27を弾性材15から引き抜く。」(第2頁右上欄第11行〜同頁左下欄第11行及び図4参照。)。このようにして硬質基板11と弾性材15とが一体成形された保持プレートを成形金型から離型する際に、弾性材15とピン27との密着力、摩擦力等によるピン27の抜脱力によって硬質基板11特にその中央部近傍が変形し、金型から離型した後にその変形が復元しないことがある。
【0004】
このような硬質基板11の変形を防止して平坦な保持プレートを製造できる成形金型として、特許文献3には、「芯材として金属等の剛性を有し、予め厚み方向にチップ部品を弾性的に保持可能な穴径よりもやや大きな穴を設けたプレートをインサートし、厚み方向に電子部品を弾性的に保持可能な多数の穴形状を有するようにシリコーンゴムを成形加工してなる外部電極塗布用電子部品保持プレートの金型構造であって、穴形成の為に金型に設けられる多数のピンを固定側金型と可動側金型に分けて埋設することを特徴とする電子部品の外部電極塗布に用いる保持プレート成形金型」が記載されている。この保持プレート成形金型を用いて保持プレートを製造すると、成形された保持プレートを保持プレート成形金型から離型するときの芯材の変形防止効果が期待できる。
【0005】
ところで、近年、電子部品はより一層の小型化が図られているので、成形金型からの離型時における硬質基板の変形をより一層高度に防止すると共に成形金型から容易に離型できることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭62−20685号公報
【特許文献2】特開平2−14508号公報
【特許文献3】特開2004−114624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、補強部材を変形させることなく成形金型から離型して補強部材の平坦性を維持した保持治具を製造することのできる保持治具の製造方法を提供することを、目的とする。
【0008】
この発明は、補強部材を変形させることなく容易に離型できる成形金型を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための第1の手段として、
請求項1は、支持孔が形成された補強部材と小型部品を弾発的に保持する保持孔が形成された弾性部材とを備え、前記保持孔が前記支持孔の内部を通るように前記補強部材が前記弾性部材に埋設されて成る保持治具を、前記保持孔を形成する成形ピンが複数立設された成形金型で一体成形して、製造する製造方法であって、複数の前記成形ピンを同一方向にn段階(nは2以上の整数)で順次抜脱して前記成形金型内で成形された一体成形体を前記成形金型から離型する離型工程を有することを特徴とする保持治具の製造方法であり、
請求項2は、前記離型工程は、前記一体成形体と前記成形金型との接触状態を維持した状態で、第1群から第(n−1)群(nは2以上の整数)に分類された前記成形ピンを同一方向に(n−1)段階で順次抜脱する接触離型工程と、前記接触離型工程に次いで、前記接触状態を解除しつつ又は解除して、第n群に分類された前記成形ピンを前記接触離型工程と同一方向に抜脱する非接触離型工程とを有することを特徴とする請求項1に記載の保持治具の製造方法であり、
請求項3は、前記nは、2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の保持治具の製造方法である。
【0010】
前記課題を解決するための第2の手段として、
請求項4は、支持孔が形成された補強部材と小型部品を弾発的に保持する保持孔が形成された弾性部材とを備え、前記保持孔が前記支持孔の内部を通るように前記補強部材が前記弾性部材に埋設されて成る保持治具を成形する成形金型であって、前記成形金型は、互いに重ね合わされて前記補強部材を配置する配置空間を形成する第1金型及び第2金型を備えて成り、前記第1金型は、前記配置空間に縦立するように前記保持孔を形成する成形ピンがそれぞれ立設され、互いに重ね合わされるn個(nは2以上の整数)の分割型を有していることを特徴とする成形金型であり、
請求項5は、n個(nは2以上の整数)の前記分割型は、前記第2金型と共同して前記配置空間を形成すると共に、前記支持孔の配列と同様の配列となるように立設又は穿孔された第2成形ピン及び貫通孔を有する第2分割型と、前記第2分割型に対して前記配置空間と反対側に配置されると共に、前記貫通孔を貫通して前記空間に縦立する第1成形ピンを有する第1分割型とを備えて成ることを特徴とすることを特徴とする請求項4に記載の成形金型であり、
請求項6は、n個(nは2以上の整数)の前記分割型は、それぞれの相対的な移動量を規制するリンク部材を備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の成形金型であり、
請求項7は、前記成形金型は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持治具の製造方法に用いられる成形金型であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の成形金型である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る保持治具の製造方法は、複数の成形ピンを同一方向にn段階で順次抜脱するので、成形ピンの抜脱力をn段階に分散させることができる。また、この発明に係る成形金型は、第1金型がn個(nは2以上の整数)の分割型を有しているから、この分割型を順次開いていくと複数の成形ピンをn段階で順次抜脱することができる。その結果、この発明に係る保持治具の製造方法及びこの発明に係る成形金型は、補強部材を変形も損傷もさせることなく前記一体成形体を容易に離型させることができる。したがって、この発明によれば、補強部材を変形させることなく成形金型から離型して補強部材の平坦性を維持した保持治具を製造することのできる保持治具の製造方法を提供すること、及び、補強部材を変形させることなく容易に離型できる成形金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、この発明に係る保持治具の製造方法によって製造される保持治具の一例を示す概略上面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線で切断した保持治具における断面の一部を示す概略断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る保持治具の製造方法によって製造される保持治具の一例における補強部材を示す概略上面図である。
【図4】図4は、この発明に係る保持治具の製造方法によって製造される保持治具の別の一例を示す概略上面図である。
【図5】図5は、この発明に係る保持治具の製造方法の一例を説明する概略説明図であり、図5(a)はこの発明に係る保持治具の製造方法の一例において、この発明に係る成形金型の一例である成形金型に補強部材を配置した状態を説明する説明図であり、図5(b)はこの発明に係る保持治具の製造方法の一例において、この発明に係る成形金型の一例である成形金型における第1分割型を開いた状態を説明する説明図であり、図5(c)はこの発明に係る保持治具の製造方法の一例において、この発明に係る成形金型の一例である成形金型における第2分割型を開く途中の状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る製造方法によって製造される保持治具(以下、この発明に係る保持治具と称することがある。)は、支持孔が形成された補強部材と小型部品を弾発的に保持する保持孔が形成された弾性部材とを備え、前記保持孔が前記支持孔の内部を通るように前記補強部材が前記弾性部材に埋設されて成る。そして、この発明に係る保持治具は、弾性部材の弾性力で保持孔に挿入された小型部品を弾発的に保持することができる。
【0014】
この発明に係る保持治具に保持される小型部品は、小型部品の製造工程、搬送工程等において保持される必要性のある、小型部品を製造可能な小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、小型部品は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はない。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、チップコンデンサ、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等が挙げられる。このような小型部品は、例えば、その軸線長さが1.0〜3.2mmで軸線に垂直な平面における直径又は軸線に垂直な断面形状に外接する仮想外接円の直径が0.7〜2.3mmの寸法を有している。この発明に係る保持治具は後述するように小型部品を独立に保持できるから、この発明においては小型部品の寸法誤差が保持状態の均一性に大きく影響する前記寸法よりもさらに小型化された小型部品を用いることもできる。
【0015】
この発明に係る保持治具は、前記小型部品の保持用として好適であり、例えば、少なくとも二箇所に電極形成用の導電性ペーストを塗布する必要のある小型部品の保持用としてさらに好適である。
【0016】
この発明に係る保持治具の一実施例である保持治具1を、図面を参照して、説明する。この保持治具1は、図1及び図2等に示されるように、支持孔11を有する平坦部12(図1に図示しない。)及びこの平坦部12の周囲に形成された鍔部13を有してなる補強部材5と保持孔15を有する弾性部材6とを備え、前記保持孔15それぞれが前記支持孔11それぞれの内部を通るように前記平坦部12が弾性部材6に埋設されて成る。
【0017】
前記補強部材5は、図2によく示されるように、支持孔11が形成された平坦部12が少なくとも後述する弾性部材6に埋設され、弾性部材6が平坦になるように、弾性部材6を補強支持する。この補強部材5は、図2及び図3に示されるように、多数の支持孔11が穿設された矩形の平坦部12と、平坦部12の周囲に、平坦部12の厚さ方向すなわち上面方向及び下面方向に突出した鍔部13とを備えている。
【0018】
前記鍔部13は、平坦部12を囲繞するように形成され、図2に示されるように、平坦部12の上面方向及び下面方向における突出量が一定になるように調整されている。換言すると、鍔部13は、図3に明確に示されるように、平坦部12を囲繞する長方形の枠を成し、その厚さ方向の略中央部で鍔部13よりも薄い平坦部12に連結している。この鍔部13は、フランジ部と称することもでき、平坦部12の強度を補強し、また、保持治具1としたときの優れた取扱性を確保する。この鍔部13の厚さは、例えば、8.9〜10.0mmの範囲内に設定される。
【0019】
前記平坦部12は、図2及び図3に示されるように、その全領域にわたって厚さ方向に貫通する多数の支持孔11が形成される領域であり、通常、その厚さが一定で平坦になっている。平坦部12の厚さは、例えば、5.9〜7mmの範囲内にあるのが好ましい。
【0020】
前記平坦部12に形成される支持孔11は、前記平坦部12内に、前記支持孔11を多数、例えば、5000個以上、好ましくは少なくとも6000個、より好ましくは少なくとも7000個、特に好ましくは少なくとも7500個有している(図3において、支持孔11の一部を図示していない。)。補強部材5に多数の支持孔11が形成されると、保持治具1を用いた小型部品の製造方法における生産性が向上する。前記支持孔11は、図3に示されるように、所謂「千鳥状」に配列されている。具体的には、支持孔11は、この例において、図3に図示した補強部材5の短辺方向である第1配列方向に沿って、奇数行に配列された第1支持孔11Aと、偶数行に配列された第2支持孔11Bとからなる。さらに具体的には、支持孔11は、前記第1配列方向及びこの第1配列方向に交差する第2配列方向、この例において図3に図示した補強部材5の長辺方向に沿って配列された第1支持孔11Aと、前記第1配列方向に沿って隣接する2つの第1支持孔11A、並びに、前記第2配列方向の同じ側に前記2つの支持孔に隣接する2つの第1支持孔11Aで囲繞される領域に、好ましくはその中心に配列された第2支持孔11Bとからなる。そして、前記第1配列方向の最外列に前記第1支持孔11Aが配列され、前記第2配列方向の最外列に前記第2支持孔11Bが配列されている。このような所謂「千鳥状」の配列において、対角に位置する第1保持孔15A及びこれらの間に配列された第2支持孔11Bはそれらの軸線が同一直線上にあって、これらの直線と第1配列方向及び第2配列方向それぞれとの角度は約45°になっている。このように多数の支持孔11が所謂「千鳥状」に配列されていると、前記のような所謂「千鳥状」の配列は、同じ領域であれば、例えば図4に示す碁盤目状の配列等に対してより多数の、すなわち、高密度で支持孔11を形成することができるので、保持治具1の生産性を大きく向上させることができる。したがって、より多数の小型部品を保持するには支持孔11は所謂「千鳥状」に配列されているのが好ましい。前記支持孔11は、第1配列方向及び第2配列方向ともに一定の間隔をおいて、例えば、支持孔11同士の軸線距離が1.8〜5.5mmの範囲で、配列されている。平坦部12に平行な平面における支持孔11の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができる。前記断面形状は同じ形状であるのがよい。この例において、支持孔11の前記断面形状は略同一の直径を有する円形になっている。前記直径は、例えば1.3〜2.2mmの範囲内に設定される。
【0021】
平坦部12及び鍔部13を備えて成る補強部材5は、小型部品の生産性、支持孔11の形成数、小型部品の寸法及び保持治具1の強度等を考慮して、鍔部13及び平坦部12の寸法が調整される。補強部材5は、弾性部材6を平坦な形状に維持することのできる材料で形成されていればよく、このような材料として、金属及び樹脂等が挙げられる。具体的には、金属として、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びニッケル合金等が挙げられ、樹脂として、例えば、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。補強部材5は、加工性、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びポリフェニレンスルフィド樹脂等で形成されるのが好ましく、特にアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されるのが好ましい。
【0022】
前記弾性部材6は、図1及び図2に示されるように、多数の保持孔15が穿孔され、前記平坦部12を内部に収容可能な空隙を有している。そして、図2に示されるように、弾性部材6は、補強部材5の平坦部12を埋設し、換言すると、平坦部12の両面を被覆すると共に補強部材5の支持孔11に貫入し、補強部材5の鍔部13と面一になるように、形成されている。すなわち、弾性部材6は、平坦部12の表面に配置され、補強部材5の鍔部13によって囲繞されている。ここで、前記弾性部材6は、その保持孔15が支持孔11の内部を通るように平坦部12を埋設している。好ましくは、弾性部材6は、図2に示されるように、保持孔15が支持孔11の軸線Cと共通する軸線Cを有するように、前記平坦部12を埋設している。このように弾性部材6が形成されると、弾性部材6と補強部材5との密着性に優れるうえ小型部品の挿入及び抜取りが容易になる。
【0023】
弾性部材6は、図1及び図2に示されるように、その厚さ方向に貫通し、自身に挿入又は貫入された小型部品をその弾性力で弾発的に保持する多数の保持孔15を有している。弾性部材6は、基本的に、前記支持孔11と同数の保持孔15を有している。そして、複数の保持孔15は、前記支持孔11と基本的に同様に、前記第1配列方向及び前記第2配列方向に沿って所謂「千鳥状」に配列されている。具体的には、保持孔15は、前記第1配列方向に沿って、奇数行に配列された第1保持孔15Aと、偶数行に配列された第2保持孔15Bとからなる。そして、前記第1配列方向の最外列に前記第1保持孔15Aが配列され、前記第2配列方向の最外列に前記第2保持孔15Bが配列されている。前記保持孔15は、第1配列方向及び第2配列方向ともに一定の間隔、基本的に前記支持孔11と同じ間隔をおいて配列されている。平坦部12に平行な平面における保持孔15の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができる。前記断面形状は同じ形状であるのがよい。この例において、保持孔15の前記断面形状は略同一の直径を有する円形になっている。前記直径は、保持する小型部品の寸法等を考慮のうえ、前記支持孔11よりも小さな開口径となるように、調整される。例えば、保持孔15の前記直径は、小型部品の前記直径又は前記仮想外接円の直径に対して80〜90%の範囲内、具体的には、0.42〜0.58mmの範囲内に設定される。
【0024】
弾性部材6は、小型部品の生産性、小型部品の寸法及び発揮される弾性力等を考慮して、前記鍔部13と面一になるように、その寸法及び厚さが調整される。弾性部材6は、弾性変形し、小型部品を挿入保持することのできる材料で形成される。このような材料として、例えば、ゴム及びエラストマー等が挙げられ、より具体的には、シリコーンゴムが挙げられる。シリコーンゴムの中でも、高重合度の線状ポリジメチルシロキサン若しくはその共重合体を架橋してゴム弾性を付与したシリコーンゴム、又は、耐酸性のシリコーンゴムが好ましい。高重合度の線状ポリジメチルシロキサンを架橋したシリコーンゴムとしては、例えば、商品名「KE−1950−50」(信越化学工業株式会社製)等を入手することができる。
【0025】
この発明に係る保持治具の別の一実施例である保持治具2を、図面を参照して、説明する。この保持治具2は、図4に示されるように、保持孔15すなわち支持孔11の配列が異なること以外は前記保持治具1と基本的に同様である。前記保持孔15は、図4に示されるように、第1配列方向及び第2配列方向に沿って碁盤目状に配列されている。
【0026】
保持治具1及び2は、例えば、小型部品の軸線が保持孔15の軸線と略平行となる状態、好ましくは一致する状態に、小型部品を保持孔15に挿入して、その弾性力で弾発的に保持する。そして、小型部品を保持した保持治具1及び2は、小型部品の製造工程、搬送工程等に供される。保持治具1及び2に小型部品を保持するには、例えば、保持孔15と同数の貫通孔が保持孔15と同じ間隔で同様に整列された整列板を準備し、貫通孔と保持孔15とが一致するように、整列板を保持治具1の上に重ね合わせる。次いで、整列板の貫通孔それぞれに小型部品を挿入し、小型部品を平坦な板状部材で均一に保持治具側に押圧する。そうすると、小型部品は保持孔15に前記状態となるように挿入され、弾発的に保持される。このような方法の例として、例えば特許第4337498号明細書には、従来の各種方法(例えば0004欄〜0009欄及び図9〜14参照。)と、これらの各種方法を改良した方法(特許請求の範囲及び図1及び図2等参照。)とが記載されている。
【0027】
保持治具1及び2は、この発明に係る保持治具の製造方法によって製造されるから、成形金型から脱型されるときに、補強部材5特にその平坦部12が実質的に変形することがなく、補強部材5特に平坦部12の平坦性を維持している。そして、保持治具1及び2は平坦であるから、多数の小型部品を均一な状態で保持することができる。したがって、この発明に係る保持治具の製造方法によって製造される保持治具によれば、高い寸法精度を有する多数の小型部品を高い生産性で製造することができる。
【0028】
この発明に係る保持治具の製造方法は、保持治具例えば前記保持治具1及び2を、保持孔を形成する成形ピンが複数立設された成形金型で一体成形して、製造する製造方法であって、複数の前記成形ピンを同一方向にn段階(nは2以上の整数)で順次抜脱して、前記成形金型内で成形された一体成形体を前記成形金型から離型する離型工程を有することを特徴とする。すなわち、この発明に係る保持治具の製造方法は、成形金型に立設された複数の成形ピンをn(2以上の整数)群に分類して、各群に分類された成形ピンを同一方向に順次抜脱すること、換言すると、成形ピンを同一方向に多段階に抜脱することによって、前記成形金型内で成形された前記補強部材と前記弾性部材との一体成形体を成形金型から離型する方法である。
【0029】
ここで、成形ピンを抜脱する際に、n群に分類された成形ピンのうち第1群から第(n−1)群(nは2以上の整数)に分類された前記成形ピンは、前記一体成形体と前記成形金型との成形ピンの抜脱方向の接触状態を維持した状態すなわち一体成形体の変形を規制した状態で、同一方向に(n−1)段階で順次抜脱され、次いで、n群に分類された成形ピンのうち第n群に分類された前記成形ピンは、前記接触状態を解除しつつ又は解除した後に、抜脱されるのが、この発明の目的をよく達成できる点で、好ましい。すなわち、この発明に係る保持治具の製造方法において、前記離型工程は、一体成形体と成形金型との接触状態を維持した状態で第1群から第(n−1)群(nは2以上の整数)に分類された成形ピンを同一方向に(n−1)段階で順次抜脱する接触離型工程と、この接触離型工程に次いで前記接触状態を解除しつつ又は解除して第n群に分類された成形ピンを前記接触離型工程と同一方向に抜脱する非接触離型工程とを有しているのが好ましい。
【0030】
この発明に係る保持治具の製造方法において、前記nは、2以上の整数であれば、特に限定されないが、あまりに大きすぎると製造効率が低下することがあるから、この発明の目的と製造効率とを勘案して、例えば、2〜5であるのが好ましく、2又は3であるのがより好ましく、2であるのが特に好ましい。
【0031】
この発明に係る保持治具の製造方法の一例として、前記保持治具1を前記nが2である2段階で成形ピンを抜脱して製造する製造方法(以下、この発明に係る一製造方法と称することがある。)を、図面を参照して、説明する。すなわち、この発明に係る一製造方法においては、一体成形体と成形金型との接触状態を維持した状態で第1群に分類された成形ピンを同一方向に1段階で順次抜脱する接触離型工程と、この接触離型工程に次いで前記接触状態を解除しつつ第2群に分類された成形ピンを前記接触離型工程と同一方向に抜脱する非接触離型工程とを有する離型工程を実施する。
【0032】
この発明に係る一製造方法においては、まず、成形金型30、補強部材5及び弾性部材6を形成する弾性材料を準備する。図5はこの発明に係る保持治具の製造方法の一例を説明する概略説明図であり、図5(a)は成形金型30に補強部材5を配置した状態を、その垂直面で切断したときの概略断面図である。
【0033】
準備する成形金型30は、図5に示されるように、互いに重ね合わされて補強部材5を配置する配置空間35を形成する第1金型31及び第2金型32を備えている。このように、第1金型31と第2金型32とを直接又は補強部材5を介して接触状態又は離間状態に重ね合わせたときに補強部材5が配置される配置空間35が形成される。この成形金型30は、第1金型31及び第2金型32で補強部材5を挟持するように、第1金型31及び第2金型32の互いに対向する内表面54及び32aは平坦になっている。したがって、成形金型30において前記配置空間35は挟持空間と称することもできる。この例において、第1金型31は第2金型32に対して前後進するように可動になっており、移動型と称することができ、第2金型32は図示しない成形機の基板等に固定されており、固定型と称することができる。
【0034】
前記第2金型32は、図5に示されるように、補強部材5を載置して第1金型31と共に挟持する平坦な板状金型とされている。この第2金型32は補強部材5を載置する内表面32aが補強部材5と略同一寸法の矩形になっている。
【0035】
前記第1金型31は、第2金型32と同様に補強部材5と略同一寸法の矩形になっており、具体的には、図5に示されるように、直接重ね合わされる、すなわち、積層される2つの分割型すなわち第1分割型41及び第2分割型51から成っている。分割型41及び51それぞれは、第2金型32の内表面32aに到達するまで延在して前記配置空間35に縦立する成形ピン33が前記配置空間35に向かう表面すなわち内表面54及び表面43に立設されている。この成形ピン33は前記配置空間35に補強部材5を配置したときに、支持孔11を貫通するように支持孔11と同様に配列され、弾性部材6に保持孔15を形成する。したがって、成形ピン33は保持孔15とほぼ同様の断面形状を有する棒体に形成されている。
【0036】
前記第1金型31は、より具体的には、前記第2金型32と共に配置空間35を形成する第2分割型51と、この第2分割型51に対して前記配置空間35と反対側に接して配置される第1分割型41とを有している。
【0037】
前記第2分割型51は、補強部材5を介して第2金型32に重ね合わされ、配置空間35を形成する。したがって、この第2分割型51は、配置空間35の上面となる内表面54に立設された第2成形ピン52と、自身の厚さ方向に貫通するように穿孔された貫通孔53とを有している。第2成形ピン52と貫通孔53とは全体として、支持孔11の配列と同様の配列となるように、かつ、補強部材5に穿孔された支持孔11の穿孔数と同数となるように、立設又は穿孔されている。前記第2成形ピン52は、配置空間35の高さすなわち補強部材5の鍔部13の厚さと略同一の高さで複数が立設されている。前記貫通孔53は、後述する第1成形ピン42の外径と略同一の内径を有し、第1成形ピン42の前後進移動を案内する。したがって、第1成形ピン42の抜脱時の変形を防止できる。第2成形ピン52が立設される配列及び貫通孔53が穿孔される配列は、全体として支持孔11と同様の配列になればよく、それぞれの配列は特に限定されない。例えば、第2成形ピン52及び貫通孔53を配列方向に沿って交互に設けてもよく、平坦部12の外縁近傍に配列された支持孔11に対応する個所に貫通孔53を、平坦部12の中央近傍に配列された支持孔11に対応する個所に第2成形ピン52を設けてもよく、この逆でもよい。第2成形ピン52の立設数及び貫通孔53の穿孔数は、全体として支持孔11の穿孔数と同数であればよく、それぞれの立設数及び穿孔数は特に限定されない。例えば、第2成形ピン52の立設数と貫通孔53の穿孔数との比(立設数:穿孔数)は1:9〜9:1の範囲に設定することができ、一体成形体を効率良く成形金型30から離型するには、前記比(立設数:穿孔数)は7:3であるのが好ましい。
【0038】
前記第1分割型41は、第2金型32と共に第2分割型51を挟むように配置され、前記配置空間35側に面する表面43に立設された第1成形ピン42を有している。第1成形ピン42は、前記貫通孔53の配列と同様の配列となるように、かつ、貫通孔53の穿孔数と同数となるように、立設されている。すなわち、前記第1成形ピン42及び第2成形ピン52の全体が成形ピン33となり、支持孔11の配列と同様の配列で支持孔11と同数となっている。したがって、第1成形ピン42の立設数と第2成形ピン52の立設数との比(第1成形ピン立設数:第2成形ピン立設数)は1:9〜9:1の範囲に設定することができ、一体成形体を効率良く成形金型30から離型するには、前記比(第1成形ピン立設数:第2成形ピン立設数)は3:7であるのが好ましい。前記第1成形ピン42は、第2分割型51を貫通して第1金型31の内表面32aまで到達する軸線長さを有している。
【0039】
前記第1金型31には、第1分割型41及び第2分割型51それぞれの相対的な移動量を規制するリンク部材34を備えている。具体的には、リンク部材34は、第2分割型51の隅部に立設され、第1分割型41を貫通するリンク本体34aと、リンク本体34aの先端部に半径方向に膨出するフランジ状の係止凸部34bと、リンク本体34aを貫通させるリンク孔の端部すなわち第1分割型41の外表面側に、前記リンク孔よりも拡径した係止凹部34cとを有している。前記リンク本体34aは、第1成形ピン42が配置空間35から抜脱したときに前記係止凸部34bが前記係止凹部34cに係止するように、その軸線長さが調整された棒状部材である。
【0040】
前記第1金型31及び第2金型32は前記したこと以外は、例えば保持治具を形成するための公知の金型と基本的に同様である。
【0041】
この成形金型30は、トランスファー成形法及びインジェクション成形法(射出成形法)等に用いられる公知の成形機(図5に図示しない。)に、前記第2金型32が固定され、前記第1金型31が可動となるように、装着される。
【0042】
この発明に係る一製造方法においては、補強部材5を準備する。例えば、鍔部13の厚さと同じ又はそれよりも厚い前記金属又は樹脂等製の板体から、支持孔11が形成されていない平坦部とその周囲に鍔部13とを有する板状体を所望寸法に切り出す。又は、支持孔11が形成されていない平坦部と鍔部13とを別個に作製し、溶接又は接着等の接合手段によって、平坦部と鍔部13とを所望の位置に接合して、前記板状体を作製する。なお、補強部材が鍔部を有していない場合には、平坦部12に対応する板状体を作製する。このようにして作製された板状体の平坦部に、所定形状及び直径を有する多数の支持孔11を、研削、切削、やすり仕上げ等によって、前記第1配列方向及び前記第2配列方向に沿って所定の間隔で整列されるように、穿設して、補強部材5を作製する。又は、支持孔11が形成された平坦部12と鍔部13とを別個に作製し、溶接又は接着等の接合手段によって、平坦部又は平坦部12と鍔部13とを所望の位置に接合して、補強部材5を作製する。なお、平坦部12の表面に、弾性部材6との密着を高めるために、接着剤又はプライマー等を塗布してもよい。また、この発明に係る一製造方法においては、弾性部材6を形成する弾性材料を準備する。この弾性材料は前記ゴム及びエラストマー等を含有する組成物を挙げることができる。
【0043】
この発明に係る一製造方法においては、図5(a)に示されるように、第1金型31及び第2金型32の間に形成される配置空間35に、成形ピン33が支持孔11を貫通するように、補強部材5を配置すなわち定置又は挟持する配置工程を実施する。具体的には、第2金型32の内表面32a上に補強部材5を載置し、その上に第2分割型51を第2成形ピン52が支持孔11を貫通するように載置して、第2金型32と第2分割型51とで補強部材5を挟持する。さらに、第1成形ピン42が貫通孔53及び支持孔11を貫通するように、第1分割型41を第2分割型51上に載置して配置する。このようにして配置工程が終了する。配置工程が終了すると、図5(a)に示されるように、第1成形ピン42及び第2成形ピン52が支持孔11すべての内部に貫通した状態になり、これらの成形ピン42及び52と第2金型32と第2分割型51と補強部材5とで弾性部材6に対応するキャビティが形成される。なお、補強部材5の平坦部12は鍔部13でその周囲が密閉されている。
【0044】
次いで、この発明に係る一製造方法においては、図5(a)に示されるように、前記成形金型30内に形成されたキャビティに前記弾性材料を充填した後にこの弾性材料を加熱して、前記補強部材5と前記弾性部材6との一体成形体を成形する成形工程を実施する。具体的には、前記キャビティに弾性材料を充填、注入又は配置して、図示しない加熱手段等により成形金型30ごと弾性材料を加熱硬化する。弾性材料の成形方法は、特に限定されず、例えば、トランスファー成形法及びインジェクション成形法(射出成形法)等の成形方法を採用することができる。成形温度及び成形時間等は、使用する弾性材料が硬化成形する温度及び時間であればよく、弾性材料に応じて任意に調整される。このようにして成形工程が終了すると、前記一体成形体が得られる。
【0045】
この発明に係る一製造方法においては、次いで、このようにして一体成形体を成形した後に、一体成形体を成形金型30から離型する離型工程を実施する。この離型工程は、複数の成形ピン33を同一方向にn段階(nは2以上の整数)で順次抜脱して、成形金型30内で成形された一体成形体を成形金型30から離型する離型工程である。このように、この発明に係る一製造方法における離型工程は、n群(nは2以上の整数)に分類された成形ピン33を同一方向にn段階で各群ごとに順次、例えば、時間差又は独立に、抜脱して、実施することを特徴とする。
【0046】
この発明に係る一製造方法において、前記離型工程は、前記したように、図5(b)に示されるように、一体成形体と成形金型30特に第2分割型51との、成形ピン53の抜脱方向の接触状態を維持した状態で、成形ピン33のうち第1群に分類された第1成形ピン42を1段階で抜脱する接触離型工程と、図5(c)に示されるように、この接触離型工程に次いで、前記接触状態を解除しつつ、成形ピン33のうち第2群に分類された第2成形ピン52を前記接触離型工程と同一方向に抜脱する非接触離型工程とを有する2段階離型工程である。
【0047】
前記接触離型工程は、図5(a)に示されるように前記成形工程が終了した後に、成形金型30における第2分割型51の内表面54と一体成形体における弾性部材6の表面とが接触した状態を維持しつつ、すなわち第2分割型51で前記一体成形体の変位を規制しつつ、第1分割型41を第2分割型51から離間するように移動させる。第1分割型41がこのように第2金型32と反対側に移動すると、第1成形ピン42は配置空間35から後退して弾性部材6から抜脱する。さらに、第1分割型41が移動して所定の移動量に達すると前記リンク部材34でその移動が停止される。この状態が図5(b)に示されている。第1分割型41が前記のように一方向に移動するとき、第1成形ピン42と弾性部材6との摩擦力が生じても弾性部材6が第2分割型51の内表面54に接触し、規制されているから、弾性部材6及び補強部材5は第1成形ピン42の抜脱に追従することなく、前記配置工程で配置空間35に第1金型32と第2分割型51とで挟持された所期状態を維持している。したがって、補強部材5を変形も損傷もさせることなく前記一体成形体から第1成形ピン42を抜脱することができる。
【0048】
この接触離型工程によれば、例えば軸線長さが比較的長い小型部品の両端部を処理するのに用いられる、軸線長さが比較的長い保持孔15を有する厚い保持治具であっても、また、軸線長さが比較的短い小型部品を処理するのに用いられる、軸線長さが短い保持孔15を有する薄肉状の保持治具であっても、補強部材5を変形も損傷もさせることなく前記一体成形体から第1成形ピン42を抜脱することができる。また、接触離型工程によれば、近年の生産性向上という要望を実現するために保持治具の大型化及び/又は多孔化した変形及び損傷のしやすい補強部材5であっても、変形も損傷もさせることなく前記一体成形体から第1成形ピン42を抜脱することができる。したがって、この発明によれば、例えば6000個以上特に10000個以上の極めて多数の保持孔を有している保持治具であっても補強部材を変形させることなく成形金型から離型して補強部材の平坦性を維持した保持治具を製造することのできる製造方法、並びに、保持治具の多孔化によって例えば6000個以上特に10000個以上の極めて多数の支持孔が穿孔された補強部材であっても補強部材を変形させることなく容易に離型できる成形金型を提供することができる。
【0049】
前記非接触離型工程は、図5(b)に示されるように、前記接触離型工程が終了した後に、すなわち、第1成形ピン42が配置空間35から抜脱した後に、独立して実施されるのが好ましい。この非接触離型工程は、図5(a)及び図5(b)に示される、前記内表面54と前記弾性部材6の表面とが接触した状態を解除しつつ、第2分割型51を第1分割型41の移動方向と同方向にすなわち第1金型32から離間する方向に移動させる。なお、成形金型30においては、第2分割型51を前記のように一方向に移動させるとその初期において前記接触状態が解除されるようになっている。第2分割型51は、第1分割型41と独立に移動させてもよく、この例においては、図5(c)に示されるように、前記リンク部材34によって第1分割型41の移動と同期して第1分割型41と一体的に移動するようになっている。このようにして第2分割型51を移動させると、図5(c)に示されるように、第2成形ピン52は配置空間35から後退して弾性部材6から抜脱する。このとき、一体成形体の補強部材5は、第2金型32に固定されており、かつ、すでに多数の第1成形ピン42が抜脱されているから、一体成形体が第1成形ピン42の抜脱に大きく追従することなく、前記一体成形体から第2成形ピン52を容易に抜脱することができる。
【0050】
この発明に係る一製造方法において、このようにして形成された一体成形体の弾性部材6には保持孔15の開口部近傍等に成形バリが生じていることがあるので必要に応じて成形バリを取り除くための研削等の表面処理が行われてもよく、また、形成された弾性部材6の表面を鏡面加工することもできる。このような表面処理として、例えば、面研削、フライス研削、ラッピング、鏡面加工処理等が挙げられる。
【0051】
このようにして、保持治具1を製造することができる。なお、前記保持治具2もこの発明に係る一製造方法と同様にして製造できる。
【0052】
この発明に係る一製造方法によれば、複数の成形ピン33を同一方向に2段階で順次抜脱することができるので、成形ピン33の抜脱力を2段階に分散させることができる。また、この発明に係る一製造方法によれば、成形ピン33を同一方向に抜脱しても、1段階目の成形ピン42の抜脱時に前記一体成形体は成形金型30に接触状態にあるから、一体成形体が成形ピン42の抜脱に追従して変形することない。一方、前記成形金型30によれば、第1金型31が2個の分割型41及び51を有しているから、この分割型41及び51を順次開いていくと複数の成形ピン33を2段階で順次抜脱することができる。また、前記成形金型30によれば、前記配置空間35を形成する第1分割型41を開いてこの第1分割型41に立設された第1成形ピン42を抜脱するときに、第2分割型51で一体成形体を前記配置空間に固定しておくことができる。このように、この発明に係る一製造方法及び成形金型30によれば、補強部材5を変形させることなく成形金型30から離型して補強部材5の平坦性を維持した保持治具1及び2を製造することができる。したがって、この発明によれば、補強部材を変形させることなく成形金型から離型して補強部材の平坦性を維持した保持治具を製造することのできる製造方法、及び、補強部材を変形させることなく容易に離型できる成形金型を提供することができる。
【0053】
この発明に係る成形金型は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において種々の変更が可能である。例えば、成形金型30において第1金型31は2つ分割型41及び51を有しているが、この発明において第1金型はn個(nは2以上の整数)の分割型を有していてもよい。ここで、前記nは2以上の整数であれば、特に限定されないが、あまりに大きすぎると、成形金型が複雑になるうえ製造効率が低下することがあるから、この発明の目的と成形金型の簡素化と製造効率とを勘案して、前記nは、例えば、2〜5であるのが好ましく、2又は3であるのがより好ましく、2であるのが特に好ましい。また、成形金型30において第1金型31が2個の分割型41及び51を有しているが、この発明においては、第2金型がn個(nは2以上の整数)の分割型を有していてもよく、第1金型と第2金型とが共にn個(nは2以上の整数)の分割型を有していてもよい。なお、n個の分割型のうち、前記配置空間を形成しない分割型はいずれも前記第2分割型51と同様に成形ピンと貫通孔とを有している。
【0054】
成形金型30において、第1金型31は移動型とされ、第2金型32は固定型とされているが、この発明において、第1金型及び第2金型の少なくとも一方が移動型とされていればよく、第1金型及び第2金型が共に移動型とされていてもよい。
【0055】
成形金型30において、前記配置空間35は挟持空間となっているが、この発明において、配置空間は補強部材を収納する収納空間となっていてもよい。この場合には、第1金型及び第2金型とで補強部材を収納可能な収納凹部が形成される。この収納凹部は、例えば、第1金型特に第2分割型51が収納凹部を形成可能な第1凹部を有し、及び/又は、第2金型が収納凹部を形成可能な第2凹部を有している。
【0056】
成形金型30においては、成形ピン33は2つの群に分類され、前記第1成形ピン42と第2成形ピン52との全体で構成されているが、この発明において、成形ピンはn群(nは2以上の整数)に分類されていればよい。前記nは、前記した通り、2〜5であるのが好ましく、2又は3であるのがより好ましく、2であるのが特に好ましい。
【0057】
成形金型30においては、成形ピン33は第1金型31に立設されているが、この発明において、成形ピンはその一部が第2金型に立設されていてもよい。
【0058】
成形金型30において、前記第1金型31は、積層される2つの分割型41及び51を有しているが、この発明において、第1金型は、離間して重ね合わされる2つの分割型41及び51を有していてもよい。
【0059】
成形金型30において、成形ピン33は、所謂「千鳥状」又は碁盤目状に配列されているが、この発明において、成形ピンは、製造する保持治具の保持孔と同様に配列されていればよく、その配列は特に限定されない。例えば、成形ピンの配列として、例えば、第1保持孔15Aが前記第1配列方向の最外列となり、第2保持孔15Bが前記第2配列方向の最外列となる所謂「千鳥状」配列、前記角度が15〜75°(45°を除く)である所謂「千鳥状」配列、前記碁盤目状の配列を45度回転した傾斜スクエア配列、正六角形が最密に配置されるハニカム状の配列、同心円状の配列等が挙げられる。
【0060】
この発明に係る保持治具の製造方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において種々の変更が可能である。例えば、所望により、弾性部材6の硬化を確実にするため、成形金型から離型する前に成形金型ごと又は成形金型から離型した後に、前記一体成形体を二次加熱又は熱処理してもよい。
【0061】
この発明に係る一製造方法において、非接触離型工程は第1成形ピン42が配置空間35から完全に抜脱した後に独立して実施されるが、この発明において、非接触離型工程は第1成形ピン42が配置空間35から完全に抜脱する前に、配置空間35に残存する第1成形ピン42の抜脱と同時に、すなわち、接触離型工程と時間差をもって実施されてもよい。
【0062】
この発明に係る一製造方法において、離型工程は、成形ピンを2つの群に分類して接触離型工程と非接触離型工程とを有する2段階離型工程とされているが、この発明において、離型工程は、成形ピンをn群に分類し、第1群から第(n−1)群(nは2以上の整数)の成形ピンを前記成形金型と前記一体成形体との接触状態を維持した状態で同一方向に各群ごとに順次抜脱する接触離型工程と、第n群に分類された成形ピンを前記接触離型工程と同一方向に抜脱する非接触離型工程とを有するn段階離型工程とすることもできる。
【0063】
この発明に係る一製造方法は、移動型としての第1金型31に立設された成形ピン33を2段階で抜脱する方法であるが、この発明においては、移動型としての第1金型及び固定型としての第2金型それぞれに成形ピンが立設され、第1金型又は第2金型に立設された成形ピンのみをn段階(nは2以上の整数)で順次同一方向に抜脱してもよい。
【0064】
この発明に係る一製造方法において、非接触離型工程は、一体成形体と第2分割型との接触状態を解除しつつ実施されているが、この発明において、非接触離型工程は、一体成形体と第2分割型との接触状態を解除した後に実施されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1、2 保持治具
5 補強部材
6 弾性部材
11 支持孔
12 平坦部
13 鍔部
15 保持孔
30 成形金型
31 第1金型
32 第2金型
33 成形ピン
34 リンク部材
35 配置空間
41 第1分割型
42 第1成形ピン
51 第2分割型
52 第2成形ピン
53 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持孔が形成された補強部材と小型部品を弾発的に保持する保持孔が形成された弾性部材とを備え、前記保持孔が前記支持孔の内部を通るように前記補強部材が前記弾性部材に埋設されて成る保持治具を、前記保持孔を形成する成形ピンが複数立設された成形金型で一体成形して、製造する製造方法であって、
複数の前記成形ピンを同一方向にn段階(nは2以上の整数)で順次抜脱して前記成形金型内で成形された一体成形体を前記成形金型から離型する離型工程を有することを特徴とする保持治具の製造方法。
【請求項2】
前記離型工程は、
前記一体成形体と前記成形金型との接触状態を維持した状態で、第1群から第(n−1)群(nは2以上の整数)に分類された前記成形ピンを同一方向に(n−1)段階で順次抜脱する接触離型工程と、
前記接触離型工程に次いで、前記接触状態を解除しつつ又は解除して、第n群に分類された前記成形ピンを前記接触離型工程と同一方向に抜脱する非接触離型工程と
を有することを特徴とする請求項1に記載の保持治具の製造方法。
【請求項3】
前記nは、2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の保持治具の製造方法。
【請求項4】
支持孔が形成された補強部材と小型部品を弾発的に保持する保持孔が形成された弾性部材とを備え、前記保持孔が前記支持孔の内部を通るように前記補強部材が前記弾性部材に埋設されて成る保持治具を成形する成形金型であって、
前記成形金型は、互いに重ね合わされて前記補強部材を配置する配置空間を形成する第1金型及び第2金型を備えて成り、
前記第1金型は、前記配置空間に縦立するように前記保持孔を形成する成形ピンがそれぞれ立設され、互いに重ね合わされるn個(nは2以上の整数)の分割型を有していることを特徴とする成形金型。
【請求項5】
n個(nは2以上の整数)の前記分割型は、
前記第2金型と共に前記配置空間を形成すると共に、前記支持孔の配列と同様の配列となるように立設又は穿孔された第2成形ピン及び貫通孔を有する第2分割型と、
前記第2分割型に対して前記配置空間と反対側に配置されると共に、前記貫通孔を貫通して前記空間に縦立する第1成形ピンを有する第1分割型と
を備えて成ることを特徴とすることを特徴とする請求項4に記載の成形金型。
【請求項6】
n個(nは2以上の整数)の前記分割型は、それぞれの相対的な移動量を規制するリンク部材を備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の成形金型。
【請求項7】
前記成形金型は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の保持治具の製造方法に用いられる成形金型であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−189648(P2011−189648A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58467(P2010−58467)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】